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子どもの英語教育は日本語に悪影響? カタカナ英語から考えてみる

「意識高い系」という言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。言葉や見た目を過剰に演出してすごい人に見せようとしているけれど、中身は大したことのない人を揶揄する言葉です。

代表的なのが「意識高い系ビジネスマン」です。彼らの特徴は、やたらとカタカナ英語を会話の中に盛り込んでくることです。私もこの種のビジネスマンを何人か知っています。

「最近は、コンプライアンス(compliance)が厳しいから…」「社内で〇〇のナレッジ (knowledge) をシェア (share) するため…」

  • コンプライアンス:法令遵守(ほうれいじゅんしゅ)
  • ナレッジ:知識
  • シェア:共有する

このような人達と会話をすると疲れます。頭の中で次のような処理を目まぐるしくしなければいけないからです。

コンプライアンスはcomplianceのことかな。comply withで「に従う」の意味だから、その名詞形だろう。文脈から判断して、決まりを守ることくらいの意味かな。ナレッジはknowledge、シェアはshareか。日本語にしてくれないかな…。

ここまでカタカナ英語を使いたければ、いっそ英語で話してくれたほうが聞きやすいです。

子どもの英語教育について批判するとき、「正しい日本語を身につけることを優先すべきだ」という議論がなされます。この意見についてはいろいろと反論できます。私は英語を学ぶことによって、むしろ正しい日本語を意識するようになると考えます。

今回はカタカナ英語についての私の考えや英語学習における注意点について解説します。

カタカナ英語の使いすぎが相手を不快にする理由とは

いわゆる「意識高い系」と呼ばれるビジネスマンの話を聞いていると、やたらとカタカナ英語が登場します。カタカナ英語とは、日本語で置き換え可能な言葉があるにもかかわらず、わざわざ使用される英語由来のカタカナです。

たとえば、アジェンダ(agenda)という単語は、会議の議題とか提案内容の意味です。日本語を話すときは「議題」「提案内容」などの言葉で置き換えたほうがわかりやすいのですが、なぜかアジェンダという言葉を使いたがる人がいます。

このような不要なカタカナ英語を聞くたびに私はイライラします。薄っぺらい英語の知識を見せびらかしている態度に腹を立てているのかと最初は思いました。しかし、じっくりと考えるともう少し深い理由が見えてきました。

話す目的は、相手に伝えるため

そもそも人が何かを話すときは、ひとり言以外は相手に何かを伝えるためです。そのため、相手が確実に自分の発言を理解してくれるように話すことがとても大切です。

子どもに話すときは子どもにわかるような言葉で会話をします。ある漫才師は若者の前で漫才をするときと、高齢者の前で漫才をするときでは話すスピードを変えるそうです。これも聞き手によりよく伝えるための配慮です。

しかし、カタカナ英語を乱用する人は相手に伝えることを第一の目的にしていません。相手がわからなさそうなカタカナ英語を使い、自分の知性のほうが優れていることを知らせようとしています。

不要なカタカナ英単語を連発する人に不快感を覚えるのは、相手の話す目的が本来あるべき姿から完全にズレているからです。

経団連会長の記者会見を見て

先日、経団連の中西会長が原発反対派への意見を記者会見で述べていたときのセリフです。

「エモーショナル(感情的)な反対運動について議論してもしょうがない」

また、脱炭素化のために原発比率を高めましょうという意図の発言をしたときのセリフです。

「皆様方がアクセプト(受け入れ)するなら、相当原子力の比率を高めるのが一番現実的」

エモーショナル(emotional: 感情的な)とかアクセプト(accept:受け入れる)などは、もともと「感情的な」「受け入れる」という日本語を使ったほうがより多くの人に理解してもらえます。

おそらく会長は自分の意見を多くの人に伝えたいわけではなく、自分の知性を見せつけるのが本心です。東大から米国の名門スタンフォード大に進み日立の最高経営責任者まで上り詰めたエリートですが、相手をおもんばかる心はなさそうです。

私は英語を子どもに教えていますが、英語の知識やテクニックだけでなく相手の立場に立つことを強調しています。

  • 英語が下手でも相手に聞こえるように大きい声で話すこと。→英語が下手で声が小さかったら、相手は聞く気をなくしてしまうから。
  • 何か質問されたら、答えだけでなくプラス1センテンスを心がけること→自分に興味を持ってくれたのだから、話を膨らませてより話しやすい雰囲気を作るため。

このような気遣いが気持ちのいいコミュニケーションの基本です。カタカナ英語を乱用する人にはこのような視点が欠けています。

カタカナ英語は英語学習の大敵か?

カタカナ英語に否定的な私ですが、英語学習には活用できる部分があると感じています。たとえば某有名ダイエット系のCMで「結果にコミットする」というコピーがあります。

コミットという耳慣れない言葉を聞いたときに、ほとんどの人は聞き流してしまうかもしれません。子どもとテレビを見ていてこのような言葉に出会ったら、お母さんと元の英単語を調べる習慣をつけましょう。そうすると子どもの英語のボキャブラリー向上に役立ちます。

commitというのは動詞で受身形やcommit oneself on/ to doの形で「~に献身する、を誓う」という意味です。使い方が難しい動詞です。前述のCMは、「(ダイエットの)結果を出すことに献身します(誓います)」という意味です。

日本語なので文脈は明瞭ですしCMの映像も明確に思い出せるので、commitの意味を忘れません。このような方法で難しい英単語も割と簡単に覚えることができます。

このように意味を覚えるには重宝するカタカナ英語ですが、しょせん偽物です。本物の英語とは異なるためいくつかの点に注意しなければなりません。

発音とアクセントは元の英単語をきちんと学ぶ

カタカナで覚えても英語のスキルは向上しません。かならず元の英単語をきちんと調べて正しい発音とアクセントを覚えるようにしましょう。カタカナで発音しても通じないことが多いのでスペリングを確認しながら何度も音読することが大切です。

また、辞書をしらべると使い方についても情報が掲載されています。先ほどのcommitが「~に献身する」という意味で使われるときは、受け身かcommit oneself on/ to doの形になります。

このような勉強をしないで「commit=献身する」と暗記しても、実際の会話ではまったく使えないので注意しましょう。

音節の数の違い、音の違い、アクセントの違い

カタカナ英語がダメな理由について詳しく説明します。ここではわかりやすくするために、「orange: オレンジ」という単語を例に挙げます。

・日本語は基本的に母音が連続する

「オレンジ」をローマ字で表記すると「o re n ji」です。3つの母音(赤字)が連続しているのがわかります。4つの音で構成されています。

一方、英語のスペリングはorange【ɔrinʤ】で母音は2つだけです。音節と呼ばれる音のかたまりで分けるとor・rangeとなり2音節からなる単語であることがわかります。

カタカナ英語では4つの音で発音され、英語では2つの音で読まれます。カタカナ読みをするとネイティブにはまったく別の単語に聞こえるためどんなにゆっくり発音しても通じないことになります。

・音の違い

オレンジの「レ」は、英語の r と l のどちらの音とも異なります。日本人は r も l も「ラ行」で表現するため、同じ音として処理します。つまり、ネイティブは聞いたこともない「レ」の音が入ることにより、その音からorangeのスペリングに結びつきません。

r と l については日本人が苦手な音として取り上げられる代表的な例です。日本人の英語学習者としては、聞き分けることはできなくても、発音を分けられるように練習することが必要です。正直なところ私も聞き分けられるか微妙なところですが、自分が発音するときは明確に分けています。

日本語で使われるカタカナ英語に出会ったら、新しい単語を覚えるチャンスです。日本語で文脈を理解しながら意味を覚えるため覚えやすいのが特徴です。

しかし、カタカナ英語のまま覚えても通じる英語は身につきません。かならず元の英単語を辞書で調べて正しい発音・アクセントと使い方について確認するようにしましょう。

英語を学ぶほど、カタカナ英語を使わなくなる理由

私は30年以上英語を学んでいますが、カタカナ英語を普段の日本語の会話に混ぜることはありません。同様に、私が知っている英語上級者でコミットやアクセプトなどのわかりにくいカタカナ英語を使う人に会ったことがありません。

一方、英語が得意でない人の中にはこのような単語をやたらと使用する人がいます。どうやら、英語を学んだ人ほど正しい日本語を好む傾向があるようです。これには理由があります。まず、カタカナ英語を使うことが気持ちが悪いのです。

この気持ちの悪さは、英語の音を無理やりカタカナに直した発音からくるものと、文法上の気持ち悪さが原因です。commitは受け身やcommit oneselfの使い方をするのに、普通の動詞と同じように「結果にコミットする」と使うとどうにも気持ちが悪いのです。

カタカナ英語を抵抗なく使えるということは、間違った発音や使い方にも抵抗を感じないということです。英語を学べば学ぶほどこのようなカタカナ英語をできるだけ避けたいと考えるのは当然です。

次に、長年の英語学習を通じていかに相手に自分の言いたいことを正しく伝えるかを考える習慣が作られます。そのため、相手に伝わらないかもしれない変なカタカナ英語を使うという発想が出てきません。

私の経験から、英語のレベルがある程度以上になると、変なカタカナ英語を使わなくなります。それは発音や文法上の気持ち悪さを感じるだけでなく、わかりやすいような言葉を選ぶという相手への配慮が養われるからです。

ときどき子どもの英語教育について否定的な人から「英語よりも日本語教育の充実のほうが優先されるべき」という主張を聞きます。

これについてはいろいろと反論の材料はあるのですが、英語学習を通してより正しい日本語を使おうという意識が高まるのは間違いありません。将来社会人になったときに相手にわかってもらえる日本語を話せる人に育って欲しいと思います。

音読トレーニングを長期間していると地に足のついた英語力が身につきます。

まとめ

コミュニケーションの基本は相手に自分の考えを伝えることです。カタカナ英語を乱用する人には、この観点が欠けています。聞き手側に立つと、文脈からその単語がどのような意味なのかを推測しなければならず、非常に負担となります。

英語学習の面ではカタカナ英語はマイナス面ばかりではありません。意味を覚えるには、日本語で文脈を与えられるため、かなり好都合です。

しかし、発音・アクセント・語法など本来の英単語を調べて覚えないと、英語として使いこなすことはできないので注意しましょう。

英語学習を長年続けている人ほど、カタカナ英語を使わない傾向があります。元の英単語を知っているので発音をカタカナ化することへの抵抗感があるからです。

英語学習では英語で自分の意見を確実に伝えることを学びます。日本語を話すときは、相手に伝わりやすい言葉を選ぶように自然と意識が働きます。そのため、英語レベルの高い人はやたらとカタカナ英語を使うことはありません。

英語ばかりを学ぶと日本語が乱れると短絡的に考えるのは間違いです。反対に、英語学習を通じてより正しい日本語を使うことへの意識が高まることが期待できます。子どものころからの英語教育に不安を感じている方への参考になれば幸いです。

子どもの英語発音:無料アプリを使った練習方法

私が英語学習を始めたのは中学生になってからでした。塾には通っていなかったので、学校の授業を受けながら少しずつ勉強していました。

3か月くらい経ったころ、私は他人より英語を上手に読めることに気がつきました。日本人が苦手なはずの「f, v, th, r, l」の発音が簡単にできました。自分では「英語の才能がある」と思っていました。

ある日、家で英語の教科書を音読していると、母が「やっぱり小さいときに英語を習っていたからうまいね」と言いました。何の話かまったく分からずたずねると、どうやら幼稚園のときに短期間、英語を習っていたらしいのです。

私は幼児期に英語の先生から発音訓練を受けていました。母から「英語らしい発音で歌を歌っていた」と聞かされました。英語はすっかり忘れてしまいましたが、子どもの頃に覚えた発音の筋肉は大きくなっても失われなかったようです。

子どもは英語の音に対して柔軟性があります。この時期に正しい発音を覚えると、英語学習において大きな利点となります。以下、英語の発音練習のコツと英語発音トレーニングに適したアプリについて詳しく説明します。
DL

日本人が苦手な英語の音

英語の発音が良くなると2つのメリットがあります。ひとつめは、英語を話すときに相手に伝わりやすいことです。聞き返されることが減るので、スムーズにコミュニケーションをとることができます。

もう一つのメリットは、英語の聴き取りが楽になることです。英語らしい発音をするのは、その音を毎回自分の耳で聞いていることと同じです。そのため他人が同じような英語を話したときも、それがどの単語のことか瞬時に聞き分けることができます。

このように英語の発音が良くなると、スピーキングだけでなくリスニングにも好影響を与えます。では具体的に「どのようにして英語の発音レベルを向上させればいいのか」について詳しく説明します。

日本語よりも英語のほうが音の数が多い

日本語と英語を構成する音の数を調べると、英語のほうが圧倒的に多いです。このことがわかると英語の発音をトレーニングするときにどういう姿勢で臨んだらいいのかがわかります。

・日本語に存在しない音がある

「英語のほうが音の数が多い」ということは「日本語には存在しない音がある」ということです。つまり、これまで出したことのない音を一から覚える必要があります。

未経験の音を出すのはとても違和感を覚えます。外から見える唇・舌先・歯だけでなく、口腔内の舌の位置や息の出し方まで意識しないと英語らしい音が出てきません。

私は学生のとき、英語の発音訓練を受けたことがあります。授業の翌日、口の周りが筋肉痛になったことを覚えています。慣れない筋肉を動かした証拠です。以下、日本人にとって未経験の英語の音を列挙しておきます。

・【f】/【v】(fan/ van)

【f】は上の歯で下唇の内側を軽く押さえ、強く息を出して発音します。【v】は【f】と同じ口の形で「ヴ」と発音します。
fとvの口の形

・【θ】/【ð】(throw/ this)

【θ】は舌の先を上下の歯で軽くかんだ状態で、息を出して発音します。【ð】は【θ】と同じ口の形で濁らせた音を出します。
thの口の形

・【r】/【l】(room/ look)

【r】は口の中で、舌を上に浮かせるようにして「ウ」に近い音を出します。
r の口の形
【l】は上の歯ぐきの裏側に舌先を軽くあてるような感じで発音します。
l の口の形

発音練習に関して、頭脳はほとんど不要です。それよりも口をいろいろ動かしながら理想的な音に近づけてみる試行錯誤が必要です。子どものが発音練習をするときは、正面に鏡を置き自分の口の形を常にチェックできるようにしてあげましょう。

日本語よりも強めに息を出さないと英語を発音することはできません。初心者のうちは少し大げさになるくらいでちょうどいいです。ときどき声を録音して、子どもに聞かせてみるのも発音の改善に効果的です。

幼児期から小学校低学年が最適

英語の発音練習に関しては、幼児から小学校低学年の頃に経験しておくのが理想的です。恥ずかしがったり面倒くさがったりせずに、好奇心旺盛に新しい音にチャレンジできる年齢だからです。

私の経験では、中学生や高校生に発音指導をするのはとても根気が必要です。彼らは新しい音を出すことを「恥ずかしい」「面倒くさい」と感じるからです。そして長期間指導する割にはあまり改善されないことも多いです。

低年齢のうちに発音練習を済ませておいたほうがいい理由はもう一つあります。それは「ローマ字」の弊害です。詳細は後述しますが、ローマ字は英語の読みとは似て非なるものなので、英語学習においては弊害でしかありません。

小学3年生から学校で「ローマ字」を習いますが、その前なら英語の音を素直に受け入れて練習できます。本格的な英語学習は後回しでもかまいませんが、発音は小学校低学年のうちに練習しておきましょう。

英語のカタカナ読みの弊害

子ども向けの英語教材では、英語に読み仮名(カタカナ)が記載されていることがほとんどです。子どもはすでに知っているカタカナを読むことで「英語を話している」と錯覚しますが、これでは英語を話していることになりません。

例えば日本語で「ア」と表記される英語の音には【æ】【ʌ】【a】【ə】の4つがあります。これらの違いは意味にも影響を与えるもので、すべてまとめてカタカナの「ア」ひとつで表現できません。

英語の4つのア

また、カタカナで音を覚えているとリスニング力は低下します。例えば「走る」意味の動詞の原形・現在分詞形「run」と過去形の「ran」があります。これらを両方ともカタカナの「ラン」と発音していたら、英語のrunを聞いてもどちらなのか判断できません。

run/ ran

リスニングで困らないためにも、カタカナに頼らずに英語を正しく発音することが大切か理解できます。

ローマ字は英語学習の妨げになる

ローマ字を習うことによって、英語の発音は余計に難しくなります。確かにローマ字と同じように英単語を読めるときもありますが、そうでない場合のほうが圧倒的に多いです。

私が中学生のころ英語の教科書を開いていると、母は「猫の話なのね」とつぶやきました。そのレッスンには猫など登場していないので、訳がわかりませんでした。

母になぜそう思ったのかをたずねて原因がわかりました。対話文の人物であるMikeを「ミケ(猫の名前)」と勘違いしたのです。

このようにローマ字読みが身体に染み付くと、英単語を学習するときに実際とは異なる覚え方をしてしまい危険です。このような理由から、ローマ字を学校で習う前に英語の発音に慣れておいて欲しいと私は考えます。

英語発音練習に無料アプリ「英語発音ドリルA to Z」

発音練習がやっかいなのは、ずっと先生につきっきりで教えてもらえないことです。最低でも1か月くらいは高頻度でトレーニングをすることが望ましいので、一人で練習できる方法を見つけなければいけません。

そんなときに重宝するのが、スマートフォンのアプリです。この記事を書くにあたり、英語の発音練習に適したアプリをいろいろと試してみました。

重視した評価ポイントは「価格:無料または格安」「信頼性:正しく評価してくれること」「文章単位:単語だけでなく文章でも練習できること」の3点です。この3つの条件に最も合致したアプリ「英語発音ドリルA to Z」について詳述します。
英語発音ドリル A to Z

「英語発音ドリルA to Z」

「英語発音ドリルA to Z」は無料で使えます。インストールを済ませると、「新しくデータを作る」画面が現れます。この機能により複数の利用者がそれぞれの学習履歴を残せます。まずは自分のデータを質問に従って入力しましょう。

 

 

入力B


・使い方

まず、発音練習に使用する例文を「カテゴリ」の中から選びます。先ほど入力した年齢が学習歴によって、使用する例文のレベルは異なります。
カテゴリー
チャレンジしたいカテゴリーを選んだら、レベルを選択して練習画面に移動します。

I'm on my way.自動でお手本の発音で例文が読まれます。スピードが速いので、もう一度聞きたい場合はオレンジ色の「お手本」と書いてあるところをタップします。

次に自分で読んでみましょう。まず、下のほうにある青いマイクの絵をタップします。すると「にんしき中」と書かれた緑色に変わります。できるだけお手本に近い読み方で、大きめの声で英語を読みます。

直後にスコアが右上に表示されます。もう一度チャレンジしたいときは、マイクのボタンを押せば何度でもできます。
スコア自分の声を再生したいときは、「あなた」と書いてある再生ボタンを押すと、直前に録音した自分の英語を確認できます。次の例文に移動するときは、マイクの横にある「次へ」をタップします。

使い方はとても簡単なので、教えてあげれば子どもでもひとりで練習できます。親子でスコアを競い合うと子どもは夢中になります。

スコアの信ぴょう性について

私が試すと毎回100点(二重丸)が出てしまうので、スコアの信ぴょう性について疑念が湧いてきました。そこで、英語の発音が苦手な妻にやってもらいました。

妻の英語に対しては、20点などの低い評価が連続しました。妻は「これ、壊れているでしょ」と文句を言っていましたが、正しい評価です。

また、英語の得意な息子にも試したら90点台で安定していました。3人しか試していませんが、このアプリのスコアはおおむね信頼できそうです。

「英語発音ドリルA to Z」にも欠点はあります。声の波形で分析していることから、まったく異なる音を当てはめても高評価が出てしまうことがあります。

例えば、“See you.” を“Thee you.” と発音しても、【s】と【θ】の違いを認識できずに、高評価が出てしまいました。おそらく、抑揚やアクセントがモデル音声と一致していれば正しく読んでいると認識してしまうからです。

このことから、まず個々の音の出し方については英語教室などで直接先生から習いましょう。その後、抑揚やアクセントに注意しながら「英語発音ドリルA to Z」を使用して短いセンテンスを読む練習をするのが理想です。

小学校高学年から英語の発音記号を覚えよう

英語の発音を学ぶときに「カタカナ」「ローマ字」は害でしかないことはすでに述べました。最近の教材にはCDが付属していて、新しく学ぶ英単語の発音を音声で確認できます。

しかし、CDだけに頼って発音を確認するのは2つの理由から学習効率が悪いと考えています。ひとつめは、音声の再生が面倒だからです。CDを再生するのはもちろん、該当の単語を見つけ出すにも時間がかかってしまいます。

もう一つの理由は、音だけを聞いても正しい発音を覚えられないからです。例えば、「バット」という音声を聞いたときbat(バット、こうもり) but(しかし) butt(たばこの吸いさし)なのか区別がつきません。

これらの理由から、英単語の発音を確認するときに毎回音声を再生すると効率が悪くなってしまいます。そこで活躍するのが「発音記号」です。学校の教科書にも単語の隣に必ず「発音記号」が表記されています。

ところがこれらの記号を覚えるのが面倒なため、先生も生徒もあまり積極的に発音記号を学ぼうとはしません。アルファベットだけでなく【ŋ】【æ】など見慣れない記号も覚えなくてはいけません。

しかし、やり方によっては小学校高学年の子どもにも発音記号を学ぶことは簡単です。そのコツについて説明します。

子どもが発音記号を覚えるためのコツ

まず、子どもが確実に読める英単語を活用します。例えば、dogなら発音記号は【dɔ(:)g】です。dとgはそのままで、口を大きく開けて発音する「オ」に該当する記号が【ɔ】であることが一目でわかります。

同じように、sheなら発音記号は【ʃ:】になります。【:】が音を伸ばす記号であるとわかれば、sが縦に伸びたような【ʃ】がshの部分を表していることが推測できます。

このようにして確実に正しい発音ができて綴りも読める英単語を利用しながら、少しずつ発音記号に慣れていくと、発音記号を見ただけでおよその音を知ることができます。

たとえば「心理学」psychology【saikaləʤi】という注意を要する単語を初めて見たときでも、発音記号を読めると「プシチョロジー」と読まずに最初から「サイコロジー」と発音できます。

私は変わっている子どもだったので、中学1年生のときに辞書の付録についていた発音記号を熟読して、独学で発音記号をマスターしました。そのため新しく単語を覚えるときは、意味よりも先に発音記号をチェックする癖がつき、正しい発音を効率よく学べました。

小学校高学年の子どもならそれほど難しくないので、少しずつ発音記号に慣れさせることを強くオススメします。

まとめ

日本語よりも英語のほうが構成する音の数は多いです。日本人が英語の発音が苦手な理由の一つは、この数の差にあります。

未経験の英語の音を無理やり日本語の音に当てはめても、英語を読んだことになりません。ローマ字は英語の発音とは異なる部分が多く、これも英語学習の妨げになります。

理想としては最初に小学校低学年までに英語教室やオンライン英会話などを利用して、英語らしい発音ができるようにトレーニングさせましょう。ひとつひとつの音がある程度読めたら、アプリを利用して完成度を高めていくといいです。

単語学習の効率を上げるために、小学校高学年からは少しずつ発音記号にも慣れていきましょう。確実に読める単語とその発音記号を比べることにより、見たことのない記号が何の音なのかを簡単に覚えられます。

音に強い子どもの特性を活かして、正しい英語の発音ができる筋肉をつけておきましょう。水泳や自転車と同様、一度覚えると大きくなっても忘れないのでオススメです。

英語の勉強になる子供向け映画DVD:「英語と外国文化や歴史」を学ぼう!

街の本屋さんの語学コーナーに行くと、海外ドラマや映画DVDを英語教材にした学習本が増えています。ネイティブの英語を楽しみながら学べるので、需要があるのでしょう。

また英語を学ぶ目標として「映画を字幕なしで楽しむこと」を挙げる人はとても多いです。映画と英語は相性がいいのです。

子どもの英語教材としても映画はおすすめです。しかし、子どもの英語のレベルは高くないので、ネイティブのセリフを聞き取るにはハードルが高すぎます。すべてのセリフを聞き取ろうとせずに、印象的なセリフに絞って学習したほうがうまくいきます。

英語以外でも、映画は「外国の文化・歴史・生活習慣」を学ぶ絶好の機会です。映画の舞台は現代だけでなく過去の出来事も舞台になるので歴史も学べます。

子どもの英語学習に向いている映画を探すにはコツがあります。それについても詳しく解説するので、参考にしてください。

子どもと映画を観よう

夏休みなどの長期休暇中「子どもに何か有意義なことをさせたい」と考えるお母さんは多いです。しかし、良いアイデアが思い浮かばずに、結局ダラダラと過ごしてしまう経験はありませんか。

私のおすすめは「子どもと良い映画を観ること」です。「夏休み中に15本映画を観て、30個のセリフを覚える」と具体的な目標を立てて実行できたら、充分に有意義な時間を過ごしたといえるでしょう。

映画のあと親子で映画について話し合い感想を述べるのは、議論の練習になります。映画で得た知識は将来英語圏の人と雑談するときにとても助かります。共通の映画で盛り上がったり意見交換できたりしたときは、映画を観ていて良かったと思います。

まず、映画ノートを一冊用意しましょう。子どもにタイトル(邦題と原題)を上に書かせて、観た日付を記入(英語で)させます。タイトルに知らない単語があったら、意味を調べさせましょう。ここまで準備できたら、あとはメモを取るだけです。

映画は英語圏の文化や習慣を学べる最高の教材

英語圏の国での文化・習慣について深く学ぶ教材として、映画は優れています。例えば、子ども向けの定番映画として『ホーム・アローン』があります。

「子どもが一人で家にいる」ことは日本ではそれほど珍しくありません。しかし、アメリカでは13歳未満の子どもを13歳以上の監督なしに一人にさせてはいけない」法律があるため、深刻度が違います。

よく中高生がアルバイトでベビーシッターをするシーンがアメリカのドラマで見られますが、そのような背景があるからです。それがわかると、「子どもを家でひとりにして家族が旅行に行ってしまった」のは日本以上に大事件であることを理解できます。

クリスマスは家族が集う機会でもあるので、皆が再開できるハッピーエンドはまさにクリスマスのテーマそのものです。

このように外国の文化や習慣を疑似体験できるのが、映画の良いところです。子どもと映画を観たあとはこのような豆知識を教えてあげると、子どもの教養レベルは高くなります。

このような雑学もノートにメモしておくと、知識が定着して忘れにくくなります。

好きなセリフを英語字幕で確認しよう

英語の映画ならもちろん英語を学べます。小学生で映画のセリフをすべて理解させるのはほとんど不可能です。そこで、子どもが印象に残った場面のセリフだけを1つか2つ選んでノートに記録してはどうでしょうか。

例えば『オズの魔法使』なら、最後のドロシーのセリフ“There’s no place like home.”(やっぱりおうちが一番)だけ、字幕表示を利用してノートに写します。

そしてそのセリフが読まれるときの役者のマネをして何度も音読します。映画を観終わった直後は特に登場人物に感情移入できます。シーンを思い浮かべながら気持ちを込めてセリフを繰り返すのがコツです。

応用で言葉の一部を置き換えてみるのもいい訓練です。“There’s no place like Disneyland.”(ディズニーランドが一番)のように子どもの考えや経験に合致した英文にしたほうが、頭に残りやすいです。

定額オンデマンドサービスが充実

映画はDVDでもいいし、定額オンデマンドサービスを利用してもいいです。大手のNetflixでは字幕や音声を切り替えられる機能があり、英語学習に重宝します。
字幕機能

レンタルだと返却日が気になります。返却も天気が悪かったりすると面倒です。その点、いつでも見られるオンデマンドサービスはとても便利です。

まだ利用していない人は最初の1か月はたいてい無料で利用できるので、この機会に試してみるといいでしょう。

どうやって子どもと楽しめる映画を見つけるか

映画が子どもの英語学習に役立つのはわかっていただけたと思います。しかし、たくさんのタイトルの中から「子どもの英語学習に適した映画」を選ぶのは簡単ではありません。

私もネットで「評判」を検索して探していた時期がありました。しかし、実際に見てみると評判ほど楽しくなかったり、英語学習の観点からは今ひとつだったりしたこともありました。

ディズニーのアニメならほぼ間違いないのでしょうが、毎回同じようなテイストだとやはり飽きてしまいます。

そこで活用したいのが「映画ガイドブック」です。

もっと簡単に英語の動画を楽しみたいなら、こちらの勉強法がオススメです

一冊揃えると超便利! 映画紹介本

限られた期間にできるだけ質の高い「子どもの英語学習に適した映画」をたくさん見るためには、やはり行き当たりばったりでは駄目です。そこで便利なのが映画ガイドブックです。

先生が薦める『英語学習のための特選映画100選』小学生編

私も1冊購入して大変便利だと感じたのは『英語学習のための特選映画100選(小学生編)』です。
英語紹介本
映画の基本情報はもちろん、英語学習の観点から役立つ情報がぎっしりと詰まっています。

執筆者は多数いますが、すべての映画は共通のフォーマットで構成されています。「セリフ紹介」「ふれあいポイント」「あらすじ」「映画情報」「おすすめの理由」「授業での留意点」「映画の背景と見所」「リスニング難易表」などです。

これらのうち「リスニング難易表」「セリフ紹介」「授業での留意点」について詳述します。

「リスニングの難易表」は便利

すべての映画には「リスニング難易表」があります。9個の評価項目があります。具体的には「会話スピード」「発音の明瞭さ」「アメリカ訛」「外国訛」「語彙」「専門用語」「ジョーク」「スラング」「文法」です。

それぞれ5段階で評価されていて、標準は3です。「スラング」は使用頻度が少ないと数字は小さくなります。「文法」はルールに忠実なほうが小さい数字です。初心者ほど数字が小さいものを選ぶとよいといえます。

この表をざっと眺めるだけで、子どものレベルに合った映画を選べるのでとても便利です。この本はもともと小学生編なので、はじめから難解な映画は含まれていません。でも作品によって難易度にかなりばらつきがあります。

「セリフ紹介」と「授業での留意点」

学校の先生用に執筆された本なので、「セリフの紹介」と「授業での留意点」が詳しく書いてあります。

ここに掲載されている情報はかなり詳細で、大人が読んでも勉強になります。何度も観たこともある映画でも新しい見方を与えてくれるので、もう一度観てみたい気持ちにさせてくれます。

全部を子どもに教えようとすると勉強臭がするので、教える内容は絞りましょう。

例えば、『アニー』の舞台は、1933年のニューヨークです。当時1929年に起こった世界大恐慌の影響で、経済はどん底でした。

1933年に米国大統領となったフランクリン・D・ルーズベルトは「ニューディール政策」と呼ばれる公共事業の拡大により失業率を改善して経済危機を乗り切りました。

中学校や高校の歴史でも登場しますが、子ども向けの映画で予習できるのは素晴らしいです。日本でも毎年人気のミュージカルなので、子どもが気に入ったら舞台を見せてあげても喜びそうです。

ちなみにアメリカの歴史上もう一人ルーズベルト大統領がいます。第26代大統領のセオドア・ルーズベルトです。映画『ナイトミュージアム』に登場します。

歌にも注目

映画と主題歌は切っても切り離せないものです。もし子どもが口ずさんだら、歌の一部でもいいので歌ってみましょう。

『アニー』ならTomorrow、『オズの魔法使』ならOver the Rainbowです。ノートに歌詞の一部を記入します。

Tomorrow, tomorrow, I love ya, tomorrow
You’re always a day away!

これだけ歌えるだけでも、子どもはうれしくなります。この部分はリフレイン(繰り返し)になっているから、満足度も高いです。上手に歌えたらほめてあげましょう。

私のおススメ映画

本の中では紹介されていませんでしたが、私が子どもと観ておもしろかった映画を一つ紹介します。たまたま観た映画で、今まで存在すら知りませんでした。邦題のつけ方を失敗しています。

「笑えて感動して泣けてくる」三拍子揃った映画『飛べ、バージル/ プロジェクトX』です。ぜひ、家族みんなで鑑賞してください。

・飛べ、バージル/ プロジェクトX

手話で人間の言葉を覚えたチンパンジーのバージルが、空軍の秘密プロジェクトに参加します。ところがそのプロジェクトは核戦争を想定したチンパンジーに爆撃機を操縦訓練させるものでした。

被ばくしてからどれくらい飛行できるかを実験するために次々に犠牲になるチンパンジーを救うために、若者2人が協力します。

冒頭で研究者がチンパンジーに言葉(英語)を教えるシーンがあります。チンパンジーにわかるように話す英語は、当然とてもわかりやすいです。英語を覚えたての子どもでも、理解できる英語が続くので楽しめます。

時代背景として、「米国とソビエト連邦が冷戦関係にあった」歴史を子どもに教えてあげる必要があります。そうしないと、なぜアメリカはチンパンジーを虐待しなければならなかったのか理解できないでしょう。

子ども向けの映画からでも深い教養を身につけられるのが映画のいいところです。

まとめ

もし子どもに夏休みを有意義に過ごさせるなら、英語の映画を観てみましょう。映画で印象に残ったセリフを英語で抜き出して、それを暗唱します。また、興味を持った生活習慣や文化などについて調べるのも大変勉強になります。

子ども向けの映画を選ぶのは難しいので、英語学習向けの映画ガイドブックを手元に用意するととても便利です。選ぶ段階ではリスニングの難易度について細かい指標があるので、役に立ちます。

その映画の時代背景や登場人物について子どもが調べるヒントを与えてあげると、海外や歴史に興味をもつきっかけになります。

観終わったあと親子で映画について語り合うのは、子どもにとってとてもいい勉強になります。親子で良い映画をたくさん見て、英語や外国の文化や歴史について学びましょう。

子どもの英語教育に熱心なお母さんへお伝えしたいこと

あなたは子どもの頃、スポーツをしていましたか? 一生懸命プレーしている試合中、親が「何やってんだ〇〇! もっと速く走れ!」と大声で叫ぶ声が聞こえてきて嫌な気分になりませんでしたか?

私は少年野球をしていましたが、チャンスで打てないときやエラーをしたときに父親の怒鳴り声を聞いて「自分の子どもには絶対にこんなことは言わない!」と誓ったものです。

あれから数十年後。自分が親になり、あれほど嫌だった親の言動と同じことを言ってしまいそうになる自分がいます。そんなときは子どもの頃の自分の誓いを思い出すようにしています。

お母さんが英語教育に熱心なのは良いことです。しかし、それはあくまでも子どもの立場からサポートすることが前提です。子どもを自分の所有物のように扱ったり、すべてにおいて自分の命令に従わせようとしたりするのは間違っています。

英語教育の最悪の失敗は子どもを「英語嫌い」にしてしまうことです。本来、学ぶことは楽しいはずなのに「嫌な感情」を抱いてしまったなら、それは大人の責任です。

子どもが自らの意志で「もっと英語を学びたい」と思えるようにお母さんはサポートしましょう。その際「何を心がけなければいけないのか」について解説します。
勉強中の母娘

英語教育に熱心なお母さんが陥りがちな誤りとは

英語教育に熱心なお母さんに「なぜ、子どもに英語を学ばせたいのですか?」と質問すると、ほとんどの回答は次の3つに集約されます。

ひとつ目は「私は英語が苦手だったので、子どもには得意になって欲しいから」です。お母さんの英語コンプレックスが子どもの英語教育に駆り立てているパターンです。

コンプレックスが強いと子どもの英語教育に熱心になり過ぎる傾向があります。その結果、子どもの適性や自主性を無視して子どもに苦痛を感じさせる危険性が高まります。いわゆる「教育虐待」です。

ふたつ目は「これからの時代、英語を話せるのは必須だから」です。一見合理的に見える答えですが、子どもが成人する20年後の世界で何が必要とされるかなど誰にもわかりません。

私が高校生のとき(1980年代後半)社会の先生が「君たちが大人になったら衛星を通じてテレビ放送されるのが主流になる時代が来るよ」と雑談していたのを覚えています。いわゆる衛星放送(BS)です。

確かにその後すぐに衛星放送は始まりました。しかし、インターネットの出現は先生には予見できませんでした。大人ができる将来予想など現在の延長線でしかなく、まったく新しい未来など誰にも想像できません。

私は人口予想以外の未来予想はほとんど無意味だと思っています。誰にも準備できるものではなく、ただ変化に対応できるようにするだけです。

3つ目の答えは「英語ができると入試に有利だから」です。確かに英検の取得級によっては受験で加点されるなどの優遇措置があったり、大学受験では英語配点が高かったりします。

しかし、子どもの適性もわからないうちから大学進学する前提で話を進めているのは変です。また、入試の配点など小学生くらいの子どもにとっては正直「どうでもいい」話です。

「自身の英語コンプレックス克服」「時代の先読み」「入試における英語偏重」の3つの答えには共通して欠けている観点があります。それは、「子どもの立場で考えていない」ことです。

最悪なのは英語嫌いにしてしまうこと

子どもの英語教育で最悪の失敗は「子どもを英語嫌いにしてしまうこと」です。親のコンプレックスなど子どもには関係のない話です。時代の変化や入試での優位性についても、子どもには理解不能でしょう。

お母さんの意見を押しつけられて無理やり英語をやらされていたら、たまったものではありません。

英語はただの言語です。英語を主言語とする国では普段語として使われています。また、世界共通語としての役割もあり、世界中の人とのコミュニケーション手段として重宝されています。「嫌いになる」対象ではありません。

英語を通じて学べることに楽しさや喜びを子どもが感じられるように、お母さんがサポートするのが理想です。

私も親なのでお母さんの気持ちはよくわかります。私は水泳が苦手で今でもカナヅチです。学生の頃、友達から海に誘われると憂鬱でした。そのため息子には「水泳が得意になって欲しい」と強く思っていました。完全なコンプレックス型です。

しかし、息子も水泳が苦手で、プール教室に通っても全然上達しませんでした。イライラして子どもに文句を言いそうになったこともあります。かろうじて我慢しましたが、子どもに私の気持ちは伝わっていたかもしれません。

幸い指導の上手な先生に恵まれて人並みに泳げるようになり、プールを楽しいと感じるまでになりました。もしあのとき私が口やかましく水泳を押しつけていたら、むしろ私が願う方向と反対の結果になったはずです。

大切なのでもう一度繰り返します。最悪なのは子どもを「英語嫌い」にしてしまうことです。

子どもの立場で考えること

子どもの最大の利点は「好奇心が強い」ことです。この特性を最大限に活用して英語学習をさせると自発的に英語を学ぼうとします。何かに興味を持ったときの子どもの学ぶパワーは相当なものがあります。

私が小学校低学年までの子どもにおすすめしている「英語絵本の読み聞かせ」は、「楽しいストーリーを読みたい」「続きがどうなるのか知りたい」という子どもの好奇心を刺激します。

このとき英語は無理にやらされる勉強ではなく、好奇心を満たすために必要なことです。だから「英語についてもっと知りたい」という気持ちに子どもを駆り立てます。

もちろん面倒な暗記もときには必要です。しかし、その対価として「楽しさ」や「喜び」を得られるとわかれば子どもの英語学習への姿勢が異なってきます。

いったんお母さんの心にある英語への思いは胸にしまっておきましょう。そして、子ども目線でどうしたら知的に楽しく学べるのかを考えてみましょう。

最高にオススメなのが、英語の動画がたくさん見られるリトルフォックスです

英語が得意なお母さんも気をつけよう

強い英語コンプレックスが子どもの英語教育に向かうとあまりいい結果につながらないのと同様に、英語が得意なお母さんが子どもを苦しめてしまうことがあります。

これに関して私にも苦い思い出があります。私は英語が得意でしたし、かつて高校の英語教員でした。ところが自分の息子に英語を教えるとなると、本当に難しいことばかりでした。

もちろん教える内容が難しいのではありません。子どもへの接し方や教え方が難しいのです。恥ずかしい話ですが、子どもにわからない文法用語を多用したり、正確さを求めすぎて怒ってばかりしていたりしたことがあります。

また答えを与えすぎて、子どもが自ら法則を見つけ出す学ぶ喜びを奪ってしまうことも多々ありました。

子どもの英語の伸びが悪く、すぐに自分の誤りに気がつきました。そこで、全面的に指導法を見直しました。本を一緒に楽しんだり、子どもに考えさせる余地を与えたり、不正確な英語でもあえて無視したりするようになったのです。

英語が得意なお母さんも、子どもに英語を教えるときには細心の注意が必要です。

デンマークサッカー協会による「子どものサッカー指導者向け10カ条」

サッカー強豪国であるデンマークのサッカー協会による「子どものサッカー指導者向け10カ条」があります。英語とサッカーは無関係に感じるかもしれませんが、子どもに大人が何かを教えるという点では共通です。

そして忘れてならないのは「デンマークが世界でもトップクラスの教育先進国」であることです。サッカー関係者だけでなく、教育に関係するすべての大人は理解しておいたほうがいい示唆に溢れています。

10カ条の紹介

  1. 子どもたちはあなたのモノではない。
  2. 子どもたちはサッカーに夢中だ。
  3. 子どもたちはあなたとともにサッカー人生を歩んでいる。
  4. 子どもたちから求められることはあってもあなたから求めてはいけない。
  5. あなたの欲望を子どもたちを介して満たしてはならない。
  6. アドバイスはしてもあなたの考えを押し付けてはいけない。
  7. 子どもの体を守ること。しかし子どもたちの魂まで踏み込んではいけない。
  8. コーチは子どもの心になること。しかし子どもたちに大人のサッカーをさせてはいけない。
  9. コーチが子どもたちのサッカー人生をサポートすることは大切だ。しかし、自分で考えさせることが必要だ。
  10. コーチは子どもを教え導くことはできる。しかし、勝つことが大切か否かを決めるのは子どもたち自身だ。

このような10カ条が発表される背景には、サッカー指導において子どもとの接し方に問題のある大人が多いからです。日本だけの問題ではなく世界中で見られる問題です。だからこそ、大人が意識して気をつけなければいけないのです。

英語に当てはめて考えてみる

サッカー10カ条を英語教育に当てはめてみると、私たち大人の振舞いについてどうあるべきかが見えてきます。

1と5は、英語コンプレックスを持つお母さんには特に気をつけてもらいたいです。子どもには子どもの人生があるので、自分の意のままにしようとしてもいずれ破綻します。

私は4・6・9が心に刺さりました。つい答えを与えることで満足してしまい、子どもの頭で考えさせる機会を奪っていたからです。正しいことを伝えることは簡単ですが、本当に子どものためになるかどうかは真剣に考えなくてはいけません。

スイスサッカー協会の保護者むけポスター


おとなのみなさんへ

 

「ぼくたちのゲームを観に来てくれて、そしてぼくたちのこと、ぼくらのサッカーのことを気にかけてくれてどうもありがとう」

 

今日はぼくたちの1日

 

「ぼくたちは、サッカーをするのが楽しくて大好きなんだ。もちろん、ぼくらのうちのだれが勝っても楽しいんだ。でもぼくらにとって一番大事なのはプレーすることなんだよ」

 

だから、プレーをさせておいてください

 

「大声でさわがないでね。相手のチームや応援に対してもフェアな態度をとってね。ミスをしたからって、いちいち言わないで。そんなことを言われたらがっかりだし、言われたからってそう簡単にうまくできるようにはならないんだ」

 

すべてのこどもより

これはスイスサッカー協会が子どものサッカーを観戦する保護者むけに掲示したポスターの内容です。すべての大人はかつて子どもだったのに、いつの間にか当時の気持ちを忘れてしまいます。上記のポスターの内容は私が子どもの頃親に言われて嫌だったことそのものです。

私は少年野球で内野ゴロを打ち試合に負け、父親にけなされました。そのとき「大人になったら俺はこんなこと子どもには言わないぞ」という記憶がよみがえってきました。あなたにも一つくらい同じような経験があるはずです。

自分の子どもには同じ思いをさせてはいけません。

「何のために学ぶのか」の原点を忘れずに

本来「学ぶこと」は楽しいはずです。できなかったことができるようになったり、知識が膨らむと見える世界もグングン広がったりするからです。初めて自転車に乗れるようになって、生活圏が急に広がったときの感覚です。

人間の究極の目的は「幸せに生きること」です。AI(人工知能)の出現によって翻訳機能が完成され英語学習は不要になるという意見があります。本当かもしれないし、違うかもしれません。

しかし、AIには人間の学ぶ喜びを妨げることはできません。あらゆる分野で人間の能力を凌駕しても、知識欲は減退しないはずです。速く走る車やバイクが登場しても、陸上競技で速く走るために一生懸命練習する選手が消滅しないことを見れば明らかです。

私など大人になっても英語の歌の歌詞が聴き取れたり、自分で口ずさめたりすると嬉しいと感じます。翻訳機では決してこの喜びは味わえないでしょう。

人間の本能でいろいろなことを知りたいし、何かができるようになると幸せを感じます。お母さんが子どもの英語学習をサポートするときの接し方を考えるとき、子どもが「学ぶことの喜び」を感じられるように配慮しましょう。

まとめ

子どもに英語を学ばせたいと願うなら、子どもの立場で考えてあげないと「英語嫌い」になってしまう確率が高いです。英語は言語であり、そもそも「嫌い」になる対象ではありません。

例えば親子で英語絵本を楽しんでいて「続きを知りたい」欲求を満たすために学ぼうとするのが、本来のあるべき姿です。お母さんの考えや願望はもちろん理解できます。しかし、それは心の中にしまっておくほうが賢明です。

デンマークの「子どものサッカー指導者向け10カ条」を紹介しました。ひとつひとつ熟読すると、ほとんどのお母さんは一つくらい反省点が見つかるはずです。

「学びたい」「知りたい」という感情は、人間の基本的な欲求のひとつだと思います。そこを刺激してあげられるようにサポートするのが理想的な「英語教育に熱心なお母さん」の姿です。

私も一人でも多くの子ども達が「英語っておもしろい!」と感じてくれるように、お手伝いできればと考えています。一緒に頑張りましょう。

知る人ぞ知る「英語発音検定」を受験しました

「英語の発音が悪いので、子どもの前であまり英語を話せない」と発音に苦手意識を持っているお母さんはいませんか? 発音に自信のない日本人はかなりいますが、私は「あまり気にしなくてもよい」と感じます。

日本人が目指すべきは「相手がストレスなく聴き取れる」発音を身につけることであり、ネイティブのような発音ではありません。あなたの英語の発音が悪くても、その後の学習過程で他人の英語をたくさん聞くので心配し過ぎなくても大丈夫です。

ただ、これまで自分の発音を客観的に測定してもらったことのあるお母さんはほとんどいないでしょう。また、子どもの英語を聞いていて「何か違う」と感じていても、どこをどのように改善したらいいのかよくわからないお母さんもいるはずです。

今回紹介するのは「英語発音検定試験」です。初耳のお母さんがほとんどと思いますが、2012年に発足した国際英語発音協会が主催する英語の発音に特化した試験です。

内容的に英検3級レベルから受験可能です。英語学習中の子どもはもちろん、子どもに絵本を読み聞かせ中のお母さんも一度受験しておくと、その後の発音改善の大きなヒントを得られます。

せっかくなので私も「英語発音検定試験」を実際に受験してみました。その体験記と併せて「英語発音検定試験」について解説します。

英語発音検定とは

ほとんどのお母さんは「英語発音検定試験(以下、発検)」について聞いたことがないはずです。実は私も知人に教えてもらうまで、一度も聞いたことがありませんでした。

英検やその他の検定試験と比較して、発検は「進学や就職で有利になるもの」ではありません。外に向けてアピールするのではなく、「自分の英語の発音をより改善するための指針を示すもの」です。

知名度の低い検定試験なので、はじめに概要を説明します。

主催団体

発検の主催団体は「一般社団法人 国際英語発音協会(English Pronunciation Association)」です。2012年に設立された比較的新しい団体で、ホームページを見るととてもシンプルです。

英語発音検定

大阪に所在地があり、顧問の中には大手予備校のカリスマ講師として有名な安河内哲也さんがいらっしゃいます(俳優の大泉 洋さんそっくりです)。

設立の趣旨

国際英語発音協会サイトのトップページに設立の趣旨が掲載されているので、一部を引用します。

主たる活動は英語発音検定試験(EPT)の実施及び英語発音指導士®の養成、認定です。 近年、英語教育の中でもスピーキングの重要性がクローズアップされています。しかし、そのスピーキングの基礎となる「英語発音」、「イントネーション」、「相手に通じるかどうか」のレベルを確認する手段が限られていました。結果として、自身の弱点を理解し、レベルアップのポイントを見つけることが難しいという声を耳にします。 当協会の発音検定は「ネイティブスピーカーにとっての聞き取り易さ」を出来るだけ客観的に判定し、受験者の長所、短所をお示しすることに主眼をおいています。 世の中に英語発音のメソッド、指導者は数多く存在します。しかし、指導者の発音レベル、指導方法について一定レベルに達した方を指導者として認定する機関はありませんでした。 当協会は特定の発音メソッド、指導方法を推奨する機関ではありません。一定レベルの英語発音を備えた方を対象に研修を通じ英語発音指導の要領を理解いただき、研修終了者を英語発音指導士®として認定します。

国際英語発音協会サイトより一部引用

「検定試験の実施」と「英語発音指導士の養成・認定」が活動内容の2本柱です。英語教育に携わる人以外、後者は関係ありません。

確かに英語の発音だけにフォーカスして、指導者の発音レベルや指導法について認定する機関は他に聞いたことがありません。

小学校でも英語教育が実施されている中で、小学校の先生もこの資格を取得しておけば保護者も安心して英語教育を任してくれるようになるかもしれません。何よりも自分が自信を持って大きな声で英語を話せるようになるのがメリットです。

試験の形態

肝心の検定試験には、3つの受験形態があります。

*会場受験

東京または大阪、いずれかの会場で決められた時間に受験をします。

*オンライン受験

会場受験が難しい人のためのSkypeを使用した試験です。

*団体特別受験

書類審査で事前に認可された団体が指定した日時や会場で受験できるシステムです。最低5名から可能です。

会場受験 オンライン受験 団体特別受験
場所 東京または大阪 自宅で受験可能 団体が指定
日時 協会が指定した日時 リストから自分で選ぶ 団体が指定
費用(税込)

*前払い

4,860円

詳細審査は9,720円

4,860円

詳細審査は9,720円

4,860円
必要なもの 身分証明書 身分証明書 身分証明書
備考 年3回開催 パソコン、ヘッドセット、インターネット環境が必要

PayPalによるカード決済も可能

5名以上から受験可能

上記の表で確認できるとおり、オンライン受験が最も手軽でおすすめです。試験時間は5分強で終了するので、そのためにわざわざ遠方から会場まで移動するのはおっくうです。

2つの試験と評価について

「発検(English Pronunciation Test:EPT)」は初見文、課題文などを音読する形式のテストです。「〇級合格・不合格」ではなく、100点満点で測定されます。

2018年2月からは英語初心者のために「EPT Basic」が開始されました。英検3級程度のレベルなら、EPT Basicを選びましょう。

EPT EPT Basic
対象レベル 150文字ほどの英文を初見で読める力のある人 例題の単語と簡単な英会話が読める方
問題1 簡単な英語の質問に答える 簡単な英語の質問に答える
問題2 アルファベットの読み上げ アルファベットの読み上げ
問題3 短い会話文 単語ペアを15個音読
問題4 初見の英文(100ワード強)を30秒間黙読してから音読 単語15個を音読
問題5 課題文3つのうちから1つを指定されて音読 会話文を音読
問題6 フレーズを10個音読

ホームページから評価ポイントを引用してみます。

特定地域のアクセント(アメリカ英語など)に限定せず、いかに多くの聞き手にとって分かりやすく自然に発話されているかを、個々の発音、リズム、イントネーションなどの側面から多角的に判定します。試験終了後にはスコアと共にコメントを付けてお送りしますので、今後の学習に役立てることができます。

 

国際英語発音協会サイトより引用

つまり、ネイティブのように発音することではなく、多くの聞き手にとってわかりやすく自然に発話されているかが評価されます。国際語として英語を使うときには、とても大切な観点でありきちんとツボを押さえていると感じました。

###英検3級ならEPT Basicがおすすめ

子どもが英語を学んで小学校6年生までに英検3級を取得できたら、大成功といえるでしょう。一般的に英検3級は中学校卒業時に到達しているのが望ましいとされているレベルです。

普通の小学生にはハードルが高いですが、もしこのレベルに到達しているなら一度EPT Basicを受験してみることをおすすめします。

発音に関しては大人になってからよりも、若いうちに修正したほうが圧倒的に短時間で済むからです。目的はノンネイティブの人々にもきちんと伝わる英語の発音を身につけることです。

中学に行く前に客観的に自分の発音の評価をしてもらえば、早い段階でより理想的な発音ができるようになります。

EPTでもEPT Basicでも、スコアと一緒にコメントがつくので学習に役立てることができます。より詳細なレポートが欲しい場合は、「詳細審査」が可能です。ただし、受験料は2倍になるので普通の学習者には不要でしょう。

オンライン受験体験記

知人から「発検」の存在を聞き好奇心がムクムクと沸き上がった私は、すぐに申し込みを決意しました。EPTの詳細審査で受験料は9,720円でした。詳細審査にしたのはより細かいレポートが欲しかったからです。

会場受験でも良かったのですが、時間節約のためにオンライン受験を選びました。

予約方法

国際英語発音協会のサイトから受験予約はできます。支払いは口座振替またはPayPalの決済システムを利用してクレジットカードでの決済も可能です(オンライン受験のみ)。

申込と支払いが終わると登録したe-mailのアドレスに「発検受験受付完了のお知らせ」のタイトルでメールが届きます。そこに指定されたスカイプ名にリクエストするように指示がありました。

スカイプを使用する

オンライン英会話と同じく、Skype(スカイプ)というテレビ電話機能を持つアプリケーションを使用します。そのためインターネット環境とヘッドセット(下の写真参照:またはマイク付きのイヤホン)は必須です。

画面共有により問題文を見る都合上、画面の小さいスマートフォンでの受験はやめたほうがいいです。最低でも画面の大きなタブレットかパソコンが必要です。

スカイプでは「音声だけで会話をする」か「映像と音声で会話をするか」選べます。発検では必ず映像+音声を選びます。受験生から試験官の顔は見えませんが、身分証明書の提示や画面共有機能を使うために映像が映るようにしなければいけません。

準備

数日前から3つの課題文の音読を練習しました。このうちの1つが出題されます。難解な英語は一切ありませんが、数字がところどころに登場したり、日本人に馴染みの薄い固有名詞(アメリカの都市名など)がちりばめられていたりします。

国際英語発音協会のサイト上には米国人男性と英国人女性による録音のサンプルがそれぞれの課題文にあります。私は米国人男性の音声を参考にして、それぞれ4回ずつ音読練習しました。これを3日間続けたので、ひとつの課題文につき12回練習したことになります。

普段なら問題なく読める英文です。しかし「パーフェクトに読みたい」気持ちが強くプレッシャーがかかるので、簡単な箇所でも詰まることがあります。モデルの音読スピードは比較的ゆっくりでした。それに合わせて飛ばし過ぎないようにセーブしながら練習しました。

当日

試験10分前にスタンバイを完了しました。始まるまでの時間は長く感じます。開始時間ちょうどにスカイプにコールが入りました。女性の声が聞こえ、身分証明書の提示を求められました。カメラに免許証を近づけて終了です。

試験は画面共有(双方で同じ画面が見られる)機能を使って、問題文を提示されます。始めは簡単な英語の質問に英語で答える問題です(ごく初歩レベルです)。名前と今日の日付は高確率で質問されるので、間違えないようにしましょう。

アルファベットがランダムに並べてあるものを一文字ずつ読みあげる問題は、簡単すぎてかえって緊張します。アルファベットを真面目に音読する機会はほとんどないので、脇汗が流れるのを感じました。

その後対話文を読みますがこれは難なく終了。疑問文のイントネーションを確認しているのでしょう。

続いて初見の英文の音読です。100文字強の長さの文章を最初に30秒黙読します。その後、音読を開始します。

「100文字を30秒で黙読する」を1分間で換算すると200文字のペースで黙読しなければならないことになります。かなりの英語上級者でないと最後まで読み切るのは不可能なペースです。

黙読の段階で確認しておくことは、「何の話か」「読みづらい単語はないか」くらいが精一杯です。

意識して大きめの声と落ち着いたスピードで音読することを心がけました。目立った失敗はなかったので、「実力は出せたかな」と感じました。

課題文は準備までに練習を積んだので問題なく読めました。

「結果は2週間以内にメールでお知らせします」と伝えられて、試験は終了しました。所要時間は6分程度でした。あっという間です。

こんなにすぐに終わるなら会場受験するメリットを感じられません。オンライン受験にして正解でした。

結果発表

受験からピッタリ2週間でメールにPDFが添付される形で結果が届きました。
発音検定スコア

スコアは85点(ハイレベル)。あと1点取れていれば「指導者レベル」だったので残念です。
発音検定スコアの見方
私はオプションで詳細審査をつけたので、細かいレポートがついてきました。

これによると、「母音のアの区別があいまい」なのと「アクセントの箇所をもう少し長めに発音する」の2点が指摘されていました。薄々は自分の弱点を感じていましたが、他の人からキチンと指摘されたので今後の参考になりました。

ちなみに、英検1級の2次試験に合格したときの成績表では発音の項目は9/10でしたので、かなり正確に評価されていると感じました。

音読トレーニングをしていれば、発音やイントネーションは上手になります

英語発音検定の活用方法

英語発音検定の受験動機は主に2つあります。ひとつは学習者が英語の発音を良くするヒントを得るためです。子どもやお母さんが受験するのはこのケースです。

もう一つは、主に英語を教える立場の人が「英語発音指導士」の資格取得を目的に受験するケースです。90点以上のハイスコアを出した人だけが受講できる講座を受けたのちに資格を得られます。

英語が得意な子どもが受験した場合の活用方法

英検3級相当の子どもが「発検」を受験した場合、スコアそのものに一喜一憂する必要はありません。そうではなくて認定証に掲載された「通じにくい音」「間違って発音されている音」を自覚できることに価値はあります。

th

例えば上記の記号に赤字が入っていれば、thanks, three, Thursdayなどの発音が苦手であることがわかります。今後はこの音を意識して矯正していけば効率良く発音を改善できます。

「子どもに英語絵本の音読をしてみたい」というお母さんにも「発検」はおすすめです。直したほうがいい発音のポイントが客観的にわかれば改善できるからです。また、自己評価よりもよいスコアであれば自信につなげることができます。

ちなみに、スコアが86点以上は「指導者レベル」、71~85は「ハイレベル」、56~70「英語発話学習者平均レベル」とサイトで紹介されています。

子どもの受験者とお母さんなら「56~70点を目安に」頑張ってみましょう。

まとめ

英語関連の資格試験としてはかなりマイナーな「英語発音検定試験」は、比較的新しく発足した「国際英語発音協会」が主催しています。サイトでも述べられている通り、ネイティブのような発音ではなく、「誰にでも通じる発音」を目標に設定されています。

受験には「会場受験」「オンライン受験」「団体特別受験」の3つの形態があります。個人で受験するなら私のおすすめは「オンライン受験」です。理由は日時が選べて自宅で受験できるからです。

試験は受験者のレベルに合わせて、「EPT」または「EPT Basic(初心者向け)」のどちらかを選択します。

私は前者を実際に受験してみました。簡単な文章でも、読み間違えに細心の注意を払うので意外と緊張します。試験時間は6分程度であっという間に終了します。結果は2週間以内に通知されます。

認定証には受験者の発音の弱点や誤りにチェックが入るので、今後の自分の発音矯正にとても役立ちます。子どもだけでなくお母さんも受験してみると、子どもの前でも堂々と英語を発音できるようになるのでおすすめです。

発音は意識しないと改善されません。「発検」を受験することで、自分の発音に意識を向けるきっかけになります。気軽に受けられる試験なので、子どもと一緒にお母さんも受験してみましょう。

小学生向けおもしろい英語なぞなぞでボキャブラリーと社交力アップ!

子どもの友達が家に遊びに来ると、お母さんはその子と話をする機会があります。そのときに楽しく子どもと会話ができているでしょうか? つい、一方的に質問していませんか?

私なら「なぞなぞ」で盛り上げます。例えば「おやつ食べる?」と聞いておいて、「なぞなぞに正解したらあげるよ」と盛り上げます。ほとんどの子どもはこれに喰いついてくるので、知っているなぞなぞをいくつか出します。

子どもはなぞなぞに答えられればうれしいし、できなければ悔しいと感じます。でも同時に「だまされた爽快感」を覚えています。だから大人と子どもの心理的な距離が近くなり仲良くなれるのです。

英語でもいくつかなぞなぞをストックしておくと、外国人と交流があるときにとても重宝します。インターネットで検索するとたくさんヒットするので、お気に入りのものをプリントアウトしておきましょう。そして子どもに出題してみましょう。

少しくらいわからない単語があっても子どもは夢中になって読もうとします。そのため英語の学習にも「なぞなぞ」は適しているといえます。

大人の私が3回も引っかかった英語なぞなぞ!

英語の「なぞなぞ(riddles)」と聞くと必ず思い出す女の子がいます。マレーシアのインター校に息子が通っていたとき同級生だったキャリーです。

読書ボランティアをしていた関係で、学校で私を見かけるとときどき話しかけてくれました。頭も良くスポーツ万能の少女でした。そんな彼女はなぜか私に「なぞなぞ」を挑んでくるのです。

不敵な笑みを浮かべながら出題してきます。「大人が引っかかるわけないだろ」と甘くみていましたが、結果的に私は3回も引っかかってしまいました。

私が “You got me again!” (また、だまされた!)と悔しそうにすると、嬉しそうに去っていくのでした。この記事を読んでくれているお母さんにも同じ問題をだすので、チャレンジしてください。

*「Year 3」と書いてあるのは、私に出題したときのキャリーの学年です。

正解は記事の一番下(まとめのあと)に掲載します。

英語なぞなぞ:Year 3 編

Question 1: Do you know a pen with no body and no nose?
(胴体と鼻がないペンを知っている?)

ここでのnoseとはペン先のことです。

body, nose

英語なぞなぞ:Year 4 編

Question 2: Once upon a time, there was a cat which fell into a river.  A black cat saved the cat from drowning.  At the riverbank, what did the cat say to the black cat?
(むかしむかし、川に落ちたネコがいました。黒ネコはそのネコがおぼれているのを助けました。河岸でそのネコは黒ネコに何と言ったでしょうか?)

a black cat and a white cat

save A from -ing:  Aが~するのを救う
riverbank: 河岸

英語なぞなぞ:Year 5 編

最後は暑い日差しの中、ベンチでリラックスしていたらキャリーに不意を突かれた問題です。

Question 3:

Carrie: Hi.  Say exactly what I am saying. (私が言うとおりに言ってみて)
私: Okay. (いいよ)
Carrie: Blue, blue, blue.
私:Blue, blue, blue.
Carrie: Blue, blue, blue, blue, blue.
私:Blue, blue, blue, blue, blue.
Carrie: What is the colour of the sky? (空の色は何色?)
私: Blue?
Carrie: Ha, ha!
私: ?

blue sky

・息子も引っかかる

上記3つの問題はすべて家に帰ってから息子に試したところ、すべて引っかかりました。親子でキャリーにだまされてしまいました…。

なぞなぞの楽しいところは、だましてもだまされても「爽快感」が得られるところです。最初にだまされると、そのなぞなぞを覚えて他の誰かに試してみたくなります。

その際は問題文をまるごと暗唱しなければならないので、英語の勉強にもなります。

子どもがハマる! リスニング学習法を学ぶにはこちらの動画セミナーをご覧ください

なぞなぞに挑戦しよう

私の持ちネタは先ほどの3つで終わりです。もしお母さんがもっと他にもなぞなぞを知りたいなら、インターネットで「riddle for kids」と検索すると子ども向けのなぞなぞサイトがヒットします。riddleは英語で「なぞなぞ」のことです。

そのうちのひとつである「100 Brain Teasers with Answers for Kids and Adults」から、子ども向けのriddleを5つ引用します。teaseは「からかう、いじめる」の意味なので、brain teaserとは「脳をいじめるもの」の意味です。「なぞなぞ」の別の言い方です。

それぞれ必要とされる能力が異なるので、子どもと一緒に考えてみましょう。

Q1. 一般常識が問われる英語なぞなぞ

There are three houses.  One is red, one is blue, and one is white.  If the red house is to the left of the house in the middle, and the blue house is to the right to the house in the middle, where is the white house?
(3軒の家があります。ひとつは赤、ひとつは青、もう一つは白です。もし赤い家が真ん中の家の左で青い家は真ん中の家の右なら、白い家はどこでしょうか?)
In Washington, D.C.! (ワシントンD.C)

紙に絵を描いてまじめに考えていたら絶対にできません。「ホワイトハウスがアメリカ大統領の家である」一般常識がないと正解できません。

Q2. とんちが問われる英語なぞなぞ

You are in a cabin and it is pitch black.  You have one match on you.  Which do you light first, the newspaper, the lamp, the candle, or the fire?
(あなたは山小屋にいて、真っ暗です。あなたは何に最初に灯りをともしますか? 新聞紙、ランプ、ろうそく、それとも暖炉ですか)

pitch blackはpitch darkともいわれて「真っ暗」の意味です。
最後のfireはかまどのことです。

You light the match first! (マッチが最初)

ここでのlightは「火をつける」という意味の動詞です。

Q3. 文法力を問われる英語なぞなぞ

Who is bigger: Mr. Bigger, Mrs. Bigger. Or their baby? (どちらが大きいでしょうか。ビッガーさん(夫)かビッガーさん(妻)か。それとも彼らの赤ちゃんか。
The baby, because he is a little bigger. (赤ちゃん。なぜならちょっとだけ大きいから)

赤ちゃんだから「a little」をつけると、a little biggerで「少しだけ(より)大きい」の意味になります。だから、Bigger夫妻よりも大きいのです。

Q4. 熟語力を問われる英語なぞなぞ

A farmer has 17 sheep and all but nine die.  How many are left?
Nine.

これは意外と難しいです。ポイントはall butには2つ意味があるところです。

ひとつ目は「ほとんど」の意味。だから、「ほとんど9匹が死ぬので、17-9=8匹」となり、残りは8匹です。

もう一つは「~を除いてすべて」の意味です。だから、「9匹を除いてすべて死ぬ」ので残りは9匹です。

Q5. 常識がかえって邪魔になる英語なぞなぞ

In a year, there are 12 months.  Seven months have 31 days.  How many months have 28 days? (1年には12か月あります。7か月は31日まであります。28日あるのは何か月ありますか?)
They all do. (全部の月にある)

theyはmonthsのこと。すべての月には28日はあるので、これが答えです。

つい夢中になって読んでしまうのがriddleのいいところ

「なぞなぞ」の良いところは、時間を忘れてつい読んでしまうことです。英語を読むとなるとつい「勉強モード」になってしまいます。でも、なぞなぞなら楽しみながら読み進めることができます。

私も小学生のときなぞなぞの本を借りてきて、兄弟に出題して相手が引っかかると喜んでいました。お母さんが出題して子どもをひっかける。次に子どもがその問題文を暗唱して、お父さんや兄弟に出題してみる。お父さんや兄弟がだまされたら、子どもは大喜びです。

問題文では疑問文が使用されているので、疑問文を習ったばかりの子どもの練習にもなります。特にWh-やHowから始まる疑問文では、「何を聞かれているのか」「どのように答えるのか」を考えなければいけません。

英語なぞなぞをいくつか知っておくと、社交の場でも役に立つ

「なぞなぞ」をいくつかを覚えておくと、意外な場面で役に立ちます。例えば、海外に行ったとき同じ年代の子どもと仲良くしたい場合、なぞなぞをいくつか知っておくだけで仲良くなれます。

海外旅行に行ったとき、プールサイドで遊んでいる子どもの相手をしてあげるときに役立ちます。あまりやりすぎると“Mommy!”と親に言いつけに行くのでほどほどにしておきましょう。

まとめ

なぞなぞは出題しても解答しても楽しめます。英語ではなぞなぞのことはriddleといいます。インターネットではたくさんのなぞなぞが紹介されているので、お母さんは子どもに出題してみましょう。

一口になぞなぞと言ってみても、正解するためには一般常識や英語表現などを知っておく必要があります。雑学も増えるし英語の語彙力もアップするのでおすすめです。

お母さんから子どもに出題したら、子どもはその問題文を暗唱します。兄弟やお父さんに出題すれば今度は自分がだます側になれるのでモチベーションがアップします。

また、外国人の子どもと触れ合う機会があったときに英語でなぞなぞを覚えておくと仲良くなるチャンスが広がります。英語教室の先生に出題しても楽しそうですね。

キャリーのなぞなぞ正解と解説

Q1. Nobody knows. (誰にもわからない)

日本語に訳すと意味がわかりません。英語で読むと、no body, noseと同じ発音になります。

Q2. Meow. (にゃーお)

まあ、確かに。

Q3. What is the colour of the sky?

「同じことを繰り返して」と言われているので、まともに質問に答えた私が負け。

そういえば昔、「ピザって10回言ってみて」のあとヒジを指して「じゃあここは?」と問われて、「ヒザ!」と答えて恥ずかしかったことを思い出しました。

小学生にも使える!「中学英語教科書」の実力とは?

学生の頃、私は英語教材マニアでした。目新しい「〇〇メソッド」のようなタイトルを見つけたらほとんど何も考えずに購入しました。そして使用してしばらくすると、気づくことが2点ありました。

ひとつ目は、どんな教材にも「一つくらいは役立つ情報がある」ことです。その中のいくつかは今でも私の英語学習に影響を与えているものもあります。1500円くらいの本で一生使える情報が得られるなら悪い話ではありません。

そして、もうひとつ気づいたのは「中学の英語教科書は完成度が段違いである」ことでした。義務教育のときに「無料」で配布された教科書のほうが、自腹で購入したものよりレベルがはるかに高いのです。
中学英語教科書

通常高いお金を払えば払うほど「良い買い物をした」バイアス(思い込み)がかかります。「学校の教科書より、最新のこの〇〇メソッドのほうが優れている」と思いたいのが普通です。それにもかかわらず、学校教科書のほうが優れていると認めざるを得ないのです。

私がこのことを痛感したのは、15年前にベトナム語を勉強しようとしたときでした。当時はわかりやすいテキストがほとんどなく、大型の書店に行っても辞書と参考書合わせて10冊未満でした。

マイナー言語のテキストや辞書は、巨大な英語市場の教材と比べると、内容も作り込みのレベルもお話にならないほどお粗末です。英語教科書に該当する存在は、マイナー言語にはありません。

今回の記事では中学校で使用されている「英語教科書」が抜群に優れている理由を説明します。小学生の子どももすぐに中学に入学します。

子どもは無料で配られる教科書にありがたみを感じなくなっています。そんなときにはお母さんが「実は英語教科書っていうのはね…」とその価値を説明してあげましょう。子どもの英語への取り組み姿勢に影響することは間違いありません。

文法を体系的に学ぶ教材としては最高峰

学校英語教育を批判するときにやり玉にあがるもののひとつは「英語教科書」です。

「人生で一度も使ったことないThis is a pen.を教えている」とか「ネイティブでも使わない古い表現がある」という内容です(ちなみに私はThis is a pen. を実際の場面で一度だけ使いました)。

このような批判を聞くたびに私は「わかってないな」と感じます。もちろん教科書は完全無欠ではありません。しかし、英語教科書の完成度は語学教材において間違いなく最高レベルです。

英語以外の言語に興味を持って学習したことのある人ならわかりますが、英語教科書のレベルに達している教材は見たことがありません。

では、どのような点において学校の英語教科書は優れているのかについて具体的に説明します。

語彙・文法が「積み上げ式」

まず、「語彙・文法が積み上げ式である」ことです。例えばLesson 3の内容を見ると、Lesson 1~2までの内容と、今回新しく学ぶ内容だけで構成されています。それ以外のところからは単語も文法も使われていないのです。

英語教科書イメージ

これは算数の教科書の発想に似ています。足し算・引き算を学んだあとに、掛け算を学びます。足し算を学んでいる部分に、掛け算が混ざることはありません。

イギリスの有名な出版社から出ているESL(第二言語としての英語)教材を見ると、be動詞の疑問文のところにはいきなり疑問詞(What, Were, Whoなど)が登場します。これは日本の教科書ではありえません。

日本の教科書は学習者が一歩一歩学べることに重点を置いています。一方、海外の教材では内容を重視していて、そのターゲットの文法が自然に使われるシチュエーションを優先しています。そのため、純粋に積み上げ式で構成するのはほぼ不可能です。

どちらの教科書を使っても成果は出ているので、一概に白黒つけられるものではありません。

しかし、世の中の英語教材のほとんどは「シチュエーション型」で構成されていいます。積み上げ式で一歩ずつ英語を理解したい人にとっては、日本の英語教科書は唯一無二の教材です。

完璧に正しい

文部科学省の検定をパスしている教科書の編集には、多くの大学教授やネイティブが携わっています。彼らの目で何十ものチェックをパスしているので、使用されている英語表現に間違いはありません。

使用されている表現の中にはたしかに一般的ではない表現もあります。例えば、中学1年の英語教科書の最初にはおなじみの会話が掲載されています。

How are you?
I’m fine, thank you.  And you?

ネイティブにこの表現を見せると、「ダサい」とか「野暮ったい」と感じます。それを知った日本人は「もっとイケてる表現を教えるべきだ」と主張します。

How are you?
I feel good, because….

How are you? に対する答え方は複数考えられます。I feel good, because…. と答えれば、確かに自然な会話になるでしょう。しかし、一般動詞feelをSVCで使用するのは中2から学習します。さらにbecause(接続詞)もまだ学習していません。

自然でイケてる表現をストレートに掲載することが本当に英語初心者のためになるでしょうか?

英語教科書の編集に関わっている人達は「専門家」です。この英語があまり自然ではないことくらい百も承知です。しかし、彼らは生徒達が最もシンプルな形で英語の挨拶を覚えられるように配慮しているのです。「基本形」を覚えておけばあとで応用も効くので、まったく無駄ではありません。

例えるなら、赤ちゃんに最初に食べさせる離乳食のようなものです。離乳食を大人が食べてもおいしいとは感じません。しかし、衛生的で消化にいいもので添加物がほとんどないものです。赤ちゃんには最適です。

成長に合わせて少しずつ大人が食べるようなものを口にしていきます。物事には段階があるのです。

このことを知らずに「不自然だ」という理由だけで教科書を批判するのは、的外れと言わざるを得ません。

周辺教材が充実

中学生の頃、「教科書ガイド」にお世話になったお母さんは多いはずです。和訳が載っているのでそこに価値を感じて購入していたのではないでしょうか。

しかし、最近の英語の授業では和訳を求めるような場面はすっかり少なくなりました。では、「教科書ガイド」の価値は無くなったかといえば、そんなことはありません。

とにかく解説が豊富で、想定される質問のほぼすべてを網羅しています。大人で英語をやり直したいなら、教科書は使わずに「教科書ガイド」だけで学習を進められるほどです。

ひとつだけ難点を挙げると、読み方(発音)がカタカナ表記であることです。ここはやはり、最初の段階で英語の音で正しく覚えないと、永遠にカタカナ読みの呪縛から逃れられません。

わかりやすさを優先しすぎて(カタカナ表記)、学ばせるべき課題(正しい発音・フォニックス)から目をそらしすぎです。

もうひとつ必要なのはCDです。「教科書ガイド」と別売りになっていて、ふたつ揃えると5000円近くしますが、これは絶対に買ったほうがいいです。

よく「日本人英語教師の発音は悪い」と批判されています。それなら付属CDを聞けばいいだけです。CDやテープが存在しなかった大昔と違って簡単に解決できるのに、批判する意味がわかりません。

本文の音読部分だけ再生デバイスにコピーしておくと、より手軽に再生できます。できればスマホの再生アプリを利用して再生速度を変えられるようにしておくと、音読練習に便利です。

最後に「ワークブック(教科書に準拠した文法の問題集)」を揃えれば、教科書だけでは不足する問題数を補えます。ワークブックは学校の副教材で購入することが多いです。

余談ですが、英語教師が定期テストを作成するときは、ワークブックを参考にすることが多いです(私はそうでした)。毎回、オリジナルの問題は作るのは本当に面倒です。だからワークブックの問題をちょっとだけアレンジして作成するのが普通です。

生徒の立場から見れば、ワークブックをしっかり学習するだけで定期テスト対策は充分です。

このように教科書を中心として、「教科書ガイド」「付属CD」「ワークブック」の3点を揃えると、文法・語法の解説、ネイティブの音声、充実した文法問題が揃います。真剣に学習すれば、わからないことはほぼゼロの状態になります。

小学5年生以上の子どもがいて英語を本格的に学び始めているなら、中学1年の教科書とCDを揃えておくと、何かと役に立ちます。中古の教科書はAmazonでも購入できます。

英語教科書の欠点

上記のようにほとんどパーフェクトな英語教科書ですが、実は欠点もあります。その欠点は、学習のしやすさとトレードオフ(あちらを立てればこちらが立たず)の関係にあります。実際に英語教科書にはどのような欠点があって、それを補うためにはどうすればいいのかを解説します。

内容がつまらない

英語教科書の最大の欠点は「内容がつまらない」ことです。主な理由は、積み上げ式の構成を重視しているため、「使用できる語彙や文法に大きな制約」があります。その条件で中学生の知的好奇心を駆り立てる内容にするのは困難を極めるからです。

以前海外にいたときに、私の息子はチューター(家庭教師)に一時期お世話になったことがありました。彼女はときどきイギリスのESL教材を使用していました。

ある日、手渡したコピーにはセリフのない劇画調のマンガが印刷されていました。内容は「誘拐事件が発生。犯人が居眠りしている間に子どもは逃げ出して、犯人は逮捕される」というストーリーでした。

息子はセリフを考えて英語で書いていきます。最後に、すべての話の要約を英語でまとめて、先生の添削を受けていました。私は最初から最後まで隣で見ていましたが、とても興味を惹かれる内容で時間が短く感じました。

ただ、「英語習いたての子どもにransom(身代金)とかkidnap(誘拐をする)という単語は難しすぎるのでは」とも感じました(彼女は教え方が抜群に上手で、結果的には子どもは覚えていたので驚きました)。

一方、日本の教科書は本当につまらないです。昔に比べればイラストは現代風になっているし、自然なシチュエーション設定がされています。それでも、内容のほとんどは中学生の知的好奇心を喚起するものとは程遠いです。

例えば疑問詞(What)を学習するページを和訳すると、およそこのような会話が繰り広げられます。

A: 今朝、何食べた?
B: トーストと牛乳です。あなたはどうですか?
A: 僕はごはんとみそ汁です。
B: へえ、そうなんだ!

正直、どうでもいい内容です。中学生同士で他人の朝食の話をするなら、「輸入したプロテインを飲んでいる」「スーパーモデルが飲んでいるスムージーを飲んでいる」くらいの内容でないと話題にはなりません。

ほとんどの中学生にとっては、教科書本文は退屈極まりない内容です。しかし、先述のとおり積み上げ式の制限を考えると、これだけの会話を成立させるだけでも大変です。

退屈さは、英語学習の大敵です。やはり、簡単な英語で書かれた読書を続けながら、自分の精神年齢に少しでも近い読書を目指すことが大切です。この部分は教科書に期待せず、自分で開拓するしかありません。

教材のおもしろさと自然な英語を追及するなら、こちらの教材を使った学習がオススメです

文量が少ない

教科書は授業をスムーズに進めるために、構成が練られています。中学校の授業時間は50分です。つまり、この時間内に新出語句を扱い、本文を読んでポイントを伝え、ペアワークなどを通じて基本表現を学べるように構成されています。

そのため文章量が圧倒的に少ないのです。中学校3年間分の教科書本文はおよそ七千語といわれています。ネイティブの小3(7歳くらい)が読む本は1ページに100語あり、ひとつの本で100ページくらいです。トータル1万語です。

つまり日本の中学生が3年かけて読む英文の量は、ネイティブの小3が2時間で読み終わる本の約3分の2です。これでリーディング力が養われるわけがありません。

教科書はあくまでも「文法中心の授業を受けるためのもの」と考えて、長文を読むためのトレーニングは英語の読書を並行してすすめなければいけません。

アウトプットはどうするか

学校の授業では「英会話をする機会がない」といわれます。リアルな英会話を指すなら、そのとおりです。会話には相手が必要です。授業ではペアワークなどを頻繁に取り入れながら少しでも会話の機会を多く持たせようと教員は必死になっています。

本音を言うと、どちらも英語初心者同士なのでダイアローグ(対話文)の棒読みになるだけです。理想的には学習者よりもレベルの高い相手が必要です。しかし、学校の環境では、生徒一人ひとりにそんなことは実行不可能です。

そもそも初心者が英語を話せない最大の原因は「インプット」が全然足りていないからです。言葉や表現に詰まるとかのレベルではなく「何も思いつかず無言状態が続く」ことが物語っています。

「日本人はシャイだから英語を話そうとしない」とネイティブがコメントすることがありますが、そもそも頭の中にストックがないので最初のひと言さえ出ません。

自分でできることは、やはり教科書(または教科書ガイド)の徹底的な音読です。音読の仕上げには「日本語を英語に直す訓練」を取り入れます。そして、文章の一部や単語を入れ替えることで「自由英作文」の基礎力を養います。

このようなトレーニングを続けると会話の基礎が身につきます。そして、ある程度のストックができてきたら「オンライン英語教室」などのサービスを利用して会話練習をしたほうがいいです。

後述しますが、教科書の本文以外の部分には会話に役立つフレーズや豆知識がわかりやすくまとめられています。教科書を100%活用してフレーズの暗唱をすると、会話でも冒頭の部分が言えるようになり、表現に困る部分を減らせます。

効果的な活用法とは

授業時間に合わせた「教科書の短い本文」は、実は初心者の音読素材とし最適です。授業で学び、教科書ガイドに詳しい説明があるので、内容はほぼ完璧に理解しています。内容を理解していない英文の音読は、お経と同じです。つまり学習効果はありません。

詳しく内容を解説してくれている英文を音読に活用しない手はありません。音読に関する詳しい学習方法については、別の記事で取り上げていますので参考にしてください。

欄外や資料ページが充実している

教科書の欄外の小さい字で書かれた注意書きや、本文以外の資料ページをじっくりと見てみましょう。驚くほど役立つ情報がわかりやすく掲載されています。

例えば、最近の教科書には本文で使用されている語数(〇〇words)まで記入されています。ストップウォッチを利用すればどれくらいの速さで音読できるかを定期的に測定できます。

私が驚いたのは、中1の教科書の資料ページ「基本的な発音を覚えよう」でした。ほとんどの人は、「アルファベットがA~Zまで並べてあるだけ」と見向きもしないでしょう。

ところが、そこには大文字・小文字・発音記号(アルファベット読みではないフォニックス的な)・発音のコツ・その音を含む単語(アクセントが太字で表示)、そしてその絵すべてが収められています。

textbooks_content

これから英語を習う小学生のいるお母さんなら、この1ページのためだけに教科書を買っても価値があるほどです。私だったらこれを拡大コピーしてラミネート加工します。お風呂に貼ったり、リビングに貼ったりするだけで上質な「アルファベット表」を作成できます。

使いやすいアルファベット表を探すのは難しく、海外製のものは「L」の欄に「licorice」(リコリス: カンゾウという植物)などと日本人に馴染みのない単語が使われることがあります。日本の教科書はそのような単語は使用されていないので抜群に使いやすいのです。

教科書をバカにしている人達は、こうした「資料ページ」の価値をまったく理解していません。残念なのは、中学校の先生もこれらのページを「おまけ」程度に扱って、本文だけを追いかけてしまうことです。

中学校ではこれらのページに時間を割けないなら、小学校のうちに資料ページについて時間をかけて攻略するだけでも相当なアドバンテージになります。小学生のうちから教科書を買っておくといい理由はこのためです。

自分でどんどん読み進めてみる

先述のとおり、学校の英語教科書だけでは文章量がまったく足りていません。子どもの英語力にあった英語の本を並行してどんどん読むのがベストです。

ただ、せっかく本を購入しても「難しすぎて読めなかった」ということはしばしば起こります。

そこで、別の会社から出版されている英語教科書を読んでみるのもいい勉強になります。これのメリットは、普段使用している英語教科書と同様に「積み上げ式」で構成されていることです。

ほぼ同じ時期に同じ文法や単語を学習するので、極端に「内容がわからない」という事態を避けられます。他の学校で使用されている教科書なので、多少は新鮮に感じるかもしれません。

学校教科書なので基本的にそれほどおもしろくはありません。しかし、夏休みなどを利用して他校で採用されている教科書を読んでみるのは、とても効果的な学習方法です。

まとめ

積み上げ式で構成された中学英語教科書は、多数の専門家のチェックを受けた最高レベルの教材です。教科書ガイド・付属CD・ワークブックなども充実していて、教科書を中心に「痒いところに手が届く」状態です。

教科書の最大の欠点は「つまらない」ことです。わかりやすさを優先させるので、本文の内容は中学生の知的好奇心を刺激するものではありません。また、授業で使用されることを前提にしているので、文章量は極端に少ないです。

これらの欠点は各自で英語の読書を続けることで充分に補えます。教科書の最も有効な活用法は「音読素材」としての利用です。

付属のCDを使えば、さまざまなバリエーションで音読トレーニングをしながら総合的な英語力の向上を狙えます。

学校英語の欠点とされている英会話についても、その前段階である「英文のストック」は教科書の音読により増やせます。

教科書は本文だけでなく、欄外に書かれた小さい注意書きやおまけのように扱われている「資料ページ」がとても充実しています。これらを眺めるだけで、大人でも「なるほど!」と感心します。

小学5年生以上の子どもを持つお母さんは、思い切って中1の教科書・教科書ガイド・CDを揃えてしまいましょう。小学生にも役立つ情報が惜しみなく載っています。

お母さんは「教科書」の価値を正しく理解して、子どもが中学生になったときにはその知識をきちんと伝えてあげましょう。

形容詞の並び順は「心」で理解しよう

英語を学び始めた頃「あれっ、これってどうなっているの?」と疑問に思うことはたくさんあります。しかし、その場ですぐに聞ける先生がいないとそのままになりがちです。

例えば、「私の茶色の新しい靴」を英語で書きたいときにふと手が止まります。

shoes

靴はshoes、これを修飾する言葉はmy, brown, newです。どれも簡単な形容詞ばかりですが、どの順番で並べたらいいのか迷ってしまいます。

そんなときに子どもがお母さんに質問してきたら、多くの人はインターネットで検索するはずです。そして、載っている答えを子どもに伝えます。

子どもを英語しかできない子どもではなく本当に賢く育てたければ、ここでひとつ立ち止まって二人で考えて欲しいと思います。「なぜ、この並び順なんだろうか?」

仮説でもいいので自分なりに納得する答えを出せれば充分です。丸暗記をさせるのと、「なぜ?」を考えさせるのとでは、将来、大きな差が開くと私は考えています。

今回は形容詞の順番を学びながら、お母さんと子どもが頭を使って考えるようになる英語学習のコツを説明します。

どうなっているの? 形容詞の順番

形容詞とは名詞の性質や状態を説明する言葉です。例えば、a beautiful flowerではbeautiful(美しい)という形容詞はflower(花)という名詞をより詳しく説明しています。

日本語でも「美しい花」と表現するので、語順で混乱することは子どもでもありません。しかし、形容詞が3つ以上続くと「どの順番で」それらを名詞の前につけるのか考えこんでしまいます。

3つくらいの形容詞が使われることは普通に起こりえます。形容詞を並べる順番には目安があって、自由に並べられるわけではありません。

参考書を開くと

「私のペン」はmy penで簡単です。「私の2本のペン」もmy two pensもそれほど迷わずに答えられます。

では、「私の2本の長い赤いペン」はどうでしょうか? longとredをどこに置いたらいいのでしょうか?

文法の参考書によると下の表のような順番が示されています。
adjectives order
形容詞の並び順にはある程度の目安があります。たしかに入れ替えて読んでみると「違和感」を覚えます。

しかし上の表を暗記するのは面倒ですし、すぐに忘れてしまいます。ネイティブはどのようにしてこれらの順番を覚えているのか調べてみました。

OSASCOMP(オサスコンプ)とは

ネイティブは形容詞の並び順に関して、それぞれの頭文字を取って「OSASCOMP」と覚える人もいます。どのようなものか詳しく説明します。

Opinion-Size-Age-Shape-Colour-Origin-Material-Purpose
  • Opinion(主観)

これは主観的な判断に関する言葉が該当します。

my perfect case

perfect(完璧な)はその人の主観的な意見なので、最初のほうに置きます。

  • Size(大きさ)

これは大きさ(big, small, largeなど)が該当します。

my perfect small case

  • Age(古さ)

これは古さ(old, newなど)が該当します。

my perfect small new case

  • Shape(形)

これは形が該当します。

my perfect small new round case

  • Colour(色)

これは色(black, white, redなど)が該当します。

my perfect small new round black case

  • Origin(出どころ)

これは出所・起源が該当します。

my perfect small new round black French case

  • Material(材料)

ここには材料が来ます。

my perfect small new round black French wooden case

  • Purpose(目的)

最後に目的が来ます。

my perfect small new round black French wooden pencil case

OSASCOMPを参考書の並び順に当てはめてみます。
OSASCOMP上記の説明で示した具体例は、あくまでも説明用のものです。実際は連続して形容詞を多用するのは避けられます。通常使用される形容詞は3つまでです。

また実際には多少の順番の入れ替わりはあり得ます。したがって、上記の並び順は絶対的なルールではありません。

日本語でもOSASCOMPでも、形容詞の並び順に関して「丸暗記」するのはおすすめしません。特に子どもに英語を教えるときは、できるだけ「暗記させない」工夫が必要です。

子どもを英語が得意にしたければ、安易に「丸暗記」させない

実は私は暗記科目が大の苦手でした。本当に「どうしてこんなに覚えられないのか」と自分でも呆れるほどです。そのため、高校では世界史や日本史のテストでは常に赤点を取り、夏休みに補習を受けなければいけないありさまでした。

あるとき英語のテストが返却されました。いつもより問題が難しく、平均点が40点台でした。先生は怒り心頭で「トップが90点で、その次が70点台だぞ。ひどすぎる!」と吠えまくっていました。

クラスメートの関心は「誰がトップだったのか」です。成績上位の常連も全滅でした。そして最後まで誰が最高点だったのかわからずじまいでした。

もうわかると思いますが、最高点は私でした。私は試験範囲を勉強して点数が上振れするのが嫌だったので、自分の英語力を正確に測るために一度も「試験範囲の勉強」をしたことがありませんでした(マネしないでください)。

もちろん、まったく英語を勉強しなかった訳ではありません。そのかわり英語で読書をしたり音読したり文法の学習は自分のペースで続けていました。

この経験から断言できますが、英語に暗記力はほとんど必要ありません。むしろすぐに「丸暗記」するのは、大事なことを学習する機会を奪ってしまうことにつながります。

なぜ、そうなっているのかを立ち止まって考える

前述のとおり私は暗記が苦手でした。そこで英語の文法や語法を学習するときはできるだけ丸暗記を避けて「なぜ、そうなるのか?」を常に考えるようにしていました。

語源や文化的な背景、人間の心理にまで考えを自分なりに巡らせて納得しながら英語を学習すると、忘れにくいし雑学も増えます。

例えば「たがをはずす」を聞いて「規律や束縛から抜け出す」と丸暗記すると、「たが」とは一体何なのかを学習する機会を失います(ちなみに「たが」は樽の外側にはめて締めるための輪のことです)。

たが

言葉は人間が長い歴史の中で作り上げてきたものです。何かしらの起源や意味、心理的なものがベースにあるものです。それに気づくか気づかないかは、そのときに限ればたいした違いではありません。

しかし10年・20年と経過すると、「丸暗記→テスト後に忘却」してしまう人と「なぜと疑問→理由を探す」の習慣がある人とでは、大きな差となって現れます。子どもの「地頭」を鍛えるためにも非常に有効な方法です。

文法理解は「心」で理解せよ

さきほどの形容詞の順番ですが、私はいちいち覚えていません。説明を書いておいてひどい話ですが「覚えられない」のです。

それでも何とかなっている私の頭の中を公開します。

「結びつきの強いものは近くに置きたい」心を理解する

名詞に近い形容詞に注目しましょう。「材料に関する形容詞」は「名詞」に最も近い形容詞です。材料は、その名詞が作られている素材そのものです。つまり、名詞ととても親密な関係にあります。

それに比べると「古さ・大きさ」などは、名詞と「距離が離れた形容詞」と考えられます。

形容詞の順番の心

そして、英語においては4つ以上の形容詞を一文の中で同時に使用することはあまり推奨されていません。だから、「ほどほどに覚えておけばいい」のです。

私の頭の中をさらけ出すと、「theとかmyが最初、次に数字、あとは心理的に結びつきの強い形容詞を名詞のそばに置く」程度にしか理解していません。

「いい加減な奴だ。そんなレベルでよく教員をしていたな!」と叱られそうですが、本当だから仕方ありません。これは形容詞の順番に限ったことではなく、文法の学習は常にこんな感じです。

大量の音読トレーニングをすることで、自然と形容詞の順番も身につきます

練習問題

それでは練習問題を載せておくので、お母さんは子どもと一緒に形容詞を正しい順番に並べて名詞を修飾してみましょう。ふたりでワイワイいいながらやってみると楽しいです。

1.名詞 a dressを修飾してみましょう

使う形容詞:white, perfect, new

2.名詞 the chairを修飾してみましょう

使う形容詞:wooden, Chinese, old

3.名詞 my shoesを修飾してみましょう

使う形容詞:old, leather, expensive

解答

1.a perfect new white dress

(Opinion-Age-Colour)

2.the old Chinese wooden chair

(Age-Origin-Material)

3.my expensive old leather shoes

(Opinion-Age-Material)

まとめ

形容詞とは名詞の性質や状態を説明する言葉です。通常は3つまでの形容詞が連続して使われることがあり、どの順番で並べるか迷ってしまいます。

参考書には詳しい説明はありますが、丸暗記するのは面倒です。OSASCOMPという頭字語を使って形容詞の順番を覚えることも可能ですが、これも基本的には暗記です。

言葉は人間が作り出したものであり、その裏側にはその言葉を使う人達の文化や心が現れています。すぐに丸暗記させず、「なぜ、そうなっているのか?」を子どもに考えさせるようにしましょう。

形容詞の場合は、「修飾する名詞と結びつきの強い形容詞ほど近くに置かれる」法則があることに気がつきます。

ちょっと立ち止まって心理的な面から文法や語法を理解すると、忘れにくくなると同時に地頭の良い子どもになります。「覚えるしかない」「そう決まっているから」と子どもに英語を押しつけないように気をつけましょう。

「なぜだろう」と考えると子どもは知的になります。お母さんはそういうきっかけを作ってあげられるようにサポートしてあげましょう。

 

子どもの英語の発音:ネイティブに近づくのは可能?

私は中学生になってから英語を学び始めた普通の日本人です。30年以上前になりますが、中学校の先生の発音はお世辞にもお手本にできるようなものではありませんでした。

私は洋画が好きで、NHKで放送された字幕の物をビデオに録画して何度も見ていました。「本物の英語の発音」を耳にする機会が多く、彼らの口の形を参考にしながら何度も発音練習をしました。

その結果、周囲の生徒よりも英語らしい発音に近づくことができました。ネイティブ相手に英語を話しても発音が悪くて聞き返されることは滅多にありません。

しかし、私の息子は5~9歳の間、イギリス人の先生が担任のインターナショナルスクールに通っていました。クラスメイトにも英語ネイティブの子どもが何人もいる環境です。

1年もすると、息子の発音はあっという間に私のレベルを超えました。今では、私の発音をときどき直されることがあります。

このように発音の習得に関しては、幼児期に学ぶのが圧倒的に有利であることは確かです。しかし、小学生でもコツさえつかめばコミュニケーションには困らない程度の発音を身につけることは難しくありません。

今回は子どもの英語の発音を上達させるための、親が取るべき作戦について解説します。

子どもの英語の発音が良いほうがいい2つの理由

芸能人がたどたどしい英語を話して海外ロケをする番組が人気です。発音があまりにもひどいため現地の人から何度も聞き返されている様子が笑えます。

バラエティ番組としてはおもしろいのですが、これを見て「発音なんか日本人のカタカナ発音で良いのだ!」と開き直る人が多いのが気になります。

どうも「なぜ英語の発音を良くしなければいけないのか」について、理解が不足しているようです。英語の発音が下手なままではいけない二つの理由について、説明します。

相手に無用の負担を強いるから

さきほどの番組で、現地の人が根気よくヘタクソな英語に付き合ってくれるのは、親切心からです。「困っている人がいるから助けてあげよう」とか「撮影しているようだから、付き合ってやるか」というのが本音です。

対等の立場で話をするときに、英語として認識されないようなレベルの発音なら、相手にされません。ましてや仕事でこちらが相手にお願いする立場なら、ひどすぎる発音は完全に不利です。

「下手でも構わない」というのは話す方の理屈であり、聞かされるほうはたまったものではありません。相手に無用の負担を強いていることを意識して、最低限、通じるレベルの発音を身につけようと考えるのが礼儀です。

リスニングが得意になるから

発音が下手すぎる人のほとんどはリスニング力が低いです。英単語を自己流の音で覚えているので、本物の音を聞いたときに、音と意味が結びつかないからです。

例えば、I bought some oranges at the supermarket.(スーパーでオレンジを買ったんだ)という英語を日本人っぽく発音したとします。

boughtをboatと同じ音に、orangesをカタカナ発音で「オレンジズ」、supermarketは前にアクセントをつけずに「スーパーマーケット」と平坦にカタカナ読みします。

実際、このレベルの発音はそれほど珍しくありません。運が良ければ通じるかもしれませんし、突然話しかけたら「へっ?」という顔をされるかもしれません。

では、ネイティブがこの英文を口にしたときに、普段、めちゃくちゃな発音で覚えている日本人は意味を理解できるでしょうか。当然、できません。

最初からネイティブの発音をマネして覚えておけば、リスニングのときの負担はぐっと軽くなります。このように、発音を良くすることは英語を通じやすくするだけでなく、リスニング力を向上させるためにも必須です。

子どもの英語の発音上達法

では、子どもの英語の発音はどのようにしたら上手になるのでしょうか。先述の通り、この分野に関しては幼児のほうが高い適応力があるのは確かです。

そこで子どもの年齢を6歳未満と小学生以上に分けて説明します。

6歳未満の子どもが英語の発音を良くするための方法

極論ですが、あなたのお子さんが6歳未満なら、英語環境に放り込むのが一番です。英語圏の国に行き、3か月間プレスクールなどに通わせるだけで見違えるほど発音が上手になります。

人間には言語習得の本能があって、幼児期なら文法を介せずに言語を覚えることができます。数カ月程度だと英語を話すところまではいきませんが、歌を歌ったり単語レベルでも声を出していれば、かなり上達します。

私の印象ですが、この年齢の子どもの場合、先生から教わるというよりは周囲の子どもからの影響が最も大きいです。周りの子ども達がネイティブなら、それを見ながら自分も同じような発音をまねるようになります。

私の子どもはマレーシアにいたため、チャイニーズ系マレーシア人の家庭で育った子どもとも仲良しでした。彼らの間で「なまった(チャイニーズ系のような)英語」をふざけて話すのが一時的に流行していて、帰宅後もそのマネをしていました。

もちろん冗談だとわかっているので、きちんとした発音との区別はできます。

ただ、周りの子ども達の発音に与える影響はとても大きいことは私にもわかりました。

日本国内にいても、英語のプレスクールに通わせてみるなど、これに近い環境は作れるかもしれません。

子どもは環境に敏感で、周囲が誰も英語らしい発音で話さない中で一人だけネイティブのように話すというようにはなりません。

小学生以上の英語の発音上達法

7歳を過ぎると、幼児のように理屈無しで英語を覚えるようにはなりません。大人と同じように意識的なトレーニングが必要となります。

発音に関しては小学生のうちにある程度仕上げておいたほうが圧倒的に有利です。中学生になると恥ずかしがって声を出さなくなるため、英語らしい発音が身につきづらくなります。

小学生以上が発音を良くするためには、「日本人が話す英語がなぜ英語らしく聞こえないのか」という原因を知ることが一歩になります。そのあと、対策を講じたりトレーニングを積むことが大切です。

  • カタカナとローマ字百害あって一利なし

カタカナとローマ字は、英語の発音を台無しにする諸悪の根源のひとつです。英語をカタカナに変換する際、正確な音やスペリングは失われてしまいます。

またカタカナには和製英語と言われるオリジナルの英語からかけ離れたものが多く存在します。night gameが「ナイター」になってしまったのは有名な例です。

もうひとつの典型的なパターンは、二重母音(母音が連続する音)がカタカナでは「-(音引き)」に置き換えられてしまうものです。

major league → 「メジャーリーグ」(メイジャーと表記すべき)

notebook → 「ノート」(ノウトと表記すべきだし、ブックはどこへ消えた?)

私が生徒に英語を教えるときは、カタカナになっている英語を覚えるときは注意するように指導しています。「意味を覚えるのにはカタカナは役に立つけれど、発音はしっかりと本物の英語のほうをチェックするように」と何度も伝えます。

また、ローマ字も私は日本人の英語学習において弊害しかないと考えています。ローマ字は英語と何の関係もなく、日本語の音を英語に無理やり当てはめただけです。つまりローマ字は日本語です。

ローマ字は小学3年生くらいで、国語の中で教わります。「ふ」はFUと書くように指導されるのでしょうが、fを英語の【f】の発音では読みません。

これではローマ字など最初から指導しないほうが、英語学習には良い影響を与えるはずです。英語の発音に関しては、ローマ字を習う前までに始めたほうがよいというのが私の持論です。

日本語にはない英語の音を出すトレーニングをしよう

カタカナ英語やローマ字の件からもわかるように、英語本来の音を日本語の音の枠に押し込めることが問題です。英語の音の数は日本語よりも多いため、日本人にはなじみのない音を追加して覚える(発話してみる)トレーニングが必要です。

代表的な音を列挙してみます。

【f/v】 five, voice 「フと読んでしまう」

【l/r】 light, right「ら行の音で読んでしまう」

【ʃ/s】 she, see「区別せずに発音してしまう」

【θ/s】 think, sink「シと読んでしまう」

【ð/z】that 「ザットと読んでしまう」

「  」に日本人の典型的な発音例を挙げました。これらは意識して何度も何度も音を出しながら練習しないとなかなか修正されません。

英語の先生に指導してもらったり、自分で英語を音読した声を録音して聞いてみるのも一つの方法です。

英文を読むときに強弱をつけよう

発音そのものだけでなく、強弱のリズムが英語と日本語ではまったく異なります。これをマスターしないと、英語らしく聞こえることは永遠にありません。

次の英文を音読してみましょう。

I played the piano.(私ピアノを弾いた)

私が英語を教えてきた生徒の99%はこの文章を平坦によみます。しかし、英語を読むときは、強く読むべき場所と弱く読むべき場所を分けなければいけません。

一応、ルールのようなものがあるので簡単に挙げておきます。

代名詞は弱い

動詞は強く

冠詞は弱く

名詞は強く

さらに、単語の音どうしが干渉して「くっついたり」「変化したり」します。先ほどの例だと、played theは別々に発音されず、「プレイッザ」のように聞こえます。

これらを総合すると、次のようになります。

一語一語の単語の発音だけでなく、文を強弱つけて読めるようにすると、英語らしく聞こえるようになります。

大切なのは「ネイティブのように話したい!」という強い思い

書店に行けば発音に関する本はありますし、動画サイトなどでも詳しく説明しているので、いろいろと参考にしたらいいと思います。

しかし、最も大切なのは、「ネイティブのように話したい!」という強い思いだと私は思います。「まあ、いいや」と妥協してしまうと、発音トレーニングに力を入れないためいつまでたっても上達しません。

現在の日本の英語教育では発音のうまい・下手は成績にほとんど反映されないため、上達しようというモチベーションが育ちません。

動機は何でも構いません。「好きな歌を完コピしたい」「憧れのハリウッド俳優のようにしゃべりたい!」という動機があると、英語の発音トレーニングを頑張るという行動に向かわせてくれます。

「テストが乗り切れればいいや」としか英語を捉えていない生徒は、残念ながらほとんどの場合、発音が上手になることはありません。英語を教科としてとらえているか、コミュニケーションの道具としてとらえているかの違いです。

お母さん自身の英語の発音が下手でも構いません。子どもが自然と本物の英語にあこがれを抱くように少し工夫してみましょう。「ネイティブのように話したい!」と思うようになれば発音が上手になるチャンスは大きいです。

まとめ

英語の発音は2つの点で大切です。発音が良ければ、聞き手に負担を感じさせないため、コミュニケーションが円滑になります。また、良い英語の発音は、リスニング力の向上にもつながります。

発音の習得に関しては、6歳未満の幼児が圧倒的に有利です。最も確実な方法は、英語ネイティブの子ども達がいる環境に放り込むことです。

この年齢の子どもは先生よりも周囲の友達に最も大きな影響を受けるため、周囲の英語の発音をすぐにまねします。

幼児期を過ぎてしまった小学生でも、ポイントを押さえたトレーニングをすれば発音は上手になります。

そのためにはカタカナ英語から離れ、英語本来の音で覚えなければいけません。日本語の音にはない英語独特の発音を覚えることが大切です。

また個別の単語の発音だけでなく、文章として読まれるときの強弱にも気をつけるようにしましょう。

年齢が上がるほど英語らしい発音を身につけるのは大変になります。発音のトレーニングを続けるためには「ネイティブのように話したい!」という憧れを持つことも重要になります。

子どもが本物の英語に触れるような環境や機会を作ってあげましょう。お母さん自身が英語の発音が苦手でも、きっと子どもは前向きな気持ちで発音トレーニングをするようになります。

中学入学前までに英語を音読する習慣を

先日、電車に乗ると、私の目の前に2歳くらいの男の子とお母さんが座っていました。電車内が混雑してきて、男の子がぐずり始めてしまいました。

するとお母さんが、バッグや服の色を示しながら色の名前を教え始めました。男の子はお母さんの言葉をまねして発話しています。ところが、「ももいろ」と何度お母さんが教えても、男の子は「ももいろ」と言えず、「もいろ」と間違えてしまいます。

お母さんも男の子も笑いながら同じことを繰り返しました。

言葉のまねにも飽きて5分ほど沈黙した後のことです。男の子が突然、もも色を指さして、「ももいろ」とつぶやいたのです。お母さんも子どもも大喜びでした。

この光景を見ていた私は「やはり、音読が語学の基本なんだな」と確信しました。私たちは忘れていますが、母国語を覚えるときもこの親子のように数限りない音読練習をしたはずです。

しかし、英語学習になると、ほとんどの子どもはなぜか黙々と勉強します。この傾向は年齢が上がるにつれて顕著になり、中学生になるとほとんどの生徒が音読することを避けるようになります。

原因は「音読をすることへの抵抗感」です。「間違えたら恥ずかしい」「下手くそな英語を声にするのが格好悪い」などと感じるのでしょう。

私は現在も中学生に英語を教えていますが、なかなか素直に音読する生徒に出会うことは少ないです。

「なんとか中学前に英語を音読する習慣をつけさせたい」

私はこのように強く思っています。「英語学習とは音読すること」くらいの意識で取り組めば、英語が得意になる生徒の数はかなり増えるはずです。

今回の記事では、音読が大切な理由と簡単な取り組み方ついて詳しく説明します。

英語学習の基本は音読

近年、一般の人達にも「英語の4技能」という言葉が浸透してきました。

語彙力と文法力を中心に、4つの技能は関連している。

これは「聞く」「話す」「読む」「書く」という4つの技能を指しています。学校のテストでは「読む」「書く」が重視されていますが、実際の英語を使う現場では同じくらい「聞く」「話す」技術も大切です。

英語は入試の一科目として存在しているわけではありません。コミュニケーションのための道具と考えるのが自然です。「聞く」「話す」の技能に直結する音読によるトレーニングを軽視していいはずがありません。

学校では音読の価値や方法について指導されない

英語が得意な人は音読の価値を理解しています。学校で英語を教える先生達も音読を大切に思っているはずです。

しかし、実際の授業の中で、音読についてきちんとした指導がされることはほとんどありません。「時間がない」「他にやるべきことが多すぎる」などの理由は理解できますが、大変残念です。

「音読」の習慣化について学校に期待するのは難しいのが現状です。そうなると小学生のうちに家庭で指導するしかありません。英文を見たらとりあえずブツブツ音読するくらいまでに習慣化してるのが理想です。

では、なぜ音読することが英語学習においてそんなに大切なのでしょうか。

音読のパワー:文法や語法の知識は音読して使える状態となる

例えば、中学生に英語の冠詞「a,an」について教えるとき、学校の先生や教科書の説明は次のようになります。

数えられる名詞で1つの物(人)のときには、名詞をつける。名詞が読まれるとき母音から始まる単語には、anをつける。

ほとんどの生徒はこのルールを理解します。例えば、bookならa bookに、eraserならan eraserと答えられます。

でも、「私は彼女に一時間前に会った」という英作文をさせるとかなりの生徒が、

× I met her a hour ago.

と書いてしまいます。

正解は、hourの発音は母音から始まるので、

〇 I met her an hour ago.

なぜこのような間違いをしてしまうのでしょうか。それは、anを使う条件を知識で覚えているからです。

正しくan hourと答えるためには、まず英語を音読する習慣が必要です。テスト中静かにしなければいけない場面でも頭の中で音声化しているかどうかが鍵になります。

an hour(「アナワー」と発音)を音読した経験があれば、a hourだと読みづらかったり何か変であったりすることに気がつきます。理屈だけでなく耳で覚えている感覚です。

音読を英語力向上につなげられるかどうかのポイントは、読む英文について正しく理解しているかどうかです。単語の意味、文法、語法、発音、アクセント、イントネーションなどすべてを理解してから音読練習するようにしましょう。

意味も分からずに音読するのは、何の役にも立ちません。

ネイティブに英語を質問すると、ブツブツつぶやいてから答える

ネイティブに英語の表現について「こういう言い方はしますか」とたずねると、かなりの確率でブツブツ英語をつぶやいてから答えてくれます。

ネイティブも知識として語法を覚えているだけでなく、実際に口で言ってみることで正しいかどうかを確認することが多いです。

私たち外国人が英語を学ぶなら、なおさら英語の表現を文章ごと音読する訓練を積まなければなりません。

このように、英語を知識として学ぶだけでなく、この知識を使える状態のレベルにまで引き上げるための訓練が音読ということになります。

英語を見たらとりあえず音読:教材にこだわらない

本格的な音読トレーニングにはそれに適した教材と方法があります。しかし、今回の記事ではもっとお手軽な方法について説明します。

英語のテキストや問題集に取り組むと、必ず例文が載っています。その例文を何度も声に出して読むことで、知識を使えるレベルにまで変化させることが可能となります。

例えば、homeは意外と使い方が難しい単語です。

I came home at six.(私は6時に帰宅した)

よくやってしまう間違いが、

× I came to home at six.

という間違いです。homeは「家に(帰宅)」という意味の副詞なので、前置詞のtoは不要です。

もうひとつ紛らわしいのが、at homeという表現です。この場合は、「家に(在宅)」を意味します。

My father was at home when I gave a call to him. (私が父に電話した時、彼は家にいた)

さらに「家」という名詞を使いたい時には、普通はhouseを使います。

He built a house. (彼は家を建てた)

さて、これらのhome, at home, houseの使い分けについて、知識として覚えるのは効率の良い勉強法といえるでしょうか。私も含めて普通の人は、丸暗記した知識はすぐに忘れてしまいます。

でも、それぞれの例文を丸ごと何度も音読して暗唱できるようになっていれば、間違えることはないでしょう。

問題集に取り組むときも音読してみる

例えば、英検の問題集をしていて次のような問題があったとします。

問題( )に入る最も適切なものを1~4の中から一つ選びなさい。

My school starts at 7:45, so I  (   ) my house at 7:15.

1 ride   2 go  3 take  4 leave

正解は4です。

この問題文には大切な語法がいくつも含まれています。

starts の s は三単現の s 、時刻を言うときは at を使う、leave ~で「~を発つ・離れる」、家(建物)の意味のときはhouseを使う、などです。

こんなに大切な学習ポイントがたくさんあるのに、〇か×だけで終わらせるなんてもったいなさすぎます。私が指導するときは、たとえ正解してもこの文章を丸ごと暗唱させます。

テストで間違えたところの正解文については、最低40回くらいは音読することを生徒に伝えています。真面目にやっている生徒は確実に英語の成績が伸びます。

英会話の場面ですぐに口から出せる表現は、何度も音読した表現だけです。本当に簡単な方法ですが、実践する生徒はわずかしかいません。

このように、音読教材用の短いストーリーを扱う本格的なものとは別に、文法の教科書に出てくる短い例文でも何度も音読することは英語学習においてとても大切なポイントとなります。

お子さんが静かに英語を勉強していたら、注意しましょう

日頃、子どもが英語の勉強をしているときに、静かに机に向かっていたらあまり良くない傾向です。反対に、ときどき声を出して英語を読んでいれば、順調です。

例えば単語を覚えるときにも音読練習が基本となります。小学生時代の漢字書き取りの習慣からなのか、英語をひたすら紙に書いて覚えようとする子どもが多いです。しかし、これは非常に効率が悪く、使える英語につながらないのでやめましょう。

単語を覚えるときの順番は、1)正しい発音・アクセントで何度も音読する、2)意味の確認、3)スペリングを覚える、の3ステップが基本です。

音読するときにはカタカナ発音しないように注意しましょう。thingという単語を覚えるときにいい加減に「シング」と発音すると、単語を書くときに「sing」とか「shing」と書いてしまう原因になります。

正しい発音は正しいスペリングにもつながります。最後に実際に書いてみて確認してみましょう。しかし、音読「9」に対して書く「1」の比率で充分です。単純に読み上げる方が書くスピードよりも5倍は早いので効率が良いからです。

文法・会話・単語など英語の学習の基礎はすべて音読です。私もかつて中学生の頃、何度も英語を音読した翌日は口の周りの筋肉が筋肉痛になりました。英語の筋肉をつけるまでに時間がかかりましたが、確実に英語力は伸びました。

まとめ

音読は英語学習の中心となるものですが、中学生になるとほとんどの生徒は音読することに消極的です。恥ずかしさが主な原因です。私たち日本人でも日本語を覚えるときに数限りない音読と失敗を重ねていますが、そんなことは忘れてしまうようです。

しかし、これではいつまでたっても英語を得意にはなりません。

そこで英語を音読する習慣を小学生のうちに身につけさせることが成功の鍵となります。

音読は、英語の知識を使える状態にするための訓練です。英語が苦手な生徒は文法を知識のまま覚えようとして失敗します。反対に、理解した文法事項を含む例文を何度も音読すると、使える状態になります。

単語学習でも、小学生の時の漢字の書き取り練習のように黙々と書き連ねている生徒が多いのですが、これでは英語を得意にはなりません。ここでもやはり何度も音読することが大切となります。

英語を習い始めた小学生のお母さんにはぜひ、子どもが静かに英語を勉強していないかチェックして欲しいと思います。英語は体育や楽器のような技能教科です。

音読せずに黙って問題集に向かっているのは、素振りをしないで野球を上手になろうとするようなものです。中学入学前までに英語音読の習慣を家庭で身につけるようにアドバイスしましょう。.

小学生でも大丈夫! 英語エッセイから学ぶ「論理的思考力」のススメ2

以前、国語の先生が言っていたことで印象的なことがあります。「これまで世の中の詩人は5・7・5(7・7)の俳句や短歌以外の定型詩を追求してきたが、誰も超えられなかった」

確かにその通りです。交通標語「手をあげて 横断歩道を渡りましょう」は「5・7」のリズムで、日本人なら無意識のうちに「おさまりが良い」と感じます。万葉集にはすでに5・7・5・7・7は完成されていたので、1200年以上受け継がれていることになります。

同じような「型」は外国にもあります。英語の「5パラグラフ・エッセイ」もその一つです。自分の意見や主張を書くときに、相手に伝わりやすい形式として編み出された「型」です。

世の中がグローバル化するなか、さまざまな文化的背景を持った人たちが共通のロジック(論理)でコミュニケーションを取る必要性が高まっています。そのときに、「5パラグラフ・エッセイ」は中心的な役割を果たします。

アメリカ人なら子どものころから5パラグラフ・エッセイの「型」を徹底的に学びます。日本でも作文指導である程度は扱われますが、アメリカほど深く学ぶ機会はありません。

英語をコミュニケーションの道具として学ぶなら、英語だけでなく伝えるための「ロジック」は欠かせません。Four Square Writing Methodを活用すると、日本の小学生でも簡単に学べます。

今回は、Four Square Writing Methodを使った簡単な論理展開の練習をしてみましょう。作文の宿題で困っているときに、お母さんが教えてあげると子どもは受け入れやすくなります。

Four Square Writing Methodってどんなもの?

アメリカの小学生にエッセイ(小論文)の書き方を指導するために考案されたのが「Four Square Writing Method」です。3人の先生(Judith S. Gould, Evan Jay Gould and Mary F. Burke)によって書かれた本の中で、詳しく紹介されています。

息子がインターナショナルスクールに通っていたころ、毎週出されるエッセイの宿題に苦労していました。夏休みにこのテキストを使ってエッセイの書き方を学ぶと、「何を書いたらいいのか」で困ることがなくなりました。

Amazon­の洋書カテゴリーで「four square writing method」と検索すると、このシリーズがズラリと表示されます。対象年齢別や目的別に細かく分かれているので、子どもに合ったテキストを選ぶことができます。

私が購入したのは「Four Square Writing Method for Grades 4-6」です。息子は最初から最後まで読んではいませんが、それでもエッセイの基本的な部分は学べました。

A4の紙一枚あれば、いつでもどこでもできる

Four Squareの良いところは、紙一枚とペンがあればいつでもどこでもエッセイを書くのに必要な情報を整理できることです。

子どもに教えているうちに、今では私も活用しています。この手のものでは「マインドマップ」が有名です。しかし、文章を書くときはFour Squareのほうが私は使いやすいです。

以前、娘の卒業謝恩会でスピーチ予定のお父さんが突然欠席することになり、私が代わりをお願いされました。

残り時間たったの5分でした。卓上にあった紙ナプキンにボールペンでFour Squareを書き、スピーチプランをまとめました。そのメモを見ながらのスピーチでしたが、「わかりやすかった」と参加者からほめてもらいました。

まずは、実際に言葉を入れながらFour Squareの利用法を覚えていきましょう。

5つのマスの関係性を理解するために、単語を入れてみる

初めに「Four Square」の書き方を見てみましょう。A4の紙を用意して、同じように線を引いてください。
four_square_function

たったこれだけです。真ん中にマスを書き、あとは外側の部分を4つに分割するだけです。1のマス(中心)は「メイン・アイデア用」、2~3のマスは「メイン・アイデアを支えるための詳しい理由や根拠用」、4のマスは「まとめ用」です。

ここでは例として「めん類」についての簡単な文章を作成してみます。

  • 中心のマスは「メイン・アイデア」

最初にすることは、「メイン・アイデア」を書くことです。中心の言葉は「めん類」なので、中心のマスには「めん類」と書きます。

常に中心に「めん類」が見えるので、途中から話題がそれることはありません。

  • 2~3のマスに詳しい情報を入れる

次に、2~3のマスに「めん」に関する詳しい情報をいれます。ここでは「そば」「うどん」「パスタ」を入れてみます。

中心に「めん」があります。それを囲むようにして「そば」「うどん」「パスタ」が配置されます。2~3のマスの内容は、メイン・アイデアから外れていないことが確認できます。

そば、ざるそば、モリそばを入れてしまうのはNGです。なぜなら、この場合メイン・アイデアは「そば」にするべきだからです。

  • 4のマスに「まとめ」

第4のマスには「まとめ」を入れます。ここは文章にしてみましょう。
four_square_noodle

そば、うどん、パスタはめん類です。

一見、「エッセイ」の形式とはまったくかけ離れた姿です。しかし、5つのマスの関係性を端的に表しています。いわば、エッセイの骨格です。話題の中心は「めん類」で、3つの詳細情報があり、まとめですべてをつなぎ合わせています。

復習します。初めに「めん類」について書こうと決めて1のマスに記入します。次に、それに関する詳細情報を2~4のマスに入れます。そして、5のマスで、まとめを書きます。

練習問題「球技」

それでは理解を確実にするために、今度は「球技」について練習してみましょう。紙と鉛筆を用意して、真ん中にマスを書いたら外側の部分を4等分にします。

four_square_ball

まとめの文章は書けましたか?

テニス、野球、サッカーは球技です。

ここまでは、超初心者向けに5つのマスがどのような関係になっているかを解説しました。次は、文章をそれぞれのマスに入れていき論理的な文章を作る過程について解説します。

5つのマスに文章を入れて、つなげてみよう

ここからは、5つのマスに文章を入れていきます。これをマスターすると、簡単なエッセイなら書けるようになります。英語のエッセイを書く場合は、当然英語でセンテンスを書いていきます。

小学生は普段の作文に応用するためにも、日本語で慣らしておきましょう。英語力が向上してきたら、英文で書くことにも挑戦しても遅くはありません。

  • 中心に自分の意見を入れる

真ん中のマスにメイン・アイデアを入れます。今回は文章で書いてみましょう。例として「教科書をすべて持ち帰るのはやめるべきだ」という主張で書いていきます。

  • 2~4のマスに詳しい情報を入れる

メイン・アイデアを書いたら、この主張を支えるための詳細な理由・根拠・データなどを第2~4のマスに入れていきます。それぞれのマスには同じ内容のことは書かないように注意しましょう。

2のマスには「ランドセルが重すぎて、背骨に悪影響を与える」と書いてみます。実際、教科書が大型化していたり内容が増えたりしたことにより、全体の重さは昔よりも重くなっています。

3のマスには「家庭学習にほとんど使わない音楽・図工・道徳の教科書は学校に置いておいても問題ない」と書きます。

国語の教科書は宿題の音読に使用するので、持ち帰る必要があるのはわかります。算数は計算方法の確認に必要かもしれません。しかし、その他の教科については、必要なときだけ家に持ち帰れば充分です。

4のマスを埋めるのは、少々大変です。2・3のマスに見劣りしないだけの理由や根拠を示さないといけないからです。

4のマスには「教材のデジタル化を進めれば、タブレット端末で見られるようにできるから」と記入します。可能な新しい技術を取り入れて、不便を解消する提案です。

ここまでくればあと一歩です。

  • 5のマスにまとめの文章

5のマスには「まとめ」を書きます。まず、真ん中のマスで示したメイン・アイデアを繰り返します。このことにより、最初と最後でブレない(一貫性のある)構造を作ります。

「教科書をすべて持ち帰るのはやめるべきだ」

そして、2~4のマスで示した理由や根拠、提案を簡潔に示します。

「教科書をすべて持ち帰るのはやめるべきだ。なぜなら、重いランドセルは子どもの背骨に悪影響を与えるし、持ち帰る必要のある教科書は数冊だけだし、タブレット端末に教科書の内容を収められるからだ」
作文

 

ここまでの文章をすべてまとめてみます。

僕は、教科書をすべて持ち帰るのはやめるべきだと思う。
第一の理由は、重すぎるランドセルは子どもの背骨に悪影響を与えるからだ。
第二の理由は、家庭学習にほとんど使わない音楽・図工・道徳の教科書は学校に置いておいても問題ないからだ。
第三の理由は、教材のデジタル化を進めれば、タブレット端末で見られるようにできるからだ。
結論として、教科書をすべて持ち帰るのはやめるべきだ。なぜなら、重いランドセルは子どもの背骨に悪影響を与えるし、持ち帰る必要のある教科書は数冊だけだし、タブレットを導入すれば紙の教科書は不要になるからだ。

文章としては洗練されていません。しかし、作者の主張は明確に伝わります。これが5パラグラフ・ライティングの威力です。

実際はもう少し自然な日本語で文章を書きます。最後のまとめには、冒頭をそのまま繰り返すのではなく、未来志向にしたり作者の意志を加えたりします。

より自然な日本語で肉付けすると下記のようになります。

毎日の登下校でランドセルを下すとホッとする。なぜならランドセルがとても重いからだ。ランドセルが重くなる主な原因は教科書を毎日持ち帰るからだ。僕は「教科書をすべて持ち帰るのはやめるべきだ」と思う。

第一の理由は、重すぎるランドセルは子どもの背骨に悪影響を与えるからだ。新聞で読んだがひどい場合には背骨が曲がってしまうらしい。

二つ目の理由は、音楽・図工・道徳の教科書は家に持ち帰る必要がないからだ。宿題で使うから家に持ち帰るのであって、必要もないのに持ち帰るのはおかしい。

最後の理由は、一人一台タブレット端末を持てば、すべての教科書のデータを見られるようになるからだ。

結論として、今すぐ政府は教科書を毎日持ち帰らなくてもいいと学校に指示を出すべきだ。工夫すれば軽く出来たりタブレット端末に収めたりできるのに、健康を害してまですべての教科書を毎日持ち帰るのはどう考えても問題だからだ。

小学生の子どもの作文なら、このレベルでも充分です。文章を長くしたければ、導入部分や2~4のマスの情報を膨らませればいいだけです。

練習問題「遠足は楽しい」

Four Squareを使って文章のプランを考えてみましょう。メイン・アイデアは「遠足は楽しい」です。簡単な文章でいいので、それぞれのマスを埋めてみましょう(模範解答はありませんが、自分で試してみて下さい)。

英語ではどうなる?

英語で書く場合も基本的なやり方は同じです。エッセイで頻繁に使われる単語やフレーズがあるので、下にまとめておきます。

first of all(まず初めに)/ secondly(第二に)/ finally(最後に)/ because(なぜなら)/ in conclusion(結論として)/ such as(~のような)/ for instance(たとえば)/ but(しかし)/ however(しかしながら)

2のマスの冒頭にFirst of all、3のマスの初めにSecondly、4のマスの初めにFinallyが対応します。最後のまとめ(5のマス)の冒頭には目印としてIn conclusionで書き始めると「まとめが書いてあるな」と読者はすぐにわかります。

英語でエッセイを書くのは小学生では難しいと思います。しかし、エッセイで必要となる論理展開を身につけておけば、英語力が備わったときにスムーズにエッセイを書けるようになります。できるところはさっさと進めておきましょう。

英検3級からはライティングで意見を述べることが求められます。勉強法がわからない場合は、オンライン英語塾(1対1の完全個人指導)にご相談ください。

まとめ

最初は、単語をそれぞれのマスに入れてみて最後に一つの文章を作ることから始めてみましょう。これでそれぞれのマスの関連性を理解できます。

慣れてきたら、簡単な文章を入れていきます。真ん中のマスには作者の主張を入れます。それを常に頭に入れながら、2~4のマスに詳細(理由・根拠)を埋めていきます。

最後の5のマスで、最初の主張を繰り返してから、もう一度すべての理由をもう一度簡単に示します。「まとめ」です。

子どもは「英語エッセイの書き方」として学ぶ必要はありません。日本語でもエッセイの論理展開は充分に身につきます。作文の宿題で困っているときに、お母さんが教えてあげるといいでしょう。

英検を定期的に受験している子どもなら、3級以上のライティングでエッセイライティングの素養を試されます。文章を書くときだけでなく、スピーチやプレゼンをするときにも大変役に立つスキルです。

日頃の作文でも応用できるように、子どもに上手に教えてあげましょう。

小学生でも大丈夫! 英語エッセイから学ぶ「論理的思考力」のススメ1

日本語で「エッセイ」と言えば、雑誌の連載を思い浮かべるかもしれません。自由な形式で筆者は気ままに文章を書いています。いわゆる「随筆」です。

ところで英語の「エッセイ(essay)」とは「小論文」です。 自由な形式とは反対に「きっちりとした論理構成」で書かれています。

英語圏、特にアメリカではessayを書く訓練を小学校1年生から積み上げています。自分の主張を論理的に展開して説得力のある文章を書けることがゴールです。

英検3級以上の「ライティング」で得点するには、論理的な構成の文章を書くことを求められます。本格的なエッセイではありませんが、根底にある論理展開は共通です。

英検3級ライティングのサンプル問題と解説はこちらからダウンロードできるので、興味のあるお母さんは一度目を通してみてください(英検ホームページより引用:https://www.eiken.or.jp/eiken/exam/grade_3/pdf/DrWrite_grade3.pdf)。

英語力を身につけても、「エッセイ」の基本構成を知らないとどのように書いたらいいのかさっぱりわかりません。困ったことに日本の小学校では小論文の指導はほとんどされておらず、日本人が苦手な分野のひとつです。

そこで2回に分けて、英語のエッセイについて理解を深め、具体的にどのような方法で勉強すると論理的な文章を書く基礎を身につけられるのかを説明します。

英語のエッセイとは

仮に完璧な翻訳機が発明されたとします。日本人とアメリカ人の両者はあるテーマ(例えば、朝食にはパンと米のどちらが優れているか)について、討論をしたとします。アメリカ人はパンを支持、日本人はごはんを支持します。

平均すれば、おそらくアメリカ人のほうが「説得力がある」論理展開をするはずです。なぜなら、彼らは「他人を説得する文章」を書く訓練を小さい頃から積み上げているからです。

日本人は劣勢になると「だって、日本では昔から決まっているから」とか「米農家を守るため」といった感情論に訴える傾向があります。しかし、これでは国際的にはまともな議論として受け付けてもらえません。

英語を身につけてコミュニケーションをとるのは外国の人達です。彼らは論理的思考の中で生きているので、そこに合わせていかないと文法的に正しい英語を話していても主張は通りません。

基本は5パラグラフ・エッセイ

エッセイの構成は5 Paragraph Essay(5パラグラフ・エッセイ)が基本です。つまり、5つのパラグラフ(段落)から、ひとつの小論文が構成されています。それぞれのパラグラフには明確な役割があります。

構成は次の通りです。

第1パラグラフ:導入(テーマの説明+自分の主張)
第2パラグラフ:説明1(導入で書いたことについての理由)
第3パラグラフ:説明2(導入で書いたことについての理由)
第4パラグラフ:説明3(導入で書いたことについての理由)
第5パラグラフ:結論(自分の主張を繰り返して、最終的な結論)

日本の作文は主に感想文

日本の国語の授業でも作文指導はあります。しかし、そのほとんどは日記だったり、読書感想文だったりです。そこで求められるのは、心情の描写です。もちろん心情描写を必要とされる場面もあります。

しかし、「自分の主張を説得力のある構成で書く訓練」も同じくらい必要なはずです。しかし、自分の主張を論理的に展開することを求められる作文はめったにありません。

子どもの頃からの英語教育に反対する人の理由のひとつに、「英語を学ぶ前に論理的な思考力を養成する必要がある。そのためにまずは国語教育を充実させよ」というものがあります。その肝心な国語教育の中では、論理的な思考をあまり磨けない現状があります。

エッセイを書く訓練をすると、人生で役に立つ場面が多々あります。しかしながら学校教育ではなかなかエッセイを学ぶ機会はありません。現状では家庭でお母さんが主体となって子どもに論理的な思考をさせるトレーニングをしたほうがいいです。

論理展開に慣れると得られるメリット

論理的な構成を立てられないままだとどのような弊害が起きるのかを考えてみましょう。

たとえば、校長先生の朝礼スピーチを思い出してください。長時間スピーチをした割には何を言いたかったのかさっぱり伝わらず、終わった瞬間に内容を忘れたことはありませんか? 結婚式でのスピーチの内容がよくわからなかったことはありませんか?

書くときだけでなく話すときでさえも、筋道を立てた話し方を心がけないと相手に言いたいことが伝わりません。このようにエッセイで必要とされる論理構成力がなければ、相手に自分の意見を伝えられないのです。

ではエッセイ力を活用できる場面について具体的に説明します。

小論文を書くときの基礎になる

何といっても大学入試での小論文や大学での論文作成に役に立ちます。私は入学試験に小論文があったため、予備校で小論文の講座を受講しました。また、大学ではネイティブの先生から簡単なエッセイの指導も受けられました。

本格的な英語のエッセイを書けるほどの実力はありません。しかし、基本的な論理構成の立て方を身につけたおかげで、他の人にわかりやすい文章を書くことはできます。

その他にも応用できる場面

会社に入ればパワーポイントでプレゼンをすることもあるでしょう。プレゼンの資料を作成するときにも、5Paragraph Essayは役に立ちます。とにかく主張が明快なので「何を言っているのかわからない」状態を回避することができます。

企画書を書くときもシンプルにまとめられるので、上司にもしっかりと読んでもらえる確率がグッと高まります。

英語に話を限定しても、英検3級以上の筆記試験では短いライティングが出題されます。そのときも、5パラグラフ・エッセイを応用することで、自分の意見を明快に伝えることができます。

どんな訓練が必要か

もちろん本格的なエッセイの指導は普通のお母さんには難しいです。しかし、紙1枚だけで取り組める「簡単な5 Paragraph Essay」なら家庭でも指導可能です。ここではその基本的な考え方を説明します。

  • Four Square Writing Methodとは

Four Square Writing Methodとはアメリカの3人の先生によって書かれた本です。シリーズでいくつも関連書籍が出版されていて、Amazonの洋書カテゴリーから注文できます。

four square writing method

このシリーズの優れている点は、一枚の紙に「枠」を作りその枠に情報を埋めていくことによって、5パラグラフ・エッセイが書けるようになることです。

「なあんだ、それだけか」と思わないでください。実際に自分でやってみるとわかりますが、白紙を渡されて第1パラグラフから順番に文章を書こうとしても、すぐに行き詰ってしまいます。

ところが単純な線で仕切られたシートを使うと全体を俯瞰しながら文章を書けます。そして、最初から最後まで自分の主張がぶれない文章を書くことができます。

映画「オペラハット」の話

1930年代のアメリカ映画で「オペラハット」があります。田舎に住んでいた素朴な青年が、偶然、巨額の遺産を受け取ったところからドラマは始まります。金銭トラブルに巻き込まれて身の潔白を証明する法廷で、彼はそこにいる人たちのクセについて言及します。

LD: …For instance, the judge here is, is an O-filler.

(たとえば、ここにいらっしゃる裁判長はO(オー)埋め人ですね)

Judge: A what?

(何ですって?)

LD: An O-filler.  You fill in all the spaces in the Os with your pencil.  I was watching him.

(O埋め人です。あなたはすべてのアルファベットのOの中を鉛筆で塗りつぶします。私は見ていましたよ)

LD=Longfellow Deeds(主人公の青年)、Judge=裁判長

なぜこのような映画の1シーンを引用したかといえば、これは端的に人間の性質を表しているからです。枠で囲まれていると、その中を何かで埋めたくなるのです。

作文をするのは慣れないうちは苦しい作業です。白紙とにらめっこしていてもなかなかアイデアは出てきません。一方、枠で仕切りを作ると、空間が気になります。そして頑張って空間を埋めようとアイデアを絞り出します。

この人間の性質をうまく利用したのがFour Square Writing Methodです。これはアメリカの小学生向けに書かれた教材なので、日本の小学生が英語で学ぶには難しすぎます。しかし、日本語でも論理展開の訓練はできます。

このFour Squareの助けを借りながら、お母さんが主体となって家庭で子どものために論理的な主張をする練習をするのはそれほど難しいことではありません。英語で学ぶ必要はなく、日本語でも学べます。

普段の宿題で活用してみる

子どもがこのFour Square Writing Methodを受け入れやすいのは、作文の宿題のときでしょう。私も経験がありますが、何を書いたらいいのかわからず、無駄に時間は過ぎるばかりです。

こういうときにお母さんがいいタイミングで助け舟を出しましょう。「実は作文を上手に書ける方法があるんだけど知りたい?」と切り出せば、子どもは「どんなの?」と聞いて来るでしょう。

Four Square Writing Methodを利用した論理構成の学習については、次の記事「小学生でも大丈夫! 英語エッセイから学ぶ「論理的思考力」のススメ2」で具体的に解説します。

まとめ

日本語でのエッセイは「随筆」の意味で使われることがほとんどですが、英語におけるessayとは「小論文」のことです。アメリカでは小学校からエッセイを書く訓練に取り組んでいます。

エッセイの基本構成は5パラグラフ・エッセイと呼ばれるものです。

第1パラグラフ:導入(テーマの説明+自分の主張)
第2パラグラフ:説明1(導入で書いたことについての理由)
第3パラグラフ:説明2(導入で書いたことについての理由)
第4パラグラフ:説明3(導入で書いたことについての理由)
第5パラグラフ:結論(自分の主張を繰り返して、最終的な結論)

エッセイの論理構成をマスターすると、進学・就職・仕事などあらゆる場面で将来役に立ちます。しかし、不慣れな子どもにいきなりこのような構成で本格的な文章は書けません。

その場合、Four Square Writing Skillというアメリカの子ども向けに開発された方法が効果的です。あらかじめフレームを決めておいて、その中に情報を埋めることで論理的な文章を作成できます。

家庭でもお母さんが子どもに教えられる具体的なトレーニング方法は次回の記事「小学生でも大丈夫! 英語エッセイから学ぶ「論理的思考力」のススメ2」で紹介します。

これだけは知っておきたい! 「子どもの英語を伸ばす」接し方

子どもの英語力に影響を与えるものはいろいろとあります。その中でもとりわけ「お母さんの子どもへの接し方」は影響力が大きいように感じます。なぜなら、普段最も長い時間子どもと接している人だからです。

中途半端な知識で子どもに無理やり英語を強制しては、子どもの英語力はすぐに頭打ちになるでしょう。しかし、まったく放任状態ではいつまでたっても英語を学ぶ習慣は身につきません。

今回は年齢層別に子どもの特徴を取り上げ、それに即したお母さんの接し方についてまとめました。私が実体験から学んだことなので、机上の空論ではありません。中学生以降、子どもの英語力が爆発的に向上するように正しくサポートしてあげましょう。

幼稚園~小学1・2年生へのサポート

小学校に入学しランドセル姿の子どもを見ると「ずいぶんと成長したな」と感じます。しかしながら、英語学習の観点からは小学校の低学年(1・2年生)は幼児とあまり変わりません。

この年齢までの子ども達の特性は大人とはかなり異なります。その点を理解してお母さんが接すると、上手に英語学習を始められます。

この年齢の子どもは、文字の読み書きは一般的に苦手です。このため、無理やり英語の本を読ませたり、ワークブックに取り組ませたりするのは逆効果です。もちろん個人差が大きいので、文字に興味を持ち始めたら少しずつ与えるのは大丈夫です。

子どもはおもしろそうなものには自然と惹きつけられます。反対に、関心がないものには一切取り組みません。大人のように「将来役に立つから」とか「教養のため」という理由で我慢しません。

あなたに覚えておいてほしいのは、「英語を使って楽しませる」ことです。

私は「英語絵本の読み聞かせ」をおすすめしています。これは「英語を使って楽しい話をお母さんと笑いながら読めるから」です。勉強の概念を持ち込まずに、英語に触れられる点で絵本の読み聞かせはとても優れています。

音に強い特性を活用して、勉強を意識させない

この時期の子どもが有利なのは、「恥ずかしがらずに英語の音をまねしようとする」特性があるからです。初めて英語を習う中学生に“th”(舌先を上下の歯の間に挟み空気を出す音)の発音を教えても、積極的にまねしようとはしません。「照れ臭さ」があるからです。

この点は幼児~小学1・2年生までの子どもには「抵抗感」がありません。「これ、上手にできるかな?」と促すとすぐにチャレンジします。英語の発音に関しては理屈よりも実践が大切です。小さい子どもが短期間で発音が上達するのはこれが理由です。

お母さんにできる具体的なこととして、「英語絵本の読み聞かせ」が最も取り組みやすいです。盛り上がる部分をお母さんが楽しく読んであげると、そのうち子どもは自分からまねして声を出して読み始めます。

発音を気にして読み聞かせに消極的なお母さんもいますが、これから多くの人の発音を聞く機会があるので心配しないでください。完璧に正しく読める人などいないので、できる範囲で頑張れば充分です。

このように絵本の読み聞かせを通して、英語に楽しみながら触れさせるようにしましょう。短い単語やセンテンスをまねするまで持っていければ、この年齢での英語教育は充分成功です。

結果をすぐに求めない

毎日絵本の読み聞かせをしても、「なかなか子どもが英語を声に出さない」と感じることもあります。見た目には子どもに変化がなくても、頭の内部で変化は蓄積されています。

だから結果をすぐに求めないで、半年~1年程度は待つようにしてください。長すぎると感じるかもしれませんが、日本語を話し始めるまでにも同じ時間がかかったはずです。

実は私も子どもに絵本の読み聞かせをしていて、子どもが英語を口にせずじれったく感じた時期がありました。子どもは絵本は好きだったので、私のところに「読んで」と持ってきます。私も楽しかったので、ときどき新しい本を買い足しました。

8か月くらい経った頃から、次のページをめくる前に子どもが英語を自分で読み始めました。文字を読んでいるというよりも、私の英語を耳で覚えていたようです。絵本の最も盛り上がるところは子どもの順番になり、ますます絵本が好きになったようでした。

変化が起きるまで待つのは大変ですが、「英語のため」と考えずに「親子で読書を楽しむ」程度に気楽に考えたほうが長く続けられます。

子ども自ら興味をもつように仕向ける

子どもに英語を「勉強」として押し付けるのは最悪です。反対に、何もせずに放ったらかしではいつまでたっても子どもは英語に興味を持つこともありません。やはりお母さんが「仕掛け」を作ることで、子どもが自分から英語に触れようと仕向けなければいけません。

リビングに一冊も本がない家庭と本棚に子どもが読みそうな本がたくさん並べてある家庭では、どちらが本好きの子どもが育つかといえば当然後者です。環境を提供するのがお母さんの役割です。

私は子どもに英語での読書を強制したことはありません。ただし、いろいろと策を講じました。例えば、新しく英語絵本を買ったときのことです。子どもがおもちゃで遊んでいる横で、その絵本を私が一生懸命読みます。

しばらくすると子どもは「それ、何?」と近づいてきます。「今お父さんが読んでいるから、あとでね」ともったいぶります。「僕も読みたいよ」とせがんだところで、「じゃあ一緒に読もうか?」と自然に読書につなげることができます。

このように子どもの意志で英語に触れるように策を講じるのが、英語好きな子どもを育てるコツです。

幼児~小学1・2年生は自分の意志で選んだおもしろそうなことには夢中になります。文字を書いたり読んだりするのはまだ苦手なので、無理にワークブックに取り組ませるのはやめたほうがいいです。

絵本の読み聞かせを中心に据えながら、子どもが自分の意志で英語に触れるように「仕掛け」を張り巡らせてください。

小学3年生へのサポート

小学校の先生の間では常識である「小3の壁」があります。それまでは幼稚園の延長だった学習内容が、小学3年生から一気に「小学校の勉強」へとレベルアップすることを指します。

もし、小学2年生と3年生の国語の教科書を見比べる機会があったら、ぜひ確認してみてください。文字の量や語彙レベルなど「小3の壁」を実感できるはずです。

しかし、この時期から「英語学習も一気にレベルアップしたほうがいい」と考えるのは早計です。私の意見ですが、この年齢の子どもは英語教師泣かせなのです。

文法はまだ早い

「文法学習も少しずつ始めた方がいいのでは」と考えるお母さんもいるかもしれません。しかし、この年齢の子どもに文法アプローチで英語学習をするのはやめたほうがいいです。

なぜなら文法のような抽象的な概念を理解するには、まだ幼過ぎるからです。では、これまでと同じように絵本を中心にすすめられるかといえば、それも難しくなります。なぜなら、子どもが普段読むようになっている本のレベルに合わないからです。

そして小学1・2年生と決定的に異なるのは、英語を話すことに「恥ずかしさ」や「間違えたら嫌だ」という抵抗を感じ始めるようになることです。

文法アプローチには早すぎて、音の練習もこれまで通りに素直にしなくなるのがこの年齢の特徴です。では、この時期にお母さんが心がけるべきことについて説明します。

思わず口まねしたくなるように仕向ける

ここでもお母さんの「仕掛け」が威力を発揮します。子どもはゲーム好きです。人間の本能として「勝ち負け」がかかると夢中になるようです。だからスポーツは多くの人に愛されています。

英語学習にもこの本能を上手に活用しましょう。お母さんは、子どもの「よきライバル」になってください。英語学習において競争するのです。

私がこれに気がついたのにはきっかけがありました。文法の問題を息子に教えているときに、“The police ( was, were) investigating the case….” (警察は事件を捜査していた)でどちらかを選ぶ問題がありました。息子はwereを選びましたが、私は「wasじゃない?」と反論したのです。

正解はwereです。これはthe police は見た目が単数でも「複数扱い」するからです。peopleと同じです。恥ずかしながら、私は本気で間違えてしまいました。解答を見た息子は大喜びです。滅多に私は間違えないので、鬼の首を取ったような喜びようでした。

これをきっかけに息子はあまり乗り気でなかった文法問題に積極的に取り組むようになりました。きっと「お父さんを打ち負かしてやりたい」と思ったからです。

英語の苦手なお母さんは、この点非常に有利なのです。なぜなら子どもを喜ばせる回数が増えるからです。「上から教える」スタイルではなく、「共に競い合う」スタンスで子どもと向き合ってみましょう。

好きな映画の傾向を把握する

子どもの「好きなこと」「嫌いなこと」「苦手なこと」が少しずつはっきりしてくる時期です。ときどき家族で映画を観ることもあるでしょう。普段から子どもの映画の好みを把握しておくと英語学習に役立ちます。

たとえば、プリンセスが好きな女の子ならディズニー作品がおすすめです。「英語音声」で一緒に見てみましょう。吹替で最初に見ておけば「英語音声」に切り替えても、どのセリフの場面かは理解できるはずです。

映画で英語を学ぶときにはコツがあります。私が中学生の頃にしていたことです。

実は映画のリスニングは最上級に難しいです。いきなりこれを押しつけたら映画そのものを嫌いになってしまいます。そうではなくて、まずは「映画のタイトル」に注目させます。

美女と野獣なら“Beauty and the Beast” が原題です。これで単語を二つ覚えられます。しかも絶対に忘れません。タイトルは文字で画面に出るので、聴き取れなくても大丈夫です。

有名な俳優が出演している場合は、その名前を見つけるのもいいトレーニングです。音と綴りを合わせられるのでフォニックスの訓練になります。

映画のセリフに関しては、「決まり文句」は聴き取りやすいはずです。美女と野獣なら最初のナレーションに“Once upon a time”(むかしむかし)という昔話にお決まりの表現が使われています。

このように小学生でも読めたり聴き取れるところを少しずつ増やすことで、好きな映画と英語学習を上手に結び付けられるようになります。

歌に興味を持たせる

歌が好きな子どもなら、洋楽も試す価値ありです。これまでと同様に押しつけると子どもは嫌がります。私だったら、車に乗ったときは「お父さんが聞く英語の歌」としてあらかじめ用意しておきます。

ここで子ども向けに“Old MacDonald had a farm”のような歌を集めると、子どもは「これは自分に勉強させるためだ」と勘づきます。

お母さんが好きな歌を選んでください。子ども向けでなくても全然かまいません。例えば、「Best Day of My Life」 です。

お母さんはあらかじめ歌詞を調べておいて、一部だけでも歌えるよう練習しましょう。歌を聴きながら自分で歌うだけでいいのです。

子どもは「意味はわからないけれど、いい歌だな」と思えば、勝手に興味を持ちます。家に帰ってから歌詞付きのYouTube動画を見せて、子どもの気が向けば自分で練習しはじめます。

文字タイプか音タイプか

小学3年生になると、「文字に強く反応するタイプ」と「音に強く反応するタイプ」に分かれます。前者の場合は、簡単な英語の本にチャレンジさせたほうがいいです。ただし、このときも音読を忘れないようにしましょう。

音に強く反応するなら、映画や歌と結び付けながら英語を学ぶといいです。

「4技能(聞く・話す・読む・書く)バランスよく学ばせたい」と思うお母さんもいるかもしれません。今は英語にのめり込むきっかけの段階なので、好きなところから始めてうまく軌道に載せることに集中しましょう。いずれバランスよく学ぶので安心してください。

小学4~6年生へのサポート

小学4~6年生の期間は、本格的な英語学習を開始できるチャンスです。テストや受験といったプレッシャーから解放されている間に、英語学習を開始できるメリットは大きいです。

ではこの時期の子どもにお母さんとして何ができるのかを詳しく説明します。

テストのための英語から遠い「今」がチャンス!

以前、私に「英単語をなかなか覚えられない」と相談に来た中学生がいました。そこで普段、どんな覚え方をしているかを再現してもらいました。

「木曜日は、T(ティー)・h(エイチ)・u(ユー)…」とつぶやきながら、紙に書き始めました。そこで私はその単語を声に出して読むようにいうと、彼は「わかりません」と答えました。

私は「英語ってまず、読めることが大切なんだけど、そう思わない?」とたずねると、その中学生は「でも、テストでは答えを書ければ〇をもらえるから関係ないですよね?」と真顔で答えました。

私にとっては衝撃的な回答でした。それは「教科や受験科目としてしか英語をとらえていない」とわかったからです。

英語は本来「コミュニケーションの道具」です。現実に英語を使って生活している国があるのです。しかし先ほどの中学生にとって、英語とは「教科」や「受験科目」のためでしか存在していません。彼のような生徒は例外ではありません。

小学4~6年生から本格的に英語を始めるメリットは、コミュニケーションの道具として英語を考えるようになることです。まずは、このことをお母さんにも強く意識してほしいと思います。

資格取得に夢中になり過ぎない

小学5年生くらいになると「英検準2級」に合格する子どもがチラホラと登場します。英語学習の進捗状況をチェックするために英検を受けるのは大賛成です。その結果「英検〇級合格」の資格がもらえるなら喜ばしいことです。

しかし、英検合格を目的にしてお母さんが子どもにプレッシャーをかけるようなことはやめてください。せっかく、「コミュニケーションとしての英語」を意識できる時期なのに、わざわざ「テストのための英語」を子どもに植え付けているからです。

周りの子どもの「英検〇級」に惑わされずに、「本物の英語力」をつけさせてあげるように考えてあげましょう。

音読練習+文法で基本を固めよう

小学5・6年生になったら、短めの素材で音読練習することを習慣化しましょう。教材は通信講座でも何かのテキストでもかまいません。ネイティブによるナチュラルスピードの音声付きのものが適しています。

このとき必要に応じて基本的な文法を学習すると、飛躍的に英語力を伸ばせます。最初に充分口頭練習を積んだ後、文法で理解を深めることが大切です。文法を先に学習すると知識だけの英語となり、実際の場面で使えるようにはなりません。

英語の得意なお母さんでも、そろそろプロの手を借りたほうがいい段階です。音読の重要性を認識している先生を探しましょう。やはりどの年齢から始めても、言葉の学習に音声の訓練は欠かせないのです。

この動画セミナーではリスニングだけでなく、英語4技能全体を底上げする方法を紹介しています

興味のある分野に絞った英語素材を自然に与える

小学3・4年生の項目でも触れましたが、子どもの興味はより細分化し高度になります。好きなものに没頭する能力を英語にも応用しないのはもったいないです。

専門知識があれば多少わからない単語があっても、類推しながら読めるものです。私は小学5年生頃、天体に興味がありました。毎晩のように天体望遠鏡で星を眺めているうちに、主な星雲・星団のある場所はほとんど暗記していました。

あるとき大きい書店で“SKY & TELESCOPE” というアメリカの天体ファン向けの雑誌が置いてありました。英語はほとんど読めませんでしたが、いくつかの単語はかなり正確に意味を把握できました。

たとえば、focus(焦点), objective lens(対物レンズ), nebula(星雲)などの単語は図や写真を見れば、簡単に意味がわかりました。

このように大人顔負けの知識欲がある子ども(〇〇博士タイプ)なら、英語と掛け合わせると相乗効果を発揮します。大都市に出かける機会があるなら、洋書の雑誌コーナーで趣味に関する雑誌を買ってあげましょう。

小学生のうちに身につけさせたい5つのこと

中学生になる前に、英語に関して子どもに身につけさせたいことを3つにまとめました。不思議なことに中学校の英語の先生がこのような話を小学校の先生に伝えることはほとんどありません。同様に高校の先生も中学の先生にこのような話をする機会はありません。

中学校以降、子どもが英語を楽しみながら一生懸命勉強して成績もグングン伸びるように、参考にしてください。

「コミュニケーションの道具としての英語」を体験させる

大切なことなので繰り返します。英語は世界的に使用されている言語です。英語はコミュニケーションの道具以外の何物でもありません。

当たり前のことですが、受験のことばかり意識し続けると、いつの間にか試験のための英語としかとらえなくなります。そして受験が終わった瞬間に英語の学習をやめてしまいます。

これを防ぐためには、実際に英語を使って生活している人たちを見せたり、体験させたりするのが効果的です。具体的には、海外旅行に連れて行ったり、英語キャンプや短期留学に参加させたりすることです。費用的に難しければ、ホームステイを一時的に受け入れるのもいいでしょう。

「英語が通じた喜び」と「うまく伝えられなかったフラストレーション」は、今後の英語学習を続ける大きなモチベーションになります。

日本人が少ない環境に、日本の子どもは慣れていません。マイノリティの立場になっても堂々と振る舞うためには、やはりコミュニケーション手段が必要です。そのようなことを体験から学ばせるのはとても意義があります。

楽しく努力する

小学生時代にどうしても身につけたいスキルは「楽しく努力する」ことです。努力と我慢は異なります。「英語は楽しい→もっと上手になりたい→努力する→少し上手になった→うれしい」循環に入ればしめたものです。

これは英語に限った話ではありません。スポーツや他の習いごとでもいいのです。どれか一つの分野で「楽しく努力」できる子どもは、きっと必要になれば他の分野でもできるからです。

学校の成績や受験だけでなく、一生を通じてこの能力は大切です。ぜひ、その基礎を小学校時代に身につけるようにサポートしてあげましょう。

声に出して読む習慣をつける

英語学習において静かに黙々と勉強しているようでは成功できません。とにかく声に出して読むことが重要です。

それを体系化したものが「音読トレーニング」です。極論を言えば、「音読トレーニング」を日常的に行うだけで、中学・高校の英語は充分に乗り切れます。

英語教育に携わる者ならほとんどの人は理解していますが、時間がかかるために生徒に音読練習の仕方を細かく指導している学校はほとんどありません。それなら家庭でお母さんが中心となって「音読トレーニング」の環境を整えるしかありません。

中学生で木曜日の綴りをSarsdayと書いてしまう生徒は珍しくありません。Thursdayが正解です。普段からthの発音を意識して何度も音読していたら、ありえない綴りの間違いです。

自分のできる範囲で精一杯、音読する訓練を年単位で続けると、英語の力は確実についてきます。ぜひ、小学校の間にそれが身につくようにしてあげましょう。

まとめ

幼少期は音の学習の適齢期です。お母さんの英語をたくさん聞かせてあげましょう。具体的には英語絵本の読み聞かせがおすすめの方法です。

小学3年生では興味や趣味に即した英語を与えると、自分から英語を学ぶようになります。文法学習はまだ早いので、あわてて取り組ませても効果的とはいえません。

小学校4~6年生からは本格的な英語学習を開始できます。受験まではまだ時間がたっぷりあるこの時期に、「コミュニケーションの道具」としての英語を強く意識させてあげましょう。

どの年齢層でも共通しているのは、「楽しく努力する」のが最も効率的な学習方法であることです。また、英語学習の基本は「音声」なので、年齢に即した方法で英語を音読すると中学生以降で英語力は飛躍的に伸びるようになります。

英語を教えるのは教師の仕事ですが、お母さんの子どもへの接し方は教師以上に影響力は大きいともいえます。ぜひ、子どもの特徴を正しく理解して、子どもみずから英語を学びたくなるような環境づくりをサポートしてあげましょう。

 

小学生の英語学習の始め方:最強自宅学習プラン

2020年度から小学3年生からの英語が必修となりました。小学5年生からは英語の成績もつけられます。このような状況の中、「ウチの子も早めに準備しなくては」と考えるお母さんも多いかと思います。

しかし、子どものうちからあまり勉強に縛りつけるのもよくないし、他に習い事をしていると教室に通うのもなかなか大変です。

そこでまずは自宅で子どもに英語を学習させてみようと考える家庭が増えつつあるように感じます。「いつから始めたらいいのか」「何をさせたらいいのか」について悩んでいるお母さんも多いはずです。

そこで今回は、小学生~高校生まで指導経験のある私がオススメする、小学生からの英語学習の始め方について説明します。主に自宅で英語学習に取り組ませたいと考えているお母さんのために、大切な考え方や具体的な方法についてアドバイスします。

英語のゴールをどこに定めるかがポイント

まずは親子で英語のゴールがどこなのかについて話し合いましょう。一般的に英語を使って仕事をするためには、次の基準が目安になります。

社会人になる前に(20~21歳)、英検準1級レベル、TOEIC750~860点を取得

一般的な基準よりも高めですが、私の印象ではこれくらいに達していないと、英語を使った仕事は難しいと感じます。

「英語は必要になってから学べばよい」と考える人もいます。しかし、社会人になると忙しすぎて英語学習に思ったように時間を割けません。時間的余裕のあるうちに英語をマスターしたほうがよいです。

また、英語をある程度身につけておくことで、仕事の選択肢を広げたり、給与水準の高い仕事を選べることもあります。学生のうちにやれることは済ませておきましょう。

中学・高校の英語の授業を活用しながら、目標に向かって実力を積み上げていくのが最も賢いやり方です。

ゴールから逆算すると、小学校5年生あたりから始めると余裕をもってすすめられます。それより早くても構いませんが、文法については理解することができずに効率が悪くなります(発音などは早めのほうがいいです)。

小学生の英語自宅学習で最も大切なことは、子どもに「英語学習の正しい型」を身につけさせることです。正しい型とは主に「音読習慣を身につけること」です。具体的な内容について詳述します。

小学生のうちに自宅で英語学習の正しい型を

中学生に英語を指導していて、私はもどかしく感じることがあります。それは彼らが英語の音読にとても消極的なことです。

例えば、日本語を勉強している外国人が日本語を声に出さずに問題集だけに取り組んでいたら、どのように感じますか。「それでは使えるようにならない」と思うことでしょう。でも、英語を学ぶほとんどの中学生は音読に消極的なのが実態です。

「英語を声に出す」ことは、英語学習の基本です。しかし、彼らは黙々と問題集を解くだけでほとんど声に出して英文を読もうとはしません。恥ずかしいのか、間違えるのが怖いのか、理由ははっきりしませんが、とにかく声に出しません。

根気よく指導して半年くらいすると一部の生徒が積極的に声を出すようになります。しかし、多くの生徒は沈黙したままです。

小学生から英語を始める最大の価値は、英語を声に出す習慣をつけさせやすいことです。家庭で英語を学ばせるときはぜひ音読を取り入れるようにしましょう。中学生では遅すぎます。

自宅で身につけさせたい!英語音読の習慣

音読といっても本格的な音読のトレーニングのことではありません。英文を見たときに、声に出して読んでみるだけでよいのです。

英語を学ぶときは教材を使用します。そこには例文がたくさん載っています。そして多くの場合、CDやダウンロードできる音源が付属しています。これらを利用して、英文をまめに声に出して読み上げるだけで充分です。

注意して欲しいのは、カタカナ読みではダメです。【f】【v】【θ】【ð】【l】【r】など日本人が苦手とする発音に気をつけながら、CDのマネをして子どもに音読させるようにしましょう。

発音指導が苦手なお母さんは、動画サイトなどを利用して子どもと一緒に練習するようにしましょう。英文を見たら即ブツブツ声に出すくらいの状態にまで習慣化させれば成功です。

反対に、沈黙したままワークブックをこなしていたら、一緒に声に出して英語を音読するなどのサポートが必要です。次に、小学生のうちに攻略しておいたほうがよい英文法について説明します。

小学生の英語はbe動詞と一般動詞の現在形に時間をかけよう

英文法に関しては小学5年生から始めるとちょうどよいです。抽象的な概念を理解し始める年齢なので効率がいいです。ただし、文法用語だらけの教材で中学生と同じような学習を無理にさせると英語嫌いになってしまうので注意が必要です。

また子どもの成長に合わせて始めないと、混乱してしまいます。国語の返却されたテストを見て、主語・述語などの文法問題がある程度正解しているようなら大丈夫です。もし、充分に理解していないようなら英語の学習には早すぎます。

あせって「小学生のうちに英検3級を!」のような高すぎる目標も私は不要だと考えています。英語学習が順調に進み、結果的に3級を取得できたなら何も問題ありません。資格取得ばかりにとらわれるのはやめましょう。

私が小学生を指導するときに重要視しているのは、「be動詞と一般動詞の現在形」です。もう少し詳しく説明すると、肯定文・否定文・疑問文(疑問詞も含む)をすぐに口から出せる状態にまで慣れさせる、ということです。

理由は、「be動詞と一般動詞の現在形」が完全に理解できると、それ以降の文法の学習が飛躍的に効率がよくなります。

たとえば、助動詞canを習うとき、一般動詞のdoのパターンがとても役に立ちます。

You speak English.  You don’t speak English.  Do you speak English?
You can speak English.  You cannot speak English.  Can you speak English?

doの代わりにcanを置けば、理解しやすいです。

現在進行形の文の構造はbe動詞の文そのものです。

She is beautiful.  She isn’t beautiful.  Is she beautiful?
She is running.  She isn’t running.  Is she running?

個人的には「be動詞と一般動詞の現在形」は、それ以降の項目の3倍は時間をかける価値があると思っています。

しかし、中学校の指導計画ではその他の項目と同じ時間を配分されているため、理解が不十分でもそのまま進んでしまいます。疑問詞(What, How manyなど)を絡めて、疑問文などをスラスラと作れるようになるまで慣れておくと、必ず英語は伸びます。

英語が苦手になる生徒の多くは、この「be動詞と一般動詞の現在形」の理解と運用が不十分だからです。英語が苦手な生徒のできない原因は、音読の軽視と基本文法の理解と練習不足です。

小学生から英語を学ぶならこの分野を徹底的に攻略することが、後で英語の成績が急上昇することにつながります。

おすすめ教材

英語と日本語の大きな違いのひとつは、語順の重要性です。英語は語順が意味を決定するうえでとても大切な要素です。

日本語は「て・に・を・は」などの助詞が言葉の役割を決めているので、語順に比較的寛容です。しかし、英語は語順が入れ替わると意味がまったく異なります。

例えば、The dog bit the man.(犬が男にかみついた)と The man bit the dog.(男が犬にかみついた)では意味が変わってしまいます。

この語順を強く意識して「be動詞と一般動詞の現在形」を中心に学べる教材は、Jリサーチ出版『「意味順」だからできる!小学生のための英文法ドリル』です。

このドリルは1「be動詞マスター」と2「一般動詞マスター」に分かれています。1テーマで1冊なので、初めて英語を学ぶ小学生にはすぐに一冊を仕上げられて達成感が味わえます。

このテキストの最大の特徴は、「意味順」ボックスと呼ばれる色分けされた解答欄が用意されているところです。英語の文型が身につくように、主語は赤、動詞は青、目的語は緑とわかりやすく表示されているので、子どもは迷わずに英文を作ることができます。

解答欄は4線が引いてあって、英語を書き慣れない子どもでも、大文字や小文字の高さに注意しながら書けるように配慮されています。

一方、使いにくいところもあります。ダウンロードする形式の音声がありますが、読まれるスピードが遅すぎます。1.5倍速再生で聴いてちょうどいいくらいです。

高学年が使うときは、親がある程度補足しなければいけません。たとえば、冠詞(a, an, the)についての詳しい説明がないため、テキストとは別に説明してあげる必要があります。人称代名詞の所有格(my, yourなど)も説明がないのが残念です。

単語に読みやすいようにカタカナが振ってあるのもマイナスポイントです。子どもはこれを見て発音してしまうので、カタカナを読まないように指導する必要があります。

小学生向けの英語テキストは、最近ようやく本腰を入れて出版されています。ときどき書店をチェックして評判のよさそうなものを確かめておくようにしましょう。

テストに縛られない小学生の時期は英語学習にとても大切

中学校になると定期考査があります。英語の試験は試験範囲が決められていて、その中から出題されます。私の考えでは、試験範囲が限定されていることが、生徒の英語の成長を阻害しています。

本質を理解して英語を音読しながら慣れていって、ある時点で試験を受けるなら何も問題ありません。しかし、実際には直前に要領よく日本語訳を丸暗記して適当にごまかそうとする勉強を繰り返す生徒が多いのです。

ある程度広い範囲を学んだあと、どこが出るかわからない形式で出題するなら、生徒も小手先の勉強が通じないとわかるはずです。しかし、実際には試験範囲だけ単語の意味を暗記したりする適当な勉強法でも多少の点数が取れてしまいます。

中学校で英語の成績が伸びる子は、定期テストの範囲などにとらわれず常に先の目標に意識を向けています。過去に習ったことも忘れないように、言われなくても復習します。そのような学習姿勢が英語の実力に結びつきます。

小学校では定期テストがありません。小手先の勉強をする必要がないため、英語の基本に腰を据えて取り組めます。この時期を有効に利用して、その後の英文法の基礎となる「be動詞と一般動詞の現在形」をマスターするようにしましょう。

これが英語が得意な子どもにするためのコツです。

まとめ

小学校での英語教育が本格化し「家庭で子どもに英語を学ばせたい」と考えるお母さんは多いはずです。始める時期とどのように家庭で指導したらよいのか、に悩みます。

私は目安として小学5年生からが、家庭で英語を学び始めるのによいと感じます。抽象的な概念の理解力が高くなり、英文法の基本を効率的に学べるからです。

小学生のうちに絶対に身につけておきたいのは、英語を積極的に音読する習慣です。中学生になると多くの生徒は英語を声に出すことを嫌がります。声に出すことは言語学習の要なので、小学生のうちに音読を習慣化させましょう。

文法に関しては、「be動詞と一般動詞の現在形」の学習に力を入れましょう。頭で理解できているだけではダメです。肯定文・否定文・疑問文がすぐに口をついて出てくるレベルまで何度も練習することが大切です。

「be動詞と一般動詞の現在形」はその後の英文法の基礎となります。ここをしっかりとマスターしておくと、助動詞・進行形・過去形などを学ぶときでもあっという間に習得できます。

中学校では定期試験があり、直前の対策だけで乗り切ろうとする生徒がかなりいます。これを繰り返してもまったく実力がつかず、気がついたときには手遅れです。

試験がない小学校での英語学習時間はとても貴重です。あせらずに「be動詞と一般動詞の現在形」を音読しながら、家庭で取り組ませましょう。

幼児向け英語教材選びで後悔しないために

突然ですがあなたにひとつ試してほしいことがあります。「〇歳の壁」というキーワードで、〇の中に2歳~10歳まで順に入れて検索してみてください。おそらくどの数字を入れても「〇歳の壁」の情報がヒットします。

それにしてもたくさんの「壁」があるものです。そして、そのほとんどは教材を売るために業者が作り上げたものであることは想像できます。英語の場合なら「〇歳を過ぎると英語を吸収しなくなる」という半ば脅し文句のようなものです。

セールストークとわかっていながら「今から英語を始めないと、最高の時期を逃してしまう」とつい不安になるものです。最初の子どもの場合はなおさらです。

このようなお母さんにこそ、今回の記事をきちんと読んでいただきたいと思います。結論からいえば、英語は何歳からでも習得できます(ただし、アプロ―チは年齢によって変える必要があります)。

高額な教材を契約してしまう前に今一度冷静になって、教材選びで後悔しないための視点を持つようにしてください。

これだけは知っておきたい幼児向け英語教材の大原則

英語教材を選ぶときほとんどのお母さんは、クチコミサイトやランキングサイトを検索します。これらのサイトには有益な情報も含まれていますが、最終的には自分で判断して決めなければいけません。

このときに大切ないくつかの「大原則」があります。その中でも、つい勘違いしてしまいがちなことを中心に説明します。教材選びで後悔した経験のあるお母さんはその原因をきちんと理解すれば、次回からはより賢い選択ができるようになります。

教材

英語教材だけでは子どもの英語は伸びない

英語指導の経験から断言できますが、教材だけでは英語は伸びません。少しわからない部分があって、そこを理解できるようになって達成感を味わったり、英語力が少しずつ伸びたりするようになります。そのためにはどうしても指導者が必要です。

もし子ども一人で学んで理解できるのなら、その教材はやさしすぎます。

指導者が必要なもうひとつの理由は、先の展開を見据えた人が指導すると学習効率が段違いに良くなるからです。

例えば、助動詞の「can」をある教材では「~できる」の意味で扱っているとします。確かにこれは正しいのですが、使われる状況によってはbe able to doのほうが適切だったり、文脈によっては「ありうる」という意味に使われたりすることもあります。

このような横展開できる指導者がいると、そのあとの学習効率が極めて高くなります。ところが初めて英語を学ぶ人が独習する場合、このような関連づけはできません。ある程度マスターした人がふり返って初めてわかることだからです。

エベレストなど難易度の高い山に挑戦する登山家は、シェルパと呼ばれる地元の人たちを雇います。彼らは表舞台に立つことはありません。しかし、山を知り尽くしている彼らのサポートなしでは、一流の登山家といえども登頂を成功させることはできません。

シェルパと指導者は似ています。間違いやすいポイントを先回りして察知しながら子どもに助言を与えることで、子どもは最短距離で学習することができます。

繰り返しになりますが、教材だけで子どもの英語力を伸ばすことはできません。そして最も身近な指導者はお母さんです。よい教材に巡り合えたらそれで終わりではないことは承知しておきましょう。

英語を学ぶなら「今しかない」のセールストークに惑わされない

幼児向け英語教材のセールストークを眺めていると「今しかない」のオンパレードです。「脳が柔らかいうちに…」「英語耳は〇歳まで」などがその典型です。

実証済みの事実ですが、英語は何歳からでも学習可能です。一定の年齢を過ぎても語学が習得できます。

小学生がいる家庭には「〇年生から学校の勉強は難しくなります!」「この春がラストチャンス!」と謳った通信講座の案内が毎春送られてきます。これらの説に大した根拠はありません。

賢いお母さんは、このようなセールストークに惑わされないようにしてください。

高額な英語教材は避ける

高額な教材を避けたほうがいいのには、ふたつ理由があります。ひとつめは、コストパフォーマンスが悪くなるからです。

時計に例えてみます。数千円で購入できる時計は、私のような素人にも安っぽく見えます。そして価格が上がるほどに高級感は増していきます。ところがある一定の価格を超えたところから、ほとんど品質に差はなくなります。

私は時計にまったく興味がないので、5万円台の時計と100万円の時計の違いがまったくわかりません。時計に詳しい人に聞いたところ、実際、使われている部品はほとんど変わらないとのことでした。

時計ならブランドに価値を見出すのもありです。しかし、英語教材にブランドなど関係ありません。子どもにとって有益かどうかだけです。

時計と同じく教材もそれなりに凝ったものにするためには手間暇かけるので、ある程度までは価格とクオリティは比例するかもしれません。しかし、何十万もするような高額教材を買ってみても劇的な効果を得られるとは思いません。

もう一つ、高額な教材を避けるべき理由があります。それは、子どもに合っていないと感じながらも、お母さんが「もったいない」とズルズルと使い続けてしまうからです。

また、明らかに子どもが興味を示していなくても「せっかく始めたのだから、しっかりやりなさい!」と怒鳴ってしまうこともあります。それは「損をしたくない」と焦るお母さんの感情から出てくる言葉です。

手頃な価格の教材であればさっさと見切りをつけて、別の教材に切り替えられます。このように高額教材を使うと、かえって子どもの英語学習の妨げになることもあるので注意が必要です。

絵本以外なら、映像・音声中心の英語教材を与えよう

幼児の英語学習のおすすめは「英語絵本の読み聞かせ」です。もちろん「英語の絵本」が教材です。これなら新品で購入しても毎月3,000円くらいで収まります。

これだけでも英語に親しむには充分です。しかし、もう一歩進んで英語力を伸ばしたいなら、音声面にフォーカスを当てた教材を利用してみましょう。

音や映像から単語や表現をまねするような活動を取り入れるようにすると、将来の英語力を伸ばす基盤がしっかりとします。

英語絵本以外の教材を取り入れるなら、映像・音楽が収録された教材で思わず口まねしてしまうようなものがいいです。学習内容としてはチャンツでフォニックスの基礎を学べるようなものが適しています。

ランキングサイトやクチコミサイトであっても、教材の正しい評価がされているとは限りません。売り手の論理に惑わされずに、自信を持って取捨選択できるようになりましょう。

幼児向け英語教材選びのポイント

「教材選びの大原則」を抑えたら、ここからは具体的なポイントについて説明します。慌てて選ぶとお金だけでなく「大切な時間」を失います。最短距離で最大限の効果を生むためにも、ひとつひとつを確認していきます。

子どものレベルを知り、現実的な目標を設定すること

お母さんの役割でとても大切なのは、子どものレベルを把握することです。これを間違えてしまうと教材選びは難航します。もう一つ大切なのは、数か月のスパンで現実的な目標を設定することです。

例えば「英語を話せるようになって欲しい」というのは現実的な目標ではありません。話すといっても、“Good morning.”のあいさつレベルなのか、“I don’t like green peppers because it tastes bitter.”と話せるレベルなのかはっきりしないからです。

「3か月後に、あいさつと数字を1から10までスラスラと言えるようになる」のように具体的な目標を立てるほど、最適な教材を絞り込むことができます。

すべてに万能な教材はありません。そのかわり、目標を絞り込むほどそこにターゲットを合わせた教材を選ようになります。

まとめると「子どもの現在のレベルを正しく把握」して、「3か月程度先の具体的な目標を立てる」ことが、教材選びには欠かせません。

子どもが楽しみながら英語を学べること

子どもは「楽しい」と感じることは夢中になります。反対に、押しつけられたつまらないものからは逃げようとします。大人だって本音はそうですが、感情を押し殺して我慢しているだけです。

つまり子どもに英語学習を継続させたければ、その教材について「楽しい」と感じさせることが必須条件です。楽しいと感じるツボは、子どもによって異なります。男の子と女の子でも異なります。

つまりここでも必要なのは、子どもをよく観察してどんなものに興味を惹かれるのかを理解することです。

教材選びは大変ですが、ハマれるものを見つけると期待以上に英語が伸びます。ほどんどの子どもにはそういうツボはあります。根気よく探してみましょう。

身近な題材

教材の題材は、子どもにも理解できる身近なものが無難です。ファンタジーでも子どもが楽しめるなら問題ありませんが、日常生活で目にする世界を取り扱った教材に主軸を置きましょう。

覚えた英語表現を使ってみるのが学習の最終段階です。もし、身の回りのことと学ぶ英語が関連していなかったら、英語を使う機会が減ってしまいます。

私の息子は3歳のとき「工事車両」が大好きでした。工事現場で穴を掘るショベルカーを飽きもせず、ずっと観察していました。

あるとき英語の絵本にカッコいいショベルカーが登場しました。ショベルカーは英語で「excavator」ですが、大人でも知っている人はほとんどいません。ところが私が何度も読んでいるうちに息子はこの単語を覚えてしまいました。

さらに工事現場でショベルカーを発見すると、“Excavator!”と叫んだことがあります。もし、見たこともない動物や妖精が登場する話だけしか与えていなかったら、このように現実世界と英語を結びつける機会はなくなります。

幼児向けの教材では、身近な題材を扱ったものを基本に選びましょう。

続けやすい費用

子どもの英語教育全般にいえることですが、家計が苦しいのに無理をしてはいけません。それぞれの家庭で無理なく続けられる金額を超えないように気をつけましょう。

英語学習は長期間続けるものです。金額的に無理なことは続きません。あまりお母さんが我慢しすぎると、家族全員が幸せではない状態となります。

先述したように、教材だけで効率的な学習はできません。指導してくれる人にもお金がかかります。もし他にも習いごとがあれば、英語教材だけ無理をするのもおかしな話です。

全体のバランスをみながら、決して金銭的に無理をし過ぎないように気をつけましょう。お母さんの顔が引きつっていては、子どもは楽しく学習できません。

教材を利用して英語学習を進めるためのアドバイス

教材購入後、子どもへの教材の与え方について説明します。一つの教材について1か月~1年くらい取り組むので、取り組み方次第で効果はかなり違ったものになります。

日常生活に英語を取り入れる

教材でだけ英語に触れていると「勉強としての英語」の認識から逃れられません。やはり、何らかの形で生活の一部に英語を取り入れて、「道具として」英語を捉えるようになるのが理想です。

しかし、日本国内で英語を使う環境を求めてもほとんど不可能です。簡単に取り組めるものとしては「英語絵本の読み聞かせ」が有効です。「英語で楽しい読書タイム」を日課にできれば充分です。

教材で学んだ単語や表現の一部を子ども部屋に貼るのも良いアイディアです。英会話教室ではアルファベット表、カラフルなイラスト、英単語が壁にきれいに貼られています。

子どもは無意識に英語を眺めています。これらの装飾は「英語を使う」雰囲気づくりに大いに役立っています。

「英語で育児」をできるならそれが理想です。しかし、それをできるお母さんはまだまだ少数です。「子どもと英会話をしなくては」と大げさに考えて何もしないより、できそうなことから少しずつ取り入れたほうが結果に結びつきやすいです。

NGワードは「勉強」

子どもには「勉強」という言葉は極力使わないようにしましょう。「勉強」には「苦行」のような響きがあって、徐々に子どもは嫌がるようになります。英語だけならまだしも、他の学習にも支障が出ては最悪です。

お母さんひとりで何もかもやろうとすると、ときどき苦しく感じることがあるかもしれません。忙しいときは特に子どもと穏やかな気持ちで相手できないときもあります。

そんなときは土日はお父さんと一緒に教材に取り組んでもらいましょう。楽しみながら続けると、そのうち「幼稚園のお休みの日にお父さんとやる」暗黙の了解ができあがります。

お父さんがわからないふりをしてあげれば、子どもは積極的に教えてあげようと頑張り始めます。なぜなら、子どもは大人に教えてあげるのが大好きだからです。

これを続けていくと習慣化されます。幼児の集中力はせいぜい15分程度なので、仕事で疲れているお父さんにもなんとか協力してくれるようにお母さんから頼んでみてください。

まとめ

おさらいですが、幼児向け英語教材で後悔しないための原則は下記のとおりです。

教材だけでは英語は伸びない
「今しかない」のセールストークに惑わされない
高額な教材は避ける
絵本以外なら、映像・音声中心の教材を与えよう

子どもが夢中になる教材を利用しながら、お母さん自身が教えてあげたり指導者の助けを借りたりすることで学習効率は飛躍的に高くなります。

くれぐれも高いお金を支払ったあとで「もったいないから」と無理やり合わない教材を使用することのないように注意しましょう。どうしても不安なら、比較的低価格のオンライン英会話などからスタートして子どもの興味関心を確かめてからにしましょう。

子どもを英語バカにしないために

グローバル教育の一環として英語の重要性が高まる一方で、小学生には国語教育こそが大切であるという人達もいます。どちらの主張にも一理あり、白黒つけられるものではありません。

これから子どもの英語教育を検討中のお母さんとしては、どちらの説を信じたらいいのか悩むところでしょう。

実は元英語教師の私ですら、「子どもの英語教育は正しいのかどうか」と悩んだ時期がありました。子どもの人生に関わることなので、気軽に試すわけにもいきません。

ひとつだけハッキリわかっていたのは、「親が自信を持って大切だと思っていないことを子どもにやらせてはいけない」ことでした。そのため本格的に子どもの英語教育を始める前に、私(親)の方針を決めなければなりませんでした。

結果として、私は子どもの頃から英語教育を始めるほうを選びました。ネガティブな意見も参考にしつつ、どのように子どもに英語と向き合わせればいいのかを常に考えてきたつもりです。

今回は、子どもの頃から英語を勉強させると「英語バカ」になるという説は本当なのかどうかを検証してみます。英語バカとは「英語は話すけれども中身のない人」のことです。

「英語を話せて中身も充実した大人」に子どもを育てるために、お母さんが知るべきことをまとめました。最後まで読んでいただければ、安心して子どもの英語教育に取り組めるようになります。

子どもの英語教育に否定的な2大著書

私は英語教育関連の記事を必ず読むようにしています。投稿されたコメントの多くは子どもの英語教育に対してネガティブな意見です。注意すると「英語よりも国語教育を」「日本人で英語を必要とする人は1割」という共通のフレーズに気づきます。

おそらくこれらの出どころは、『国家の品格』(藤原正彦)と『日本人の9割に英語はいらない』(成毛眞)の2冊です。

出版当時、両方とも私は読みました。賛同できる部分があったのは確かです。しかし、何か「腑に落ちない」部分もあり、それが何だったのかをきちんと考え直してみます。

『国家の品格』藤原正彦

英語教育について語られているのは一部分です。そこだけ要約すると「小学生のうちは英語よりも国語や数学をしっかりと学びなさい」という主張です。

理由は、教養を深める手段として読書はとても大切なものだからです。そして数学は論理的な思考の訓練になるからです。時間の限られた小学生にとって英語学習はこれらの学習よりも優先されるべきではないという趣旨です。

内容の薄い英語を話す人に対して強烈に批判している部分を引用します。

ケンブリッジ大学で研究生活を送っていたときのことです。数学のノーベル賞と言われるフィールズ賞を取ったある大教授と会って、自己紹介をしました。すると、挨拶もそこそこに、その大教授はこう訊いてきました。

「夏目漱石の『こころ』の中の先生の自殺と、三島由紀夫の自殺とは何か関係があるのか」

(中略)

内容がないのに英語だけは上手いという人間は、日本のイメージを傷つけ、深い内容を持ちながら英語は話せないという大勢の日本人を、無邪気ながら冒涜しているのです。「内容ナシ英語ペラペラ」は海外では黙っていて欲しいくらいです。

初頭教育で、英語についやす時間はありません。とにかく国語です。一生懸命本を読ませ、日本の歴史や伝統文化を教え込む。活字文化を復活させ、読書文化を復活させる。それにより内容を作る。遠回りでも、これが国際人をつくるための最もよい方法です。

「真の国際人になるためには自国の歴史や文化を尊重し、読書を通じて教養を身につけなさい」というのが著者の主張です。

私も外国の人と話す機会はたくさんありました。しかし、夏目漱石や三島由紀夫について質問されたことはなく、「エリートの世界は違うな」と驚いた記憶があります。

『日本人の9割に英語はいらない』成毛眞

この本で一貫しているのは「英語学習とは暗記なので、教養を深めることにはならない」という主張です。そして論拠を示しながら、仕事で英語を必要とする日本人は1割に過ぎず、残りの9割には無用であると指摘しています。

著者は楽天やファーストリテイリングでの社内英語公用語への批判を展開します。その部分を引用します。

20代・30代は仕事で覚えなければならないことが山ほどあるのに、英語の勉強に時間を取られたら肝心の仕事に集中できない。仕事の段取り、社内や社外の調整、自社の商品やサービスに関する情報、市場の動向、販売やPRの戦略やテクニック、企画の作成など、この時期に身につけられなかったら、生涯仕事ができないビジネスマンのまま終わってしまう。ビジネスマンとして、基礎体力をつけなければならない時期に英語にかじりついている暇はないのである。

私はこれを読んだとき、「学生時代までに英語をある程度のレベルにまで仕上げておき、入社後は仕事のスキルを磨くことに集中するのが最良の策」と感じました。

この本で述べられているポイントを整理します。

・英語は暗記科目で教養は身につかない。日本語で読書をしたほうが効率的。
・英語を必要とする日本人は1割だけだから、全員が同じように学ぶ必要はない。
・専門分野を磨き、必要となってから手段としての英語を学べばよい。

高校までの進学率は97%を超えていますが、高校での学習内容を仕事に必要としている人は1割程度でしょう。英語だけに限定された話ではありません。

2冊の本に共通していること

『国家の品格』と『日本人の9割に英語はいらない』に共通しているポイントがあります。

・英語だけを勉強しても教養は身につかないから、中身のない人間になってしまう。

きちんと本を読めばわかりますが、両者とも「英語不要」とは主張していません。他の大切なもの(国語・自国の歴史や文化など)に英語は優先するものではないといっています。

世界的な数学者とグローバル企業で社長を務めた2人の著者の影響力は大きいです。彼らの経歴とメッセージのギャップが読者に強烈なインパクトを与えたのはたしかです。しかし、私はこの主張をそのまま受け入れられませんでした。以下、その理由を説明します。

英語を学んでも教養は身につかない?

論点は「英語を学んだら教養は身につくのか、つかないのか」です。私は英語力の高い人たちと交流する機会が何度もありました。彼らに対して少なくとも「教養がない」と感じたことはありませんでした。

世界的な数学者や大企業の社長からみれば、そんな判断をしている私も無教養な人間であると思われても仕方ありません。しかし一般的なレベルで考えると、「英語を学んでも教養は身につかない」という主張には納得できないのです。

技能+教養=英語力

私はこの問題を考えているうちに、2人の著者と私の間で「英語力」の認識が異なるのではないかと思いました。「中身のない英語」とか「英語は暗記科目」の部分から、彼らのいう「英語学習」とは「英語の技能訓練」だけを指していることがはっきりとわかります。

一方、私が認識している「英語学習」とは「技能」はもちろん、「教養」も含めての総合的な学習です。私が2冊の本で覚えた強い違和感は、この認識の違いから発生するものであることがわかりました。

漢字検定1級は教養があるのか?

まず、英語学習は決して技能訓練だけではないことを証明しなければなりません。イメージしやすくするために、日本語(国語)に置き換えて考えてみます。

例えば、国語の技能的要素に「漢字」の素養があります。漢字検定1級の問題集を開くと、私にはほとんど書けない・読めない漢字ばかりです。しかし、私は日本語の本を日常的に読み、こうして英語教育関連の記事を書いています。

もし、漢字検定1級の人が本も読まず、内容のある文章を書けなかったとしたら周囲の人はどのように感じるでしょうか? おそらく「ただの漢字バカ」として嘲笑するでしょう。

「英語ばかりを勉強していても教養は身につかない」主張は「漢字ばかり勉強していても教養は身につかない」ということと似ています。

では、「英語学習」における「技能」と「教養」はどのような関係になっているのかを見てみましょう。

技能と教養の関係は?

先ほどの日本語の例をもう一度考えてみましょう。難しい漢字を書けたり読めたりすることはマイナスでしょうか? ほとんどの人は「知っていたほうがいい」と答えるでしょう。高度な漢字の読み書きを覚えると、高度なレベルな読書が可能となるからです。

英語学習の技能訓練とは語彙増強、文法学習、4技能(聞く・読む・話す・書く)の訓練を指します。英語の語彙や文法の知識を増やせば、より正確に英語を理解できます。

英語の技能訓練は「天体望遠鏡のレンズを磨くこと」に似ています。収差の少ない大型のレンズを磨ければ、遠くの宇宙をより明るく細かく観察できます。

土星を望遠鏡で初めて観察したのはガリレオといわれています。記録の中でガリレオは「土星には耳がある」と表現しています。当時は望遠鏡の性能が低く、輪として見えなかったからです。

望遠鏡はその後改良されて耳のように見えたものは輪であることがわかります。人間の宇宙への好奇心が望遠鏡の精度を上げ、高性能の望遠鏡で見えたものにさらに探求心が駆り立てられる好循環が生まれて、天文学は発達していきます。

英語の技能を磨くことは、高性能なレンズの製造と同じです。レンズを使って遠くの世界を観察するのは、英語を通して触れる外国の書物や文化を学ぶことに似ています。

私が英語力と呼ぶものは、決して技能だけに限定したものではありません。その技能を駆使して得られる「教養」も含まれます。より詳しい情報がわかるにつれて、さらなる好奇心を満たそうと性能のよいレンズが必要となります。つまり「高い技能」が必要です。

こうして「技能訓練→精度の高い情報→(好奇心)→さらなる技能訓練」の上昇スパイラルが生まれていきます。

英語と教養

日本語先行・英語先行・同時並行でも教養は磨ける

日本人として国語力を磨いて、教養を深めようとすることに異論の余地はありません。しかし、英語でも教養を深めることは充分に可能です。英語力とはまさに「技能と教養」の総合力です。

私は小さい頃恐竜が好きで図書館で図鑑を借りていました。小学2年生で「白亜紀」「ジュラ紀」「三畳紀」という恐竜が栄えた時代の呼称を学びました。だから、映画「ジュラシックパーク」のタイトルを観たときは「Jurassic=ジュラ紀」であることはすぐにわかりました。

私の息子は海外のインターナショナルスクールでYear2~5まで学びました。Year3(日本の2年生相当)のときにちょうど学校で恐竜について学習したときに、「the Cretaceous period」「the Jurassic period」「the Triassic period」の言葉を覚えました。

私はどちらの言葉で先に学んでも、教養に差はないと考えます。息子も日本語の本を読んだときに、「三畳紀」を見れば「ああTriassicのことか」とすぐにわかるはずです。

確かに英語の場合は技能を身につけてからでないと、情報収集のレベルにまで到達しませんから、手間が一つ増えます。しかし、あるレベルを超えてしまえば、英語・日本語の同時並行で教養は磨けます。

英語で学ぶか日本語で学ぶかは、究極のところどちらでもかまいません。それよりも、子どもの「好奇心」こそが決定的な差を生みます。

技能の先で差がつく要素は「夢中になれる力・好奇心・成長願望」

英語でも日本語でも技能を身につけた後、それを活用して「どれだけの読書をしたか」とか「どれだけの経験を積んだか」は非常に大切です。その原動力になるものは、「夢中になれる力・好奇心・成長願望」です。

小学生で英検2級に合格する子どもは珍しくはありません。この時点では技術は身につけています。しかし、これを活用して積極的に英語の本を読まず、外国の人と関わろうとしなかったら「英語バカ」と呼ばれる可能性が高いです。

それは、「知らないことを知りたい」「この人はどういう考えを持った人なんだろう」と考える好奇心が欠けているからです。反対に好奇心旺盛な子どもなら、英語という道具を手に入れたら、積極的に本を読んだり映画を観たり外国人と会話したりしようとするはずです。

残念ながら好奇心の度合いや教養部分まで含めた英語力を測るテストや検定はありません。しかし、英語を学ぶ意味があるかどうかはこの部分にかかっているといっても過言ではありません。

技能テストである「英検〇級」だけでなく、子どもが知的好奇心を持っているかどうかをきちんと評価できるのは身近にいるお母さんやお父さんだと思います。

教養力は読書量と行動力に比例する

読書ほど効率のよい学習はありません。その分野の専門家やプロの小説家が労力をかけて書いた作品を数時間で読めてしまうからです。ビジネス書はおよそ1500円くらいなので、コストパフォーマンスも抜群に高いといえます。

私の妻は英語が得意ではありません。海外生活を始めた頃は、インターナショナルスクールに通う息子のことは私任せでした。ところが私が忙しいときに息子が誕生会に招待され、仕方なく妻が連れていくことになりました。

お母さん同士の会話はもちろん英語です。英語が得意でない妻は渋々出かけていきました。しかし家に帰ってくると、各国から来たお母さん同士でワイワイ会話が盛り上がった話を楽しそうにしていました。

このように、好奇心を失わずに英語で読書をしたり、ちょっとだけ勇気を出して外国の人と交流したりするだけで、人生は豊かになります。好奇心を持たずに行動もしなければ、せっかくの学びのチャンスをみすみす逃すことになります。

教養力は読書量と行動力に比例します。英語を学ぶなら、英語で読書をしたり外国の人と積極的に関わったりする姿勢が大切です。日本語でも同じです。子どもの国語力を磨いても、好奇心がなければ読書もせず行動も起こさないので、得られる恩恵は少ないはずです。

英語を学んでもバカになりません。「技能を通じて読書をしなかったり、英語を使って行動したりしないと、メリットがない」というのが正解です。それは英語でも日本語でも同じことです。

英語学習を通じて頭がよくなるワケ

私は英語学習を通じて子どもの頭をよくすることは可能だと思っています。英語を学ぶのは歴史の年号の暗記とは明らかに違います。どのような能力が身につくのかを詳しく解説します。

比喩表現・多義語で連想力アップ

英語のイディオムや多義語を学習するときは、「連想力」がフル回転します。「どうしてこのような言い回しになるのだろう」とか「この言葉はどうしてそんな意味にも使われるのか」のように、異なることに意味を見出して結びつけようとするからです。

例えば、受験でも頻出するイディオムに「look forward to~」(~を楽しみにする)があります。“I’m looking forward to seeing you.”(お会いできるのを楽しみにしています)のように使われます。

このイディオムを丸暗記しようとするのは英語センスがありません。「なぜlook forward toと表現されるのか」をしっかりと考えることが子どもの頭を良くするからです。

「lookは見る、forwardは前、これから起きる何か楽しみにしていることをじっと見つめている(考えている)状態だからかな」と、こじつけでもいいから関連づけるのです。

遠足に行く子どもは前日からソワソワします。遠足のことばかり考えるからです。そんな気持ちと重ね合わせることができれば、look forward toを覚えるのはただの暗記ではなく連想力を鍛えるよい機会となります。

他にも例を挙げてみます。bookは名詞なら「本」ですが、動詞では「を予約する」になります。まったく異なる意味のように感じるかもしれませんが、私ならこう考えます。

「予約するときは、帳面に日付・名前・電話番号を記入するからbookと言うのかもしれない」

これが正しいかどうかは調べていません。しかし、このように関連づけすることは言葉のトレーニングになります。

英文法の発見

英語学習を通じて英語に触れていると、子どもなりに疑問を持ったり法則を見出したりするようになります。

中学生の頃、私は洋画を見ていて俳優が“It could be possible.”(字幕:あり得るな)と話しているのを聞いて疑問に感じました。なぜ、現在形で話すべきところに助動詞canの過去形couldを使っているのかわからなかったのです。

この場合のcouldは人の感情を表現するときに使われる助動詞であり、見た目は過去形でも現在のことを表しています。正しい知識を学んだのはずっと後のことですが、あのとき疑問に感じたことが一気に理解できた喜びを覚えています。

過去形の概念を覚えたての子どもは、しばしばspeakedのような間違いをします(正しくはspoke)。しかし、これは規則動詞と呼ばれる動詞の過去形にはedをつけるルールを自分で推測した結果であり、高度な間違いです。

誰からも教わっていないのに、絵本などを通じて動詞の過去形に共通する形(ed)の法則を見つけて、それを応用しようとしているのは子どもが頭を使っている証拠です。

読書や映画を通じて得られる「行間を読む力」と「論理力」

文学作品を味わい、人とのコミュニケーションを豊かにする大切な能力のひとつは「行間を読む力」です。英語では「read between the lines」といいます。

一般的に欧米人はハッキリと論理的に言葉にして相手に伝える割合が高いと言われています。反対に日本語は、文脈に依存する割合が高く、相手の意図を行間からくみ取らなければならないことが多いようです。

私の意見ですが、世界中の人とコミュニケーションをとる場合は、両方に対応できなければいけません。英語ネイティブでもアメリカは論理的な言葉が好まれるのに対して、イギリス人は日本的な遠回しな表現が多いです。

日本語だけでなく英語で書かれた文章を読んだり、外国人との会話を通じてズレを感じながら経験値を高めたりするのは人間関係を豊かにしてくれます。

映画・本・人を通じて文化・習慣・知識を学ぶ

あるレベルを超えて英語を学ぼうとすると、教科書だけでなく「本物の英語」に触れなければなりません。読書だけでなく、映画を観たり、人と話をしたりすることが必要です。このような経験を重ねていくうちに、自然と外国の文化・習慣などに詳しくなります。

特に体験を通じて直接獲得した情報はとても貴重です。インターネットがどんなに発達していても本当に欲しい情報がなかなか見つからないことはよくあります。

私は家族を連れて3年半マレーシアに移住しました。そのための準備として、インターネットでいろいろと現地情報を収集しました。しかし、なかなか肝心な情報は得られませんでした。ところが5日間現地を視察したら、すべての疑問と不安は解消されました。

英語で現地の人から直接聞いた情報は精度が高く、子どもの学校選びに大いに参考になりました。もし、インターネットだけ(しかも日本語のサイト)で情報収集を済ませようとすれば、悪徳業者のカモになっていたかもしれません。

好奇心を忘れず面倒くさがらずに行動することで、英語を通じて貴重な情報を得ることができます。

英語学習を通じてあきらめない心を養う

英語をマスターするまでに日本人は約3000時間の学習が必要です。長期間の努力を必要としますが、これを続けられるのは「あきらめない心」があるからです。

楽器やスポーツと比較しても、英語は目に見える形としてすぐに結果があらわれません。モチベーションを維持しながら英語学習を継続するのは大変です。なかなか結果が見えない環境でもコツコツと取り組めたとしたら、他の分野でもその能力は活かせるはずです。

何かの研究者になって長期間成果が出ないと心が折れそうになることもあるでしょう。そういうときにも「あきらめない心」を持てることは素晴らしいと思います。

コツコツと学べば英語は必ず結果に表れます。リスニングを磨きたければ、この動画セミナーがおすすめです。

子どもの英語学習の誤解

子どもの英語学習に関して、誤解している方が多いように感じます。ここではいくつかのポイントに絞って取り上げてみます。

暗記力と英語力はあまり関係ない

英語=暗記科目と考える人が多いのです。しかし、英語力と暗記力はあまり関係ないです。私は歴史の年号を暗記するのが苦手で高校生の頃赤点ばかり取っていました。数字の羅列を暗記するのは苦痛で耐えられなかったのです。

一方、単語やイディオムは暗記ではなく、音読を通じて「何度も繰り返した結果、いつの間にか覚えていた」という勉強法を取っていました。

全員名前を知らない友人と同じクラスになったとしても、1か月もすれば名前・顔・およその性格を覚えてしまうのと似ています。

英語を学んでも暗記力は向上しません。歴史の年号をまったく覚えられない私がいうのだから間違いありません。

使えないバイリンガル(帰国子女)

「バイリンガルや帰国子女は(仕事で)使えない」意見をビジネス雑誌などでよく見かけます。国民性などを語るときと一緒で、決めつけるのはあまりいいことではありません。

もし彼らの教養が足りないと感じるなら、これは繰り返し述べているようにその人の好奇心や探求心が足りないせいです。高性能な天体望遠鏡を持っていても、宇宙に関心がなければ無駄になるのと同じです。

日本人でも教養のない人達はたくさんいます。彼らに英語を話すように訓練すれば、当然教養のないままです。バイリンガルだからダメなのではありません。

もし好奇心を忘れず成長願望の強い子どもが英語をマスターすれば、さらに飛躍できると考えるほうが自然です。

子どもの頃の英語教育は日本語に悪影響を与える

私の記事で何度も触れていますが、日本にいながら英語を勉強しても、母国語である日本語に悪影響を及ぼすようなことは起こりません。そこまで成果の上がる英語教育のノウハウがあるのなら、手加減すればいいだけだからです。

現在のところ、それほど効率的に英語を学べる方法は確立されていないません。

子どもの頃から英語学習を始めるメリットは、20歳以降は仕事や研究などの専門分野に集中できるからです。大人になってからでも英語は学べます。しかし、年齢を重ねるごとに忙しくなるので先に済ませておいたほうが好都合だからです。

幼児期に覚えた英語はすぐに忘れる

確かに音声だけで覚えた言語は、必要性がなくなるとすぐに忘れてしまいます。海外の幼稚園にいた頃は英語を話していたのに、日本に帰ったらほとんど忘れてしまった話はよく聞きます。

しかし、そのような事例がわかっているなら、フォニックスを学ばせ少しずつ読書をして文字からの英語学習を増やすべきです。忘れないようにするだけでなく、伸ばしていく努力が必要なのは当然のことです。

「しばらくピアノを弾かないと忘れてしまうから、小さい頃にピアノを習わせるのは意味がない」と主張する人がいたら、おかしな理屈だと感じるでしょう。練習を続ければいいのです。

まとめ

英語学習は単なる技能の訓練ではありません。技能を磨くことは望遠鏡のレンズを磨くことと同じで、より遠くの景色を明るくハッキリと見せてくれます。

英語技能を向上させると、より多くの英語で書かれた情報を得たり、外国人とのコミュニケーションの精度を高めたりすることが可能となります。

技能の向上によって得られる情報について、好奇心を持ち「より詳しく知りたい」と思うことが教養を深めることになります。

「英語力とは技能+教養」から成立しています。「英語を勉強すると英語バカになる」誤解は、英語学習を単なる技能面だけで考えているからです。

日本語しか話せなくても強い好奇心や探求心を持ち続ければ、子どもは成長し続けられます。しかし、好奇心の強い子どもが英語という道具を手に入れたとしたら、もっと別の角度にも成長できるはずです。

子どもの頃から英語学習を始めても弊害はありません。子どもの「夢中になれる能力」を大切にして、お母さんは英語学習のフォローをしてあげましょう。英語を話して中身もある大人になるのは可能なので安心してください。

英語教室やオンライン英会話を通じて、いろいろな国の大人と話をするのはとてもよい刺激になります。会話中に学んだその国の文化や習慣をあとで図書館などで調べれば、教養はどんどん高まります。

 

Tokyo Global Gatewayは子どもの英語の試合場所

子どもが頑張って英語を勉強していると「実際に英語を使う機会を作ってあげたい」と思うお母さんもいるでしょう。資金や時間にゆとりがあれば、海外旅行や短期留学に参加させることもできます。しかし、現実にはなかなか難しい家庭が多いです。

「もう少し手軽に英語体験できるプログラムがあればいいのに」と思っていたお母さんに朗報です。2018年9月に東京版英語村であるTokyo Global Gatewayがオープンしました。

ここでは小学生から高校生までの子ども達が、閉鎖空間で半日~一日、英語「で」さまざまなプログラムに取り組みながら、幅広い教養と英語力を磨けます。

このTokyo Global Gatewayとはどのような施設なのかはもちろん、「この施設を利用することによって子どもの英語学習にどのような影響を与えられるのか」について説明します。

Tokyo Global Gatewayとは?

初めてTokyo Global Gateway(以下TGG)の名前を見たとき、私は「ん? インターネットの設定項目?」と思ってしまいました。実はこれ、構想段階では「東京英語村」というプロジェクト名でした。

わかりやすく例えると、子ども達が職業体験できる「キッザニア」がありますが、その英語教育版が「TGG」です。

TGG設立の目的

東京都教育委員会が主導してすすめられたTGGは英語を学ぶ子ども達のための教育施設です。2018年9月にオープン予定ですが、TGGのサイトを閲覧すると詳細を知ることができます。

プログラム監修者の松本茂教授によれば、英語を効率よく身に付けるには、PICサイクルに沿って学習することが大事。Pはpractice(個人学習)、Iはinteraction(対話型学習→学校の授業)、Cはcommunication(実践→TGG)の頭文字。これまで日本の英語学習にはCの部分が充分でなかったとおっしゃっています。部活動に例えるなら、普段の授業が練習に当たり、TGGは試合を担当します。試合に勝つことを目指すことで、毎日の練習方法は実践を想定してがらりと変わってくるように、児童・生徒の普段、英語に取り組む姿勢が大きく変わってくることを想定しています。部活動でも練習試合を多く組みますが、試合の場ほど技能の伸ばす機会はないでしょう。

*Tokyo Global Gatewayサイトより引用(太字は管理人が強調しています)

NHKの語学番組でもおなじみの松本先生(立教大学教授)に監修依頼をする気合の入れようです。引用の後半の太字で強調した部分に注目してください。

日頃の英語学習の成果を試す場所を提供するのがTGGの目的です。確かに試合のない練習だけの部活など、誰もやりたくありません。試合があることで、きつい練習も乗り越えられるし、そのスポーツの楽しさも感じられます。

使う場のない英語学習にも同じことが当てはまります。これまでは海外旅行や短期留学でしか、実践で英語を使用する場面はありませんでした。しかしこれからは、TGGがその場所を提供してくれます。英語学習中の子どもを持つお母さんも期待できそうです。

英語の試合が終わったら、練習(使うための訓練)が必要です。動画サイトを利用したリスニング学習法動画セミナーはこちらをクリック!

TGG設立の経緯

東京都が「英語村」に取り組んでいるニュースは、以前、私も見ました。いつ頃スタートしたのか調べてみると、2015年4月に東京都教育委員会が「英語村に関する有識者会議」を設置して検討を開始したようです。

ここから話し合いを重ね、参入企業の選定などを経て3年半後の2018年9月にオープンする予定です。行政が絡んだ事業にしてはスピーディーな動きです。2020年の東京オリンピックを意識してのことでしょう。

名称も英語村からいつの間にかTokyo Global Gatewayに変更されていました。「東京都で村って、桧原村みたいなイメージだな…」と思っていたら、ガラリとイメージチェンジをしてきたので正直びっくりしました。

場所は「東京都江東区青海2丁目4-32のタイム24ビル内」に決定しました。船の科学館や日本科学未来館のすぐ近くでゆりかもめ「テレコムセンター」駅から徒歩2分の場所です。

TGG、プログラムのベースはCLIL(クリル)

どのような観点からプログラムが提供されているのか気になったので、サイト内で公表されているTGGの特徴を一つひとつ見てみましょう。TGGオフィシャル動画を掲載します。

英語が飛び交う非日常な空間で成功体験が得られる!

TGG内の共通語はもちろん英語です。参加する子どもたちにはどこまで「ノージャパニーズ(日本語禁止)」を貫けるのかが見ものです。これはオリエンテーションの段階で、「英語を話すぞ!」という気持ちにさせられるかどうかにかかっています。

「エージェント」または「スペシャリスト」と呼ばれるイングリッシュ・スピーカーの力量も問われます。トイレに行きたい子どもは事前にフレーズを指導しておかないと、大変なことになりそうな予感がします。

児童・生徒 8 名につき 1 名のイングリッシュ・スピーカーがサポート!

プロモーションビデオを見ると、ネイティブだけでなくさまざまな国の人がイングリッシュ・スピーカーとなり、8人のグループを引率します。いろいろな国の英語を聞けるのはとてもいい経験だと思います。

1グループを8名にしたのも絶妙です。少なすぎると子どもからの発言が不活発になります。しかし、8名いれば一人くらいは引っ張ってくれる子どもがいるものです。全国から集まる知らない子ども同士で半日~一日過ごすのも楽しそうです。

小学生から高校生までさまざまなレベルに対応し、みんなが楽しめる!

英語習いたてのレベルから、かなりの上級者まで対応するようで素晴らしいです。ある程度の規模だからこそ、きめ細かい対応が可能になっています。児童と生徒が、事前に英語レベルを自己申告するのか、現地で測るのかは今のところ不明です。

英検は客観的に数字(スコア)で英語力を示してくれます。TGGを定期利用すると自分の英語力の伸びを主観で感じられます。英検の級が上がるのもうれしいですが、実践の場での実力の伸びを感じられるのは、また別の喜びがあります。

国際機関やグローバル企業、海外の団体などと連携したプログラムも用意!

プログラムを詳しく見ていくと、「国際問題について学ぼう」「グローバル・ビジネスを体験しよう」などと、世界的な企業や団体の協力を得ているものが含まれています。

中高生からは、身近な英語ばかりでなくグローバルな視点も大切です。こうしたプログラムは意識の高い生徒にはピッタリです。

英語教育の専門家が監修し、実践的かつ有効なプログラム!

TGGでは松本教授が監修し、CLIL(内容言語統合型学習)教授法をベースにして開発されたプログラムを提供しています。CLILとは、Content and Language Integrated Learningの頭文字で「クリル」と読みます。

CLILは新しい英語教育法で、理科や社会などの教科を英語で教える教育法です。イマ―ジョン教育と似ていますが、ネイティブが科目指導を目的として行うものはイマ―ジョン教育です。一方、CLILは「科目教育と語学教育の比率を均等に」行うものです。

簡単にいえば、施設内の体験型学習を通じて「幅広い分野の学習をしながら英語も身につけていく」内容です。学校や家庭で培った英語学習をベースにして、世の中のことを学んでいくことになります。

TGGの5つの特徴の評価できる点は、「学校・自習だけでは補えない分野に絞った」ことです。全国にも英語村と呼ばれるような施設はいくつかありますが、他とは一線を画したコンセプトは好感が持てます。

このような理想を追求するにはお金や場所、長期間安定的に運営する会社がなければ実現できません。あればいいなと思っていた空白部分に特化しているので、私は良い企画だなと感じます。

プログラムの詳細と利用料

TGGのプログラムはテーマ別に大きく2つのエリアに分かれています。それらは「アトラクション・エリア」と「アクティブイマ―ジョン・エリア」です。英語ばかりで、何だかよくわからないので、どのようなものなのかそれぞれ説明します。

アトラクション・エリア

アトラクション・エリアは海外旅行や留学などで想定される場面を意識していて、さらに4つのゾーンに分類されています(*画像はTGG公式サイトから転載しました)。

 

ファーマシー(薬局)を作ったのは評価できます。「熱が出た」「下痢」「咳」「のどが痛い」などの症状を英語でいえるのは、命にかかわることなのに学校英語では軽く扱う程度です。ここで学んでおけば、実際に海外の病院でも簡単に症状を説明できると思います。

 

スーベニアショップ(お土産屋さん)が個人的に気になります。ぜひ、値下げ交渉に立ち向かうタフな店員を常駐させ、ミッションの難易度を上げて欲しいです。

留学を想定したときの空間です。スクールオフィスとは事務室のことです。学校の手続きに関することで留学生はしばしば立ち寄ることになるので、これを発案した人は留学経験のある人だと思いました。

ここでのガイドは「エージェント」と呼ばれるイングリッシュ・スピーカーが担当します。

アクティブイマ―ジョン・エリア

こちらのエリアは英語で映像制作やビジネス・プログラムなどに挑戦するエリアです。こちらのエリアはまさにCLIL教授法を活用したプログラムです。TGGサイトからの説明文を引用します。

ここでは、グループで実験したり企画したりと共同作業を通じて、英語で専門知識を身につけられるプログラム(60 分/120 分)を体験。CLIL(内容言語統合型学習)の視点で開発されたプログラムもあります。専門的知識を身につけたスペシャリストを指南役に行われ、エージェントはサポート役に回って盛り上げます。

*TGG公式サイトから引用

具体的なプログラムを表にまとめましたので、ご覧ください。

身近なものから効果音を作り出そう コマ撮り作品を作ろう グループ対抗で頑丈な橋を造ろう
理想の街をつくって紹介しよう キャスター体験をしよう プログラミングを体験しよう
国際問題について学ぼう 未来の名刺を作成しよう ダンスパフォーマンスをしよう
世界の料理をつくろう 茶道で日本文化を学ぼう、伝えよう 演劇をしよう
グローバル・ビジネスを体験しよう 東京の魅力を紹介しよう

好奇心のある子ども達にとって、どれも魅力的です。「自分が子どもだったら絶対に楽しかっただろうな」と思える内容です。

それぞれのプログラムでは話し合わないとプロジェクトは進まないので、それぞれの実力のなかで精一杯英語を話すことが求められます。

利用料(学校利用)

施設の利用料は以下のとおりです。

日帰り
コース 都内 都外
1日コース

(8:30-16:00)

4,800円 6,800円
半日コース

(約4時間)

2,400円 3,500円

東京都教育委員会が始めた事業なので、東京都の子ども達は優遇されています。

学校単位での参加または個人での参加

学校単位または個人での参加になりますが、予約が必要です。参加する時間によってコースは変わるので、TGGのサイトをご覧ください。

サイトに書いてある「セッション」とは、学校でいえば「〇校時」の意味です。半日コースの場合、どのセッションに参加するかで、時間帯は異なるので注意してください。

TGGへの期待

オープン前から、親として非常に楽しみです。早めに実際に子どもを参加させてみて感想を聞いてみたいと思います。今の段階で、私がTGGについて抱く期待と要望を述べます。

モチベーションアップを期待できる

英語無用論の背景には「英語を勉強しても日本ではあまり使わない」事実があります。多くの日本人がこのように感じてしまうことに、共感できる部分もあります。

初期の学習段階から定期的に「英語を実際に使う場面」を体験させることはやはり必要だと感じます。TGG設立目的の中にあった「部活でいうところの試合」の場を日本の英語学習者に与えられることはとても有意義です。

英語の練習(学習)ばかりでは確かにモチベーションは下がります。英語学習に停滞感が出てきたらこうした施設を利用して、モチベーションアップを図るのは大切です。

英語を学ぶ意味を考える機会になる

英語を学ぶのは英語を話すためではなく、英語で何かを学んだり仕事をしたりするためです。英語の4技能(リーディング、リスニング、スピーキング、ライティング)とはそれを実現するための手段に過ぎません。

日本の学校では英語「で」何かをする場面があまりにも少なすぎて、道具としての英語を意識できませんでした。そのためほとんどの学習者にとって、「受験のための英語」以外に英語を学習する目的がありませんでした。

しかしTGGのような施設に行けば、英語で何かをする体験ができます。体験に勝る学習はありません。「英検〇級取得」「〇〇大学合格」のための英語は通過点に過ぎないことを子どもに理解させるには最適な場所です。

海外旅行や短期留学より効果的な部分もある

海外旅行や短期留学のほうが、TGGのような施設よりもリアリティがあるのは確かです。しかし、海外旅行や短期留学は多くの人にとって気軽に利用できるものではありません。

まず、費用の問題です。比較的距離が近く物価の安いアジア圏に出かけても、親子2人なら20万近くはかかるでしょう。兄弟姉妹がいればさらにコストがかかります。

次に海外旅行に出かけても、子どもが英語を使う場面はほとんどありません。ホテルの人とのやりとりやレストランでのオーダーも普通は親がします。よほど周到に用意しなければ、子どもが英語を話す機会はほとんどないといってよいでしょう。

留学なら語学プログラムが組み込まれているので、英語を話す機会はグッと増えます。でも、英語の勉強だけであれば、普段の学校の授業とそれほど変わらないかもしれません。時事問題や興味深いトピックについて、英語「で」学ぶ授業はそれほど多くないでしょう。

最後に、治安や健康面の不安が残ります。どんなに気を使っていても、渡航期間中は保護者の心配は尽きません。英語ネイティブの国であるアメリカやイギリスまで行けば、時差が大きく体調を崩しやすい傾向があります。

以上のことを総合的に考えると、TGGの利用料はそれほど高いとは思いません。安心で便利な東京の施設内で英語体験ができるので、お母さんも利用しやすいと思います。

地方に住む家族はは夏休みなどを利用して「東京ディズニーランド」と組み合わせてTGGを訪れるのもいいアイデアです。遊びと勉強のバランスが取れて、有意義な旅行になるでしょう。

待機する親やチビッ子にも英語のフォローがあるといい

TGGの対象年齢は小学生~高校生になっています。キッザニアを参考に予想すると、保護者は子どもと接触できないと思うので、長い空き時間ができます。

近くで人気の温泉施設「お台場大江戸温泉物語」で過ごすのも楽しそうですが、子どもは英語で頑張っているので、保護者もそのような体験ができるといいなあと感じます。

また、小学生未満の兄弟姉妹がいる場合も、キッズ用の英語保育園のようなものがあると便利です。

全国にもある英語村

TGGは東京の英語村ですが、似たような施設は全国にいくつかあります。ここでは小学生でも利用できそうなものに限り掲載します。「東京まではなかなか出かけられない」人は近くの英語村を利用しましょう。

・OSAKA ENGLISH VILLAGE(大阪)

TGGのアトラクション・エリアだけを拡大したイメージに近い施設です。幼稚園の年中~大人まで利用できます。施設とプログラムはアメリカを意識したものになっています。

・キッザニア東京・甲子園 英語プログラム(東京、兵庫県)

おなじみの職業体験ができるキッザニアですが、英語に特化したプログラムも用意されています。「ナビゲーター」と呼ばれるイングリッシュ・スピーカーが子ども達と一緒に5つまたは3つのアクティビティを連続して回ります。

私の息子もクアラルンプールのキッザニアで一日過ごしたことがあります。Firefighter(消防士)の訓練中“Left, right, left, right, attention!”の掛け声に合わせて行進していて楽しそうでした。

まとめ

TGGのような英語村を上手に利用すると、子どもの英語学習意欲は大いに高まります。学校利用を待つだけでなく、個人でも積極的に予約して利用したほうがいいです。近所の仲良しのお母さんと一緒に出掛けても楽しそうです。

英語「で」仲間とコミュニケーションを取りながら、何かのプロジェクトを成し遂げる喜びは貴重です。同じようなレベルの子ども達が集まるので、極端に劣等感を感じることもなく過ごせます。

オープン後はなかなか予約しづらい状況かもしれませんが、機会があればぜひ子どもを連れて行きましょう。

 

 

小学校英語、教科化でお母さんが取るべきスタンスは?

2020年度から「小学校の英語、教科化」が全面実施となりました。お母さん世代は中学校から英語を学び始めたので、「小学校での英語って、どのような授業になるのだろう?」と疑問や不安を感じるかもしれません。

日本の英語教育は「何年学んでも話せない」と長年非難の的になってきました。これを受けて文部科学省は学習指導要領を改訂し「小学校での英語の教科化」を2020年度から全面実施することになりました。

そして批判の多かった大学入試英語も改革し、英語4技能(読む・聞く・書く・話す)をバランスよく測れる試験に移行する予定です。まさに戦後ほとんど変わらなかった英語教育が大きく変わる大転換期です。

ただし、これを機に日本人の英語力が向上するかどうかは不透明です。今後も検証と改革は続いていくでしょう。「英語教育は永遠に未完成」ともいえます。

では、このような環境でお母さんはどのように考え行動するべきなのでしょうか。このような変動期においては、国の方針に振り回されずに家庭で責任を持って英語教育に取り組む意識が必要です。

2020年度から小学校の英語は正式教科

長い間、日本では中学校になってから英語を正式教科として学び始めてきました。中学入学前の「英語ってどんな勉強するんだろう?」と期待と不安の入り混じった気持ちは、お母さん世代なら覚えているはずです。この当たり前だった中学校からの英語教育が大きく変わりました。

学習指導要領の改訂で、2020年度から小学5・6年生で正式な教科として「英語」が導入されることになりました。これは単に小学校から早めに英語を学ぶ話ではありません。

文部科学省は英語4技能(読む・聞く・書く・話す)をバランスよく伸ばすことに本気の姿勢です。コミュニケーション能力をきちんと測る大学入試改革を目指して、小学校~高校までの英語教育を大きく見直す大改革です。

学習指導要領

日本の学校教育法で定められている学校には「学習指導要領」が適用されます。2020年度から完全施行の学習指導要領(小学校)とそれ以前のものでどのように異なるのかを比較してみましょう。

・2020年度より前の学習指導要領

第1 目 標

外国語を通じて,言語や文化について体験的に理解を深め,積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り,外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しませながら,コミュニケーション能力の素地を養う。

「態度の育成」「慣れ親しませながら」「素地を養う」の部分から感じ取れるように、勉強っぽさはできるだけ排除して、英語を楽しむことに主眼を置いていました。

・2020年度移行の学習指導要領

第1 目 標

外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方を働かせ,外国語による聞くこと,読むこと,話すこと,書くことの言語活動を通して,コミュニケーションを図る基礎となる資質・能力を次のとおり育成することを目指す。

まず、英語4技能について明記しています。続きの部分も読んでみましょう。

(1) 外国語の音声や文字,語彙,表現,文構造,言語の働きなどについて,日 本語と外国語との違いに気付き,これらの知識を理解するとともに,読むこと,書くことに慣れ親しみ,聞くこと,読むこと,話すこと,書くことによる実際のコミュニケーションにおいて活用できる基礎的な技能を身に付けるようにする。

(2) コミュニケーションを行う目的や場面,状況などに応じて,身近で簡単な事柄について,聞いたり話したりするとともに,音声で十分に慣れ親しんだ外国語の語彙や基本的な表現を推測しながら読んだり,語順を意識しながら書いたりして,自分の考えや気持ちなどを伝え合うことができる基礎的な力を養う。

(3) 外国語の背景にある文化に対する理解を深め,他者に配慮しながら,主体的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとする態度を養う。

ご覧のとおり、4技能(聞く・読む・話す・書く)のバランスとコミュニケーション能力の養成を具体的に掲げていることから、前回までの学習指導要領とは英語の扱いはまったく異なります。

簡単にいえばこれまでは「楽しくやればよい」だけだった英語は、「基礎的な技能をしっかりと積み上げる」ものに変化したのです。

3・4年生は「外国語活動」、5・6年生は「教科」

では、このような目標を達成するために、どのように小学校で取り扱われるかを具体的に説明します。小学3・4年生は「外国語活動」として英語を学びます。年間35コマ(1コマ=45分)で約26時間が割り当てられています。

この外国語活動では、クイズ・ゲームなどを通じて楽しみながら英語の音声と基本的表現を学びます。教科ではないので評価は「文章での評価」となります(児童一人ひとりについて評価を書く担任の先生は大変です)。

次に、小学5・6年生では「教科」として英語を学びます。年間70コマ(1コマ=45分)で約52時間が割り当てられています。文字も扱う(読む・書く)ようになり、4技能をバランスよく学びます。算数や国語と同じ扱いで、担任の先生は児童を3段階で評価します。

小学5・6年生の英語では文法の指導をせずに、児童が日本語との構造の違いに気づくような形態をとるようです。

扱う内容を細かく見ていくと「3人称単数現在形の-s」とか「過去形」など中学校で学ぶ内容が含まれているので、担任の先生の指導力がポイントになっています。

文部科学省のサイトでは使用教科書や指導書などのサンプルが公開されていますので、こちらをクリックしてください。

中学卒業時の目標は英語で会話できること

文部科学省は、「中学校卒業時に英語で会話ができる」ことを目標に掲げています。小学校で合計156時間を英語(外国語活動)の授業に充てて早めのスタートを切っていますが、個人的にはかなりハードルの高い目標に感じます。

でも批判するのは簡単です。そういう目標を無理やりにでも掲げて、現場の先生の指導法や意識を変えていかないとダメだと判断したのかもしれません。学校の先生に限らず、ほとんどの人は現状維持を望んでいるので、現場の行動や意識を変えるのは容易ではありません。

実は私の子どもは2人とも、この新しい英語教育の対象になるので他人事ではありません。今後も関心を持って、どのような形で新しい英語教育が実施されていくのかを注目していこうと思います。

授業時数と必修語彙の増加、そして大学入試

小学3年生から英語学習が始まることで、授業時数と習得語彙の2つが増加しました。具体的な数字を見ながら、英語をマスターするのに充分かどうかを検証してみます。

小学校の授業時数の増加

小学校の英語授業時数は70コマ(53時間)から210コマ(158時間)へ増え、約103時間の増加です。中高の授業時数は変わらないと仮定すると、小~高までの英語授業は約900時間です。

日本人が英語をマスターするまでに必要な時間は3000時間といわれています。授業時間の3分の2の600時間を実質的な学習時間と考えると、これでようやく必要な5分の1を確保できることになります。

学校でできるのはこれが精一杯でしょう。英語以外にも学ぶことはたくさんあります。残りの2400時間は授業以外の家庭や塾で確保しなくてはいけません。あらためて日本人が英語を習得する壁は高いと感じます。

語彙レベルの増加

私が驚いたのは、小学校での習得語彙の目標が600~700語に設定されたことです。私が中学生だったころは1000語くらいだったので、当時の中学生の3分の2の単語数を小学生のうちに覚えなくてはいけないのです。小学英単語

そして中学では1600~1800語(2020年度以前は1200語)に目標習得語彙は増え、英語が苦手な生徒にとっては辛い状況になりそうです。

さらに「中学卒業時に英語で会話ができること」を目標にしていることから、単に意味を暗記しただけの単語(パッシブ・ボキャブラリー)を身につければいいわけではありません。自分で使いこなせる単語(アクティブ・ボキャブラリー)を増やす努力が求められます。

大学入試の変化

従来のセンター試験は読解9割・リスニング1割の配点でした。このリーディング偏重のテストから、民間のテストを利用しながら4技能の能力をバランスよく測るテストへと大きく舵を切る方向で話は進んでいるようです。

英語はどうしても時間がかかるので、このテストで乗り切れるのは「天才タイプ」と「コツコツタイプ」だけです。

「天才」タイプの受験生はすべての教科をそつなくこなしてしまう優等生です。彼らは制度がどのように変わっても関係ないでしょう。

もう一つのタイプは、子どもの頃から計画的に英語を学び続ける「コツコツ」タイプです。理想的なプランとしては中学校卒業時までに英検2級程度の英語力を身につけておいて、高校の3年間でコミュニケーション能力を徹底的に磨く作戦です。

でも現状から判断すると、受験生が皆このような結果を出せるはずがありません。大学は合格者が少なすぎると経営は成り立ちません。実際はそれほど高い英語力はなくても合格できるかもしれません。

合格ラインが低すぎると、英語教育改革は中途半端なものになってしまいます。そして再び「失敗」と批判されることでしょう。英語教育の改革には終わりはなさそうです。

根強い反対意見と私の考え

いつの世の中にも、新しい制度や考えに反対を唱える人がいます。それが正しいかどうかは年月を待つしかありません。英語教育改革もいろいろなアンケートを見ると半数近い国民は反対しているようです。

ここではこれらの反対意見について、考えてみたいと思います。

英語不要論1:日本にいる限り不要

「日常的に英語を使う人は日本人の1割に満たない」というのが、英語不要論者の主張です。確かに周りを見渡しても英語を使って仕事をしている人はほとんどいません。でもこれだけで英語は不要と考えるのは早計です。

「英語ができないから英語を使わずに済む仕事を選んでいる」と考えることもできそうです。英語ができる人や苦労してマスターした人は、その能力を活用したいと考えるのが自然だからです。

不要とまではいえなくても、「万人が英語を習う必要性はない」と感じている人は多いかもしれません。でもこの論理を当てはめると、他の教科についても小学校までで充分ともいえます。

このように考えていくと、英語不要論は学生時代英語が苦手だった人の僻みや妬みがベースになっているような気がするのは私だけでしょうか。かくいう私も、歴史が苦手だったので「暗記ばかりする歴史など意味ない!」とときどき主張しています。歴史の教養がある人からみたら、浅はかな意見に聞こえるかもしれません。

英語不要論2:日本語力が低下するから

英語を勉強すると日本語力が低下すると考える根拠には2種類あるようです。一つ目は、「英語の学習時間が国語の学習時間を圧迫し、国語力の低下を招く」という考え方です。

確かに影響は皆無とはいえないでしょう。でも、学力の半分以上は「生まれつきの資質や能力」で決定しています。これを口に出すのはタブーと考えられているかもしれませんが、誰もが感じていることです。

優秀な子は勉強時間を減らしても、国語力は低下しません。反対に、能力が低い子は学習時間を増やしても国語力は上昇しません。これが現実です。成績が中の上くらいの子どもは多少影響受ける程度です。

もう一つの根拠は、「英語を学ぶと日本語に干渉してしまい、その結果日本語が滅茶苦茶になる」という主張です。例えば、タレントのルー大柴さんのような英語混じりのおかしな日本語になるという意見です。

海外に住む子どもが英語の学校(現地校やインターナショナルスクールなど)に通っていると、これは普通にあり得る話です。でも日本で日本語を話している環境の中で、英語を学習をしてもこのような言語干渉はまず起きないと断言できます。

もし子どもの英語学習が日本語に悪影響を及ぼすほど強烈であれば、ある意味英語教育は大成功です。なぜなら、少し手を緩めればいいだけだからです。実際こんなことはあり得ないので、心配するだけ無駄です。

どちらの理由であっても、英語を学んだからといって国語である日本語の能力が低下することはありません。もし国語力が低下したなら、他の原因を探ったほうがよさそうです。

英語不要論3:何歳からでも学習できる

「英語は何歳からでも習得可能」というのは、その通りです。むしろ抽象的な概念を考えられるようになる中学生以降のほうが、文法を理解しやすいという利点があります。

でも、あなたの周りで大人になってから中国語やフランス語を習い始めて話せるようになった人はどれくらいいますか? 少なくとも私の知り合いにはいません。

大人になると忙しくなります。よほどバイタリティーのある人か、どうにもならない事情に追い込まれない限り、あらたに言語を覚えようとはしません。「何歳からでも習得可能」は「何歳になっても習得しない」ケースが圧倒的に多いです。

「必要を感じたときにだけ必要な人がやればよい」というのも一つの考え方です。でも、これは受け身の学びです。仕方なくやっているからです。何かにチャレンジして得意なものを身につけて、それを活かそうとする「攻めの学び」ではありません。

また受け身の英語であっても、「やりなおし」と「ゼロから」では必要な労力には雲泥の差があります。やはり、子どもの頃から英語を学んだほうがいいと考えるのがよさそうです。

効果に疑問:先生の問題

小学校の先生のうち、英語の免許を取得している人はおよそ5%だそうです。実際に現場で教えられるレベルの小学校教員は皆無といっていいでしょう。

私は高校で英語教員の経験があります。自分の子どもや他の子ども達にも個人的に英語を教えた経験があります。そのときに感じたのは「小学生に英語を教えるには、専門的な技術が必要である」ということです。

中学・高校と決定的に違うのは文法用語を使えないという足枷があることです。異なるアプローチをしなければ小学生に英語を教えられません。それと同時に、中学・高校へと進んだときに習う英語についても理解しておかないと、うまくバトンタッチできなくなります。

「小学校で英語、教科化」を前にして、現場の先生から不安の声が上がっているので、おそらく最初の5年間はまともに機能しない気がします。

私の考え

かつての英国植民地に行くと、その影響の大きさに驚くことがあります。英国は国土は日本の3分の2で、大きくありません。でも、世界への影響力はナンバーワンかもしれません。英語はその英国が世界に広めた言葉です。

世界の人口70億人のうち、英語を実用レベルで使用している人の数は25%の17.5億人といわれています。一方、日本の人口は1.2億人で、世界人口の1.7%しか日本語は使われていません。

デスクトップ・パソコンのOS(オペレーション・システム)に例えると、WindowsとMac OSを使っている人が大多数です。LinuxというOSもありますが、その普及率を調べると5%未満です。

Linuxを使っている人が「WindowsやMac OSは不要」と主張したら、あなたはどのように感じますか? 主張するのは自由ですが、WindowsやMacで利用できるサービスやソフトウェアを使えない人と仕事やコミュニケーションを取りづらいはずです。

国語である日本語を大切にするのは賛成ですが、英語を学ばなくていいという主張と絡めないで欲しいと思います。母国語を尊重しつつ、汎用性の高い英語も積極的に習得するというのが最も理にかなった態度だと思います。

「小学校の英語、必修化」の利点とは?

では、小学校からの英語必修化について利点を考えてみましょう。そもそも日本人が英語を学ぶ意義は本当にあるのかどうか、一人ひとりがしっかりと考える必要があると感じます。

英語を学ぶと得をするから

まず、「英語ができると得をする」ことが利点として挙げられます。もう少し正確にいうと、「英語が苦手な日本人が多いほど、日本語も英語もできる人は得をする」ということです。

私は勤めていた会社で、工業製品をベトナムで生産するときの立ち上げに関わったことがあります。数年で軌道に乗せてシェアを一気に拡大できました。私は入社して3か月だったので商品知識はほとんどありませんでしたが、英語に抵抗がなかったのはかなり有利に働きました。

ベトナムでのビジネスパートナーとは英語で会話をしました。何度も現地で意見交換をしながら少しずつ品質を高めていきました。

一方、競合会社も同じように中国やインドネシアへ生産拠点を移そうとしました。私の会社の何倍もの規模で設備投資をしたようです。でも、どこの会社も1年以内に撤退し海外生産は失敗に終わりました。

噂によると、誰も英語が話せないためコミュニケーションを取れず他人任せにしたようです。すぐにお金・品質・納期などの管理がコントロール不能になってあきらめたようです。

私が成功できたのは英語力が高かったというよりも、ライバルの英語力が不足していて私だけうまくいってしまったからです。他の会社の営業担当は本気で生産拠点を移すなら、このタイミングで英語を勉強しなければなりません。しかし、誰もそこまで本気にならなかったようです。

このように英語ができると得することはたくさんあります。もちろん英語ができるだけではダメで、行動力とかその他の要素も必要ですが、英語力が無駄になることはありません。

英語を学ばないと損をするから

先日、テレビで高級和牛ブランド「松阪牛」の偽物ブランドがシンガポールで出回っていると報道されていました。10年以上前から出回っているという話でしたが、日本の関係者は誰も気づかなかったようです。

たまたま市長が視察をしたときに、現地コンサルタントから指摘されて初めて気づいたようです。事の重大さに気づいた市長は、帰国後本物の松阪牛ブランドを輸出するための準備を始めます。そして生産者に輸出用の肉の生産を交渉しましたが、すぐに変更できるようなものではないらしく難航しているようです。

この話の教訓は、日本一の和牛ブランド関係者が誰も海外の情報を取得していなかったため、多大な損失を出してしまったということです。英語で情報収集を日常的にしていれば、10年以上も放置されることはなかったはずです。

英語を学ばないと損をすることがあるのです。実際は、損をしていることにさえ気づいていないかもしれません。英語を話す人には悪い人間もたくさんいます。彼らに対抗するには、英語を学ばなければなりません。

小学生でもできることを中学まで待つ必要がないから

「英語絵本の読み聞かせ」や日常の会話で英語を取り入れる「英語での育児」は幼稚園から始められます。本格的な読書も小学校入学前後のタイミングから可能ですし、音読トレーニングは小学生にはぴったりの英語学習法です。

本格的な文法学習は中学以降でいいと思います。でも、小学生にできることがあるなら中学生まで待つ必要はありません。強制的にやらせるのではなく、子どもの能力や興味に合わせて、やれる範囲で英語学習をすすめればいいのです。

小学5・6年生になれば、学習意欲の高い子なら文法も少しずつ学べるはずです。英会話スクールやオンライン英会話を活用すれば、英検4級の取得はそれほど困難ではありません。

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英語レベルが低いうちは、教材内容も幼稚だから

あまり触れられない問題ですが、英語学習初期はどうしても表現が限られるので教材内容が幼稚になってしまいます。

もし中学校の英語教科書が日本語で書かれていたら、まともな中学生だったらバカバカしくて読んでいられない内容です。でも、英語力が低いためそのような内容しか扱えないのも仕方がありません。

小学校から英語の基礎を始めれば、この英語レベルと精神年齢のギャップを小さくできます。子どもっぽい内容の英語でも、小学3年生くらいなら自然に受け入れられるでしょう。

精神年齢に適した英語を習うには、早めにスタートしたほうがストレスなく学習できると思います。

英語教育大改革期にお母さんのとるべきスタンスとは?

実は、私は「小学校からの英語教科化」には賛成でも反対でもありません。正直、どうでもいいと考えています。中学・高校で英語が必修でなくなったとしても、「子どもに英語を学ばせる」という私の考えや行動は変わりません。

なぜなら学校でどのように扱われるかとか入試に必要とかに関係なく、英語を必要だと感じているからです。可能な限り、子どもには英語を身につけて欲しいと思います。そのように私が考える理由について詳述します。

少子高齢化が急ピッチで進む日本の将来を考える

人類史上類を見ないペースで、日本の少子高齢化は進んでいます。日本語のシェアをOSに例えた話をしましたが、そのシェアはさらに急速に落ちていくのは確実です。

経済を維持するにはある程度の規模が必要です。中小企業も含めて、日本市場だけで商売を完結させようと考えることには相当の無理があります。

大量の移民を受け入れるか、アジア市場の一部に取り込まれるかの二者択一しか、日本経済を成長させる道は残されていません。そしてどちらを選んでも、言葉は大事な要素です。国語と同じように英語を学ぶことを当たり前に受け入れた方がいいと思います。

学校での英語にも良いところはある

従来の学校英語で最も成功しているのは「文法力」です。英語を第二言語として話す人たちと話すとわかりますが、日本人の英語文法力は高いです。運用力が足りないので、そこは子どもの頃から家庭教育などで補う必要があります。

文法は語彙力とともに英語4技能の基礎となるものです。大切な基礎のひとつは学校任せにしていても充分身につくのだから、これは大いに利用したほうがいいです。

学校英語の良いところを認め、徹底的に活用しましょう。

塾や学校を言い訳にせず、家庭で責任を持つ

良くない結果が出たときに「〇〇が大丈夫って言ったから」「まさか〇〇とは思わなかった」という言い訳をする人がいます。でもたいていの場合、彼らは危険性を事前に認識しています。「失敗したら他人のせいにできればいい」という考え方に問題の本質があります。

英語教育に関して、「文部科学省が大丈夫って言ったから」「小学校から英語を学んだのにまさか話せないとは思わなかった」という言い訳を用意しているなら、それはやめましょう。

少しでも学校での英語教育に不安があるなら、お母さん自身もしっかりと勉強するべきです。そして子どもにとってどうするのが最も良い選択なのかを真剣に考えてあげて、周囲に流されずに行動するようにしましょう。

私がこのような記事を書いているのは、子どもの英語教育について真剣に考えるお母さんのために力になりたいからです。

不向きと判断したら、時間とエネルギーを別のことに向ける

誤解しないでいただきたいのは、私は「英語がすべて」などと思っていません。一人ひとりの子どもには個性があり能力もいろいろです。英語の学習に明らかに不向きな子どもも大勢いることは承知しています。

人生の目標はとてもシンプルです。「幸せを感じる」ことができれば、人生は大成功です。英語ができないからといって、不幸になるわけがありません。幸せに生きるためのアプローチはたくさんあります。英語ができないくらいで、子どもを追い詰めるような言動はしないでください。

お母さんに強調しておきたいのは、「子どもの得意なことに時間とエネルギーを向けてあげてください」ということです。もし子供が英語好きなら伸ばしてあげればいいし、そうでなければ他のことを伸ばしてあげればいいのです。

確かにすべての教科で優秀な成績の子どももいます。でも、普通は2つか3つ得意な科目があればいいほうです。それらを上手に組み合わせながら、生きる力を高めていけるように導くのがお母さんとお父さんの役割です。

英語はあくまでもその一つにすぎません。英語至上主義という狭い視野で子どもと接するとそれは不幸の始まりです。

まとめ

小学校からの英語教育が本格化すると「英語嫌いが増える」といわれます。でも、早い段階から適性が絞られるのは、悪い話ではありません。

英語の得意な子・好きな子は、学校のペースを待たずにどんどん学べばいいと思います。学校の授業だけでは限界があるので、家庭でしっかりとサポートしましょう。

私は英語教育への批判と改革は永遠に続くと思います。日本人にとって英語習得は決して容易ではありません。国が検証と対策を繰り返すうちに、子どもは成長して成人します。

英語教育に関して何が悪いとか誰が悪いとか悪者探しをすることは、非生産的です。頭を切り替えて、自分の子どもの英語力はお母さんが主導し、結果に対して責任を取るという考え方に切り替えていきましょう。

お母さんができることは、あまり国の英語教育に振り回されないように気をつけて、家庭で責任をもって取り組むことです。子どもの個性を見極めながら、子どもの英語力を伸ばしてあげましょう。

「小学生に英語を学ばせるのは無駄で弊害がある」を検証

私はインターネットのニュースで子どもの英語教育に関する記事を見つけると、つい時間を忘れて読んでしまいます。子どもの英語教育を考えているお母さんなら、同じような経験があるでしょう。

そのとき気になるのが、子どもの英語教育についてのネガティブなコメントです。コメント欄の過半数が「子どもに英語を習わせても意味がない」とか「英語より日本語が大事」という否定的な意見で占められているのです。

このような大量のネガティブコメントを読むと、「英語は習わせない方がいいかも」と不安に感じるお母さんもいるはずです。

実はこうしたネガティブな意見のほとんどは詭弁(きべん:道理に合わないごまかしの議論)です。

子どもの英語教育を応援するお母さんのために、今回は英語教育に対するネガティブコメントを6つのタイプに分類して徹底的に分析します。これを読めば、すっきりとした気分で子どもの英語教育に向き合えるようになります。

タイプ1:英語学習方法に関する理解不足から生じるネガティブコメント

「文法なんか勉強するから、英語を話せなくなる」「英語圏に行けばすぐに話せるようになる」などのコメントはこのタイプです。このようにコメントする原因は、英語学習に関する理解が不足しているからです。

子どもの英語教育で成果を出すためには、「子どもの環境と年齢に応じた正しい学習方法」を知る必要があります。まずは、下の表をご覧ください。

~6歳(臨界期) 7歳~8歳 9歳~
英語圏で暮らす場合 英語が自然に身につく 英語が自然に身につかない

文法理解は難しい

少しずつ文法を理解し始める
日本で暮らす場合 英語の必要性が低いので、なかなか英語を話せるようにはならない。音声を中心に学習を進めておく 音声を基礎に文法学習を加えて発展させる

この表をもとに、「英語圏で暮らす場合」と「日本で暮らす場合」に分けて解説していきます。

英語圏で暮らす場合

一般的に英語学習における「臨界期(りんかいき)」は9歳までとされています。「9歳までに英語を学ぶと母国語(日本語)と同等のレベルまで習得できる」という意味です。しかし私の経験上、この年齢は6歳くらいと感じています。

私の息子は6歳~9歳までの3年半、海外のインターナショナルスクールに通っていました。その間、いろいろな機会を通じて似たような環境の日本人の子ども達と知り合いになりました。

そのとき気づいたのは、7歳以降に入学した子ども達は1年経ってもあまり英語を話せるようにならなかったことでした。日本で英語の準備をしっかりとしてきたにもかかわらずです。

一方、6歳までに入学した子ども達は全員、3か月~1年半くらいで英語を話し始めました。この中には英語に触れたことのない状態で、いきなり入学した子どもも含まれていました。

この経験から、英語圏で暮らす場合、自然に英語が身につく上限は6歳だと思っています。7歳以降の子どもは、文法学習を柱としながら英語を身につけるしかありません。

ところが、7歳~8歳の頃は脳が未熟です。文法のような抽象的な言葉の概念を理解するのは難しいです。個人的にこの2年間は「どっちつかずの2年」と呼んでいます。文法の概念を少しずつ理解できるようになるのは9歳からです。

日本で暮らす場合

今度は日本で英語を学習する子ども達のことを考えましょう。6歳以前に英語を始めても、英語漬けの環境を作るのは難しいので、英語を話せるようにはなかなかなりません。ですから文法理解が難しい8歳までは、音声面の学習に集中したほうがよいです。

具体的には、「いろいろな英語を聞く」「英語らしい発音を身につける」「フォニックス(つづりと音のルール)の基本を身につける」「決まり文句を覚える」「基本単語を読めて意味が分かる」などの項目を8歳までに定着させるのです。

それまでの成果を土台にして、9歳から少しずつ英文法を学んでいけばよいのです。そうすると発達段階に逆らわずに、子どもに英語を学ばせることができます。

以上が正しい「子どもの環境と年齢別の英語学習方法」です。これを理解するとタイプ1のネガティブコメントを冷静に受け流せるようになります。

典型的なものは「〇歳を過ぎると、英語を習得できない」という「〇歳の壁」理論です。幼児用教材では教材会社が数々の壁を設定して購入をあおっています。例えば、「0歳の壁」はこの時期までに英語の音を聞かせないと、LとRの違いが分からなくなる、というものです。

LとRの音の違いが聞き分けられなくなることが本当だと仮定しましょう。しかし、実際はたいした問題ではありません。“rice”(米)と“lice”(シラミ)の音が同じに聞こえても、前後の文脈があればどちらの単語か類推できるからです。

“I had rice for lunch.”(昼食にご飯を食べた)と聞いて、“I had lice for lunch.”(昼食にシラミを食べた)と誤解することはほとんどありません。「0歳の壁」は実在したとしても、英語を使う上で何の支障にもなりません。

同様に「臨界期を過ぎると英語を勉強しても身につかない」というコメントもよく聞きます。これは子どもが臨界期を過ぎた場合、英語を「自然に」身につけるのは難しいという意味です。しかし、臨界期を過ぎたら9歳から文法アプローチで英語を攻略すれば大丈夫です。英文法の学習から始めても英語を話せるようになった人はたくさんいるので安心してください。

このことから、たとえ臨界期を過ぎても正しい勉強法で英語を学べば問題ないことがわかります。さらに、「文法を勉強するから英語を話せなくなる」という理屈はめちゃくちゃであることも理解できるでしょう。7歳以降は英語が自然と身につかないので、文法を勉強しないと話せるようにはならないのです。

最初に説明したとおり、8歳までは音声面を中心に学習し、9歳から文法を学ぶのが発達段階に逆らわない賢いやり方です。

「〇歳の壁」「臨界期」「文法無用」などの意見は今後も続くでしょう。しかし、「もう手遅れかもしれない」と焦ったり、「文法無用」といった怪しい理論に惑わされたりしないように気をつけましょう。

タイプ2:「幼児期の英語学習は日本語習得の弊害」というネガティブコメント

「英語学習は日本語習得の妨げになる。だからもっと日本語を勉強しなさい」というネガティブコメントは、前提条件を取り違えているものがほとんどです。

英語を身につける形態には「母国語として」「第二言語として」「外国語として」の3つがあります。これら3つの形態のうち、日本語習得の妨げになるのは、「母国語」と「第二言語」として英語を学んだ場合です。日本にいる多くの子どもには当てはまらないことを理解しましょう。これら3つの形態の違いを簡単に紹介します。

  • 母国語として英語を学ぶ場合

日本人が国際結婚して英語圏で子どもを育てた場合、子どもは母国語として英語を学びます。日本人の母親が日本語で話しかけても、日本語は基本レベルで止まってしまいます。英語に関してはネイティブそのものです。

  • 第二言語として英語を学ぶ場合

日本で生まれ育った子どもが6歳以前に英語圏の国へ移住し、英語で授業を受ける学校や幼稚園に通った場合が該当します。ネイティブのレベルには及びませんが、1年半経つとほとんどの場合、英語を話すようになります。英語力の向上は本人次第です。

日本語力の維持や向上については、かなりの努力を要します。英語圏では日本語の必要性が低いからです。日本語と英語の両方とも、あるレベルから向上せずに、どちらの言語も中途半端な状態になることもあります。

いわゆる「ダブルリミテッド」や「セミリンガル」と呼ばれる状態です。

  • 外国語として英語を学ぶ場合

日本で生まれ育った子どもが、日本で英語を学習する場合が当てはまります。日常生活は日本語中心なので、少しくらい英語を学習しても日本語に悪影響が出ることはありません。

この環境で英語を自然に話し出すことはほとんどありません。9歳以降の本格的な文法学習を通じて英語を習得していくのが一般的な方法です。

このように、日本語に悪影響を与える可能性があるのは、母国語や第二言語として英語を習得した子どもだけです。おそらく帰国子女の日本語力の低さを見聞きして、「誰でも英語を学ぶと日本語がダメになる」と誤解したのでしょう。

中には本当に日本で暮らしているのに、ダブルリミテッドになってしまった子どもがいるかもしれません。外出を制限して、長時間英語での会話を強制した場合は、日本語に悪影響を与える可能性はあります。

しかし、「過ぎたるは及ばざるがごとし」は英語だけの話ではありません。野球だって毎日ボールを投げすぎれば、大人になる前に肘を壊してしまいます。そのような極端な例を見て、「野球は肘に悪いから、野球はやめなさい」と話を広げるのは変な話です。

まとめますと、「英語を学ぶと日本語習得の妨げになる」というのは、日本に住む子どもには当てはまりません。日本に住んでいても極端に英語を強制すれば日本語への悪影響はないとは言い切れませんが、例外中の例外です。

毎日20分英語の絵本を読んであげたり、車の中で英語の歌を歌ったりしても日本語の習得には何の支障もありません。安心して学習を続けてください。

タイプ3:「英語よりも仕事のスキルが大事」説

「中身のない英語をペラペラ話しても大した意味はない。だから仕事のスキルをしっかりと身につけなさい」というコメントもよく見聞きします。一見、説得力があるのですがこれもよく考えると腑に落ちないところがあります。

下の表をご覧ください。単純化するために、ビジネスマンを仕事ができる人とできない人に分けました。さらにそれぞれを英語ができる人と苦手な人に分けました。

仕事ができる人 英語ができる人(Aタイプ)
英語が苦手な人(Bタイプ)
仕事ができない人 英語ができる人(Cタイプ)
英語が苦手な人(Dタイプ)

「英語はペラペラだが仕事ができずに使い物にならない」というのはCタイプの人です。「英語はできないが、仕事ができる」というのはBタイプです。たしかにBタイプとCタイプを比較すれば、Bタイプの方が有能かもしれません。

しかし、最も有能なのは仕事も英語もできるAタイプです。しかしながら、このネガティブコメントではAとBが比較されることはありません。

このように、「英語よりも仕事のスキルが大事」説はBタイプとCタイプだけに焦点を当てた説なのです。

さらに、Cタイプの人が英語の勉強をやめればBタイプになれるとは限りません。「英語よりも仕事のスキルが大事」説はBタイプとCタイプに当てはまるかもしれませんが、だからといって英語を勉強しなくてよい理由にはならないのです。このような詭弁に振り回されることなく、子どもの英語教育に向き合いましよう。

タイプ4:英語不要論

「英語なんか勉強する必要はない」という主張は、理由によって2種類に分かれます。「日本で生活するのに英語を使わないから」と「通訳や翻訳機があれば、英語学習の必要はない」というものです。以下、順番に見ていきましょう。

日本では英語は使わないから英語は不要

「日常生活で使わないから〇〇を学ばない」という発想では、ほとんどの人は何も学びません。なぜかというと、ほとんどの学問は生活する上で必要ないからです。

しかし、他人より優れたスキルが一つでもあると、それを活用することで、生活がより豊かになる可能性があります。

例えば、あなたはサッカーが天才的にうまかったとします。そのスキルをフル活用してプロ選手になることで、破格の報酬を得られるかもしれません。サッカーの才能がなくても生活はできますが、あったほうが生活が豊かになることは理解できるでしょう。

英語が他の人よりも得意になれば、それを活かして自分をアピールしようと行動するのが普通です。例えば、「高給がもらえる外資系の会社に就職する」とか「海外勤務のある会社に英語力をアピールする」などが該当します。英語が得意でなければ、そもそもこのような行動はできません。

つまり、「日本で生きているから、英語は不要」というのは、英語が武器になっていない結果なのです。そして、これは英語を勉強しなくてよいという理由になりません。この理屈を認めると、英語に限らずほとんどの勉強は不要です。

できなくても困らないから勉強が無駄というコメントは、原因と結果が逆なのです。ある分野ができないから、それを使わずに済む生活をしているのに過ぎないのです。

*このサイトでは英語を推奨していますが、何のスキルを伸ばすかはその人次第であることは言うまでもありません。

通訳や翻訳機があれば、英語学習は不要である

もう一つの英語不要論は「いざとなったら通訳を雇えばいい」とか「自動翻訳機があれば大丈夫」というのが根拠になっています。特にAIの目覚ましい進歩により、自動翻訳機への期待が高まっているように感じます。

まず通訳ですが、プロの通訳を雇うにはかなりの出費を伴います。4時間で3万円~8万円が相場です。また、専門性の高い会話を扱える人を探すのも一苦労です。

英語が身についていないとそのような高額の出費や余計な労力が伴います。企業における契約書のチェックなどは専門家に依頼するのが普通ですが、普段の仕事のやり取りでいちいち通訳を雇っていられません。

一方、AI(人口知能)の発達に伴い翻訳精度が上昇してきました。簡単な文章なら、ほとんど支障なく翻訳してくれるので助かります。しかし、これで人間対人間のコミュニケーションのすべてを網羅できるとは思いません。

例えば、ビジネスでは食事をする機会が多いです。そこでは冗談を交えながら、相手と心を通わせる会話が必要です。信頼を勝ち取るためです。翻訳機の精度が上がっても、笑いの間とかユーモアセンスまで機械が表現してくれると期待するのは無理があります。

また、悪意のあるソフトウェア会社が自社の利益になるように誘導するプログラムを仕込むかもしれません。そのような場合、100%翻訳機に頼っていいものでしょうか。人間同士のコミュニケーションは想像以上に奥が深く、機械にすべて任せるのは不可能なのです。

タイプ5:日本人としてのアイデンティティ喪失理論

「英語ばかり学んでいると日本人としてのアイデンティティを失い、子どもが精神的に不安定になる」という説があります。ここでの「アイデンティティ」とは「何かに属しているという帰属意識のこと」を指します。

アイデンティティ=国籍と誤解する人が多いのですが、実際はそんなに単純ではありません。それを知るきっかけとなった私の経験を紹介します。

私の息子が海外のインターナショナルスクールにいた頃の話です。休み時間に何をして遊んだかとたずねると「ヨーロッパチームとアジアチームに分かれてサッカーをした」と話してくれました。

何気ない会話ですが、これは息子が自分のことをアジア人として意識していた証拠です。自己紹介するときは日本から来たと言っていたので、日本人としての意識もありました。しかし、ある場面ではアジア人としてのアイデンティティを見せたのです。

つまり、アイデンティティは国籍のことではないし、場面によって複数使い分けても構わないのです。このように、アイデンティティは状況によって変化するものなので、喪失することなどあり得ないのです。当然、英語を勉強したからアイデンティティを喪失して精神が不安定になることもありません。

タイプ6:いいがかり的なネガティブコメント

子どもの英語学習に対するネガティブコメントの中には、意味不明なものが数多くあります。とても全部は紹介できないので、2つだけ取り上げてみます。

  • たった週〇回の英語レッスンでは、話せるようにはならない。だからやめたほうがまし。

時間が不足しているなら、やめずに増やすべきではないでしょうか? 費用などの関係で毎日英語教室に通わせるわけにもいきませんから、家庭学習で補いましょう。

  • もっと日本語を読んで、豊かな情操教育に力を入れるべき

情操教育とはさまざまな経験を通して豊かな心を育む教育のことです。日本語で書かれた素晴らしい絵本や小説を読んで、豊かな心を育てることには大賛成です。そして英語にも素晴らしい絵本や小説がたくさんあるので、同じ結果を得られます。

このようなコメント主は、問題集の無味乾燥な英語にしか触れたことがないのかもしれません。児童文学で有名な Roald Dahl や超人気作家であるDavid Walliams の物語をぜひ読んで欲しいです。涙と笑いに溢れていて、いつまでも心の中に残り続けます。

豊かな心を育むのに英語も日本語も関係ありません。優れた作品をスラスラと読めるようになるまで英語学習を続けましょう。

まとめ

私が子どもの英語教育をすすめる理由は「21歳までに英検準1級・TOEIC900点レベルを無理なく取れるようにしておくため」です。これを読むと私のことを「英語至上主義者」のように思うかもしれませんが、そういうわけではありません。

高校卒業後、就職や進学したときは専門性を深めることに集中するべきです。英語だけに時間を費やしていると、本当に磨かなければいけないスキルがおろそかになります。

英語を習得するまでの時間が3,000時間と決まっているなら、できることは子どもの頃からさっさとやってしまいましょう、というのが私の基本的な方針です。

ネット上のネガティブなコメントに惑わされず、あなたの子どもの英語教育を応援してあげてください。そして国語(日本語)も仕事も、そして英語もできる人に育てましょう。

子どもの英語学習は何歳から? 子どもの英会話は意味ないって本当?

「英語ができる人は早期英語教育に否定的です。やらせたがる人は英語ができない人です」

有名なコメンテーターがテレビで主張して、一時期話題になりました。

ネットでは「そうだ、そうだ! よくぞ言ってくれた」という意見が多かったようなのですが、私は「そうかな?」と感じました。

知り合いの英語上級者の家庭では、子どもの英語教育に割と積極的だからです。しかも良い結果を出しています。

彼らの子どもの様子を聞いてみても、日本語が遅れることはなさそうです。

「子どもの英語学習はいつから始めるのがベストなのか」

今回の記事では私の経験をもとに、

・子どもの頃を逃すと英語は身につかないのか

・英語力をキャリアに活かすためにはどのようなプランで学んだらいいのか

・早期英語教育は本当に無駄なのか

上記の3点について解説します。

子どもの英語はいつから始めるのが正解?

英語の仕事をしていると、ママさんから「英語は何歳から始めるのが正解なんですか?」とよく聞かれます。

結論から言いますと、何歳から英語学習を始めても問題ありません。

「えっ、そうなの?」と意外な表情を浮かべるママさんが多いのですが、事実です。

確かに脳科学的には子どものほうが音に関する感性が高いことは証明されているようです。【l】と【r】が聞き分けられるなどの、いわゆる英語耳が育ちやすいのはその一例です。

しかし、大人にも論理的な類推力や常識など、子どもよりもはるかに優れている分野があります。

それぞれの年齢や発達段階に応じた強みを生かせば、何歳から始めても英語の習得は可能です。

「〇〇歳までに始めないと、英語脳(耳)は育たない!」

このような広告を見て、「ウチの子はもう遅いのか…」などとあきらめたり、慌てて高額の教材を購入する必要はまったくありません。

反対に、退職後のおじいちゃんやおばあちゃんが英語を習い始めても、まったく遅すぎることはありません。努力に比例して英語を伸ばすことは可能です。

しかし、私は10歳から本格的に英語学習を始めることをおすすめしています。

「話が違うだろ!」とツッコミが入りそうですが、落ち着いて私の話を聞いてください。

一つ目の理由は、人間は10歳くらいから、論理的・抽象的な思考力が高まります。そうすると英文法を理解できるようになるので、効率的な英語学習が可能となるからです。

論理的習得能力グラフ

もう一つの理由は、その時期から始めると受験においても就職・仕事・転職においても最も英語の恩恵を受けられるからです。

このことについてもう少し詳しく説明しましょう。

英語による収入アップを目指すなら、10歳から英語を始めよう

多くの人が大学進学を実現していますが、現役で合格したとすると21~22歳(大学3~4年生)あたりで、就職活動の時期を迎えます。

この時期に履歴書で「私は英語ができますよ」とアピールしたければ、英検準1級レベル、TOEICなら800点以上が目安です。

難関大学の入試レベルでも、英検準1級には届きません。つまり難関大学に入学してからも英語学習を正しい方法で1年間学び続けることが求められます。

海外との取引がある会社や部門で働くことになると、一定水準以上の英語力は必須となります。どんな業務であっても、やはり英検準1級程度の英語力がないと、実際の業務に支障があるでしょう。

もちろん簡単なことではないので、このレベルの英語力を持ったビジネスパーソンはそうでない人よりも年収が高くなる傾向にあります。

その証拠に、高い英語力を証明するTOEICのスコアを持っている人は、より有利な条件の転職に成功する傾向が顕著にあるようです。

これらのことを総合的に考えると、21歳までには英検準1級レベル、TOEICなら800点以上を取得しておくと、就職・仕事・転職で大きなアドバンテージを得られることがわかります。

これをとりあえずのゴールと考えるなら、小学4年生(10歳)くらいから本格的な英語学習を開始したほうが良いと私は考えます。

受験英語で優位に立ち、大学入学後も英語学習を続ければ社会人になっても高い収入を得られる確率が高まるからです。

英語ができる社会人になるまでのざっくりプラン

目標とその達成時期が明確になったところで、どのようなプランで達成するかを大まかに頭に入れておきましょう。

下の図は小学4年生から大学生までの間でクリアするべきステップを示したものです。上の段は、お母さん世代が受けていた英語教育の様子です。下の段は今の子ども達が目標にするべき目安です。

お母さん達がかつて受けていた従来の英語教育よりも、一段階目標到達時期が早まっていることがわかります。

そして、よりコミュニケーション能力が重視され、リスニング・スピーキング・ライティングも含めた4技能をバランスよく伸ばすことが求められています。

つまり、やることが増えてより早い段階で達成しなければいけなくなったのです。

しかし、中学校・高校では他教科のレベルも上がり部活動など時間のやり繰りが大変になってきます。英語学習ばかりに時間を充てられません。

英語学習は年単位の努力が必要です。そうなると中学入学前の小学校時代にできるところは進めておくことがポイントになります。

結論として、

英語は何歳からでも学べます。しかし、将来の収入アップに最大限活用したければ、小学4年生から本格的な英語学習を始めましょう。

そうすれば社会人になる前に英検準1級(TOEIC800点以上)の取得もかなり現実的になります。

「それなら、もっと早く幼児期から英語教育を始めたらどうなの?」

という疑問が湧いてきますよね。そこで、早期英語教育について、メリットとデメリットを考えてみましょう。

幼児期から英語学習を始めるメリットとデメリット

私の住む地域では、英語のプレスクールが大盛況です。英語のネイティブが幼児を預かり英語で子どもを保育する場所です。

ときどき散歩で家の前を通る子ども達を見かけますが、ネイティブのような発音で英語の歌を歌いながら歩いています。

“Look!  It’s a butterfly.”  (見て!チョウチョウだよ)

簡単な英語だけれど、状況に合わせてスラスラときれいな発音で英語を話すのを見ると感心してしまいます。

我が家は一時期海外に住んでいたことがあります。当時5歳だった息子はインターナショナルスクールに入り、3年半通いました。帰国して1年以上経過しますが、今でも英語を話せます。

一方、日本語が完成しないうちからの英語教育に反対する意見も根強くあります。日本語に悪影響を及ぼすというのが主な理由です。

また、小さい頃から英会話教室に通わせても、まったく英語が上達しなかったという話もよく耳にします。

幼児期からの英語教育は本当に効果的なのか、またどのようなメリットとデメリットがあるのかについて説明します。

本気で英語を必要と子どもに感じさせられるかどうかがポイント

私の経験上、幼児期の英語教育を成功させるための条件はたった一つです。その条件とは「英語が生活に必要な言葉として本人が本気で認識すること」です。

幼児は教養のためとか将来のために勉強をするわけではありません。その言葉を覚えないとお母さんと話ができなかったり、友達と楽しく遊べないから、必死になって覚えるのです。

英語のプレスクールに通う子ども達は、おそらく一日の大半を過ごす場所では英語がメインで使われるため、覚えたほうが絶対に楽しく過ごせるから英語を話すのです。

インターナショナルスクールに通っていた私の息子は本来は社交的な性格でしたが、最初は英語ができずに無言で過ごしました。

しかし「友達と遊びたい」「先生の指示がわからないとマズイ…」と本能で悟り、幼児期の自然に言語をマスターできる能力と合わさり、3カ月後には簡単な英語を話すようになりました。

英会話教室に通わせても子どもがなかなか英語を話さない、というケースをよく耳にします。これは、子どもの中では生活に必要な言語として英語が認識されないため、メインの言語として使おうと思わないからです。

日本で過ごしながら、子どもに英語の必要性を感じさせる環境を作るのは大変です。しかし、その条件さえクリアすれば子どもは積極的に英語を覚えようとします。

必要性がなければ急速に英語を忘れる

幼児期を海外で過ごした子どもが日本に帰国すると、あっという間に英語を忘れるという話は本当です。

なぜなら、「もう英語は必要ない」と子どもの脳が感じるからです。特に、音声だけから覚えた英語は必要なくなると急速に忘れます。

これを防ぐには、本(文字)を読めるようにしておくのが有効です。

私は自分の息子で試してみました。海外にいるとき、話すことよりも英語で読書をすることに力を入れました。

簡単な本を一緒に読んだりしながら、少しずつ読書経験を積ませます。テレビは見られなかったので、暇な時間は読書をするか映画をみるしかありません。

2年くらいすると、ネイティブの子どもと同じくらいの本が読めるようになりました。

帰国後は普通の公立小学校に通っています。普段の会話はほぼ100%日本語です。しかし、文字から覚えた英語はほとんど忘れていません。

幼児期に運よく英語を話せるようになったなら、もうひと頑張りをして英語で本が読めるようにしておくようにしましょう。

そうすることで日本語環境に戻ったとしても、英語を忘れずに一生のスキルとして保持することができます。

幼児期の英会話はムダって本当?

では、そこまで徹底的にやらない「習い事としての英会話」は無駄なのでしょうか? 週1回、楽しく英語に触れるレッスンは時間とお金の無駄なのでしょうか?

私は中学校から英語を習い始め英語が得意になりました。現在は、英語上級者といわれる英検1級も取得しています。

大人になったある日のこと、母から私が英会話教室に通っていたことを聞かされました。ところが、私はまったくこの記憶がありません。

通ったことすら忘れているありさまなので、普通に考えると時間とお金の無駄です。

ところが、一つ私が「そうだったのか!」と腑に落ちたことがあります。それは、中学校で英語を習い始めたときに、私はすぐに英語らしい発音ができたのです。

【f/v】【th/θ】【l/r】などは日本人が苦手とする発音です。しかし、私は先生の見本の通りにほとんど初日からこれらの発音の使い分けができました。

クラスメイトがなかなか発音できないのを見て、「なぜ、こんなのもできないのだろう」と不思議に感じたのを覚えています。

もしかすると小さい頃に通った英会話教室で訓練していて、身体が覚えていたのかもしれません。

中学校では、英語を上手に読めることで気分が良くなり、英語好きになりました(単純な性格ですね!)。

この経験から、幼児期の週1回の英会話教室も、実は役に立ったといえるのではないかと感じます。

確かに、あまりにも高額な教材を購入したり、嫌がる子どもに無理やり英語を習わせるのは私も反対です。

しかし、幼児期に楽しく英語に触れる経験をすることは、たとえ英語を話せなかったとしても無駄ではないでしょう。

そういう意味では、英会話教室に通わなくても、親と英語の絵本を読んで楽しく過ごすだけでも充分です。

幼児期の英語教育は、楽しく学びながら将来役に立つことがあるかもしれないと大らかに構えておきましょう。

英語の早期教育は日本語に悪影響を及ぼすって本当?

海外に住む日本人の子ども達は多かれ少なかれ日本語の発達が遅れます。母親との会話は簡単なやり取りで済むため、高度な日本語の刺激が入らず幼児レベルのままであることが多いです。

特に漢字については海外では必要性がないのと、難易度が高いために年齢相応に覚える子どもはほとんどいません。

しかし、これらの話は海外に住む子どものことです。

日本に住む子どもが半日英語環境で毎日暮らしていたとしても、一歩外に出ればそこは日本です。この状況では、日本語への悪影響はほとんどありません。

人工的に極端な英語環境を作れば話は別ですが、そんなことはほとんど起こりません。したがって、幼児期から英語を学んだとしても日本語が育たなくなるなどの心配は無用です。

まとめ

英語を学ぶのに年齢は関係ありません。しかし、受験・就職・仕事・転職において英語力を武器に収入アップを目指すなら、小学4年生から本格的な英語学習を開始したほうが余裕をもって取り組めます。

さらに早い時期である幼児の英語教育については、賛否両論あります。子どもが英語を必要と感じる環境に置けば、高確率で英語を話すようになります。

日本にいながら週1回の英会話教室では英語を話すのは難しいでしょう。しかし、将来、本格的な英語学習を開始したときに思わぬ形で役立つ可能性もあるので無駄とは言い切れません。

幼児の英語教育については、楽しく学ばせることが大切です。高額すぎる教材を購入したり、嫌がる子どもに無理強いするのは厳禁です。お母さんはあまり前のめりにならないように注意しましょう。

私の周りの英語上級者の家庭でも積極的に子どもに英語学習をさせています。日本語力の低下や思考力が育たないなどの心配はしなくても大丈夫です。

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