英語を学び始めた頃「あれっ、これってどうなっているの?」と疑問に思うことはたくさんあります。しかし、その場ですぐに聞ける先生がいないとそのままになりがちです。
例えば、「私の茶色の新しい靴」を英語で書きたいときにふと手が止まります。
靴はshoes、これを修飾する言葉はmy, brown, newです。どれも簡単な形容詞ばかりですが、どの順番で並べたらいいのか迷ってしまいます。
そんなときに子どもがお母さんに質問してきたら、多くの人はインターネットで検索するはずです。そして、載っている答えを子どもに伝えます。
子どもを英語しかできない子どもではなく本当に賢く育てたければ、ここでひとつ立ち止まって二人で考えて欲しいと思います。「なぜ、この並び順なんだろうか?」
仮説でもいいので自分なりに納得する答えを出せれば充分です。丸暗記をさせるのと、「なぜ?」を考えさせるのとでは、将来、大きな差が開くと私は考えています。
今回は形容詞の順番を学びながら、お母さんと子どもが頭を使って考えるようになる英語学習のコツを説明します。
Contents
どうなっているの? 形容詞の順番
形容詞とは名詞の性質や状態を説明する言葉です。例えば、a beautiful flowerではbeautiful(美しい)という形容詞はflower(花)という名詞をより詳しく説明しています。
日本語でも「美しい花」と表現するので、語順で混乱することは子どもでもありません。しかし、形容詞が3つ以上続くと「どの順番で」それらを名詞の前につけるのか考えこんでしまいます。
3つくらいの形容詞が使われることは普通に起こりえます。形容詞を並べる順番には目安があって、自由に並べられるわけではありません。
参考書を開くと
「私のペン」はmy penで簡単です。「私の2本のペン」もmy two pensもそれほど迷わずに答えられます。
では、「私の2本の長い赤いペン」はどうでしょうか? longとredをどこに置いたらいいのでしょうか?
文法の参考書によると下の表のような順番が示されています。
形容詞の並び順にはある程度の目安があります。たしかに入れ替えて読んでみると「違和感」を覚えます。
しかし上の表を暗記するのは面倒ですし、すぐに忘れてしまいます。ネイティブはどのようにしてこれらの順番を覚えているのか調べてみました。
OSASCOMP(オサスコンプ)とは
ネイティブは形容詞の並び順に関して、それぞれの頭文字を取って「OSASCOMP」と覚える人もいます。どのようなものか詳しく説明します。
- Opinion(主観)
これは主観的な判断に関する言葉が該当します。
my perfect case
perfect(完璧な)はその人の主観的な意見なので、最初のほうに置きます。
- Size(大きさ)
これは大きさ(big, small, largeなど)が該当します。
my perfect small case
- Age(古さ)
これは古さ(old, newなど)が該当します。
my perfect small new case
- Shape(形)
これは形が該当します。
my perfect small new round case
- Colour(色)
これは色(black, white, redなど)が該当します。
my perfect small new round black case
- Origin(出どころ)
これは出所・起源が該当します。
my perfect small new round black French case
- Material(材料)
ここには材料が来ます。
my perfect small new round black French wooden case
- Purpose(目的)
最後に目的が来ます。
my perfect small new round black French wooden pencil case
OSASCOMPを参考書の並び順に当てはめてみます。
上記の説明で示した具体例は、あくまでも説明用のものです。実際は連続して形容詞を多用するのは避けられます。通常使用される形容詞は3つまでです。
また実際には多少の順番の入れ替わりはあり得ます。したがって、上記の並び順は絶対的なルールではありません。
日本語でもOSASCOMPでも、形容詞の並び順に関して「丸暗記」するのはおすすめしません。特に子どもに英語を教えるときは、できるだけ「暗記させない」工夫が必要です。
子どもを英語が得意にしたければ、安易に「丸暗記」させない
実は私は暗記科目が大の苦手でした。本当に「どうしてこんなに覚えられないのか」と自分でも呆れるほどです。そのため、高校では世界史や日本史のテストでは常に赤点を取り、夏休みに補習を受けなければいけないありさまでした。
あるとき英語のテストが返却されました。いつもより問題が難しく、平均点が40点台でした。先生は怒り心頭で「トップが90点で、その次が70点台だぞ。ひどすぎる!」と吠えまくっていました。
クラスメートの関心は「誰がトップだったのか」です。成績上位の常連も全滅でした。そして最後まで誰が最高点だったのかわからずじまいでした。
もうわかると思いますが、最高点は私でした。私は試験範囲を勉強して点数が上振れするのが嫌だったので、自分の英語力を正確に測るために一度も「試験範囲の勉強」をしたことがありませんでした(マネしないでください)。
もちろん、まったく英語を勉強しなかった訳ではありません。そのかわり英語で読書をしたり音読したり文法の学習は自分のペースで続けていました。
この経験から断言できますが、英語に暗記力はほとんど必要ありません。むしろすぐに「丸暗記」するのは、大事なことを学習する機会を奪ってしまうことにつながります。
なぜ、そうなっているのかを立ち止まって考える
前述のとおり私は暗記が苦手でした。そこで英語の文法や語法を学習するときはできるだけ丸暗記を避けて「なぜ、そうなるのか?」を常に考えるようにしていました。
語源や文化的な背景、人間の心理にまで考えを自分なりに巡らせて納得しながら英語を学習すると、忘れにくいし雑学も増えます。
例えば「たがをはずす」を聞いて「規律や束縛から抜け出す」と丸暗記すると、「たが」とは一体何なのかを学習する機会を失います(ちなみに「たが」は樽の外側にはめて締めるための輪のことです)。
言葉は人間が長い歴史の中で作り上げてきたものです。何かしらの起源や意味、心理的なものがベースにあるものです。それに気づくか気づかないかは、そのときに限ればたいした違いではありません。
しかし10年・20年と経過すると、「丸暗記→テスト後に忘却」してしまう人と「なぜと疑問→理由を探す」の習慣がある人とでは、大きな差となって現れます。子どもの「地頭」を鍛えるためにも非常に有効な方法です。
文法理解は「心」で理解せよ
さきほどの形容詞の順番ですが、私はいちいち覚えていません。説明を書いておいてひどい話ですが「覚えられない」のです。
それでも何とかなっている私の頭の中を公開します。
「結びつきの強いものは近くに置きたい」心を理解する
名詞に近い形容詞に注目しましょう。「材料に関する形容詞」は「名詞」に最も近い形容詞です。材料は、その名詞が作られている素材そのものです。つまり、名詞ととても親密な関係にあります。
それに比べると「古さ・大きさ」などは、名詞と「距離が離れた形容詞」と考えられます。
そして、英語においては4つ以上の形容詞を一文の中で同時に使用することはあまり推奨されていません。だから、「ほどほどに覚えておけばいい」のです。
私の頭の中をさらけ出すと、「theとかmyが最初、次に数字、あとは心理的に結びつきの強い形容詞を名詞のそばに置く」程度にしか理解していません。
「いい加減な奴だ。そんなレベルでよく教員をしていたな!」と叱られそうですが、本当だから仕方ありません。これは形容詞の順番に限ったことではなく、文法の学習は常にこんな感じです。
大量の音読トレーニングをすることで、自然と形容詞の順番も身につきます
練習問題
それでは練習問題を載せておくので、お母さんは子どもと一緒に形容詞を正しい順番に並べて名詞を修飾してみましょう。ふたりでワイワイいいながらやってみると楽しいです。
1.名詞 a dressを修飾してみましょう
使う形容詞:white, perfect, new
2.名詞 the chairを修飾してみましょう
使う形容詞:wooden, Chinese, old
3.名詞 my shoesを修飾してみましょう
使う形容詞:old, leather, expensive
解答
1.a perfect new white dress
(Opinion-Age-Colour)
2.the old Chinese wooden chair
(Age-Origin-Material)
3.my expensive old leather shoes
(Opinion-Age-Material)
まとめ
形容詞とは名詞の性質や状態を説明する言葉です。通常は3つまでの形容詞が連続して使われることがあり、どの順番で並べるか迷ってしまいます。
参考書には詳しい説明はありますが、丸暗記するのは面倒です。OSASCOMPという頭字語を使って形容詞の順番を覚えることも可能ですが、これも基本的には暗記です。
言葉は人間が作り出したものであり、その裏側にはその言葉を使う人達の文化や心が現れています。すぐに丸暗記させず、「なぜ、そうなっているのか?」を子どもに考えさせるようにしましょう。
形容詞の場合は、「修飾する名詞と結びつきの強い形容詞ほど近くに置かれる」法則があることに気がつきます。
ちょっと立ち止まって心理的な面から文法や語法を理解すると、忘れにくくなると同時に地頭の良い子どもになります。「覚えるしかない」「そう決まっているから」と子どもに英語を押しつけないように気をつけましょう。
「なぜだろう」と考えると子どもは知的になります。お母さんはそういうきっかけを作ってあげられるようにサポートしてあげましょう。