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小学生からの英会話:教室×自宅でできるおすすめ学習法

私が小学生に英語を指導していると、お母さんからよく受ける質問があります。

「英語をもっと書かせなくて大丈夫ですか」

「ドリルや問題集に取り組んだほうがいいですか」

私の答えはいつも決まっています。

「子どもが英語を書くスピードはとても遅いです。そのため学習効率が落ちます。それよりも英語を声に出したほうが効果的ですよ」

このように答えても、お母さん方の表情はあまりスッキリしないことが多いです。

気持ちはとても理解できます。本当に理解しているかどうか、多くの問題をこなして間違えないようになるまで完成度を上げるべきなのでは、と考えているのでしょう。

または、中学生以降の英語のテストを意識して、正しいスペリングで「書ける」ことを大切に考えているのかもしれません。

それでも私は子どもに英語を教えるときは「話す」ことを中心に据えて指導をするように心がけています。なぜなら、会話を意識して学習することが最も英語を効率的に上達させてくれると信じているからです。

今回の記事では、なぜ小学生の英語学習で「会話」を中心に進めたほうがいいのか、について詳しく説明します。

小学生の英語学習はスピーキングを中心に置こう

小学生から英語を始めるとき、一般的には教室に通って教えてもらうことになります。大体は一週間に1レッスンで1時間程度の勉強時間です。

もちろんこれだけで英語力が伸びるはずがありません。家庭学習の質と時間がとても大切になります。

このときに家で子どもが黙々とドリルや問題集に取り組んでいたとしたら、それは要注意です。ドリルをすること自体が問題なのではありません。取り組んでいるときに、声を出さずに英語を勉強していることが問題なのです

小学生の英会話でも文法と単語学習が基本です

小学生から英語を学ぶなら、母国語を覚えたときのように自然と身につけるのは不可能です。大人が学習するときと同じように、文法と英単語の学習が基本となります。

論理的習得能力グラフ

「文法を勉強するから英会話ができない」

という意見を耳にしますが、完全に間違いです。文法は効率よく語学を学習するためには欠かせないものです。図のように10歳くらいを境に、論理的に言語を習得する能力が伸びるため、文法の学習から入るのは理にかなったアプローチです。

いくら単語を覚えても、文法を学ばないとどのような順番で単語を並べればいいのかがわからないため、会話ができるわけがありません。

まずは、教室に通ったりしながら、英文法の基本と英単語の学習に力をいれましょう。

話せるようになりたいなら、話しなさい

日本の学校教育では、英文法指導に重点が置かれています。効率よく英語を学ぶためのツールである文法を学ぶこと自体は正しいです。しかし、会話をするスキルにつながっていないのは問題です。

私はこの結果は当然だと考えています。なぜならほとんどの日本人学習者は「話す」練習をしていないからです。泳げるようになるためには、プールに入らないとダメです。プールサイドで教科書を読むだけで泳げるようにはなりません。

このようなことは以前から指摘されていますが、まったく修正されません。おそらく生徒も先生も「具体的にどうすればよいのか」を理解して実行しないからです。

お母さんのアドバイスは先生や教材よりも大切

そこで大切になるのが、家庭での英語学習です。

話せるようになるための正しい英語学習をしているかどうか、について子どもの様子を観察し、お母さんから正しくアドバイスしていただきたいと思います。

子どもは「勉強」とは他教科と同様「黙って机に向かって問題集に取り組むこと」と思い込んでいます。これを英語にも当てはめてしまうため、英会話を意識した音読を取り入れさせることは容易ではありません。

中学生になると「英語を口に出すことが恥ずかしい」と考えるようになるため、どんなに親や先生が音読するようにアドバイスをしても、聞く耳を持ちません。小学生のうちに英語を正しく学習する方法を身につけるのがとても大切です。

英会話を学習の軸に据えよう:具体的方法

家庭でできる英会話の具体的な方法について説明します。

特別な教材やプログラムは必要ありません。英語教室で使用しているテキストで充分です。テキストには文法や語法の説明と例文が必ず載っているはずです。

これらの例文をその使用場面を具体的に想像しながら、何度も音読するだけです。単語を学んだら、その例文を音読します。そして、簡単な文でよいので、その単語を使って口頭英作文をするだけです。

 

文法にしろ単語にしろ、英語を学んでいるときには常に「英会話するために何とか使ってみよう」という気持ちと行動が肝心です。

以下、英会話を学習の軸に据えなければいけない理由について詳しく説明します。

英文法は例文音読で暗記から解放される

例えば動名詞(動詞-ingにして名詞のように使えるもの)を習っているとします。enjoyの後ろにはto do (不定詞)ではなく-ing(動名詞)を使用しなければいけません。

正)I enjoyed playing the guitar.

誤)I enjoyed to play the guitar.

enjoyの他にも、give up, finishなどは同じ使い方をする動詞です。このような文法事項を学ぶとき、ほとんどの子どもはルールの「解説」を覚えようとします。

これはとても効率の悪い勉強法です。それよりも、例文を何度も音読したほうが話が早いはずです。enjoy-ingと言わないと気持ちが悪い、という感覚が芽生えるまで繰り返します。

このように言うと、「文を暗記しているだけ」に感じるかもしれません。しかし、暗記するのと、何度も繰り返した結果として「覚えている」のではまったく努力の方向と結果が異なります。

さらに、自分が楽しんだ経験をオリジナル英作文してみます。ゲームをしたなら次のようになります。

I enjoyed playing the video game.(私はテレビゲームを楽しんだ)

theを落としたりするくらいの間違いは、ここでは問題ありません。今回はenjoy-ingがテーマなので、これを使って自分の体験を表現できればOKです。

さらに5W1H(What, Who, Where, When, Why, How)を意識して、情報を足せるなら最高です。

I enjoyed playing the video game with Ken yesterday.(昨日ケンとテレビゲームを楽しんだ)

小学生でここまで作れたら素晴らしいレベルです。

このような練習をあらゆる機会に取り入れていきます。これを継続することで英会話は上達します。

単語学習では必ず口頭英作文をしてみる

単語学習においても、同様の英会話の訓練が有効です。例えば、名詞のdictionaryを覚えるときには、最初に正しい発音で読めるようにします。次に簡単な英文でいいので使ってみることが必要です。

This dictionary is heavy.(この辞書は重い)

This dictionary has a lot of words.(この辞書はたくさんの単語が載っている)

最初は1文を考えるだけでも大変です。また、それが正しいかどうか確かめられないため、モヤモヤする気持ちもわかります。

しかし、この場合は正確性よりもとにかく使ってみるという経験が大切です。このステップを大切にすると、単語の数が増えるにしたがって表現が豊かになっていきます。

英単語とそれに対応する日本語訳だけを暗記しても、読めるようになっても話せるようにはなりません。使えるようになるためには、使わないといけないからです。

馬鹿馬鹿しいほど簡単な理屈ですが、ほとんどの人はこの過程を飛ばしてしまいます。

小学生はライティングよりも英会話を優先すべき理由

英語4技能のうち、スピーキングとライティングはどちらもアウトプット型の能力です。この二つの能力には強い相関関係があります。また、高校入試にはライティングが必須となるため、スピーキングではなくライティングのほうが重視される傾向があります。

しかし、私はスピーキングを重視するべきだと考えます。なぜなら、スピーキングとは「一瞬で行うライティング(英作文)」だからです。

瞬間的に英作文をしてそれを口から音で出すのがスピーキングです。これができるなら、ゆっくり考えられる英作文は余裕をもって取り組めるはずです。

もちろん正しいスペリングを書けなければいけませんが、正しく読める子どもはスペリングにも反映されるため、スペリングミスが少ない傾向があります。

このように、小学生の英語学習において英会話のための特別なテキストは必要ありません。普段使っているテキストの利用の仕方を音声中心にするだけです。また、書くことよりも話すことに主眼を置くと効率よく英語を学べます。

この部分をきちんとできているかどうかについて、お母さんにチェックしてもらえたら、小学生の英語力は必ず伸びるはずです。

お母さんがやってはいけない英語指導とは

反対に、家庭学習でお母さんが子どもに対してやらせてはいけない指導について述べます。

親は、自分の英語学習体験に基づいて「子どものためを思って」指導するため、なかなか自分では気がつきにくいのが特徴です。

以下、具体例を挙げて説明します。

ドリルや問題集にひたすら取り組ませる

ドリルや問題集をすること自体には何も問題ありません。問題なのは、子どもが静かに問題をこなす様子を見て満足してしまうことです。

先述したとおり、これでは受け身の学習(インプット)だけなので、英語を話せるようにはなりません。

例えば穴埋め問題をひとつやったら、その解答文を何度も声に出して読んでみることが必要です。さらに、一部を自分の体験と置き換えて、オリジナルの英作文をしてみるのも英会話練習には非常に効果的です。

静かに勉強しているのは英語に関しては「ほとんど学んでいない」ということです。

単語を紙に書いて覚えさせる

「単語は紙に書いて覚えなさい」と指導する英語の先生は少なくありません。

私も書くことは全否定はしません。学習初期の場合は、英語の発音とスペリングのすり合わせをするために、ぶつぶつつぶやきがなら単語を書くのも良い勉強法だと思います。

しかし大量の単語を覚えて、使えるようになりたいなら、これでは効率が悪すぎます。試しに小学生に英単語を書かせてみればわかりますが、internationalという一単語を書くだけで30秒以上かかることも珍しくありません。

声に出して読めば、2秒で終わります。しかもこの単語は、音とスペリングが一致しているので、正確に読めればスペリングも正確に書けるようになります。

声に出しながら紙に書けばまだマシですが、子どもが一人で学習するとつい無言でひたすら紙に書くようになってしまいがちです。

平凡な英文を馬鹿にしない

教科書には平凡な英文が多いです。また英語の教科書が批判されるとき、「使用されている英文が不自然である」と指摘する人がいます。

例えば、This is a pen.(これはペンです)です。このような英文は使う機会がないので、覚える意味がない、という批判です。

しかし、私はそうは思いません。この文を音読して学ぶべきなのは、意味の丸暗記ではなく、近くにあるものを説明するときに使える「文の構造」です。

a penのところはa CD, a flash light(懐中電灯)などさまざまなものに置き換えられます。複数形にするなら、最初のthis は these にしてThese are pens.にします。

さらに物だけではなく、近くにいる人にもThis is は使えます。This is Mike.といえば、「こちらはマイクです」という意味になります。

このように一見つまらない英文も、構造を学ぶ意識で取り組むと万能な文であることがわかります。一方、ネイティブも使用するイケてるフレーズはぴったりくる場面がやってこないと、なかなか口にすることはありません。

一見平凡そうな英文ばかりに見えても、大切な文の構造を学んでいます。ネイティブフレーズも覚えたほうがいいのは確かですが、そればかりに固執するのはやめましょう。

英会話の練習は自習がはかどる

ここまでの説明で、英会話の練習は特別なメニューが必要なわけではありません。普段の英語学習の中に音読や簡単な口頭英作文を取り入れるだけです。

週1回のスクールで会話が上達するのではなく、訓練の場は過程学習であるといえます。ここでは、先生がいる英会話教室と家庭での英語学習の関係について、深く考えてみます。

相手がいる英会話は試合

かなりの英語上級者であっても、ネイティブとの会話には苦労するものです。理由はさまざまですが、教科書に載っていないような表現や話題を気にせずに使用するからです。

まさに何でもありの世界のため、基本を忠実に学んできた学習者は戸惑ってしまいます。

自分の英語がどこまで通じるのかを試す機会はモチベーションの維持のために重要です。これはスポーツに例えると試合のようなものです。

部活で練習を一生懸命するのは試合で勝ちたいからです。もし、そのスポーツに試合がなければ、多くの場合モチベーションを維持するのは困難です。

相手を立てて英語を話す機会はできればあったほうがいいです。英会話教室でもいいしオンライン英会話を利用してもかまいません。日頃の自分の勉強の成果を試すための機会を持たせるようにしましょう。

英会話の自習は練習

先述の通り、試合は大切です。しかし、練習のない部活はありません。レベルアップのためには練習が不可欠です。

家で学ぶときは、英語で話しかける相手はいません。仮想の場面を描きながらひとり言のように英語を話すことになります。

例えば過去形を習ったら、昨日やったことを英語で表現してみればいいのです。I got up at six. I brushed my teeth. I washed my face. I ate breakfast. I left for school. I arrived at school at 8:00. という感じです。

過去形がわからなければ辞書を調べましょう。相手を待たせているわけではないので、落ち着いて何度でも言い直せるのが家庭学習のよいところです。

このように家庭でも英語を使ってみることが会話練習の中心となります。どうしてもうまく言えなかったら、次のレッスンのときに先生に聞けば前向きな姿勢でレッスンを受けられます。

試合と練習をバランスよく続けよう

これまで見てきたように、スポーツのレベルアップのためには、試合と練習の両方が必要です。同様に、英語学習においても実践で使う場とレベルアップのための自習の時間がバランスよくあることが大切です。

お母さんは、子どもの英語学習を英会話スクールに丸投げするのではなく、普段の学習が英語を話すことを軸に行われているかどうかをチェックする必要があります。簡単にいえば、音読しているかどうかを観察するだけでよいのです。

このような取り組みが実を結ぶまでには時間がかかります。目に見える成果が表れるまでに年単位が必要な場合もあります。それでも正しい努力をしていれば必ず結果はついてくるので、辛抱強く取り組ませることが大切です。

そのためには押し付けでは禁物です。英語の楽しさや達成感を少しずつ感じさせたり、ちょっとした向上をほめてあげることが子どものやる気を高めることになります。

まとめ

小学生が英語を学ぶときは、英会話を中心に据えましょう。しかし、「相手がいないと英会話を練習できない」と考えるのは間違いです。

文法を学んでいるときに例文を音読したり、一部を自分の事例に置き換えて口頭英作文をすることで英会話の練習ができます。

単語を覚えるときも、その単語を使って簡単な口頭英作文をすることが英会話の基礎トレーニングになります。

子どもに英語を書かせないことに不安を覚える人も多いかもしれません。書くこと自体は問題ありませんが、やはり学習の中心には「会話」をもってくるべきです。英会話は瞬時に行う英作文なので、英会話が得意ならライティングにも好影響を与えます。

家庭での英語学習はスポーツの練習に相当します。週一回のスクールに丸投げするのではなく、家庭学習の充実のため、お母さんからアドバイスをしていただきたいと思います。

小学生の英語文法の教え方と勉強法

もし、「何でもいいからスワヒリ語で話してみよう」と言われて、すぐにスワヒリ語を話し始める人はいないはずです。英会話教室で「積極的に英会話をしましょう」と講師が呼び掛けても子どもの反応が良くないのは、どうしていいのかわからないからです。

幼児や小学校低学年の子どもたちなら、無邪気に周囲のまねをして英語の歌を歌ったり講師のフレーズを口真似したりします。しかし、高学年の子どもは精神的に成長していて論理的に新しいことを覚えようとします。そこで必要となるのがマニュアルです。

英語学習におけるマニュアルとは文法のことを指します。子どもは適齢期にわかりやすい文法が与えられると、英語を理解しやすくなります。しかし、文法を習っただけでは英語を使えるようにはなりません。文法に沿って繰り返し英語を使うトレーニングが不可欠です。

しばらくトレーニングを繰り返すと、次第に文法をほとんど意識しなくても口が動くようになります。

そこで、英語を使えるようになるために、最初に子どもが覚えるべき基礎的な文法について具体的に説明します。また、どのようなトレーニングをすれば文法をほとんど意識しなくても英語を使えるようになるのかについても解説します。

小学4年生からは英語の文法が必要

個人差はあるものの、小学4年生から少しずつ文法学習を始められます。小学校低学年までの小さい子どもは文法を教えても理解できません。そこで実際の英語にたくさん触れながら英語の規則に気づかせる手法をとります。

例えば、小学校低学年ではI have a dog. やHe has a nice car. などの用例を多く口にすることで、自然と「主語(I, He)+動詞(have, has)+目的語(a dog, a nice car)」のパターンを覚えていきます。

このような習得方法は「体験的習得」と呼ばれており、小さい子どもはこの能力に優れています。文法用語を使わずに覚えるので一見簡単に思われますが、実際は言葉の規則性を発見・理解するまでに膨大な時間を要します。

子どもが「ママ」という一単語を発してから、「ママはご飯を作っている」など3語の文章で話せるまでの時間を思い出してください。日本語漬けの状態でも1年はかかったはずです。簡単に日本語が話せるようになったわけではありません。

子どもは10歳頃を境に、自然に言語を習得する能力(体験的習得能力)が急速に衰えます。しかし、それと引き換えに文法を理解する能力(論理的習得能力)が急速に発達していきます。この年齢からは文法を勉強しながら英語を学ぶのが最も効率的です。
論理的習得能力グラフ
グラフで示した黄色の部分は、ちょうど小学1年生から6年生までの範囲です。小学4年生を境に二つの異なる能力が逆転しているのがわかります。つまり、10歳になったら文法からのアプローチを取り入れたほうが英語を早く理解できるようになります。

もしお母さんがこのことを知らずに、小学校高学年の子どもに対して幼い子どもと同じような英語教育をしているなら今すぐ考え直しましょう。

小学校では文法を学ばせると英語嫌いにつながるとして、文法を教えない授業が進められています。一見、子どもに配慮しているように感じられますが、実はこの配慮こそが子どもが英語を嫌いにさせている可能性があります。

小学4年生の子どもの一部は、文法を教えたほうが英語を効率的に理解できる年齢になっています。それにもかかわらず、小学校では遠慮して低学年の子どもへのやり方で英語を教えています。

そのために、子どもはいつまでたっても英語を理解できずストレスが溜まります。そして、英語嫌いになっていきます。

発達段階に差がある児童一人ひとりに対応した指導方法を採用するのは現実的ではないので、学校の先生を責めるつもりはありません。現状では、文法に関しては各家庭で個別に対応するしかありません。

小学生の基礎英文法:語順と否定文・疑問文の作り方

文法の授業といっても、小学生に難しい文法用語を使って細かい知識を覚えさせるようなことは無意味なだけでなく英語嫌いを作る原因となります。

小学生に教えるべき文法は、わかりやすい英語のマニュアルです。このマニュアルは大きく二つの内容に分けることができます。一つ目は、英語の語順です。語順がわかれば英文を読んだり、単語をその順番に並べれば大まかな英文を作れます。

二つ目は、基本的な文の形である平叙文(へいじょぶん:単に情報を伝える文)・否定文・疑問文の作り方です。英語の語順は平叙文が前提となっていますが、実際は否定文や疑問文の形に変える必要が出てきます。

英語の語順を知り、さらに否定文や疑問文に対応できれば英語の基本を身につけられます。未来形・過去形・現在進行形・現在完了形などを将来学ぶときにも、基本が身についていれば理解するのはそれほど難しくありません。

参考書不要! 小学生にもわかる英語の語順(3文型)

英語の5文型は高校で学ぶ内容です。「S(主語), V(動詞), O(目的語), C(補語)」などの記号を使って教えられるので、堅苦しくてあまりいい印象を持っていないお母さんも多いことでしょう。実際、いきなり難しい文法の参考書や問題集に取り組んでもすぐに飽きてしまいます。まずは最低限の知識に限定して学習するようにしましょう。

小学生にはこれらの知識をかみ砕いて教える必要があります。最初に主語・動詞・目的語などの文の要素(文中での役割を示したもの)を理解させます。これがわからないと語順を理解することができないので、大切なポイントです。

文の中の役割

すぐには理解できないので、あまり詰め込まないように注意しましょう。次に、高校で習う5文型のうち主な3つの文型だけに凝縮させた文型を示します。
am/ is/ are の文目的語がない文
目的語ありI gave her a present. (私は彼女に誕生プレゼントをあげた)のような第4文型とWe call him Ken. (私たちは彼をケンと呼びます)のような第5文型は思い切って省略しました。3つの基本的な文型をマスターしてから、必要なタイミングで知識を増やせばいいからです。

3つの基本文型と例文をセットにしたカードはこちらからダウンロードできますので、子どもの目につく壁に貼り、いつでも確認できるようにしておきましょう。

基本的な文の形:平叙文・否定文・疑問文の作り方

単に情報を伝える文を平叙文(へいじょぶん)といいます。肯定文と呼ばれることもあります。次にnotなどを用いて「~ではない」「~ません」という意味の文を否定文といいます。また、何かについて「~ですか」とたずねる文を疑問文といいます。

先述した文型の動詞に着目してください。「am/ is/ are」を用いた文型とそれ以外の動詞を使う文型の二つに分けることができます。この動詞の種類によって、否定文と肯定文の作り方が変わります。

中学校で英文法を本格的に勉強するようになると、最初につまずくポイントは中学1年生の1学期に訪れます。それは「am/ is/ are」を用いた文とその他の動詞を用いた文について、それぞれ正確に否定文と疑問文を作れずに混乱するからです。

・am/ is/ are の否定文は「notを付け足す」

否定文の基本的な考え方は「notを動詞のうしろに付け足す」発想です。日本語では「~ではありません」のように文末に否定語を持ってきますが、英語の場合は動詞のうしろに否定語notを付け足すのが特徴です。

平叙文 否定文
She is tall. She is not tall.

・その他の動詞の否定文は、do にnotを付け足す

doは「する」という意味です。すべての動詞は結局何かをすることです。例えば「think(考える), make(作る), run(走る)」などの動詞に共通しているのは、何かを「する(do)」ことです。

このように考えると、これらの動詞の前に常に( )に入ったdoがあると解釈できます。

You (do) go to school. (私は学校へ行きます)

go(行く)の意味にはdo(する)が含まれるので、いちいち書かないけれども実はこの位置にdoがあると考えます。否定文の基本的な発想は「動詞にnotを付け足す」ことなので、次のような否定文が完成します。

平叙文 否定文
You go to school. You do not go to school.

notを付け足すのは見えている動詞(go)ではなく、普段見えていないdoの後です。気をつけましょう。

・三単現のs

英語を使う人の意識では、会話をしている「私(達)とあなた(達)」と「その他の人や物」を分けます。その他の人や物が主語になるときは、動詞に(-s, -es)を付ける習慣があります。絵で表すと下のようになります。

3単現のs

例えば、「彼はよい車に乗っています」は会話をしている私(達)とあなた(達)以外の人について話をしています。さらに、彼は一人で、いつものこと(現在形)を表現しています。このようなときは動詞driveにsを付けてdrivesにします。いわゆる三人称・単数・現在形のs(略して三単現のs)です。

He drives a car. (彼は車を運転します)

この文にももちろんdoが本来は含まれています。

He (does) drive a car.

先ほど動詞にsを付けるといいましたが、doにs(音の関係上es)が付いてdoesになっていることに注目しましょう。平叙文ではわかりきっているためにdoesを隠しますが、動詞に-s, -esを付けなければいけないので、drivesになっていると考えましょう。

ではnotを使って否定文にしてみましょう。動詞のうしろにnotを付け足すのが基本発想なので、次のようになります。

平叙文 否定文
He drives a car.

(=He does drive a car.)

He does not drive a car.

否定文を作るとき、He does not drives a car. とdriveにsを付けないように気を付けましょう(すでにdoesについているので不要です)。

・am/ is/ are の疑問文は「主語と動詞を入れ替える」

「am/ is/ are」の疑問文は、主語と動詞を入れ替えます。疑問文を作るときの発想は、主語と動詞の入れ替えです。最後にクエスチョンマーク(?)を入れます。

平叙文 疑問文
She is tall. Is she tall?

・その他の動詞の疑問文も「主語と動詞(do/ does)を入れ替える」

その他の動詞でも疑問文の作り方は同じです。つまり主語と動詞を入れ替えます。ここでの動詞とはdoまたはdoesを指します。

平叙文 疑問文
I (do) go to school. Do you go to school?
She drives a car.

(=She does drive a car.)

Does she drive a car?

Iから始まる平叙文を疑問文にするときはDo you ~?の形にするのが一般的です。「私は~ですか?」と相手に尋ねる文は少し変だからです(実際はよくあります)。

否定文と疑問文の作り方をまとめます。否定文は動詞のうしろにnotを付け足して作ります。疑問文は、主語と動詞を入れ替えて作ります。am/ is/ are以外の動詞には本来do (またはdoes)が存在していることを理解するのがポイントです。

語順と平叙文・否定文・疑問文がわかれば英語が得意になる

英語の語順と平叙文・否定文・疑問文について理解することが最も大切です。これさえできれば文法学習の最大の山を乗り越えたも同然です。なぜなら基本的なルールさえ理解してしまえば、高度な英語表現にも簡単に応用できるからです。

例えば中学1年生で助動詞canを学ぶとき、doやdoesの位置に置き換えれば否定文や疑問文に応用できます。

I (do) speak English. I can speak English.
I do not speak English. I cannot speak English.
Do you speak English? Can you speak English?

私は英語が苦手な中学生の指導経験が多数ありますが、彼らのほとんどは基本の語順と平叙文・否定文・疑問文をきちんと理解できていません。理屈を理解せずに暗記しようとすると混乱するケースが多いので注意しましょう。

丸暗記でAre you ~?とかDo you ~?と覚えてしまうと、Are you go to school? という誤った文を作ってしまいます。一度変な理解をしてしまうと、あとで正しく覚え直すのは大変なので最初が肝心です。

すでに数年程度の英語学習歴がある子どもにも、語順や否定文・疑問文の作り方を教えることで散らかった知識が体系的に整理されます。それまで何となく口にしていた英語の語順がきちんと論理的に説明できるのでプラスの効果が生まれます。

文法の理解が早く正しくできるようになると学校のテストで点数を取ることは可能になります。しかし、それだけでは本当に英語を使えるようにはなりません。次に、習得した文法の知識を使って英語を使える(話せる)ようになるための方法を説明します。

英文法を知識で終わらせないための学習方法

英語上級者のように、文法を意識しなくても英語がスラスラと口から出てくるためのトレーニングを紹介します。

学校や英会話スクールで習った英文を材料にして家庭でトレーニングをしてみましょう。例えば、My favorite color is blue.(私の好きな色は青です)という表現を習ったら、これを材料にして文型を確認させます。

文型を確認するときは壁に貼ってある基本3文型のカードを見ながら学習を進めます。最初に動詞を確認させます。この場合はisが動詞です。青い色鉛筆でisを○で囲みます。

その次に主語を確認します。子どもは主語を1語だけと思い込んでいるので、すぐには答えられないかもしれません。そこでヒントでMy favorite colorに鉛筆で下線を引いてあげます。そうすると全体で主語であることが理解しやすくなります。これを赤で囲みます。
my favorite color is blue.

最後にblueという言葉がせつめい語なのか、それとも「in, on, atなど」なのかを考えさせます。正解はせつめい語です。この場合、isという動詞は左側の主語と右側のせつめい語が同じであること(イコール)を意味します。

ここまで細かく説明すれば、それぞれの単語がどういう意味でなぜその順番に並んでいたのかが理解できます。そうするとスッキリした状態で、英文の暗唱に気持ちを集中させることができます。

あまり細かいところまでやりすぎると混乱する原因になります。とりあえず学校や英会話スクールで習った基本文の理解だけにとどめておきましょう。

・否定文と疑問文も作ってみる

否定文と疑問文も作ってみましょう。否定文は動詞のうしろにnotを付け足すだけなので、My favorite color is not blue.で完成です。また、疑問文は主語と動詞を入れ替えてIs your favorite color blue?となります。myをyourに変えるのがポイントです。

否定文や疑問文を作るときは、紙に書かずに口頭で答えさせましょう。紙に書かせるとスペリングを正確に書けなければいけないので、英作文に集中できません。一度に複数の作業をさせると効果が低下するので、口頭英作文が最適です。

このように、たった一つの基本文だけでも、語順と否定文・疑問文の作り方までを繰り返し学ぶことができます。

ほとんどの英文が3つの文型に収まることがわかれば少しずつやる気が出てきます。一度考え方を伝えれば、自分で解決できないときだけ質問するようになります。そのときは壁に貼った文型のカードを確認しながら教えてあげましょう。

英会話につなげる小学生の文法学習

文法や語法を習ったときは、必ず学習事項を使った英文を暗唱することが必要です。実際の使用例を何度も声に出して言うことで、文法を筋肉に覚えこませます。

例えば「~が得意である:be good at ~」を習ったら、これを使ったHe is good at math.(彼は算数が得意である)という例文を暗唱します。やり方は次の通りです。

・英会話につなげるための文法学習ステップ1

まず、この文章の文型を確認します。「主語 is せつめい語」のパターンです。得意は「良い」と置き換えられるので、goodを使用しています。日本語がどのように英語に変えられるのかを理解すると言語感覚が磨かれます。得意な物を示すときは、atを使います。

ここまでをきちんと理解できたら、英文を見ながら3回音読しましょう。回数を増やしすぎると、意味を無視してお経を唱えるような状態になってしまいます。3回だけでいいので、覚えるつもりで集中します。

・英会話につなげるための文法学習ステップ2

次に何も見ないで3回音読してみます。このときに表現を忘れたり口ごもったりしたら、ステップ1からやり直します。

・英会話につなげるための文法学習ステップ3

最後に日本語訳を見ながら、日本語のどの部分がどのように英語に置き換えられているのかを確認しながら、英文を音読します。例文では「得意」の意味を「good」で表しているのが特徴です。これも3回音読します。

英会話練習の中心はステップ1~3をひたすら繰り返すことです。英文そのものを暗記することが目的ではありません。まったく同じ表現を使用する機会は、めったに訪れないからです。

それよりも「得意である」をgoodで表現できるとか、得意な分野や対象をatのうしろに置くなどのことを脳に染み込ませることが大切です。何気なく音読を繰り返しても効果はほとんどありません。

英会話に使える表現を瞬時に出せるために練習していることを忘れないでください。文型や文法を筋肉が覚えるくらいまで繰り返すと、少しずつ英語を話すことができるようになります。

英語を流ちょうに話す人は、文法を意識していないのではありません。文法を意識しながら数多くの練習を繰り返した結果、ほとんど意識せずに話せるようになっているだけです。文法は知識で終わらせるのではなく、使いこなせてこそ意味があります。

英語の文法を学ぶときに、ひと言も声を出さずに完了してはいけません。理屈を理解したらすぐに口頭練習を繰り返すことが大切です。もし、あなたの子どもが静かに英語を勉強していたらそれは間違った学習方法なのでアドバイスをしてあげましょう。

英語の総合力をつけるには、こちらの動画セミナーがオススメです。

まとめ

小さい子どもは体験を通して英語の語順などの文法を自然と身につける能力を備えています。しかし、10歳頃を境にしてその能力は衰えます。代わりに論理的に言語を習得する能力が急速に高まります。

このことから小学4年生からは少しずつ文法を学んだほうが、効率よく英語を身につけられることがわかります。初めに学ぶべき文法とは、基本的な文型(語順)と否定文・疑問文の作り方です。

また、これらの文法を学んだだけでは単なる知識で終わってしまいます。大切なのはこの知識を使って実際に口を動かして英文を暗唱しながら筋肉に文法を覚えこませることです。

「文法を意識するから英会話ができない」という間違った認識は捨てましょう。英語を流ちょうに話す人は学んだ文法を使って練習を繰り返した人です。

これから長い時間をかけて子どもたちは英語を学んでいきますが、お母さんからもときどき文法学習の意義を伝えてあげましょう。

小学生の子どもが英語を話せるようになる方法とは

「英語をしゃべるとバカになる」という話を聞いたことがあるでしょうか。英語を話すには高度な情報処理が必要です。脳がその作業に追われてしまい、肝心の話す内容がおろそかになってしまうらしいのです。そのため話す内容のレベルが低下して「バカ」になるというものです。

私も海外で英語を使う仕事をした時期がありましたが、苦労したのが夕食の席でした。お酒を飲みながらのコミュニケーションは予想以上に大変でした。酔うと簡単な単語さえも思い出せずに、言いたいことの半分も言えなくなってしまいます。英語を話すと脳に負担がかかっていることが実感できました。

英語教育に関心のあるお母さんなら子どもには「英語ペラペラ」になって欲しいと思うはずです。しかし現実、英語ペラペラの小学生はほとんどいません。なぜなら、英語を話すのは小学生では難しすぎるからです。

ただ、英会話の仕組みと難しい部分を意識すれば、対策がハッキリと見えてきます。今回の記事では、小学生でもスピーキング力を伸ばせる有効なトレーニング法を紹介します。

英語を話す人の頭の中はどうなっているか

私たち日本人にとって日本語は母国語です。「言いたい何か」を頭に思い浮かべれば瞬時に日本語の文が口から出てきます。このとき日本語の文法を意識することはありません。人間の本能により文法を自然と身につけた結果です。

この能力は7歳くらいで急速に衰え、たとえ外国語の環境に移動しても日本語を覚えたようには自然と身につけるのは困難になります。外国語を身につけるためには勉強をするしかありません。

もちろん、子どもの中にはネイティブではないのに英語をスラスラと話せる人がいます。彼らを見ていると「なぜあんなにスラスラと英語を話せるのだろう」と不思議に思うかもしれません。でも、頭の中の活動を細かく見ていくと、決して簡単に話しているわけではないことがわかります。

ここでは「英語を話す」という行為を段階に分けて図で説明します。このプロセスを正確に理解したあとに、「小学生でも英語をペラペラと話すことができるか」について考えてみます。

第1段階:状況を把握し、言いたいことを思い浮かべる

まず、言葉に出す前に「状況」があります。例えば「レストランで友人と食事をしているシチュエーション」です。最近起きた出来事や考えたことなどをお互い話しながら、ランチを楽しんでいる状況です。

状況が明確になると、使用する英語の丁寧さが決まります。誰かの了解を得るなら、かしこまった場では“Would you mind~?”を使用し、友達なら“Is it OK if~?”で充分です。話すときの状況は英語表現に影響を与えるので大切な要素です。
speaking1

そして次に「言いたい何か」を頭に思い浮かべます。この時点ではボンヤリとしたイメージのです。例えば、次のようなことが該当します。

目の前にいる友人はグルメ好きである。そういえばここに来る途中、レストランの前にオープン待ちの長い行列ができていた…。そうだ、この話を友人に教えてあげよう!

この時点では「言いたい何か」は言語化されていません。イメージと感情が合わさったボンヤリとしたものです。次の第2段階で、このボンヤリとしたものを言語(英語)で伝えます。

第2段階:単語力と文法力

ではこのボンヤリとしたイメージを言葉に変えるにはどうしたらいいのでしょうか。それには2つの要素が不可欠です。それは「単語力」と「文法力」です。すでに説明したとおり、8歳以上の日本人は単語も文法も自然に身につきません。学習が必要です。
speaking2

先ほどのイメージを日本語にすると「ここに来る途中そのレストランのそばを通ったら、オープンを待つ長い行列があった」となります。この文を作るために必要な主な単語を挙げてみます。

walk past:~のそばを通る(歩く)
on one’s way here:ここへ来る途中
a long queue (line):長い行列
wait for:~を待つ

次にこれらの単語を組み立てるために必要な「文法」の学習項目を挙げてみます。

・分詞構文
・現在分詞の限定用法
・過去形
・to不定詞

ネイティブなら6歳の子どもでも言える内容です。ただ、日本人が英語で話すにはこれだけの知識が必要です。単語のレベルは中学校レベルです。文法に関していえば分詞構文は高校英語、その他は中学英語です。

では、高校生まで英語を真面目に学習していれば、この英語がすぐに口から出てくるのでしょうか。答えはノーです。なぜなら、「知っているだけ」の知識では「使えない」からです。もう少し詳しく解説します。

第3段階:必要な情報を引っ張り出せる能力

そもそも、たくさんある単語の中から適切な言葉を選んだり、使えそうな文法事項がすぐに頭に思い浮かべられたりできるまでには相当な訓練が必要です。何年も前に習ったことでも一瞬で引っ張り出せなければいけません。
speaking3

頭で覚えているうちは「ただの知識」です。学校の英語の授業では、教科書を読み先生の説明を聞いて、問題集などに取り組みながら正しい知識を身につけられます。しかし、どんなに内容を理解してもこれでは「知っているだけ」です。

「知っているだけ」から「使いこなせる」までのレベルには相当な差があると思ってください。頭で覚えるのではなく「口の筋肉に覚え込ませる」くらいの訓練が必要です。話すためには「話す」訓練をしなければいけません。

第4段階:正しい発音で声に出す

最後にようやく英語を話します。

Walking past the restaurant on my way here, I saw a long queue waiting for it to open.
(ここに来る途中レストランのそばを通ったら、オープン待ちの長い行列を見たよ)

このときに英語を日常的に使用する人達がストレスなく聴き取れる発音ができなければ、相手には伝わりません。単語を正しい発音で覚えるのはもちろん、英文となったときに特徴的な音の変化(消失・連結・変化)やイントネーションも身につけなければいけません。

発音に関してはネイティブレベルにこだわる必要はありません。世界で英語を使って日常的にコミュニケーションをしている人のうち、ネイティブは2割程度であり、残りはノンネイティブだからです。どこの国の人にも伝わる「標準的な英語」を話すことが肝心です。

上記のように、日本人が英語をスラスラと話すためには4つのステップをクリアしないといけません。さらに英会話を難しくしているのは「時間」です。「イメージ」から「発話」まで少なくとも2秒以内に処理しないと会話が間延びしてしまいます。

短時間に高度な処理をしつつ、話し終わる前に次の内容のイメージを思い浮かべなければいけません。英会話は簡単にできるものではなく、長期的な訓練が必要です。

自由な英会話は小学生には難しすぎる

では「小学生でも英語がペラペラと話せるかどうか」について検証します。

スピーキング練習で効果的なのは、「普段自分が日本語で話している内容どんどん英語にして、話せる表現を増やしていく」という方法です。これを続けるだけで、どんどんスピーキング力は向上していきます。高校生以上ならどんどんやるべきです。

ところが、小学生にこのトレーニングをやらせてもうまくいきません。その原因について説明します。

文法力・単語力が低すぎる

まず語彙力が低すぎます。一般的な小学5~6年生の語彙力(ボキャブラリーレベル)は、せいぜい300語程度です。これは言葉を話し始めた2歳児と同じくらいのレベルです。これでは小学5年生が普段考えることを英語で表現するのは不可能です。

自分の思考を自由に表現するには最低2000語レベルの語彙力(大学受験レベル)が必要です。根拠は、学習者向け英英辞書として定評のあるロングマンで定義に使われる語彙が2000語レベルだからです。2000語を使いこなせれば、ほとんどの表現を網羅できる証拠です。

もう一つの大きな問題は、文法を知らなさすぎることです。小学校では本格的な文法学習はしません。「主語+動詞+目的語…」の基本的な語順でさえも理解しているか怪しいレベルです。これでは英文を組み立てることができません。

文法力と単語力が低いレベルにもかかわらず、「さあ、自由に英語を話してごらん」と呼びかけても無言になるのは当然です。

「言いたいこと」と「言えること」のギャップが大きすぎてストレスになる

この事情がわかっていないネイティブや英語の先生は「間違いを恐れるから話さない」と勘違いしています。そうではなくて「話せない」のです。
speaking_stress

「言いたい何か」と「実際に言えるレベル」の格差が大きすぎて、子どもにはストレスがかかります。これを繰り返していくと子どもたちは英語嫌いになっていきます。

日常会話は「自由工作」

「普段自分が日本語で話している内容をどんどん英語にして、話せる表現を増やしていく」という方法は、例えるなら自由工作のです。「何を作っても何を使ってもいいから」はかえって難しいです。

何を作るか、どのような材料が必要か、使える工具はどれか、色はどうするかなど考えなければいけないことが多すぎます。

夏休みになると書店では工作キットのコーナーが設置されます。これは、自由工作の悩みから解放されたい子どもや親達の需要があるからです。

日常会話は小学生には難しすぎる

結論ですが、小学生の間に英語をペラペラと話せるようにはなりません。小学生のうちに英語ペラペラになることはほぼ不可能です。

しかし問題ありません。実は小学生でも取り組める効果的なスピーキングのトレーニング方法があります。それは「音読」です。スピーキングだけでなく、英語にかかわるすべての技能の向上が期待できます。小学生のうちから始めると中学生になればメキメキと英語力が向上します。

小学生でも取り組める「音読」とその効果について、以下詳しく説明します。

音読練習が効果的

英語学習において「音読」が効果的であることは、昔から知られています。でも多くの人は正確に音読の効果について理解できていません。そのため、ただ文字を読み上げるだけとか、流行りの「シャドウイング」だけ取り組んで効果を実感できずにいます。

音読練習は「プラモデル」のようなもの

大人向けのスピーキング練習方法が自由工作なら、音読練習は「プラモデル」です。音読トレーニングの詳細を下の図にまとめました。
ondoku1

プラモデルの特徴は「作るものはあらかじめ決められていて、必要な材料はすべて揃っている」ということです。そして指定された通りにパーツを組み立てると、誰でも格好いいロボットや車などを組み立てられます。

音読トレーニングには原稿(スクリプト)と音源(モデルリーディング)が用意されています。自由に話す代わりに、ネイティブの話す正しい英語をあたかも自分の言葉として声に出して読みます。

これなら12歳の知的レベルに近い内容を扱えるので、子どものストレスはかなり軽減されます。

パーツが単語、組立説明書は文法

実際のスピーキングでは、どの単語と文法を使うかを一瞬で考えなければいけません。しかし、小学生はほとんど単語も文法も知りません。そのため英語で話せる内容は非常に限られてしまいます。

音読では原稿があり、使用すべき単語と文法が用意されている状態です。これはあたかもプラモデルでパーツ(単語)と組立説明書(文法)が一式箱に入っているようなものです。

英会話の最も難しい部分(適切な単語と文法を選ぶこと)を「あらかじめ用意」してあげます。こうしてハードルを下げて、小学生でも英会話の疑似体験ができるようになります。

音読の具体例

実際の音読練習がどのようなものかを理解するために、具体例を見ながら体験してみましょう。まず、教材を用意しなければいけません。最低限必要なのは、「ネイティブによるモデル・リーディング(模範となる音読)を録音したもの(CD/録音データなど)」とそれを文字に起こした「スクリプト(原稿)」の2つです。

*私の知り合いのPaul先生にお願いして、オリジナル教材を作ってみました

・音声ファイル

https://hi5kids.net/wp-content/uploads/2018/09/音読素材.mp3

・スクリプト

Hello, my name is Paul.  (こんにちは、私の名前はポールです)
I’m from America. (わたしはアメリカから来ました)
This mug is on the shelf.  (このマグカップは棚にあります)
These mugs are also on the shelf. (これらのマグも棚にあります)
This mug is beautiful.  (このマグは美しいです)
These mugs are plain. (これらのマグは味気ないです)
This camera is old.  (このカメラは古いです)
This camera is new. (このカメラは新しいです)
Old camera, new camera.  (古いカメラに、新しいカメラ)
Smile! (笑って!)
This is a little pen.  (これは小さいペンです)
This is a big pen. (これは大きいペンです)
Little pen, big pen. (小さいペンに、大きいペン)
This is not a toy. (これはおもちゃではありません)
This is a real pen. (これは本物のペンです)
Dear Mother, (お母さんへ)
This is Paul.  (こちらはポールです)
That’s me! (それ、私のことですよ!)

子どもの場合、原稿が読まれている状況を理解するのが難しいことがあります。原稿が読まれている状況がひと目でわかる動画もあると理想的です。

・動画

 

一回の原稿の量はおよそ70語が良いでしょう。これは聴き取りやすいスピード(120語/分)で読まれた場合、40秒前後で完結する文量だからです。これくらいの長さなら小学生でも集中力を切らさずに取り組めます。

また一つのスクリプトにつき文法テーマを1つに絞ったものが理想です。イメージは中学校の英語の教科書です。中学校の英語教科書は内容が退屈であることが欠点ですが、音読用の素材としては優れています。今回の素材なら「This is~やThese are~」がターゲットとなる表現です。

音読練習の方法は多岐に渡り、ここではすべてを紹介できません。そこで、そのうちのひとつ「シャドウイング」と呼ばれる練習方法について説明します。前提条件として、単語や文法を充分に理解して、正しい発音で音読できる状態になっていることが求められます。

シャドウイングではスクリプトは一切見ません。音声を流し、聞こえてきた英語をそっくりそのまま真似をしながら後からついていきます。およそモデル音声から2~3語遅れてついていくのが理想です。

音への集中力が必要です。単語と文法を熟知しているはずなので、正しく聴き取れるはずです。「知らない単語は聴き取れない」とよく言われますが、「覚えたからこそ聞きとれる」ということを体感できることに意義があります。

最初は音を追うだけで精一杯です。しかし、慣れてきたら内容も理解しながら、自分が誰かに話しかけるようにしゃべると学習効果が高まります。このときに動画があると比較的容易に映像を思い浮かべることができます。これこそが「英会話の疑似体験」です。

このようなトレーニングを年単位で続けることにより、少しずつ自由に英語を話すための基本ができあがります。

音読トレーニングは英語の全ての技能を高める

今回はスピーキングに焦点を当てて紹介しています。でも音読トレーニングが優れているのは、英語にかかわるすべての技能を向上させる効果があることです。下の図の黄色いハイライトの部分に注目しましょう。
4技能+2

まず、素材となる原稿を読む(Reading)ことから始めます。このときに未習の単語や文法を学び(単語力・文法力)内容を理解します。

次に音読にはモデルとなるネイティブの音声を使用します。この音声を何度も聞きながら声に出すトレーニングをします(Listening・Speaking)。音読するときはこの原稿が読まれている状況を考えることが大切です(丁寧さの使い分け)。

声に出すときは、それぞれの単語の発音とアクセントに気をつかうのはもちろん、英語特有の音の変化(消失・連結・変化)をまねます。そして内容によっては感情も込めます。

音読の最終段階では、ディクテーション(口述筆記)をします。聞こえた英文を文字に書いて、正しく聴き取れたかどうかをチェックします。このときに綴りや文法のミスにも気づくので、Writing力を伸ばせます。

先述のように、普通の小学生は英語をペラペラと話すことはできません。

でもプラモデルのように「会話を疑似体験できるセット」を用意してあげれば、スピーキング力を中心に英語のあらゆる技能を伸ばすことが可能です。音読トレーニングは小学生だけでなく英語の基礎を身につけた中級者にとっても効果的です。

オンライン英語塾(1対1の完全個人指導)では、英検4級以上の生徒には音読トレーニングを取り入れています。詳細はこちらをクリック!

まとめ

ノンネイティブが英語を話すとき、頭の中の活動は想像以上に複雑です。特に、イメージを言葉にするときに「必要な単語」と「必要な文法」を瞬時に引っ張り出すにはかなりのトレーニングが必要です。

語彙力や文法力が低い小学生に、自由な英会話の練習をさせようとしてもうまくいきません。単語や文法のインプットが不十分だからです。普通の小学生が英語をペラペラと話せるようにはならないのは当然のことです。

しかし、小学生でもスピーキング力を磨く練習をすることは可能です。それは「音読」です。音読では自由な英会話では難しかった部分(適切な単語と文法を瞬時に思いつく)があらかじめ用意されています。

「言いたい何か」をイメージするところから、音声として話すまでの過程で必要なすべての情報がプラモデルのキットのように準備されています。これにより、実際の英語力よりも高いレベルの会話を扱うことができて、年齢相応の内容を話す疑似体験が可能になります。

「小学生が英語ペラペラ」になることはほぼ不可能です。でも、音読トレーニングを通じてスピーキング力を他の技能とともに伸ばすことは充分可能です。年単位で続ければ近い将来あなたの子どもの英語力は劇的に伸びます。

英語のパターンプラクティスはお母さんのジェスチャーで

スポーツや楽器の練習など技能の向上には、基礎トレーニングは欠かせません。野球なら「素振り」ピアノなら「バイエルン」などが該当します。地味な練習ですが大切です。

英会話の練習にも似たような基礎練習があります。指示に従って、文章の一部を入れ替えながら瞬時に口頭で英作文をする「パターンプラクティス」です。

なぜ、パターンプラクティスが必要かについて説明します。

ある一つの英語表現を覚えたときに、それとまったく同じ文章を実際の場面で使える確率はかなり低いです。例えば、I have a dog. という表現を習ったあと、そのままこのフレーズを使うには、本当に自宅で犬を一匹飼って誰かに説明する場面を待たなければいけません。すべての条件が揃うのはなかなか厳しいです。

でも、誰かの家に遊びに行って「君、犬を飼ってるんだ!」という状況はあり得ます。または、犬ではなくてネコが複数いる状況に置かれるかもしれません。

そのときに、タイミングよくYou have cats. というためには、パターンプラクティスが有効です。パターンプラクティスは、覚えた表現をあらゆる文脈や状況に変換できるように鍛えるためのトレーニングといえるでしょう。

その際、合図の出し方を工夫しないと意味のある練習になりません。今回は私が教員の頃に教わったジェスチャーを使って「パターンプラクティス」をテンポ良く進める方法を紹介します。

簡単に出来て子どももゲーム感覚で楽しめるので、ぜひ取り入れてみてください。

何かと必要な人称のパターンプラクティス

英語の口頭練習を子どもにさせるとき、パターンプラクティスをやらせることがあります。パターンプラクティスとはターゲットの文章の一部を入替えて、できるだけ早く口頭で英作文する英会話の練習方法です。

その中でも最も多いのが、人称(I, You, He, She…など)を入れ替える練習です。いくつかその具体例を見てみましょう。

現在形(いつものこと形)のbe動詞の練習

I am a boy. がターゲット文(子どもに学ばせたいセンテンス)のとき、主語が変わることによってbe動詞(am, is, are)が変化することに慣れさせます。また、a boy/a girl/boys/girlsのいずれかに変えなくてはいけません。

子どもが男の子だったら、例えば次のように練習します。

I am a boy.  You are a boy.  He is a boy.  She is a girl.  We are boys.  You are boys.  They are boys.

具体的に人の写真を見たり、周囲の人達を見たりして練習すると「イメージ→英語に変換」できるようになります。

このときゆっくり紙に書いては効果がありません。テンポ良く口をついて出てくるまで練習するのがポイントです。

所有格の練習

パターンプラクティスでの人称は主格(I, You, Heなど)だけではありません。所有格の練習にも使われます。

ターゲット文:This is my book.

This is my book.  This is your book.  This is his book.  This is her book.  This is our book.  This is your book.  This is their book.

パターンプラクティスではしばしば人称を入れ替える練習が行われますが、そのときに問題になることがあります。それは「いかにテンポ良く人称を伝えるか」です。

ただでさえ単調なトレーニングなのに、間延びした合図を出すと子どもはすぐに飽きてしまいます。

主語を頭に思い浮かべながら適切な動詞を選ぶ練習が必要

「テンポ良く伝える」以外にも、実際にやってみると問題が生じることがわかります。例えばお母さん(A)と子ども(B)の間でこのようなパターンプラクティスをしたとします。

A: When I say “my,” you say “This is my book.”
B: Okay.
A: My.
B: This is my book.
A: Your.
B: This is your book.

実はこのパターンプラクティスは効果的とはいえません。なぜなら、お母さんが答え(my, yourなど)を先に伝えてしまい、子どもはそれを繰り返すだけだからです。これでは何も練習になっていません。

また単数形のyourと複数形のyourの違いも伝わらず、子どもも戸惑ってしまいます。

理想的なパターンプラクティスにするには「イメージ」を与えて、それを子どもに英語に変換させなければいけません。では一体、どうやったらいいのでしょうか。

ジェスチャーで示せば解決する

これから紹介するテクニックは私が教員時代に指導教諭から教わったものです。家庭でも簡単に応用できるので、試してみてください。

  • 1人称(I, my, me)は自分を指す

1人称単数

  • 2人称(you, your, you)は相手を指す

2人称単数

  • 3人称(he, his, him)は隣を指す

3人称単数 he

  • 3人称(she, her, her)は隣を指す

3人称単数 she

*複数形は両手で表現する

1人称複数

2人称複数

3人称複数

*itを使わせたいときは指で表現する

it

テンポ良く

試しに先ほどのターゲット文であるThis is my book. のパターンプラクティスをジェスチャーで練習してみます。

お母さんはこのように示します。

3人称複数

子どもはそのイメージから「their」を頭に思い浮かべます。そして、“This is their book.”と間髪置かずに口頭英作文をします。すぐにお母さんは次の人称ジェスチャーを見せます。

もし子どもの反応が遅すぎたら、理解が充分でない可能性があります。もう一度復習してから、パターンプラクティスに移行しましょう。

始めのうちは「1人称単数→2人称単数→3人称単数→1人称複数→2人称複数→3人称複数」の順番で進めていきます。慣れてきたらランダムに切り替えます。テンポ良くやると子どもはゲーム感覚で頑張ろうとして、結構盛り上がります。

あなたの家族の名前など具体的な人を当てはめて練習するとより現実感のある練習ができます。パターンプラクティスはどうしても単調になりがちなので、いろいろ工夫をしてバリエーションをつけましょう。

「一回でできるように」と焦らずに数日に分けて少しずつ練習すると、子どもが飽きるのを防げるし効率の良い復習ができます。

まとめ

英語の基本センテンスを覚えたあと、いろいろな文脈で使用できるようにするためにパターンプラクティスは有効な練習方法です。その際、人称を入れ替えて基本センテンスをもとにして瞬時に口頭英作文をすることがしばしばあります。

このときに人称をジェスチャーで示してあげると「イメージ→英語に変換」の作業がスムーズにできるようになります。最初にお母さんと子どもの間で取り決めをしておけば、その後ずっと使えるので便利です。

パターンプラクティスは単調になりがちな練習です。テンポ良く短めに練習することを心がけましょう。具体的なイメージを交えたりしながら変化をつけて子どもが飽きないようにしましょう。.

 

子どもが英語ペラペラに:「英会話を弾ませる」コツとは?

私の息子は週1回、オンラインで英語を学んでいます。冒頭は先生との挨拶や他愛もないフリーカンバセーション(自由な会話)で始まります。

相手(先生)の声は私には聞こえません。息子は“I’m 9 years old.” とか“I’m good.” と答える声だけが聞こえてきます。おそらく“How old are you?” とか“How are you?”と質問されているのでしょう。

レッスン後「先生の質問に答えるだけでは先生が話しづらいよ。もう一つ、センテンスを足してごらん」と私はアドバイスをしました。

息子は話し好きな性格なので、次から「1センテンス」を付け足して答えるようになりました。すると、画面上の先生も表情豊かになっているのが見てわかりました。

実は英会話のテキストには書いていない「会話を弾ませるコツ」があります。小学校高学年くらいの子どもなら難しくないので、お母さんからもアドバイスをしてあげましょう。

英語力の有無にかかわらず、話が続かない!

英語学習の目標に「日常会話」を挙げる人が多いのですが、実は日常会話は難しいです。すべてのジャンルに対して準備をしなければいけないし、突然話題が変わることもよくあります。

子どもは残酷なところがあって、相手にまったく気をつかいません。そのため、子どもの英会話初心者がネイティブの子ども達に混ざると、わずかなチャンスをものにできなければそのまま放置されます。

英語力(語彙力・文法力など)と会話を弾ませる「コミュニケーション能力」は別の能力です。日本人同士でも話が続かずに気まずい空気が流れることはよくあることから、そのことがわかります。

まずは話が続かない典型的なパターンを理解して、普段から意識的にトレーニングをしなくてはいけません。

話が続かないパターン

相手の質問に対して必要最低限しか答えないと、話は途切れてしまいます。「今日、お昼は何を食べたの?」と聞かれ「うどん」と答えれば相手の問いには答えています。英会話のテキストにもこのようなパターンです。テストではこれで正解です。

しかし、実際の場面では質問した相手はそれ以上話を膨らませられずに、気まずい雰囲気になってしまいます。

  • 英語力と会話を続けられるスキルは同じではない

このように英語力と会話を弾ませるスキルはまったく別物です。

A: What did you have for lunch?
B: I had udon.

テキストにはこのようなダイアローグ(対話)が無数に載っていて、質問と答えを暗唱します。この学習自体は間違っていません。英語力を上げるためには絶対に必要です。しかし、これだけでは会話を弾ませることはできません。

英語力を磨きつつ、コミュニケーション術も磨く

よく「聞き上手は話し上手」と言われます。これは「聞き手は黙っているだけでいい」という意味ではありません。相手が話を続けたくなるような質問を投げかけられる技量が必要です。

反対に、聞かれたほうは質問に答えるだけでなく「もう一つ、情報を付け足す」努力が必要です。そうしないと相手はツッコミようがないからです。

子どもに英会話の練習をさせるときには、常に「相手がいる」と想定するようにアドバイスをしましょう。そうすると、実際の場面でも会話を弾ませるための準備ができます。

今回の記事では、「答えるほう」に意識を向けてみました。会話を弾ませるための「答え方」について具体的に説明します。

英会話のコツ:「プラス1センテンス」で答えよう

Yes/ No Question(Are you~?など)はもちろん、Wh-?, How-?の質問には、とりあえず答えることが必要です。そして「もう一つセンテンスを付け加えるように心がける」と相手の興味や関心を引き出せるようになります。

センテンスを付け足すときには、二つのパターンがあります。ひとつは「理由を説明するもの」、もう一つは「逆接の接続詞(しかし、でも)でつなぐもの」です。以下、詳しく説明します。

理由(because)を説明する

A: What did you have for lunch? (お昼に何食べた)
B: I had udon, because my mom always cooks udon for lunch. (うどんです。なぜなら母はお昼はいつもうどんをつくるからです)

このように答えに理由を付け足すだけで、聞いた相手はいろいろと次の質問をしたくなります。「一週間に何日くらいうどんなの?」「温かいうどん、それとも冷たいうどん?」「うどんには天ぷらをつけるの?」「毎日うどんで飽きないの?」などです。

理由にはその人の日頃の習慣や意見が現れるので、ツッコミやすくなります。逆に、質問者の立場で相手がプラス1センテンスで答えてくれたら、その部分にもう一つ質問を投げかけてあげましょう。

逆接(but)でつなぐ

次は、逆接の接続詞でつなぐパターンです。例文を見てみましょう。

A: What did you have for lunch? (お昼に何食べた)
B: I had udon, but I wanted to have a hamburger. (うどんでしたが、ハンバーガーが食べたかったです)

but以下にはその人の本音が現れるので、理由を言われたときよりもさらにツッコミやすくなります。この場合は十中八九「なぜハンバーガーにしなかったの」と質問が続くはずです。

これも理由のときと同じく、自分が質問したなら相手のbut以下の内容に関して、きちんと返してあげることが重要です。

練習問題

では、練習問題です。次の質問に対して「プラス1センテンス」で答えてみましょう。理由を述べるパターンと逆接でつなぐパターンの2パターンで答えてください。

A: What time do you usually get up?

解答例

(理由)

B: I usually get up at 6 o’clock, because I have to have breakfast with my family at 6.15.

(逆接)

B: I usually get up at 6 o’clock, but someone rang my doorbell at 4 o’clock this morning!

もし、質問する立場だったらこれらの回答に対して、どのような質問を続けるかを考えます。このような訓練を子どもにさせるだけで、教科書的な対話だけでなく実践的な英会話術を身につけさせられます。

スポーツ選手が「練習するときは試合のつもりで、試合のときは練習のつもりで」取り組むという話と似ています。普段やらないことは本番でもできません。

また、日本語でも普段の会話から相手の質問に「プラス1センテンス」で答えるようにすると、会話が弾みやすくなります。

コミュニケーションの肝は相手の立場に立つこと

「プラス1センテンス」で回答すると、会話が盛り上がる様子をこれまで確認しました。これと冒頭で紹介した「話が弾まないパターン」を比較すると、ある一つの結論に達します。

それは「コミュニケーションの肝は相手の立場に立つこと」です。極論すれば、これだけを心がければ英語でも日本語でも会話を続けられます。

英語でも相手を楽しませる

簡単に言えば「おもしろい話」ができれば、相手を楽しませることができます。しかし、これは難しいです。

私はインド人の家庭に招待されたことがありました。そこで私は日本人ならほぼ笑ってくれるはずの笑い話をしました。しかし、まったく相手の表情は変わりませんでした。本当に冷や汗が出まくった苦い思い出です。

文化の異なる外国人は笑いのツボも異なります。どんなに英語を学んでも相手を常に笑わせるのは難しいです。

相手が話したいことを質問する

相手に対して予備知識がある場合は有効です。相手の得意なスポーツや趣味について、話題を振るのです。

英会話の教科書に載っているような例文は初対面の人には割と答えづらい質問が多いような気がします。

Where are you from? (あなたはどちらの出身ですか)
How old are you? (あなたは何歳ですか)
What is your name? (あなたの名前は何ですか)
What do you do? (あなたの職業は何ですか)

ほとんど、入国審査のような質問ばかりです。プライバシーや宗教・政治的な信条にかかわる質問は避けたほうがいいのは、日本語でも英語でも同じです。

その点、相手の趣味や詳しそうなことに質問をするのは会話を弾ませるためには大切なポイントです。

相手の欲しがる情報を与える

相手が得する情報を与えると、相手からどんどん質問がくるので会話は自然とスムーズになります。

試験前に学校を休んだ友人に、先生が話していたテスト範囲の詳しい情報を与えれば確実に食いついてきます。「相手の視点」に立てばそれほど難しいことではありません。

子どもの頃からこのような訓練をしておくと、将来営業の仕事をするときにもとても役に立つはずです。

相手に役立つ情報を与える

「相手の欲しがる情報」と似ていますが、相手はそもそも「何を必要としているか」わかっていないことがあります。そんなときに「役に立つ情報」を与えると会話は弾みます。

女の子ならファッション系の話とかアイドルの話題、男の子ならゲームの攻略法などが該当します。

英語で自由にこれらの話題を話すには高いレベルが要求されます。しかし、相手が興味を示してくれればこちらの英語に多少の間違いがあっても問題ではありません。

小学生の子どもに上記のことを意識しながら英語で会話をするのは、難しすぎます。しかし、自分ひとりで対話文の練習をするときに、「プラス1センテンス」を心がけるだけなら大丈夫です。

オンライン英会話に取り組む子どもの様子を見ていて「沈黙が多いな」と感じたら、それは先生も苦労している証拠です。「理由」や「逆接」でつなぐように子どもにアドバイスをしてあげましょう。

また、普段からそのような会話を日本語でも心がけると、周囲の友だちから「〇〇君は話しやすい」「〇〇ちゃんと話すと楽しい」と思ってもらえます。

まとめ

英語のテキストには、質問に対する「答え方」は書いてあります。しかし、「会話を弾ませるためのコツ」には触れていません。

相手の質問に答えただけでは、会話はまったく続きません。そこで、自分の答えにもう一つ文章を続けてみましょう。続け方には2つあります。

ひとつ目は、自分の答えの「理由」を述べるやり方です。その情報が詳しいほど、相手はその部分について興味をもってくれます。もう一つは、「逆接」でつなぐやり方です。自分の本音を表現できるので、相手は興味を惹かれます。

子どもが英会話の練習をするときは、テキストに載っている例文を暗唱するだけでは不充分です。仕上げとして「プラス1センテンス」を実践しましょう。そうするとオンライン英会話など実践的な場面でとても役に立ちます。

会話を弾ませることは、つまり「相手の立場になって会話をする」ことです。それさえ気をつければ会話中沈黙が続いて気まずい思いをすることが減ります。

日本語で会話するときも、お母さんから子どもに「プラス1センテンス」を意識するようにアドバイスしましょう。会話の質と量が高まれば、そうでない場合よりも英語の上達も早くなります。

NHKの英語アニメ「リトル・チャロ」を小学生が攻略する方法

1970年代、テレビで世界名作劇場が放映されていました。この頃私は幼稚園~小学生の子どもだったので「フランダースの犬」「あらいぐまラスカル」などを毎回楽しみにしていました。ストーリーを好むのは人間の習性かもしれません。

「英語の楽しいコンテンツなら、子どもも夢中になって英語を学ぶはず」と多くの人は考えます。実際、それは確かに正しいです。

しかし、現実には難しい問題があります。「楽しい」=「英語学習向き」とは限らないからです。ディズニーアニメは確かに楽しいし、大好きな子どもも多いはずです。ただ、使用されている英語は容赦ないネイティブ用のナチュラルスピードです。

なぜならそれらは英語学習者向けに作られているわけではありません。そのため気の利いた大人びた表現やギリギリの俗語が盛り込まれています。

「日本人の英語学習者に配慮されたおもしろいアニメがあったらな」と私もいつも思っていました。そこへ登場したのが「リトル・チャロ」です。さすがNHKだけあって、クオリティは素晴らしいです。

この「リトル・チャロ」を活用して、小学生でも英語を学べる方法を詳しく説明します。アニメ好き・動物好きの子どもならハマること間違いなしです。

「リトル・チャロ」の紹介

アニメ「リトル・チャロ」は2008年にNHKで放送された英語のアニメです。これは単なるアニメ作品とは異なり、英語学習のコンテンツとして活用できるように綿密に制作されています。

放送当時私もテレビで偶然見つけたときは「へえ、おもしろそう」とだけ思いましたが、それっきりでした。「リトル・チャロ」の再放送をきっかけにあらためてコンテンツを観ると「非常に優れた英語学習コンテンツ」だと感心しました。

平易な英語で制作されていますが、活用の仕方によっては初心者から中・上級者まで幅広く英語学習に利用できます。「中学生くらいのときにこんなコンテンツと出会えていたらもっと英語にのめり込めたのに」と私は今の子ども達をうらやましく感じます。

ストーリー

日本人の少年・翔太の飼い犬であった子犬のチャロは、アメリカ旅行から帰るときニューヨークの空港で迷子になってしまうところから話は始まります。

チャロは翔太に再び会えることを願いながら、仲間の犬たちとの交流を深めていきます。途中、笑いや涙の展開を織り交ぜつつ話は展開していきます。そしてついに、まったくの偶然から翔太の父にチャロは発見されて、無事、日本に帰国して翔太との再会を果たします。

主人公がかわいい子犬なので、小学校低学年の子どもも感情移入しやすいです。昔、私が子どもの頃テレビで見ていた「母をたずねて三千里」のような中毒性のあるストーリーです。最後は思わず泣いてしまう話です。

英語の特徴

使用されている語彙レベルは「中学校+アルファ」です。ナレーションと登場人物のセリフによって構成されています。もちろん、声優はそれぞれ異なる人が対応しています。

チャロ以外の登場人物はネイティブ・スピーカー(犬も含めて)なので、英語を流暢に話します。チャロは日本の子犬なので英語はそれほど得意ではありません。

使用されている英語は不自然ではない程度にゆっくりと発音されるため、リスニング初心者向けにピッタリの教材です。

アクティブ・ボキャブラリー(意味がわかるだけでなく、話したり書いたりするときに使える語彙)を増やしたい中・上級者にも学ぶところが多い教材です。限られた語彙の中でこれほど豊かに表現できることのサンプル集です。

英語が得意なお母さんは、ぜひ親子で楽しみながら英語学習に利用してみましょう。

一般的な映画(アニメ)と比較して英語教材として優れているところ

書店の語学コーナーでも、「DVDを教材にして英語を学ぶ」テーマの本は売れています。私も海外ドラマは大好きなので、これまでにも何度もこれらを利用して英語学習に役立ててきました。

しかし、いざ英語のアニメや洋画を英語初心者が学習に使おうとすると、問題が生じます。たとえば「アナと雪の女王」は一時期大ヒットして子どもも大好きなディズニー作品です。しかしながら、正直私でもすべての英語を聞き取れません。

英語圏(主にハリウッド)で制作されたアニメ・映画は、ネイティブ用に作られています。そのため会話のスピードは、英語を学習している日本人の子どもにとっては速すぎます。

また語彙レベルも学習者向けにコントロールされていません。子ども向けのアニメでも、英検1級レベルの単語が頻繁に登場します。さらに、省略表現や俗語表現も多く、学習教材としては使い勝手が悪いことが多いです。

英語音声がないシーンやただの絶叫シーンも多く、英語を学ぶときにいちいち飛ばすのは面倒です。

盲点なのは日本語字幕の内容は、英語のセリフを完璧にカバーしていないことです。字数制限があるため、短い日本語で「意訳」しなければいけないからです。そのため英文の細かい意味がわからずモヤモヤとした気分になることがしばしばあります。

また、同様に英語のセリフすべてが「英語字幕」として表示されるわけではありません。長すぎる部分は別の表現に置き換えられるのが普通です。

一方、NHKが英語学習者を意識して制作した「リトル・チャロ」はこれまで指摘した問題のすべてが解消されています。話される英語はすべて漏れなく字幕に表示されます。日本語の字幕も極端な意訳はなくて、ほとんどの英語のセリフを網羅しています。

語彙レベルは「中学校+アルファ」です。これは英語学習者用の英英辞書の定義で使用される語彙レベルとほぼ同じです。つまり、ここに出てくる語彙を充分に使いこなせれば、日常のほとんどのことは表現できる証拠です。

リトル・チャロは「ナレーションとセリフ」で構成されています。読まれるスピードは聴き取りやすい速さです。英語学習には速すぎても遅すぎてもダメですが、英語初心者向けに絶妙な速さを設定しています。

さらに使用されている英語は「完璧に正しい英語」であり、安心して英語学習に使えます。口語表現も「How come~?」など普通の表現ばかりで、子どもがまねしてもまったく問題ありません。

1話5分で構成されているので集中力は持続しますし、余計な無音シーンがほとんどないのも、学習効率を高めてくれます。

「リトル・チャロ」は英語学習者のツボを知り尽くして制作されているのがわかっていただけたでしょうか?

リトルフォックスというe-ラーニングサイトではリトルチャロのような動画教材が豊富に見られます。これを活用した学習法の動画セミナーはこちらで確認できます

「リトル・チャロ」はどうやったら見られるか

「リトル・チャロ」は再放送を待てば無料で見られますが、日本語字幕しか利用できません。英語学習には英語の台本(スクリプト)が必須です。

組み合わせとしては、以下のとおりです。

CD + テキスト
DVD(スクリプトは字幕表示を利用)
えいごで旅するリトル・チャロ(任天堂DS)

小学生でゲーム機DSを持っているなら、リトル・チャロのソフトを購入するといいです(評判も上々です)。テキスト+CDはすでに中古を探すしかないのと、子どもなら映像を確認したいと思うでしょう。

DVDを購入すれば、映像をテレビで楽しめて、英語字幕表示に切り替えればスクリプトも確認できます。

しかし、私は上記以外の方法で「リトル・チャロ」を観ました。それは高校生の娘が持っていた「電子辞書」でした。

おすすめは電子辞書の収録版

最近の電子辞書には、本来の辞書機能以外の「学習コンテンツ」が充実しているモデルがあります。その中に、「リトル・チャロ」を収録した電子辞書があります。

英語系の電子辞書の大手はカシオとシャープですが、全てのモデルに「リトル・チャロ」が収録されているわけではありません。実際に購入するときは、店頭で実物を手に取って確認したほうが確実です。

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娘の持っていた辞書はシャープのBRAIN(PW-SH4)では、「リトル・チャロ」全話が収録されています。カシオのXD-G4800には確実に収録されています。

両者の違いは、シャープでは紙芝居風に収録(シーンごとの静止画)されているのに対して、カシオでは動画が再生できます。

 

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小学生の子どもなら動画で見られたほうが楽しいかもしれません。一度、動画を観たことのある場合は、紙芝居風のほうが英語に集中できるともいえます。

では、なぜDVDではなく電子辞書で収録されたものが「英語学習におすすめなのか」について説明します。

おすすめの理由1:どこでも持ち運びができるから

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英語学習を続けるコツは、「いつでもどこでも」することです。電子辞書は携帯に便利です(大きさを比較するために、スマホと並べて撮影)。イヤホンと一緒に持ち歩いていつでもどこでも「リトル・チャロ」で英語を学べます。

電子辞書には「前回のファイルを再生」というメニューがついています。これを利用すれば、直前に学習したエピソードを素早く再生できます。細切れ学習には不可欠な機能です。

DVDプレイヤーではテレビが設置してあるところでないと学習できません。どちらが英語学習を継続できるかは明らかです。

たとえば朝、学校に行く前に5分だけ「リトル・チャロ」を観るときに、お父さんがテレビでニュースを観ていても、電子辞書なら問題ありません。

おすすめの理由2:字幕表示の切り替えが一瞬でできる

DVDプレイヤーでも字幕表示の切り替えはもちろんできます。しかし、一時停止中に切り替えることはできません。再生中に字幕の切り替えボタンを押して、少し間が空いた後切り替わります。このわずかな時間が英語学習をするときはストレスに感じます。

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一方、電子辞書の場合には一時停止中でも、言語を一瞬で切り替えられます(赤丸のボタン)。また、読まれている部分は赤い文字で表記されます(カラオケのように)。さらに、英語と日本語を同時に表示させることも可能です。この場合、該当する日本語訳はハイライトで表示されます。

欲しい情報を一瞬で入手できるのが、電子辞書収録版の優れているところです。

おすすめの理由3:セリフをタップすると、その場所から即再生するから

「リトル・チャロ」を英語学習に利用するときに、「音読練習」は欠かせません。そのときモデルとなる音声を何度も聞きながら、自分で声に出して練習しなければいけません。

DVDプレイヤーがもどかしいのは、聞きたい部分だけを繰り返しすぐに再生できないことです。「戻る」ボタンだけでは細かい頭出しはできません。

電子辞書の収録版では、スクリプトの部分をタップするとそこから「即」再生されます。これは大変ありがたい機能で、何度もモデルを聞きながら音読練習するのにうってつけです。

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携帯性に優れ、字幕表示の切り替えやセリフがすぐに再生されるので、電子辞書の収録版「リトル・チャロ」はおすすめです。

すでに電子辞書を持っている場合や、DVDが家にある場合には、わざわざ「リトル・チャロ」が収録された電子辞書を買う必要はありません。しかし、もしまだ電子辞書を持っていなくてそろそろ買おうと思っているなら、「リトル・チャロ」が収録されたものがいいです。

小学生でも「リトル・チャロ」を攻略できる方法とは

では、「リトル・チャロ」を利用して、小学生でも取り組める英語学習法について解説します。ポイントは「何を目的にして」「どのように学習するか」です。

「リトル・チャロ」は平易な英語しか使われていませんが、ほとんどの小学生にとっては難しい語彙レベルです。無理にリスニングに取り組ませても、すぐにあきらめてしまいます。

私のおすすめは、「リスニング」ではなく「英文暗唱」です。セリフの一部を繰り返し「音読」して、あたかも自分が声優になったかのようにスクリプトを読まないでセリフを言えたら完成です。

「音読」する過程で、Reading「読む」、Listening「聴く」、Speaking「話す」の3技能をバランスよく鍛えられます。小学校高学年なら、最後の仕上げとしてディクテーションをすればWriting「書く」もカバーできます。

すべてのセリフやナレーションでこれをやるのは非現実的なので、一部に絞り込んで取り組んでみましょう。

チャロは日本の犬…だからやさしい英語しか話さない

設定上、チャロは日本の子犬なので、簡単な英語しか話せません。発音もわざと日本人っぽく演じられています。これに対して「正しい発音ではないので、教材としては不適格」と決めつけてしまう人がいますが、私はそうは思いません。

チャロの姿は子どもからみれば「自分」なのです。小学生がニューヨークで親と離れ離れになったようなものです。

NHKがチャロの発音を日本人っぽくしたのは、おそらく「親しみやすさ」を視聴者に与えて、共感させるためです。

チャロは、やさしい短い英語を日本人っぽく一生懸命に話しています。この部分に的を絞り、小学生の子どもに音読練習させるのは理にかなっています。正しい発音は、ナレーションや他の仲間の犬たちから学べばいいのです。

チャロはもちろん主人公なので、子どもの満足度も高いはずです。小学生なら、チャロのセリフに絞って、音読練習してみましょう。これが攻略のコツです。

意味を理解して、セリフの音読練習

ここからは普通の音読練習と同じです。まずはストーリーをしっかりと理解するところから始めましょう。意味のわからない英語を何度音読しても、学習効果はありません。

チャロはしばしば日本語を話したり、犬の吠える声で「Arf!」と叫んだりしますが、そこは飛ばしましょう。

最初のエピソードの頃は、片言英語の部分が多いので、小学生でも簡単にまねできます。エピソードが進むにつれて、きちんとした文章が増えていきます(チャロの英語力が向上していきます)。

小学生には未習事項の「過去形」や「現在進行形」が頻繁に使われていますが、小学生に細かい文法解説は基本的に不要です。そのまま英語を繰り返しまねることだけに集中させましょう。

英語を日本語にしてみる

ここでもう一度、英語を理解しているか日本語にしてみましょう。正確に訳すのが目的ではありません。およその意味でよいので、英語の大意を理解しているかどうかを確認します。

意味を言えない場合、単語を知らないか文法を理解していないかのどちらかです。単語を知らない場合は、お母さんが教えてあげてください。

ここまでの段階で、「正確に英語を聞けて・音読できて・意味を理解している」状態であることがポイントです。

オーバーラッピング、シャドウイング、日本語→英語

次は、実際のスピードに合わせて音読する練習です。チャロのパートの少し前から再生して、チャロの声と同時に重ねて音読します。これがオーバーラッピングと呼ばれる音読練習です。

慣れてきたら、再生速度を一段階速めてもオーバーラッピングできるように練習してみましょう。電子辞書にも再生速度を調節できるボタンがあります。

充分にオーバーラッピングをしたあとは、シャドウイングに移ります。「シャドウイング」とは、シャドウ(影)のように「読まれる音声より3語くらい遅れて音読するトレーニング法」のことです

このときに音ばかりを追いかけるのではなく、チャロのセリフの内容に意識を向けましょう。

大変疲れる音読トレーニングですが、1語1語ではなくかたまりで英語を処理できるようになります。リスニング力を高めるときの基礎となるトレーニングです。

シャドウイングの次は、日本語字幕を読みながら該当する英語を口に出して読む練習です。英作に時間がかかるのは、ここまでの口頭練習が不足しているからです。もう一度、オーバーラッピングに戻って反復練習しましょう。

一瞬で言えるようになるまでには、一般的に50回~100回程度の反復練習が必要です。

アニメに合わせて演じる&ディクテーション

今度は声優になってアフレコをするつもりで、映像を観ながらチャロのセリフを言いましょう。このときに棒読みではダメです。チャロの心情をくみ取って、息づかいまでまねるつもりで練習しましょう。

感情と英語表現を結びつける訓練をすると、実際に自分がそれと近い感情になったときに英文が思い浮かぶようにするためです。ここまでくれば、ほとんどゴールです。

小学校高学年の子どもなら、最後の仕上げとして「ディクテーション(書き取り)」にも取り組んでみましょう。字幕をOFFにして、チャロのセリフの部分だけを聞いたあと、紙に英文を書きます。句読点(ピリオドやカンマ)なども正確に書きましょう。

このように紙に書くと、あいまいに覚えていた綴りや文法事項を確認できます。最後は必ず字幕をONにして、英語に誤りがないか答え合わせをします。

チャロのセリフは少ないですが、徹底して音読するのはそれなりに大変です。エピソードによっては英語を話さずに「Arf!」だけのものもありますが、その場合は音読練習せずにストーリーを楽しめばいいです。

しばらくしてから音読練習をしたエピソードを再生すると、チャロの部分の英語はすべて聞きとれるはずです。英語の学習はこれの繰り返しです。楽しみながら続けられるようにお母さんはサポートしてあげましょう。

まとめ

アニメとして楽しめて、英語学習用のコンテンツとしても細かく配慮されている「リトル・チャロ」を使えば、小学生でも楽しく英語を学べます。

DVDなどで再生してもいいのですが、DSのソフトや電子辞書に収録されている「リトル・チャロ」を活用すると、英語学習の効率が飛躍的にアップします。

平易で比較的ゆっくりとした英語で話されていますが、小学生がリスニング教材として使うにはレベルが高すぎます。それよりも、小学生の子どもと等身大の主人公「チャロ」のセリフに的を絞って、音読練習したほうがいいです。

電子辞書の再生機能をフル活用しながら、いろいろな角度から繰り返し音読練習しましょう。ひとつのセリフにつき最低50回は必要です。

しばらく経ってそのエピソードを観ると、チャロの英語は完璧に理解できるはずです。それが音読による学習効果です。

「リトル・チャロ」はディズニーのアニメよりもずっと日本人の子ども向きのコンテンツです。子どもの英語学習がマンネリ化してきたら、「リトル・チャロ」を利用した英語学習にチャレンジしてみましょう。

アプリを使って親子で英語チャットに挑戦!

ある英会話学校の人から聞いた話です。子どもを通わせているお母さんから「ウチの子、全然英語を話さないんですよ」とよくグチを聞かされるそうです。その家庭では日本語しか話さないので、当然の結果です。

実際、日本の小学生が英語を使う機会はほとんどありません。ほとんどの子どもは「親に言われて」「英語は受験に必要だから」だけの理由で英語を学んでいます。これでは受験科目としての英語からの呪縛から逃れられません。

もし、日本にいても「英語を使わないとならない」状況を日常的に作り出せるとしたら興味ありませんか? お母さんとお父さんにも協力してもらいますが、お金や時間はほとんどかけずに取り組む方法があります。

WhatsApp を使って親子で英語チャット

「ネイティブがいないので英語を話さない」と言っていたら、日本では英語を使用する機会はありません。「日本にいてもどうすれば英語を使う機会を増やせるか」と考え方を変えましょう。

私が試してみて効果的だった「WhatsApp(ワッツアップ)」というアプリを使った親子での「英語グループチャット」を紹介します。

WhatsApp

生活に英語を取り入れる

英語を使えるようになりたければ、「実際に使う」ことでしか上達しません。ところが英語を話せる人が周囲にいないと、会話の練習にならないのも事実です。そしてほとんどの人はここであきらめてしまいます。

そこで普通の家庭でも生活に英語を取り入れる方法として、「親子で英語チャット」を提案したいと思います。

私自身、息子が幼稚園のころ一時期「英語で育児」してみようと挑戦したものの、思った以上に子どもの抵抗が強く失敗したことがあります。日本語を話し出す前ならうまくいったかもしれませんが、時間を戻せません。

一方、息子が小学生になったときしばらくの間「英語でチャット」をしたことがありました。初めはほんの遊びだったのですが、意外と毎日続けられました。会話の中身は他愛ないことや本当に必要な連絡も含まれていました。

チャットでは、必要なこと・言いたいとこをシンプルな英語で表現します。子どもが英語を実際に使う実践の場として、とてもいいと感じます。

「伝えたい」ことを英語で伝えるから、英語が身につく

英語学習において、例文の暗唱は避けられません。何度も何度も繰り返し口頭で練習します。

しかし、その表現を自分のものにするまでには、あともう1ステップ必要です。それは、その暗唱した表現を応用して、「自分が伝えたいことを表現する」ことです。

例えば、“John has to do a lot of homework today.”(ジョンは今日たくさん宿題をしなければいけない)という例文を暗唱したとします。しかし、これだけでは記憶は薄れていってしまいます。

そこで、実際の状況で “I have to do a lot of homework today.”と何度か使うと記憶は定着します。日常会話で使用するのが一番です。

暗唱した例文は、日常生活で使ってこそ身につくようになります。

親子だから間違えても恥ずかしくない

小学生になると、間違うことの恥ずかしさを強く感じるようになります。そのため「間違えても気にしないで」と諭しても、積極的に英語を話そうとはしません。

でも、親子だけのグループチャットならリラックスして英語でコミュニケーションを取れるはずです。

お母さんは英語を間違えても気にしないでください。お互い間違いをしながら、少しずつ上達すればいいのです。親子で英語を教え合うような関係が理想です。

文字が残るから訂正・復習が容易

会話では「瞬時に英文を口から出せること」と「相手の英語を聴き取る」二つのハードルがあります。標準的な小学生では、この二つをクリアするのはかなり大変です。

一方、チャットなら文章を入力するまでに考える時間があります。相手からの言葉も文字として残るので、知らない単語を確認することも可能です。

英作文を速くできて音声で表現したものが、英会話です。つまり、文字だけ投稿していても会話練習の基礎になっていることに注目してください。

間違えた英語を送ってしまっても、それはそれでいい教材になります。親子のうち誰かが気づいて、チャット上で正しい綴りや文章を教えてあげましょう。次からその表現を真似すれば、少しずつ洗練された表現ができるようになります。

このようにチャットでは文字による履歴が残るので、訂正をしたり復習したりが簡単です。できれば毎晩、その日の会話を振り返って正しい言い方や綴りを学ぶ時間を設けると、理想的なオリジナルテキストとなります。

WhatsAppを使おう!

親子の英語チャットに使うアプリとして、私はLINE(ライン)ではなくWhatsApp(ワッツアップ)をおすすめします。LINEは日本では大変メジャーなアプリですが、世界的にみると圧倒的にWhatsAppのほうが利用されています。

単に利用者数の多さがWhatsAppを選ぶ理由ではありません。親子の英語チャットにWhatsAppのほうがふさわしいと思われるポイントをいくつか紹介します。

スタンプ機能を使えないから英語学習にはWhatsAppがいい

LINE人気の原点は、言葉の代わりにムード(気分)を表す「スタンプ機能」が充実していることにあります。忙しいときばかりでなく、細かいことを濁したいときにも便利な機能で、日本人のコミュニケーション特性にピッタリです。

しかし、英語学習を目的としたチャットでは、この「スタンプ機能」が邪魔になってしまいます。英語で表現するのが目的なので、お母さんの問いかけにたいして、スタンプばかりで返信しては意味ないからです。

WhatsAppには絵文字がありますが、あくまでも文章に添えるものです。絵文字だけで返信するのは不自然です。そのため「なんとか英語の文で伝えよう」と一生懸命頭を使って考えるようになります。

ゲームがなくシンプルだから英語に集中できる

ラインにはニュースやゲームなど子どもの気が散るサービスがあります。ビジネスとしては優秀でも、英語学習ツールとしては危険です。

その点、WhatsAppはチャット機能に特化しています。子どもがいつの間にかゲームで遊んでしまったりサイトを閲覧したりして、無駄な時間を過ごすことが起こりにくいです。

子どもの使用するスマホやタブレットには、余計なアプリを入れないようにしておくことも忘れないでください。

グループ作成したらお父さんや他の親族にも英語で参加してもらう

グループ作成のやり方は、LINEとほとんど同じです。グループ名は「〇〇 Chat」のようにして、英語っぽい名前がいいです。プロフィールの写真も子どもの好きなように設定してあげましょう。

最初に参加するのはお母さんと子どもです。そして、普段忙しくてなかなか子どもの英語教育に関われないお父さんにも参加してもらいましょう。もし、難しければ英語の得意な親族に参加をお願いしてみましょう。

参加するメンバーの選択基準は、子どもが間違えてもおおらかに対応してくれる人です。基本はやはり両親と子どもです。あまり人数が多いと人任せになってしまうので、3人くらいのほうが投稿する頻度は高くなります。

英語を打つならフリック入力からQWERTY(クワーティ)入力に

子どもが使用する端末は、お母さんの古いスマートホンやタブレットで充分です。わざわざ新しいものを購入する必要はありません。

ひとつだけお母さんが事前に設定してあげたほうがいいことがあります。それは、入力方式をフリック入力ではなく、QWERTY(クワーティ)入力に切り替えることです。QWERTYとはパソコンのキーボードのような配列のことで、英文の入力には適しています。

こうすることで、ストレスなく英語を入力できるようになります。必要な機器や周辺環境、設定をまとめます。

・スマートホンかタブレット(古いので充分)
・Wi-Fi環境が自宅にあること(SIMカード不要)
・入力方式をQWERTYに切り替えてあげる

親子でどんな英会話をするか

準備が整っていざ英語でチャットを始めようと思っても「何を話したらいいのか」わかりません。どのようにすすめると毎日のチャットを継続できるかについてまとめます。

連絡、親子のコミュニケーションに

お母さんが働いていれば、子どもへの伝言としてチャットを利用しましょう。仕事が終わって帰宅するのが6時なら、そのことを子どもに英語で伝えます。“I will be home at 6.” のようにシンプルに書くのがコツです。

英語だからといって、特別なことを話す必要はありません。日常必要なことをシンプルに伝えればいいのです。これを積み重ねると、必要な英語表現を覚えられるようになります。

英会話の具体例

まだイメージしにくいお母さんのために、サンプルとしてチャット例を紹介しておきます(お母さん、お父さん、みきちゃんの3人でグループを作成していると仮定)

Mum: Hi, Miki.  The cupcake is in the fridge.  Take in the laundry before 5 o’clock.
(ミキ、カップケーキが冷蔵庫にあるよ。5時前に洗濯物を取り込んでおいてね)
Miki: When are you home?
(いつ帰ってくるの)
Mum: I will be home around 6 o’clock.
(6時くらいかな)
Miki: Ok.
(了解)
Dad: I will have dinner at home tonight.
(今夜は家でご飯食べるよ)
Mum: What do you want to have for dinner tonight?
(今夜の夕ご飯は何を食べたい?)
Dad: I like fish better than meat.  How about you, Miki?
(肉より魚がいいな。ミキはどう?)
Miki: Me, too.
(私も)

このように、普段の連絡用に利用すれば一石二鳥です。夫婦の会話も子どもは読むので、勉強になります。

一日一回は必ず書く

毎日、必ず一回は全員がチャットに投稿するように決めておきましょう。どんなに忙しくてもひとことでいいので、習慣づけるようにします。ひとりが約束を守らないと、他の人たちも次第にフェイドアウトしてしまいます。

毎日そんなにおもしろいネタはありません。ちょっとしたことを短いセンテンスでいいので書くことが大切です。

英語で日記を書く学習方法がありますが、ひとりで毎日書き続けるのは意外と大変です。しかし、仲間がいて皆が何らかの投稿をすればそれに応えようと頑張れます。

子どもの反応が芳しくないときは、これから述べるポイントに気をつけてみてください。

子どもから英語を引き出す方法

最も効果的なのは「チャットを読まないと不利益を被る」か「チャットを読んで投稿すると得する」のどちらかの状況をつくることです。このような状況で英語を使用すると、英語は教養のための言語から、「必要な言語」として刷り込まれます。

例えば、大好きなケーキが冷蔵庫に入っていれば、それをチャットで伝えます。Cakeの単語は分かっても、fridge(冷蔵庫)を知らないと食べられないので、一生懸命調べるはずです。

たとえ「ケーキ→冷蔵庫」と予想できたとしても、ケーキを発見できればfridgeを覚えられます。

子どもにとって大切な情報を英語で伝えましょう。例えば、お小遣いの支給日なら、このように伝えます。

Mum: What is the date of today?
Miki: It is March 1st.
Mum: You forget something important.
Miki: What do I forget?
Mum: I won’t tell you that.  Guess what.
Miki: I have no idea.

このようにできるだけ子どもの投稿を促すような質問をすることで、会話はつながっていきます。

翻訳ソフトや会話本をそろえておく

お母さんかお父さんのどちらかが英語が得意なら問題ありません。両方とも得意でない場合は、英語で投稿するのは面倒になります。このような場合、ゼロから英文を考えるのは難しいので、日常会話の本を一冊備えておくといいでしょう。

また、WhatsAppと同時に翻訳アプリをインストールしておけば、ある程度までは英語に直してくれます。ほとんどの場合、間違えている部分があります。それを見つけるのも勉強になります。

英語のチャットはテストではありません。カンニングしていいのです。できるだけハードルを下げて、親子での英語チャットを習慣化しましょう。

英語でチャットをするときのルール決め

親子の英語チャットでは、大まかなルールを作っておいたほうがうまくいきます。その中でも特に大切だと思われるものだけ取り上げてみます。

英語しか使ってはいけない

最も守るのが難しいルールは「英語しか使ってはいけない」ことです。誰かが日本語を使い出すと、なし崩し的になってしまい元には戻れません。チャンスは一度きりなので、必ず英語で通すようにしてください。

ただし、魚や植物の名前などの一部はローマ字表記のほうがいい場合もあります。例えば、夕食にさんまを食べようと思っているとき「saury(サンマ)」を使っても理解できません(実は私も今調べました)。

このようなときは “I wonder if we are going to have sanma for dinner.”と投稿したほうがわかりやすいはずです。

このような例外は別にして、基本的には英語で通すことを第一のルールにしましょう。

英語を間違っても怒らない

親子でチャットをする利点は「間違いを気にしない」ことでした。しかし、お母さんやお父さんが、子どもの英語文法や綴りなどをうるさく注意してばかりでは、子どもは嫌になってしまいます。

しかし、訂正してあげないといつまで経っても上達しません。子どものやる気をそがずに訂正するには、ふたつ方法があります。

ひとつ目は、毎晩その日の投稿を見直してよりよい文章を教えてあげることです。「これは何ていえばいいのだろう」というフラストレーションからその日のうちに開放されるので、子どもにとって嫌な気分になりづらいです。

もう一つは、聞きなおすような(確認するような)感じで投稿してあげることです。例をご覧ください。

Miki: I am hungry.  I want have some snacks.(have の前にtoが抜けている)
Mum: Oh, you are hungry.  You want to have some snacks, right?(WhatsAppでは文字に色をつけたり、太字にするような文字修飾機能はありません)

このように聞きなおすと、自然と子どもに正しい英文を伝えることができます。うまく学習すると、次回からはこの表現を真似するようになります。

一方的に正解を伝えるばかりではなく、子どもに気づかせるのも大切です。

略語やネットスラングは使用しない

外国の人とチャットをするとあまりの略語やスラングの多さに、英語を理解できないほどです。代表的なものを挙げると、FYI: For Your Information(参考まで)、ASAP: As Soon As Possible(できるだけはやく)です。

このような表現は小学生の英語学習には不要なので、使わないようにしましょう。面倒でも省略しないで書くことをおすすめします。

同様にスラング(俗語)もできるだけ使わないようにしましょう。日本人が好んで使うOh my God! は、おすすめしません。なぜなら、みだりに「神」の名を口にするのは慎むべきとされているからです。

驚きを表現するときは、Oh my goodness.やOh my gosh.などを代わりに使用するようにしましょう。

子どもは家でのみ利用する

子どもだけでネットを使用するときには、注意が必要です。くれぐれも悪意のあるサイトに騙されないように注意しておきましょう。

無用なトラブルを避けるためにも、「親子チャット以外では使用しないこと」「スマホを家の外に持ち出さないこと」をルールにしておきましょう。

子どもをネットから完全に遮断するのが難しい今日、早めにネットの正しい使い方を教えておくのは必要です。

まとめ

日本で普通の生活をしていると英語に触れる時間はほとんどありません。しかし、英語を定着させるにはどうしても「使う」状況が必要です。WhatsAppを利用してグループを作り、親子で英語チャットを続けましょう。「英語を使う」状況を自然に作ることができます。

チャットは文字による会話です。これを早く正しくできるようになり音声化できれば、会話力もアップします。会話の本や翻訳ソフトの力を借りてもかまいません。無理なく続けられる方法を見つけましょう。

最低でも数か月続けると、よく使う表現については覚えるようになります。使うことによって覚えた表現は忘れにくい特徴があります。お金をかけずに取り入れられる学習法なので、ぜひチャレンジしてみましょう。

オンライン英会話では質問をするときにチャット機能を使用することがあります。日頃から簡潔に英文を書く訓練をしていると、英会話の授業でも役に立ちます。

 

子どものオンライン英会話:成果・効果を上げる復習方法

子どもの英語力向上のためにオンライン英会話を始めたけれど、思ったほど成果を感じずマンネリ化していませんか。毎回単調なレッスンで、子どもが何を習ったかすぐに忘れてしまうような状況なら対応策を考えなければいけません。

まず、英会話の向上のためにどのようなトレーニングが必要なのかをお母さんが理解する必要があります。そして、レッスン後の「復習」を充実させ、「よし、今度はもっと上手に話してみよう」という気持ちで子どもにレッスンを受けさせることが大切です。

またあまり使われていないオンライン英会話の「リクエスト機能」を最大限に活用して、より自分の子どもに合わせたレッスンを受けられるようにすることも大切です。

そこで、今回は子どものオンライン英会話の効果・成果を高めるためのコツについて具体的に解説します。

オンライン英会話が子どもの英会話に効果的な理由

英会話の上達にはインプットとアウトプットの両方が必要です。単語・文法の知識を頭にストック(=インプット)して、それらの知識を使って話してみる(=アウトプット)ことでしか英会話の上達方法はありません。

インプットとアウトプットを50:50の比率で行うと理想的な英会話のトレーニングになります。しかし、日本で暮らす大多数の人は英語を使う機会がほとんどないためアウトプットが圧倒的に不足しています。

さらに、インプットの量も充分ではありません。毎日単語や文法を学習したり、英文を何度も音読して暗唱している人は受験生以外、ほとんどいないのが現状です。

そこでオンライン英会話を活用してアウトプットの時間を確保します。そして、レッスンのない日はインプットに集中します。インプットをしておくと意識が高まり、レッスンを能動的に受けられるようになるメリットもあります。

ここではインプットとアウトプットを繰り返しながら英会話が上達する様子を詳しく説明します。

英会話上達のしくみ

「日本語を覚えたときのように、英語も苦労しないで覚えたい」という気持ちはよくわかりますが、現実には不可能です。日本語が母国語として定着した小学生以上の子どもは、日本語をベースにしながら英語を学ぶしか方法はありません。

しかし、悲観する必要はまったくありません。9歳になると少しずつ論理的な思考力が発達してくるので、「文法」を最大限に活用しながら英語を効率的に学べるようになります。

言葉は学習範囲が広くすぐには効果が表れにくいため、努力が報われないように感じますがそんなことはありません。長期間継続すれば必ず英会話は上達します。ここで、インプットとアウトプットを繰り返しながら英会話を上達させる過程を確認してみましょう。

仮に“I want to do ~.”(私は~したい)という表現をマスターする過程を確認してみます。まず、「~したい」と表現したいのに、言えずにフラストレーションが溜まる経験をします。実際に言葉は発していませんが、アウトプットしようとして気づいたのです。

次に、先生に聞いたり辞書で調べたりして“want to do ~”という表現を知ります(インプット)。そして、“I want to play tennis.”(私はテニスをしたい)とか“I want to go to Disneyland.”(私はディズニーランドに行きたい)という英文を暗唱します(インプット)。

その後、会話をする機会に覚えたフレーズを利用してみます。例えば夏休みの思い出を話しているときに「僕は釣りに行きたかったけれど、お父さんはゴルフをしたかった」と表現しようとします。

そして、“I want to go fishing, but my father want to play golf.”と言ったとします(アウトプット)。これを聞いた先生から、「過去のことだから、wantはwantedに直してみよう」とアドバイスをもらいます。

このとき初めて動詞には過去形があることを学び、-edを動詞につけることを理解します(インプット)。そして次回から「いつものことを話すときはwantで、過去のことを話すときはwantedにしよう」と覚えます。

このように、たった一つの表現でさえもインプットとアウトプットを何度も繰り返しながら少しずつ学んでいくのが普通です。だから、英会話を本気で上達させたければインプットとアウトプットを毎日繰り返すしかありません。

アウトプットの機会確保のためにオンライン英会話が効果的

インプットは本があれば自分でもある程度はできます。アウトプット(話す)訓練も大人であれば英語でひとり言をブツブツいいながら練習することは可能です。しかし、子どもの場合はなかなかそこまで器用にできないので、会話をする相手が必要になります。

そこで活用できるのがオンライン英会話です。安い月謝で週に複数回のレッスンを受けられるので、英語でのアウトプットを習慣化するにはもってこいのシステムです。

もちろんこれまでみてきたように、頭の中のストック(英語の知識)が足りないと、口から英語はほとんど出てきません。だから、オンライン英会話でのアウトプットを増やすと同時に、レッスンのない日のインプット(単語・文法学習)がとても大切になってきます。

オンライン英会話のない日は、復習とインプットに集中

週3回のレッスン(各25分)でアウトプットの機会を確保した場合、残りの4日間はインプットに専念しましょう。このインプットの質と量で、英会話の流暢性が決定します。

復習には紙を使った学習が最適です。子ども向けのオンライン英会話では、無料の独自教材と市販の推奨教材が使えるようになっています。独自教材の場合はPDFなどをダウンロードできるようになっているので、プリントアウトしておくとよいでしょう。

レッスンを受けたら、その時に習った部分をテキストで確認します。音声と文字を結びつける学習はとても大切です。リーディング力は英語力の基本となります。また、オンライン英会話ではライティングが弱点なので、鉛筆で書きこむだけでその弱点を補えます。

では、もう少し具体的にどのような復習をすると英会話力が向上するのかを説明します。

英文法の知識を確実にする

その日に習った部分が「Is this ~?」(これは~ですか)なら、主語と動詞の順番が入れ替わっていることをテキストを見ながら確認します。

私はかつて英語教師でしたが、音声のほうが理解力が上がる生徒と文字で確認したほうが理解できる生徒の2タイプいることに気づきました。そのため、レッスンで同じことを説明されても文字や図をみながら確認したほうがより定着しやすくなるので、文字による復習はとても効果的です。

意味がわからないところがあれば、次回のレッスンで質問をしてみるとか、お母さんから教えてあげるようにしましょう。

話すときは文法を意識しすぎると流暢性が損なわれることがありますが、復習のときは英文法の細部の理解に努めます。ここをいい加減にすると、いつまでたっても英会話は上達しません。

知らなかった英単語を覚える

小学生は知っている単語数が不足しているので、知らない単語ばかりかもしれません。語彙力の向上は表現力の向上と直結しているので、積極的に覚えるようにしましょう。

単語については、まず発音が大切です。意味を調べて発音はいい加減に覚えては、英語は上達しません。意味を調べる前に発音とアクセントを調べます。

主要な単語なら、電子辞書で調べると音声が再生されるので、それを聴きながら自分の口でもマネをしてみます。特にカタカナ化されている単語は注意が必要です。日本語に引きずられてしまい誤った発音やアクセントをしてしまいがちです。

例えば、plastic(プラスチック)を覚えるとき、「ラ」の部分が【l】と【r】のどちらなのかを正確に発音するようにしないと、あとで混乱することになります。

小学生の子どもにとって大きな山となるのが、基本的な動詞です。一見簡単そうに見えますが、多用されるのでいろいろな意味や文脈に使用され、意味の範囲が広いものが多いので使いこなすのは大変です。

例えば、haveの基本の意味は「を持つ」です。しかし、“I have a dinner at 7:00.”のhaveは「食べる」という意味です。このように文脈によって意味が変化する基本動詞は英語初心者の子どもにとってやっかいな存在です。

これらの単語については多くの用例に触れながら語感を養うしかありません。

テキストの英文を暗唱する

テキストにはターゲットとなる基本文が書いてあります。ここまでの学習で、文法と単語を完全に理解していれば、基本文の内容も正確にわかるはずです。横に日本語の訳を書いておきましょう。準備ができたら、この英文を音読しながら英文を暗唱します。

  • 手順
  • 英文を集中して3回音読します。今度は、テキストから目を話して同じ英文を声に出して言ってみます。
  • 時間を空けて日本語訳を見ながら、英文を音読します。このとき、途中でわからなくなったら、もう一度最初から繰り返します。
  • スラスラ言えるまで繰り返す。

英文の暗唱は、すき間時間に取り組むと効果的です。思わずテレビをつけたくなる直前とか、風呂上がりの時間などの短時間を利用して集中して取り組むと覚えられるようになります。また、どこかに出かけるときもその部分のコピーやメモを持ち歩き暗唱するようにします。

能動的にレッスンを受けてみる

オンライン英会話で成果を上げるために最も大切なのは、「レッスンを能動的に受ける」ことです。毎回何も準備せずに何となくレッスンを受けても、英会話は上達しません。

そこでオンライン英会話でもっと効果を上げるために必要なコツをいくつか紹介します。

  • 今日の出来事を英語にしてみる

オンライン英会話の冒頭では、挨拶とちょっとしたフリーカンバセーション(自由会話)のやり取りがあります。

オンライン英会話がマンネリ化してくると、子どもは最低限の言葉だけでやり過ごしてしまい、講師が話しづらい状況を作り出してしまいます。

挨拶は毎回“How are you?”と質問されるので、“Fine, thank you.” だけで終わりにせず、“I’m good.”(調子いいです)など他の答え方も覚えておきましょう。気分に合わせて答えられるように下の表現を目の前の壁に貼っておくのもいいアイデアです。

I’m good.
I’m okay.
I’m excellent.

さらに、これだけで終わりにしないで1センテンスを追加するように心がけましょう。その場合は、but(しかし)かbecause(なぜならば)でつなぐとスムーズです。相手にできるだけ情報を伝えたほうが会話は弾むので毎回話す内容を決めておきましょう。

例えば、“I’m okay, but I have a lot of homework today.” と返事をすると、オンライン英会話の講師は必ず宿題のことについて反応するはずです。

“I’m excellent, because my father gave me a PS4.” と返事をすれば、講師は「へえ、何かゲームソフトは買ったの?」と質問を続けます。これらの質問にも答えられるように、あらかじめ準備をしてメモを取っておくと、会話はスムーズに進行します。

  • 伝えたいのに表現できない部分をメモする

オンライン英会話はパソコンやタブレットに向かってレッスンを受けています。でも、私の子どもが受けるときは必ず横にノートと鉛筆を用意させます。これはレッスン中に言えなかったことや、印象に残った先生のフレーズや注意点を書き残すためです。

レッスン後は必ずこのメモを見て、フレーズを覚えたり知らない単語を覚えたりするようにします。ノートには先述したフリーカンバセーションのネタをメモしておくのもいいです。

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オンライン英会話のレッスン予約欄にお母さんがリクエストをする

レッスンを能動的に受けるために活用したいのが、リクエスト欄です。レッスン予約をするときに細かい要望をメニューから選べたり、書き込めたりします。よくあるレッスンリクエストとしては、次のようなものです。

  • 日本語を使用して欲しい:学習初期の子どもでも戸惑わずにレッスンを受けられる
  • 発音指導をして欲しい:日本人が苦手な発音を中心に丁寧に指導してもらえる
  • センテンスを正して欲しい:自分の英語の間違いを指摘してもらい正確性を高める

またオンライン英会話によっては、もっと細かいリクエストを送ることも可能です。例えばあらかじめ英検5級の問題集をスキャンしておき、そのファイルを添付します。

コメント欄に「(1)~(10)までの問題に取り組ませてください(日本語可能)」と入れておくと、講師はそのリクエスト通りにレッスンを進めてくれます。

細かい要望をすることについて遠慮する必要はありません。教える講師の立場からすれば、細かく指定されたほうがレッスンの目標がハッキリするのでかえってやりやすくなります。子どもも明確な目的意識をもってレッスンを受けるので英会話の向上が早くなります。

このようにお母さんがひと手間かけるだけで、子どもは前向きに・能動的にオンライン英会話のレッスンを受けられるようになります。この機能を十分に活用して、ダラダラとレッスンを受けることのないようにしましょう。

まとめ

英語は積み重ね型の教科です。基礎レベルから少しずつ理解を固めて、より高度なものへと伸ばしていくことが大切です。

英会話では文法や単語などの知識をインプットして、会話の中で使ってみる(アウトプット)ことを繰り返しながら、少しずつ向上させていくのが定石です。そのためには、オンライン英会話のレッスンを受けたら復習を充実させることが大切です。

また、レッスン前に今日話すネタを決めておき、講師にうまく伝えてみようという気持ちが大切です。さらに、お母さんから子どもに必要とするレッスンの要望を細かくリクエストすると、子どもが最も必要とする内容に特化されるのでマンネリ化を避けられます。

英語学習は長期間に渡るものなので、工夫をして子どもの学習意欲を刺激しながら継続することが理想です。毎回「今度こそうまく伝えてみる!」という気持ちで子どもがレッスンを受けられるように、サポートしてあげましょう。

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子どもが英検準2級を取ったら英英辞書で説明力を磨こう

小学生の英語学習に英和辞典は不要です。ましてや英英辞典など全く必要ありません。しかし、英検準2級レベル以上の小学生なら「ある目的」のために英英辞典を利用したほうがいいです。「ある目的」とは「説明力を磨くため」です。

英会話(スピーキング)は決してやさしくありません。しかし、避け続けるわけにもいきません。英会話を攻略するコツはいくつかありますが、基本となる力は「説明力(描写力)」です。

英語で適切な言葉を使って説明できれば、会話は続きます。「簡潔な言葉で何かを説明する」のは英英辞典そのものです。これを活用すると、ハイレベルな小学生なら英会話をスムーズに続けられるようになります。

といってもお母さんが本屋に行って本格的な英英辞典を購入する必要はありません。この記事では、無料で利用できる英英辞典を活用して子どもの英会話力を磨く方法について解説します。

英会話が難しい理由を探ろう

何年も英語を勉強していても英会話が苦手な子どもはたくさんいます。多くの場合、能力的に劣っているわけではありません。小学生で英検準2級に合格するような子どもでも、英会話を苦手と感じていることは珍しくありません。

英会話にはコツがあります。文法や単語をまったく考えずに英語を流暢に話すのは、実際には無理です。しかし、いくつかのポイントを抑えると脳にかかる負荷を減らせます。そうすると「話す内容」に意識を集中できるようになり、英会話を続ける余裕が出てきます。

それでも英会話が続かないのは「説明力」が不足しているからです。「説明力」はスピーキングの核となるものです。テクニックは通用しないので、正面から取り組むしかありません。

普段、子どもと日本語で会話していて「意味がわからない」と感じることが多ければ、説明力が不足しています。

まずは、英会話中に子どもの脳にどのように負荷がかかっているかを理解しましょう。

内容に集中しないと英会話は無理

日本人の子どもが英会話をしたければ、できるだけ脳の負担を下げなければなりません。いいかえると、「脳を使うほど英会話はできなくなる」のです。

英会話では、脳は2種類の情報を並行処理しています。ひとつ目は「話す内容」です。もう一つは「英語での表現の仕方(文法・語彙など)」です。日本語で話をするときは、表現の仕方ではほとんど悩まないので「話す内容」に集中できます。

しかし、英語の場合は「表現の仕方」を考えるだけで脳を使い切ってしまうので、内容を考えることは難しくなってしまいます。下の図をご覧ください。

英語を話すときは頭の中でたくさんのことを処理しています。Yesterday, I played football in the park.  It was a lot of fun. (昨日公園でサッカーをして楽しかった)と言いたいだけでも、脳にはかなりの負荷がかかります。

内容を考えるだけでも、脳には一定の負荷がかかっています(図では50%)。残りの部分(50%)で、英語表現を処理できるように工夫しなければなりません。

負荷を下げるには「挨拶・定型表現を覚える」「汎用性の高い表現を使う」「レベルに応じて細かい間違いは気にしない」などの工夫が必要です。以下、具体的に説明します。

Yesterdayは文末のほうが自然ですが、文頭においても文法的には間違いではありません。日本語の語順とも合致するので、先に言ってしまって脳への負担を減らしたほうがいいです。

playの過去形はedをつけるだけで簡単です。次のスポーツ名では「冠詞をどうするか」に悩むと負荷が高くなり言葉に詰まってしまいます。この場合は「何もつけないのが正解」です。迷うなら「間違えても気にしないようにやり過ごす」のも一つのテクニックです。

Isの過去形で少し悩むと負荷はやや高くなります。そして、次のfunを修飾する形容詞にmanyかmuchで迷います。ここは英語を話せなくなるかどうかの瀬戸際です。

funは不可算名詞(数えられない名詞)なので、so much funなら正解ですが、いちいちこのような判断は面倒なので、スピーキングでは「a lot of を使う」と決めておくと切り抜けられます。

脳にかかる負荷が限界(100%)を超えると、脳はパンクして会話を続けることはできません。負荷を下げるには「挨拶・定型表現を覚える」「汎用性の高い表現を使う」「レベルに応じて細かい間違いは気にしない」などの工夫が必要です。

脳の処理能力に余裕ができて初めてスムーズに英会話をできるようになります。そして最後の関門は、内容そのものを英語で説明する能力です。

英会話攻略のためには、工夫して脳の負荷を下げて「内容」に集中できる状態をつくります。そして内容そのものをきちんと英語で伝えられる「説明力」を磨くことです。「説明力」はテクニックが通じないので、正面から取り組まなければいけません。

それでは実際の会話のパターンを見ながら、なぜ「説明力」は英会話に不可欠なのかを考えてみましょう。

典型的な会話例をみよう

初めて会った人と話をするとき、盛り上がるときと盛り上がらないときがあります。盛り上がる会話にはある程度「パターン」があります。その典型的な会話例をみてみましょう。

A(先手) B(後手)
はじめ 相手への興味を示す(Y/N Question)

「B君は夏休みハワイ旅行に行ったんだよね?」

Y/Nで回答+1センテンス(説明)

「うん、行ってきたよ。お父さんのクレジットカードが使えなくて大変だったよ」

中 ツッコミや質問(Wh-, How?)

「どうして使えなかったの?」

Answer+説明

「お父さんがクレジットカードの暗証番号を忘れたんだ。現金もあまりなくてお金が足りなくなったんだ」

終わり 意見・感想

「そりゃ大変だったね」

同意・反論

「まったくだよ。お土産も買えなかった」

交代 冗談

「じゃあ、もう一度行ってお土産買ってきて!(笑)」

相手への興味を示す(Y/N Question)

「ところでA君は〇〇温泉に行ったんでしょ?」

相手の質問に答えるだけでは会話は盛り上がりません。会話を続けられるかどうかは「より詳しい説明をしっかりとできるかどうか」にかかっています。

最初のYes/ No Questionに対しても、Yes/ Noだけで答えるのは「問題集レベル」です。実際の会話では、せめて「プラス1センテンスを意識して回答」するべきです。このときにも説明力が鍵となります。

子どもは時系列に説明するのは国語の作文で慣れています。「朝に〇〇して、昼××を食べて、夜は□□した」というパターンです。一方、見た物や体験の描写があまり上手でない子どもは多いように感じています。

例えば「おいしいカレーを食べた」出来事を説明するときに、「おいしい」とか「すごい」のひと言ですませてしまうと、相手にまったく伝わりません。この場合、「色・形・香り・食べた人の反応」などを詳しく語ることによって話は盛り上がります。

英語の先生にお願いしなくても、描写に関する説明力を身につけるよい方法があります。必要なのは「辞典」だけです。

説明力のお手本は「英英辞典」である

英語で何かを説明するときの見本は、「英英辞典」です。英英辞典は、見出し語を英語で説明しています。この説明部分(定義)を読むと、わかりやすい説明のパターンやよく使われる表現を身につけられます。

英語ネイティブのプロが校正している文章なので、絶対的な信頼のおけるお手本のような英語です。では小学生が説明力を養成するのに適した辞典とはどのようなものなのかを次で説明します。

おすすめの英英辞典

英英辞典はどれでもいいわけではありません。適切な英英辞典を選ばなければ無駄になってしまいます。英英辞典は、従来の紙だけでなく、電子辞書やスマホアプリなどさまざまな形態があります。

お母さんは正しい知識を学び、子どもに適した英英辞書を選べるようにしてください。

英英辞典には2種類ある

英英辞書には「英語学習者向け(ノンネイティブ向け)」のものと「ネイティブ向け」の2種類があります。両者の最大の違いは、説明や定義に使われている語彙レベルにあります。

英語学習者向けの代表ともいえる「ロングマン現代英英辞典(Longman Dictionary of Contemporary English)」(以下LDOCE)と「オックスフォード現代英英辞典(Oxford Advanced Learner’s Dictionary)」(以下OALD)を見てみましょう。

LDOCEでは、見出しの語は「2000語」の定義語彙だけで説明されています。これは中学校の英語で必修となっている語彙数に、500~800を積み上げれば理解できるくらいのレベルです。初心者向けです。
LDOCE

OALDは「Oxford3000」という基準で選ばれた定義語彙3000語が使用されていて、LDOCEよりもやや難しめの内容です。大学受験レベルの生徒なら使える語彙レベルです。

いずれにしても、定義に使用する語彙を限定して初心者にも使いやすくしているのが学習者向けの英英辞典です。一方のネイティブ向けの辞書の代表としては「ウェブスター」があります。これはネイティブ用の辞書なので、定義語彙のレベルに制限を設けていません。

試しに「clock(時計)」が上記3つの辞書でどのように定義されているかを無料のオンライン版を使用して比較してみましょう。

LDOCE(定義語彙2000)

an instrument that shows what time it is, in a room or outside on a building

OALD(定義語彙3000)

an instrument for measuring and showing time, in a room, on the wall of a building or on a computer screen (not worn or carried like a watch)

Merriam-Webster(ネイティブ向け)

a device other than a watch for indicating or measuring time commonly by means of hands moving on a dial

小学生の英語上級者でも、せいぜい語彙数は2000くらいでしょう。限られた語彙数で説明力を向上させるなら、LDOCEやOALDのような「学習者向けの英英辞典」を利用するべきです。

紙の辞書、電子辞書、オンライン版

学習者向けの英英辞典なら基本的に何でもかまいません。辞書には「紙の辞書・電子辞書・スマートフォンのアプリ・無料のオンライン版」の4つの形態があります。どれにしたらいいのか迷うお母さんは多いです。私のおすすめは、「無料のオンライン版」です。

紙の辞書は机の上で使用するものです。ソファに寝そべったり、車の中で暇つぶしに使用したりするには不向きです。電子辞書とアプリは携帯性に優れていますが有料です。小学生がちょっとした確認のために使うのにわざわざお金を払うことはありません。

インターネット環境とスマートフォンやタブレットなどが必要ですが、私は無料で利用できるオンライン版の英英辞典をおすすめします。代表的な二つのオンライン英英辞典を紹介します。

・Longman Online Dictionary

単語だけでなく、例文の音声も聞けるようになっています。

・Oxford Learner’s Dictionaries

アメリカ英語にも対応。SynonymsのBOXを開くと同意語も調べられます。

 

お母さんのスマートフォンやタブレットを子どもに少しの時間貸してあげれば、これらの辞書を無料で使用できます。

ロングマンがおすすめの理由

無料で利用できるオンライン版の英英辞典の中でも、私はLDOCE(ロングマン)を推奨します。理由は定義語彙が最もやさしいからです。2000語までなら頑張れば小学生でも到達可能なレベルであり、その範囲内で表現しているロングマンはピッタリです。

ロングマンはイギリス英語にシフトしています。そのため、イギリス英語とアメリカ英語で異なる綴りに関しては併記してあります。例えば、favouriteを調べるとアメリカ英語ではfavoriteと書いてあります。

「イギリス英語かアメリカ英語か」の問題は、小学生レベルで気にするようなことではないので安心しましょう。

英英辞典を活用して「説明力」を磨こう

ここからは、子どもの説明力を鍛える方法を具体的に解説します。特に子どもの苦手な「描写力」にフォーカスを当てた学習法を紹介します。

・意味を知っている単語を説明してみよう

通常、辞書を使うのは「単語の意味を調べるため」です。しかし、描写力を鍛えるときには「意味のわかる単語」を調べます。「自分の知っている単語を知識のない人にどのように伝えるか」と考えるとわかりやすいでしょう。

例えば、coffee は子どもでも知っています。コーヒーを一度も飲んだことのない人のために、どのような飲み物かを英語で説明させます。2~3の短いセンテンスで説明するのがコツです。すぐに言えないのは当然です。1分くらいは考えさせましょう。

It’s brown.
It smells good, but it tastes bitter.

これだけ言えれば小学生としては立派です。ある程度子どもの頭で考えさせて、英文を言わせます。その後で、オンライン版の英英辞書で定義を調べると、よりスマートな表現を読んだときに「なるほど!」と記憶に残るようになります。

具体的にやり方を説明します。

名詞を説明してみよう

英単語には「名詞」「動詞」「副詞」「形容詞」などいろいろな品詞があります。このうち最も取り組みやすいのは「名詞」です。まずは子どもの周りにあるよく知っている「名詞」を英語で説明することから始めてみましょう。

名詞の説明には3つのコツがあります。「五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)で表現すること」「使用目的や使用方法などに触れること」「キーワードを抑える」ことです。

先ほどの coffee の定義をLongmanで調べてみます。

a hot dark brown drink that has a slightly bitter taste

赤字は五感に関する描写です。青字はキーワードです。キーワードは「使わないと説明ができなくなる言葉」です。コーヒーは飲み物なので、drinkは欠かせません。ついでにいえば、このキーワードに使用目的(飲むもの)も含まれています。

小学生に難しいのは、関係代名詞(that)が使用されているところです。もしお母さんが英語に詳しいなら、ふたつの文に分けてあげましょう。

Coffee is a hot dark brown drink.
It has a slightly bitter taste.

子どもは最初に自分で作った説明文と比較しながら、辞書の定義を何回か音読します。今回のケースでは、brownにdarkをつけると「濃い茶色」と表現できること、slightly(わずかに)という副詞に気づきます。

最後にお母さんが“What is coffee?”(コーヒーって何?)と質問して、子どもに答えさせれば完成です。辞書の定義どおりでなくても、一生懸命説明できたらほめてあげましょう。

動詞を説明してみよう

名詞に慣れてきたら、今度は「動詞」に挑戦です。これも同じように、知っている言葉を2~3センテンスで説明させます。動詞を説明するときには、いくつかの「コツ」を覚えないと難しいです。

動詞を説明するときには、to不定詞(名詞的用法)「~こと」は不可欠です。それでも説明できないときは、when~で説明するといいでしょう。

ここでは例として、動詞kickを説明させてみます。

When you play football, you kick the ball.
To use your foot.

小学生にはなかなかの難問ですが、1分程度は考えさせてください。次にオンライン版の英英辞書で定義を調べます。

to hit something with your foot

拍子抜けするほど簡潔にまとめられています。to不定詞から始めていること、hit や footがキーワードであることなどが学べます。

何度か定義を音読させたら、お母さんからの質問タイムです。“What does kick mean?”(kickはどういう意味?)とたずねて、子どもに説明させます。

このようなやり取りは3分もかかりませんが、毎日少しずつ繰り返すと次第に英語で上手に説明できるようになります。おやつを一緒に食べているときなどにゲーム感覚で取り組むといいです。

辞書に近い表現や、よりオリジナリティのある描写ができたときは思い切りほめてあげましょう。辞書が正解というわけではなく、辞書の表現を取り込みながら子どもらしいオリジナリティのある説明や描写ができるのが理想です。

子どもが英英辞書を使って学習するときの補足事項

英英辞書を利用した英語説明力のトレーニングについての補足事項をまとめてみました。ゲーム感覚で毎日少しずつ続けると、飛躍的に会話力は向上します。

いつでもどこでもできるのが特徴

この学習方法は机に向かってやるようなものではありません。すき間時間にゲーム感覚でチャレンジするのがベストです。説明に1分間かかっても、イライラする人(相手)はいないので遠慮する必要はありません。

下校中に見た物(名詞)について歩きながら英語で描写してみるのもいい方法です。例えば、家の近所でcatを見かけたら、これを宇宙人に説明するシチュエーションを想像します。

It’s a small animal.
It is covered with fur.
It says meow.

帰宅したら、お母さんのスマートフォンでcatを調べます。ちなみにLongmanでの定義は以下のとおりです。

a small animal with four legs that people often keep as a pet

(お母さんは2文に分ける)
A cat is a small animal with four legs.
People often keep it as a pet.

このようなことを毎日少しずつ繰り返すだけで、表現力はぐんぐんと上達します。子どもの限られた語彙数でも、やりくりするのが上手になれば会話を乗り切れます。

日本語での説明力も身につく

すでにお気づきかもしれませんが、何かを説明したり描写したりするスキルは日本語力の向上にもつながります。「小学生は英語よりも日本語のほうが大切」と主張する人がいますが、英語を学びながらでも「国語力」を磨くことは可能です。

例えば、学校で工場見学に行ったときの様子を子どもにたずねたとします。「お菓子がね、びゅーっていっぱい出てきた」と子どもが説明したら、お母さんにはさっぱり伝わりません。

普段から英語で五感による説明やキーワードを意識した描写ができていれば、もっと的確に説明できるはずです。「焼きたてのいい匂いのクッキーがベルトコンベヤーにのって、機械から次々に出てきたよ」と説明されれば、お母さんも様子が手に取るようにわかります。

このようなトレーニングを積むと、普段の会話でも描写力を意識するようになります。他人にわかりやすく何かを伝えられる技術は一生の財産となります。

継続と反復が大切

英会話に限らず、何事も継続が大切です。毎日2つの言葉を説明するだけでとてもよいトレーニングになります。以前扱った単語と同じものに再挑戦しても全然かまいません。

その場合は記憶のどこかに辞書の定義が残っているはずなので、最初のときよりも洗練された表現ができるはずです。似たような種類の単語なら、前回使用した表現を再利用できます。

例えば、先ほどcatを扱いましたが、dogを説明するときにも使える共通表現があります。

A dog is an animal with four legs.
People often keep it as a pet.
It barks.

小学生でこれだけ説明できたら素晴らしいです。

言葉に詰まっても、乗り切れるようになる

英英辞典を活用した説明・描写トレーニングが最も役立つ場面は、会話中に言葉が出てこないときです。Aさんと将来「保育士さんになりたい」女の子(B)の会話をみてみます。

A: What do you want to be in the future?
B: I want to be….

nursery nurse(保育士)の単語を知らないと言葉に詰まってしまいます。この状況を打開するには、自分の言いたい何か(保育士)を相手に伝わるように説明するしかありません。

A: What do you want to be in the future?
B: I want to be….  How can I say?  Someone who looks after young children.
A: Nursery nurse?
B: Yes, that’s it!  I want to be a nursery nurse because I love young children.

このように単語を忘れてしまっても、説明力をつけると会話をスムーズに進められます。「すべての単語を覚えないと会話はできない」プレッシャーから解放されるので、リラックスして英会話に臨めます。

まとめ

英会話の中心は説明や描写です。これをきちんと英語でできるようになると、会話は盛り上がるようになります。そのときにお手本となるのは英英辞典です。

英英辞典を利用するときは、必ず学習者向けのものを使用するようにしましょう。小学生なら無料のオンライン版の英英辞典で充分です。

英語での説明力や描写力を磨くには、具体的には次のような順番で進めます。

1)身の回りにある物を英語で簡潔に説明してみる。
2)そのとき五感や使用方法に触れ、キーワードを盛り込む。
3)英英辞書で定義を読んで、利用できる表現を覚える。

このようにしてトレーニングを続けると、英語だけでなく日本語での説明力も向上します。英会話で単語を忘れてしまってもあわてずに対処できるようになります。

このトレーニングは基本的には子ども一人で大丈夫です。ただし、英英辞書の定義をわかりやすく伝えるには、一部お母さんのサポートが必要です。もしそれが難しければ、英語の先生の力を借りましょう。

説明力や描写力は、英語だけでなく日本語にも好影響を与えます。一生の財産となるスキルになるので、学習を習慣化しましょう。

子どもの英会話に必要な心構えと学習法

普段の会話で、子どもの話す時間はどれくらいですか? 連続して話すのはせいぜい20秒くらいではないでしょうか? お母さんはひと通り子どもから話を聞くと、それについて質問をしたり意見を伝えたりします。こうして会話のキャッチボールが始まります。

このことから小学生の英会話で求められるのは「20秒間英語で表現し続けられる能力」です。細かい文法事項や語法は気にしなくていいです。短いセンテンスを繰り返しながら、ひとつの話題について説明できる能力です。

英検3級に合格できる小学生なら文法や語法の知識はある程度備わっています。しかし、実際は英検3級を取得しても20秒間英語で話し続けられる小学生はほとんどいません。

原因は2つあります。一つ目は、文法学習と語彙のインプットが不足しているからです。もう一つの原因は、具体的な英会話の効果的な練習方法を知らないからです。

この記事では、英会話を促すための理想的な考え方や表現の工夫について説明します。また、自宅でも毎日続けられる英会話の練習方法を具体的に紹介します。

英会話を習得するのは決して簡単ではありません。しかし、かけた時間に比例して結果は必ずついてきます。

小学校低学年までは、インプット中心でよい

簡単な文章を話し出すまでに、生まれてから2年以上必要です。この間、お母さんを中心に家族から大量の語りかけをされています。つまりインプット中心の生活を続けます。

インプットを続けると、話せなくてもお母さんの言葉の意味を少しずつ理解するようになります。その証拠に、言葉を話せない幼児に「ミルク飲む?」と尋ねるとうなずく動作をします。

英語学習でスポットライトが当たるのはアウトプットの「英会話」です。しかし、アウトプットの前に、大量のインプットが必要なのは明らかです。特に学習初期はインプットの量を確保しないと、アウトプットに効果的につなげることはできません。

7歳までは抽象的な概念の理解が苦手

我が家では私が自分の息子に英語指導をしましたが、7歳までは文法指導は困難でした。なぜなら、文法は「抽象的な概念を理解すること」だからです。抽象的な事柄を理解し始めるのは、少なくとも9歳(小学3~4年生)からです。

もし機会があれば、小学2年生と小学3年生の国語教科書を比べてください。文章のレベルに大きな隔たりを感じるはずです。2年生までは絵本の延長だったのに、3年生になると急に難しくなります。

このことは「9歳になれば抽象的な事柄も少しずつ理解できる」ことを示しています。子どもの成長レベルに合わせて英語を伸ばすなら、文法もこの時期から少しずつ学ぶのが正解です。

あせって小学校低学年から本格的な文法を教えても効率は悪いです。

絵本の読み聞かせ・音読練習は効果的

第二言語の習得には、インプットとアウトプットの両方とも必要です。幼児期から小学校低学年にかけてはインプットに適した時期なので、インプット:アウトプットの比率を9:1くらいで設定するとちょうどいいです。

そのインプットの具体的な中身は、「絵本の読み聞かせ」と「音読トレーニング」です。インプットと聞くと受け身の学習と考えるお母さんも多いでしょう。しかし、「絵本の読み聞かせ」も「音読トレーニング」もどちらも能動的な学習です。

絵本には繰り返しの表現が多用されます。子どもは何度も聞いているうちに、自分でも口に出して読みあげるようになります。音読トレーニングについては、集中すると口の周りの筋肉が疲れるほど声に出して英語を読みます。
Robert Munsch

このようにインプットとはいえ、極めてアウトプットに近いトレーニングを積み重ねることで、子どもは英語力の基礎を身につけます。お母さんは「ウチの子はまだ英語を話せるようにならない」とあせらずに、ゆったりと構えましょう。

小学校中学年になったら、文法や語法を覚える

小学3年生くらいになったら、少しずつ文法の学習を始めましょう。とはいっても問題を解くための文法ではなく、あくまでも英語を話したり書いたりするための「運用力に直結した最低限の文法」です。

英会話に文法学習は避けられない

2020年度施行の小学校学習指導要領では、英語の4技能(読む・聞く・話す・書く)をバランスよく学ぶことを求められています。これら4技能の基礎として、文法と語彙力があります。「文法を学ぶから英語を話せない」と批判する人もいますが、大きな間違いです。

例えば、車の運転を考えてみましょう。信号の色の意味や進入禁止の標識などの交通ルールを学習することは、絶対に必要です。さもないと街中で事故が頻発したり、交通違反で溢れかえったりするでしょう。

しかし、すべての交通標識を丸暗記することは必ずしも安全運転には結びつきません。最初に最低限の交通ルールを覚えたら、少しずつ運転の経験を積み重ねながら必要なルールや知識を増やしていくのが通常のプロセスです。

英会話も車の運転と似ています。英会話で本当に必要な文法の知識は、実はそれほど多くありません。幼児~小学校低学年まで英語のインプットと音声面のトレーニングがあれば、少し整理して伝えるだけでだいぶ英文法の理解はすすむはずです。

では、具体的に英会話に必要な文法とはどのようなものなのか見ていきましょう。

英語で大切なのは「語順」

英語文法の中核は、「語順」です。「私は英語を勉強します」という意味の日本語と英語を比べてみましょう。

日本語では、下の文はほとんど同じ意味です。主語である「私は」と目的語の「英語」を入れ替えても意味はそれほど変わりません。

・私は英語を勉強します
・英語を私は勉強します
・英語を勉強するんだ、私は
・私は勉強するんだ、英語をね

これは、日本語は「を」「に」「は」「が」などの助詞によって、言葉の役割を与えているからです。日本語の場合、語順は比較的自由です。

一方、英語では下の文章でしか表現できません。

I study English.
(主語+動詞+その他)

もし、主語のIと目的語のEnglishを入れ替えてしまったら、意味はまったく通じません。英語は語順により言葉の役割がわかるようになっています。つまり、英文法のもっとも大切な部分は「語順を覚えること」です。

とりあえず、扱うパターンは4つでよい

英会話を始めるためには、さしあたっては「4つの文型」と「副詞の位置」を覚えるだけでいいです。

語順1

語順2

・副詞は、ほとんどの場合、文頭でも文末でも可能

Every day, I swim.
I swim every day.

・頻度を表す副詞(always, sometimes)は、原則「一般動詞の前」か「be動詞のうしろ」(文頭でも文末でも可)

I always eat an apple.
I am always hungry.

とりあえず、語順に関してはこれくらい知っていれば何とかなります。これ以上細かいことを伝えると、頭がフリーズして英語が口から出てきません。

動詞9つのパターンは必修項目

子どもにとって英文法の最初の難関は、動詞の変化です。動詞は「3×3」の要素で、9パターンに変化します。

・一般動詞

過去 現在 未来
肯定 I wore ~ I wear ~ I’m going to wear ~
疑問 Did you wear ~? Do you wear ~? Are you going to wear ~?
否定 I didn’t wear ~ I don’t wear ~? I’m not going to wear ~

・Be動詞

過去 現在 未来
肯定 I was ~ I am ~ I’m going to be ~
疑問 Were you ~? Are you ~? Are you going to be ~?
否定 You weren’t ~ I’m not ~ I’m not going to be ~

 

中学校では、現在形→過去形→未来形の順番で分けて教えるのが普通です。しかし、昔話を読むときは「過去形」なしでは読めません。誰かに「おもしろい今日の出来事」を伝えるときも過去形が中心です。

中学校から英語を学んだお母さん世代には受け入れがたいかもしれませんが、「過去形・現在形・未来形」の時制は一気に子どもに与えていいです。時制を制限すると表現の幅が極端に狭くなるからです。

thinkを習う前にthoughtを覚えても一向に構いません。別々に覚えていくうちに、ふたつの単語は同じ単語であると後から気づくからです。

-edをつけて過去形となる「規則動詞」とその他の「不規則動詞」がありますが、これも徐々に固めていけばいいです。thoughtとすべきこととthinkedと間違えたとしても、むしろ喜ばしい間違いです。正しく書かれた文を見て訂正する機会はいくらでもあります。

昔、テスト勉強のために「think-thought-thought」と動詞だけを何度も復唱しましたが、あれだけでは、使える英語にはなりません。

語順と時制による動詞の9パターンの変化を「使えるレベルまで落とし込む」のは簡単ではありません。しかし、どんなことにも努力は必要です。試行錯誤を繰り返しながら、固めていけるようにサポートしてあげましょう。

汎用性の高い表現を優先する

「楽をするための豆知識」です。英語初心者の子どもに枝葉末節の文法や語法を押しつけると、頭の中で処理できなくなって英語は口から出てきません。ですから、少しでも楽に英語を話せるような工夫が必要です。

例えば、「たくさんの~」を意味する形容詞のmuchとmanyは、名詞が可算名詞か不可算名詞かによって使い分けなければいけません。much waterとはいえますが、many waterとはいえません。

このような表現の使い分けに思考を使うと、言いたいことが口から出てこなくなってしまいます。そこで英会話のときは可算名詞と不可算名詞の両方に使えるa lot ofという表現を使うと決めておきます。そうすると余計なことに労力を使わずに、言いたい内容に集中できます。

また、You like a hamburger, don’t you? (あなたはハンバーガーが好きですよね?)という付加疑問文も作りにくい文章のひとつです。末尾の部分を否定にするか肯定にするかで頭を使うからです。

このような場合はYou like a hamburger, right? と表現したほうが楽です。文法的にも間違っていませんし、普通の表現です。

できるだけ話す内容に意識を向けられるように、省エネで表現できる方法を日頃から身につけましょう。
オンライン英会話で学習中

先送りしていいこと

話す内容に集中するためには、文法や語法の正確さにもときには目をつぶったほうがいいケースもあります。「勉強しなくていい」のではなくて「とりあえず保留にしておく」という作戦です。

冠詞

名詞が出てくるたびに「a, an, the, 冠詞なし」の4つのパターンを瞬時に使い分けるのは大人でも難しいです。英語教師なら「どこまで教えるか」という問題は常につきまといます。

英会話の最初の一歩としては、「冠詞なし」でもいいかもしれません。または、とりあえずtheをつけておいてもかなりの確率でしのげます。少し慣れてきたら、「聞き手と話し手の間で具体的に何を示しているのかわかるときはtheで、それ以外はa/an」くらいの指示で充分です。

Please tell me the way to (   )station. (駅への道を教えてください)

この場合は、お互いに近所にある駅だと了解済みなので、theが正解です。しかし、ここにaをつけてしまっても、それは文意が不明になるほどの間違いではありません。その程度のことにとらわれすぎて何も話せないほうが問題です。

発音

多くの日本人は発音にコンプレックスを感じすぎです。英語を話す人同士で「何を言っているのかわかる」レベルの発音であれば、実用上の問題はありません。

相手に聞き取りやすい英語を話すポイントは、「日本語にはない音をきちんと発音すること」です。

例えば、toothのthの音を「ス」と発音すると、高確率で相手に伝わりません。上下の歯のすき間に舌先を押し付けて、空気をしっかりと出す音がthです。日本語の「ス」とthはまったく違う音です。

あとで発音を矯正するのは大変です。子どもの頃に正しい発音を身につけたほうが、効率よくその後の学習をすすめられます。

完璧な発音になるまで次に進まない姿勢はいけません。進みながら相手に伝わりにくい発音を少しずつ矯正するようにしましょう。

「3単現(3人称単数現在形)のs」

子どもの苦手な文法項目のひとつは「3単現のs」です。正確に理解させるには、「人称」の概念を教えなくてはいけませんが、子どもに伝えるのは非常に苦労します。

絵本では、「3単現のs」は普通に登場します。しかしながら、かなりの量の英文に触れても、自然と「3単現のs」のルールを覚えることは稀です。やはり、どこかのタイミングで教えなければいけません。

子どもの成長段階にもよりますが、「何でgoにesがついているの?」と子どもから質問してきたときが、教えるタイミングとしては最適です。大人から文法を押しつけられるより、自ら「知りたい」気持ちがベースになっているときは理解が早いからです。

私は息子に聞かれたとき、紙にI(We)とYou(You)を書いて大きな〇で囲みました。その〇の外に、他の家族や友人の名前を書きます。男性はHe、女性はShe、学校の友達(複数)はまとめてTheyとグループ分けをします3人称の概念

その後、I go shopping every day. のセンテンスを与え、主語を入れ替えて3人称単数のときだけ動詞にsまたはesが付くことを確認させます。

You go shopping every day.
Jenny goes shopping every day.
Adam goes shopping everyday.
They go shopping every day.

この方法ならその場ではなんとか理解できますが、子どもはすぐに忘れてしまいます。その後も何度も繰り返し教えました。最初に教えてから使い分けできるようになるまで、1年半くらいかかりました。

ネイティブの子どもの作文を見ても6歳くらいの子どもは間違えていることも多かったです。ネイティブでもこんな程度です。日本人の子どもならなおさら根気よく教えるしかありません。

丁寧さ

「実はこの英語は失礼だった!」という本は一定の需要があります。「学校で習った英語はネイティブには失礼に感じるので気をつけましょう」という内容です。実は、私も気になってつい立ち読みしてしまいます。

おそらく「他人から失礼な人と思われたくない」気持ちが強いから、この手の本に惹きつけられるのでしょう。実際、英語レベルの高い人が読むと、より洗練された英語を身につけられます。しかし、初心者や子どもには「邪魔な知識」です。

場面や相手との関係に即して、英語表現を瞬時に使い分けるのは非常に難しいからです。子どもにそんなことを求めたら委縮して英語を話さなくなってしまいます。子どもは多少失礼な表現をしても、聞き手は受け入れてくれるので問題ありません。

私も昔、ニュージーランドのカフェで注文するときに “Could I have~, please?” と言ったとき、店員は苦笑いしていました。「丁寧すぎたんだな」とそのとき気づきましたが、大人でもこんなものです。次からCan I have~? とか I’ll take~? と変えればいいだけです。

木彫りの彫刻をするときは、最初に大まかな形を作ってから少しずつ細部を整えていきます。最初から細部を仕上げようとすると、いつまで経っても作品は完成しません。

英会話も彫刻と同じです。粗削りな段階を経て少しずつ細部を整えていけばいいのです。

具体的な練習方法

ある程度会話力があればオンライン英会話で経験を積むのは、有効な練習方法です。しかし、ほとんどの子どもにとって、いきなり20分間を英語だけで乗り切るのは難しいです。

会話には相手が必要ですが、練習するだけなら自分ひとりでも可能です。毎日続けられて効果的な英会話の練習方法を説明します。

20秒間話し続ける力をつける

20秒間英語で話し続けられることを目標にしましょう。4センテンスくらいが目安です。1センテンスは6秒くらいなので、短い文章を次々に口から出すことを心がけます。

まず、話すトピック(内容)を決めます。通学路で見かけた物や人、今日食べた給食のメニュー、週末の予定、学校で起きた事件など身近な内容がいいです。

「誰かに聞いてもらいたい」気持ちで、ひとり言をブツブツつぶやきます。途中で表現がわからなくなったら、日本語でメモを書いておきます。後で、お母さんは一緒に調べて教えてあげましょう。わかりにくいので、実例を挙げてみます。

・トピック「授業中、ケンジ君が気持ち悪くなって保健室に行った」

When we 勉強していた Syakai this morning, Kenji raised his hand. (社会を英語で言いたい)
He said “I 気持ち悪い.”(気持ち悪いを英語で言いたい)
Mr. Suzuki said to me, “Take him to the 保健室.”(保健室を英語で言いたい)
He went home with his mother.
I ~かなと思う he is going to come to school tomorrow.

ゆっくりと話すとこれだけでも30秒に到達します。( )は子どもが疑問に感じるポイントです。この疑問点は、その場で自分で調べたりお母さんが教えてあげて解消してあげましょう。名詞がわからないときは、上記のようにとりあえず日本語を入れておきます。

10分くらい調べれば、下のようなことがわかります。

勉強していた we were learning
社会 social studies
気持ち悪い feel sick
保健室 the nurse’s office
~かなと思う wonder if~

これらをノートに記入して、もう一度最初からブツブツつぶやきながら20秒間英語を話し続けます。

When we were learning social studies this morning, Kenji raised his hand.
He said “I feel sick.”
Mr. Suzuki said to me, “Take him to the nurse’s office.”
He went home with his mother.
I wonder if he is going to come to school tomorrow.

これを繰り返し音読します。翌日も前日の内容を思い出しながら、この話題について20秒間話し続けましょう。暗記するというよりも、音読していたら「暗記してしまった」状態が理想です。

ときどき復習

毎日このトレーニングを積むと、少しずつ身の周りのことを英語で話せるようになります。小学生で20秒間途切れずに話せれば立派です。

週に1度は復習の機会を設けて、ノートに書いたメモ(日本語)を見ながら英語を話すトレーニングをすると忘れにくくなります。

「復習はつまらない」と思うかもしれませんが、実は短時間で表現を身につけられる効果的な方法です。0から始めるより、ずっと少ない労力で覚えられるので復習は必ずするようにしましょう。

もし、お母さんが英語に自信がなければ、学校の先生や英会話スクールの先生に1週間分をまとめて質問するといいと思います。より自然で正確な表現を身につけることができます。

注意点

お笑い芸人が海外の街角で、たどたどしい英語で人々に話しかけながら与えられたミッションに挑戦する番組があります。

娯楽番組なので目くじらを立てるのもどうかと思いますが、子どもが勘違いしないか心配なことがあります。それは、メチャクチャな英語は「聞き手に我慢させている」状態なのに、「これで充分」と思ってしまうことです。

言葉が未熟であればあるほど、聞いている相手はその隙間を埋めるために非常に苦労します。一方的に相手に負担を強いるような会話は長続きしません。ましてやそのような人と友達になったり、仕事で一緒に協力したりするような結果には至らないでしょう。

いつまでも先送りしていい訳ではない

子どもに英会話を学ばせたければ、細部にこだわるような指導を最初からしてはいけません。しかし、いつまでも粗削りのままでいい訳でもありません。

子どもの年齢や英語力の推移を見ながら、少しずつ英語を整えていく必要はあります。学習するときは細部にこだわり、英会話をするときは細部にこだわり過ぎず内容の伝達に集中させましょう。

中学校から本格的な文法の授業がありますが、子どもの頃から英語を学んでいたとしても、決して軽視すべきではありません。海外の学校に通っていた私の息子には「グラマー(文法)はちゃんと勉強したほうがいいよ」と私は伝えています。

「会話は間違いを恐れず大胆に、学習は細かく」という使い分けができるなら、英検の勉強も有効だと思います。問題は、「英検〇級」を目標にして問題集に取り組んでばかりいると、正確さを追い求めすぎて言葉が出てこなくなります。

文法学習と会話練習では気持ちの切り替えが大切です。英会話練習ではややいい加減な姿勢でちょうどいいです。

話すための基礎を作るなら音読が一番です。

まとめ

子どもがリラックスして英会話をするようにさせるには、周囲の雰囲気がとても大切です。「何かを伝えたい」という子どもの気持ちを受け止めて、それに正しく反応してあげることで達成感を味わえます。

細かい文法事項はとりあえず保留にしましょう。汎用性の高い表現を活用したりして、短い文を速く作れるようにしましょう。使わないとうまくならないので、身の回りの出来事をトピックにして、20秒で表現する練習はとても効果的です。

ネイティブの子ども同士の会話を聞いていても、短い会話のやり取りがほとんどで、20秒間あればいろいろなことを伝えられます。

英会話に慣れるためにはやはり日常的に英語を使う環境を与えるのが望ましいです。英会話教室やオンライン英会話を上手に利用して、週1~2回、英語を話す機会が持てるのが理想です。

子どもにピッタリ! 「チャンツ」を活用した英語学習法

先日テレビを観ていたら、3歳の女の子が買い物をしながら「月が出た出た 月が出た(ヨイヨイ)…」と炭坑節を最後まで歌っていました。私は続きの歌詞を忘れていたのですが、驚くことにその子は最後まで完璧に歌えたのです。

盆踊りで聞こえた陽気な曲につられて何度も歌っているうちに、いつの間にか覚えたのでしょう。もしかしたら、誰かと一緒に盆踊りに参加して踊っていたのかもしれません。

このように、リズムや体の動きは記憶に好影響を与えます。もし、歌詞カードだけを見せて暗記するように3歳の子どもに命令しても、決して覚えられなかったはずです。

英語教授法のひとつにチャンツ(chants)と呼ばれるものがあります。リズムに合わせて英単語やセンテンスを繰り返すことで、英語独特のイントネーション(抑揚)や読まれるときのかたまり(chunk)を体得することができます。

英語教師の間では割とポピュラーな教授法ですが、普通の家庭でもお母さんが子どもに英語を教えるときに使えるテクニックです。言葉を覚えたての幼児には特に相性がよいので、ぜひコツを覚えて活用してみましょう。

外国語活動における「チャンツ」とは

英語教育の関係者なら「チャンツ」を利用した教授法についてしばしば目にします。しかし、深く理解して子どもの英語教育に応用している人は意外と少ないです。

もともと「チャンツ(chants)」には、「単調な歌」とか「(連呼する)語句」という意味があります。これが英語教育の中で使われるようになったのは、1971年にニューヨーク大学のCarolyn Grahamさんによって書かれた『Jazz Chants for Children』がきっかけでした。

この本をきっかけに世界中にチャンツを利用した英語教授法が一気に広まり、現在でも英語の授業(小学校や中学校の外国語活動)に利用されています。それでは、英語教育におけるチャンツとはいったいどのようなものなのか、詳しく見ていきましょう。

チャンツと英語学習における効果とは

日本語は平坦に一本調子に読まれる(話される)のが標準とされています。あまり抑揚をつけません。一方、英語圏の人たちは、抑揚をつけてかたまりごとに発話するのが基本です。

外国人が日本語を話す時、やたらと抑揚のある日本語を話すことがあります。あれは英語なら普通の話し方です。反対に、日本人が話す英語をネイティブが聞くと、一本調子に聞こえて違和感を覚えるはずです。

英語は重要な部分ほど強調されて読まれます。また、音のかたまり(チャンク)ごとに一気に読むのが正しい読み方です。例を見てみましょう。

日本語と英語のイントネーション

日本語では一語一語出来るだけ平坦に(抑揚をつけずに)読むと自然に聞こえます。一方、英語の場合は赤い*の部分を強く読みます。相手に最も伝えたい部分を強調するためです。

もう一つの英語の特徴は、一語ずつではなくかたまりごとに発話されることです。上の例では、Is itは別々に読まれずに、「イズイッ」と一気に読まれます。

「英語独特の抑揚のつけ方」と「かたまりごとに読む」練習をリズムに合わせて繰り返し練習することで、英語音声の基本を身につけていくというのがチャンツの正体です。もちろん、それに付随して、単語の意味や文法などを学習することもできます。

チャンツと歌との違いは

「それなら英語の歌でもいいのでは?」と考えるお母さんもいると思います。歌もチャンツも一定の拍子に合わせて、歌詞をはめ込んでいる点では同じです。しかし、決定的な相違点もいくつかあります。

一つ目は、チャンツにメロディは必要ありません。そういう意味では「ラップ」に近いといえるでしょう。

二つめは、歌詞は韻を踏んでいます(韻を踏むことを英語ではrhymeといいます)。ラップも韻を踏んでいますが、チャンツに韻は不要です。

三つめは、チャンツは単語を羅列しただけでも成立します。歌詞には「失恋して私の気持ちはどうなったか」のようにストーリーが存在します。チャンツの中にセンテンスを取り入れてストーリー仕立てにもできますが、単語を並べただけでもOKなのが歌とは異なります。

このように歌よりも制限が少ないのがチャンツの特徴なので、簡単に言語学習に取り入れることができます。

英語教育におけるチャンツが最も有効な対象年齢は

チャンツでは、リズムに合わせて大きな声で発話することにより、単語や文の英語らしい読み方を身につけていきます。そのため最も効果が認められるのは幼児です。幼児は聞こえてきた音をそっくりまねるのが得意ですから吸収が早いです。

一方、小学校高学年くらいになると人前でチャンツをするのは照れ臭くなります。遊び感覚で実際に発話しないとチャンツの効果は得られませんから、指導は難しくなります。照れさえなければ何歳になっても効果的です。

「チャンツ」を使った英語の指導例

チャンツを使った英語指導には学習内容によって2種類あります。一つ目はターゲットとする「単語を羅列したもの(vocabulary chants)」です。単語だけを扱ったチャンツです。単語を楽しく覚えるために有効な教授法です。

もう一つは、センテンスを扱った「文法チャンツ(grammar chants)」です。チャンツで扱うセンテンスに反復と対照をうまく絡ませると、文法事項を子どもに無理なく教えることができます。

まずは、単語だけを扱ったチャンツについてどのように家庭で取り入れられるかを具体的に見ていきましょう。

単語チャンツは元祖に聞け!

やはりチャンツといえば『Jazz Chants for Children』著者のCarolyn Grahamさんです。動画サイトで彼女を検索すると、彼女による実際の講演動画がヒットします。その中のひとつを紹介しながら、具体的な手法を見ていきましょう。

Carolynさんの“Simple Vocabulary Chants”というのが、単語だけのチャンツです。家庭で試すなら動画で説明される“Three word vocabulary chants”はとても参考になります。

Three Word Vocabulary Chantsチャンツの作り方

・ステップ1:トピックを選ぶ

まず、学ぶ単語のトピックを決めましょう。ここでは「スポーツ」に決めます。そして5,6個の単語を紙に書き出してみましょう。そして、それぞれの単語がいくつの音節からできているかをチェックします。

音節とは「単語が読まれるときの音のかたまり」です。例えば、tennis(テニス)という単語は、ten・nisで2音節の単語です。書き出した単語について何音節の単語なのかチェックします。

音節の見分け方にはある程度のルールがありますが、ややこしいです。自分で自信がないときは、辞書の見出しをみれば「・」で分かれ目が簡単にわかります。

ほとんどの英単語は1~3音節でできています。この傾向をうまく利用して、Carolynがいうthe magic formula(魔法の公式)に当てはめていきます。音節の数が2-3-1の順番で単語を並べると不思議なことに4拍子にぴったりとはまります。

脳はリズムがあると記憶力が増す性質があるようです。ジャズの基本は4拍子なので、これに合わせてチャンツします。(動画6:14あたりから)

(One, two, three, four,)

baseball (2)
basketball (3)
golf (1)
(Clap)

baseball (2)
basketball (3)
golf (1)
(Clap)

baseball (2)
basketball (3)
baseball (2)
basketball (3)

baseball (2)
basketball (3)
golf (1)
(Clap)

*( )内の数字は音節の数
*Clapは手拍子のこと

さすが、チャンツの創始者だけあって、見事にリズムにあてはめています。3音節のbasketballは結構難しいですが、リズムに合わせて発話しているうちに英語らしく読めるようになります。これが、チャンツの効果です。

トピックを変えても、音節だけ気をつければ応用できます。例えば、文房具のトピックにして、ruler, eraser, pen(ものさし、消しゴム、ペン)でも先ほどのパターンに当てはめることができます。

英語のチャンツに動作もつけよう

子どもと一緒にチャンツをするときは、その単語に合った動作をつけてあげるとより効果的です。子どもがついマネしたくなるのがコツです(動画の7:30あたりから、baseball, basketball, golfの動作をつけてみんなの前で披露しています)。

手拍子と動作をつけるだけでも楽しく学べそうですが、ピアノが得意なお母さんなら軽く伴奏をつけることもできそうです。私は楽器を演奏できませんが、もしできるならチャンツのときに利用すると楽しそうです。

文法のチャンツ

チャンツには単語のチャンツの他に、文法のチャンツもあります。チャンツを上手に利用すると小難しい文法用語を使わずに、子どもに文法事項を覚えさせることができます。

先ほどのCarolyn Grahamさんのレクチャー動画の後半ではGrammar Chants(文法チャンツ)について解説しています。ここでは、ちょっと視点を変えてオリジナルの文法チャンツを作ってみます。

PPAPのカラオケ音源を使う

世界で最も成功したチャンツのひとつは、ピコ太郎さんのPPAP(Pen-Pineapple-Apple-Pen)だと思います。妙に記憶に残る独特のリズム、シンプルな英語、わかりやすくておもしろい振り付けなどが作用して、一度聞いたら忘れられない仕上がりになっています。

私はマレーシアにいた頃、息子の同級生から「僕の歌を聞いてよ」といわれたのがPPAPでした。最初聞いたときは何が何だかわからず、苦笑いするしかありませんでした。しかし、その男の子のたった1回のPPAPは妙に私の記憶に残りました。

残念なことにピコ太郎さんは、I have a pen, I have a(an) apple. とanにするべきところをaと歌ってしまいました。きちんとanだったら、aとanを使い分ける文法チャンツとして後世に名を遺したかもしれません。

せっかくのいい素材なので、PPAPをBGMにして何か一つオリジナルの文法チャンツを作ってみます。

文法チャンツ作例:三単現のs

中学で習う英文法の最初の山場は、「三人称単数現在形のs」です。これを幼児に長々と説明すれば高確率で英語嫌いになります。自然に覚えられるようにするために、このトピックで文法チャンツを作ります。PPAPのカラオケに合わせてチャンツしてみましょう。

He likes red.
She likes red.
Oh, they like red.

I like blue.
You like blue.
Oh, we like blue.

They like red.
We like blue.
Oh, what color do you like?

What color do you like?

いかがでしょう? ピコ太郎さんは、英語チャンツに特化して活動したら最大限に才能を発揮できそうな気がするのは私だけでしょうか?

文法チャンツ作成のコツは、同じ表現を繰り返しつつ、違うところをハッキリと示すような文章にすることです。作例では「主語+like+色」を基本パターンにして、三人称であるHeとSheが主語になったときは、動詞にsをつけます。

英会話練習の「パターンプラクティス」に近いものです。できるだけ、子どもが日常的に使う表現や読み方を取り入れることがポイントです。It isよりもIt’s(短縮形)のほうがチャンツ向きといえます。

JackやSuzanなど具体的な名前が主語になっても動詞にsがつくので、チャンツだけですべてを教えることはできません。最終的には体系的な文法のレッスンが必要です。しかし、文法を学ぶための最初のステップとしては非常に優れた教授法です。

既成品の購入

英語教材のサイトでは、チャンツの英語教材(CD付)がたくさん販売されています。評判が良さそうなものなら購入してもいいでしょう。そのときは単語チャンツよりも文法チャンツのものを選んだほうが、お得感があります。

先述のとおり、単語チャンツは公式に当てはめればあっという間に自作できますが、文法チャンツは文法の知識や英文のチェックなどが必要だからです。時間と労力を節約する目的で市販品を購入するなら、文法チャンツを選びましょう。

まとめ

近所の書店で人気ナンバーワンの単語集はチャンツを活用したものでした。私は実際に購入して学習してみました。単調に単語が読まれる従来の単語集と比べると、チャンツの単語集は格段に継続しやすかったです。

収録されている単語や説明・例文には大した違いはありません。違いは、付属のCDに収録された音声が、テンポのいいリズムに合わせて読まれているだけです。たったこれだけの違いなのに「脳に優しく」感じたのは事実です。

大人でもこれだけの効果を感じるのだから、幼児期の子どもならなおさらです。単語や文法学習は味気ないものになりがちですが、チャンツを取り入れることによって自然といつの間にか覚えることができます。

チャンツによって体得された英語独特の抑揚やかたまりごとの発話は、リスニングの際に力を発揮します。ネイティブに近い感覚で英語を身につけるので、ネイティブが話す英語を聴き取れる確率は断然高くなるからです。

英単語チャンツなら家庭でも簡単に取り入れることができます。使用する音源をいくつか用意しておけば、何度でも使えます。英会話教室やオンライン英会話などと平行して、お母さんと一緒に英語チャンツを取り入れると相乗効果を期待できます。

失敗から学ぶ「英語で育児」

あなたの周囲で「英語で育児」に取り組んでいる人はいるでしょうか? おそらくかなりの少数派であることは間違いありません。しかし、ブログを見ると英語で育児に取り組んで「子どもが英語を話し始めました」という人達も少なからずいるようです。

我が家ではそのような時期を過ぎてしまったので、少しうらやましく感じます。何歳からでも英語の学習は可能です。しかし、英語を親子のコミュニケーションツールとして使える経験は、小さい頃を逃すと難しいです。

実は、私は英語で育児にチャレンジしたことがありますが結果は惨敗でした。失敗の原因は、成功するためのポイントを知らなかったからです。完全に勉強不足でした。

もしあなたが英語で育児にチャレンジしたいなら、私の失敗から学ぶことは多いはずです。今ではいろいろな人が記録したブログや書籍を入手できます。一人の子どもにつき一度だけの貴重な機会なので興味のあるお母さんはしっかりと準備をしましょう。

英語で育児~私の失敗談~

繰り返しになりますが、私は「英語で育児」に失敗しました。元英語教師として恥ずかしいですが本当のことです。これからチャレンジするお母さんには、ぜひ私の失敗から学んで欲しいと思います。まずは、私の失敗の原因を3つ述べます。
英語で育児に失敗

原因1:5歳からでは遅すぎた

私は息子が5歳のときに英語で育児を始めましたが、遅すぎました。息子はおしゃべりで言葉の発達が早く、年齢の割には日本語はしっかりとしていました。その分、英語を受け入れるのに抵抗があったようです。

もちろん母国語である日本語の習得は大切なので、これ自体は良いことです。ただ英語に関しては、2歳くらいから始めれば英語を自然と受け入れたと考えています。

母語である日本語の発達には個人差があるので一概に何歳までとは言えません。しかし一般的には、3歳までには始めたほうがいいです。

原因2:子どもとの接触時間が短すぎた

私は仕事の都合で、週の半分は帰宅しませんでした。子どもとの接触は多くても週2日半くらいでした。妻は専業主婦で常に子どもと一緒でした。しかし、英語が苦手で英語での語りかけは一切しませんでした。

一週間で合計10分~15分英語で話しかけても、子どもに変化が起きないのは当然です。英語を聞いたり使う時間や頻度が圧倒的に不足していました。

原因3:英語教育に関して家族の協力がマイナスだった

当時、義理の父母、私と妻、娘と息子の6人で生活していました。私以外の家族は全員、英語教育にネガティブな感情を持っていました。先述したように、妻は英語が苦手で「私は嫌だ」というスタンスでした。

協力がゼロなのはまったくかまいません。しかし、義母は「お父さんは英語を話していて嫌だねえ」などと発言していたので、子どもは英語にネガティブな感情を持ってしまいました。

同居している家族には「ネガティブな発言や態度は絶対にやめてもらうよう」事前に伝えましょう。また、子どもの英語を試すような「〇〇を英語で言ってごらん」のような脈絡のない質問も、子どもが嫌になる原因になので注意しましょう。

これら3つの原因から、英語で育児に私は失敗してしまいました。しかし、成果があったことも確かなので一つだけ紹介します。

成果:英語の絵本を好きになった

絵本好きな息子のために英語絵本を読み聞かせしました。これは息子の食いつきがよく、楽しんでくれました。最初は私から「ちょっとだけ本を読もう!」と誘っていました。そして、数か月後には自分から「これ読んで!」と持ってくるようになりました。

何度も繰り返し読んだ英語の絵本は、息子はほとんど暗記するほどまでになりました。このように「英語の絵本の読み聞かせ」は成果があり、息子の英語学習にも確実にプラスに働きました。

英語で育児を成功させるためのポイント

私が失敗から学んだ「英語で育児を成功させるための5つのポイント」を紹介します。これらのポイントを外さなければ、高い確率で英語での育児に成功します。これから挑戦できるお母さんはしっかり読んでください。

英語での語りかけを1~3歳までに始めること

英語学習を始めるのに、年齢制限はありません。しかし、「英語で育児」をしたければ、取り組む年齢は大切なポイントです。

結論から言うと、言葉を話し始める前の1歳から日本語が定着する前の3歳までに始めるのがベストな時期だと思います。日本語がしっかりと身についた後は、子どもは英語を素直に受け入れなくなることは私の例を見れば明らかです。

日本語への悪影響を心配して、小さい子に英語で話しかけることに抵抗を感じるお母さんもいるでしょう。しかし一日10分くらいお母さんが英語で話しかけても、周囲の環境はほぼ日本語です。日本語の発達に悪影響を及ぼすことはないので安心してください。

最も接触時間の長い人が英語で育児を担当すること

私が失敗したのは、「英語の得意な人が担当するべき」という勘違いです。英語で育児をするのなら理想は「最も長時間育児をする人」が英語で話しかけることです。

接触時間が最も長いのがお母さんなら、英語の得手・不得手に関わらずお母さんが担当するのが一番です。仕事をしていて保育園に子どもを預けているのであれば、「英語で保育する施設を利用する」のが一番効果的です。

後述しますが、英語が得意とか不得意とかは、「英語で育児」に関してはあまり関係ありません。なぜなら子どもを相手に話す英語には、難しい単語や文法は不要だからです。

家族にあたたかく見守ってもらう

お母さんが英語で育児をする場合「お父さんにも協力してもらいたい」と思うかもしれませんが無理は禁物です。「これ英語で何ていうか知っているか?」などと知識を試すような質問を子どもにするくらいなら何もしないほうがいいです。

家族に求める協力とは、子どもが英語を話したときに「〇〇ちゃん(くん)、すごいね!」とほめてくれることです。そのような環境なら子どもの英語力は伸びやすいです。

英語絵本の読み聞かせから始めること

まずは英語絵本の読み聞かせから始めましょう。具体的にはこちらの記事「初めての『英語絵本読み聞かせ』完全ガイド」を参考にしてください。子どもの好きそうな絵本を選ぶのは頭を使う作業ですが、子どもを深く理解できて、親子の絆を深められます。
英語絵本

子どもにとってもある日突然、英語で話しかけられるより、「絵本タイム」限定で英語を使うほうが自然な状況です。英語絵本を起点に少しずつ日常会話に広げていくイメージで、すすめていくと良いでしょう。

まずはお母さんが英語を使うこと

まずはお母さんが楽しく積極的に英語を使うことから実践しましょう。大人が楽しそうなことをしていると、自然と子どもは集まってきます。

例えば、大人がおもちを楽しそうにこねていれば、子どもは呼ばなくても見に来て「ボク(ワタシ)にもやらせて!」とせがむはずです。

英語での育児も同様に、お母さんが楽しそうに英語を使えば子どもだってマネしたくなるのです。反対に、眉間にしわを寄せてつまらなさそうに英語を話していたら、子どもは関心を示しません。

以上が「英語で育児を成功させるための5つのポイント」です。生まれたばかりの子どもがいるなら、日々の成長を楽しみにしながら準備をすすめましょう。

子どもにとっての日常の英会話とは

良く使われる「日常会話」という言葉ですが、その意味を深く考えることはほとんどありません。人それぞれに普段使用している言葉は異なるので、「日常会話」の意味はあいまいです。

1歳~3歳の子どもに限定すれば、日常会話とは「お母さんとのやりとり」です。ですから、英語で育児をしたければ「朝起きてから夜寝るまで」お母さんとどのような会話をしているかを知る必要があります。

普段の会話を記録してみる

まず、ノートと鉛筆を用意して、朝から晩まで子どもとどのような会話があったのか記録しましょう。ノートの見開きの左側にどんどん書き込みます。

おはよう。
パジャマ脱いで。
おきがえしようか。
顔を洗おうか。

一度に全部書くのは難しいですが、頑張って記録してください。一日だけでなく数日かけて会話を記録します。おそらく200フレーズくらいになるはずです。

記入後にチェックして同じような表現を一つにまとめます。このようにしてあなたに合ったオーダーメイドの日常会話リストの完成です。

日常会話のほとんどは「あいさつ」「ほめる」「注意」「命令・提案」の4つ

出来上がった日常会話のリストをあらためて眺めると、ほとんどは「あいさつ」「ほめる」「注意」「命令・提案」の4つに分類できることに気がつきます。それぞれの英語の特徴を説明します。

・あいさつ・決まり文句

あいさつや決まり文句はそのまま覚えるしかありません。Good morning. や Sweet dreams.(いい夢見てね)などが該当します。シンプルなものが多いので覚えやすいです。

・ほめる

ほめ方にもいろいろレベルはあります。よく使うものを3つくらい決めておいて、タイミングよく笑顔でいえるように練習しましょう。

Great!
Very good!
Nice!
Excellent!
Amazing!
Incredible!
Perfect!
Fantastic!

ほめるときは「どれだけ感情を込めて伝えるか」がとても大切です。「いいタイミングで、はっきりと伝わるように」ほめてあげましょう。

・注意

Don’t ~. が一般的です。大人は子どもに伝える場合にはPleaseはあまり使いません。言い方によってはきつい叱り方になってしまうので、できるだけやわらかく伝えるのがポイントです。

子どもに対して「~してはだめよ」と伝えたいときには No ~ing. とも言えます。例えば、病院で大声を出していたら No screaming here!(ここで騒いではダメよ)となります。

・命令・提案

命令文は文法的にとてもシンプルです。Wake up! (起きて!) とか Take off your pajamas.(パジャマを脱いで)など使う頻度も高いです。

命令文は主語を考えたり、それに合わせて動詞に-sをつけたりする必要もありません。現在形とか過去形のように時制も考えなくていいので簡単です。

言い方によってはきつく聞こえるので、もし可能なら Let’s~. で伝えると「(いっしょに)~やろう」とか「お母さんも手伝うよ」というニュアンスになりおすすめです。

このようにお母さんと小さい子どもの間の会話は簡単な英語で充分表現できます。それでは日常会話の勉強の仕方を具体的に解説します。

英語の本を買って暗唱する

Amazonで「英語 育児」のキーワードで検索すると、いくつかの書籍がヒットします。おすすめは実際に英語での育児経験のある著者で、CD付きのものです。お母さんとしての体験は貴重なので女性の著者がいいです。

ノートの右側のページに、日本語の日常会話に対応する英語を記入しましょう。多少ニュアンスが違っても気にしないでください。本に載ってない場合は、後回しにしてネットで検索しましょう。

CDは音声データをスマートフォンに移して、いつでもどこでも練習できるようにしましょう。日本語→英語で収録されているので、ブツブツとひとりごとを言いながら音読練習します。必ず声に出して練習してください。

CDの口頭練習は覚えた部分も再生されるので、上達するにしたがってもどかしさを感じます。

そこで、並行してノートの日本語を見ながら、口頭で瞬間英作文をしましょう。1秒で英語にできることを目標にしてください。完全に覚えた文を飛ばせば、時間を有効に使えます。

このようにスマートフォンでの音読練習とノートの瞬間英作文で7割くらいできるようになったら、いよいよ「英語で育児」に挑戦しましょう。

ある日突然、子どもに英語で話しかけるのは照れ臭かったり、戸惑いを感じたりするものです(私でさえそうでした)。こういうときは開き直って、堂々と子どもに英語で接したほうがいい結果を得られます。

毎日5分くらいから始めて、少しずつ時間を伸ばしていきましょう。最初、子どもは「ポカン」としていますが、身振りや手振りを交えながら完全に英語で通して下さい。中途半端な日本語は絶対に使わないと決めましょう。

英語で育児がうまくいかないときのチェックポイント

1か月くらい毎日「英語での育児」を続けられたら立派です。少しずつ結果が出てきた人もいれば、「全然子どもが理解してくれない」と悩むお母さんもいると思います。

育児は教科書どおりにいかないものです。ましてや英語を交えての育児なので、うまくいかなくても全く悩む必要はありません。しかし、成果が出ないとモチベーションが続かないのも事実です。

「結果が今一つ」と感じるお母さんのために、「5つのチェックポイント」を用意しましたので参考にしてください。

英語での語りかけを毎日続けているか

私の失敗の原因を思い出してください。毎日英語で語りかけるのが英語で育児の基本です。「今日は疲れているから」とか「いそがしくてそんな暇はない」といって、英語ゼロの日が続いたりしていませんか?

英語を日常的に使うなら、頑張って話すのではなく、どんな状況でも使い続けることが必要です。日常使う言葉が英語なので、毎日続けることが肝心です。

また、5分と時間を決めていてもそのほとんどが沈黙だったら意味がありません。その時間はほとんど間を空けずに英語でしゃべりつづけてください。

「そんなに英語を話せない」と心配になるかもしれませんが、大丈夫です。一方的にしゃべるのではなく子どもに質問したらどうでしょうか?

お母さん: What’s this?(これ何だ?)
子ども: Lion!(ライオン!)
お母さん: Good!  It’s a lion.  Do you like it?(よくできた! ライオンだね。それ好き?)
子ども: No.(ううん)
お母さん: Oh, you don’t like it.  Me, neither.  I’m scared.(あら、好きじゃないの。お母さんもよ。私怖いのよ)

このようにテンポよく会話をつないでいきます。最初は難しいですが、徐々に慣れてくるので間違いを恐れず英語を使い続けましょう。Yes/Noで答えられる質問よりも、Wh-から始まる質問をしたほうが子どもの英語をより引き出せます。

子どもは英語を楽しいと感じているか

「つまらない」と感じた瞬間に人間の脳はその対象からできるだけ離れるようにプログラムされています。子どもは遠慮せずに、つまらないと思った瞬間に英語を拒絶します。

何の脈絡もなく What color is this? と突然たずねるなど、テストのような質問はしていませんか? このような質問は子どもにとって全然楽しくありません。

一方、絵本に登場するライオンを見て Look at this!  It’s a lion.  What color is his mane?  Is it green or yellow? (これ見て! ライオンだよ。ライオンのたてがみは何色? 緑かな黄色かな?)と質問すれば自然なやりとりになります。

All Englishで出来ているか

ついやってしまいがちなのは、日本語訳を混ぜてしまうやりかたです。「blueは青だよ」と英語と日本語訳をセットで教えていませんか? このようなときは、身の回りの青いものを指で指しながら It’s blue. と繰り返し教えてあげましょう。

名詞だったら指で指してあげればわかりやすいですし、slowlyやquicklyは動作で見せてあげれば子どもは単語の意味を類推できます。「言葉だけで説明しなければならない」と考えるのではなく、身振り手振りをフル活用して教えてあげましょう。

ごほうびはあるか

「ごほうび」といえばとお金やお菓子を連想するかもしれません。しかし、お母さんが喜んだり驚いたりして、子どもとその喜びを共有するだけで充分です。例えば、ネイティブがよくやるのは High five! です。日本語でいう「ハイタッチ」です。

子どもをほめるときに笑顔で High five! といって手と手をパチンと合わせて、喜びを共有します。私は手が当たる瞬間に、わざと髪の毛をかくふりしてタッチをかわして子どもを悔しがらせて遊んでいました。

もう一つのごほうびは、 Hug(抱擁) です。Give me a hug! とお母さんが両手を広げて笑顔でいえば、子どもは喜んでお母さんと抱き合います。どちらかといえば男の子のほうが喜ぶかもしれません。

High five! と Give me a hug! のどちらも効果的なごほうびでなので、ぜひ試してください。

完璧に英語を覚えるまで話さないようにしていないか

子どもには「間違いを恐れず、積極的に英語を話して欲しい」という割には、お母さん本人は間違いを恐れて英語での語りかけに戸惑いを感じていませんか?

CDやノートでの例文の暗唱や瞬間英作文のトレーニングはとても大切です。しかし、完璧になるまで使わないスタンスはいけません。覚えかけの段階でどんどん使っていきましょう。多少間違っても相手は子どもなので気にしていませんし、覚えていません。

言いたくても言えなかったことはメモして、次回は必ずいえるように練習しましょう。実践を通して何度も口頭練習することで、場面や状況にあったフレーズが瞬時に口からでてくるようになります。

英語で育児すると決めたなら、実践を積みながら本やCDで学習したほうが断然効率的です。「暗唱→実践→暗唱→実践」を繰り返すと、自分でも驚くほど英語がスムーズに口から出てくるようになります。

万が一、子どもに何の変化があらわれなかったとしても、お母さん自身の英語力は確実にアップします。無駄なことは何一つありません。しかも、お母さんが英語を身につけた経験は、子どもが大きくなったときに最高のアドバイスになります。

お母さんが英語で話しかけるのが楽しいと感じれば、子どももお母さんとの共通語を身につけようと本能的に感じるものです。ときどき「5つのチェックポイント」を読み返して必要に応じて軌道修正してください。

「英語で育児」に関するよくある質問

日本に住みながら日本人のお母さんが「英語で育児」をする人はごく少数です。周囲に相談する人は少ないので、お母さんの疑問・質問について回答してみます。

日本語に悪影響はないか

結論から言うと、母国語である日本語に悪影響はありません。子どもはお母さんとだけ接触しているわけではありません。お父さんや祖父母、近所の人、公園で遊ぶ同年代の子ども達などに囲まれて生活しています。

お母さんが毎日1時間英語を話しても、子どもの主言語である日本語に大きなインパクトはありません。お母さんだって英語よりも日本語の方が得意だし、日本語を使う時間の方が圧倒的に長いのです。周囲の人はいろいろ言うかもしれませんが、気にしないことです。

不思議なことに子どもは話しかける相手によって言葉を使い分ける能力も備えています。お母さんが英語モードのときは英語で、お父さんがいるときは日本語で話そうとします。国際結婚したカップルの子どもを見ると、相手によって器用に使い分けています。

安心して英語で育児に取り組んでください。

子どもは英語をすぐに忘れるから意味ないのではないか

「子どもの頃に覚えた英語は忘れるのも早い」とはよく言われることです。実際、音声だけで覚えた幼少期の英語は、英語を使わないとすぐに忘れます。

そのような結果をわかっているのなら、英語学習を続けましょう。音だけで学んだ英語を文字で読める学習につなげて(アルファベットやフォニックス)、一人で英語の本を読めるように継続しましょう。

小学生のうちに本格的な児童書(例えば、ロアルド・ダールの『チャーリーとチョコレート工場』)を読めるようになったら、一生忘れない英語力が身につきます。英語での育児だけに満足せずに、その後も楽しく英語学習できるようにサポートしてください。

子どもに難しい英語を使っても大丈夫?

本の例文を見ると Want some milk? のように、日本人にはなじみの薄いsomeのような言葉が使われています。「子どもに文法の説明したほうがいいのかな…」と真面目なお母さんは考えるかもしれません。

また、 The cat looks sleepy. のlooksのような三人称単数現在形のsを見ると「小さい子には理解できないのでは?」と使用をためらう気持ちは理解できます。

しかし、そんなことは気にせず、むしろ積極的に使用しましょう。長い時間をかけて、子どもはどういうときにsomeが必要なのかとか動詞にsがつくのはどういう条件のときかを理解します。

私の息子はインターナショナルスクールのYear 2 から入学しましたが、三単現のsを理解するのに2年弱かかりました。その間、先生も友達も毎日何十回も三単現のsを使用していたはずです。それでもこれだけ時間がかかりました。

同じようにお母さんも「難しいから使わないようにしよう」と思わずに、どんどん自然な英語を使うように心がけてください。子どもに変化があらわれなくても、大きくなったときに文法学習をすればまったく問題ありません。

英語の発音が下手なのでためらっています

英語らしい発音を心がけたり練習したりすることは必要です。聞いている相手に負担をかけないためです。通じる範囲の発音なら気にする必要はありません。

間違った発音を子どもが真似をすることを気にするお母さんもいますが、それも心配ありません。動画サイトやDVDを観たりすれば、ネイティブの本格的な英語を聞くことができるからです。

子どもがなかなか英語を話さない

充分な量と期間、お母さんが子どもに英語で話しかけると、子どもはお母さんの英語を理解するようになります。例えば Turn on the light. と言えば部屋の電気のスイッチを入れてくれるようになります。

これだけでも大変な成果です。まずは、ここまでできたことを認めてほめてあげましょう。

順調にいけば、1~2単語の英語を話すようになりますが、「聞いてわかること」と「英語を話すこと」の間には相当なレベル差があります。時間のかかることは認識する必要がありますが、一つだけコツをお知らせします。

子どもがお母さんに何かをして欲しいときがチャンスです。遊びから帰って来てのどが渇いて「ママ、ジュース飲みたい!」と言ったとします。ここですかさず Say “Orange juice, please.”と教えてあげましょう。

ちゃんと言えたら Very good! とほめて、オレンジジュースをあげるのです。「ボク(ワタシ)の言いたいことが英語で伝わった」体験が、次第に子どものほうから英語を話すことにつながっていきます。

英会話のきっかけをつかめない

子どもとの会話は、目の前の物や状況について話したほうが盛り上がります。例えば、散歩の途中で犬を見つけたとします。 Look!  There is a dog over there! と言えば、子どもの興味を惹きやすいです。

目の前の物や経験と英語を直接結びつけることで、英語を英語のまま理解できるようになります。

まとめ

あなたの周囲には「英語で育児」をしている人は少ないかもしれません。しかし、全国には多くのお母さんがチャレンジしています。子育てブログなどを見れば体験記が見つかるので、そのような情報も参考にしてください。

英語で育児ができるのは一人の子どもにつき一回だけのチャンスです。この貴重な体験に立ち会えるのは接触時間の長いお母さんだけの特権です。プロの英語教師でもお母さん以上の影響力を与えることはできません。

子どもが生まれてから幼稚園に入るまでは、毎日の育児が大変でストレスに感じることも多いと思います。それでも育児しながらお母さんも英語をマスターできるなら、楽しい時間になると思います。

私の失敗体験を参考にして、多くの子どもがお母さんとの英会話を楽しんでくれたらこんなにうれしいことはありません。もし、私と同様にうまくいかなくても「もう子どもは英語を話せない」などと悲観しないようにしましょう。

英会話教室などを利用しながら定期的に英語に触れるようにしていけば、子どもが英語好きになるチャンスはいくらでもあります。

ある程度字が読めるようになったら、動画を見ながら4技能を磨きましょう。

小学生から始める「英語音読トレーニング」(実践編)

書店の語学コーナーに行くと、斬新なタイトルがつけられた英語学習法に関する本がズラリと並んでいます。私は新しいものが好きなので、つい立ち読みしてしまいます。

そこで気がついたことがひとつあります。それは、ネーミングは違っても結局のところ「音読練習を否定している本は一冊もない」ということでした。

つまり、ほとんどの英語指導者は音読の効果を認めているということです。ただ、その方法が多少異なっているにすぎません。

小学生が長期間取り組めることを前提に、私の経験をもとに「英語音読トレーニングのやり方」をまとめてみました。まずは、私のやり方でしばらく試していただき、それぞれの状況に合わせてアレンジしてください。

小学生の音読に適したテキストとは?

小学生の音読トレーニング用のテキストを選ぶときは慎重にしましょう。中学生や高校生なら学校の英語教科書が最適です。しかし、小学生用の英語教科書は内容的にまとまりのある文章が少ないので不向きです。

お母さんが本や通信講座の題材などから探すしかありません。そこで、どのような観点で選べばいいのかを説明します。

おもしろい内容であること

結論からいいますと、圧倒的におもしろい内容であることが必要です。たとえば小学1年生の子どもに「環境問題」をテーマにしたテキストを使用しても、すぐに飽きてしまうのは明らかです。

普段、子どもが好んで見ている番組や本を思い出して、それに近い英語のテキストを探すといいでしょう。善悪がはっきりした登場人物や、動物や乗り物が出てくる話など、子どもによってハマるテキストはさまざまです。

続きが楽しみになるような内容なら音読を継続したくなるはずです。おもしろさには妥協しないで根気よく探しましょう。

セリフ(会話)と地の文が適度に混ざっていること

セリフと地の文が混ざっているテキストが、小学生の音読に適しています。セリフの部分には口語表現が多く含まれていますし、地の文ではやや難しめの表現や過去形が頻出します。

例えば、“It’s a piece of cake!” said Peter. (「簡単だよ!」とピーターはいいました)のセリフでは口語表現でよく使われる“it’s a piece of cake.”(楽勝だ)というフレーズが使われています。地の文では、“said”(sayの過去形)が使用されています。

このようにセリフと地の文が混ざっていると、バランス良く幅広い英語が学べるので音読には適しています。セリフのところには感情を込めて音読すると、感情と表現が結びついて学習効果が高まります。

難しすぎず、長すぎないこと

難易度にも気を使いましょう。絵や動画をヒントにしながら数回音声を聞いて、8割くらい理解できるのが理想です。つまり、2割程度わからない部分や聞きとれなかった部分が残るくらいがちょうどいい難しさです。

長さはノーマルスピードで読み上げて40秒くらいから始めましょう。集中力を切らさずにリスニングできる長さがそれくらいです。慣れてきたら少しずつ延ばしても大丈夫ですが、長くても1分くらいにしておきましょう。

音声、挿絵、動画付きであること

音読トレーニングをするときは、模範となる音声を何度も聞きます。したがって、ネイティブが収録した音声が絶対に必要です。車での移動中に練習できるように、スマホに音声ファイルを入れておくと便利です。

また、テキストに関連する挿絵も必要です。内容理解の助けになるからです。さらに、アニメーション(動画)がついていると、細かい部分まで理解することができます。

通信講座やeラーニング(インターネットを利用した学習サイト)の中には、動画(字幕ON・OFF)だけでなく、本文のテキストファイルや音声ファイルが用意されているものがあります。これらのファイルはダウンロードして自由に使えるのでとても便利です。

理想の音読教材を使った、音読によるリスニング強化はこちらを参考にしてください。

用意するものと環境づくり

音読トレーニングは習慣化しないと意味がありません。そのため、音読のたびに必要なものを探すようでは時間の無駄です。また、音読がどこまで進んだかをお母さんも子どもも一目でわかるようにする工夫が必要です。

ここではe-ラーニングの教材で音読することを前提に、用意するものを表にしてまとめてみました。

必要な物 目的
パソコン、スマートフォン(またはタブレット)、プリンター テキストの動画や音声を再生したり、印刷したりするため
ストップウォッチ 音読の速さを記録するため
筆記用具 テキストに記入できるように
チェックリスト(ondoku_checklist) 音読したらチェックしたり、秒数を記録したりするため
小さなカゴ 上記の物を入れておくため

パソコン、スマートフォン(またはタブレット)、プリンター

スマートフォンかタブレットがあればほとんどのことはできますが、一部の機能に制限がある場合があります。また、ゲームアプリに気が散ってしまって音読に集中できないこともあります。

パソコンがあれば、eラーニングのサイトをフル活用できます。プリンターで印刷したものを使用すれば、気が散って途中でゲームを始めてしまうようなこともありません。

初めは動画や絵を見ながら音声を聞くので、パソコン・スマートフォン・タブレットのいずれかが必要です。しかし、子どもの眼の負担を考えると、途中からできるだけ紙で読んだ方が好ましいです。

プリンターが一台あると、モニターを見つめることなく音読練習できるのでおすすめです。また、後述する穴埋め式のスクリプト(原稿)を作ったりするときにも、パソコンとプリンターがあった方が便利です。

その他

ストップウォッチは安いもので構わないので、ぜひ揃えたいアイテムです。ときどき音読のスピードを測って記録すると、自分の成長を数値で実感できるからです。お母さんや兄弟と競わせるなどして、ゲーム感覚で取り組ませることも長続きさせるコツです。

筆記用具も音読用に揃えてもいいかもしれません。鉛筆、消しゴム、赤ペンがあれば充分です。音がつながるところに印をいれたり、意味をメモしたりするときに使います。

カゴに入れておく

百均の店などで小さいカゴを購入して、その中に今週読むテキスト(本)、筆記用具、タブレット、ストップウォッチなどを入れておきましょう。

また、音読チェックリストもこの中に入れておくと、既に終わったこととこれからやるべきことが一目でわかるので便利です。できた項目にはチェックを入れたり、タイムを測ったときの秒数を記録したりします。

なお、上記の音読チェックリストについては「こちら(ondoku_checklist)」からもダウンロードできます(上記と同じファイルです)。実際に使用するときは、子どもの状況に合わせてアレンジしてください。

実際の手順

ここでは、音読トレーニングの手順を解説します。私の経験から、1週間で1つの音読トレーニングを終了するサイクルが最適と感じています。短時間の音読でも頭と口が疲れるので、7日目は休みにしてあります。忙しくてどうしてもできなかったときは、7日目の予備日を使いましょう。

1週間に当てはめて下の表のようにモデルプランを考えてみました。スピードに慣れてくる後半ほど密度が濃くなるように配慮してあります。

  音読メニュー
1日目 内容把握
発音・意味のチェック
2日目 リッスン&リピート
3日目 オーバーラッピング
スピードオーバーラッピング
4日目 イメージ読み
シャドウイング
5日目 シャドウイング
Read & Look Up
6日目 穴埋め・ディクテーション
会話練習
最後1回のリスニング
7日目 休み(予備日)

また、それぞれの音読活動がイメージしやすいように、実際の音読練習風景の動画を掲載します。下記の説明や注意事項と合わせて映像で確認すると、スムーズに理解できます。

以下、このモデルプランについて詳しく解説していきます。なお、最後に動画でも解説しているので、そちらも参考にしてみてください。

1日目:内容把握、発音・意味のチェック

テキストを用意できたら、音声を再生してリスニングを始めます。動画・挿絵などを参考にして、どのような内容が話されているのか英語の音に集中させます。3回くらい集中して聞いてみて、聞き取れないところを少なくしていきます。

次にテキストや字幕を読みながら音声を再生します。耳で聞きとれなかった部分を文字で読んで「ああ、このことだったのか」と子どもが納得することが大切です。

初めて見る単語は、発音も意味もわかりません。まずは、発音を確認して、何度も声に出して読ませましょう。それから意味を確認します。「最初に発音、次に意味」です。新しい単語を覚えるときは、この順番を守らせるようにしましょう。

知らない単語については、ときどき子どもに前後関係から意味を類推させてみましょう。すぐに答えを教えずに考えさせると良い頭のトレーニングになります。

一日目の目標は、英語の本文を読んで内容を把握したり、知らない単語の読み方や意味を学んだりすることです。子ども一人では難しいので、お母さんやお父さんが手伝ってあげましょう。ストーリーを一緒に楽しむような感じで教えてあげるのがコツです。

この日の最後に、子どものペースでテキストを一回音読させましょう。つっかえながらでも構いません。ストップウォッチで時間を計測して、秒数を記録させます。これで、一日目の音読トレーニングは終了です。

2日目:リッスン&リピート

一文ずつ聞く(Listen)→ 音読で繰り返す(Repeat)の順に進めていきます。一つの文が長すぎるときは、意味のかたまりごとにリッスン&リピートしていきます。

例えば“Taking care of a pet is a lot of work.”(ペットを飼うのは大変です)という文章が長すぎると感じたとします。 “Taking care of a pet/ is a lot of work.”というように、最初にお母さんがスラッシュ(/)を入れてあげると子どもは読みやすくなります。

音声のスピード、抑揚などをできるだけまねるようにリピートさせてください。セリフの部分は特に登場人物の気持ちになりきって読むように伝えましょう。

3日目:オーバーラッピング、スピードオーバーラッピング

・オーバーラッピング

オーバーラッピングとは「被せる」という意味です。つまり音声と同時に被せるようにして、テキストを読んでいきます。読み方が遅いと、モデルの音声とどんどんズレるので、頑張ってついていくように子どもを励ましましょう。

・スピードオーバーラッピング

スムーズに読めるようになったら、さらに速く読めるように「スピードオーバーラッピング」の練習をします。これにはスマホの再生アプリを利用します。音声ファイルをダウンロードして、「1.3倍速」で同じ英文を再生してオーバーラッピングしていくのです。

毎回詰まってしまうところは、音声なしでテキストを読みながら何度も音読させます。最初から完全にできるのは教材がやさしすぎる証拠です。10回くらい繰り返してやっと読めるようになるくらいが普通です。

この日の最後に、音声なしで音読してタイムを測りましょう。初日よりは確実に速く読めるようになっているはずです。時間が短くなっていたら、「上手に読めるようになったね!」とほめてあげましょう。

4日目:イメージ読み、シャドウイング

・イメージ読み

3日目は速く読むことに集中させましたが、4日目の最初は内容をかみしめるように音読させましょう。内容を理解できるペースで音読させます。これができると英語の語順で内容を理解できるようになるので、速読やリスニングの土台づくりに最適です。

コツは読みながら頭の中にその文章の動画が流れているように音読することです。日本語の文字が頭に浮かぶようだと処理速度が遅くなります。

例えば“Taking care of a pet is a lot of work.”と読んだときは、ペットの散歩に汗を流している人を思い浮かべるようにします。「ペットの世話をすることは…」と日本語の字幕が流れてしまうと次々に読まれる英文に追いつかなくなります。

・シャドウイング

今度はテキストを使わずに、音声だけを使用します。「シャドウイング」とは、再生される音から3語ほど遅れて追いかけるようにして音読するトレーニング方法です。文字は見ません。

途中で詰まっても気にせずに、できるところから再開するように伝えましょう。耳で聞こえた内容を頭に2秒ほどためておき、同じように英語を話します。わずか数秒ですが、情報を頭の中に蓄えることにより処理が遅れてもあわてず英語を理解できるようになります。

初めのうちはほとんど再現できずに子どもは嫌になってしまうかもしれません。しかし、繰り返し練習しているうちに少しずつできるようになっていきます。あまり完璧を求めず集中力が切れたところでおしまいにしましょう。

5日目:シャドウイング(仕上げ)、Read & Look Up

・シャドウイング(仕上げ)

不思議なことに、前日できなかった部分が一晩寝るとスムーズにシャドウイングできるようになっていることがあります。数回、前日と同じように練習したら、仕上げのシャドウイングに移ります。

今までは音を聞いて、その通りに話すことばかりに意識を集中させていたと思います。しかし、仕上げでは内容をしっかりと意識したシャドウイングに挑戦します。

「音声から聞こえる英語の映像を思い浮かべる → 頭に2秒分溜める → 同じように話す」という流れです。これはとても脳に負荷がかかる練習方法で大人でも長時間続けることはできません。

子どもなので完璧を目指さなくても構いません。「音ばっかり追いかけないで、どんな話か思い浮かべながらやってみよう」と注意をうながすだけで充分です。

・Read & Look Up

最後に、テキストを使ったトレーニングです。まず、一文を黙読させます。その文章を頭にためておいて、目線を上に向けます。そして、下を見ないで同じ内容を音読します。これがRead & Look Upです。

もし文章の終わりまでが長すぎるようでしたら、リッスン&リピートのときに書き込んだスラッシュごとに行っても大丈夫です。

6日目:穴埋め・ディクテーション、会話練習、最後1回のリスニング

・穴埋め

もしテキストをプリントアウトできるなら、キーワードになるようなところを3つくらい選び出して、空欄を作ったり黒いマジックで塗りつぶしたりします。

そして、全文をリスニングさせながらその空欄部分の英語を記入させます。これまで暗記してしまうほど読み込んでいるので、簡単に記入できるはずです。それでいいのです。最初は全然わからなかったものが聞き取れるようになったので大きな成長です。

・ディクテーション

余裕があればディクテーション(聞こえた音声を文字で書く)にも挑戦させましょう。一つの文を選んで、リスニングをしてそれを紙に文字で書き取ります。句読点や大文字・小文字の使いわけにも注意しながら、完璧な文章を再現させます。

注意点は必ず一文の最後まで聞いてから、鉛筆で書くように伝えることです。一語一語一時停止しながら書き取っては意味がありません。何度か聞いて完成したら、テキストと見比べてお母さんが赤ペンで訂正します。どこを間違えたのかを目で確認するのはとてもよい勉強になります。

・会話練習

いよいよ大詰めのトレーニングとなりました。お母さんが先生となって、セリフの一部を入れ替える口頭作文にチャレンジさせてください。

例えば、先ほどの“Taking care of a pet is a lot of work.”の前半部分を入れ換えれば、英会話に応用できます。「『赤ちゃんの世話は大変だ』って英語で何ていう?」と問いかけます。“a pet”を“a baby”にすれば立派な英語です。

これまでやった音読が会話に応用できることを実感させるためにも、このような口頭英作文はとても効果的です。

・最後のリスニング

最後に1回だけ、静かにリスニングをしましょう。一週間前とは違って、ほとんど完璧に聞きとれるようになっているはずです。子どもと一緒に「聞きとれるようになって、すごいね!」と喜んであげましょう。

以上の流れをイメージしやすいように、実際の音読練習風景の動画を掲載します。上記の説明や注意事項と合わせて映像で確認すると、スムーズに理解できるでしょう。

まとめ

動画では椅子に座って音読学習をしていますが、実際はどこでも構いません。例えば、習いごとに行く途中の車の中で、音声を再生しながらオーバーラッピングやシャドウイングをしても全然構いません。

そうすれば「勉強」っぽく感じさせずに、子どもに音読トレーニングをさせることができます。家に帰ったら、他のことに時間を使えるので子どももお母さんもうれしいはずです。

このように家庭ごとに工夫して、音読トレーニングを習慣化しましょう。地味なトレーニングですが、ほとんどの英語の達人が推奨している効果抜群の学習方法です。必ず効果があらわれると信じて続けてください。

小学生から始める「英語音読トレーニング」(理論編)

子どもが英語教室に通い始めると、最初の一年でいろいろなことを覚えてきます。「英語教室に通わせて良かった」と感じるお母さんも多いでしょう。

しかし、そのまま右肩上がりで英語力がどんどん伸び続けることはありません。1年半を過ぎると、子どもの英語力が本当に伸びているのかどうか疑問を感じることが増えてくるはずです。

もし、あなたの子どもがアルファベット、発音、フォニックス(つづりと発音の法則)などの基本をすでに身につけているなら、次のステップにすすむ絶好のタイミングです。

とはいえ、やみくもにワークブックを家でやらせても子どもは嫌がるだけです。本当に身につく英語学習を積み上げて、子どもの英語力が確実に伸びるような学習方法を取り入れましょう。

私が推奨するのは「音読トレーニング」です。そこで今回は、英語音読が必要な理由とどのような効果があるのかについて述べていきます。

英語力は自宅学習の「量と質」で差がつく

英語は体育や音楽のような技能教科に似ています。これらの技能を伸ばすための指導法を参考にすれば、子どもの英語力を伸ばすヒントが見えてきます。

例えばピアノが上手に弾けるようになるための方法を見てみましょう。ピアノを習う子どもは、週1回30分のレッスンを受けるのが普通です。レッスンでは先生がマンツーマンで教えるので質の高い時間を過ごします。

しかし、たった週1回30分のレッスンだけでピアノが上達する子どもはいません。ピアノが上手な子どもは、例外なくその何倍も自宅で練習しています。つまり何かの技能を伸ばすには、質の高い指導と同時に圧倒的な練習量が必要です。

学校や英語教室だけでは量が足りない!

英語の習得にはおよそ3,000時間の学習が必要と言われています。学校で仮に週2コマ(1コマ=45分)1.5時間を1年間(35週で計算)実施したとして、1年でおよそ50時間学習したことになります。

しかし、学校の授業の1時間は「1時間学習した」とみなしていいのでしょうか? 厳密には学習時間とは「実際に英語の活動をしている時間」のことです。

例えば、先生の一方的な日本語での解説は、正確には英語学習時間にカウントすることはできません。あくまでも子どもが英語を「読む・聞く・話す・書く」のいずれかの活動をしている時間が「学習時間」です。

このように考えると、実際の学習時間は単純に合計した時間の4分の1くらいに減ってしまいます。上記の例でいうと、学校で年間50時間の英語授業を受けたとしても、実際の学習時間は約13時間になります。どんなに英語の先生が質の高い授業をしても、英語を身につけるための時間が圧倒的に不足しています。

このような学習時間不足を解消するには、毎日の自宅学習で補うしかありません。しかし、毎日たった10分~15分程度の英語学習を習慣化するだけで、子どもの英語力は確実に伸ばせます。

自宅学習は質も高める必要がある

学習時間不足は自宅学習で補う必要がありますが、「勉強時間」だけを気にしていてはいけません。自宅学習では、勉強の「質」にも気を配らなければなりません。繰り返しになりますが、英語は技能教科です。英語を「読む・聞く・話す・書く」活動をしない限り、成果を上げることは難しいでしょう。

例えば、ピアノは「ピアノを弾くこと」が練習の基本です。楽譜ばかり読んでピアノを弾かないとしたら、ピアノは上達しないでしょう。

同じように、英語学習の基本は音声のトレーニングだと私は考えています。もし、自宅学習の大半が問題集に黙々と取り組むだけだとしたら、英語を使えるようにはならないでしょう。

子どもの英語力を伸ばすためには、時間(量)の確保とともに「質の高いトレーニング」が必要です。では、具体的に何をしたらいいのかを説明します。

おすすめは4技能を伸ばす「音読トレーニング」

音読トレーニング

写真はリトルフォックスのプリンタブル機能で作った絵本を使って、音読練習をしているところです。詳しくはこちらを参考にしてください。

巷には英語学習法の情報が溢れています。私もいろいろと試してみましたが、最終的に「音読トレーニング」が最高の自宅学習法であると確信しています。

音読は「教科書を開いて文章を読み上げる単調な作業」と思われがちです。しかし、実際は非常に奥が深いトレーニング方法です。正しい方法で音読を継続すると4技能(読む・聞く・話す・書く)すべてを刺激することができます。

4つの技能に対して、どのように音読が効果的なのかを一つひとつ説明します。

・Reading(読む)

Readingに関しては音読のメリットは二つあります。一つ目のメリットは、英語の語順に従って音読するので強制的に英語の語順で内容を理解するようになることです。初心者にありがちな、語順に逆らって読んでしまう「返り読み」を防ぐことができます。これは速読につながる第一歩です。

二つ目のメリットは、音読のスピードと同じ速さで内容を理解することができるようになります。1分間に約150語が音読の最速ペースと言われているので、このレベルまでは音読だけで達成できます。ちなみに150語/分で読めれば、大学入試の英語長文でも安心です。

・Listening(聞く)

リーディングによって英語の語順のままに理解できるようになると、リスニングにも好影響をもたらします。なぜなら、聞こえた音の順番に内容を理解しなければならないリスニングは、まさにリーディング力が基礎だからです。

また、実際の音読トレーニングでは何十回もネイティブによる英語音声を聞くことになります。例えば、シャドウイングと呼ばれる練習方法では、モデルとなる音声を耳で聞きながら数語遅れで自分の口で同じ英語を話します。細かい音にも注意しながら何十回も繰り返します。

その結果、英語特有の「音の消失(sit down)」「音の連結(an egg)」「音の変化(meet you)」という日本人の聞き取りを難しくしている現象にも慣れます。

・Speaking(話す)

音読で体得した英文の一部を身の回りのものや人で置き換えると、それは英会話をしていることと同じです。例えば“I see yellow pencils.”を覚えていると、“You see yellow pencils.”と言えますし、“I see red pencils.”とも言えます。

このように暗唱できるパターンが多ければ多いほど、英会話ができるようになります。スピーキングのようなアウトプットには、大量のインプットが必要なのです。日頃から音読トレーニングを積んで、表現を覚えてしまうほど反復練習する必要があります。

・Writing(書く)

ライティングはすべての技能の集大成ともいうべき最も高度な技能です。文法・語彙・論理性・文体などさまざまな要素が絡みあうからです。日本人が日本語で小論文を書くのが大変であることを思い出してもらえれば、その難しさが想像できるでしょう。

小学生の段階では、スピーキングができるだけで充分です。なぜなら、スピーキングがライティングの基礎になるからです。

本格的なライティングは小学生には難しすぎます。そこで音読の最終段階で、文章の一部についてディクテーション(聞こえた英語を書いていくこと)を行うことで、ライティングのトレーニングをすることは充分可能です。

このように「音読トレーニング」は英語の4技能すべてに好影響をもたらします。これほど効果的な学習法は他に見当たりません。ここでもう一つ、「音読トレーニング」をするべき決定的な理由について述べます。

「ネイティブは音読していない」はウソ!

音読で効果を上げるには、年単位の努力が必要です。その必要性をきちんと理解していないと、子どももお母さんもすぐに心が折れてしまいます。

「ネイティブは音読トレーニングなんかしていないのに、なぜ必要なの?」と思うお母さんは多いかもしれません。しかし、実際はネイティブも気が遠くなるほどの音読トレーニングをしています。

例えば、幼児が“Pass me the salt, please.”(その塩を取ってください)といえるまでにどのような過程があったかを考えてみます。

最初は誰かがそう言っているのを何度も聞きながら(リスニング)、塩が入った瓶が手渡される様子を見るところから始まります(内容理解)。

次に、しょっぱい味がするものが“salt”であることを覚えます(単語学習)。それ以降は、塩が欲しいときは、“Salt.”と指で指しながら発話するはずです(音読)。

その後、おもちゃで遊んでいるときに“pass me~”(私に~を渡して)という表現を覚えます(音読)。このフレーズと以前覚えた“salt”を組み合わせて、塩が欲しくなったら“Pass me the salt.”と言い始めます(音読)。

しばらくすると親から「“please”をつけなさい」と教えられます。ここまで来てようやく、“Pass me the salt, please.”と場面に即して使えるようになります(音読)。

このようにネイティブは日常生活で無意識に大量の音読練習をして、少しずつ英語を身につけています。幼児が毎日1時間話していたとしたら、それは音読を1時間していることと同じです。

一方、日本人の子どもは日常生活で英語を使う場面がありません。そのため、テキストや音の素材を用意して、「人工的な音読練習」をする必要があります。毎日1時間は無理ですが、小学生の子どもでも毎日15分くらいの音読トレーニングを習慣化したいところです。

このように、無意識か意識的かの違いはあっても、英語学習には音読トレーニングは不可欠です。トレーニングの意味に疑問を持つと効果が薄れてしまいます。子どもに「何でこんなことするの?」と聞かれたら即答できるようにしておきましょう。

音読トレーニングの3つの注意点

音読トレーニングを効果的にするには、「英文を理解すること」「正しい発音で読むこと」「相手に伝えるつもりで音読すること」の3点に注意しなくてはいけません。順番に説明します。

・「英文を理解すること」

意味のわからない文章を何度も音読しても、使えるようにはなりません。先ほどの例で挙げたように、ネイティブによる無意識の音読でも、自分が話している内容(塩を取って欲しいと頼んでいる)は理解しています。

子どもなので、細かい文法事項の説明は不要です。しかし、少なくとも絵や動画を見ながら、どのような意味の文章なのかはきちんと理解する必要があります。「意味のわかる文章を音読する」ことが大切です。

意味がわからない単語が出てきたときは、お母さんがいきなり答えを教えるのではなく子どもに推測させるといいでしょう。前後の文脈や挿絵・映像を駆使して考えさせるのです。行間を読む力は日本語でも必要ですし、英単語力も伸ばすことができます。

・「正しい発音で読むこと」

めちゃくちゃな読み方では、聞いている相手に負担をかけてしまいます。ネイティブのような発音をする必要はありませんが、「英語らしい音(日本語にはない音)」に気をつけて読む必要があります。

例えば、日本語の母音である「あ」は1つだけです。一方、英語では「あ」に近い音は、“apple(アとエの中間)” “cut(のどの奥から出す)” “hot(口を大きく丸く開けて出すア)” “balloon(あいまいな母音のア)” のように複数あり、ネイティブはすべて使いわけています。

私が中学生の頃、このような発音練習の手間を省いて英語にカタカナの読み仮名をふらせる先生がいました。私はこの指導には大反対です。

例えば、pencilを読むときに、読み仮名をふると「ぺ・ン・スィ・ル」(4つの音)となります。ところが実際は、pen・cilの2つの音のかたまりで読まれます。

カタカナ読みを習慣づけてしまうと、オーバーラッピング(英語の音声と同時に読み上げる音読練習)のときに、音声についていけなくなります。読み上げる音の単位が、英語は少なくカタカナは多いからです。

このような理由から、本格的な音読トレーニングを始める前に、音声面の基礎を身につけておく必要があります。英語教室などで1年半ほど先生に発音を教えてもらった後、音読トレーニングを開始するのが理想です。

・「相手に伝えるつもりで読むこと」

現実の世界では、独り言以外は聞いている相手がいます。音読トレーニングは基本的に一人で行うものですが、目の前に聞いている人がいることを想定して音読することが大切です。

例えば「命令文にpleaseをつけると丁寧な依頼になる」と言われますが、実際はそれほど単純ではありません。言い方によっては、相手に断ることを許さない雰囲気になることもあります。

やさしい調子で“Open the window.”と相手にいうと、失礼どころかむしろ丁寧な依頼に聞こえます。登場人物の気持ちになりきり、相手がいるつもりで音読をすると、そのフレーズの表現力が豊かになります。

ここであらためて、ネイティブが無意識にやっている音読と、日本人の英語の音読を重ねてみましょう。ネイティブは伝えたいこと(意味がわかる文)を正しい発音(相手に伝わる発音)で、相手に対して(相手に伝えるつもりで)話しかけています。

つまりここで述べられている3つのポイントは、ネイティブの日常会話を再現したものです。これらのポイントを意識して音読トレーニングを続けると、より大きな効果を生み出すことができます。

どれくらいの期間で、どのように英語力は伸びるのか?

音読トレーニングは正しい方法で行えば、必ず効果はあらわれます。ただし、即効性はありません。個人差はありますが、早くても3か月、通常は1年以上継続しないと効果を実感できません。

我が家は家族で海外に住んでいた時期がありました。そのとき私は2人の子ども達に、真逆の英語教育をしました。

娘は中学校の授業以外に塾や英語教室には一切通いませんでした。中学校は日本人学校だったため、普通の日本の中学生とほぼ同じ環境でした。また、私は家で娘に英語を教えたことはほとんどありません。中1の頃、彼女の英語の成績は5段階で4か3でした。

一方、息子は海外のインターナショナルスクールに入学して、Year2~Year5(日本の小学1年~4年に相当)の3年半を過ごしました。当然、英語漬けの毎日です。私は息子に家で毎日英語を教えていました。入学当時の彼の英語力は、同級生と差がありすぎてどうしたものかと悩むほどでした。

唯一2人が共通して取り組んだのが、音読トレーニングです。娘は学校の教科書を中心に、息子はeラーニングの教材を中心に1年以上に渡り継続しました。2人ともほぼ毎日続けて、最後の方は完全に習慣化していました。

1年半後、娘は学校以外でまったく英語を習っていないのに、急に成績が伸びて5段階で5になりました。中3で英検3級に合格しましたが、成績表を見ると準2級も合格圏に届いていました。

息子は音読に取り組んでから、リーディング力が大幅に向上しました。文字を読むスピードが速くなり、難しい本にもチャレンジするようになりました。その結果、語彙力が大幅に向上して、それまで低迷していた成績が一気に平均を超えるようになりました。

娘も息子も1年以上音読を続けて、ようやく結果が出ました。時間はかかりますが、音読は正しい方法で継続すれば必ず結果がついてきます。

まとめ

英語教室や学校での英語の授業は、先生が教えてくれる貴重な時間です。しかし、圧倒的に時間(量)が足りません。

時間不足は自宅学習で補うしかありませんが、学習内容も追求したいです。それを可能にするのが音読トレーニングです。

ネイティブでさえも無意識の音読に膨大な時間を費やしています。日本人の子どもはふだん英語を使う機会がありません。そのため意識的に英語の音読を取り入れることが重要です。

最低でも3か月~1年くらい継続しないと結果が見えず、途中で嫌になることもあるでしょう。まずは、お母さんが音読の意義をきちんと理解しましょう。そして、子どもの音読をほめてあげたり、励ましたりして習慣化できるように支えてあげましょう。

子どもの英語力に変化が見られないと、音読の効果に疑問を持つこともあるかもしれません。しかし、効果を信じて継続すれば必ず子どもの英語力は向上します。

なお具体的な音読の方法については、「小学生から取り組む英語音読トレーニング(実践編)」で詳しく取り上げています。ぜひ、そちらも参考にしてください。

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