スポーツや楽器の練習など技能の向上には、基礎トレーニングは欠かせません。野球なら「素振り」ピアノなら「バイエルン」などが該当します。地味な練習ですが大切です。
英会話の練習にも似たような基礎練習があります。指示に従って、文章の一部を入れ替えながら瞬時に口頭で英作文をする「パターンプラクティス」です。
なぜ、パターンプラクティスが必要かについて説明します。
ある一つの英語表現を覚えたときに、それとまったく同じ文章を実際の場面で使える確率はかなり低いです。例えば、I have a dog. という表現を習ったあと、そのままこのフレーズを使うには、本当に自宅で犬を一匹飼って誰かに説明する場面を待たなければいけません。すべての条件が揃うのはなかなか厳しいです。
でも、誰かの家に遊びに行って「君、犬を飼ってるんだ!」という状況はあり得ます。または、犬ではなくてネコが複数いる状況に置かれるかもしれません。
そのときに、タイミングよくYou have cats. というためには、パターンプラクティスが有効です。パターンプラクティスは、覚えた表現をあらゆる文脈や状況に変換できるように鍛えるためのトレーニングといえるでしょう。
その際、合図の出し方を工夫しないと意味のある練習になりません。今回は私が教員の頃に教わったジェスチャーを使って「パターンプラクティス」をテンポ良く進める方法を紹介します。
簡単に出来て子どももゲーム感覚で楽しめるので、ぜひ取り入れてみてください。
Contents
何かと必要な人称のパターンプラクティス
英語の口頭練習を子どもにさせるとき、パターンプラクティスをやらせることがあります。パターンプラクティスとはターゲットの文章の一部を入替えて、できるだけ早く口頭で英作文する英会話の練習方法です。
その中でも最も多いのが、人称(I, You, He, She…など)を入れ替える練習です。いくつかその具体例を見てみましょう。
現在形(いつものこと形)のbe動詞の練習
I am a boy. がターゲット文(子どもに学ばせたいセンテンス)のとき、主語が変わることによってbe動詞(am, is, are)が変化することに慣れさせます。また、a boy/a girl/boys/girlsのいずれかに変えなくてはいけません。
子どもが男の子だったら、例えば次のように練習します。
I am a boy. You are a boy. He is a boy. She is a girl. We are boys. You are boys. They are boys.
具体的に人の写真を見たり、周囲の人達を見たりして練習すると「イメージ→英語に変換」できるようになります。
このときゆっくり紙に書いては効果がありません。テンポ良く口をついて出てくるまで練習するのがポイントです。
所有格の練習
パターンプラクティスでの人称は主格(I, You, Heなど)だけではありません。所有格の練習にも使われます。
ターゲット文:This is my book.
This is my book. This is your book. This is his book. This is her book. This is our book. This is your book. This is their book.
パターンプラクティスではしばしば人称を入れ替える練習が行われますが、そのときに問題になることがあります。それは「いかにテンポ良く人称を伝えるか」です。
ただでさえ単調なトレーニングなのに、間延びした合図を出すと子どもはすぐに飽きてしまいます。
主語を頭に思い浮かべながら適切な動詞を選ぶ練習が必要
「テンポ良く伝える」以外にも、実際にやってみると問題が生じることがわかります。例えばお母さん(A)と子ども(B)の間でこのようなパターンプラクティスをしたとします。
B: Okay.
A: My.
B: This is my book.
A: Your.
B: This is your book.
実はこのパターンプラクティスは効果的とはいえません。なぜなら、お母さんが答え(my, yourなど)を先に伝えてしまい、子どもはそれを繰り返すだけだからです。これでは何も練習になっていません。
また単数形のyourと複数形のyourの違いも伝わらず、子どもも戸惑ってしまいます。
理想的なパターンプラクティスにするには「イメージ」を与えて、それを子どもに英語に変換させなければいけません。では一体、どうやったらいいのでしょうか。
ジェスチャーで示せば解決する
これから紹介するテクニックは私が教員時代に指導教諭から教わったものです。家庭でも簡単に応用できるので、試してみてください。
- 1人称(I, my, me)は自分を指す
- 2人称(you, your, you)は相手を指す
- 3人称(he, his, him)は隣を指す
- 3人称(she, her, her)は隣を指す
*複数形は両手で表現する
*itを使わせたいときは指で表現する
テンポ良く
試しに先ほどのターゲット文であるThis is my book. のパターンプラクティスをジェスチャーで練習してみます。
お母さんはこのように示します。
子どもはそのイメージから「their」を頭に思い浮かべます。そして、“This is their book.”と間髪置かずに口頭英作文をします。すぐにお母さんは次の人称ジェスチャーを見せます。
もし子どもの反応が遅すぎたら、理解が充分でない可能性があります。もう一度復習してから、パターンプラクティスに移行しましょう。
始めのうちは「1人称単数→2人称単数→3人称単数→1人称複数→2人称複数→3人称複数」の順番で進めていきます。慣れてきたらランダムに切り替えます。テンポ良くやると子どもはゲーム感覚で頑張ろうとして、結構盛り上がります。
あなたの家族の名前など具体的な人を当てはめて練習するとより現実感のある練習ができます。パターンプラクティスはどうしても単調になりがちなので、いろいろ工夫をしてバリエーションをつけましょう。
「一回でできるように」と焦らずに数日に分けて少しずつ練習すると、子どもが飽きるのを防げるし効率の良い復習ができます。
まとめ
英語の基本センテンスを覚えたあと、いろいろな文脈で使用できるようにするためにパターンプラクティスは有効な練習方法です。その際、人称を入れ替えて基本センテンスをもとにして瞬時に口頭英作文をすることがしばしばあります。
このときに人称をジェスチャーで示してあげると「イメージ→英語に変換」の作業がスムーズにできるようになります。最初にお母さんと子どもの間で取り決めをしておけば、その後ずっと使えるので便利です。
パターンプラクティスは単調になりがちな練習です。テンポ良く短めに練習することを心がけましょう。具体的なイメージを交えたりしながら変化をつけて子どもが飽きないようにしましょう。.