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子どもに説明できますか? お店の看板OPEN/CLOSEDの英語の疑問

先日、何気なく近所を歩いていると喫茶店や花屋さんの入口の営業時間が目に留まりました。気になったのは時間ではなく、開店と閉店の意味で使われている「OPEN/CLOSE」の英語の間違いに気づいたからです。

「開店」は英語でOPEN、「閉店」はCLOSEDが正しい表記です。駅に行くまでの10分間、すべての店の入り口をチェックしたところかなりの店がOPEN/ CLOSEと間違った表記をしていました。

今回は、なぜOPEN/ CLOSEDと表記するのが正しいのかについて説明します。子どもと外出するときに説明してあげれば、歩きながらでも英語の勉強になります。また、今回の事例を通して、効率の良い文法学習についても説明します。

お店の営業看板のOPENとCLOSED

日本の多くの店の入り口に見られるOPENとCLOSEの表記は誤りで、正しくはOPENとCLOSEDです。文章にすると、We’re open.(我々は営業中です)とWe’re closed.(我々は閉まっています)となります。

ここで多くの人が疑問に感じるのは、なぜOPEN/CLOSEやOPENED/CLOSEDでは間違いなのかということです。その理由について、一つずつ説明します。

OPEN/CLOSEが間違っている理由とは

OPENは形容詞で「開いている・営業中の」という意味です。だから、そのままの形でまったく問題ありません。

一方、CLOSEを形容詞として使うと、発音は「クロース」となり意味は「近い」という意味です。つまり「閉まった・閉店中の」という意味はありません。

「閉まった」という形容詞がないので、「閉める」という意味の動詞CLOSE(発音:クローズ)を「閉められた」という形容詞のような形に変化させます。文法用語で説明すると、動詞を過去分詞形のCLOSEDにすることで形容詞の代用とします。

上記の理由から、開店中は形容詞のOPENを閉店中は動詞CLOSEの過去分詞形であるCLOSEDで表すのが正解です。

両方とも過去分詞形のOPENEDとCLOSEDではダメな理由

ここで一つ疑問が浮かびます。OPENには動詞として「開く」という意味があります。過去分詞形にすれば「開かれた」の意味になるので、いっそOPENではなくOPENEDにしたほうがCLOSEDと統一感が出ます。

しかし、実際はOPENEDは使いません。これには二つ理由があります。

一つ目は、OPENという立派な形容詞があるため、わざわざ動詞を変形させる必要がないからです。

二つ目の理由は、動詞としてのOPENには「開業する」という意味で使用されます。新規に開業する場合または通常の営業が開業するという意味です。一方、形容詞のOPENは開業中の状態を表しています。

最初に示した通り、お店の看板のOPENとCLOSEDは、We’re open. とWe’re closed.を省略したものです。

営業中・閉店中という状態を表現するためには、やはり形容詞のOPENと動詞の過去分詞形のCLOSEDが最適ということになります。

小学生から身につけたい英語文法の勉強法とは

「ずいぶんと細かい英文法の知識ばかりで、覚えられないよ」と嫌気がさしたお母さんもいることでしょう。私はこのような知識を暗記して欲しいとは、まったく思っていません。私が子どもに英文法を教えるときも、「〇〇は決まっていることだから暗記しなさい」という指示を出すことはほとんどありません。

このような細かい知識は、いわゆる枝葉末節です。このような一事例から、木の幹に相当する「考え方」や「法則」を見つけ出すことが本当の学習です。

たとえば、今回のOPEN/CLOSEDの学習から見えてくるのは「もともと立派な形容詞で表現できることは、わざわざ動詞の過去分詞形で代用することはない」という英語の考え方です。これだけをしっかりと理解すると、その他の事例にも応用できます。

高校の英語の時間、Don’t speak with your mouth full.(口いっぱいに食べ物を入れたまま話してはいけません)という英文を習いました。「full は filled にしない理由は何ですか」と私は先生に質問しました。

その先生は「そう決まっているから、覚えるしかない」と答えましたが、今考えるとお粗末な指導です。

きちんと学んだ先生なら、「full(いっぱいになっている)という立派な形容詞があるので、わざわざ動詞 fill(満たす)の過去分詞形 filledを使う必要がないからです」と答えたでしょう。

英語が苦手な人は枝葉末節を暗記しようとするから、英語の勉強が大変になり、応用が利かないことになります。そうではなくて幹となる根底の考え方を理解し、事例ごとに応用していくのが英語が得意になる勉強法です。

まとめ

街のお店の前を通ると、営業時間外の意味でCLOSEの看板を出しているところがありますが、英語としては誤りです。正しくはOPENとCLOSEDが正解です。

OPENをOPENEDにしない理由は、形容詞のOPENで用が足りるからです。動詞を過去分詞形にすれば確かに形容詞的に使えますが、本物の形容詞より優先されることはありません。この考え方をしっかりと理解すれば、個別の事柄にも応用させることができます。

街で見かけるたった一つの看板からも、このように大切な考え方を学ぶことができます。机に向かってワークブックに取り組むだけが勉強ではないことを頭に入れながら、子どもの英語教育をサポートしましょう。

中学受験の英語入試について

我が家には小学生の子どもがいますが私立中学の受験は考えておらず、割とのんびりと生活しています。日が暮れるまで校庭で遊び、帰ってから宿題をやる程度の毎日です。

一方、私の住む地域では教育熱心な家庭が多く、中学受験に向けて夜遅くまで塾に通う小学生が大勢います。夜9時頃の塾帰りの小学生を見て「小学生なのにすごいな」と感心していました。

先日何気なく塾のチラシを読んでいると、「中学受験で英語入試を採用する学校が増加している」という記事がありました。大学入試改革における英語4技能の総合評価と小学校での英語の教科化の影響です。

中学受験の英語試験について私はこれまでまったく知識がありませんでした。しかし、中学受験における英語入試についていろいろと調べてみたところ、いろいろと学びがありました。小学生の子どもを持つお母さんで中学受験を検討されている方に、私なりの見解を交えて解説します。

中学受験で英語入試を実施する学校は年々増加

首都圏模試センターの資料によると、2019年首都圏中学入試での「英語(選択)入試」(帰国生入試以外)の実施校は私立と国立を合わせて125校でした。5年前の2014年はわずかに15校だったことを考えると、大幅に増加しています。

*詳しい資料はこちらからダウンロード:https://www.syutoken-mosi.co.jp/blog/upload/a09cfcb8651fbddc970d8acb8d509148_7.pdf
(首都圏模試センター)

資料を細かく調べると、試験形態や英語を含めた科目数はバラバラです。それぞれの学校が独自の基準を設けて、試行錯誤している様子がわかります。基本的な問題を出す学校から、小学生向けとは思えないような難問を出す学校まで難易度もさまざまです。

中学受験の英語入試2つのタイプとは

中学受験の英語入試には大きく2つのタイプがあります。一つ目は、帰国子女向けの英語入試です。親の海外勤務に帯同し海外で教育を受けた子どもが、中学受験を機に帰国するケースを想定しています。

生徒募集要項にある「帰国生入試」はこれに該当します。出願資格には、海外在留期間〇年以上などの条件があります。

もう一つのタイプは、日本で生まれ育った普通の小学生が対象の「英語選択入試」です。英語を小学校の間学び、英語が得意科目なのでそれを活かして受験したい、という子どものために一般入試の一形式として英語を選択できるケースです。英語は選択科目であり、受験に必ず必要ではないところがポイントです。

この場合、英語以外の科目については学校ごとに異なりますが、下記のうちのいずれかに分類されます。

国語、算数、英語から2科目選択
算数と英語の2科目で受験
英語のみの1科目で受験

近年増加しているのは、上記のうちのいずれかによる一般入試における英語選択入試です。次に、超難関校や難関校での英語試験導入についての動向について調べてみました。

中学受験:超難関校では英語入試は未実施

「英語選択入試」を採用している中学校は、つい最近までは中堅・下位校だけでした。しかし、2017年から難関校でも徐々に採用されるようになり、2019年度入試では慶応湘南藤沢中等部でも「英語選択入試」がスタートしました。

一方、私のように中学受験に疎い者でも聞いたことのある御三家(麻布・開成・武蔵・桜蔭・雙葉・女子学院)においては、2019年時点では未実施です。

これらの超難関校に入学できるくらいの能力ならば、中学から英語を学んでも大学受験の頃には余裕で英検準1級レベルに到達するでしょう。そのためこれらの学校ではあえて英語を入試科目に入れる必要はない、と判断しているのかもしれません。

中学入試:難関校の英語入試のレベル

超難関校では様子見が続いていますが、難関校では少しずつ英語選択入試を導入する学校が増えています。そこで、実際の英語試験のレベルはどの程度のものなのかを調べてみました。

実際に英語入試問題がインターネット上に公開されている学校から、関西の難関校である「西大和学園中学校」の英語入試問題を参考にしました(2018年度英語重視型A方式筆記問題・東京会場)。

西大和学園中学校の英語入試問題の紹介

まず、問題用紙の表紙から度肝を抜かれました。目次や注意書きがすべて英語で書かれています。受験生はあらかじめ塾などで何が書かれているかを予習するのでしょうが、小学生向けの試験とは思えない仕様です。

・Section 1: Error identification 文法や語法の誤りを見つける問題(15問)

選択肢をよく見ると、「d 間違いがない」が含まれており、これが難易度を上げています。あいまいな文法理解では正答できない問題で、英検2級に合格できるくらいの英語力が必要です。

・Section 2: Choosing the appropriate words 文中の空欄に適した語句を選ぶ問題(15問)

過去形と現在分詞形の違い・関係代名詞の正確な知識・高度な語彙が求められます。全問正解する必要はないのでしょうが、私にもわからない単語が含まれている問題がありました。

・Section 3: Choosing the best response to the prompt 質問に対する適切な応答を選ぶ問題(10問)

前のセクションと比較すれば、やや易しめの問題ですが、あとに長文が控えているので悩んでいる時間はありません。

・Reading Comprehension  長文の内容一致問題(2問)

長文の内容一致問題が二つ(それぞれ5問)あります。英検2~準1級レベルのリーディング力が求められます。

正確さだけでなく、圧倒的な速読力が必要です。前半の問題で20分かけたとしたら、一つの長文には答える時間も含めて10分しかかけられません。

海外のインターナショナルスクールに3年半通った息子は、ハリーポッターシリーズを英語で読めますが、この問題を解かせたところ制限時間ギリギリでした(10問中9問正解)。日本で生まれ育った小学生にこの英語力を求めるとは、もう笑うしかありません。

西大和学園中学校の英語入試は相当難しい

私が過去問を見たところ、問題のレベルは英検2級相当の生徒なら6割くらいは正答できます。しかし、英検2級よりも難易度が高いと感じることが2つあります。

一つ目は解答時間が短いことです。相当な速読力が求められており、同じ文を繰り返し読み直す時間的余裕はありません。

二つ目は扱われるテーマや語彙レベルの高さです。長文ではハッブル宇宙望遠鏡やイギリスの児童文学作家のロアルド・ダールによる『チャーリーとチョコレート工場』がテーマです。これらの知識がなくても解答はできるでしょうが、ある程度の予備知識がなければ小学生でこの内容を理解できる子どもはかなり限られます。

難易度をまとめると、文法力は英検2級レベル、リーディングに関しては英検準1級に近い英語力がなければ高得点を取るのは難しいテストです。

結局、合否を決めるのは日頃の英語トレーニングの質と量です。こちらの動画セミナーで詳しく説明しています。

中学入試:難関校を本気で英語入試で受けるためのプラン

ここまで読んだほとんどのお母さんは「そんなの無理」と思ったことでしょう。実際、その通りで普通に英語を習ったくらいでは、小学6年生でこのテストに自信をもって解答できる子はほとんどいないでしょう。

さすがにこのレベルになると、生まれつきの頭の良さが絶対に必要です。もちろん相応の努力も必要です。ここまで読んでもチャレンジしたい、と思う小学生やお母さんのために一応、私なりのプランを考えてみました。

  • 小学6年生の夏前までには英検2級取得が最低ライン

難易度から判断すると、小学6年生の6月の英検までには2級を取得しなければなりません。ギリギリの合格ではダメで、あまり試験対策をしなくても余裕をもって合格できるくらいの英語力が必要です。

小学6年生の夏からは文法・語法の細かい知識を完成させつつ、多読と精読に時間をかけてリーディング力を向上させましょう。リーディングだけなら準1級に合格できるくらいの結果が欲しいです。

  • 小学3年生から本格的な英語学習をスタート

逆算すると、どんなに遅くても小学3年生になったらすぐに本格的な英語学習に取り組まなければいけません。中学レベルの英語は1年半~2年で完成(英検3級レベル)させましょう。

ワークブックに取り組むだけでは不充分です。早い段階から、多読に取り組むことも大切です。使用語彙数が限定された英語の本を日常的に読む習慣を身につけましょう。

英検2級の取得前後からは、語彙数を多少強引に伸ばすことも必要です。具体的には単語帳などを活用しながら、暗記に励む努力が求められます。

  • 一般教養も必須

先述のとおり長文で扱われる内容が高度なため、普段から幅広い分野に興味を持つことが大切です。テスト勉強だけでなく、図書館やインターネットなどを活用しながら自ら調べるような習慣が厚みのある知識や教養を作ります。

難関校の中学受験で英語を選択する場合は、相当な時間と努力が必要です。英語を選択できる入試が増えているとはいえ、複数校を受験することを考えると効率の良い方法とはいえない気がします。

英語が好きでたまらなくて何時間勉強しても苦にならず、抜群に英語力が伸びる生徒に限定されそうです。難関校の英語試験については、私はこのように感じました。

中学受験と英語学習の継続は可能か

中学受験の詳細については私は素人です。しかし、メディアなどの情報から相当大変であることは理解できます。受験科目としてではなく、子どもに英語を習わせ続けるかどうか悩むお母さんも多いかもしれません。

私は、中学受験の勉強をしながら、受験に必須ではない英語を学習し続けることは難しいと推測します。英語は教科の中でも成果が表れるまでに最も時間がかかる科目です。限られた時間のなかで、中学受験と英語学習を両立させるのは困難です。本格的な受験勉強に取り組むならそちらを優先させるほうが効率がいいのは間違いありません。

  • 本気で英語入試に絞る子ども以外はおすすめできない

このように考えると、難関校を志望する場合、あえて英語を選択する小学生はどのような子どもでしょうか。

何らかの事情で海外の学校に数年通っていて、英語の基礎がすでにありつつ国語や算数もできる生徒。
神童レベルで何を学んでもすぐに吸収してしまう生徒。
英語が好きでたまらなくて、大人がビックリするほど急激に英語力が伸びる生徒。

このような条件から「帰国生よりも該当者が少ないのでは」と私は感じました。

  • 中学校の意図がわからない

中学受験の対象のほとんどは私立なので、それぞれ学校の独自性があっていいと思います。しかし、中学入学前までにこのようなハイレベルな英語力を課して、その後の6年間をどのように教育するつもりなのか私のレベルでは理解できません。

このような難問を8割以上正答できる生徒なら、あと1年英語の授業を受ければほとんどの大学に合格できます。中学生で英検1級に合格も可能でしょう。残りの5年間、英語の教師は何か教えることが残っているのでしょうか?

私が無知なだけで、もっと高度な英語力を養成するプログラムがあるのかもしれません。いろいろと調べた結果、世の中には実にいろいろな学校があり、スーパーエリートの子どもがいるものだとあらためて感じました。

まとめ

中学受験において、帰国子女以外の生徒が受ける「英語選択入試」を採用する学校が急激に増加しています。最難関校では今のところ英語は導入されていませんが、一部の難関校には少しずつ広がっています。

難関校で実際に出題された過去問を見ると、小学生が受けるとは思えないほどのハイレベルな問題です。日本で生まれ育った普通の小学生が本気で英語で受験するとなると、努力だけでなく才能も必要です。

普通の中学受験を選択するなら、英語学習との両立は困難なのでやめたほうがいいでしょう。

それにしても入学前に英検準1級相当の英語力を持った小学生が、中学・高校の6年間でどのような英語教育を受けるのでしょうか。私にはわかりませんが、想像を超えた世界であることは間違いなさそうです。

小学生の英語文法の教え方と勉強法

もし、「何でもいいからスワヒリ語で話してみよう」と言われて、すぐにスワヒリ語を話し始める人はいないはずです。英会話教室で「積極的に英会話をしましょう」と講師が呼び掛けても子どもの反応が良くないのは、どうしていいのかわからないからです。

幼児や小学校低学年の子どもたちなら、無邪気に周囲のまねをして英語の歌を歌ったり講師のフレーズを口真似したりします。しかし、高学年の子どもは精神的に成長していて論理的に新しいことを覚えようとします。そこで必要となるのがマニュアルです。

英語学習におけるマニュアルとは文法のことを指します。子どもは適齢期にわかりやすい文法が与えられると、英語を理解しやすくなります。しかし、文法を習っただけでは英語を使えるようにはなりません。文法に沿って繰り返し英語を使うトレーニングが不可欠です。

しばらくトレーニングを繰り返すと、次第に文法をほとんど意識しなくても口が動くようになります。

そこで、英語を使えるようになるために、最初に子どもが覚えるべき基礎的な文法について具体的に説明します。また、どのようなトレーニングをすれば文法をほとんど意識しなくても英語を使えるようになるのかについても解説します。

小学4年生からは英語の文法が必要

個人差はあるものの、小学4年生から少しずつ文法学習を始められます。小学校低学年までの小さい子どもは文法を教えても理解できません。そこで実際の英語にたくさん触れながら英語の規則に気づかせる手法をとります。

例えば、小学校低学年ではI have a dog. やHe has a nice car. などの用例を多く口にすることで、自然と「主語(I, He)+動詞(have, has)+目的語(a dog, a nice car)」のパターンを覚えていきます。

このような習得方法は「体験的習得」と呼ばれており、小さい子どもはこの能力に優れています。文法用語を使わずに覚えるので一見簡単に思われますが、実際は言葉の規則性を発見・理解するまでに膨大な時間を要します。

子どもが「ママ」という一単語を発してから、「ママはご飯を作っている」など3語の文章で話せるまでの時間を思い出してください。日本語漬けの状態でも1年はかかったはずです。簡単に日本語が話せるようになったわけではありません。

子どもは10歳頃を境に、自然に言語を習得する能力(体験的習得能力)が急速に衰えます。しかし、それと引き換えに文法を理解する能力(論理的習得能力)が急速に発達していきます。この年齢からは文法を勉強しながら英語を学ぶのが最も効率的です。
論理的習得能力グラフ
グラフで示した黄色の部分は、ちょうど小学1年生から6年生までの範囲です。小学4年生を境に二つの異なる能力が逆転しているのがわかります。つまり、10歳になったら文法からのアプローチを取り入れたほうが英語を早く理解できるようになります。

もしお母さんがこのことを知らずに、小学校高学年の子どもに対して幼い子どもと同じような英語教育をしているなら今すぐ考え直しましょう。

小学校では文法を学ばせると英語嫌いにつながるとして、文法を教えない授業が進められています。一見、子どもに配慮しているように感じられますが、実はこの配慮こそが子どもが英語を嫌いにさせている可能性があります。

小学4年生の子どもの一部は、文法を教えたほうが英語を効率的に理解できる年齢になっています。それにもかかわらず、小学校では遠慮して低学年の子どもへのやり方で英語を教えています。

そのために、子どもはいつまでたっても英語を理解できずストレスが溜まります。そして、英語嫌いになっていきます。

発達段階に差がある児童一人ひとりに対応した指導方法を採用するのは現実的ではないので、学校の先生を責めるつもりはありません。現状では、文法に関しては各家庭で個別に対応するしかありません。

小学生の基礎英文法:語順と否定文・疑問文の作り方

文法の授業といっても、小学生に難しい文法用語を使って細かい知識を覚えさせるようなことは無意味なだけでなく英語嫌いを作る原因となります。

小学生に教えるべき文法は、わかりやすい英語のマニュアルです。このマニュアルは大きく二つの内容に分けることができます。一つ目は、英語の語順です。語順がわかれば英文を読んだり、単語をその順番に並べれば大まかな英文を作れます。

二つ目は、基本的な文の形である平叙文(へいじょぶん:単に情報を伝える文)・否定文・疑問文の作り方です。英語の語順は平叙文が前提となっていますが、実際は否定文や疑問文の形に変える必要が出てきます。

英語の語順を知り、さらに否定文や疑問文に対応できれば英語の基本を身につけられます。未来形・過去形・現在進行形・現在完了形などを将来学ぶときにも、基本が身についていれば理解するのはそれほど難しくありません。

参考書不要! 小学生にもわかる英語の語順(3文型)

英語の5文型は高校で学ぶ内容です。「S(主語), V(動詞), O(目的語), C(補語)」などの記号を使って教えられるので、堅苦しくてあまりいい印象を持っていないお母さんも多いことでしょう。実際、いきなり難しい文法の参考書や問題集に取り組んでもすぐに飽きてしまいます。まずは最低限の知識に限定して学習するようにしましょう。

小学生にはこれらの知識をかみ砕いて教える必要があります。最初に主語・動詞・目的語などの文の要素(文中での役割を示したもの)を理解させます。これがわからないと語順を理解することができないので、大切なポイントです。

文の中の役割

すぐには理解できないので、あまり詰め込まないように注意しましょう。次に、高校で習う5文型のうち主な3つの文型だけに凝縮させた文型を示します。
am/ is/ are の文目的語がない文
目的語ありI gave her a present. (私は彼女に誕生プレゼントをあげた)のような第4文型とWe call him Ken. (私たちは彼をケンと呼びます)のような第5文型は思い切って省略しました。3つの基本的な文型をマスターしてから、必要なタイミングで知識を増やせばいいからです。

3つの基本文型と例文をセットにしたカードはこちらからダウンロードできますので、子どもの目につく壁に貼り、いつでも確認できるようにしておきましょう。

基本的な文の形:平叙文・否定文・疑問文の作り方

単に情報を伝える文を平叙文(へいじょぶん)といいます。肯定文と呼ばれることもあります。次にnotなどを用いて「~ではない」「~ません」という意味の文を否定文といいます。また、何かについて「~ですか」とたずねる文を疑問文といいます。

先述した文型の動詞に着目してください。「am/ is/ are」を用いた文型とそれ以外の動詞を使う文型の二つに分けることができます。この動詞の種類によって、否定文と肯定文の作り方が変わります。

中学校で英文法を本格的に勉強するようになると、最初につまずくポイントは中学1年生の1学期に訪れます。それは「am/ is/ are」を用いた文とその他の動詞を用いた文について、それぞれ正確に否定文と疑問文を作れずに混乱するからです。

・am/ is/ are の否定文は「notを付け足す」

否定文の基本的な考え方は「notを動詞のうしろに付け足す」発想です。日本語では「~ではありません」のように文末に否定語を持ってきますが、英語の場合は動詞のうしろに否定語notを付け足すのが特徴です。

平叙文 否定文
She is tall. She is not tall.

・その他の動詞の否定文は、do にnotを付け足す

doは「する」という意味です。すべての動詞は結局何かをすることです。例えば「think(考える), make(作る), run(走る)」などの動詞に共通しているのは、何かを「する(do)」ことです。

このように考えると、これらの動詞の前に常に( )に入ったdoがあると解釈できます。

You (do) go to school. (私は学校へ行きます)

go(行く)の意味にはdo(する)が含まれるので、いちいち書かないけれども実はこの位置にdoがあると考えます。否定文の基本的な発想は「動詞にnotを付け足す」ことなので、次のような否定文が完成します。

平叙文 否定文
You go to school. You do not go to school.

notを付け足すのは見えている動詞(go)ではなく、普段見えていないdoの後です。気をつけましょう。

・三単現のs

英語を使う人の意識では、会話をしている「私(達)とあなた(達)」と「その他の人や物」を分けます。その他の人や物が主語になるときは、動詞に(-s, -es)を付ける習慣があります。絵で表すと下のようになります。

3単現のs

例えば、「彼はよい車に乗っています」は会話をしている私(達)とあなた(達)以外の人について話をしています。さらに、彼は一人で、いつものこと(現在形)を表現しています。このようなときは動詞driveにsを付けてdrivesにします。いわゆる三人称・単数・現在形のs(略して三単現のs)です。

He drives a car. (彼は車を運転します)

この文にももちろんdoが本来は含まれています。

He (does) drive a car.

先ほど動詞にsを付けるといいましたが、doにs(音の関係上es)が付いてdoesになっていることに注目しましょう。平叙文ではわかりきっているためにdoesを隠しますが、動詞に-s, -esを付けなければいけないので、drivesになっていると考えましょう。

ではnotを使って否定文にしてみましょう。動詞のうしろにnotを付け足すのが基本発想なので、次のようになります。

平叙文 否定文
He drives a car.

(=He does drive a car.)

He does not drive a car.

否定文を作るとき、He does not drives a car. とdriveにsを付けないように気を付けましょう(すでにdoesについているので不要です)。

・am/ is/ are の疑問文は「主語と動詞を入れ替える」

「am/ is/ are」の疑問文は、主語と動詞を入れ替えます。疑問文を作るときの発想は、主語と動詞の入れ替えです。最後にクエスチョンマーク(?)を入れます。

平叙文 疑問文
She is tall. Is she tall?

・その他の動詞の疑問文も「主語と動詞(do/ does)を入れ替える」

その他の動詞でも疑問文の作り方は同じです。つまり主語と動詞を入れ替えます。ここでの動詞とはdoまたはdoesを指します。

平叙文 疑問文
I (do) go to school. Do you go to school?
She drives a car.

(=She does drive a car.)

Does she drive a car?

Iから始まる平叙文を疑問文にするときはDo you ~?の形にするのが一般的です。「私は~ですか?」と相手に尋ねる文は少し変だからです(実際はよくあります)。

否定文と疑問文の作り方をまとめます。否定文は動詞のうしろにnotを付け足して作ります。疑問文は、主語と動詞を入れ替えて作ります。am/ is/ are以外の動詞には本来do (またはdoes)が存在していることを理解するのがポイントです。

語順と平叙文・否定文・疑問文がわかれば英語が得意になる

英語の語順と平叙文・否定文・疑問文について理解することが最も大切です。これさえできれば文法学習の最大の山を乗り越えたも同然です。なぜなら基本的なルールさえ理解してしまえば、高度な英語表現にも簡単に応用できるからです。

例えば中学1年生で助動詞canを学ぶとき、doやdoesの位置に置き換えれば否定文や疑問文に応用できます。

I (do) speak English. I can speak English.
I do not speak English. I cannot speak English.
Do you speak English? Can you speak English?

私は英語が苦手な中学生の指導経験が多数ありますが、彼らのほとんどは基本の語順と平叙文・否定文・疑問文をきちんと理解できていません。理屈を理解せずに暗記しようとすると混乱するケースが多いので注意しましょう。

丸暗記でAre you ~?とかDo you ~?と覚えてしまうと、Are you go to school? という誤った文を作ってしまいます。一度変な理解をしてしまうと、あとで正しく覚え直すのは大変なので最初が肝心です。

すでに数年程度の英語学習歴がある子どもにも、語順や否定文・疑問文の作り方を教えることで散らかった知識が体系的に整理されます。それまで何となく口にしていた英語の語順がきちんと論理的に説明できるのでプラスの効果が生まれます。

文法の理解が早く正しくできるようになると学校のテストで点数を取ることは可能になります。しかし、それだけでは本当に英語を使えるようにはなりません。次に、習得した文法の知識を使って英語を使える(話せる)ようになるための方法を説明します。

英文法を知識で終わらせないための学習方法

英語上級者のように、文法を意識しなくても英語がスラスラと口から出てくるためのトレーニングを紹介します。

学校や英会話スクールで習った英文を材料にして家庭でトレーニングをしてみましょう。例えば、My favorite color is blue.(私の好きな色は青です)という表現を習ったら、これを材料にして文型を確認させます。

文型を確認するときは壁に貼ってある基本3文型のカードを見ながら学習を進めます。最初に動詞を確認させます。この場合はisが動詞です。青い色鉛筆でisを○で囲みます。

その次に主語を確認します。子どもは主語を1語だけと思い込んでいるので、すぐには答えられないかもしれません。そこでヒントでMy favorite colorに鉛筆で下線を引いてあげます。そうすると全体で主語であることが理解しやすくなります。これを赤で囲みます。
my favorite color is blue.

最後にblueという言葉がせつめい語なのか、それとも「in, on, atなど」なのかを考えさせます。正解はせつめい語です。この場合、isという動詞は左側の主語と右側のせつめい語が同じであること(イコール)を意味します。

ここまで細かく説明すれば、それぞれの単語がどういう意味でなぜその順番に並んでいたのかが理解できます。そうするとスッキリした状態で、英文の暗唱に気持ちを集中させることができます。

あまり細かいところまでやりすぎると混乱する原因になります。とりあえず学校や英会話スクールで習った基本文の理解だけにとどめておきましょう。

・否定文と疑問文も作ってみる

否定文と疑問文も作ってみましょう。否定文は動詞のうしろにnotを付け足すだけなので、My favorite color is not blue.で完成です。また、疑問文は主語と動詞を入れ替えてIs your favorite color blue?となります。myをyourに変えるのがポイントです。

否定文や疑問文を作るときは、紙に書かずに口頭で答えさせましょう。紙に書かせるとスペリングを正確に書けなければいけないので、英作文に集中できません。一度に複数の作業をさせると効果が低下するので、口頭英作文が最適です。

このように、たった一つの基本文だけでも、語順と否定文・疑問文の作り方までを繰り返し学ぶことができます。

ほとんどの英文が3つの文型に収まることがわかれば少しずつやる気が出てきます。一度考え方を伝えれば、自分で解決できないときだけ質問するようになります。そのときは壁に貼った文型のカードを確認しながら教えてあげましょう。

英会話につなげる小学生の文法学習

文法や語法を習ったときは、必ず学習事項を使った英文を暗唱することが必要です。実際の使用例を何度も声に出して言うことで、文法を筋肉に覚えこませます。

例えば「~が得意である:be good at ~」を習ったら、これを使ったHe is good at math.(彼は算数が得意である)という例文を暗唱します。やり方は次の通りです。

・英会話につなげるための文法学習ステップ1

まず、この文章の文型を確認します。「主語 is せつめい語」のパターンです。得意は「良い」と置き換えられるので、goodを使用しています。日本語がどのように英語に変えられるのかを理解すると言語感覚が磨かれます。得意な物を示すときは、atを使います。

ここまでをきちんと理解できたら、英文を見ながら3回音読しましょう。回数を増やしすぎると、意味を無視してお経を唱えるような状態になってしまいます。3回だけでいいので、覚えるつもりで集中します。

・英会話につなげるための文法学習ステップ2

次に何も見ないで3回音読してみます。このときに表現を忘れたり口ごもったりしたら、ステップ1からやり直します。

・英会話につなげるための文法学習ステップ3

最後に日本語訳を見ながら、日本語のどの部分がどのように英語に置き換えられているのかを確認しながら、英文を音読します。例文では「得意」の意味を「good」で表しているのが特徴です。これも3回音読します。

英会話練習の中心はステップ1~3をひたすら繰り返すことです。英文そのものを暗記することが目的ではありません。まったく同じ表現を使用する機会は、めったに訪れないからです。

それよりも「得意である」をgoodで表現できるとか、得意な分野や対象をatのうしろに置くなどのことを脳に染み込ませることが大切です。何気なく音読を繰り返しても効果はほとんどありません。

英会話に使える表現を瞬時に出せるために練習していることを忘れないでください。文型や文法を筋肉が覚えるくらいまで繰り返すと、少しずつ英語を話すことができるようになります。

英語を流ちょうに話す人は、文法を意識していないのではありません。文法を意識しながら数多くの練習を繰り返した結果、ほとんど意識せずに話せるようになっているだけです。文法は知識で終わらせるのではなく、使いこなせてこそ意味があります。

英語の文法を学ぶときに、ひと言も声を出さずに完了してはいけません。理屈を理解したらすぐに口頭練習を繰り返すことが大切です。もし、あなたの子どもが静かに英語を勉強していたらそれは間違った学習方法なのでアドバイスをしてあげましょう。

英語の総合力をつけるには、こちらの動画セミナーがオススメです。

まとめ

小さい子どもは体験を通して英語の語順などの文法を自然と身につける能力を備えています。しかし、10歳頃を境にしてその能力は衰えます。代わりに論理的に言語を習得する能力が急速に高まります。

このことから小学4年生からは少しずつ文法を学んだほうが、効率よく英語を身につけられることがわかります。初めに学ぶべき文法とは、基本的な文型(語順)と否定文・疑問文の作り方です。

また、これらの文法を学んだだけでは単なる知識で終わってしまいます。大切なのはこの知識を使って実際に口を動かして英文を暗唱しながら筋肉に文法を覚えこませることです。

「文法を意識するから英会話ができない」という間違った認識は捨てましょう。英語を流ちょうに話す人は学んだ文法を使って練習を繰り返した人です。

これから長い時間をかけて子どもたちは英語を学んでいきますが、お母さんからもときどき文法学習の意義を伝えてあげましょう。

小学生で英検3級に合格!おすすめ問題集と効果的な勉強法

小学生で英検3級を目指すことについて、これまで私はあまり肯定的ではありませんでした。中学校からの英語の準備として考えた場合、4級まで取得していれば充分だと考えているからです。「親が英検3級を子どもに強制する」悪いイメージを抱いていました。

しかし、実際に合格した子どもやお母さんと話をしてその認識を改めました。意外にも子どもが前向きに3級取得に向けてコツコツと英語学習に取り組んでいたり、お母さんもその様子を見守りながら励ましているケースのほうが圧倒的でした。

たしかに小学生の間に英検3級に合格するには、能力だけでなく子どもの前向きな気持ちが不可欠です。母親が無理やり子どもに勉強させても合格は難しいでしょう。

私が推奨するのは親子受験です。学校を卒業してから英語から遠ざかっているお母さんも一緒に子どもと勉強するのです。親子で共通の目標をもって何かに取り組むことは、思い出作りにもぴったりです。

そこで、「どんどん難しい英語にも挑戦したい」という子どもを持つお母さんのために、小学生の間に英検3級に合格するための知識と具体的な勉強法について解説します。

英検3級:小学生の合格率と受験者数の推移

小学3年生からの英語必修化に伴い、小学生の英検志願者数は堅調に増加しています(2016年度約37万人)。その背景には、センター試験が廃止され英語については民間資格や検定の導入されたり、中学受験で英検資格保持者が優遇されるなどの状況もあるようです。

英検が合格率を開示していた最後の2013年度資料によると、英検3級の小学生の合格率は約53%(志願者数27,781人に対して13,767人が合格)でした。大まかな合格ラインは正答率6割といわれています。

当時よりも多くの小学生が受験していると仮定すると、毎年約1万5千人もの小学生が英検3級に合格していることになります。これらの統計から、計画的に英語学習を進めていけば小学生でも英検3級に合格できることがわかります。

英検3級の英語レベルについて

英検3級のレベルは大まかにいえば「中学校3年間で学習する英語」です。中学3年生で学習する主な文法事項を列挙してみます。

受動態
現在完了形
現在分詞・過去分詞
間接疑問文
関係代名詞

かつて「make(原形)/ made(過去形)/ made(過去分詞形)」などと不規則動詞の活用を暗記したと思いますが、それがちょうど中学3年生の内容です。受動態(~される)や現在完了形(~したところだ)を学習するときに必須の知識です。

文法の節(せつ)の概念が試される間接疑問文や関係代名詞は中学生にとっても理解に時間がかかる分野です。小学生で合格するためには、長期的な本腰を入れた学習が必要であり一夜漬けで合格することはありません。

品詞・修飾関係を理解できるかどうかが鍵

英検4級に合格したら、その勢いでそのまま継続して英語学習を続けましょう。子どもが英検3級の学習内容へ準備ができているかどうかのバロメーターは「品詞を理解できるか」と「修飾関係を理解できるか」の2点です。

英語の品詞は10種類に分類できます。その中でも少なくとも4つを理解できないと、英検3級に向けての学習に取り組めません。大事な4つの品詞とは「名詞・動詞・形容詞・副詞」です。子どもにもわかるように説明すると次のようになります。

品詞 働き 例
名詞 人や物の名前を表す desk, teacher, tree, John
動詞 人や物の動作を表す have, go, make, run
形容詞 名詞を修飾したり説明する beautiful, happy, tall
副詞 動詞・形容詞・他の副詞を修飾 slowly, always, tomorrow

品詞の理解に欠かせないのが修飾の概念です。修飾とは「ある語句が他の語句の意味を詳しく説明すること」です。小学校3・4年生くらいから国語の授業で修飾と被修飾(修飾される)との関係を学ぶようですが、これは英文法を理解するときにも大いに役に立ちます。

例えば、「やせた男が急ぎ足で歩いていた」という文では「やせた」は「男」を修飾しています。同様に「急ぎ足で」は「歩いていた」を修飾しています。

あなたの子どもが品詞を区別できて修飾関係を理解できる状態なら、英文法を少しずつ学ぶ準備が整っているといえます。もしこれらの理解が苦手な場合は、無理に英文法を教えると英語嫌いになってしまうので延期したほうがいいです。

小学生で英検3級を取得するためのロードマップ

仮に小学6年生で英検3級合格を目指すとしたら、どのような計画で進めていけば実現するのかを見てみましょう。
英検3級合格ロードマップ能力や時間配分などにより個人差はありますが、おおむねこのようなスケジュールで進めていけば英検3級に合格できます。

ここで「英検3級に合格するために6年間も費やすのは非効率的」と考えるお母さんがいても不思議ではありません。なぜなら、中学生になってから英語を学習しても中3で多くの生徒は英検3級に合格できるからです。

しかしそのように判断するのは早計です。中学校になると他教科の学習量の増加や部活動などの関係で、英語の音に慣れる時間が思うように取れません。カタカナ読みのまま英検を取得してもその後伸び悩むのはあきらかです。

資格取得に必要な期間だけを見れば非効率的かもしれませんが、小さい頃から正しい発音・アクセント・イントネーションを充分に積み重ねた経験は決して無駄ではありません。

文法事項に関しても同様です。例えば「to 不定詞」の用法を暗記しただけの状態と、「to 不定詞」を使用して瞬時に口頭で英作文できる状態では、同じ英検3級でもコミュニケーション能力に大きな開きがあります。

小学生の間に英検3級を目指すなら、小手先のテクニックにとらわれずに取り組むことを強く推奨します。

本格的な英語力を伸ばすトレーニングはこちらで紹介しています。

英検3級の出題内容

英検3級の1次試験は筆記試験とリスニングです。それに合格すると2次試験のスピーキングテストを受けます。英検4級まではスピーキングテストは合否に関係ありませんでしたが、3級以上は合否にも関係してくるので対策が欠かせません。

2017年度第1回の検定から、英検3級と準2級の筆記試験にもライティング(英作文)テストが導入されました。これにより3級以上は4技能(リーディング・ライティング・リスニング・スピーキング)についてバランスよく試されることになりました。

英検3級1次試験(筆記)

1次試験の筆記試験はマークシート方式の語法・読解問題とライティング(英作文)に大きく分かれます。

問題 形式 問題数
1(マークシート) 短文の穴埋め問題 15問
2(マークシート) 会話文の穴埋め問題 5問
3(マークシート) 長文の読解問題 10問
4(記述) 英作文問題 1問

・短文の穴埋め問題

短文または会話文の中の( )に入る適切な語(句)を選択肢の中から選びます。( )の前後の内容を理解できることがポイントです。

・会話文の穴埋め問題

ダイアローグ(対話)形式の会話文中の( )に入る適切な語句や文を選択肢から選びます。

・長文の読解問題

A, B, C 3つの英文を読み、内容に関する質問の答えを選びます。Aは「お知らせ・掲示」、Bは「Eメールや手紙文」、Cは「説明文」の内容です。BとCは文章量が多めなので、普段から長文に慣れていないと得点できません。

・英作文問題

与えられたトピックについて、自分の考えと理由二つを英語で書きます。語数の目安は25~35語です。一見難しそうに見えますが、コツをつかめば対策は容易です。実際の学習方法は後述します。

英検3級1次試験(リスニング)

リスニングテストは3つのパートで構成されています。

問題 形式 問題数
第1部 会話の応答文を選ぶ問題 10問
第2部 会話の内容に関する選択問題 10問
第3部 文の内容に関する選択問題 10問

・会話の応答文を選ぶ問題

イラストに関する二人の対話を聞き、応答としてふさわしいものを選びます。会話と選択肢は1回しか放送されません。

・会話の内容に関する選択問題

二人の対話を聞き、内容に関する質問の答えを選びます。会話と質問は2回ずつ放送されます。選択肢は問題用紙に書かれています。

・文の内容に関する選択問題

35語前後の英文を聞き、内容に関する質問の答えを選びます。英文と質問は2回放送されます。選択肢は問題用紙に書かれています。

英検3級2次試験(スピーキング)

イラスト付きの英文が書かれたカードを使用します。英文を20秒間黙読したあと、音読するように指示されます。続けて英文に関する質問が1つ、イラストに関する質問が1つ、あなた自身に関する2つの質問への解答が求められます。

普段から音読する習慣を身に着けていれば落ち着いて読めるはずです。質問への解答は、疑問詞に注意を払い「何について聞かれているか」を正しく把握することがポイントです。

上記のように英検3級の問題範囲は広範囲にわたるので、直前になってあわてて取り組んでも合格は不可能です。最低でも1年程度の時間をかけてコツコツと学習を続けましょう。

小学生が英検3級に合格するための問題集と勉強法

小学生が独学で英検3級レベルの英語を学ぼうとしても高確率で失敗します。中学校で習うような内容を基礎から教えてくれる英語スクールやオンライン英語のサービスなどを利用して、先生から英語を習うのが一番です。

授業で習った内容をきちんと定着させる復習として、家庭で問題集に取り組むようにしましょう。文法の基礎を理解するための問題集と4技能と関連させながら発展させる問題集の2種類を用意しましょう。

試験直前の2か月前からは過去問を中心に勉強を進めます。過去問に取り組む理由は文法の範囲が限定されない問題に慣れることです。普通の問題集では「現在分詞」などの項目でまとめられているため解答が予想できてしまうことが難点です。

これらの学習の流れを5つのステップにまとめたものが下の図です。
英検3級対策5ステップ

ステップ1:英語の先生から文法を教わる

現在通っている英会話スクールで英検3級の講座があれば受講しましょう。もし通える範囲に英検の講座があるスクールがなかったり、何らかの事情で子どもの送迎が困難であればオンライン英会話を利用する方法もあります。

繰り返しになりますが英検3級の出題内容は中学校レベルなので、小学生が独学でテキストから学ぶのはほとんど不可能です。理解が難しい部分を知り尽くしたプロの先生から教えてもらうのがベストです。

英検の筆記問題に限定すると日本人講師のほうがネイティブ講師よりも優れています。文法の問題を日本人にわかりやすく解説できるのは、同じ日本人の経験者のほうが圧倒的に有利だからです。

英文法の基本を教わったら、すぐに家庭での復習に取り組みます。宿題等が出されるなら先生の指示に従ってください。もし問題量が不足していたり理解が今一つなら、もう少し家庭学習を充実する必要があります。

ステップ2:教わった文法の理解(復習)

英文法を復習するときの問題集として私がオススメするのは『小学生のための英検3級合格ドリル』(旺文社)です。各Lessonの冒頭では漫画でターゲットの文法事項のエッセンスを説明しているので、小学生でも取り組みやすいように配慮されています。

細かい字で書いてある部分にも大切な情報が詰め込まれているので、すべて読むようにしましょう。英語スクールなどの先生から文法を習ったら、できるだけ間を空けずに該当部分をこの問題集で復習するようにしましょう。

もしこの段階で子どもが理解できない部分が多いようでしたら、お母さんが教えてあげましょう。それが難しいなら英会話スクールの先生に質問してクリアする必要があります。理解があいまいなまま問題演習を繰り返しても効果はありません。

ステップ3:該当する文法の問題演習(4技能と関連させる)

『小学生のための英検3級合格ドリル』で身に付くのは、知識としての文法です。この知識を4技能と関連付けながら、実際に応用するトレーニングが必要です。そのための問題集として『いちばんやさしい英検3級』(新星出版社)を使用しましょう。

最大の特徴は、各学習事項について必ず4技能と連携させているところです。文法の解説の後、以下のような6つのステップと最後のテストで構成されています。

STEP 1 単語トレーニング
STEP 2 リスニングトレーニング
STEP 3 会話トレーニング
STEP 4 モノローグトレーニング
STEP 5 単語・イディオム & ライティングトレーニング
STEP 6 ライティングトレーニング
Challenge 1 筆記問題
Challenge 2 リスニング問題

これらのステップにきちんと取り組むと、英語の総合力を底上げできます。とくにステップ6のライティングは英検3級の出題形式そのものなので、毎回これに取り組めば得点源にすることができます。

ライティングでは質問されたことについて、自分の意見を述べます。そしてその理由を2つ挙げます。最後にこれらの文章を25~35語でまとめます。このパターンに慣れておけば、英検3級のライティングは簡単に乗り切れます。

この解答パターンを応用すれば、将来英検準2級以上のライティング問題でも役立ちますし、スピーキングテストでも自分の意見を筋道を立てて伝えることができるようになります。

・『いちばんやさしい英検3級』の使い方

『いちばんやさしい英検3級』は問題集としては充実していますが、文法の解説は簡略化されていて小学生が読んでも理解は難しいです。かならず『小学生のための英検3級合格ドリル』で理解をしてから『いちばんやさしい英検3級』に取り組みましょう。

全部で4章ありますが、第1章は基本表現や文法の基礎(品詞など)について扱っています。まず最初に第1章を仕上げてしまいましょう。子どもの理解があいまいなら、英会話スクールの先生やお母さん・お父さんのサポートが必要です。

第1章が終了したら、先生から教わった学習箇所を見つけて取り組んでいきましょう。当然、問題集の順番どおりには進みませんので、勉強したところは記録をつけておきましょう。最終的にすべてカバーできたら1周目は完成です。

1周目が終わったらもう一度最初から今度は順番通りに問題集に取り組みましょう。2週目では音読トレーニングに集中すると効果的です。音読のやり方について以下詳しく説明します。

ステップ4:モノローグの音読トレーニング

2週目に問題集に取り組むときは、『いちばんやさしい英検3級』STEP 4のモノローグを利用して音読練習に力を入れましょう。モノローグとは「一人の人物がひとりごとの形式で話をすること」です。その他のステップは飛ばして大丈夫です。

このモノローグにはテキストと音声、そして日本語訳があります。発音やイントネーションに気を付けながら何度もテキストを声に出して読みましょう。知らない単語があれば覚えてください。

また、CD音声を追いかけるようにして音読(テキストを見ないで)する「シャドウイング」と呼ばれる音読練習にも挑戦してみましょう。音だけを追わずに意味も頭の中でイメージするように気を付けるのがコツです。

最後の仕上げとして、日本語訳を見ながら英文を声に出してみましょう。また、CDを利用して一文ごとに休止を入れながら、紙に聞こえた英文を書きとる「ディクテーション」はリスニング力を高める効果があります。

音読練習は野球でいえばキャッチボールや素振りに相当する「基礎トレーニング」です。漫然と読むのではなく、それぞれのステップで伸ばしたい部分を意識しながら取り組みましょう。音読についての詳細は別の記事「小学生から始める英語音読トレーニング(実践編)」で扱っているので参考にしてください。

ステップ5:過去問に取り組む

ほとんどの文法の問題集は、文法の学習事項別にまとめられています。例えば、現在完了形の項目では、現在完了形を問う問題が集められています。文法を初めて学習するときはこれで問題ありません。

しかし、英検では分野別に出題されません。ランダムに広範囲にわたる問題が出題されても対応できなければいけません。そのための訓練として最も優れているのが英検の過去問です。

過去問は英検ホームページから過去3回分まではダウンロードできるようになっています。もし、それより多くの問題に取り組みたければ『英検3級過去全問題集』(旺文社)を購入しましょう。

過去問の勉強法ですが、本来の解答時間は無視して徹底的にわからないところを潰すつもりで取り組みましょう。実例を挙げながらポイントを説明します。

A: Sam, I’d like you (   ) Susan with her math homework.

B: Sure.

1  help    2  helped    3  be helped    4  to help

*2018年度第2回検定一次試験(3級)より引用

正解は4のto help です。この問題に正解しても間違えても、丸つけをして終わりにしてはいけません。

なぜ、4が正解なのか理由を説明できるでしょうか。また、他の選択肢はなぜ( )に入れられないのかを説明できるようにしましょう。

次にI’dの部分に省略形が用いられていますが、何が省略されているか答えられるでしょうか(答えはwould)。I would like to doとI would like you to doの違いは説明できますか。また似たような表現I want you to doはすぐに思いつきますか。

さらにhelp+O+with…で「Oを…の面で手伝う」という意味になることを知っていますか。

これらのすべてにきちんと答えられたら、スラスラと読めるまで音読してみましょう。最後に英文を見ないで英文を書いてみましょう。

このようにたった一つの問題でも、正解以外の選択肢について考えたり、解答に直接関係のない表現を覚えたりすることがとても大切です。普通の解答時間の10倍以上時間がかかりますが、気にせずそのまま進めましょう。

このようにして密度の濃い学習を習慣づけると、英検3級で終わるような実力ではなくすぐに準2級を狙えるような本物の英語力を身につけることができます。英語が得意な人は自然にやっていることなので、まねしてみましょう。

2次のスピーキング対策にはオンライン英会話を取り入れよう

スピーキング練習は普段の音読学習などで対応できます。しかし、スポーツに試合が必要なように、スピーキングも練習だけでなく「試合」感覚が必要です。

もしネイティブと会話する機会がない場合は、オンライン英会話のサービスを利用するといいです。費用を抑えつつ20分程度の会話練習ができます。子どもの送迎の負担がないので、一度試してみる価値はあります。

外国人と英会話をする経験を積んでおくと、英検2次試験でも緊張することなく落ち着いてスピーキングテストを受けることができます。

特に講師が質問するときに「何について聞かれているか」をきちんと聴き取るように注意し、その質問に正しく回答することがポイントです。特にWh-やHowから始まる疑問文は、具体的な答えが必要なので会話練習をして素早く反応できるようにしましょう。

一夜漬けでスピーキングテスト対策をしても、口ごもって何秒も沈黙してしまう結果となります。日頃からの慣れが大切です。

英検3級は3回受験

英検3級からは4技能を強く意識して英語学習に取り組むことが求められます。音読を中心に据えながら、弱いところを克服するように子どもをサポートしてあげましょう。

小学生の間に英検3級に合格したければ、小学5年生の1月に実施される英検に申し込みをしましょう。そうすれば、6年生の10月の試験までに合計3回受験することができます。

不合格でも気にせずに、各技能のバランスを見ながら得意・不得意を知ることが大切です。平均的にすべての技能が上がるのが理想ですが、実際は偏りが生じるのが普通です。得意なところはさらに伸ばしつつ、苦手なところにも力を入れるようにしましょう。

不合格だったとしてもスコアが少しずつ伸びていれば、成長している証拠です。頑張った子どもをほめてあげるようにしましょう。もし小学生のうちに合格できなかったとしても、中学校で挽回するチャンスはあるので心配無用です。

まとめ

小学生の間に英検3級に合格するのは不可能ではありません。しかし、ハードルが高いのも事実です。

親が子どもの発育段階を無視して文法学習を押し付けるのはやめましょう。もし、品詞や修飾関係が理解できているようだったら、少しずつ英文法を学ぶようにしましょう。

英検3級では4技能についてバランスよく問われます。まずは日本人の英語の先生を見つけて、初歩から文法を教えてもらうようにしましょう。そして、家庭では復習と4技能を意識した演習に時間をかけることが大切です。

特に音読トレーニングは英語の基礎練習になるものなので、時間をかけてじっくりと取り組むようにしましょう。試験2か月前からは過去問を解きながら、密度の濃い学習を心がけましょう。

英検は年3回受験できるので、合格したい時期から逆算して3回は受けるようにします。結果に一喜一憂せず、苦手分野の発見や得意分野をさらに伸ばす指針に活用するようにしましょう。

子どもが「英語好き」の状態で、英検3級合格に向けて学習できるように、お母さんは励ましてあげましょう。合格したときは家族みんなでお祝いしてあげれば良い思い出になります。

小学生の子どもが英語を話せるようになる方法とは

「英語をしゃべるとバカになる」という話を聞いたことがあるでしょうか。英語を話すには高度な情報処理が必要です。脳がその作業に追われてしまい、肝心の話す内容がおろそかになってしまうらしいのです。そのため話す内容のレベルが低下して「バカ」になるというものです。

私も海外で英語を使う仕事をした時期がありましたが、苦労したのが夕食の席でした。お酒を飲みながらのコミュニケーションは予想以上に大変でした。酔うと簡単な単語さえも思い出せずに、言いたいことの半分も言えなくなってしまいます。英語を話すと脳に負担がかかっていることが実感できました。

英語教育に関心のあるお母さんなら子どもには「英語ペラペラ」になって欲しいと思うはずです。しかし現実、英語ペラペラの小学生はほとんどいません。なぜなら、英語を話すのは小学生では難しすぎるからです。

ただ、英会話の仕組みと難しい部分を意識すれば、対策がハッキリと見えてきます。今回の記事では、小学生でもスピーキング力を伸ばせる有効なトレーニング法を紹介します。

英語を話す人の頭の中はどうなっているか

私たち日本人にとって日本語は母国語です。「言いたい何か」を頭に思い浮かべれば瞬時に日本語の文が口から出てきます。このとき日本語の文法を意識することはありません。人間の本能により文法を自然と身につけた結果です。

この能力は7歳くらいで急速に衰え、たとえ外国語の環境に移動しても日本語を覚えたようには自然と身につけるのは困難になります。外国語を身につけるためには勉強をするしかありません。

もちろん、子どもの中にはネイティブではないのに英語をスラスラと話せる人がいます。彼らを見ていると「なぜあんなにスラスラと英語を話せるのだろう」と不思議に思うかもしれません。でも、頭の中の活動を細かく見ていくと、決して簡単に話しているわけではないことがわかります。

ここでは「英語を話す」という行為を段階に分けて図で説明します。このプロセスを正確に理解したあとに、「小学生でも英語をペラペラと話すことができるか」について考えてみます。

第1段階:状況を把握し、言いたいことを思い浮かべる

まず、言葉に出す前に「状況」があります。例えば「レストランで友人と食事をしているシチュエーション」です。最近起きた出来事や考えたことなどをお互い話しながら、ランチを楽しんでいる状況です。

状況が明確になると、使用する英語の丁寧さが決まります。誰かの了解を得るなら、かしこまった場では“Would you mind~?”を使用し、友達なら“Is it OK if~?”で充分です。話すときの状況は英語表現に影響を与えるので大切な要素です。
speaking1

そして次に「言いたい何か」を頭に思い浮かべます。この時点ではボンヤリとしたイメージのです。例えば、次のようなことが該当します。

目の前にいる友人はグルメ好きである。そういえばここに来る途中、レストランの前にオープン待ちの長い行列ができていた…。そうだ、この話を友人に教えてあげよう!

この時点では「言いたい何か」は言語化されていません。イメージと感情が合わさったボンヤリとしたものです。次の第2段階で、このボンヤリとしたものを言語(英語)で伝えます。

第2段階:単語力と文法力

ではこのボンヤリとしたイメージを言葉に変えるにはどうしたらいいのでしょうか。それには2つの要素が不可欠です。それは「単語力」と「文法力」です。すでに説明したとおり、8歳以上の日本人は単語も文法も自然に身につきません。学習が必要です。
speaking2

先ほどのイメージを日本語にすると「ここに来る途中そのレストランのそばを通ったら、オープンを待つ長い行列があった」となります。この文を作るために必要な主な単語を挙げてみます。

walk past:~のそばを通る(歩く)
on one’s way here:ここへ来る途中
a long queue (line):長い行列
wait for:~を待つ

次にこれらの単語を組み立てるために必要な「文法」の学習項目を挙げてみます。

・分詞構文
・現在分詞の限定用法
・過去形
・to不定詞

ネイティブなら6歳の子どもでも言える内容です。ただ、日本人が英語で話すにはこれだけの知識が必要です。単語のレベルは中学校レベルです。文法に関していえば分詞構文は高校英語、その他は中学英語です。

では、高校生まで英語を真面目に学習していれば、この英語がすぐに口から出てくるのでしょうか。答えはノーです。なぜなら、「知っているだけ」の知識では「使えない」からです。もう少し詳しく解説します。

第3段階:必要な情報を引っ張り出せる能力

そもそも、たくさんある単語の中から適切な言葉を選んだり、使えそうな文法事項がすぐに頭に思い浮かべられたりできるまでには相当な訓練が必要です。何年も前に習ったことでも一瞬で引っ張り出せなければいけません。
speaking3

頭で覚えているうちは「ただの知識」です。学校の英語の授業では、教科書を読み先生の説明を聞いて、問題集などに取り組みながら正しい知識を身につけられます。しかし、どんなに内容を理解してもこれでは「知っているだけ」です。

「知っているだけ」から「使いこなせる」までのレベルには相当な差があると思ってください。頭で覚えるのではなく「口の筋肉に覚え込ませる」くらいの訓練が必要です。話すためには「話す」訓練をしなければいけません。

第4段階:正しい発音で声に出す

最後にようやく英語を話します。

Walking past the restaurant on my way here, I saw a long queue waiting for it to open.
(ここに来る途中レストランのそばを通ったら、オープン待ちの長い行列を見たよ)

このときに英語を日常的に使用する人達がストレスなく聴き取れる発音ができなければ、相手には伝わりません。単語を正しい発音で覚えるのはもちろん、英文となったときに特徴的な音の変化(消失・連結・変化)やイントネーションも身につけなければいけません。

発音に関してはネイティブレベルにこだわる必要はありません。世界で英語を使って日常的にコミュニケーションをしている人のうち、ネイティブは2割程度であり、残りはノンネイティブだからです。どこの国の人にも伝わる「標準的な英語」を話すことが肝心です。

上記のように、日本人が英語をスラスラと話すためには4つのステップをクリアしないといけません。さらに英会話を難しくしているのは「時間」です。「イメージ」から「発話」まで少なくとも2秒以内に処理しないと会話が間延びしてしまいます。

短時間に高度な処理をしつつ、話し終わる前に次の内容のイメージを思い浮かべなければいけません。英会話は簡単にできるものではなく、長期的な訓練が必要です。

自由な英会話は小学生には難しすぎる

では「小学生でも英語がペラペラと話せるかどうか」について検証します。

スピーキング練習で効果的なのは、「普段自分が日本語で話している内容どんどん英語にして、話せる表現を増やしていく」という方法です。これを続けるだけで、どんどんスピーキング力は向上していきます。高校生以上ならどんどんやるべきです。

ところが、小学生にこのトレーニングをやらせてもうまくいきません。その原因について説明します。

文法力・単語力が低すぎる

まず語彙力が低すぎます。一般的な小学5~6年生の語彙力(ボキャブラリーレベル)は、せいぜい300語程度です。これは言葉を話し始めた2歳児と同じくらいのレベルです。これでは小学5年生が普段考えることを英語で表現するのは不可能です。

自分の思考を自由に表現するには最低2000語レベルの語彙力(大学受験レベル)が必要です。根拠は、学習者向け英英辞書として定評のあるロングマンで定義に使われる語彙が2000語レベルだからです。2000語を使いこなせれば、ほとんどの表現を網羅できる証拠です。

もう一つの大きな問題は、文法を知らなさすぎることです。小学校では本格的な文法学習はしません。「主語+動詞+目的語…」の基本的な語順でさえも理解しているか怪しいレベルです。これでは英文を組み立てることができません。

文法力と単語力が低いレベルにもかかわらず、「さあ、自由に英語を話してごらん」と呼びかけても無言になるのは当然です。

「言いたいこと」と「言えること」のギャップが大きすぎてストレスになる

この事情がわかっていないネイティブや英語の先生は「間違いを恐れるから話さない」と勘違いしています。そうではなくて「話せない」のです。
speaking_stress

「言いたい何か」と「実際に言えるレベル」の格差が大きすぎて、子どもにはストレスがかかります。これを繰り返していくと子どもたちは英語嫌いになっていきます。

日常会話は「自由工作」

「普段自分が日本語で話している内容をどんどん英語にして、話せる表現を増やしていく」という方法は、例えるなら自由工作のです。「何を作っても何を使ってもいいから」はかえって難しいです。

何を作るか、どのような材料が必要か、使える工具はどれか、色はどうするかなど考えなければいけないことが多すぎます。

夏休みになると書店では工作キットのコーナーが設置されます。これは、自由工作の悩みから解放されたい子どもや親達の需要があるからです。

日常会話は小学生には難しすぎる

結論ですが、小学生の間に英語をペラペラと話せるようにはなりません。小学生のうちに英語ペラペラになることはほぼ不可能です。

しかし問題ありません。実は小学生でも取り組める効果的なスピーキングのトレーニング方法があります。それは「音読」です。スピーキングだけでなく、英語にかかわるすべての技能の向上が期待できます。小学生のうちから始めると中学生になればメキメキと英語力が向上します。

小学生でも取り組める「音読」とその効果について、以下詳しく説明します。

音読練習が効果的

英語学習において「音読」が効果的であることは、昔から知られています。でも多くの人は正確に音読の効果について理解できていません。そのため、ただ文字を読み上げるだけとか、流行りの「シャドウイング」だけ取り組んで効果を実感できずにいます。

音読練習は「プラモデル」のようなもの

大人向けのスピーキング練習方法が自由工作なら、音読練習は「プラモデル」です。音読トレーニングの詳細を下の図にまとめました。
ondoku1

プラモデルの特徴は「作るものはあらかじめ決められていて、必要な材料はすべて揃っている」ということです。そして指定された通りにパーツを組み立てると、誰でも格好いいロボットや車などを組み立てられます。

音読トレーニングには原稿(スクリプト)と音源(モデルリーディング)が用意されています。自由に話す代わりに、ネイティブの話す正しい英語をあたかも自分の言葉として声に出して読みます。

これなら12歳の知的レベルに近い内容を扱えるので、子どものストレスはかなり軽減されます。

パーツが単語、組立説明書は文法

実際のスピーキングでは、どの単語と文法を使うかを一瞬で考えなければいけません。しかし、小学生はほとんど単語も文法も知りません。そのため英語で話せる内容は非常に限られてしまいます。

音読では原稿があり、使用すべき単語と文法が用意されている状態です。これはあたかもプラモデルでパーツ(単語)と組立説明書(文法)が一式箱に入っているようなものです。

英会話の最も難しい部分(適切な単語と文法を選ぶこと)を「あらかじめ用意」してあげます。こうしてハードルを下げて、小学生でも英会話の疑似体験ができるようになります。

音読の具体例

実際の音読練習がどのようなものかを理解するために、具体例を見ながら体験してみましょう。まず、教材を用意しなければいけません。最低限必要なのは、「ネイティブによるモデル・リーディング(模範となる音読)を録音したもの(CD/録音データなど)」とそれを文字に起こした「スクリプト(原稿)」の2つです。

*私の知り合いのPaul先生にお願いして、オリジナル教材を作ってみました

・音声ファイル

https://hi5kids.net/wp-content/uploads/2018/09/音読素材.mp3

・スクリプト

Hello, my name is Paul.  (こんにちは、私の名前はポールです)
I’m from America. (わたしはアメリカから来ました)
This mug is on the shelf.  (このマグカップは棚にあります)
These mugs are also on the shelf. (これらのマグも棚にあります)
This mug is beautiful.  (このマグは美しいです)
These mugs are plain. (これらのマグは味気ないです)
This camera is old.  (このカメラは古いです)
This camera is new. (このカメラは新しいです)
Old camera, new camera.  (古いカメラに、新しいカメラ)
Smile! (笑って!)
This is a little pen.  (これは小さいペンです)
This is a big pen. (これは大きいペンです)
Little pen, big pen. (小さいペンに、大きいペン)
This is not a toy. (これはおもちゃではありません)
This is a real pen. (これは本物のペンです)
Dear Mother, (お母さんへ)
This is Paul.  (こちらはポールです)
That’s me! (それ、私のことですよ!)

子どもの場合、原稿が読まれている状況を理解するのが難しいことがあります。原稿が読まれている状況がひと目でわかる動画もあると理想的です。

・動画

 

一回の原稿の量はおよそ70語が良いでしょう。これは聴き取りやすいスピード(120語/分)で読まれた場合、40秒前後で完結する文量だからです。これくらいの長さなら小学生でも集中力を切らさずに取り組めます。

また一つのスクリプトにつき文法テーマを1つに絞ったものが理想です。イメージは中学校の英語の教科書です。中学校の英語教科書は内容が退屈であることが欠点ですが、音読用の素材としては優れています。今回の素材なら「This is~やThese are~」がターゲットとなる表現です。

音読練習の方法は多岐に渡り、ここではすべてを紹介できません。そこで、そのうちのひとつ「シャドウイング」と呼ばれる練習方法について説明します。前提条件として、単語や文法を充分に理解して、正しい発音で音読できる状態になっていることが求められます。

シャドウイングではスクリプトは一切見ません。音声を流し、聞こえてきた英語をそっくりそのまま真似をしながら後からついていきます。およそモデル音声から2~3語遅れてついていくのが理想です。

音への集中力が必要です。単語と文法を熟知しているはずなので、正しく聴き取れるはずです。「知らない単語は聴き取れない」とよく言われますが、「覚えたからこそ聞きとれる」ということを体感できることに意義があります。

最初は音を追うだけで精一杯です。しかし、慣れてきたら内容も理解しながら、自分が誰かに話しかけるようにしゃべると学習効果が高まります。このときに動画があると比較的容易に映像を思い浮かべることができます。これこそが「英会話の疑似体験」です。

このようなトレーニングを年単位で続けることにより、少しずつ自由に英語を話すための基本ができあがります。

音読トレーニングは英語の全ての技能を高める

今回はスピーキングに焦点を当てて紹介しています。でも音読トレーニングが優れているのは、英語にかかわるすべての技能を向上させる効果があることです。下の図の黄色いハイライトの部分に注目しましょう。
4技能+2

まず、素材となる原稿を読む(Reading)ことから始めます。このときに未習の単語や文法を学び(単語力・文法力)内容を理解します。

次に音読にはモデルとなるネイティブの音声を使用します。この音声を何度も聞きながら声に出すトレーニングをします(Listening・Speaking)。音読するときはこの原稿が読まれている状況を考えることが大切です(丁寧さの使い分け)。

声に出すときは、それぞれの単語の発音とアクセントに気をつかうのはもちろん、英語特有の音の変化(消失・連結・変化)をまねます。そして内容によっては感情も込めます。

音読の最終段階では、ディクテーション(口述筆記)をします。聞こえた英文を文字に書いて、正しく聴き取れたかどうかをチェックします。このときに綴りや文法のミスにも気づくので、Writing力を伸ばせます。

先述のように、普通の小学生は英語をペラペラと話すことはできません。

でもプラモデルのように「会話を疑似体験できるセット」を用意してあげれば、スピーキング力を中心に英語のあらゆる技能を伸ばすことが可能です。音読トレーニングは小学生だけでなく英語の基礎を身につけた中級者にとっても効果的です。

オンライン英語塾(1対1の完全個人指導)では、英検4級以上の生徒には音読トレーニングを取り入れています。詳細はこちらをクリック!

まとめ

ノンネイティブが英語を話すとき、頭の中の活動は想像以上に複雑です。特に、イメージを言葉にするときに「必要な単語」と「必要な文法」を瞬時に引っ張り出すにはかなりのトレーニングが必要です。

語彙力や文法力が低い小学生に、自由な英会話の練習をさせようとしてもうまくいきません。単語や文法のインプットが不十分だからです。普通の小学生が英語をペラペラと話せるようにはならないのは当然のことです。

しかし、小学生でもスピーキング力を磨く練習をすることは可能です。それは「音読」です。音読では自由な英会話では難しかった部分(適切な単語と文法を瞬時に思いつく)があらかじめ用意されています。

「言いたい何か」をイメージするところから、音声として話すまでの過程で必要なすべての情報がプラモデルのキットのように準備されています。これにより、実際の英語力よりも高いレベルの会話を扱うことができて、年齢相応の内容を話す疑似体験が可能になります。

「小学生が英語ペラペラ」になることはほぼ不可能です。でも、音読トレーニングを通じてスピーキング力を他の技能とともに伸ばすことは充分可能です。年単位で続ければ近い将来あなたの子どもの英語力は劇的に伸びます。

excitedそれともexciting? 子どもが混乱する原因はここにあった!

「be interested in ~(~に興味がある)」「be surprised at~(~に驚く)」「be tired of~(~に飽きる)」は英語初心者にもなじみのある表現です。中学生の頃、何度も覚えた経験があると思います。

ところでこれらの表現に共通する「-ed」が気になりませんか? 「-ed」で終わるのは、過去形か過去分詞形(受け身または完了)です。

「be interested in ~(~に興味がある)」「be surprised at~(~に驚く)」「be tired of~(~に飽きる)」これらはすべて感情に関する表現の「形容詞」です。それなのに動詞にしかつかない「-ed」で終わるのはよくわかりません。

実はこれらの表現はすべて「受け身(受動態)」であり、形式は「be+動詞の過去分詞形」です。だからedで終わるのが正しいのです。

この表現がわかりにくい原因は、日本人と英語ネイティブの「発想の違い」にあります。ここをしっかりと理解すると、なぜ感情表現が「受け身」で表現されるのかわかります。

「僕はワクワクしていた」を英語でいうとき、「I was exciting.」と「I was excited.」のどちらが正しいのか子どもはしばしば混乱します。そんなときにズバリ教えられるように、お母さんのために解説します。

感情動詞の理解が難しい理由とは

動詞の種類の中で「感情動詞」と呼ばれるカテゴリーがあります。ひと言で説明すると「感情を引き起こす」意味の動詞です。

例えばsurpriseは動詞で「を驚かせる」意味です。用例としてはThe news surprised us.(そのニュースは私たちを驚かせた)となります。

視点を変えて私(I)を主語にした文章にするとき、子どもだけでなく大人でも混乱する傾向があります。I was surprising at the news. か、それとも I was surprised at the news.なのか混乱してしまいます。

実はこうした混乱は、感情にまつわる考え方が日本人と英語ネイティブで真逆であることが原因です。まずは両者の考え方の違いを詳しく解説します。

日本人の心理

日本人にとって、感情は「自分の心の中から発生する」ものです。「驚く」感情は自分の心の中から生じるものとして感じています。

日本人のびっくりした

ネイティブの心理

一方、英語ネイティブの感情に対する考え方は真逆です。「ニュース」が自分を「驚かした」結果、自分は「驚かされている」のです。これは受け身(受動態)の発想です。

ネイティブの発想

感情が発生するのは外部の何かに「された」からです。これを英語で表現するためには「過去分詞形(された形)」を使用します。先程の例ではsurprisedとなります。したがって「私はそのニュースに驚いた」の英語は次のようになります。

I was surprised at the news.

感情動詞の具体例

感情動詞の仲間は他にもたくさんあります。そのなかの一部を紹介します。

amaze をびっくりさせる
bore をうんざりさせる
disappoint をがっかりさせる
excite を興奮させる
scare をこわがらせる
tire  を疲れさせる
satisfy  を満足させる

これらはすべて原因となる物や人が主語になるときに使われる動詞です。例えば、The baseball game bored me.(その野球の試合は私をうんざりさせた)のように使用されます。

視点を変えて「私(I)」を中心に表現してみます。そうすると私は「うんざりさせられている(受け身)」ので、次のように表現できます。

I was bored with the baseball game.

(私はその野球の試合にうんざりさせられた)=自然な日本語にすると(うんざりした)

原因となる物・人を中心に語るときは-ingにする

今度は反対に、原因となる物や人を説明するときにはどうするかを見てみましょう。先程の例文では「つまらなくさせる(能動態)」のは「野球の試合」です。だから「その野球の試合はつまらない」と言いたければ、現在分詞と呼ばれる(-ing形)にします。

The baseball game was boring.(その野球の試合はつまらなかった)
The boring baseball game.(つまらない野球の試合)

子どももとても間違いやすい文法事項なので、子どもに正しいアドバイスを送れるようにお母さんのために問題を用意したので、一緒に考えてみましょう。

edとingの使い分けをマスターしよう

以前、上原浩二選手がメジャーリーグのボストン・レッドソックスでインタビューを受けたときに息子さんもマイクを向けられたことがありました。お父さんと一緒に渡米してアメリカで教育を受けているようで英語にも慣れている様子です。

実は私はこのシーンをテレビで見ていました。以下、女性リポーターと息子さんのやり取りです。
(リ:リポーター、子:息子)

リ: Your dad said he almost threw up out there.  How did you feel when he was pitching? (君のお父さんはもうちょっとで吐きそうだったって言ってたわ。彼のピッチングについてどう思った?)
子: I don’t know. (さあ)
リ:Did you get sick when he was out there, or excited? (お父さんがあそこにいたとき、吐きそうだった? それともワクワクしていた?)
子:Excited! (テレビのテロップにはEXCITINGの文字)

これを見ていたときに私は「あれっ」と思いました。息子さんの「Excited」が正しいのか、テレビの字幕の「EXCITING」が正しいのか、どちらかわかるでしょうか?

excited/ exciting

リポーターの質問は「Did you get sick when he was out there, or (did you get) excited?」でした。パパのピッチングが原因で、「あなたの感情は興奮させられたかしら?(受け身)」と聞いているのです。

よって正しい受け答えは、(I got) excited! です。上原投手の息子さんが正解で、テレビの字幕が間違いです

confusing/ confused

あなたの目の前に一卵性双生児の女の子が2人います。名前は「あやか」と「あやな」です。紛らわしいですね。この状況をconfuse(を困惑させる)という感情動詞を使って表現してみましょう。

I am (             ).
The twins are (               ).

問題:それぞれの( )の中に、confusing かconfusedのどちらかを入れてみましょう。

正解

I am confused.(私は混乱させられた=私は混乱した)
The twins are confusing.(その双子は紛らわしい)

まとめ

感情動詞から派生した「-ed」と「-ing」の使い分けは、子どもにとって難しく感じる部分です。その難しく感じる原因は、日本人と英語ネイティブの発想の違いにあります。

お母さんは図や具体例を示しながら子どもに教えてあげましょう。感情にまつわる表現は会話でも頻繁に使われます。瞬時に使い分けをするためには根本的な理解が欠かせません。

一度で理解できない子どもも多いはずなので、わかるまで何度も付き合ってあげる根気も必要です。

子どもに英文法:「時制の一致」を教えてはいけない

世の中には「知らないほうが幸せだった」雑学があります。例えば、「きゅうりは世界一栄養のない野菜」とか「エビのしっぽの成分はゴキブリの羽と同じ成分でできている」などが該当します。

学校で習う英文法にも似たものがあります。その代表例は「時制の一致」です。高校で英語を学んだ人なら一度は耳にしたことがあるはずです(忘れた人はそのまま忘れたほうが幸せですから、この先読まないでください)。

この知識はまさに「百害あって一利なし」です。今回の記事は、高校時代に英語を一生懸命勉強したお母さんに向けて書きました。「時制の一致」は理屈に合わない部分が多いので、振り回されないように気をつけましょう。

子どもに英語を教えるときも、「時制の一致」の知識を子どもに押しつけないようにしていただきたいと思います。

時制の一致とは

高校の英語文法には「時制の一致」という項目があります。私は受験勉強の際、機械的に「時制を一致」させるようについ考えてしまいます。このときは何の疑念も抱きませんでしたが、今となっては「ほとんどインチキ」とさえ感じています。

時制の一致の不合理さを説明する前に、「時制の一致」とはどのようなものだったか確認しましょう。

時制の一致のおさらい

例えば、She said, “I am a student.”(彼女は「私は生徒です」と言った)から“”(引用符)を取り除くとします。

すると、She said that she was a student.(彼女は彼女は生徒ですと言った)と書き換えられます。このときに「時制の一致」を適用しなければいけませんが、その理屈は下の表のようになります。

*時制の一致

主節 従属節
She said that she was a student.
主節の動詞said(過去形)に揃えるために→ 従属節の動詞(be)もwas(過去形)にする

「時制の一致」は変?

息子が海外のインターナショナルスクールに通っていた頃のことです。子どもを学校に迎えに行くと同級生のママさんに会いました。話題は今学期で母国(韓国)に戻ってしまう生徒の話です。

韓国に帰る女の子のお母さんから直接聞いていたので、私は次のように教えてあげました。“Her mom said (that) they would go back to Korea.”

主節の動詞saidの時制は過去形です。時制の一致のルールを適用して、willの過去形wouldを何も考えずに使いました。文法的には正しいです。

すると私の話を聞いていたママさんは目をまるくして“Oh, are they already gone?”(えっ、もういないの?)とたずねてきました。慌てて否定して「今学期が終わったら帰るんだよ」と訂正しました。

誤解の原因は私の「機械的な時制の一致」です。“He mom said they will go back to Korea after this term ends.”と伝えれば誤解されませんでした。しかし、この文には「時制の一致」が適用されていません。

例外だらけ

「時制の一致」には例外がたくさんあります。というより、一致しないことのほうが多くて、「そんなルールは存在しない」と表現したほうが適切です。

具体例をもう少し見てみましょう。

「時制の一致」をしなくてもよい例

People knew that water boils at 100℃.(人々は水が100度で沸騰することを知っていた)

この場合従属節の文章water boils at 100℃.は「不変の事実」なので現在形boilsのままにしなければいけません。boiledにはなりません。

時制の一致の例外はこれだけではありません。こうなると何がなんだかわからなくなってしまいます。

しかし、慌てないでください。英語における時制の発想はもっとシンプルです。子どもでも理解できます。

常に「今」と比較しよう

時制の大原則は、常に「今」と比較することです。これだけを頭に入れておけば、時制の一致など学ぶ必要はまったくありません。むしろ知らないほうがいいとさえいえます。

主節も従属節も「今」を基準にして時制を決めよう

She said, “I am a student.”

主節の動詞も従属節の動詞も、「今」を基準に考えてみましょう。彼女が言ったのは過去なので過去形のsaidを使います。

“”内のI は彼女のことなのでsheに変えます。be動詞の時制については、「今」を基準にします。現在彼女は学校を卒業して働いていたら、studentだったのは昔のことなので、wasにするのが正解です。

She said that she was a teacher.

この場合主節と従属節の時制は同じ過去形で一致しています。しかし、これはただの偶然です。

もし彼女の発言が昨日のことで、「今」も生徒なら「いつものこと」をあらわす現在形isを使用するのが正解です。だからShe said that she is a teacher.もあり得ます。

私が知り合いのママさんに間違えて伝えた発言も、「時制の一致」などにつられなければ簡単にわかります。

Her mom said, “We will go back to Korea.”

女の子のお母さんが発言したのは過去なので、過去形のsaidで正解です。

そして引用符内のweはher familyのことなのでtheyに置き換えます。彼らが韓国に戻るのは、私が発言している「今」を基準にすると未来のことなので、willを使うほうが誤解されません。
今を基準に考える

Her mom said that they will go back to Korea.

wouldでも文法上は間違っていませんが、この場合はwillのほうが適切でした。

主節の時制と従属節の時制はそもそも無関係

強調しておきたいのは「主節の時制と従属節の時制には何の関連性もない」ということです。それなのに受験勉強では繰り返し主節と従属節の時制を一致させようと問題を解き続けました。

そのときに問題に気づかなかったのは「たまたま一致していた」事例だけが、扱われていたからに過ぎません。

引用符の文章を間接話法(引用符ではない表現)を用いて表現するときは、動詞の時制よりも主語を正しく変えられるかどうかのほうがはるかに大切です。

例えば昨夜のパーティーでKateとMikeが“We are going to buy a house.”と発言していたとします。

これを間接話法で書き換えるとKate and Mike said that they were going to buy a house.となります。語り手である「私」から見てthat節内を書き換えるので、we→theyとするのが正しいです。

この視点の移動については子どもにもきちんと教えてあげましょう。

まとめ

英文法は英語を学ぶ上でとても大切です。しかし、「時制の一致」に関しては、むしろ知らないほうがマシです。

英語では時制の決め方はとてもシンプルで、常に「今」を基準にして決められています。そのため「従属節の動詞の時制を主節の動詞の時制に一致させる」ようにすると訳がわからなくなってしまいます。

子どもの英作文をチェックするときは、「時制の一致」の知識は忘れましょう。何も触れないほうが子どもは正しく理解する可能性が高いです。

英語のパターンプラクティスはお母さんのジェスチャーで

スポーツや楽器の練習など技能の向上には、基礎トレーニングは欠かせません。野球なら「素振り」ピアノなら「バイエルン」などが該当します。地味な練習ですが大切です。

英会話の練習にも似たような基礎練習があります。指示に従って、文章の一部を入れ替えながら瞬時に口頭で英作文をする「パターンプラクティス」です。

なぜ、パターンプラクティスが必要かについて説明します。

ある一つの英語表現を覚えたときに、それとまったく同じ文章を実際の場面で使える確率はかなり低いです。例えば、I have a dog. という表現を習ったあと、そのままこのフレーズを使うには、本当に自宅で犬を一匹飼って誰かに説明する場面を待たなければいけません。すべての条件が揃うのはなかなか厳しいです。

でも、誰かの家に遊びに行って「君、犬を飼ってるんだ!」という状況はあり得ます。または、犬ではなくてネコが複数いる状況に置かれるかもしれません。

そのときに、タイミングよくYou have cats. というためには、パターンプラクティスが有効です。パターンプラクティスは、覚えた表現をあらゆる文脈や状況に変換できるように鍛えるためのトレーニングといえるでしょう。

その際、合図の出し方を工夫しないと意味のある練習になりません。今回は私が教員の頃に教わったジェスチャーを使って「パターンプラクティス」をテンポ良く進める方法を紹介します。

簡単に出来て子どももゲーム感覚で楽しめるので、ぜひ取り入れてみてください。

何かと必要な人称のパターンプラクティス

英語の口頭練習を子どもにさせるとき、パターンプラクティスをやらせることがあります。パターンプラクティスとはターゲットの文章の一部を入替えて、できるだけ早く口頭で英作文する英会話の練習方法です。

その中でも最も多いのが、人称(I, You, He, She…など)を入れ替える練習です。いくつかその具体例を見てみましょう。

現在形(いつものこと形)のbe動詞の練習

I am a boy. がターゲット文(子どもに学ばせたいセンテンス)のとき、主語が変わることによってbe動詞(am, is, are)が変化することに慣れさせます。また、a boy/a girl/boys/girlsのいずれかに変えなくてはいけません。

子どもが男の子だったら、例えば次のように練習します。

I am a boy.  You are a boy.  He is a boy.  She is a girl.  We are boys.  You are boys.  They are boys.

具体的に人の写真を見たり、周囲の人達を見たりして練習すると「イメージ→英語に変換」できるようになります。

このときゆっくり紙に書いては効果がありません。テンポ良く口をついて出てくるまで練習するのがポイントです。

所有格の練習

パターンプラクティスでの人称は主格(I, You, Heなど)だけではありません。所有格の練習にも使われます。

ターゲット文:This is my book.

This is my book.  This is your book.  This is his book.  This is her book.  This is our book.  This is your book.  This is their book.

パターンプラクティスではしばしば人称を入れ替える練習が行われますが、そのときに問題になることがあります。それは「いかにテンポ良く人称を伝えるか」です。

ただでさえ単調なトレーニングなのに、間延びした合図を出すと子どもはすぐに飽きてしまいます。

主語を頭に思い浮かべながら適切な動詞を選ぶ練習が必要

「テンポ良く伝える」以外にも、実際にやってみると問題が生じることがわかります。例えばお母さん(A)と子ども(B)の間でこのようなパターンプラクティスをしたとします。

A: When I say “my,” you say “This is my book.”
B: Okay.
A: My.
B: This is my book.
A: Your.
B: This is your book.

実はこのパターンプラクティスは効果的とはいえません。なぜなら、お母さんが答え(my, yourなど)を先に伝えてしまい、子どもはそれを繰り返すだけだからです。これでは何も練習になっていません。

また単数形のyourと複数形のyourの違いも伝わらず、子どもも戸惑ってしまいます。

理想的なパターンプラクティスにするには「イメージ」を与えて、それを子どもに英語に変換させなければいけません。では一体、どうやったらいいのでしょうか。

ジェスチャーで示せば解決する

これから紹介するテクニックは私が教員時代に指導教諭から教わったものです。家庭でも簡単に応用できるので、試してみてください。

  • 1人称(I, my, me)は自分を指す

1人称単数

  • 2人称(you, your, you)は相手を指す

2人称単数

  • 3人称(he, his, him)は隣を指す

3人称単数 he

  • 3人称(she, her, her)は隣を指す

3人称単数 she

*複数形は両手で表現する

1人称複数

2人称複数

3人称複数

*itを使わせたいときは指で表現する

it

テンポ良く

試しに先ほどのターゲット文であるThis is my book. のパターンプラクティスをジェスチャーで練習してみます。

お母さんはこのように示します。

3人称複数

子どもはそのイメージから「their」を頭に思い浮かべます。そして、“This is their book.”と間髪置かずに口頭英作文をします。すぐにお母さんは次の人称ジェスチャーを見せます。

もし子どもの反応が遅すぎたら、理解が充分でない可能性があります。もう一度復習してから、パターンプラクティスに移行しましょう。

始めのうちは「1人称単数→2人称単数→3人称単数→1人称複数→2人称複数→3人称複数」の順番で進めていきます。慣れてきたらランダムに切り替えます。テンポ良くやると子どもはゲーム感覚で頑張ろうとして、結構盛り上がります。

あなたの家族の名前など具体的な人を当てはめて練習するとより現実感のある練習ができます。パターンプラクティスはどうしても単調になりがちなので、いろいろ工夫をしてバリエーションをつけましょう。

「一回でできるように」と焦らずに数日に分けて少しずつ練習すると、子どもが飽きるのを防げるし効率の良い復習ができます。

まとめ

英語の基本センテンスを覚えたあと、いろいろな文脈で使用できるようにするためにパターンプラクティスは有効な練習方法です。その際、人称を入れ替えて基本センテンスをもとにして瞬時に口頭英作文をすることがしばしばあります。

このときに人称をジェスチャーで示してあげると「イメージ→英語に変換」の作業がスムーズにできるようになります。最初にお母さんと子どもの間で取り決めをしておけば、その後ずっと使えるので便利です。

パターンプラクティスは単調になりがちな練習です。テンポ良く短めに練習することを心がけましょう。具体的なイメージを交えたりしながら変化をつけて子どもが飽きないようにしましょう。.

 

意外と難しい「現在形」と小学生のうちに知っておくべき時制とは

「英文法の授業が大好きだった」人は少数派です。本来、英語の語順や用法をまったくわからない日本人のために説明してくれるありがたい授業なので、もう少し感謝されてもいいはずです。

ところが実際は「英文法など役に立たない」「細かい知識ばかり覚えさせられた」など最低の評価ばかりです。確かに参考書を見ると小難しい用語で埋め尽くされていて、楽しく読める内容ではありません。

参考書や教科書は「正しいこと」を伝えるのが目的で、「わかりやすく」伝えるのは教師の腕にかかっています。ところが多くの英語教師も「正しいこと」だけを伝えてしまい、生徒は混乱しているのが英文法の授業の実態です。

子どもが英語を学ぶときに避けて通れない文法の壁はいくつかあります。そのうちのひとつは時制です。「過去形・現在形・未来形」は日本語にはない概念なので、腑に落ちるまでにかなりの時間と労力が必要です。

その中でも特に「現在形」は「過去形・未来形」と比較しても理解するのが難しい時制です。ワークブックに取り組んでも英語スクールで習っても、正しく理解できている子どもは少ないです。

そこでお母さん向けに、「現在形」の本質について説明することにしました。楽しい話題ではありませんが、一度理解すると子どもにも良いアドバイスができます。ちょっとだけ辛抱して最後まで読んでください。

現在形は「今」ではない!

中学校で本格的に英語を学習すると最初に扱う時制は「現在形」です。その後に学習する過去形・未来形と合わせて「3つの基本時制」のうちのひとつです。

ところがこの「現在形」は意外とクセモノです。他の二つの時制にはない特徴があるので、正しく理解するには時間がかかります。

まずはお母さんが正しく理解して子どもの質問に答えられるように準備しておきましょう。

過去形・未来形は点、現在形だけ幅のある時制

学生時代に少しだけ戻って、3つの時制を復習しましょう。

*過去形

I was 10 years old in 2013. (私は2013年に10歳だった)

2013年の時点(過去)において、「10歳だった」と伝えています。

*未来形

I will be ten years old next year. (私は来年10歳になります)

来年の時点で10歳になります、と伝えています。

*現在形

I am 10 years old. (私は10歳です)

日本語訳は「私は10歳です」で間違ってはいませんが、もう少し深く考えてみましょう。昨日私は何歳でしたか? 明日私は何歳でしょうか?

現在形は「今」のことだけでなく、少し前から少し未来のことまでを含めた時間を表現しています。過去形と未来形がそれぞれの時間軸の点で表現できるのに対して、現在形には「幅」があるのです。

これは現在形の大きな特徴なので正しく理解しましょう。

現在形という用語が悪い! 「いつものこと形」と呼ぼう

現在形には「幅」があることはすでにお伝えしました。しかし、中学生、いや高校生でも正しく理解している生徒は少ないかもしれません。

混乱の一因は「現在形」という文法用語ではないかと考えています。日本語の現在とは「今」の時点のことです。

英語の現在形を子どもにわかりやすく伝えるために、現在形ではなく「いつものこと形」と呼ぶことを提唱します。これは私のオリジナルではなく、友人の英語の先生が教えてくれたことです。

「いつものこと形」なら、英語の現在形を的確に表しています。例えば、I drink coffee after meals. なら「私は食後コーヒーを飲みます」という「いつものこと」を表現しています。

昔、高校の受験参考書の解説には「現在の反復動作」「不変の真理」に現在形を用いると書いてありましたが、子どもにそんな説明をして理解できません。

「不変の真理」を表す例文として代表的なものを紹介します。

The earth goes around the sun.

これも「いつものこと」で充分説明できます。地球が太陽の周りを回っているのは「いつものこと」だからです。

子どもに3つの基本時制「過去形」「現在形」「未来形」を教えるときは、現在形は「いつものこと形」として理解させましょう。現在形だけ「幅」のある時制であることを教えてあげるだけで英語の理解度は格段に違ってきます。

「今」を語るなら、現在進行形

では今この時点のことを表すには、どうしたらいいのでしょうか。答えは、「現在進行形」です。

例文を見て違いを感じ取りましょう。

I listen to music every day.(現在形orいつものこと形)

I am listening to music.(現在進行形)

先述のとおり、「いつものこと形(現在形)」には幅が感じられます。おとといも昨日も今日も明日もあさっても「音楽を聴く」のです。

現在進行形では「(今)音楽を聴いている」ことを表しています。幅は感じられず、今この一点だけです。

子どもに時制を教えるのはプロでも難しいです。「現在」という文法用語に引きずられて、「今」を表す現在進行形と「いつものこと」を表す現在形を混同する傾向があるからです。

また「現在形」では「3人称・単数(he, she, itなど)」が主語になると動詞に「s」をつけるルールがあります。3つの基本時制の中で最も難しい時制です。

もし子どもが英語スクールや塾の先生から時制を教わって混乱していたら、お母さんがもう一度整理して教えてあげましょう。

3つの基本時制と3つの相

子どもが時制を学ぶときに混乱してしまうもう一つの原因は、時制の知識が整理されないまま詰め込まれるからです。3つの基本時制のあと、進行形や完了形などが追加されると訳がわからなくなります。

ここでは時制の概念をわかりやすくするために、表を用いて解説します。また、小学6年生までにどの時制まで学習しておいたほうがいいのか、の目安についても触れます。

  • すべての時制を一枚の表で理解する

まず、「過去形」「現在形」「未来形」の3つの基本時制があります。

基本 過去形 現在形 未来形

そして3つの基本時制だけでは表現できないニュアンスがあるため、さらに3つの概念を掛け合わせます。

基本 過去形 現在形 未来形
進行 過去進行形 現在進行形 未来進行形
完了 過去完了形 現在完了形 未来完了形
完了進行 過去完了進行形 現在完了進行形 未来完了進行形

ご覧のとおり、時制は全部で3×4=12あります。しかし、基本はあくまでも過去形・現在形・未来形しかありません。「進行」「完了」「完了進行」は「味付け」です。

麺の基本が、「うどん」「そば」「パスタ」とします。それに「カレー味」「カルボナーラ」「めんつゆ」の味付けをしていると考えればわかりやすいかもしれません(一部食べたくない組み合わせがありますが)。

基本 うどん そば パスタ
カレー カレーうどん カレーそば カレーパスタ
カルボナーラ カルボナーラうどん カルボナーラそば カルボナーラパスタ
めんつゆ めんつゆ+うどん めんつゆ+そば めんつゆ+パスタ

詳しい説明は割愛しますが、現在完了形は「現在形」の一種です。

I have just finished my homework.

これはたった「今」宿題を終えたという表現なので、現在形のグループであることは明らかです。

もし子どもに英語の時制について解説を求められて混乱してしまったら、一度この表を眺めてみることをおススメします。

小学6年生までに理解しておきたい時制はここまで

では、小学6年生までに時制についてどのあたりまで理解しておけばいいのか、の目安について解説します。

英語の絵本の読み聞かせをしたことのあるお母さんならすでにお気づきと思いますが、いきなり過去形のオンパレードです。なぜなら、物語は「~しました」という過去形で大部分が語られるからです。

まずは現在形・過去形を理解するところから始めましょう。お母さんが中学時代にやったような不規則動詞の「原形・過去形」を呪文のように唱える覚え方は、子どもには不向きに感じます。

例えば、子どもは絵本や本の音読を繰り返しながら、thoughtとthinkを別々に覚えてもいいです。そのあとどこかの時点でふたつの単語がつながって「同じ単語である」と認識でいれば大丈夫です。

余談ですが、未来形は正確には動詞は変化していません。willや be going toを組み合わせて表現するので「未来表現」と呼んだほうが適切です(これも英語教師の友人に教えてもらいました)。

3つの基本時制を理解したら、それに進行形の味付けを加えられれば表現の幅はグッと広がります。小学6年生までに、表で示された「赤とオレンジの枠」まで理解できれば充分です。
時制*学習の優先順位の第一位は 赤 >  黄色 > 緑 > 青

まとめ

「現在形」が表現するのは「今」の一点ではなく、幅のある「いつものこと」です。「今」に限定した内容を表すには「現在進行形」を用います。

この点において、「現在形」は他の基本時制である「過去形・未来形」とは決定的に異なります。また現在形においては、主語が3人称・単数の場合、動詞にsをつける決まりがあります。「現在形」は中学校で最初に習う時制ですが、実は最も難しい時制と言えます。

進行形・完了形・完了進行形は、「時制」への味付けです。これらのことを長期間に渡り一つずつ学ぶと頭の中が混乱してしまいます。しかし、一覧表で眺めればそれほど難しいことではありません。

小学生にも理解しておいて欲しいのは、3つの基本時制と進行形までで充分です。ここまで進めば簡単な本を読めるようになるので、英語学習のスピードは加速します。

小学生に英文法を学ばせるときのコツとは?

子どもからテストを渡されて、最初に何をチェックしていますか? 「得点でしょ」というお母さんの声が聞こえてきそうです。

私は子どものテストを受け取ったら、得点よりも「学習内容」を先に見ます。今、何を勉強していているのかが気になるからです。そして、理解できていることと理解できていないことを確認します。得点にはあまり関心がありません。

私の専門は英語ですが、国語のテストは細かくチェックしています。特に「主部・述部・修飾語」の文法問題が出題されたときは注意深く見ています。なぜなら、この理解度によって英語文法を教えるべきタイミングを判断できるからです。

個人差はあるものの、小学4年生くらいから少しずつ英語文法を理解し始めるようになります。でもその年齢はまだ抽象的な概念の操作は得意ではありません。そのため文法を教えるときは慎重にしないと、一気に英語嫌いになってしまいます。

先生にお願いするにしてもお母さんが自分で教えるにしても、文法を何のために学ぶのかを正しく理解しなければいけません。日本人の子どもは、ネイティブのように無意識に英語を話せません。そのため、日本語と英語の違いを理屈で理解しなければいけません。

このときに必要なのが文法です。文法は正体不明の外国語をわかりやすく理解させてくれる便利な知識です。文法を学ぶと「自信をもって英語を使えるようになる」のが理想です。文法の知識が足枷になり英語を積極的に使えなくなってしまうのでは、本末転倒です。

この記事では英語学習には欠かせない英語文法を小学生が学ぶときに、どのようなことについて注意をしたらいいのかを詳述します。また、文法を理解できるタイミングの見極め方や具体的な方法について解説します。

小学4年生から英文法にチャレンジ

子どもが英語を学ぶときは「音の学習中心」ですすめたほうがいいです。アルファベット、フォニックスの基本、基本単語やセンテンスの音読を通じて英語の音に慣れていくのが理想です。

街の英語教室に子どもを通わせているお母さんの中には「遊びみたいなことばかりしている」と感じるかもしれません。しかし、遊びを通じて英語を発話する機会を多く作っているのならとても有意義です。

ところが小学3年生くらいになると、無邪気にリピートする子どもは少なくなります。積極的に英語を話そうとする姿勢が見られなくなってくるのです。

こうなるとそれまでと同じようなアプローチで学ぶのは難しくなります。それでも「音」の学習の重要性は変わりません。家で英語を音読したりするときは、お母さんは否定的な言葉を使わずにできるだけ良い部分をほめてあげるようにしましょう。

そもそも小さい子どもに特有の無邪気さが消えていくことは、悪いことではなく成長の証です。これまで何も考えずに言われた英語を「リピート」していたけれど、あるときから「あれ、日本語と全然違うぞ」と気がつき始めます。

これが「英語文法」への意識の始まりです。この疑問を感じ始めたタイミングをうまくとらえると、効果的に英語文法の学習を開始できます。これ以降は音の学習と文法の学習を並行して進めていくと効果的です。

日本語との違いを意識し始めたときが合図だが

例えば“I played football in the park yesterday.”(きのう公園でサッカーをした)を音読するとき、小学2年生までの子どもなら何も考えずに先生の後について大きな声で読み上げます。

しかし、小学3・4年生になると「あれっ、yesterday(きのう)は何で最後に来るんだろう?」「サッカーをしただから、football playになるはずなのに…」と日本語と英語の違いに気づき始めます。

このように子どもがモヤモヤした感情を持つようになったら、最初に文法を教える合図です。何かを「知りたい」と思っているタイミングで、必要な知識を学ぶのが最も効率がいいからです。乾いた砂に水をかけるとあっという間に吸収されるのと似ています。

ところが話はそれほど単純ではありません。この時期の子どもは文法のような抽象的な概念の学習はまだ苦手なのです。そのためお母さんが中学校で受けたような英語文法をそのまま学ぶことはできません。

無理に文法の知識を教え込もうとすると、たちまち英語嫌いになってしまいます。小学3・4年生は英語文法に意識を向け始めつつも、文法学習には早すぎる難しい年齢であるといえます。

国語の授業に注目

国語教科書を見ると小学2年生くらいから「主部と述部」について授業で習うようです。そして小学3年生では「修飾語」なども扱われています。

学校から国語のテストを持ち帰ってきたら、点数だけ確認するのではなく、このような文法をどこまで理解しているかをお母さんには確かめて欲しいのです。

3年生までの国語文法に関する事項をほぼ問題なく理解しているようだったら、英語の文法を学ぶ下地ができているサインです。もし、国語文法問題に誤りが多ければ、まだ抽象的な概念の学習には早すぎます。

英語文法の基礎を学ぶ合図は、国語文法のテストの結果がひとつのバロメーターになります。

あせりは厳禁だが、できそうならチャレンジ

成長段階を無視して文法学習を始めるのは絶対にやってはいけません。時間の無駄になるだけでなく、子どもが「英語嫌い」になってしまう可能性があるからです。そのため、国語の文法の理解度を見て大丈夫と思ったら、少しずつ英語文法の学習に取り組んでもいいです。

一般的には小学5年生くらいから英語文法を理解できるようになります。もし、心配ならそこまで待つのも悪くありません。

文法学習は彫刻制作と似ている

理想的な文法学習は、石膏彫刻の制作過程と似ています。

彫刻(面取り)

最初にノミとハンマーを使って大まかな形を作ります(面取り)。

彫刻仕上げ

それから徐々に全体のバランスに気を配りながら、細部を仕上げていきます。

これを文法学習に当てはめてみます。初めのうちは細かいところにこだわらず大切な部分だけを大まかに学習します。そして、少しずつ段階を経て細かい文法知識を身につけていくのが理想です。

細部から始めたらフリーズする

もし、石膏彫刻をするときにいきなり髪の毛の細かいところから彫りだしたらおそらく作品は失敗します。なぜなら、全体のバランスを見失うからです。

ところが中学校から始まる英語文法学習は、これに近いことが行われています。例えば中学校の1学期には「3単現のs」を扱います。

ネイティブの子どもでも小学校2年生くらいまでは「3単現のs」を間違えることがあります。2歳から英語を話し始めて5年以上英語漬けの子ども達です。彼らでさえ「3単現のs」は5年目で完成させる項目なのです。

一方、日本の中学校に目を移すと、中1の1学期には「3単現のs」を扱います。つまり本格的に英語を学び始めて数か月しか経っていません。

「-s, -x, -ch, -sh, 子音字+oで終わる動詞には-esをつける」「子音字+yで終わる動詞はyをiに変えて-esをつける」はテストでも頻出事項です。しかし、これらの知識は彫刻でいえば毛髪一本一本に相当します。

このような細かいルールから覚えていったら、誰でも頭はフリーズ状態になってしまいます。「英語を話しましょう」と言われても、無理に決まっています。

中学校以降の文法知識はテストを意識しています。このような細かい知識を問う問題にしないと、得点に差がつかず成績をつけられません。理想的な「英語をスッキリと理解するための文法」とはかけ離れた姿です。

お母さんができる対策としては、小学校までに文法の「面取り」作業を終えておくことです。そして、中学校以降で細部の仕上げに移行できるようにしてあげれば、子どもの頭もフリーズせずに英語の発話を妨げないようになります。

大事な部分を残して、細部は捨てる勇気を

小学生が英語文法を習うときは、大事な部分を残して細部は捨てる思い切りのよい指導が必要です。先ほどの「3単現のs」を再び例に挙げると、次のようなステップを踏むことになります。

1.私(たち)あなた(たち)以外の人やモノ(3人称)に意識を向ける

2.とりあえず私(たち)とあなた(たち)以外が主語で「いつものこと(現在形)」を表現するときは、動詞にsをつけてみる

3.複数ではなく単数のときだけ動詞にsをつけてみる

4.疑問文や否定文のときはdoesを使う

このようなステップを設けることで、少しずつ子どもでも「3単現のs」を理解できるようになります。「yをiに変えてesをつける」(study→studies)のような知識は中学校まで先送りしても問題ありません。

英文法の核は語順である

小学生が学ぶべき英語文法の大事な部分は「語順」です。英語ネイティブは意識せずに英文を作れます。しかし、日本人は「無意識に」英文を作ることはできません。意識的に文法(語順)を学ばなければ、いつまで経っても簡単な文章でさえも作れません。

英語は日本語よりも語順の制約が大きいので、文法初心者はまず基本的な文型(パターン)を理解することから始めるといいです。

小学生は手を動かして基本文型を学ぼう

文型を小学生に学ばせるときに、「SV」「主語、動詞、目的語、補語」のような用語を使っても、混乱するだけです。小学生は目に見える具体的な物の操作は得意です。文法を理解させたければ、できるだけ目に見える形で教えなければいけません。

英語教師でそのように指導してくれているなら、任せていても大丈夫です。しかし、小学5年生になっても何も文法を取り扱わなかったり、細かい知識を詰め込むような中学校の前倒しの授業をしていたりするならお母さんのフォローが必要です。

基本文型は「動詞」の理解が鍵

文型の「肝」は動詞の理解です。国語でいえば「述部」と似ています。動詞という用語はどうも小学生ウケが悪いです。ネイティブっぽく「action words(アクション・ワード)」と呼んだほうが、子どもはイメージしやすいこともあります。

まず、「目的語を必要とする動詞(他動詞)」と「目的語を必要としない動詞(自動詞)」の区別をできることが第一段階です。例えば、下のような例文をいくつか見せながら、動詞に線を引かせてみます。

I play football.
I live.
I read a book.
I want some water.
I walk.

次に、目的語(~を)を必要とする動詞は青色、不要なものは赤色で〇をつけます。

I play football.
I live.
I read a book.
I want some water.
I walk.

playのあとにfootball(目的語)が無かったら、意味が通じない感覚を理解させます。一方、live(生きる)は目的語が無くても文章は成立します。

上記の説明は高校で習う「SV(第1文型)」と「SVO(第3文型)」に相当します。「動詞には自動詞と他動詞の2種類ある」が、文型理解の第一歩になります。

小学4年生くらいなら、この二つを見分けるだけでも「スッキリ」する感覚が味わえます。

文型を「見える化」する方法

以前、100円ショップで購入したマグネットシートを使って、文型理解をするためのパズルのようなものを作成しました。子どもにも文法をわかりやすく伝える方法はないかと考えたときに試作しました。

これを使って、SVOO(第4文型)を実際に教えてみます。主語と動詞はすでに学習済みと仮定します。

1.紙に書いた例文を音読させる(意味はジェスチャーで分からせる)

I gave him a pen.

2.動詞に線を引かせる

I gave him a pen.

3.お母さんがセンテンスを4つの要素に切り分ける

I gave him a pen

4.SVOOの文型ブロックに切り分けた要素を貼り付けてみる

5.この動詞には二つの目的語をとって、順番は「人・物」となることを確認

目的語の順番「人・物」の説明は正確ではありません。しかし、正しい説明をしようとすると小学生の発話を妨げる「細かい知識」レベルになるので、あえて避けたほうが賢明です。

6.まったく別のセンテンスを音読して、切断、バラバラのブロックに貼り付けておく

I bought her a present

7.ブロックを組み立てて、英文を音読してみる

I bought her a present.

上記の練習を通して、この文型(第4文型)の動詞には特徴があることに気づきます。

give:「相手の元に何かを届ける」種類 show, sell, send, tell

buy:「相手のために何かする」種類  cook, make

上記のように、小学生は目の前のパズルに言葉を当てはめながら使われている動詞の特徴を理解すると、文型を理解しやすくなります。

扱う文型の順番

「自分で子どもに文型を教えてみたい」お母さんのために、小学生に文型を教えるときの順番について解説します。単純に第1文型~第5文型まで順番に学ぶよりも、次のような順番のほうが理解しやすいです。

1.SVとSVO(目的語不要の動詞と、目的語必須の動詞を対比して)

2.SVOO(SVOの流れから、目的語が二つある文型を扱ったほうがわかりやすいから)

3.SVOC(C:補語の概念を例文で理解させて、目的語とは異なることを理解)

4.SVC(補語のある文型をもう一つ扱い、目的語と違うことを確認。主にbe動詞が使われる)

文型はある時期に一気に教えるよりも、たまたま音読したり習ったりした英文に疑問を感じている様子のときに、少しずつ教えたほうが子どもの負担がないのでおすすめです。

忘れても「またどこかでやればいい」くらいのゆったりとした気持ちで子どもと接してください。一回で覚えられないからと叱ったりするのは最悪です。

ボンヤリをスッキリさせるのが理想の文法学習

先述したように、文法は本来、英語を読んでいて意味がわからずモヤモヤしているときに、スッキリと理解するためのものです。

特に疑問も感じていない段階で次から次へと知識を詰め込んでしまうと、細かい知識が足枷になって英語を積極的に使えなくなってしまいます。少々わかりづらいので、子どもの様子を観察しながらどのタイミングで何をどのように教えたらいいかを説明します。

PPAPをまねしているだけの段階

世界最強の英語チャンツは何といってもピコ太郎さんの「PPAP」です。これまでいろんな人や会社がまじめに教材を作ってきたのに、一瞬でそれを抜き去ってしまうほどのインパクトがありました。

その証拠に子どもにこのビデオを見せると、勝手に英語で歌い出します(ちなみにネイティブの子どもも歌っていました)。これが「音」の学習です。普通は「音読」がこれに相当します。

何か変だな、と気づく段階

子どもが小さいうちは口まねして終わりです。ところがある年齢になると、「あれっ?」と疑問に感じ始めます。日本語では「私はペンを持っています」(主語・目的語・動詞の順)なのに、なぜ英語では入れ替わっているのかに気づくからです。

子どもはその疑問を上手に言葉で表現できません。だから子どもから「質問があるんだけど」とはなかなか言いません。しかし、ここをお母さんが察知して「なんで順番が違うんだろうねえ」と共感してあげるだけで、子どもは自分で考えるようになります。

理屈を学び、スッキリする段階

このタイミングで文型「SVO」を学ぶと、子どもの頭の中はかなり整理されます。モヤモヤしながら歌っていた歌詞は正しい英語の語順だったことを理屈で理解するからです。

“I have a pen.  I have an apple.”の“a pen”“an apple”を別の言葉に置き換えたり、haveを別の他動詞に置き換えたりすれば、英語の表現力は一気に広がります。

同じ文型で違うことを表現できるところまで訓練すれば、文法は「自信をもって英語で伝えるための道具」として実感できるはずです。文法は面倒くさいものではなく、それがないと困るものとして子どもに認識されます。

あらたな疑問に出会う段階

しばらくして何かの場面で、“I sent him a letter.”(私は彼に手紙を送った)を見かけたとき、この子は再び「あれ?」と疑問に感じます。

“I sent a letter.”(手紙を送った)だったら理解できるが、「“him”って何だろう?」とモヤモヤした疑問を感じます。これも言葉ではうまく表現できないため、お母さんから「このhimって何だろうね」と学びのきっかけを作ってあげましょう。

こうして、ひとつずつ英語の文型を覚えて正しい英語を話したり書いたりできるようになります。もちろん、読んだり聞いたりするときも文法の知識なしには正しい理解はありえません。

まとめ

小学生が英文法を学ぶ適齢期の判断はとても難しいです。一般的に小学3年生までは文法のような抽象的概念の学習は苦手です。小学4年生くらいから、子どもの国語文法の理解度を観察しながら少しずつ始めるといいです。

日本人にとって英語は外国語です。ネイティブのように無意識に英語を使うことはできません。どうしても文法の知識が必要です。文法とは外国人にもその言葉を使えるようにしてくれる便利な道具です。

細かい知識でいきなり教え込んで、それが足枷になり英語を使えなくなってしまうのでは本末転倒です。彫刻を制作するように、大まかな形から徐々に細部を仕上げていくことを意識しましょう。

子どもが学ぶ英文法の最優先事項は、英語の基本文型です。文法を子どもに理解させるには、できるだけ具体的な教具を使用しながら、視覚に訴えることが大切です。手を動かしながら学ぶのも効果的な方法です。

理想は子どもが日本語との違いを意識しだしたタイミングで、その疑問に答えるように文法を与えてあげると吸収がいいです。

強調しておきたいのは、やはり語学の基礎は「音」の学習です。充分に音読練習を積みながら少しずつ文型も学んでいけると、子どもの英語の理解は深まります。文法による知識を学んだら定着させるためにも音読は欠かせません。

子どもの「もっと知りたい」好奇心を喚起できるように、文法学習をサポートしましょう。

小学生に英語文法を教える秘訣とは?

子どもを英語教室に通わせていて「なぜ、もっと英語の文法を教えてくれないのかしら」と不満に思ったことはありますか? お母さんが中学校のときは文法中心に英語を学び、テストでも問われたのは文法理解が中心でした。

まだまだ時間はあるとはいえ、将来の受験のことを考えると「文法を教えて欲しい」と思う気持ちもわからなくはありません。

小学生に文法を教えない理由のひとつは、文法を教えるには小学4年生までは幼過ぎるからです。文法学習とは抽象的な概念を理解することです。一般的に小学5年生以上でないと、文法学習はうまくいきません。

もうひとつの理由は、子どもが通っている英語教室でも実は「文法をきちんと教えている」のかもしれません。でも、お母さんが中学校で習った方法とは異なるので、文法を教えているように感じないだけです。

小学5年生くらいからは少しずつ文法を教えられます。ただし、小学生に教えるときにはコツがあります。これは英語教師の仕事の範疇です。でも、お母さんが大まかにそのコツを理解しておくことはとても有意義です。

小学生に英語の文法を教えるときは、帰納法が基本

お母さんが中学校や高校のときに受けた英語の授業を思い出してください。おおまかにいえば「最初に文法の説明→練習問題・読解→答え合わせ」の順番だったはずです。このような授業展開は「演繹法(えんえきほう)」と呼ばれています。

演繹法で、小学生に英語文法を教えても「英語嫌い」を量産するだけです。ここでは「小学生に適した英語文法の指導法」について詳しく説明します。

帰納法と演繹法

初めに「帰納法(きのうほう)」と「演繹法(えんえきほう)」について説明します。この際厳密な定義は無視して、車の運転に例えることにします。

「帰納法」で車の運転を覚える場合、実際に運転をするところから始めます。エンジンをかけてドライブにシフトすると車はスルスルと動き始めます。慌てた初心者ドライバーはブレーキと思い、右側のペダルを踏むと急発進。正面の壁にぶつかって止まります。

ここでドライバーは、ドライブに入れるとスルスルと動くこと(クリープ現象)と右側のペダルがどうやらアクセルであることを理解します。このようにして、実践を重ねながら車の仕組みや交通ルールを覚えていくのが「帰納法」です。

「演繹法」では、最初に車の仕組みと交通ルールをきっちりと教わります。そのあと実際に車に乗って、覚えた知識に従って車の運転をします。これが「演繹法」です。

車の運転は命にかかわります。だから教習所では、演繹法と帰納法のバランスをうまくとりながら教習が進められます。でも、小学生が英語文法を学ぶときは、「帰納法」で教えたほうが圧倒的に理解は早いです。

英語で何度間違えても、命の危険はありません。では、英語文法の学習における実技教習に相当するものとはいったい何でしょうか?

音読を繰り返すと、自然と法則を見出してボンヤリと理解し始める

小学生にとって英語の音読練習は「教習所内の技能教習」です。いきなり「英語を話しましょう」といわれてもポカンとして何をすればいいのかわかりません。

そこで、シンプルで正しい英語をいくつも与えて大きな声で音読させます。このとき、意味もわからずお経のように唱えていても効果はありません。きちんと意味を理解している状態で、何度も音読させます。

このような訓練を繰り返すと、子どもなりにボンヤリと英文の「法則」や「ルール」を理解し始めます。

音読から文法を学ぶ例

ピコ太郎さんの「PPAP」は一時期大流行しました。おそらく小学生も何十回と知らず知らずのうちに「I have a pen.」と歌いながら「英語を音読」したはずです。

映像から「私はペンを持っている」という意味は明らかです。それを何度も口頭練習します。そのうち勘のいい小学生は、英語では「私は/持っている/ペンを(主語+動詞+目的語)」の順番になることを覚えてしまいます。

ここまで口頭練習を積み上げた段階で、お母さんや先生が英語の基本的な語順について少しだけ説明してあげれば、小学生でも無理なく文法を理解できます。これが帰納法のメリットです。

初めに口頭練習したあとに、文法をあたえよう

このように小学生に英語文法を教えるときは、初めに口頭練習をたっぷり与えてから、最後に「ざっくりとした」文法を教えます。これが最も効果的な指導法です。

英語が得意なお母さんはつい、初めに文法を教えてからワークブックに取り組ませようとします。これはお母さんがかつて受けた演繹法による授業の影響です。

実はプロの英語教師もついやってしまいがちな失敗です。自分が受けてきた英語教育の呪縛からなかなか抜け出せず、同じ指導を繰り返してしまうのです。

長年、子どもに英語を指導してきた先生を観察していると、この「帰納法」の原則を忠実に守っています。

細かいところにどこまで目をつぶるか

ではなぜ、中学や高校では帰納法による英語文法の指導が主流でないのかという疑問が残ります。それは、多くの情報を伝えるときは「帰納法」は効率が悪すぎるからです。

たとえば名詞に複数形のsをつけるときに、演繹法ならこのように指導できます。

  1. sだけ最後につける
  2. 語尾がs, x, sh, ch, oのときはesをつける
  3. 語尾がf, feのときは、f, feをvに変えてesをつける
  4. 子音字+yで終わるときは、yをiにかえてesをつける

このあと問題に取り組みながら、複数形の作り方を覚えていきます。

帰納法で教える場合、“I don’t have a watch, but my dad has a lot of watches.”のような文に繰り返し触れることにより、何となく「watchはwatchesだったような…」という感覚を覚えるところまで進めます。そして最後に、先ほどのルール2を与えます。

一つひとつのルールにたいして大量の文を与えて音読をするとなると、膨大な時間を必要とします。これが、中学高校の授業ではあまり採用されない最大の理由です。

「効率的に英語文法を学べるなら小学生にも演繹法で教えるべきでは?」と思うかもしれません。でも、それは実際には難しいのです。なぜなら多くの文法事項を初めに教えると、小学生では英語嫌いになったり、そもそも理解できなかったりするからです。

今の段階で何を優先させるかを見極める

小学生には帰納法中心の指導が優れているのは間違いありません。なぜなら、細かい文法の知識は不要だからです。教えるべき大切な部分にだけ絞り、帰納法で扱うのが良いのです。

正しくない英語でも、「目をつぶれる部分と目をつぶれない部分」があります。この見極めができるのがプロ教師の腕の見せどころです。

「目をつぶれる間違い」とは、たとえば“I have a lot of watchs.”(正しくはwatches)のような間違いです。「目をつぶれない」のは、“I a lot of watches have.”のような語順に関する間違いです。

文法は「英語理解のためにどうしても必要な部分」に絞り、帰納法で教えていくのが大切なポイントです。

小学生での英語の文法は、彫刻でいえば「面取り」の段階で充分です。

彫刻(面取り)

これを中学・高校の英語の授業で細かいところを整えていき完成させるイメージです。

彫刻仕上げ

初めから細部にこだわり過ぎる文法指導は小学生には禁物です。

やっかいな三単現

「三単現(三人称・単数・現在形)のs」は教えるのが難しい項目のひとつです。私だったらまず、簡単な英語の本を音読しながら動詞にsがついた文とsがつかない文を大量に音読させます。

しばらくすると、子どもは「あれ?」と気がつきます。「動詞の部分にsがつくことがあるけれど、なぜだろう?」と不思議に思うのです。

自分から質問してきたときが、最初に教えるタイミングです。

何となく理解している子ども

ネイティブの子どもでも、三単現のsは「何となく使い分け」している状態です。きちんと根拠を説明できるわけではありません。

インター校の教室に掲示されていた作文を読むと、Year 3(日本の小2くらい)のネイティブの生徒でも、s を書き落としているミスを見つけたことがありました。

おそらく彼らの頭の中では「過去形にはsはつけない。いつものことを説明するときに、その場にいない人でひとりのときはsをつける。ひとつのものにもつける」程度の理解です。

小学生ならこれで充分ですし、まったく間違っていません。

私の失敗談

インター校に通っていた息子が小学2年生のころでした。宿題で書いた作文に先生が三単現のsを赤ペンで書き足していました。息子はこのとき初めて「なんでこうなるの?」と質問してきました。

これ以前に、すでに“Does he ~?”とか“He doesn’t ~.”などの表現は話していたので、理解していると私は思っていました。

そこで試しに中学生に教えるように、理屈をこねて説明してみました。するとすぐに大きなあくびをし始めて飽きてしまいました。完全にやってはいけない指導法です。

今の私なら次のように指導します。

T: Talk about yourself. What do you have?
S: I have some books.
T: Ok. How about your sister?
S: She has some books, too.
T: Why did you say “has” instead of “have”?TはTeacher(先生)、SはStudent(生徒)

このように導けば、どういう場合に動詞にsをつけるのかをぼんやりと理解しはじめます。こうして、何回か口頭練習したあと、最後にまとめとして簡単な文法の説明をします。

もちろん、すぐにスッキリとは理解できません。何度も何度も間違えを繰り返して、ようやく少しずつ理解します。根気よく待つしかありません。ちなみに息子が「三単現のs」をほぼ間違えなくなったのは、小学4年生になってからでした。

口頭練習による対比が理解のポイント

子どもの指導に有効な帰納法を用いる場合は「対比させる」のがポイントです。このことを理解するために、「現在完了形」を例に挙げて説明します。

  • 現在完了形を例に
T: What is your birthday?
S: My birthday is May 5th, 2010.
T: Where were you born?
S: I was born in this town.
T: You lived in this town 10 years ago, right? (黒板に書く)Where do you live now?
S: I live in this town.(黒板に書く)
T: Oh, you have lived in this town for 10 years! (黒板に書く)TはTeacher(先生)、SはStudent(生徒)

10years ago

I lived in this town 10 years ago.

now

I live in this town.

→I have lived in this town for 10 years.

10年前についての情報を過去形で、現在の情報を現在形で表現して対比させます。そして、現在形の一種として「(今では)10年間ずっとこの町に住んでいます」という現在完了形の感覚を覚えさせます。

帰納法で学ばせるときは、いかに効果的な対比を見せられるかがポイントです。

このようにしてできた自分に関する現在完了の例文を何度も口頭練習させます。すると、最初のhaveは「持つ」という意味はなく、「ずっと~してきた」の意味を添えたいときに使っているだけだと何となく理解し始めます。

もちろん、最後はかならずまとめとして情報を整理してあげます。すると子どもは「ああ、やっぱりな」と腑に落ちます。もし、自分の理解に誤りがあればここで気づくので、それはそれでいい勉強になります。

すべて理解したところで、ダメ押しの口頭練習が必要です。忘れた頃に反復して練習します。このようにして、少しずつ英語の力をつけていきます。

ガチガチの文法用語から入ると、英語の心は理解できない

もし、先ほどの「現在完了形」を演繹法で、文法用語から導入したらどうなるでしょうか? 優秀な小学5年生なら、中学生と同じく理解してしまう子どももいるかもしれません。でもそれは「理解」であり、「使える」文法にはなりません。

「現在完了形: have (has) +過去分詞形=ずっと~してきた(継続)」を最初に学んでも、空欄補充のテスト以外で役に立つことはありません。

“I have lived in this town for 10 years.”と話すときの話し手は「僕はこの町に10年住んでるよ(だから、(今)僕は君よりこの町について詳しいよ)」という心情が現れています。

この感覚をつかむためには、実例に即して口頭練習を積んでから文法を理解しないといけません。

テストで正解をもらうだけなら知識だけでもなんとかなります。しかし、「本物の英語力」を身につけるためには「なぜ、その表現(文法)は必要なのか?」まで深く理解しないと、使えるようにはなりません。

この観点でみると、haveに続く過去分詞形を少々間違えたとしても、たいした問題ではありません。

このように自分の体験に関連した英語を対比させて、口頭練習を充分に積んだ後に情報を整理してあげるのが小学生には効果的な文法の教え方です。

小学生の間に口頭練習を積むのが大切

小学生の間に口頭練習を大量に積んでおくと、中学校での英語の授業をとても有効な時間にできます。学校英語では英語を話せるようにならないと批判されますが、活用しだいではありがたい文法確認の貴重なチャンスなのです。

先ほどの現在完了形で、過去分詞形の理解が曖昧だったとします。それでも口頭練習をたくさんすると、have made, have read, have watched…のように口と耳が何となく覚えています。

もちろん、間違えて覚えているところもたくさんあります。その部分をきっちりとあぶりだして、仕上げていくのが学校での英語の授業です。すでに英語の心がわかり、使うシチュエーションを理解し、発音をできる状態なので、最後に知識を固めれば鬼に金棒です。

中学校の英語の授業をゼロから学んでも、話せるようになるまでに長時間必要です。でも、小学生までに口頭練習を積み上げていれば、英語を話せるようになるまであと一歩です。学校英語はムダではないのです。

こちらの動画セミナーでは音読トレーニングを通じて、英語4技能の向上を図る方法を紹介しています

考える割合が減る(=無意識化)は英会話への第一歩

すでに音読練習をしていて仕上げの文法を覚えれば、それほど考えなくても口をついて英語表現が出てくるようになります。ほんの一瞬頭を使うだけで文章の構文を思いつくので、難しい部分やうまく伝えるための論理展開に頭を使えます。

英語を話せる人達は、頭を使わずに英語を出せる(話す・書く)割合が多いのです。これが英会話のコツです。小学生のうちに音読訓練をしておくと、中学高校で英語力のカーブは急上昇します。

中学・高校で一気に英語力を伸ばすために

小学生の段階で、「英検〇級」というテストの結果にこだわり過ぎると、お母さんはあせって結果を求めようとしてしまいます。

音読練習をすると確実に英語力は向上しますが、必ずしもテストの点数に反映されません。テストでは「〇か×」を問われます。「70%の理解」は「×」だからです。帰納法による文法学習はテストの点にすぐには反映されません。

子どもは楽しく努力をしてせっかく英語力を蓄積しているのに、低く評価されたり怒られたりしたらたまったものではありません。中学高校にすすんで、授業で文法の完成度を上げればテストの点などあとからついてきます。

帰納法中心で学ぶ子どもに対しては、テストの点に現れない部分をお母さんに評価して欲しいと思います。そうすれば子どもも「お母さん、わかってくれているな」という感覚を持てるはずです。

まとめ

子どもの英語学習の8割は音読練習に充てられるべきです。音読練習とは、教科書を声に出して読むだけではありません。お母さんの口まねをして英語を話すのも立派な音読練習です。英語の歌を口ずさむのも音読練習のひとつです。

子どもは大量の英語に触れながら、少しずつ英語の語順などを自然と身につけていきます。このような「あいまいな理解」をしたところで、少しずつ文法の説明を受けて理解を確かな物にしていきます。

試行錯誤を繰り返しながら規則性をボンヤリと見つけさせ、最後に教師がまとめで知識を与える「帰納法」が子どもへの文法指導には有効です。

小学生までに音読練習を積み上げておくと、中高での英語の授業はあいまいな知識をチェックする時間になります。それまでの疑問点は一気に晴れますし、迷いがなくなるので「使える英語」を身につけられます。

小学生の頃に文法の知識ばかりを詰め込んでも、英語を話せるようにはなりません。上手な英語の先生なら、口頭練習を多くとりながら文法のまとめをしています。

小学生に英語の文法を教えるときは、いろいろと気をつけなければいけません。安心して英語教室に通わせるためにもこのことを理解しておくと良いです。

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