どんな英語の達人も最初の一歩は「アルファベット学習」です。お母さんの醍醐味は子どもの人生の第一歩に関われることでしょう。将来子どもが英語の達人になったとき、「あのとき、私とABCソング歌ったな…」と思い出せたら最高です。
子どもが言葉を覚える過程をふり返ってみましょう。お母さんの語りかけを聞きそれを真似することはどれだけ大切かわかります。英語学習も例外ではありません。「英語は苦手なので…」と言わずに、ぜひ、子どもと一緒に楽しみながらアルファベットを学びましょう。
アルファベットを学習するときは、その後のステップである「フォニックス(綴りと音のルール)」を意識すると、その後の学習効率は高まります。今回の記事では、アルファベットとフォニックスを学ぶときのポイントについて徹底的に解説します。
*記事内では発音を便宜上カタカナ表記していますが、カタカナでの発音指導には反対の立場です。
Contents
音声中心の学習を心がけよう
子どもに適した英語学習を考えるとき、おおまかに「小学校入学前」「小学校1~4年生」「小学5~6年生」の3つの時期に分けて考えます。実際は年齢でハッキリと分けられるものではなく、その子のレベルや成長に合わせて学習方法を変えていきます。
小学校入学前の子どもは、断然、音声を中心とした学習方法を意識したほうがいいです。文字や文法から始めると高い確率で、英語嫌いになったりつまずいたりします。なぜ、小さい子どもには音声中心の学習が合理的なのかを解説します。
音声中心の英語学習が合理的なわけ
小学校入学前の子どもには「音声中心の学習」が効果的である理由のひとつ目は、子どもの言語習得の過程を見れば明らかです。
子どもはお母さんの語りかけを通じて少しずつ言葉を理解します。成長してくると自分で同じ言葉を声に出して繰り返します。お母さんが自分を指して「ママ」と言えば、子どもはマネをして「ママ」と発話してそれが母親を示す言葉であることを理解します。
その他の言葉も「聞く→真似る→(お母さんが)修正→真似る」を繰り返して覚えていきます。ここまでの学習で文字はほとんど使われていません。音声だけで大人から言葉を学んでいくのは人間に備わった本能です。
年齢の低い子どもはつい最近までこの能力を発揮して日本語を習得しています。この能力を最大限に活用して学ぶほうが合理的です。このように考えていくと、年齢が低いほど音声での学習比率を高くするべきだとわかります。
ふたつ目の理由は、英語の場合、アルファベットを習ってもすぐに英語を読めるようにならないからです。日本語で「かきくけこ」を知っていれば「かき(柿)」は読めます。
ところが英語の場合、そうはいきません。アルファベットを習っても「fox」は読めません。なぜなら“f”はアルファベットでは「エフ」“o”は「オー」“x”は「エクス」と覚えるので、これらをつなぎ合わせると“fox”は「エフォーエクス」と滅茶苦茶になるからです。
このように文字から英語を学ばせようとすると日本語以上に手間がかかり、小さい子どもは「できる喜び」を感じる前に挫折してしまいます。これら二つの理由から、幼児は音声を中心として英語学習をすすめるのが正解です。
音声の学習とデジタル機器は相性抜群
スマートフォンが普及し、その他にもパソコンやタブレットを所有している家庭も多いことでしょう。これらのデジタル機器は、音声面からのサポートを必要とする子どもの英語学習に大変重宝します。
いつでもどこでも好きな動画を見られることの利点は、英語学習の強い味方です。小さい子どもは動くものが大好きです。テレビとラジオの人気と比べれば一目瞭然です。「見たい」「知りたい」「おもしろい」がきっかけとなって英語を学習する流れも自然です。
デジタル機器は子どもの眼の負担を考えれば無制限に見せていいものではありません。しかし、時間を守って与えれば、英語学習の強い味方になってくれるのは確かです。
子どもがハマる!楽しい動画サイトを活用した「リスニング学習法」動画セミナーで紹介しているリトルフォックスでは、フォニックスが学べるコンテンツもあります。
勉強臭さを徹底的に排除
「つまらない」と感じた瞬間に人間の脳はその対象からできるだけ離れるようにプログラムされているようです。私も学生時代、古いノートを棒読みする教授の授業はよくサボりましたし成績も悪かったです。
子どもはつまらないものに我慢できません。だから、英語学習をさせたければ「勉強臭さ(つまらない臭)」を徹底的に排除しなければなりません。逆説的ですが「勉強させるためには、勉強させてはいけない」のです。
子どもは絵本を読むのは勉強したいからではなく、楽しい話を読みたいからです。私の息子はYouTubeで英語でのゲーム中継を見てゲラゲラ笑っていました。おもしろい動画がたまたま英語の解説付きだっただけです。勉強のためにではありません。
勉強臭さを消すには3つの方法があります。ひとつ目は子どもが好きな物をよく観察して、それと英語を結びつける方法です。動物が出てくるかわいい話が好きな子どもなら、そのようなキャラクターが登場する英語の絵本を楽しく読んであげるなどの方法が効果的です。
ふたつ目は何でもゲーム化することです。ゲーム市場の大きさを考えれば、ゲーム好きは人間の本能です。この本能を利用しない手はありません。お母さんや兄弟と一緒に取り組んで、勝ったときには大喜びです。
例えばお菓子を賭けながらアルファベットの練習をしたり、お風呂タイムは正解しないとお風呂から出られなかったりとゲーム化します。負けたときに本気で泣き出すのが欠点ですが、たまに親に勝ったときには大喜びです。泣くのも喜ぶのも真剣である証拠です。
最後は、環境づくりです。例えば、おもちゃ部屋やトイレにイラストとそれに対応した英語を書いたカードが貼ってあるだけで、生活の中に英語が溶け込んでいる環境になります。勉強臭さがなくなるのでおすすめの方法です。
このように子どもの好きなことと結び付けたり、ゲーム化してみたり、生活環境に英語を取り入れたりすることで、勉強臭さはなくなります。「つまらない」は子どもにとって学習の大敵であると肝に銘じておきましょう。
英語学習ではとにかくほめる
出来たことをきちんと受け止めてほめてあげるのは指導の基本です。子どもが英語を覚えたときにはしっかりとほめてあげましょう。このときにしてはいけないのは、うわべだけほめるような言動や点数化されたものしかほめないような評価方法です。
頑張ってもいないものにわざとらしくほめられると、子どもは嘘を見抜きます。テストの結果だけをほめるのも良くありません。点数化された他人の評価を見ないとお母さんがほめてくれないのでは、普段のちいさな頑張りは無視されていることと同じです。
ほめるのは子どもをよく観察していないと出来ません。ちょっとした変化や向上を見逃さないことがほめるときのコツです。
言うまでもありませんが、ネガティブな発言は厳禁です。「もう忘れちゃったの?」とか「こんなの簡単じゃない」などの発言は、子どもの意欲を奪い去ります。
ここまで幼児や英語初心者の英語学習のコツを説明してきました。これらの要点を抑えつつ、具体的にアルファベットを覚える手順を見ていきましょう。
小学生のアルファベット学習
音声を中心とした英語学習が大切なのは確かです。しかし、さすがにアルファベットを飛ばしてすすめることはできません。ひらがな・カタカナ・漢字以外にもアルファベットを覚えなければならないので日本の子どもは大変ですが仕方ありません。
できるだけ子どもの負担にならないようにアルファベットを学ぶ方法を考えてみました。
まずはABCソング
まずは「ABCソング」から始めましょう。「きらきら星」のメロディーの歌が一番有名です。動画サイトでヒットした動画をチェックしてみると、微妙な違いに気がつきます。下の表にそれぞれの違いをまとめてみました。
はじめ(共通) | 中 | おわり(3パターン) | |
---|---|---|---|
LMNOPが速い
2つのand |
ABCDEFG HIJK | LMNOP QRSTU and V
WX Y and Z |
Now I know my ABCs. Next time won’t you sing with me?(最も一般的)
ABCDEFG I am singing ABC. Now you know your ABC. Everybody sing with me. |
LMNOPが速い
1つのand |
LMNOP QRS TUV WX
Y and Z |
||
ゆっくり
1つのand |
LMN OPQRSTU
VW and XYZ |
||
ゆっくり
andなし |
LMN OPQRSTU V W XYZ |
A~Kまではどのバージョンでも共通する部分です。問題はL~Zで、LMNOPを一気に歌うものと、ゆっくり歌うものの2タイプあります。またメロディーに合わせるためのandを入れる位置が違ったり、使わないものもあったりします。
一番下の「ゆっくりandなし」のABCソングは子どもにはおすすめです。余計なandがなく、一文字ごとにゆっくりと歌えるからです。MとNは発音が紛らわしいので、この部分は特にしっかりと発音させたいところです。
Mは上下の両唇を完全に合わせますが、Nは唇を開いたままです。このかたまりは、その前にLがあり舌先を上の歯の裏側に触れたまま音を出すのが正解です。お母さんは何度も口の形を見せてあげながら、子どもに覚えさせるしかありません。
おわりのパートにもいくつかパターンがあるので3つだけ表に掲載しました。ここはアルファベットと関係ないので、お母さんが歌うパートでいいと思います。
アルファベット表
動画などでA~Kまで歌えるようになったら、「アルファベット表」を買いましょう。Amazonなどで検索すると多くのアルファベット表がヒットします。後悔しないアルファベット表を選ぶためのコツを説明します。
- アルファベット・単語・絵の3点が基本セット
アルファベット表を選ぶときは、そのアルファベットの大文字と小文字の両方が表記されて、その文字を使った単語とイラストが印刷されているものを選びましょう。Aだったら、appleと書いてあって、リンゴの絵が印刷されているものがいいです。
A a | apple | ![]() |
この3点セットは「フォニックス(英語のつづりと音の規則)」を同時に覚えるための必須条件です。とても大切なポイントなので、それ以外のものは論外です。
また、少々細かい話になりますが、母音は短母音だけを扱った単語に絞った方がいいです。短母音は文字通り短い一つの母音(a, e, i, o, u)のことです。短母音と長母音をまとめた表をご覧ください。
綴り | 短母音 | 長母音(二重母音) | ||
---|---|---|---|---|
a | [æ] | apple | [ei] | face |
e | [e] | egg | [iː] | meet |
i | [i] | insect | [ai] | ice |
o | [ɔ] | ox | [ou] | hope |
u | [ʌ] | up | [juː] | cube |
なじみのない短母音の音を最初に覚えておけば、長母音(二重母音)はアルファベットと同じ読み方で乗り切れるからです。例えば「I i」の項目なら、iceではなくinsectと書いてあるほうが子どもの学習に向いています。
もう一つ注目するポイントは、“X”の項目です。単語の頭にXを使用することを優先させると、xylophone(ザイロフォン:木琴)と表記されることが多いです。しかし、“X”をザイと読むことは例外です。
“X”は単語の中では圧倒的に【ks】で使用されることが多いので、“fox”や“box”を例として出されるほうが、後の学習効果は高いです。ここは語頭に使用されることにこだわらないほうが無難です。
- お風呂に貼るなら防水タイプを
お風呂タイムにABCソングを歌うのもいいアイデアです。その場合、普通の紙では水に濡れてダメになってしまうので、防水かどうかを確認しなければなりません。
アルファベットで覚えにくいところをシャンプーの泡で隠しておき、子どもに言わせてから水鉄砲で答え合わせをするのもおもしろそうです(ゲーム化です)。
- ボロボロになっても使い倒す
壁用でもお風呂用でも、四角いマス目のなかにアルファベットとイラストが描かれているものがおすすめです。子どもがアルファベットをほとんど覚えた頃には、ポスターはボロボロです。
これをすぐに捨てずに、マス目に沿ってハサミで切り取ります。そして、厚紙に貼り付けると「単語カード」の出来上がりです。なじみ深い絵と単語が書いてあるので、いろいろとゲームに使えます。
- ネイティブ用と日本人の子ども用どちらがいい?
アルファベット表には英語ネイティブの子ども向けのものと日本人の子ども向けのものの2種類があります。それぞれ長所短所があります。まずは下の表をご覧ください。
長所 | 短所 | |
---|---|---|
ネイティブ用 | 英語だけで表記されている | なじみのない食べ物の単語や絵がある |
日本人用 | 日本の子どもになじみのある単語が使われている | カタカナで読み仮名がふってあり、不正確 |
カタカナの読み仮名は英語習得の弊害になりうるので、できれば避けたいところです。しかし、ネイティブ用のアルファベット表には日本人にはほとんど知られていない単語が使われていることがあり、子どもはイメージできません。
以前私が購入したアルファベット表には、Lのマスに“licorice”と書いてあり、ぜんまいのような絵が描いてありました。私も子どももいつもこのLで頭の中に「?」マークが浮かんでしまい一瞬シラケてしまいました。
リコリスは植物からとった成分でつくったグミのような甘いお菓子です。ヨーロッパでは人気のスイーツらしいのですが、日本人の味覚に合わないらしくほとんど流通していません。
この点は日本人用アルファベット表のLには“lion”とそのイラストが印刷されているので、子どものノリが違います。
難しいところですが、日本人用のアルファベット表を選んで、必要に応じてカタカナの読み仮名をマーカーで消しておくなどのひと工夫が必要です。
アルファベットの大文字と小文字をどう教えるか
あらためて考えてみると、大文字と小文字に相当する日本語の文字はありません。Cとcのように形が同じでサイズが小さくなるだけなら話は簡単です。一方、Rとrのように一見まったく別の文字が同じアルファベットであることを理解するのは意外と大変です。
私の場合は、しばらく大文字だけ扱っていました。あるとき子どもが「これ、何?」と小文字を指してたずねてきたので、「子どもの文字だよ」と答えました。
「犬は大人も子どもも大きさが違うだけで、形は同じでしょ。しかし、ニワトリとひよこは形が変わるよね。アルファベットも大人の文字と子どもの文字で似ているのもあれば、全然違うのもあるんだよ」と説明しました。
Bの小文字がbかdかで迷うことはしばらく続きました。それでも成長するにつれて、わかるようになりました。あまり神経質にならずに、少しずつ覚えていけば大丈夫です。お母さんはゆったりと構えておきましょう。
アルファベットのアプリで練習
従来はABCソングとアルファベット表だけで学習していました。しかし、スマートフォンやタブレットを使うとさらに効果的に覚えられます。各社からアプリケーションが提供されているので、いろいろ試してみて子どもと相性の良さそうなものを選びましょう。
アプリには有料のものと無料のものがあります。有料のものはサービスの一部を無料で試せるようになっています。無料のものは広告が表示されるようになっています。
ほとんどのアプリでは「指でなぞり書き」「フォニックス学習」をかわいいイラストやアニメを見ながら楽しく学べるようになっています。しばらく遊んでいるうちに数字の1~10まで覚えてしまうかもしれません。
子どもが英語を読むためのフォニックスの学習
フォニックスとは「綴りと音の規則」のことで、英語圏の子ども達は小学校に入ると必修になっているようです。この流れから日本でもこのフォニックスを導入する英語教室や学校が増えてきています。
一方、さまざまな理由から「フォニックスは不要」と言い切る人もいます。どちらの主張にも一理あるように感じますが、アプローチ方法が異なるだけで「英語を正しく読めるようになる」ゴールは共通です。
私の意見は、両者の中間にあります。「フォニックスは必要最低限のレベルまでを扱い、その後は正しい音(発音)を聞かせながら自然と英語の読み方を覚える」のがベストだと感じます。
フォニックスをまったく扱わないのはもったいないし、やりすぎはかえって遠回りになります。まずはフォニックスが必要な理由について、詳しく説明します。
フォニックスが必要な理由:英語の読み方を覚えるため
フォニックスが必要な理由を理解するために、日本語と英語で比較して、「あいうえお」と「ABC(アルファベット)」の違いを説明します。
例えば日本語で「あいうえお かきくけこ」まで子どもが覚えたとします。この子どもは「あかい かき(赤い柿)」を見たら、正しく読めるはずです。このことを図で表すと下のようになります。
これは日本語の文字である「あいうえお…」は「1文字=1音」だからです。「あ」は「あ」の読み方ひとつだけです。だから、すぐに読めるのです。例外は「は」を「は」または「わ」と読むくらいです。
次に英語のアルファベットを「ABCDEFG」まで覚えた子どもがいたとします。その子は「BADGE(バッジ)」を初めて見たときに、正しく発音できるでしょうか? 答えはノーです。
なぜなら「アルファベットとしての読み方」と「単語の中で使われたときの音」は一致しないからです。アルファベットの「A(エイ)」はBADGEの中では「ア」です。これではアルファベットを覚えても読めません。
しかし「FACE(顔)」の中の「A」は「エイ」とアルファベット通りに読みます。文字から学習を始めたら、初めて英語を学ぶ子どもが混乱する理由はここにあります。
そこで登場するのが「フォニックス」です。単語の中で使われる音にはゆるい規則があって、これを学ぶと初めてみた単語でも子どもは自分で読めるようになります。図で表すと下のようになります。
これが、フォニックスを学ぶメリットです。実際、単語の読み方がわかってくると読書量は飛躍的に伸びるので、英語力もそれに比例して伸びていきます。
こうなると「フォニックスをどんどん導入して早く読めるようにしましょう」という流れになるのですが、実際はそう簡単にはいきません。フォニックスを扱うことにはデメリットもあります。
フォニックスのデメリット
本格的なフォニックスの指導書を見ると、細かいルールだらけで専門の指導者でない限りとても覚えられません。子どもにこれらのルールをすべて覚えさせるのは非効率的です。
そしてフォニックス最大の欠点は、全単語の約25%はフォニックス・ルールの例外であることです。つまり、ルールを完璧にマスターしても4分の1の単語は読めるようにならないことになります。
実際フォニックスが確立される前でも、人びとは英語を読めるようになりました。今さらそんな「欠陥だらけのルール」を一生懸命に覚えることは無意味なのではないか、という主張もうなずけます。
ここで問題です。“ghoti”を読めるでしょうか? ヒントは、“rough”のghは【f】、“women”のoは【i】、“nation”のtiは【sh】の音です。これらを合わせると、“ghoti”は【fish】と読まなければいけません。
もちろんこのような単語はありません。アイルランドの劇作家であるバーナード・ショウが英語のつづりと音が滅茶苦茶であることを皮肉って「ghotiをfishと読むように」と提案したというエピソードから引用しました。
このように英語の綴りと読み方の関係は「ルールがあるような、ないような」関係といえます。このためフォニックス賛成・反対の意見が出てくるのです。
最低限のフォニックスだけで充分効果を発揮する
では「子どもにフォニックスを教えるべきか、やめておくべきか」を考えてみましょう。私の結論は「最低限のフォニックス」は子どもが文章をスムーズに読めるようになるために効果的だと考えています。
実際に子どもにフォニックスを学ばせる手順を5段階でまとめてみました。
1)アルファベットを覚える
前項で説明した通り、とりあえずアルファベットを覚えましょう。書けるのは後回しでかまわないので、A~Zまで読めることが大切です。小文字もセットで読めるようにしましょう。
2)母音は短母音、子音も代表的な一つの音だけを覚えさせる
「アルファベットの読み方と、単語の中の読み方は違う」ことを説明しますが、くどくど説明するのは無駄です。それより「Aa(エイ)、ア、ア、ア、Apple」のようにお母さんが声に出して読んでみせて、子どもにリピートさせるのが一番です。
先述した、短母音だけを扱ったアルファベット表はここで役に立ちます。
3)よくある子音の組み合わせを意識させる
ch/sh/wh/th/th/ph/ck/ngの子音の組み合わせは単語の中で頻出するので、絵本を読み聞かせするときに出てきたら、意識させたほうがいいです。
たとえば“chick”(ひよこ)が絵本に出てきたら、“ch”を含む別の単語を書きます。例えば、“cheese”“chest”などです。“ch”のところにアンダーラインを引き、「お母さんが音読→子どもはリピート」が効果的です。同様に最後の“ck”に慣れさせたければ、“clock”“sick”などを紙に書いて下線を引いて、子どもと音読するだけです。
同じ綴りで同じ読み方をする別の単語を書いて見せ、一緒に音読するのも広い意味でのフォニックス練習です。これをしばらく続けていくと、初めて見た単語でも自分で読めるようになってきます。
4)一つのアルファベットで別の音になることもあることを教える
先述したように母音(a,e,i,o,u)だけを取り上げても、短母音の読み方と長母音の読み方があります。Aaを「ア」としか読まないと思っているところに、「face」が出てきたら対応できません。
子どもが疑問に感じていたら、「あれっ、aをエイって読むこともあるんだね」と一緒に驚いてあげれば、「そんなもんか」と受け入れるようになります。子どもの適応力は大人が思う以上に高いのです。「子音+読まない“e”の前は“a”はエイと読む」などの理論は子どもには受け入れられません。
5)読まない字もあることを教える
英語の綴りには、読まない文字(silent letter)もたくさんあります。
私の息子は初めてeggを見たとき「エッグッグ」と読みました。これを聞いて私は少し感動しました。なぜなら、フォニックスのルールをなんとなくわかっている「良い間違い」だからです。
だから「おう、よく読めたね! でも最後のgは読まないから、『エッグ』って読むんだよ」と伝えました。その後も何回か読み間違えて一人で笑っていましたが、3回目くらいから間違えることはなくなりました。
eightのgh、knifeのk, bombのbはすべて発音されません。英語は本当に複雑です。しかし、一つひとつの綴りを目で確認して、お母さんの口まねをしながら身につけていけばそのうちマスターできるので安心してください。
このように、フォニックスの基本だけに絞って教えるだけでも充分効果を発揮します。1000語くらいの基本語彙をマスターする頃にはほとんどのフォニックスのパターンは出尽くしますし、主な例外的な読み方も網羅出来ます。
フォニックスのルールにしがみつくより、声を出して正しく読む練習を積むほうが手っ取り早く英語が読めるようになります。
まとめ
アルファベットの学習からフォニックスの基本につなげる部分は、後の英語力を伸ばすための大切なステップです。単語の読み方に関しては、英語は日本語よりも複雑なので、焦らずに声を出しながら身につけることが重要です。
お母さんが声に出してそれを子どもは真似をするのが最強の音声学習です。しかし、四六時中お母さんが指導するわけにもいきません。そういうときは、デジタル機器の利点を活用して子どもに遊びながら学ばせるのが効果的です。
フォニックスの基本をわかってくると、子どもは急速に英語の本を読めるようになります。読んだ文章量に比例して語彙や表現が増えていきます。この段階までくると学習効率は飛躍的に伸びるので、子どもは自分でも進歩を実感して「英語は楽しい」と感じるようになります。
お母さんの役割は「言って見せ、ゲーム感覚で学ばせ、出来たらほめる」だけです。英語学習の最初の一歩を順調に踏み出せるようにサポートしましょう。