突然ですが、「あなたの周りに英単語はいくつあるか」教えてください。目をつぶって。ハイ、始め!
どうでしたか? 「一つもありません」と答えたお母さんが多いと思います。では目を開けて、今度は英語を探すつもりでぐるりと部屋の中を見渡してください。カレンダーの曜日の「Sun」、電源タップの「on」、電気ポットの「push」など次々に見つかるはずです。
普段の生活圏にたくさん英語があるのだから、これらをフル活用して子どもの語彙力を増強しましょう。勉強を前面に打ち出すと子どもは逃げ出します。ゲーム感覚で取り組むことをおすすめします。
身の回りの英語はこれから何度も目にします。繰り返し触れることで、忘れにくくなる効果があります。ぜひ、最後まで記事を読んで、さっそく取り組んでみましょう。
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子どもの身の回りの英単語を利用しよう
「日本人が英語を話せないのは、英語を使う環境がないから」という指摘は一理あります。確かに日常生活で、英語を話す場面はほとんどありません。
しかし、日本は英語で溢れています。カタカナ語も含めて、外に出ると英語やその他の言語で書かれた看板・ポスターなどを頻繁に目にします。
「子どもに英語に興味をもってもらいたい」と思うなら、まずは生活圏に「英語」を見つけて、興味を持たせるところから始めましょう。
近所の看板に注目しよう
休みの日、子どもと外に出かけるなら、とりあえず近所の看板に注目してみましょう。「ウチの近所には英語の看板はそんなに多くない」と思うかもしれません。
しかし、それは普段あまり意識せずに素通りしているからです。子どもとゲーム感覚で、近所の英単語を探し出し、その意味を予想したり調べたりするだけでもいい勉強になります。
カラーバス効果とは
有名な心理学用語で「カラーバス効果」というものがあります。何かを意識すると、それに関係する情報が目に飛び込んでくる現象です。
私が今の場所に引っ越しをして3週間が過ぎた頃のことです。髪が伸びたので床屋さんを探しに外に出てみると、たくさんの床屋さんがあることに初めて気がつきました。
引っ越してから3週間、同じ景色を見ていても床屋さんの存在にさえ気づきませんでした。これはまさしく「カラーバス効果」によるものです。
あなたの近所にもきっと英単語が溢れているはずです。子どもに「今日は〇〇に出かけるよ。途中で英単語を見つけてみよう」と声をかけてみましょう。少し意識するだけで、普段まったく気づかなかった「英単語」をたくさん見つけ出せます。
子どもが英単語を得意になるテクニック
私は中学生の頃から英語が得意でした。あるとき気づいたのは、「他の生徒より私のほうが単語に関して敏感だ」ということでした。
当時流行していた洋楽バンドの「カルチャー・クラブ」が話題に出たとき、「カルチャーって何?」と気になりました。友達のCDジャケットで綴りを見て辞書で調べました。
「cultureって文化のことか。そういえば駅前にあるカルチャー・スクールっていろんな習いごとをするところだから、文化って言葉が使われていたんだ…」
このように、一語調べたらできる限り別の何かと関連づけるのが習慣でした。当時は意識をしていませんでしたが、これは記憶を定着させるのにとても良い方法です。
もちろんすべての単語をこのように展開できるわけではありません。無理矢理暗記するしかないものも結構あります。しかし知らない単語に出会ったときのちょっとした行動習慣がその後の語彙力にかなり影響を与えるのは間違いありません。
頻繁に思い出すと忘れなくなる
英単語に対して敏感になるのも大切ですが、やはり人間は忘れます。「覚える→忘れる→再び覚える→忘れる→覚える」という反復をすることで、記憶は定着していきます。
子どもと街歩きをして英語を集めて、一週間経って再び同じコースを歩いたとき、子どもはカラーバス効果により再び同じ単語を目にします。ここで忘れかけていた意味を思い出すかもしれないし、忘れてしまっているかもしれません。
そこでお母さんが「〇〇はこういう意味だったっけ?」とヒントを出せば、記憶は定着していきます。そのあとまったく別の場所で別の文脈で同じ単語を見たとき、さらに単語の意味はより豊かな形で記憶に残っていきます。
ボキャブラリーの増強はこれの繰り返しです。すべての単語をこのように覚えられるわけではありません。単語集を使わないと、いつまでたっても登場しない単語もあります。しかし、実体験に基づいた単語は「忘れにくい」特徴があります。
ぜひ、子どもと外出するときは英単語を意識させてみてください。このときくれぐれも「勉強っぽさ」を出さずに、ゲーム感覚を演出するように心がけましょう。
街に出て英語を探そう
まずは、論より証拠。私が昨日、駅の反対側にある床屋さんへ往復した間に見かけた英単語(英文)を集めてみました。自分でもびっくりするくらいたくさん見つけられました。
Rental Dance Studio
日本語では「スタジオ」ですが、英語の場合「ストゥディオ」と発音します。「お金を払って、ダンスをする場所を提供している看板だよ」と子どもに教えてあげると、何の看板かわかるようになります。
FOR RENT
アメリカ映画を観ていると、家の前に立つ「FOR RENT」の看板を目にします。rentは名詞で「賃貸料」のことなので、「FOR RENT」で「賃貸用(に募集中)」の意味です。
同様に「FOR SALE」は「売り家」のことです。
82 seats/ 18 seats
何気ない看板ですが、学ぶことは多いです。まず、数字を読めるでしょうか? 「Eighty-two, Eighteen」です。次に、seatの読み方のコツは、最初のsを隠すと「食べる」意味の「eat」になります。
偶然、ハンバーガーショップなので、seatのついでにeatも関連付けて覚えてしまいましょう。
Station Information/ Guide Map
観光地に行けば「i」のマークはよく見かけます。informationのことです。
ENTRANCE
「entrance」は名詞なので入口、動詞に変わると「enter」で「~に入る」意味です。注意しなければならないのは、「toやintoなどの前置詞は不要である」ことです。
例文)The train entered a tunnel.(電車はトンネルに入った)
West Exit
まず、「exit」は「出口」のことで、「entrance」の反意語です。
次に方角の「west」を覚えたなら、ついでに他の方向も覚えてしまいましょう。
QUEEN’S ISETAN
200メートルの距離に「QUEEN’S ISETAN」と「BURGER KING」があるこの街はさながら「王国」(kingdom)です! 「Queen’s」の「’s]は所有を表しているので「女王の伊勢丹」の意味になります。
WHOPPER
バーガーキングで限定販売中だった「whopper」【名詞】は「途方もなく大きいもの」の意味です。試しに注文してみると、隣のチーズバーガーよりもふた回りくらい大きかったです。私はこの単語を初めて知りましたが、体験と結びついたので意味を忘れることはないでしょう。
Elevator
イギリス英語だと「lift」と表記されます。
Tickets/ Charge
交通形ICカードをチャージするときは、英語では「top up」とか「load」を使います。英語の「charge」は「請求する・充電する」意味になってしまいます。
BURGER KING
BURGER KINGで「バーガーの王様」の意味です。
MAKE A DIFFERENCE/ THIS SUMMER/ ANYTIME FITNESS
「different」【形容詞】は「異なる」で、その名詞形が「difference」です。「make a difference」で「違いを作れ!」という意味です。スポーツジムのキャッチコピーです。
「anytime」は「いつでも」の意です(ここは24時間オープンがウリのジムです)
3 COINS
100円硬貨3枚で買えるから「3 coins」。
TAXI
「take a taxi」で「タクシーに乗る」の 意味です。
STAFF
「staff」はほとんど日本語化していて意味は「スタッフ」です。難しいのは「staff」は集合名詞(複数のグループを一つのものとして扱う)なので「I am a staff.」と言えません。正しくは「I am a member of the staff.」です。意外と奥の深い単語です。
Billiards/ Darts
billiardの綴りを注意深く見ながら、発音してみましょう。カタカナ読みすると「ヤ」に相当する「y」は含まれていません。指で綴りを追いながらゆっくりと読み上げる練習をすると、フォニックス(綴りと発音のルール)の練習にもなります。
We are Reds! / We are supporting Urawa Reds.
「We are ~.」でbe動詞の現在形まで学習できます。
片道10分でも、こんなにたくさんの看板やポスターに英語を見つけられました。次に、これらの単語を効率よく覚える方法を紹介します。そしてその単語を関連付けたり、横に展開したりして、さらに豊かな語彙力を身につけるための工夫を説明します。
語彙力増強法
さきほど集めた近所の英語を使って、子どもにどのように与えると英語が得意になるかを説明します。集めたままにするのではなく、この「ひと手間」をかけることによって、子どものボキャブラリーは何倍も豊かになります。
正しく読んで反復する
お母さんにぜひ実践して欲しいのは、新しい単語に出会ったときは子どもに「正しく音読させる」ことです。まずは、綴りを見ながら一緒に発音してみましょう。もし、読み方がわからなかったら、音声付きの電子辞書やスマートフォンで調べましょう。
意味を調べるのは「正しく音読できた」あとです。読めない単語は「使えない単語」だからです。
では「正しく読めて意味がわかった」ら、次は覚えた単語を関連付けたり「横に展開」させたりしてボキャブラリーを膨らませます。
反意語
集めた単語を眺めてみると、反意語(反対の意味を持つ言葉)やペアやグループで覚えたほうがいい言葉に気づきます。
king/ queen(王/女王)
entrance/ exit(入口/出口)
east/ west/ south/ north(東西南北)
品詞を変えてみる
dart【名詞】ダーツ(の矢)【動詞】さっと動く
例文 The lizard darted to the bush. (トカゲは草むらへさっと動いた)
ダーツの矢と同じように、「ス―ッと移動する」イメージはつかめましたか?
rent【名詞】賃貸料、 rental【名詞】家賃、賃貸し【形容詞】賃貸の
子どもには「賃貸とは何か」を説明する必要があります。英語を学ぶことは日本語の理解を深めることにもつながるので、面倒くさがらずに教えてあげましょう。
複数形
seats/ tickets/ darts/ coins/ billiards/ reds
名詞にsをつけるだけの単純なものばかりですが、読み方に意識を向けましょう。無声音で終わる場合は【s】、有声音で終わる場合は【z】の音になります。
無声音とは声帯を振動させないで出す音です。のどに指をあてて発音しても、振動を感じなければ無声音です。反対に、振動を感じるときは有声音といます。
seat, ticket, dartの t の音は無声音(声帯が振動しない音)なので、s をつけると「ツ」の音になります。反対にcoin, billiard, redのn, dの音は有声音なので、「ズ」の音です。
文法
We are reds./ We are supporting reds.
埼玉県の浦和はサッカーの街で、いたるところに「浦和レッズ」の存在を感じます。毎日、「We are reds.」と声に出して読んでいれば、「Weのbe動詞は何だっけ」と考えなくても出てくるようになります。
「We are supporting reds.」には現在進行形(be+-ing)が使われています。
現在の状態「私たちはレッズを応援しています」を表しているので、本来は「We support reds.」の現在形で表現するべきです。おなじような例でマクドナルドのCMでも「I’m lovin’ it」がありました。
あえて進行形にすることで、躍動感を演出していると思われます。ちなみに、supportに-erをつけるとsupporter(サポーター:応援する人)になります。
ケガしたときに使うサポーターも「支える」意味が中心にあります。ケガした患部を「支えるもの」という意味です。
support 一語だけでも、ここまで話を膨らませられます。
まとめ
このように私たちの身の周りにはたくさんの英語や英語に由来するカタカナがあります。普段気がつかないだけで、その気になればいくつも見つけることができます。
もし子どもが英語を勉強しているなら、これらの単語を教材にしてみましょう。街で見つけたら、「正しく音読」したあと、意味を調べます。
このようなことを続けているうちに、単語どうしで関連付けするとさらに語彙力は増していきます。
街歩きはその後何度も反復します。そのたびに同じ単語を読むので、自然に復習することになります。このようにして覚えると単語の読み方や意味は忘れにくくなります。
この勉強法の一番の目的は、子どもの英語に対する感性を高めておくことです。ちょっと気になる単語に出会ったときに、読み方を学び意味を調べるだけでも大きな進歩です。そこからさらに別の何かと結び付けられるようになると、記憶は強化されます。
お母さんのちょっとしたアドバイスで取り組めるので、ぜひチャレンジしてみてください。