お母さん世代なら覚えているでしょうが「than」や 「as ~ as」を使った比較表現は中学校で習いました。この頃に扱われる比較表現は簡単なので多くの生徒にとって理解は難しくありません。
ところが高校に入った途端、今まで見たこともない「than」や「as ~ as」の比較表現が登場します。中学まではA is taller than B. だったのが、高校に入るとA is taller than B is. と当然のように教えられます。
実は高校で習う比較表現は「最も基本的な型」です。中学で学ぶのは「究極に省略された型」または「文法から外れてしまった口語表現」です。
問題は、そのギャップを埋める指導がほとんどなされないことです。高校の英語教師は中学でどこまで教えるかついてあまり関心を払っていません。中学の先生も高校で教えられる内容についてあまり詳しく理解していません。
そこで今回の記事では「比較表現の基本」について詳しく解説しました。
小学生にとって比較表現は簡単ではありません。しかし、「最も基本的な型」を理解すれば、高校に進学したときもスムーズに学習できます。もし子どもの英語レベルが大丈夫そうだったら、時間をとってお母さんから「比較表現」を教えてみましょう。
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Jane is taller than Mike. を徹底解説!
子どもに英語を教えるときは、「動画・写真・イラストなど視覚に訴えるもの」を活用するのが一般的です。特に比較表現では具体的なものを見せないと「AよりBが~」「AとBは同じくらい~」を理解しづらいです。
今回は3人の子どもの写真を用意しました。名前と年齢(数字)を追加しました。
これを使って小学生にもわかるように比較表現を解説します。たったの3ステップで誰でも理解できます。
Jane is tall. とMike is tall.
最初に「背比べ」をしてみます。形容詞の「tall」を基準にします。このとき本当に背が高いかどうかは関係ありません。背が低い者どうしを比べることもあります。実際に高いかどうかではなく、「高い」を基準にしてどちらが程度は強いのかを比べています。
まずJaneとMikeについて2つの文章を別々に作ります。
比較の文章では常に程度の強いほうを左側(最初に)、程度の弱いほうを右側に置きます。子どもがこれらの文章を理解できなければ、比較表現は早すぎます。もう少し準備してから挑戦しましょう。ここまでが最初のステップです。
ふたつの文章をthanでつなごう
次に、さきほどの2つの文章を「than」を使ってつなぎます。thanは文法的には「接続詞」です。つまり文と文をつなぐ働きをします。
この「than」には特徴があって、これだけでは文章をつなげません。
例えば、「ボルト」は何かを固定するものです。しかし、これだけで何かと何かをつなぎ合わせることはできません。必ず「ナット」が必要です。
thanをボルトに例えると、ナットは形容詞の比較級です。比較級とは簡単に言えば、形容詞の最後に-erをつけたり(old→older)形容詞の前にmoreをつけたりする(beautiful→more beautiful)ことで作れます。
すると次の文章ができあがります。
ここまでが第2ステップです。
前に出てきたのと同じものは省略・削除
いよいよ最後のステップです。ここからは、余計なものを削除したり省略したりして形を整えていきます。
*共通している比較の「基準」はあとに登場するほうを削除する
今回は「tall」という共通する基準で比較しているので、うしろのtallは削除します。
Jane is taller than Mike is tall.
これでthanを使った比較級の最もスタンダードな文章が完成です。
*左側の文章と右側の文章の共通している部分は省略可能
この例文ではis(be動詞)が共通しているので省略できます(省略しなくてもいいです)。
これがギリギリまで削った型です。お母さん達が中学校で習った比較級のタイプはこれです。最も短いので初心者用のテキストにはこの文章が好まれて掲載されます。
省略しない変化もあるので、ひとつだけ紹介します。
swimsを繰り返し使わずに、doesに置き換えました。これはやや上級編です。もちろん、動詞そのものを省略しても大丈夫です。
ここまで3ステップに分けて、thanを使った比較級の文章について解説しました。お母さんが中学校の頃に初めて習ったthanの例文は「省略の究極形」であることがポイントです。
最初にこの形から覚えるとその場は簡単です。しかし、将来スタンダードなタイプ(Jane is taller than Mike is.)を見たときに「えっ、何でMikeのあとにisがついているのだろう」と混乱してしまいます。
「最初に基本形を習ってから省略も可能」と理解したほうが、子どものためになると私は思っています。
Jane is as old as Billy. を徹底解説
比較表現にはthanの他に、「as ~ as」 を用いて「~と同じくらい…」の意味になる用法があります。ここでもthanと同じく3ステップに分けて詳しく説明します。
Jane is old. と Billy is old.
写真のJaneとBillyは同じ9歳です。そこで今度は「old」を基準にして等しいことを表すふたつの文章を用意します。ここでも強調したいほうを最初(左側)に置きます。
ここではJaneにフォーカスを当てて、「JaneとBillyは同い年です」という意味の文章を作ってみます。
ここまでが最初のステップです。
ふたつの文章をasでつなごう
次に、2つの文章をasでつなぎます。ここでもthanのときに登場した「ボルトとナット」の話を思い出してください。asだけで文章をつなげないので、左側の形容詞の前にasをナット代わりに置きます。
ここまでが第2ステップです。
前に出てきたのと同じものは省略・削除
いよいよ最後のステップです。ここからは、余計なものを削除したり省略したりして形を整えていきます。
*共通の比較の「基準」はあとに登場するほうを削除する
今回は「old」という共通する基準で比較しているので、うしろのoldは削除します。
これがas asを使った比較級の最もスタンダードな形です。
*左側の文章と右側の文章の共通している部分は省略可能
これが中学校の教科書にも出てくる究極まで削った形です。
「(2番目の)as」 は接続詞なので、うしろにセンテンス(主語+動詞…)が続くことを理解することが肝心です。省略されているものをイメージしながら補えれば合格です。
口語表現で注意すること
口語表現と聞くと「やさしい言葉」「イケてる言葉」を連想するかもしれません。しかし、そのほとんどは文法からズレていて、外国人にとってやっかいです。
これから紹介する口語表現は、本来の正統的な表現を超えるほど市民権を得ているのでなおさらやっかいです。
Jane is taller than Mike. を代名詞で書き換えてみる
Jane is taller than Mike. を代名詞を使って書き換えてみます。
これで正解ですが、「口語ではthanのうしろに目的格を置くことが多い」です。すると主格のheはhimに変化します。
これまで説明してきたように、thanのうしろにはセンテンス(主語+動詞…)が続きます。普通に考えればMikeの代名詞として文法的に正しいのは「he」です。
しかし、口語表現では頻繁にthanのうしろに目的格(ここではhim)を続けます。ある調査によると、ネイティブが自然に感じる比較表現を順番に並べると次のようになったそうです。
2位:She is taller than him. (1位と僅差で)
3位:She is taller than he. (低い支持率)
日本語でも本来正しくないとされる「ら抜き言葉」が徐々に多数派になりつつあります。英語でも似た現象が見られるのは興味深いです。
こんな文も読めるようになる
私が最も短く省略された形や口語体ではなく、比例表現の基本形から説明したのには理由があります。それは「最も応用が利く」からです。
入試では教科書の表現に留意して問題は作成されます。だから省略された型から学んでも支障はないです。
一方、ネイティブの子ども向けに書かれた本は、基本形を理解していないと読めない比較表現で溢れています。そのような文章にであったときに子どもが慌てないために、やはり基本形を抑えておいたほうがいいです。
「入試に出る・出ない」で学ぶ内容を考えるのではなく、本物の英語を理解するために学ぶという基準を忘れてはいけません。
ネイティブのYear3~4(小2~3)に人気のGeronimo Stiltonに出てくる比較表現
ネイティブの子どもが読む本の中で比較表現はどのように登場するのかを解説します。ここで取り上げるのはGeronimo Stiltonのシリーズです。
Geronimo Stiltonは新聞社を経営しているネズミです。このシリーズはネズミにまつわるダジャレがちりばめられていて、小学校低学年~中学年の子どもに人気の児童書です。
その中のTHE KARATE MOUSEでは、主人公のGeronimoが空手の試合に出場する話です。手強い相手と試合中の場面からの引用です。
Champrat was big, tall, and covered with muscles, but he was a lot slower than I was!
(チャンピオンのネズミは大きくて背が高くて筋肉に覆われていたが、僕よりずっと遅かった!)Geronimo Stilton THE KARATE MOUSE
基本を理解していれば簡単に読める文章です。しかし、もしhe was a lot slower than me.とかhe was a lot slower than I.の形でしか比較表現を習っていなかったら、きっと混乱するでしょう。
やはり応用の利く基本形を学んだほうが近道です。
まとめ
「than」を使った比較表現と「as ~ as」 を使った比較表現を3つのステップに分けてわかりやすく解説しました。お母さんの多くは中学校から英語を本格的に学んでいますが、そのときに扱われる比較表現は最も省略がすすんだ形です。
thanもasも文章と文章をつなぐ役割をしているので、主語と動詞が続きます。条件が揃ったときだけ省略できます。
口語ではthanのあとを目的格にすることがあり、文法に忠実な文章と同じくらい広く使われています。英語学習者にとってはやっかいですが慣れるしかありません。
比較表現をきちんと理解して英文を読めるようになるためには、一度時間をかけて比較表現を子どもに基本から理解させる必要があります。それさえできれば一気に運用力も高まるので、安易に近道を選ばないようにしましょう。