「〇〇さんの子どもが夏休みを利用して短期留学に行ったんだって」という話を妻から聞くことが増えてきました。
ママ友の反応はさまざまで「小学生には早すぎる」「短期間で英語は話せるようにならない」「経済的に余裕のある家の話で、我が家には関係ない」といったネガティブな反応も多いようです。
話を聞きながら私は適当にあいづちを打っていますが、本音では「ツボを押さえれば、短期留学は英語習得にとって大きなメリットになる」と考えています。
短期留学成功の秘訣は、「留学で得られる効果を正しく理解すること」と「多様な短期留学の種類をきちんと理解して、子どもに適したものを選ぶこと」の2点です。この2つの秘訣をおさえると、帰国後の英語学習に対するモチベーションが劇的に向上します。
今回の記事では、短期留学成功のための2つの秘訣について順番に解説していきます。
Contents
成功の秘訣1:留学で得られる効果を正しく理解する
短期留学とは、10日間~数週間程度で終了する留学のことです。一般的に「日本人が英語を習得するためには3,000時間必要」といわれているので、どんなに英語漬けの生活を送っても、短期留学だけでは英語をマスターできません。
しかし、短期留学で得られた経験をきっかけに、「帰国後の英語学習に対するモチベーション(意欲)を劇的に高める」ことは充分に可能です。
短期留学では、主に以下のような経験を得ることができます。
自分の英語が相手に「通じた」という喜びの成功体験
海外に行って自分の英語が相手に通じた成功体験は、ポジティブな記憶として残ります。この成功体験は、間違いなく英語学習のモチベーションをあげてくれます。
例えば、ホストファミリーと食事をしていて“Would you like some more?”(もっといかがですか)と聞かれて、“No, thanks. I’m full.”(いいえ結構です。お腹がいっぱいなので)とたまたまどこかで習ったフレーズが口をついて出てきたとします。
何気ない一場面ですが、この経験から得られる効果は大きいです。なぜなら、「英語のフレーズをすぐに口から出るレベルまで何度も暗唱する」という地味な努力の成果を体験できたからです。
留学する以前は、いやいや取り組んでいた英語の暗唱を帰国後は自発的に何度も練習するようになるかもしれません。知識として「英会話の上達には暗唱は欠かせない」と理解することと、体験して実感することでは天と地ほどの差があります。
自分の気持ちを英語で伝えられないフラストレーション
成功体験だけでなく、自分の気持ちがうまく英語で伝えられないときに感じる強いフラストレーション(もどかしさ)も、英語学習に対するモチベーションを上げる効果があります。
私が25歳で、初めての海外となるニュージーランドに行ったときのこと。電車で偶然向かいの席に座った中学生くらいの女の子と話す機会がありました。話題は日本の捕鯨問題で、彼女は捕鯨反対、私は賛成の立場でした。
小さいころからディベートの訓練を積んでいるらしく、彼女は理路整然と反対の主張をしてきました。一方、大人の私はしどろもどろになってしまいました。結局、あっという間に彼女にやりこめられて終了しました。
この経験は結構悔しくて、帰国してからエッセイ(小論文)の書き方を勉強して、論理的に考えを伝える練習をしたのです。議論で負けた悔しさがきっかけとなり、それまで避けていた学習を始めたのです。
このように、英語でのコミュニケーションのなかで感じたフラストレーションは、その後の学習に良い影響をもたらします。ただし、子どもの場合あまり強いストレスがかかると英語を嫌いになってしまいます。成功体験とフラストレーションの両方ともあるのが理想的です。
世界各国の同年代の子ども達と直接触れ合うことでしか得られない経験
今は、インターネットで世界中の情報が共有できる時代です。しかし、インターネット上でどうしてもできないことは人間と人間の直接的なふれあいです。
考え方や文化がまったく異なる外国人と直接交流したときに、いろいろな学びが得られます。日本人同士では暗黙の了解になっていることも、外国では当たり前ではないことを経験します。
例えば、日本人の子どもが年上の子どもに向かって「ケン!」と呼び捨てにすることには抵抗があるはずです。しかし、海外ではファーストネームで呼び合うのが普通です。
このようなシチュエーションは日本ではほとんどないので、文化の違いを考える貴重な経験となります。
英語を教科としてではなく、コミュニケーションの道具として認識する
日本だけで英語学習を続けていると、いつのまにか「英語=受験科目」としてのみ認識するようになります。その結果、「受験が終わったら英語は必要ない」と考える子どもが増えてしまいます。
「英語はコミュニケーションの道具である」という当たり前の認識が薄れてしまうのです。しかし、短期留学のときに日常会話で英語を使う人たちを目の当たりにすれば、道具としての英語を忘れることはないです。
この経験をした子どもは、受験勉強という枠を超えて、その先にある「使うための英語」を身につけようと努力するようになります。これは短期留学で得られる貴重な経験のひとつです。
短期留学で得られる効果のまとめ
繰り返しになりますが、短期留学の目標はそこで英語を上達させることではありません。短期留学中の経験をもとに、帰国してからの英語学習のモチベーションを上げることが、短期留学の最大の目標です。
留学体験が活かされるかどうかは、それまでの英語学習と子どもの好奇心の大きさに比例します。あなたの子どもが、日頃からいろいろなことにチャレンジしたり、関心を持ったりする性格なら、短期留学は「良い経験」になる可能性が大きいです。
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成功の秘訣2「多様化する留学を正しく理解しよう」
短期留学成功の二番目の秘訣は、「多様な短期留学の種類をきちんと理解して、子どもに適したものを選ぶこと」です。
短期留学のことをインターネットで調べてみると、実にいろいろな形態があることに気がつきます。留学エージェントのホームページには当たり前のようにカタカナ用語が使われているので、初めて見た人は何が書いてあるのかさっぱりわかりません。
そこで、短期留学のホームページに登場する用語や留学形態を5つの観点からわかりやすく解説します。5つの観点とは以下のとおりです。
留学 | ||
---|---|---|
期間 | 長期留学 | 短期留学 |
内容 | 語学研修タイプ | アクティビティ中心タイプ |
滞在先 | ホームステイ | 寮・ホテル ステイ |
人数 | 子どもだけ | 親子(主に母子) |
場所 | 国内 | 海外 |
以下、「期間」「内容」「滞在先」「人数」「場所」に分けて、順に解説します。
留学の期間
留学は、10日から数週間で終了する「短期留学」だけではありません。3か月以上海外で学ぶ「長期留学」もあります。ここでは長期留学も含めて「期間」について解説します。
・長期留学
小学生が長期留学をする場合は家族での移住が前提となります。そのため、一番の問題は、両親の仕事です。会社を辞めて生活できる人は限られています。お父さんは日本で働き続け、お母さんと子どもだけが留学する「母子留学」を選択をする家庭もありますが、お父さんの存在感が低下するなどの問題がありそうです。
また、海外での長期滞在にはビザ(外国人が入国に値することの証明書)の取得や住居の契約などの複雑な手続きが必要です。これらの手続きに関しては、エージェントに依頼しながら少しずつ準備をすすめることになります。
・短期留学
一方、夏休みなどを利用した短期留学は、学校を欠席せずにチャレンジできることから、小学生の子どもを持つお母さんにも人気があります。中学生以降になると部活や受験勉強が忙しくなるため、あえて小学生のときに短期留学を考える人も多いです。
小学生の子どもが親と離れて生活することはストレスです。ましてや言葉が通じない環境に置かれればなおさらです。短期留学なら本格的なホームシックになる前に帰国できるので、長期留学よりも気軽に参加できます。このことも短期留学に人気がある要因でしょう。
短期留学の内容
短期留学では、「留学中、何をするのか」という内容によっても大きく2つに分かれます。一つ目は英語の授業を中心とした「語学研修」タイプ。もう一つはキャンプなどのアウトドア活動やスポーツを中心とした「アクティビティ中心」タイプです。
・語学研修タイプ
語学研修を中心とした短期留学では、滞在先から平日学校へ通い、半日程度の英語の授業を受けることになります。
海外の多くの語学学校などは6月~8月下旬までが夏季休業です。この期間を利用して「サマースクール(夏季限定のプログラム)」の英語の授業に参加するのが主流です。
ただし、授業内容が半分以上わからないと、授業を苦痛に感じるはずです。そのため、数年間英語学習を続けて英語の基本が理解できてから参加したほうが有意義なものとなります。
・アクティビティ中心タイプ
アクティビティ中心の短期留学では、英語を使いながらスポーツやアウトドア活動に参加します。サッカー、テニス、野球、キャンプ、川下りなどが活動内容です。
例えば、サッカーを中心としたイギリス短期留学を選んだとしましょう。その場合、現地の子ども達と一緒にサッカースクールに参加することになります。コーチはもちろん英語で指示を出すので、それに従って練習や試合をします。
日本の練習とは違って、チームメイトと言葉が通じないもどかしさを感じることがあるでしょう。いいプレイができてコーチやチームメイトからほめられたら大きな自信になるかもしれません。
自分の好きなことや得意な活動を通じて、外国人と交流できるのがアクティビティ型短期留学の魅力です。
滞在先:ホームステイそれとも寮?
・ホームステイ
ホームステイという言葉がそのまま留学を意味するくらい、メジャーな形態となっています。外国の家庭に泊まり、家族と衣食住を共にすることでその国の生活習慣や考え方、文化などを学べることがホームステイの長所です。
基本的に受け入れ先の家庭を選ぶことはできないので、食事が合わなかったり、ホストファミリー(受け入れ先の家族)と性格が合わなかったりすることはありえます。たいていの場合、ホストファミリーは日本語ができないので、最低限の英語は話せる必要があります。
なかには「ティーチャーズステイ」という語学学校の先生宅に滞在するプランもあります。外国人の子どもとの会話に慣れているので、その分、意思疎通はしやすいです。
ホームステイは子どもも受け入れる方も大変ですが、外国の家庭にお邪魔する機会はめったにありません。うまくいけば学校や参考書では絶対に学べない貴重な経験を得ることができます。
・寮またはホテルステイ
短期留学では、ホームステイ以外にも、日本人スタッフが常駐する寮やホテルに滞在するタイプもあります。ホームステイが重荷に感じる場合は、こちらの方がいいでしょう。
食事でアレルギーがある場合には、日本人スタッフに伝えておけば安心です。また食事の好き嫌いが激しい場合も、寮から通ったほうが、お母さんも安心できます。
参加人数
・子ども単独での参加
自分の身の回りのことができる年齢であれば、一人で参加するのが普通です。10日間~数週間、親元を離れて過ごすことになるので、自立心が養われるというメリットもあります。
・親子留学
子どもの短期留学では、子ども一人で参加するだけでなく、お母さんと二人で参加する「親子留学」もがあります。
親子留学なら何かあったときでもすぐに対応できるので、年齢的に不安があっても安心です。また、「私も留学したい!」と希望するお母さんも多いので、人気のある留学形態といえます。
参加費用はもちろん二人分かかってしまいますが、楽しい思い出を共有できることも人気の理由かもしれません。
英語が得意なお母さんなら、留学エージェントを利用せず、自分で海外のサマープログラムに応募して、チケットや宿泊先を手配する人もいます。この場合、エージェントへの支払いが不要なので、割安で親子留学できます。
渡航先と留学の費用
・国内留学
短期留学の場所は、「国内」と「海外」の二つに分かれます。正確には「留学=海外で学ぶこと」ですが、意外にも日本国内でも同様の体験ができるのです。
例えば、日本国内には米軍基地に勤務する人の居住区があります。その家庭にホームステイさせてもらうのです。国内なので、当然、海外渡航の往復チケットは不要です。そのため経済的な負担をかなり減らせます。
また、沖縄などの自然環境を利用して、ネイティブのインストラクターがいるアクティビティ型のサマースクールに参加することもできます。日本人が多く参加するので、英語だけの環境とはいきませんが、子どもの英語力が未熟でも参加可能です。
日本と比較して治安の面で不安が大きい国が多いなか、国内で開催されるサマーキャンプは安全面でも安心です。
・海外留学
一方、本格的な海外留学の場合は、異文化を肌で感じることができます。英語だらけの街の風景を見るだけで、異国の雰囲気を強く感じることでしょう。
海外留学は、渡航先によって費用が大きく異なります。英語が母語の国で人気があるのは、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどです。その時の為替レートによりますが、10日間ほどの期間でも50万円以上かかります。
滞在期間が3週間で渡航先がカナダの場合は、80万円以上は必要となります。
一方、第二言語として英語を話すフィリピンやマレーシアなどのアジア圏であれば、半分程度に費用を抑えられます。治安の面では先進国に比べて不安があるので、留学斡旋会社の実績やサポートをよく調べることが大切です。
「アジアで英語はちょっと…」と先入観をもつ人もいますが、フィリピンの人の英語力は決して低くありません。オンライン英会話の講師と話したことがありますが、まったく問題ありませんでした。
また、アメリカやカナダの場合は時差が大きくなるので、時差ボケで体調がすぐれないまま短期留学が終わってしまうことがあります。南半球のオーストラリアとニュージーランドは季節が日本と反対なので、気温差による体調の変化にも注意が必要です。
小学生の子どもの場合、心身ともに大人よりもデリケートです。環境の変化や長旅の疲れなど、想像以上に負担がかかることもあります。日頃の健康状態も観察しながら、どの国がもっとも適しているのかを見極める必要があります。
まとめ
子どもの短期留学を成功させるための秘訣をまとめます。
- 短期留学は帰国後の英語学習のモチベーションを向上させるために行くこと
- 多様化する留学形態を正しく理解して、子どもの状況や性格に合ったものを選ぶこと
短期留学はそれなりの費用がかかります。英語学習の基本は継続することにあるので、あまりに家計に負担を強いるようであれば、留学をあきらめてもまったく問題ありません。まわりで留学した友人から話を聞くだけでも、疑似体験できるのでおすすめです。
でも、もしいろいろな状況がクリアされるなら、子どもに短期留学を挑戦させる価値はあります。将来、子どもが大人になったときに、「あのとき参加した短期留学がきっかけで英語が得意になった」と言ってくれるようなプランを考えてあげてください。