街の本屋さんの語学コーナーに行くと、海外ドラマや映画DVDを英語教材にした学習本が増えています。ネイティブの英語を楽しみながら学べるので、需要があるのでしょう。
また英語を学ぶ目標として「映画を字幕なしで楽しむこと」を挙げる人はとても多いです。映画と英語は相性がいいのです。
子どもの英語教材としても映画はおすすめです。しかし、子どもの英語のレベルは高くないので、ネイティブのセリフを聞き取るにはハードルが高すぎます。すべてのセリフを聞き取ろうとせずに、印象的なセリフに絞って学習したほうがうまくいきます。
英語以外でも、映画は「外国の文化・歴史・生活習慣」を学ぶ絶好の機会です。映画の舞台は現代だけでなく過去の出来事も舞台になるので歴史も学べます。
子どもの英語学習に向いている映画を探すにはコツがあります。それについても詳しく解説するので、参考にしてください。
子どもと映画を観よう
夏休みなどの長期休暇中「子どもに何か有意義なことをさせたい」と考えるお母さんは多いです。しかし、良いアイデアが思い浮かばずに、結局ダラダラと過ごしてしまう経験はありませんか。
私のおすすめは「子どもと良い映画を観ること」です。「夏休み中に15本映画を観て、30個のセリフを覚える」と具体的な目標を立てて実行できたら、充分に有意義な時間を過ごしたといえるでしょう。
映画のあと親子で映画について話し合い感想を述べるのは、議論の練習になります。映画で得た知識は将来英語圏の人と雑談するときにとても助かります。共通の映画で盛り上がったり意見交換できたりしたときは、映画を観ていて良かったと思います。
まず、映画ノートを一冊用意しましょう。子どもにタイトル(邦題と原題)を上に書かせて、観た日付を記入(英語で)させます。タイトルに知らない単語があったら、意味を調べさせましょう。ここまで準備できたら、あとはメモを取るだけです。
映画は英語圏の文化や習慣を学べる最高の教材
英語圏の国での文化・習慣について深く学ぶ教材として、映画は優れています。例えば、子ども向けの定番映画として『ホーム・アローン』があります。
「子どもが一人で家にいる」ことは日本ではそれほど珍しくありません。しかし、アメリカでは13歳未満の子どもを13歳以上の監督なしに一人にさせてはいけない」法律があるため、深刻度が違います。
よく中高生がアルバイトでベビーシッターをするシーンがアメリカのドラマで見られますが、そのような背景があるからです。それがわかると、「子どもを家でひとりにして家族が旅行に行ってしまった」のは日本以上に大事件であることを理解できます。
クリスマスは家族が集う機会でもあるので、皆が再開できるハッピーエンドはまさにクリスマスのテーマそのものです。
このように外国の文化や習慣を疑似体験できるのが、映画の良いところです。子どもと映画を観たあとはこのような豆知識を教えてあげると、子どもの教養レベルは高くなります。
このような雑学もノートにメモしておくと、知識が定着して忘れにくくなります。
好きなセリフを英語字幕で確認しよう
英語の映画ならもちろん英語を学べます。小学生で映画のセリフをすべて理解させるのはほとんど不可能です。そこで、子どもが印象に残った場面のセリフだけを1つか2つ選んでノートに記録してはどうでしょうか。
例えば『オズの魔法使』なら、最後のドロシーのセリフ“There’s no place like home.”(やっぱりおうちが一番)だけ、字幕表示を利用してノートに写します。
そしてそのセリフが読まれるときの役者のマネをして何度も音読します。映画を観終わった直後は特に登場人物に感情移入できます。シーンを思い浮かべながら気持ちを込めてセリフを繰り返すのがコツです。
応用で言葉の一部を置き換えてみるのもいい訓練です。“There’s no place like Disneyland.”(ディズニーランドが一番)のように子どもの考えや経験に合致した英文にしたほうが、頭に残りやすいです。
定額オンデマンドサービスが充実
映画はDVDでもいいし、定額オンデマンドサービスを利用してもいいです。大手のNetflixでは字幕や音声を切り替えられる機能があり、英語学習に重宝します。
レンタルだと返却日が気になります。返却も天気が悪かったりすると面倒です。その点、いつでも見られるオンデマンドサービスはとても便利です。
まだ利用していない人は最初の1か月はたいてい無料で利用できるので、この機会に試してみるといいでしょう。
どうやって子どもと楽しめる映画を見つけるか
映画が子どもの英語学習に役立つのはわかっていただけたと思います。しかし、たくさんのタイトルの中から「子どもの英語学習に適した映画」を選ぶのは簡単ではありません。
私もネットで「評判」を検索して探していた時期がありました。しかし、実際に見てみると評判ほど楽しくなかったり、英語学習の観点からは今ひとつだったりしたこともありました。
ディズニーのアニメならほぼ間違いないのでしょうが、毎回同じようなテイストだとやはり飽きてしまいます。
そこで活用したいのが「映画ガイドブック」です。
もっと簡単に英語の動画を楽しみたいなら、こちらの勉強法がオススメです
一冊揃えると超便利! 映画紹介本
限られた期間にできるだけ質の高い「子どもの英語学習に適した映画」をたくさん見るためには、やはり行き当たりばったりでは駄目です。そこで便利なのが映画ガイドブックです。
先生が薦める『英語学習のための特選映画100選』小学生編
私も1冊購入して大変便利だと感じたのは『英語学習のための特選映画100選(小学生編)』です。
映画の基本情報はもちろん、英語学習の観点から役立つ情報がぎっしりと詰まっています。
執筆者は多数いますが、すべての映画は共通のフォーマットで構成されています。「セリフ紹介」「ふれあいポイント」「あらすじ」「映画情報」「おすすめの理由」「授業での留意点」「映画の背景と見所」「リスニング難易表」などです。
これらのうち「リスニング難易表」「セリフ紹介」「授業での留意点」について詳述します。
「リスニングの難易表」は便利
すべての映画には「リスニング難易表」があります。9個の評価項目があります。具体的には「会話スピード」「発音の明瞭さ」「アメリカ訛」「外国訛」「語彙」「専門用語」「ジョーク」「スラング」「文法」です。
それぞれ5段階で評価されていて、標準は3です。「スラング」は使用頻度が少ないと数字は小さくなります。「文法」はルールに忠実なほうが小さい数字です。初心者ほど数字が小さいものを選ぶとよいといえます。
この表をざっと眺めるだけで、子どものレベルに合った映画を選べるのでとても便利です。この本はもともと小学生編なので、はじめから難解な映画は含まれていません。でも作品によって難易度にかなりばらつきがあります。
「セリフ紹介」と「授業での留意点」
学校の先生用に執筆された本なので、「セリフの紹介」と「授業での留意点」が詳しく書いてあります。
ここに掲載されている情報はかなり詳細で、大人が読んでも勉強になります。何度も観たこともある映画でも新しい見方を与えてくれるので、もう一度観てみたい気持ちにさせてくれます。
全部を子どもに教えようとすると勉強臭がするので、教える内容は絞りましょう。
例えば、『アニー』の舞台は、1933年のニューヨークです。当時1929年に起こった世界大恐慌の影響で、経済はどん底でした。
1933年に米国大統領となったフランクリン・D・ルーズベルトは「ニューディール政策」と呼ばれる公共事業の拡大により失業率を改善して経済危機を乗り切りました。
中学校や高校の歴史でも登場しますが、子ども向けの映画で予習できるのは素晴らしいです。日本でも毎年人気のミュージカルなので、子どもが気に入ったら舞台を見せてあげても喜びそうです。
ちなみにアメリカの歴史上もう一人ルーズベルト大統領がいます。第26代大統領のセオドア・ルーズベルトです。映画『ナイトミュージアム』に登場します。
歌にも注目
映画と主題歌は切っても切り離せないものです。もし子どもが口ずさんだら、歌の一部でもいいので歌ってみましょう。
『アニー』ならTomorrow、『オズの魔法使』ならOver the Rainbowです。ノートに歌詞の一部を記入します。
You’re always a day away!
これだけ歌えるだけでも、子どもはうれしくなります。この部分はリフレイン(繰り返し)になっているから、満足度も高いです。上手に歌えたらほめてあげましょう。
私のおススメ映画
本の中では紹介されていませんでしたが、私が子どもと観ておもしろかった映画を一つ紹介します。たまたま観た映画で、今まで存在すら知りませんでした。邦題のつけ方を失敗しています。
「笑えて感動して泣けてくる」三拍子揃った映画『飛べ、バージル/ プロジェクトX』です。ぜひ、家族みんなで鑑賞してください。
・飛べ、バージル/ プロジェクトX
手話で人間の言葉を覚えたチンパンジーのバージルが、空軍の秘密プロジェクトに参加します。ところがそのプロジェクトは核戦争を想定したチンパンジーに爆撃機を操縦訓練させるものでした。
被ばくしてからどれくらい飛行できるかを実験するために次々に犠牲になるチンパンジーを救うために、若者2人が協力します。
冒頭で研究者がチンパンジーに言葉(英語)を教えるシーンがあります。チンパンジーにわかるように話す英語は、当然とてもわかりやすいです。英語を覚えたての子どもでも、理解できる英語が続くので楽しめます。
時代背景として、「米国とソビエト連邦が冷戦関係にあった」歴史を子どもに教えてあげる必要があります。そうしないと、なぜアメリカはチンパンジーを虐待しなければならなかったのか理解できないでしょう。
子ども向けの映画からでも深い教養を身につけられるのが映画のいいところです。
まとめ
もし子どもに夏休みを有意義に過ごさせるなら、英語の映画を観てみましょう。映画で印象に残ったセリフを英語で抜き出して、それを暗唱します。また、興味を持った生活習慣や文化などについて調べるのも大変勉強になります。
子ども向けの映画を選ぶのは難しいので、英語学習向けの映画ガイドブックを手元に用意するととても便利です。選ぶ段階ではリスニングの難易度について細かい指標があるので、役に立ちます。
その映画の時代背景や登場人物について子どもが調べるヒントを与えてあげると、海外や歴史に興味をもつきっかけになります。
観終わったあと親子で映画について語り合うのは、子どもにとってとてもいい勉強になります。親子で良い映画をたくさん見て、英語や外国の文化や歴史について学びましょう。