英単語の暗記を「楽しい」と感じる人はほとんどいません。必死に覚えても翌日には大半を忘れてしまい、やる気はみるみる低下していきます。私も最初の10ページくらいで単語帳を放り出した経験が何度かあります。
それでも何とか覚えたのは、やはり高校入試・大学受験など大切な「試験」があったからです。もし試験がなかったら、今の半分も英単語を覚えていなかったでしょう。
そう考えると、小学生で英検3級に合格するのは大変です。しかし、これを機会に中学卒業程度の語彙力を身につけたとしたら、英語の世界が広がり大きな武器になるのは間違いありません。そこで、小学生が英検3級に合格するための単語学習法について解説します。
英検3級に必要な単語数は1300語
英検3級の難易度は「中学卒業程度」とされており、小学生が英検3級に合格するのは決して簡単ではありません。単語に関しては1300語を知らないと問題を理解できません。しかし、時間をかけて計画的・効率的に取り組めば小学生でも合格は可能です。
英検3級以上はリーディングとリスニングだけでなく、ライティングとスピーキングも課されていて、4技能(聴く・話す・読む・書く)をバランスよく問う内容となっています。
それぞれの技能は単独で成立しているわけではなく相互に深く影響しています。4技能の中心にあるのは文法と単語力です。英語4技能と単語・文法学習の関係を整理したものを下の図にまとめました。
上の相関図を見てわかるのは、特定の技能のトレーニングをしていても常に他の技能や「単語・文法」が関連することです。例えば、リスニング力を向上させるために英語を聴くことはもちろん有効ですが、速読力(リーディング)も深く関連します。
単語力の増強についても同じことがあてはまります。つまり単語帳を使って暗記するだけが単語学習ではなく、文法学習や4技能のトレーニングと常に関連づけることを意識するようにしましょう。
英検3級合格の基準となる1300の英単語を小学生が覚えるためには工夫が必要です。根性だけで暗記しようとしても挫折します。無理に単語学習を強制すれば子どもは英語嫌いになってしまいます。
単語学習とは意味がわかる単語数を増やすだけではありません。日本語から英語に直せる数を増やすことも大切です。例えば「important」を見て「大切な」という意味であることを思い出せるのは単語学習の第一段階です。
しかし、話したり書いたりするためには「大切な」という日本語から「important」を瞬時に思い出すことが必要です。つまり意味だけ覚えている単語数を増やすだけでなく、「使える英単語」を増やすことも大切です。
下の図では同じ単語数を習得しているAさんとBさんの英語力を比較しています。両者の違いは「使える単語数」の違いです。同じ単語数を習得していても、使える単語数が圧倒的に多いBさんのほうがスピーキングやライティングにおいて有利です。
英検3級からは4技能をバランスよく試されます。単語集で意味を暗記するだけでは不充分で、意味がわかるだけの単語を使える単語に変えていく努力が必要になります。
英検4級に合格しておこう
小学生が英検3級に挑戦するなら、その前に英検4級を取得しておきましょう。英検4級に出てくる単語レベルは600語程度です。そこまでをきっちりと覚えておけば、ゼロから1300語を覚えるよりはるかに楽だからです。
大学受験を経験したお母さんなら共感していただけると思いますが、知らない単語だらけの単語帳を暗記するのは本当に苦痛です。単語帳を開いたときに3分の1程度は意味がわかる状態なら、小学生でも前向きに単語学習に取り組めます。
英検3級合格に必要な残りの700語については単語帳を使用しながら、とりあえず意味がわかる単語を増やしておきましょう。英検3級の単語を小学生でも効率よく勉強するための具体的な方法について解説します。
小学生が英検3級に合格するための効果的な単語勉強法
小学生が英検3級対策として単語を覚えるとき、教材として「単語帳(紙の本)」「単語カード(自作)」「単語アプリ」の選択肢があります。私のおススメは単語帳です。
単語カードは作成に手間がかかり、持ち運びに適していないのでどこでも学習できるものではありません。単語アプリについては上手に使えば便利かもしれませんが、小学生はスマートフォンを使用するとゲームなどに夢中になり学習に集中できなくなる可能性が高いです。
単語帳は定番の『でる順パス単英検3級』(旺文社)を購入しましょう。試験に出る頻度(でる度A~C)で品詞別(動詞、名詞、形容詞・副詞その他)に構成されています。単語帳の最初ほど重要な単語が掲載されているので、途中で放棄したとしても最重要単語はカバーできます。
本の厚さは1センチ弱で、収録語数に圧倒されて気が滅入ることはありません。付属の暗記用の赤い半透明のシートを使用すると赤く印刷された訳語の文字が見えなくなり暗記に便利です。また、無料ですべての単語の音声が無料でダウンロードできるので、正確な発音を知ることができます。
この単語集にはbe satisfied with(に満足している)などの熟語やtake your time(ゆっくりしてください)などの会話表現も収録されていて、覚える優先順位が高いものばかりです。単語以外の熟語と会話表現も覚えてしまいましょう。
単語帳を購入するのは、暗記用に使用するだけでなく「辞書代わり」に便利だからです。小学生向けの英和辞典は出版されていますが、説明が不足していたりカタカナで読み方が書いてあったりするのであまりオススメできるものがありません。
本格的な英和辞典は漢字にルビがないため、定義の日本語が読めません。役に立たない英和辞書をわざわざ購入するくらいなら、英検3級の単語帳のほうが役に立ちます。
発音記号を覚えて単語学習を加速させる
『でる順パス単英検3級』はよくできた単語集ですが、欠点もあります。それは単語にすべてカタカナが振ってあることです。例えばfindには「ふアインド」と書いてあります。
日本語の「ふ」と英語の【f】の音は全く異なります。子どもにとってはカタカナのほうが覚えやすいので、どんなに注意してもカタカナ読みの癖がついてしまいます。
カタカナ読みの弊害は深刻です。リスニングで【f】で発音されても、覚えた「ふ」の音と異なるため聴き取りできません。また、誤った発音をしていると相手に理解してもらえません。学習初期の段階でカタカナ読みを排除することが重要です。
カタカナ読みをさせないために、お母さんはカタカナを黒く塗りつぶしてしまいましょう。面倒な作業ですが、カタカナで覚えてしまった子どもを後で矯正するほうがもっと手間がかかります。
次に発音記号を子どもに教えてしまいましょう。「発音記号なんて小学生には難しすぎる」と考えるお母さんもいるかもしれません。しかし、発音記号を覚えるのはそれほど難しくなく単語学習においてメリットが大きいのです。
覚え方はとても簡単です。子どもがすでに正しく読める単語を利用して、それと発音記号を見比べさせながら学習します。例えば、「animal」が読めれば【æ】(aとeが並んだ記号)がどのような音に対応しているかがわかります。
発音記号の多くはアルファベットと同じです。特殊な記号(ð, ʃ, ŋ, θなど)だけ覚えれば、発音記号はすぐにマスターできます。
発音記号が読めると初めて見る単語でも、とりあえず正しく発音することができます。いちいちCDで音声を確認する手間も省けて単語学習を効率的に進めることができます。わずかな期間でマスターできるので、この機会に発音記号を覚えましょう。
初めのうち子どもは自分の読み方に不安を感じるかもしれません。その場合はCDを再生して、発音記号からイメージした音と実際の音を比べながら修正しましょう。
動詞とその他(名詞・形容詞・副詞)で単語の覚え方を変えよう
先述のとおり、『でる順パス単英検3級』では「出る度(頻度)」により単語が配列されています。最も頻度が高いものは「出る度A」に収録されています。さらに品詞(動詞、名詞、形容詞・副詞・その他)によりカテゴリーが分かれています。
この分類を上手に利用して、覚え方に変化をつけるのがコツです。名詞・形容詞・副詞については、単語帳から暗記していくやり方で大丈夫です。しかし、動詞は活用(原形・過去形・過去分詞形)や使い方のルールを含めて覚える必要があります。
例えば「give=を与える」と覚えても、過去形(gave)過去分詞形(given)まで含めて覚えないと役に立ちません。これらの変化は文法学習と関連していて、受け身や現在完了を学ぶ前に過去分詞形を丸暗記してもあまり意味がありません。
また、動詞の用法についても理解しなくてはいけませn。「enjoy=を楽しむ」と覚えるだけでは不充分です。「~することを楽しむ」はenjoy + -ingで表現し、enjoy + to doとは使えないルールまで含めて覚えなければいけません。
このように動詞については、語形変化や使用法まで含めた知識の学習が必要です。単に意味だけ暗記しても使い物にならないので、英検3級の基本動詞は単語帳での暗記には向いていません。動詞は飛ばして、他の品詞から暗記しましょう。
一方、動詞以外の名詞・形容詞・副詞についてはとりあえず一つの訳語を覚えておきましょう。多義語(複数の意味がある言葉)もありますが、それは少しずつ慣れていけばいいことです。
進学校の生徒に学ぶ単語学習の極意とは
なお、私の近所に東大合格者が多い進学校があります。朝・夕は交差点で信号待ちをする生徒を見かけますが、初めて彼らを見たときに驚いたことがありました。
信号が赤に変わり歩道で立ち止まると、すぐに英単語集を開いてブツブツつぶやきながら単語を覚えています。青信号に変わるまで1分半、単語の暗記は続きます。
さらに駅で電車待ちするときも、その高校の生徒だけは単語集を暗記しています。とにかくマメに単語集を開いて、わずかな時間でも集中して暗記しています。
私が高校生の頃はそんなことをした経験がないので、「さすが超進学校は違うなあ」と感心してしまいました。
あるとき私は英検1級の単語集を購入し暗記しようとしました。しかし、知らない単語が続出して挫折しそうになりました。そこで、進学校の生徒を参考にして、「スマホをポケットから取り出すときは必ず単語集を一度開く」という自分独自のルールを設定しました。
意味なくスマホを使おうとする回数は予想以上で、1日10回以上は単語集を開き、暗記をする習慣ができました。英検1級の単語はあまりなじみのない単語ばかりでしたが、毎日頻繁に眺めるうちにほとんど覚えられるようになりました。
正直言って、私は暗記が大の苦手です。高校時代は世界史・日本史で赤点を取り続け苦労したくらいです。そんな私でさえ難しいとされる英検1級の単語を覚えられたので、頻繁に復習するという勉強法は効果が高いといえます。
この経験から、単語学習の究極のコツは「高頻度の復習」です。数分間でいいので、何度も何度も繰り返しブツブツ単語を読みながら意味を復習していると、覚えにくい単語が徐々に減っていきます。
わざわざ単語学習の時間を設けて机に向かうのではなく、一日で何度も単語帳を開いてブツブツつぶやきながら覚えるようにしましょう。覚えてもすぐに忘れるのは普通のことです。気にせず、頻繁に復習することを習慣化するだけで単語は攻略できます。
ちなみに英検1級の単語を覚えたあとは、それまで難しかった英語の小説を少し楽に読めるようになり、ボキャブラリー増強の効果を実感できました。
多読と並行して取り組む
英検3級を目指すなら多読にもチャレンジしましょう。長い文章を読むことに慣れておくと、英検の読解問題を長いと感じなくなります。
子どもの英語力に見合った洋書の選び方を紹介します。アマゾンのトップページのカテゴリーから洋書を選びます。
画面左側おすすめのところに「難易度別リーディングガイド」の項目があるのでこれをクリックします。
すると「Lexile指数」という指標が現れます。これは語彙の難易度や構文の複雑さなどから、読解力を数値化したものです。現在英検4級レベルならLexile指数は300L前後から始めるといいです。これはアメリカの小学1年生のレベルに相当します。
子どもの興味関心に合わせて本を選ぶのは初めはなかなか大変ですが、子どもがハマったときにはお母さんもきっとうれしいはずです。
単語集では1単語につき一つの意味を対応させて覚えました。しかし、多読をすると同じ単語でも文脈によって複数の意味やニュアンスがあることが次第に理解できるようになります。豊かな語彙力を形成するためにも、子どもに多読をさせましょう。
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ボキャブラリーの増強がリスニング強化にもつながる理由とは
ボキャブラリーを増やし多読・速読に慣れてくると、リスニング力の向上にもつながります。英語上級者には常識になっている「知らない言葉は聴いてもわからない」という格言のようなものがあります。
子どもの頃、NHKのニュースを聞いても意味がわからなかった経験は誰でもあるはずです。語彙力が乏しいので「大統領は対抗措置として経済制裁を辞さない考えを示しました」と聞いても、子どもには意味がわかりません。
リスニング力の向上につながる単語学習とは、とにかく「正しい発音で読めること」を意識することです。知らない単語を見つけるとつい意味にばかり気を取られてしまいますが、最初にやるべきことは正しい発音ができることです。
もし知っている単語なのに聴き取れなかったときは、誤った発音で覚えてしまっている可能性があります。特にカタカナ読みを充てている場合は、リスニングが苦手になってしまう可能性が高く注意が必要です。
このように単語は単語帳だけでなく、多読やリスニングなどと関連させながら行われるべきです。お母さんは「3級を取得しさえばいい」という短期的な考え方をせずに、しっかりとした土台を築くようにさせましょう。
・使える単語を増やすには使うしかない
単語帳を使って単語の意味を暗記することは問題ありません。しかし、意味がわかるだけの単語を「使える単語」に変えることも必要です。
使える単語を増やすには実際に使うしかありません。普段使用しているテキストの「日本語訳を見ながら英語に直してみる」のはとても有効な勉強法です。
音読練習の途中でこの口頭英作文の訓練を取り入れておけば、少しずつ使える単語の数も増えていきます。紙に書くのも悪くはありませんが、時間がかかるのであまりおすすめはしません。口頭でテキパキと作文をするほうが大量の英作文に取り組めます。
さらにオンライン英会話のサービスなどを利用して、定期的に英語を話す機会を設けるようにしましょう。インプットとアウトプットを大量に行うことで、使える単語の数は増えていきます。
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まとめ
英検3級合格に必要な単語数はおよそ1300語です。単語帳を使って意味がわかる単語数を増やすだけでなく、単語の数も増やす必要があります。単語が増えると英語学習の効率が上がるので、早い段階から少しずつ取り組むことが大切です。
英検3級の合格を狙うなら、単語集は一冊揃えておきましょう。重要度と品詞別に分けられているので、最初のページから取り組めば効率のよい単語学習が可能です。この際、発音記号を覚えて正しい発音が瞬時にわかる状態にしておくと、学習効率が飛躍的に向上します。
単語帳に掲載されている単語を一様に覚えるのはやめましょう。名詞・形容詞・副詞などはそのまま暗記しても問題ありません。しかし、動詞は文法学習と関連させながら覚えるほうが使える知識となります。
ある程度暗記ができたら多読にも取り組みましょう。語彙力の向上はリスニングにも良い結果をもたらします。スピーキングやライティング力を伸ばすためにも、普段から口頭英作文の訓練を心がけましょう。
小手先の単語学習だけしかしなければ将来の伸びしろは期待できません。本物の英語力が身に付くように、子どもをサポートしましょう。