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小学生からの英会話:教室×自宅でできるおすすめ学習法

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私が小学生に英語を指導していると、お母さんからよく受ける質問があります。

「英語をもっと書かせなくて大丈夫ですか」

「ドリルや問題集に取り組んだほうがいいですか」

私の答えはいつも決まっています。

「子どもが英語を書くスピードはとても遅いです。そのため学習効率が落ちます。それよりも英語を声に出したほうが効果的ですよ」

このように答えても、お母さん方の表情はあまりスッキリしないことが多いです。

気持ちはとても理解できます。本当に理解しているかどうか、多くの問題をこなして間違えないようになるまで完成度を上げるべきなのでは、と考えているのでしょう。

または、中学生以降の英語のテストを意識して、正しいスペリングで「書ける」ことを大切に考えているのかもしれません。

それでも私は子どもに英語を教えるときは「話す」ことを中心に据えて指導をするように心がけています。なぜなら、会話を意識して学習することが最も英語を効率的に上達させてくれると信じているからです。

今回の記事では、なぜ小学生の英語学習で「会話」を中心に進めたほうがいいのか、について詳しく説明します。

小学生の英語学習はスピーキングを中心に置こう

小学生から英語を始めるとき、一般的には教室に通って教えてもらうことになります。大体は一週間に1レッスンで1時間程度の勉強時間です。

もちろんこれだけで英語力が伸びるはずがありません。家庭学習の質と時間がとても大切になります。

このときに家で子どもが黙々とドリルや問題集に取り組んでいたとしたら、それは要注意です。ドリルをすること自体が問題なのではありません。取り組んでいるときに、声を出さずに英語を勉強していることが問題なのです

小学生の英会話でも文法と単語学習が基本です

小学生から英語を学ぶなら、母国語を覚えたときのように自然と身につけるのは不可能です。大人が学習するときと同じように、文法と英単語の学習が基本となります。

論理的習得能力グラフ

「文法を勉強するから英会話ができない」

という意見を耳にしますが、完全に間違いです。文法は効率よく語学を学習するためには欠かせないものです。図のように10歳くらいを境に、論理的に言語を習得する能力が伸びるため、文法の学習から入るのは理にかなったアプローチです。

いくら単語を覚えても、文法を学ばないとどのような順番で単語を並べればいいのかがわからないため、会話ができるわけがありません。

まずは、教室に通ったりしながら、英文法の基本と英単語の学習に力をいれましょう。

話せるようになりたいなら、話しなさい

日本の学校教育では、英文法指導に重点が置かれています。効率よく英語を学ぶためのツールである文法を学ぶこと自体は正しいです。しかし、会話をするスキルにつながっていないのは問題です。

私はこの結果は当然だと考えています。なぜならほとんどの日本人学習者は「話す」練習をしていないからです。泳げるようになるためには、プールに入らないとダメです。プールサイドで教科書を読むだけで泳げるようにはなりません。

このようなことは以前から指摘されていますが、まったく修正されません。おそらく生徒も先生も「具体的にどうすればよいのか」を理解して実行しないからです。

お母さんのアドバイスは先生や教材よりも大切

そこで大切になるのが、家庭での英語学習です。

話せるようになるための正しい英語学習をしているかどうか、について子どもの様子を観察し、お母さんから正しくアドバイスしていただきたいと思います。

子どもは「勉強」とは他教科と同様「黙って机に向かって問題集に取り組むこと」と思い込んでいます。これを英語にも当てはめてしまうため、英会話を意識した音読を取り入れさせることは容易ではありません。

中学生になると「英語を口に出すことが恥ずかしい」と考えるようになるため、どんなに親や先生が音読するようにアドバイスをしても、聞く耳を持ちません。小学生のうちに英語を正しく学習する方法を身につけるのがとても大切です。

英会話を学習の軸に据えよう:具体的方法

家庭でできる英会話の具体的な方法について説明します。

特別な教材やプログラムは必要ありません。英語教室で使用しているテキストで充分です。テキストには文法や語法の説明と例文が必ず載っているはずです。

これらの例文をその使用場面を具体的に想像しながら、何度も音読するだけです。単語を学んだら、その例文を音読します。そして、簡単な文でよいので、その単語を使って口頭英作文をするだけです。

 

文法にしろ単語にしろ、英語を学んでいるときには常に「英会話するために何とか使ってみよう」という気持ちと行動が肝心です。

以下、英会話を学習の軸に据えなければいけない理由について詳しく説明します。

英文法は例文音読で暗記から解放される

例えば動名詞(動詞-ingにして名詞のように使えるもの)を習っているとします。enjoyの後ろにはto do (不定詞)ではなく-ing(動名詞)を使用しなければいけません。

正)I enjoyed playing the guitar.

誤)I enjoyed to play the guitar.

enjoyの他にも、give up, finishなどは同じ使い方をする動詞です。このような文法事項を学ぶとき、ほとんどの子どもはルールの「解説」を覚えようとします。

これはとても効率の悪い勉強法です。それよりも、例文を何度も音読したほうが話が早いはずです。enjoy-ingと言わないと気持ちが悪い、という感覚が芽生えるまで繰り返します。

このように言うと、「文を暗記しているだけ」に感じるかもしれません。しかし、暗記するのと、何度も繰り返した結果として「覚えている」のではまったく努力の方向と結果が異なります。

さらに、自分が楽しんだ経験をオリジナル英作文してみます。ゲームをしたなら次のようになります。

I enjoyed playing the video game.(私はテレビゲームを楽しんだ)

theを落としたりするくらいの間違いは、ここでは問題ありません。今回はenjoy-ingがテーマなので、これを使って自分の体験を表現できればOKです。

さらに5W1H(What, Who, Where, When, Why, How)を意識して、情報を足せるなら最高です。

I enjoyed playing the video game with Ken yesterday.(昨日ケンとテレビゲームを楽しんだ)

小学生でここまで作れたら素晴らしいレベルです。

このような練習をあらゆる機会に取り入れていきます。これを継続することで英会話は上達します。

単語学習では必ず口頭英作文をしてみる

単語学習においても、同様の英会話の訓練が有効です。例えば、名詞のdictionaryを覚えるときには、最初に正しい発音で読めるようにします。次に簡単な英文でいいので使ってみることが必要です。

This dictionary is heavy.(この辞書は重い)

This dictionary has a lot of words.(この辞書はたくさんの単語が載っている)

最初は1文を考えるだけでも大変です。また、それが正しいかどうか確かめられないため、モヤモヤする気持ちもわかります。

しかし、この場合は正確性よりもとにかく使ってみるという経験が大切です。このステップを大切にすると、単語の数が増えるにしたがって表現が豊かになっていきます。

英単語とそれに対応する日本語訳だけを暗記しても、読めるようになっても話せるようにはなりません。使えるようになるためには、使わないといけないからです。

馬鹿馬鹿しいほど簡単な理屈ですが、ほとんどの人はこの過程を飛ばしてしまいます。

小学生はライティングよりも英会話を優先すべき理由

英語4技能のうち、スピーキングとライティングはどちらもアウトプット型の能力です。この二つの能力には強い相関関係があります。また、高校入試にはライティングが必須となるため、スピーキングではなくライティングのほうが重視される傾向があります。

しかし、私はスピーキングを重視するべきだと考えます。なぜなら、スピーキングとは「一瞬で行うライティング(英作文)」だからです。

瞬間的に英作文をしてそれを口から音で出すのがスピーキングです。これができるなら、ゆっくり考えられる英作文は余裕をもって取り組めるはずです。

もちろん正しいスペリングを書けなければいけませんが、正しく読める子どもはスペリングにも反映されるため、スペリングミスが少ない傾向があります。

このように、小学生の英語学習において英会話のための特別なテキストは必要ありません。普段使っているテキストの利用の仕方を音声中心にするだけです。また、書くことよりも話すことに主眼を置くと効率よく英語を学べます。

この部分をきちんとできているかどうかについて、お母さんにチェックしてもらえたら、小学生の英語力は必ず伸びるはずです。

お母さんがやってはいけない英語指導とは

反対に、家庭学習でお母さんが子どもに対してやらせてはいけない指導について述べます。

親は、自分の英語学習体験に基づいて「子どものためを思って」指導するため、なかなか自分では気がつきにくいのが特徴です。

以下、具体例を挙げて説明します。

ドリルや問題集にひたすら取り組ませる

ドリルや問題集をすること自体には何も問題ありません。問題なのは、子どもが静かに問題をこなす様子を見て満足してしまうことです。

先述したとおり、これでは受け身の学習(インプット)だけなので、英語を話せるようにはなりません。

例えば穴埋め問題をひとつやったら、その解答文を何度も声に出して読んでみることが必要です。さらに、一部を自分の体験と置き換えて、オリジナルの英作文をしてみるのも英会話練習には非常に効果的です。

静かに勉強しているのは英語に関しては「ほとんど学んでいない」ということです。

単語を紙に書いて覚えさせる

「単語は紙に書いて覚えなさい」と指導する英語の先生は少なくありません。

私も書くことは全否定はしません。学習初期の場合は、英語の発音とスペリングのすり合わせをするために、ぶつぶつつぶやきがなら単語を書くのも良い勉強法だと思います。

しかし大量の単語を覚えて、使えるようになりたいなら、これでは効率が悪すぎます。試しに小学生に英単語を書かせてみればわかりますが、internationalという一単語を書くだけで30秒以上かかることも珍しくありません。

声に出して読めば、2秒で終わります。しかもこの単語は、音とスペリングが一致しているので、正確に読めればスペリングも正確に書けるようになります。

声に出しながら紙に書けばまだマシですが、子どもが一人で学習するとつい無言でひたすら紙に書くようになってしまいがちです。

平凡な英文を馬鹿にしない

教科書には平凡な英文が多いです。また英語の教科書が批判されるとき、「使用されている英文が不自然である」と指摘する人がいます。

例えば、This is a pen.(これはペンです)です。このような英文は使う機会がないので、覚える意味がない、という批判です。

しかし、私はそうは思いません。この文を音読して学ぶべきなのは、意味の丸暗記ではなく、近くにあるものを説明するときに使える「文の構造」です。

a penのところはa CD, a flash light(懐中電灯)などさまざまなものに置き換えられます。複数形にするなら、最初のthis は these にしてThese are pens.にします。

さらに物だけではなく、近くにいる人にもThis is は使えます。This is Mike.といえば、「こちらはマイクです」という意味になります。

このように一見つまらない英文も、構造を学ぶ意識で取り組むと万能な文であることがわかります。一方、ネイティブも使用するイケてるフレーズはぴったりくる場面がやってこないと、なかなか口にすることはありません。

一見平凡そうな英文ばかりに見えても、大切な文の構造を学んでいます。ネイティブフレーズも覚えたほうがいいのは確かですが、そればかりに固執するのはやめましょう。

英会話の練習は自習がはかどる

ここまでの説明で、英会話の練習は特別なメニューが必要なわけではありません。普段の英語学習の中に音読や簡単な口頭英作文を取り入れるだけです。

週1回のスクールで会話が上達するのではなく、訓練の場は過程学習であるといえます。ここでは、先生がいる英会話教室と家庭での英語学習の関係について、深く考えてみます。

相手がいる英会話は試合

かなりの英語上級者であっても、ネイティブとの会話には苦労するものです。理由はさまざまですが、教科書に載っていないような表現や話題を気にせずに使用するからです。

まさに何でもありの世界のため、基本を忠実に学んできた学習者は戸惑ってしまいます。

自分の英語がどこまで通じるのかを試す機会はモチベーションの維持のために重要です。これはスポーツに例えると試合のようなものです。

部活で練習を一生懸命するのは試合で勝ちたいからです。もし、そのスポーツに試合がなければ、多くの場合モチベーションを維持するのは困難です。

相手を立てて英語を話す機会はできればあったほうがいいです。英会話教室でもいいしオンライン英会話を利用してもかまいません。日頃の自分の勉強の成果を試すための機会を持たせるようにしましょう。

英会話の自習は練習

先述の通り、試合は大切です。しかし、練習のない部活はありません。レベルアップのためには練習が不可欠です。

家で学ぶときは、英語で話しかける相手はいません。仮想の場面を描きながらひとり言のように英語を話すことになります。

例えば過去形を習ったら、昨日やったことを英語で表現してみればいいのです。I got up at six. I brushed my teeth. I washed my face. I ate breakfast. I left for school. I arrived at school at 8:00. という感じです。

過去形がわからなければ辞書を調べましょう。相手を待たせているわけではないので、落ち着いて何度でも言い直せるのが家庭学習のよいところです。

このように家庭でも英語を使ってみることが会話練習の中心となります。どうしてもうまく言えなかったら、次のレッスンのときに先生に聞けば前向きな姿勢でレッスンを受けられます。

試合と練習をバランスよく続けよう

これまで見てきたように、スポーツのレベルアップのためには、試合と練習の両方が必要です。同様に、英語学習においても実践で使う場とレベルアップのための自習の時間がバランスよくあることが大切です。

お母さんは、子どもの英語学習を英会話スクールに丸投げするのではなく、普段の学習が英語を話すことを軸に行われているかどうかをチェックする必要があります。簡単にいえば、音読しているかどうかを観察するだけでよいのです。

このような取り組みが実を結ぶまでには時間がかかります。目に見える成果が表れるまでに年単位が必要な場合もあります。それでも正しい努力をしていれば必ず結果はついてくるので、辛抱強く取り組ませることが大切です。

そのためには押し付けでは禁物です。英語の楽しさや達成感を少しずつ感じさせたり、ちょっとした向上をほめてあげることが子どものやる気を高めることになります。

まとめ

小学生が英語を学ぶときは、英会話を中心に据えましょう。しかし、「相手がいないと英会話を練習できない」と考えるのは間違いです。

文法を学んでいるときに例文を音読したり、一部を自分の事例に置き換えて口頭英作文をすることで英会話の練習ができます。

単語を覚えるときも、その単語を使って簡単な口頭英作文をすることが英会話の基礎トレーニングになります。

子どもに英語を書かせないことに不安を覚える人も多いかもしれません。書くこと自体は問題ありませんが、やはり学習の中心には「会話」をもってくるべきです。英会話は瞬時に行う英作文なので、英会話が得意ならライティングにも好影響を与えます。

家庭での英語学習はスポーツの練習に相当します。週一回のスクールに丸投げするのではなく、家庭学習の充実のため、お母さんからアドバイスをしていただきたいと思います。

小学生の英語文法の教え方と勉強法

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もし、「何でもいいからスワヒリ語で話してみよう」と言われて、すぐにスワヒリ語を話し始める人はいないはずです。英会話教室で「積極的に英会話をしましょう」と講師が呼び掛けても子どもの反応が良くないのは、どうしていいのかわからないからです。

幼児や小学校低学年の子どもたちなら、無邪気に周囲のまねをして英語の歌を歌ったり講師のフレーズを口真似したりします。しかし、高学年の子どもは精神的に成長していて論理的に新しいことを覚えようとします。そこで必要となるのがマニュアルです。

英語学習におけるマニュアルとは文法のことを指します。子どもは適齢期にわかりやすい文法が与えられると、英語を理解しやすくなります。しかし、文法を習っただけでは英語を使えるようにはなりません。文法に沿って繰り返し英語を使うトレーニングが不可欠です。

しばらくトレーニングを繰り返すと、次第に文法をほとんど意識しなくても口が動くようになります。

そこで、英語を使えるようになるために、最初に子どもが覚えるべき基礎的な文法について具体的に説明します。また、どのようなトレーニングをすれば文法をほとんど意識しなくても英語を使えるようになるのかについても解説します。

小学4年生からは英語の文法が必要

個人差はあるものの、小学4年生から少しずつ文法学習を始められます。小学校低学年までの小さい子どもは文法を教えても理解できません。そこで実際の英語にたくさん触れながら英語の規則に気づかせる手法をとります。

例えば、小学校低学年ではI have a dog. やHe has a nice car. などの用例を多く口にすることで、自然と「主語(I, He)+動詞(have, has)+目的語(a dog, a nice car)」のパターンを覚えていきます。

このような習得方法は「体験的習得」と呼ばれており、小さい子どもはこの能力に優れています。文法用語を使わずに覚えるので一見簡単に思われますが、実際は言葉の規則性を発見・理解するまでに膨大な時間を要します。

子どもが「ママ」という一単語を発してから、「ママはご飯を作っている」など3語の文章で話せるまでの時間を思い出してください。日本語漬けの状態でも1年はかかったはずです。簡単に日本語が話せるようになったわけではありません。

子どもは10歳頃を境に、自然に言語を習得する能力(体験的習得能力)が急速に衰えます。しかし、それと引き換えに文法を理解する能力(論理的習得能力)が急速に発達していきます。この年齢からは文法を勉強しながら英語を学ぶのが最も効率的です。
論理的習得能力グラフ
グラフで示した黄色の部分は、ちょうど小学1年生から6年生までの範囲です。小学4年生を境に二つの異なる能力が逆転しているのがわかります。つまり、10歳になったら文法からのアプローチを取り入れたほうが英語を早く理解できるようになります。

もしお母さんがこのことを知らずに、小学校高学年の子どもに対して幼い子どもと同じような英語教育をしているなら今すぐ考え直しましょう。

小学校では文法を学ばせると英語嫌いにつながるとして、文法を教えない授業が進められています。一見、子どもに配慮しているように感じられますが、実はこの配慮こそが子どもが英語を嫌いにさせている可能性があります。

小学4年生の子どもの一部は、文法を教えたほうが英語を効率的に理解できる年齢になっています。それにもかかわらず、小学校では遠慮して低学年の子どもへのやり方で英語を教えています。

そのために、子どもはいつまでたっても英語を理解できずストレスが溜まります。そして、英語嫌いになっていきます。

発達段階に差がある児童一人ひとりに対応した指導方法を採用するのは現実的ではないので、学校の先生を責めるつもりはありません。現状では、文法に関しては各家庭で個別に対応するしかありません。

小学生の基礎英文法:語順と否定文・疑問文の作り方

文法の授業といっても、小学生に難しい文法用語を使って細かい知識を覚えさせるようなことは無意味なだけでなく英語嫌いを作る原因となります。

小学生に教えるべき文法は、わかりやすい英語のマニュアルです。このマニュアルは大きく二つの内容に分けることができます。一つ目は、英語の語順です。語順がわかれば英文を読んだり、単語をその順番に並べれば大まかな英文を作れます。

二つ目は、基本的な文の形である平叙文(へいじょぶん:単に情報を伝える文)・否定文・疑問文の作り方です。英語の語順は平叙文が前提となっていますが、実際は否定文や疑問文の形に変える必要が出てきます。

英語の語順を知り、さらに否定文や疑問文に対応できれば英語の基本を身につけられます。未来形・過去形・現在進行形・現在完了形などを将来学ぶときにも、基本が身についていれば理解するのはそれほど難しくありません。

参考書不要! 小学生にもわかる英語の語順(3文型)

英語の5文型は高校で学ぶ内容です。「S(主語), V(動詞), O(目的語), C(補語)」などの記号を使って教えられるので、堅苦しくてあまりいい印象を持っていないお母さんも多いことでしょう。実際、いきなり難しい文法の参考書や問題集に取り組んでもすぐに飽きてしまいます。まずは最低限の知識に限定して学習するようにしましょう。

小学生にはこれらの知識をかみ砕いて教える必要があります。最初に主語・動詞・目的語などの文の要素(文中での役割を示したもの)を理解させます。これがわからないと語順を理解することができないので、大切なポイントです。

文の中の役割

すぐには理解できないので、あまり詰め込まないように注意しましょう。次に、高校で習う5文型のうち主な3つの文型だけに凝縮させた文型を示します。
am/ is/ are の文目的語がない文
目的語ありI gave her a present. (私は彼女に誕生プレゼントをあげた)のような第4文型とWe call him Ken. (私たちは彼をケンと呼びます)のような第5文型は思い切って省略しました。3つの基本的な文型をマスターしてから、必要なタイミングで知識を増やせばいいからです。

3つの基本文型と例文をセットにしたカードはこちらからダウンロードできますので、子どもの目につく壁に貼り、いつでも確認できるようにしておきましょう。

基本的な文の形:平叙文・否定文・疑問文の作り方

単に情報を伝える文を平叙文(へいじょぶん)といいます。肯定文と呼ばれることもあります。次にnotなどを用いて「~ではない」「~ません」という意味の文を否定文といいます。また、何かについて「~ですか」とたずねる文を疑問文といいます。

先述した文型の動詞に着目してください。「am/ is/ are」を用いた文型とそれ以外の動詞を使う文型の二つに分けることができます。この動詞の種類によって、否定文と肯定文の作り方が変わります。

中学校で英文法を本格的に勉強するようになると、最初につまずくポイントは中学1年生の1学期に訪れます。それは「am/ is/ are」を用いた文とその他の動詞を用いた文について、それぞれ正確に否定文と疑問文を作れずに混乱するからです。

・am/ is/ are の否定文は「notを付け足す」

否定文の基本的な考え方は「notを動詞のうしろに付け足す」発想です。日本語では「~ではありません」のように文末に否定語を持ってきますが、英語の場合は動詞のうしろに否定語notを付け足すのが特徴です。

平叙文 否定文
She is tall. She is not tall.

・その他の動詞の否定文は、do にnotを付け足す

doは「する」という意味です。すべての動詞は結局何かをすることです。例えば「think(考える), make(作る), run(走る)」などの動詞に共通しているのは、何かを「する(do)」ことです。

このように考えると、これらの動詞の前に常に( )に入ったdoがあると解釈できます。

You (do) go to school. (私は学校へ行きます)

go(行く)の意味にはdo(する)が含まれるので、いちいち書かないけれども実はこの位置にdoがあると考えます。否定文の基本的な発想は「動詞にnotを付け足す」ことなので、次のような否定文が完成します。

平叙文 否定文
You go to school. You do not go to school.

notを付け足すのは見えている動詞(go)ではなく、普段見えていないdoの後です。気をつけましょう。

・三単現のs

英語を使う人の意識では、会話をしている「私(達)とあなた(達)」と「その他の人や物」を分けます。その他の人や物が主語になるときは、動詞に(-s, -es)を付ける習慣があります。絵で表すと下のようになります。

3単現のs

例えば、「彼はよい車に乗っています」は会話をしている私(達)とあなた(達)以外の人について話をしています。さらに、彼は一人で、いつものこと(現在形)を表現しています。このようなときは動詞driveにsを付けてdrivesにします。いわゆる三人称・単数・現在形のs(略して三単現のs)です。

He drives a car. (彼は車を運転します)

この文にももちろんdoが本来は含まれています。

He (does) drive a car.

先ほど動詞にsを付けるといいましたが、doにs(音の関係上es)が付いてdoesになっていることに注目しましょう。平叙文ではわかりきっているためにdoesを隠しますが、動詞に-s, -esを付けなければいけないので、drivesになっていると考えましょう。

ではnotを使って否定文にしてみましょう。動詞のうしろにnotを付け足すのが基本発想なので、次のようになります。

平叙文 否定文
He drives a car.

(=He does drive a car.)

He does not drive a car.

否定文を作るとき、He does not drives a car. とdriveにsを付けないように気を付けましょう(すでにdoesについているので不要です)。

・am/ is/ are の疑問文は「主語と動詞を入れ替える」

「am/ is/ are」の疑問文は、主語と動詞を入れ替えます。疑問文を作るときの発想は、主語と動詞の入れ替えです。最後にクエスチョンマーク(?)を入れます。

平叙文 疑問文
She is tall. Is she tall?

・その他の動詞の疑問文も「主語と動詞(do/ does)を入れ替える」

その他の動詞でも疑問文の作り方は同じです。つまり主語と動詞を入れ替えます。ここでの動詞とはdoまたはdoesを指します。

平叙文 疑問文
I (do) go to school. Do you go to school?
She drives a car.

(=She does drive a car.)

Does she drive a car?

Iから始まる平叙文を疑問文にするときはDo you ~?の形にするのが一般的です。「私は~ですか?」と相手に尋ねる文は少し変だからです(実際はよくあります)。

否定文と疑問文の作り方をまとめます。否定文は動詞のうしろにnotを付け足して作ります。疑問文は、主語と動詞を入れ替えて作ります。am/ is/ are以外の動詞には本来do (またはdoes)が存在していることを理解するのがポイントです。

語順と平叙文・否定文・疑問文がわかれば英語が得意になる

英語の語順と平叙文・否定文・疑問文について理解することが最も大切です。これさえできれば文法学習の最大の山を乗り越えたも同然です。なぜなら基本的なルールさえ理解してしまえば、高度な英語表現にも簡単に応用できるからです。

例えば中学1年生で助動詞canを学ぶとき、doやdoesの位置に置き換えれば否定文や疑問文に応用できます。

I (do) speak English. I can speak English.
I do not speak English. I cannot speak English.
Do you speak English? Can you speak English?

私は英語が苦手な中学生の指導経験が多数ありますが、彼らのほとんどは基本の語順と平叙文・否定文・疑問文をきちんと理解できていません。理屈を理解せずに暗記しようとすると混乱するケースが多いので注意しましょう。

丸暗記でAre you ~?とかDo you ~?と覚えてしまうと、Are you go to school? という誤った文を作ってしまいます。一度変な理解をしてしまうと、あとで正しく覚え直すのは大変なので最初が肝心です。

すでに数年程度の英語学習歴がある子どもにも、語順や否定文・疑問文の作り方を教えることで散らかった知識が体系的に整理されます。それまで何となく口にしていた英語の語順がきちんと論理的に説明できるのでプラスの効果が生まれます。

文法の理解が早く正しくできるようになると学校のテストで点数を取ることは可能になります。しかし、それだけでは本当に英語を使えるようにはなりません。次に、習得した文法の知識を使って英語を使える(話せる)ようになるための方法を説明します。

英文法を知識で終わらせないための学習方法

英語上級者のように、文法を意識しなくても英語がスラスラと口から出てくるためのトレーニングを紹介します。

学校や英会話スクールで習った英文を材料にして家庭でトレーニングをしてみましょう。例えば、My favorite color is blue.(私の好きな色は青です)という表現を習ったら、これを材料にして文型を確認させます。

文型を確認するときは壁に貼ってある基本3文型のカードを見ながら学習を進めます。最初に動詞を確認させます。この場合はisが動詞です。青い色鉛筆でisを○で囲みます。

その次に主語を確認します。子どもは主語を1語だけと思い込んでいるので、すぐには答えられないかもしれません。そこでヒントでMy favorite colorに鉛筆で下線を引いてあげます。そうすると全体で主語であることが理解しやすくなります。これを赤で囲みます。
my favorite color is blue.

最後にblueという言葉がせつめい語なのか、それとも「in, on, atなど」なのかを考えさせます。正解はせつめい語です。この場合、isという動詞は左側の主語と右側のせつめい語が同じであること(イコール)を意味します。

ここまで細かく説明すれば、それぞれの単語がどういう意味でなぜその順番に並んでいたのかが理解できます。そうするとスッキリした状態で、英文の暗唱に気持ちを集中させることができます。

あまり細かいところまでやりすぎると混乱する原因になります。とりあえず学校や英会話スクールで習った基本文の理解だけにとどめておきましょう。

・否定文と疑問文も作ってみる

否定文と疑問文も作ってみましょう。否定文は動詞のうしろにnotを付け足すだけなので、My favorite color is not blue.で完成です。また、疑問文は主語と動詞を入れ替えてIs your favorite color blue?となります。myをyourに変えるのがポイントです。

否定文や疑問文を作るときは、紙に書かずに口頭で答えさせましょう。紙に書かせるとスペリングを正確に書けなければいけないので、英作文に集中できません。一度に複数の作業をさせると効果が低下するので、口頭英作文が最適です。

このように、たった一つの基本文だけでも、語順と否定文・疑問文の作り方までを繰り返し学ぶことができます。

ほとんどの英文が3つの文型に収まることがわかれば少しずつやる気が出てきます。一度考え方を伝えれば、自分で解決できないときだけ質問するようになります。そのときは壁に貼った文型のカードを確認しながら教えてあげましょう。

英会話につなげる小学生の文法学習

文法や語法を習ったときは、必ず学習事項を使った英文を暗唱することが必要です。実際の使用例を何度も声に出して言うことで、文法を筋肉に覚えこませます。

例えば「~が得意である:be good at ~」を習ったら、これを使ったHe is good at math.(彼は算数が得意である)という例文を暗唱します。やり方は次の通りです。

・英会話につなげるための文法学習ステップ1

まず、この文章の文型を確認します。「主語 is せつめい語」のパターンです。得意は「良い」と置き換えられるので、goodを使用しています。日本語がどのように英語に変えられるのかを理解すると言語感覚が磨かれます。得意な物を示すときは、atを使います。

ここまでをきちんと理解できたら、英文を見ながら3回音読しましょう。回数を増やしすぎると、意味を無視してお経を唱えるような状態になってしまいます。3回だけでいいので、覚えるつもりで集中します。

・英会話につなげるための文法学習ステップ2

次に何も見ないで3回音読してみます。このときに表現を忘れたり口ごもったりしたら、ステップ1からやり直します。

・英会話につなげるための文法学習ステップ3

最後に日本語訳を見ながら、日本語のどの部分がどのように英語に置き換えられているのかを確認しながら、英文を音読します。例文では「得意」の意味を「good」で表しているのが特徴です。これも3回音読します。

英会話練習の中心はステップ1~3をひたすら繰り返すことです。英文そのものを暗記することが目的ではありません。まったく同じ表現を使用する機会は、めったに訪れないからです。

それよりも「得意である」をgoodで表現できるとか、得意な分野や対象をatのうしろに置くなどのことを脳に染み込ませることが大切です。何気なく音読を繰り返しても効果はほとんどありません。

英会話に使える表現を瞬時に出せるために練習していることを忘れないでください。文型や文法を筋肉が覚えるくらいまで繰り返すと、少しずつ英語を話すことができるようになります。

英語を流ちょうに話す人は、文法を意識していないのではありません。文法を意識しながら数多くの練習を繰り返した結果、ほとんど意識せずに話せるようになっているだけです。文法は知識で終わらせるのではなく、使いこなせてこそ意味があります。

英語の文法を学ぶときに、ひと言も声を出さずに完了してはいけません。理屈を理解したらすぐに口頭練習を繰り返すことが大切です。もし、あなたの子どもが静かに英語を勉強していたらそれは間違った学習方法なのでアドバイスをしてあげましょう。

英語の総合力をつけるには、こちらの動画セミナーがオススメです。

まとめ

小さい子どもは体験を通して英語の語順などの文法を自然と身につける能力を備えています。しかし、10歳頃を境にしてその能力は衰えます。代わりに論理的に言語を習得する能力が急速に高まります。

このことから小学4年生からは少しずつ文法を学んだほうが、効率よく英語を身につけられることがわかります。初めに学ぶべき文法とは、基本的な文型(語順)と否定文・疑問文の作り方です。

また、これらの文法を学んだだけでは単なる知識で終わってしまいます。大切なのはこの知識を使って実際に口を動かして英文を暗唱しながら筋肉に文法を覚えこませることです。

「文法を意識するから英会話ができない」という間違った認識は捨てましょう。英語を流ちょうに話す人は学んだ文法を使って練習を繰り返した人です。

これから長い時間をかけて子どもたちは英語を学んでいきますが、お母さんからもときどき文法学習の意義を伝えてあげましょう。

小学生が英検4級に合格するためのテキストと学習法

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あなたは英検4級を受けたことがあるでしょうか? 我が家の娘は中学生で初めて3級を受けたので、5級と4級は未受験のままです。私の周りでは英検4級を受験したという話をあまり聞きません。

英検5級は子どもが最初に受ける英検として人気があります。また、英検3級の取得者には高校入試において優遇措置を受けられるので、多くの中学生が受験します。このような状況から英検4級を飛ばす人が多いことが推測できます。

しかし、英検4級で出題される内容を詳しく調べると、英文法の大切な基礎が扱われています。級としての人気はなくても、ここで問われている内容はとても重要です。

英検4級の出題内容は中学2年生くらいまでの学習内容と重なります。そのため、小学生で英検4級に合格するためには本格的な英語学習が必要です。そこで、合格に必要な「レベル・学習量」と「対策」について具体的に説明します。

小学生の英検4級の合格率と出題内容

小学校低学年から英語を学び始めた子どもなら、小学校卒業時までに英検4級を取得することはそれほど難しくありません。週1回の英会話教室やオンライン英会話などを利用しながら、家庭でも毎日英語を学ぶ習慣があれば英検4級は充分に可能です。

英検4級の出題内容には、英文法の最重要項目が含まれています。これらの知識がしっかりと定着していると、将来複雑な英語を学ぶときにも容易に理解できるようになります。

小学校卒業時までに英検4級に合格していると、スタートダッシュをかけられるので中学校で英検準2級取得の可能性が高くなります。その場合、高校入試ではかなりの優遇措置を受けられます。具体的な優遇例については、日本英語検定協会のホームページに掲載されています。

・英検4級のレベルと小学生の合格率

英検4級の出題レベルは、中学2年生の英語試験と同レベルです。合格ラインはおよそ60~65%の正答率とされています。受験者全体の合格率は約70%で、小学生の合格率は約60%というデータがあります。

数字のとらえ方は人によってさまざまですが、小学生でも充分に合格できるという印象を受けたお母さんが多いのではないでしょうか。

英語学習歴3年、小学5年生以上なら英検4級にチャレンジ

小学生でも合格が狙える英検4級ですが、簡単ではありません。子どもの学習歴や能力によって個人差はありますが、英語学習歴3年で小学5年生以上なら英検4級にチャレンジしても問題ありません。

英検4級では短文だけでなく、長文問題が出題されます。単語さえわかれば意味が推測できる英検5級と異なり、4級では基礎的な文法力や長い文章を読む力が必要となります。

週1回の英語スクールと自宅での毎日の学習習慣(15分程度)があっても、これらのレベルに到達するまでに数年はかかるでしょう。特に子どもが得意とする英語の音(発音・フォニックス・リスニング)の学習は語学の要です。最初の1年でしっかりと仕上げましょう。

英文法の学習には抽象的な概念の理解が必須であり、9歳未満の子どもは苦手です。小学4年生から少しずつ文法を学び、1年から1年半経過すれば英検4級のレベルに無理なく到達できます。

同年齢の周囲の子どもが英検4級に合格したからといって、自分の子どもに安易に受験させるのは早計です。子どもの年齢・能力・適性・学習歴などを考慮しながら英検4級にチャレンジしましょう。

英検4級の出題内容

英検4級ではスピーキングテストがありますが、合否には関係ありません。そのため実質、筆記試験(リーディング)とリスニングの2技能について問われるだけです。それぞれの問題の構成を表で確認しましょう。

・筆記試験

問題 形式 問題数
1 短文の穴埋め問題 15問
2 会話文の穴埋め問題 5問
3 語句の並べ替え問題 5問
4 長文の読解問題 10問

上記の問題はすべて選択問題です。

・リスニング

問題 形式 問題数
第1部 会話の応答文を選ぶ問題 10問
第2部 会話の内容に関する選択問題 10問
第3部 文の内容に関する問題 10問

リスニングテストは3つのパートで構成されています。放送は2回繰り返されるので、1回目に聴き取れなくても2回目で確認できます。

英検4級で出題される文法と単語レベル

英検4級では時制(現在形・過去形・未来形)の理解が欠かせません。平叙文(~です)だけでなく、それぞれの時制における否定文(~ではありません)・疑問文(~ですか)についても理解する必要があります。

現在形はその名称から「今のこと」と誤解されやすい時制です。現在形で表現されるのは「いつものこと」です。I get up at 6.00 every day. は、「昨日も今日もおそらく明日も6時に起床する」の意味です。今のことを表現するには、現在進行形を使います。

過去形のポイントは、基本的な不規則動詞を覚えられるかどうかです。動詞にはedを語尾につければ過去形となる規則動詞と、別の形になる不規則動詞があります。つづりまでは問われないので、過去形を見たときにすぐに意味が分かれば大丈夫です。

makeなどの基本的な不規則動詞については、過去形(made)についてもセットで覚えておきましょう。普段から簡単な物語を音読する習慣があれば、過去形が頻出するので慌てずにすみます。

be going to やwillを用いた未来形の学習では、be動詞の基本や助動詞の知識が応用できるかどうかがポイントになります。助動詞は動詞の変化がない(助動詞+動詞の原形)ので、比較的簡単に理解できます。

・英検4級の単語レベル

英検4級の単語レベルは700語程度です。現在、中学校3年間での必修単語が1500程度なので、ちょうどその半分の語彙力が必要です。

英検4級に必要な単語力をつけるために、単語帳で暗記するのはオススメしません。それよりも後述する語彙制限のある薄い本を多読して基礎的な語彙力を養うほうが小学生には向いています。覚えたかどうかを確認するために使用するならJリサーチ出版の『小学生英単語』を用意しましょう。

小学英単語
語彙力のレベルチェックをするなら、中学2年生の英語教科書を利用します。初見の文章を1分間に120語のペースで読んで、8割以上の内容を理解できていれば大丈夫です。

もし120語未満のペースでしか読めなかったり理解力が8割を下回ったりする場合は、まだ英検4級の受験には早すぎます。これは読解テストだけの問題ではありません。リスニングにも大きく影響します。

リスニングができるためにはリーディング力が必要です。返り読み(右から左に視線が戻ること)をせずに一定のスピードで読んで理解できないと、リスニングはできないからです。読んでわからないものは聴いてもわかりません。

英検4級なら英語の動画サイトを利用した勉強法がオススメです。

英検4級合格に必要な文法力をどのように攻略するか

英検4級の合格には文法学習は必須です。体系的な学習が必要となるため、子どもにわかりやすく英文法を教えてくれる先生が必要です。また、これらの知識の定着を図るためにワークブックや問題集に取り組むことも必要になってきます。

ただし、文法の知識を「知識」のままで終わらせるのではなく、それを使って英語を話してみる訓練も同時にするべきです。口頭英作文と呼ばれる訓練です。英語スクールでは時間の都合上難しいので、できるだけ家庭で取り入れてほしい練習です。

例えば「to 不定詞」とは「to+動詞の原形」で「~すること」という意味になると学ぶのは「知識」です。この知識を定着させるために、下記のような問題に取り組みます。

I like (walk) in the park. 「( )の中の動詞を適切な形に直しなさい」 答え:to walk

多くの場合、ここで学習をやめてしまいます。しかし、それでは使える英語になりません。この知識を使って、短い英文を口頭で作文します。

彼の妹はバスケットボールをするのが好きです。(His sister likes to play basketball.)
私は水が飲みたいです。(I want to drink some water.)
私はお母さんを手伝いたいです。(I want to help my mother.)

このとき重視するのはスピードと文法の正確性です。2秒以内に文法的に正しい英語が口から出てくるまで練習します。できないときは、解答例を何度も音読して暗唱します。そしてしばらく時間を空けてから再び同じ作文に挑戦します。

解答例の英文暗唱から始めてはいけません。5秒間でも日本語に合った英語を一生懸命考えることが大切です。小学生には少々きついトレーニングですが、毎日少しずつこの作業を続けましょう。英文法が腑に落ちる瞬間(自分のものになる)が必ず訪れます。

英文法を使える状態にしておくと、リーディングはもちろんリスニングのときにも英文の構造を瞬時に理解できます。また3級以降は合否にかかわるスピーキングテストが始まるので、そのための準備にもなります。

小学生向けの英検4級おすすめテキスト・問題集

英検関連本で最強なのは旺文社です。そこから出版されている小学生向けの英検4級ドリル『小学生のためのよくわかる英検4級合格ドリル』を紹介します。中学生以上を対象とした一般的な英検参考書とは異なり、小学生受験者を意識したドリルです。
小学生のための英検4級合格ドリル

すべての漢字にはルビがふってあり、未修漢字の多い小学生でも読めるように配慮されています。また、難しい文法用語をできるだけ使わずに、小学生にもわかりやすい言葉で言い換えられているのが特徴です。

例えば、「to不定詞」は「to+動詞の元の形」と表現されています。「不定詞」という文法用語を避けて、平易な表現が採用されています。

オンライン英会話のリクエスト機能を活用すると、英検対策をしてくれる会社があります。管理人イチオシのオンライン英会話ランキングはこちらをクリック!

試験2か月前から準備をしよう

英検の1次試験は年3回、6月・10月・1月に実施されます。日頃からコツコツと英語学習を続けているなら、2か月前から準備をすれば充分です。なぜ2か月前からが最適かというと、長期休暇を利用できるからです。

6月受験なら春休みや連休、10月受験なら夏休み、1月受験なら冬休みが活用できます。長期休暇を有意義に過ごすためにも、英検に取り組むのは良い考えです。

先ほど紹介した『小学生のためのよくわかる英検4級合格ドリル』を使用するなら、1レッスンを3日のペースで進めましょう。1日15分の学習時間で、2日で各レッスンを終了できます。3日目は口頭英作文を中心に、知識から使える英語になるように訓練します。

口頭英作文で使用する文章は、お母さんがドリルに登場する例文を抜き出してノートに書いてあげます。

英検4級口頭英作文ノート

上の写真のように、片側に日本語をあらかじめ書いておきます。子どもは前日までに学んだ表現を使いながら、それぞれの文を英語で言ってみます。すぐに英語が出てこないときは、ドリルを広げて答えとなる英文を探して隣のページに書き写します。

英文がスムーズに口から出てくるまで音読を繰り返します。しばらく時間をおいてから再び日本語だけをみて英文がすぐに言えるかをチェックします。すべての文が一瞬で正確に言えれば、このレッスンは終了です。

英検の問題集ばかりでなく、英語での読書にもチャレンジ

英検の5級と4級で決定的に異なるのは、4級ではある程度のまとまりのある長文読解が出題されるところです。英検の問題集に掲載された長文だけに取り組むのではなく、日頃から英語での読書習慣を身に着けることを推奨します。

いきなり本格的な英語の読書は無理なので、使用語彙数を限定している本を購入しましょう。語彙制限をしている英語学習者向けの本はたくさんありますが、IBCパブリッシング株式会社から出版されている「ラダーシリーズ」をオススメします。

ラダーシリーズ*株式会社IBCパブリッシングのサイトより

LEVEL 1の使用語彙は1000語で、英検4級程度の学習者に最適です。ラダーシリーズをオススメする理由は、巻末にワードリストが付属していて辞書を引く必要がないからです。小学生が使える英和辞典がほとんどないので、これは重宝します。

一部の本には無料で朗読音声を公開しています。一度自分のペースで読んでから、2回目に読むときに朗読のペースに合わせて文字を目で追いながら内容を理解すれば、リスニングの訓練にもなります。

「ラダーシリーズ」のような多読用教材を利用しながら、長い文章を読むことに子どもを慣れさせましょう。集中して1冊読めれば、英検の長文問題など「長文」と感じなくなります。

我が家では小学生の息子は、朝学校に行く前に15分間洋書を読むのが習慣になっています。1学期だけで、ハリーポッターシリーズを2冊以上読み終えてしまいました。一度にたくさん読もうとすると英語の読書は大変ですが、少しずつなら攻略できます。

小学生が英検4級を受験:お母さんの心構え

先述のとおり、英検4級は数年計画で進めれば小学生でも合格可能です。しかし、残念ながら英検4級に落ちてしまうこともあり得ます。そのときは、子どもを非難したり叱ったりしてはいけません。中学生の内容にチャレンジしたので、その心意気をほめましょう。

中学の授業で英文法を基礎からやり直すので、挽回のチャンスはすぐに来ます。不合格になったからといって子どもがやる気をなくすような言動は慎みましょう。

英検4級を受験する究極の目的は合格ではなく、正しい英語学習のスタイルを身に着けることです。「英文を左から右へ返り読みしない」「覚えた文法を使って口頭英作文をする」などを続けていけば、英語力が飛躍的に伸びるときが必ず来ます。

合否にかかわらず、英語の勉強をコツコツ続けられた努力に対してお母さんは評価してあげましょう。子どもが英語に対して前向きな気持ちを持ち続けられるようにサポートすることがお母さんの大切な役割です。

まとめ

英検の中では影が薄い4級ですが、英文法の最重要項目が出題されます。数年以上の学習歴と文法を理解できる年齢に達していれば、小学生でも合格は充分可能です。

出題内容は筆記試験(リーディング)とリスニングの2技能だけです。スピーキングテストもありますが、合否には関係ありません。文法については時制による動詞の変化がポイントです。語彙力は中学校で学ぶ単語数の約半分(700語)が目安です。

リーディング力とリスニング力には相関関係があります。語彙制限のある薄い多読用の本を利用しながら、普段から英語の長文に親しむようにしておきましょう。

試験対策は試験2か月前から準備をします。小学生向けの英検ドリルを入手して、長期休暇を有効に使いながら学習をすすめていきましょう。文法については知識だけでなく、それを使って口頭英作文をして「使える文法」レベルまで高めておきましょう。

このとき、残念ながら英検4級に不合格だった場合、決して子どもを叱責してはいけません。英語学習を続けていけば、すぐに挽回するチャンスは回ってきます。子どもが英語好きでいられるように、お母さんは励ましましょう。

小学生の英検2級体験記:帰国子女の英語力保持に英検を活用!

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小学校で本格的に英語が導入されています。我が家には小学4年生の息子がいて、彼も英語の授業を受けています。帰国子女で英語も年齢相応にはできるので、得意の英語力を活かして楽しく授業を受けていると私は思っていました。

ところが、学校での様子を聞いてみると、彼が英語力を発揮する機会はほとんどないようです。日本では英語を使用する機会がほとんどなく、授業中でさえもあまり英語を使えていない様子です。そのため息子は英語に関する自己評価が低下している様子でした。

そのときに思いついたのが英検の受験です。帰国子女の英語力保持や英語学習へのモチベーションアップのためにも、英検を受験してみることは有効ではないかと考えました。ここでは息子が英検2級を受験したときの様子や効果について詳しくレポートします。

帰国子女の英語力保持に英検を活用

帰国子女といっても彼らの英語力はひとくくりに語れません。海外の学校に通っていた期間や本人の学力によって大きく変わるからです。

また、帰国したときの年齢も英語力を測るうえで重要です。英語で読書ができる前に帰国してしまうと、音声(聴く・話す)から覚えた英語が中心です。音から覚えた英語は、文字を学習した後と比較して忘れやすい特徴があります。

海外の学校(現地校やインターナショナルスクール)に小学校の低学年で入学し、2年以上在籍して年齢相応の読書ができる子どもならかなりの英語力を期待できます。一般的にネイティブの小学6年生は、英検1~準1級レベルといわれています。

努力して覚えた英語なので、「帰国後も英語を忘れないようにさせたい」と願う帰国子女のお母さんは多いはずです。しかし、帰国子女が日本で英語を使う機会はほとんどありません。意識的に努力しないと英語力の保持は難しいのが現状です。

帰国子女の帰国後の苦労

我が家にはマレーシアのインターナショナルスクールで3年半(Year 2~5:およそ日本の小学1~5年に相当)学んだ息子がいます。成績は中の上で、英語によるコミュニケーションは問題ありませんでした。

小学4年生の4月に帰国しました。通っている学校は普通の公立小学校です。この時期に帰国したのは、日本人としての国語力をつけることを優先したからでした。

海外にいるときから国語(日本語)の勉強は続けていたので、帰国後も国語はほとんど問題なく対応できています。

しかし、問題は英語でした。学習指導要領の改訂により公立小学校でも英語の授業が導入されています。「他の生徒よりも英語ができるので楽しいだろう」と私は予想していました。しかし、息子の反応は意外なものでした。

どうやら英語の授業中に発言させてもらえないらしいのです。どんなに手を挙げても先生は目を合わせず、遅れて遠慮がちに挙手した別の生徒を指名するそうです。

私には先生の行動を理解できます。いつも息子ばかりを指していたら他の生徒が発言する機会を奪うことになります。このため、授業中に息子が英語を話す機会はほとんどありません。せっかくの英語の授業は「ストレスのたまる時間」になってしまいました。

1学期が終了し、通信簿を持って帰りました。ABCの3段階で各教科の観点別に評価が並んでいます。何気なく見ていると、英語の評価欄に目がとまりました。なんと「外国の文化や習慣に関心がある」がB評価だったのです。

5歳でマレーシアに移住し、英語環境に適応しようと努力していた息子の姿を毎日見ていた私には信じられない評価です。

私は息子には「気にするな」と言いました。しかし、日本の小学校には息子が自分の英語力に自信を感じられる機会や場所がありません。現状を打破するために思いついたのが「英検の受験」でした。

英検を取得すれば自信につながる

私は長いこと英語学習を続けてきましたが英検には無関心でした。資格試験対策ばかりに固執して小手先のテクニックに走るのは邪道だと思っているからです。そのため一度も受験したことがありませんでした。

しかし、息子が英語力に自信を感じられない状況は早急になんとかしなければと感じました。そこで夕食時に英検の受験を息子に提案しました。

息子は最初、あまり乗り気ではありませんでした。しかし、妻が「お父さんも英検1級を受けるから」と提案したとたん、彼の目の色が変わりました。私に対してライバル心を燃やし始めたのです。

妻の提案が功を奏し、息子は英検の受験を決心しました。今年2回目の英検まで2か月あったので、準備期間は充分でした。ちょうど夏休みが始まったところだったので、暇な時間を有効活用できます。さっそく申し込みをすることにしました。

小学生が英検2級に合格するための対策と勉強法

英検の出願は英検のホームページ上から完結します。
英検HP

息子の受験級は「英検2級」を選択しました。IDやパスワードを入力して、クレジットカードで支払いを済ませるだけです。このときのデータは後で大切になるので、忘れずに記録しておきましょう。

息子の英語力から「英検準1級でも合格できる」と思いましたが、あえて2級に決めました。理由は2つあります。

まず、英検2級の筆記試験で扱われる英単語には小学生には理解が難しいものが多数含まれているからです。例えば、insurance は名詞で「保険」の意味です。小学4年生では保険がどういうものなのか理解は難しいでしょう。

「insurance=保険」と訳語を暗記することは可能です。しかし、それでは単語を理解したことにはなりません。年齢相応に少しずつ教養を深めながら、単語の理解をすることが大切です。

試験の中で単語力は一要素にすぎないので、英検準1級の取得も可能です。ただ、これらの言葉をきちんと説明できるように教養を深めてから準1級を受験させたいと考えました。だから足場を固める意味でも2級からが妥当であると判断しました。

二つ目の理由は、成功体験を積ませるためです。準1級にチャレンジして不合格だった場合、息子の英語学習への意欲がそがれる可能性があったからです。小学校で活躍できず英検でも不合格だったとしたら、やる気を失いかねません。

これらの理由から、息子が余裕で合格できる英検2級を選択しました。英検2級の平均合格率は約25%といわれていますが、小学生の受験者で絞ると40%が合格しているようです。これは帰国子女の割合が多いことが主な要因ではないかと推測されます。

スクール探し:小学4年生から参加できる英検2級講座がない!

私は仕事で忙しいので、息子の英検対策を見てあげられません。そこで、近所の英語スクールの夏期講習に通わせることにしました。

しかし、ここで思わぬ苦労をすることになりました。小学4年生が参加できる英検2級対策のスクール(塾)が見つかりません。英検2級は高校卒業程度のレベルです。受験者の多くは高校生です。そのため講習は中学生以上に限定しているところばかりでした。

「自分で教えるしかないか…」とあきらめかけていたとき、最後に問い合わせをしたのが埼玉県を中心に展開する「サイエイ・インターナショナル」でした。事情を説明すると、体験レッスンに参加してレベルチェックをすることを条件に認めてくれました。

サイエイ・インターナショナル
さっそく指定された日時に息子を連れていき、体験レッスンを受講させました。一日のレッスンは2時間です。前半は日本人講師によるレッスンで、後半は外国人講師による英語でのレッスンです。

レッスン終了後、「英検2級で問題ないです」と講師からお墨付きをいただきました。その場で、5日間の夏期講習を2回分(合計10日間)に申し込みました。入学金はサービスしてもらい、約3万円の講習料でした。

講座の開設時間は中高生に合わせて19~21時の時間帯でした。小学生にはやや遅いですが、これは妥協するしかありません。

英検2級対策講座の様子と使用テキストについて

息子の普段の英語学習について説明します。帰国後は週1回(50分)のオンライン英会話(帰国子女向け)を継続しています。また、英語での読書はほぼ毎日続けています。土日はサッカーで忙しく、学習塾には通っていません。

サイエイ・インターナショナルの夏期講習が始まると、積極的に通い始めました。久しぶりに自分のレベルにあった英語のレッスンを受けられたので、うれしかったのかもしれません。

授業の様子をたずねると「俺しか手を挙げていないのに、先生が指してくれない」と、また同じ悩みを語りだしました。

ただし、授業後に外国人講師から「君ばかり指したら他の人が答えられなくなってしまうから、少し我慢してね」とフォローがあったようで、息子は納得している様子でした。

私は英語学習に関して口を挟むことはしませんでした。夏期講習で使用するテキストを確認すると、小手先のテクニックではなく本質的な理解を目指した授業をしていることが見て取れました。

英検2級では文法の問題も出ます。たまに誤答していましたが、おおむね良好でした。文法に関してはマレーシアにいたときに『Essential Grammar in Use』(写真)を使用して、1年かけて取り組んでいました。文法学習の問題集として非常に優れた良書です。
Essential Grammar in Use
自然な例文が充実しているのが特徴です。文法や語法の問題の正答率が高いのは、このときの学習の成果だと思います。

夏期講習に通わせて良かったことは2つあります。一つ目は、英検の「試験形式」に慣れたことです。選択肢から選んだり、リスニングテストがどのように実施されるのかを理解したりしておくことは大切です。

二つ目は、Writing(ライティング)対策のテキストの完成度の高さです。さすがに英検を軸にしている英語スクールだけあって、教材が洗練されています。エッセイ形式に不慣れな日本人学習者でもわかりやすく学べるように配慮されていました。
サイエイのテキスト

夏期講習終了後に先生と雑談すると、「ライティングの模擬試験をして最後まで書ききったのは息子さんだけでした」とほめてもらいました。稚拙な内容でも解答用紙を埋めようと努力したことを私もほめてあげました。

小学生のための英検2級必勝法

先述のとおり語彙力の面で、小学生はどうしても不利な面がでてきます。これをどのように他の能力で補うかが英検2級合格のポイントです。

まず、音声面を徹底的に鍛えることです。リスニングの内容には難しい単語はほとんど使われていません。つまりきちんと聴き取りができれば、簡単に答えることができます。帰国子女の場合、音声面は強いのでリスニングはほぼ満点が狙えます。

そして最も重要なのは、リーディング力です。語彙力は多少不足していても、それを補う速読力・多読力を徹底的に鍛えておきます。これは普段から年齢相応の英語での読書習慣があるかどうかがカギになります。
Harry Potter
文字を読むスピードが速ければ、ライティングに時間をかけることができます。テーマが小学生にとって難しくても、構成を考える時間が充分に取れれば完成させることができます。

数百ページの本を日常的に読んでいれば、英検の試験問題の長文などは「長い」と感じません。知らない単語に出会っても前後の文脈から類推する能力が高く、語彙力不足をカバーすることができます。

帰国子女ではない普通の小学生が英検2級に合格するのはかなり難しいのは事実です。しかし、充分な読書量とナチュラルスピードの英語に慣れておけば勝機が見えてきます。

リスニングが弱い子どもには、こちらの動画セミナーがオススメです。

小学生が英検2級に合格するためにお母さんができること

子どもの英検受験のためにお母さんができることは、「夏期講習の送迎」と「子どもをほめたり励ましたりする」だけです。たったこれだけのことで、子どもは前向きに勉強に取り組みます。

もう一つ子どものやる気に刺激を与えたのが、私(父)の英検1級受験でした。息子は私を打ち負かしたい一心で、一生懸命に勉強していました。
英検1級受験票

家庭でできるサポートとは、気持ちよく送迎をしてあげることや、ほめたり励ましたりすることです。また、親子で受験して適度に競争心をあおるのもとても効果的です。お母さんも(お父さんも可)面倒くさがらずに、一緒に英検にチャレンジすることをオススメします。

英検2級1次試験の当日の流れ

いよいよ英検の当日です。息子の2級と私の1級は午後からスタートなので、午前中は自然と英検の話題になります。

普段はあまり細かいことを気にしない息子ですが、さすがに落ち着かない様子です。不安に思っていることを聞き出すと「ライティングができるか不安」ということでした。

今まで私は英検の指導は一切しませんでしたが、最後に私から「ライティングのコツ」を教えることにしました。

・ライティングのコツをおさらい

英検2級では与えられたテーマについて自分の立場(賛成・反対)を明らかにします。そして理由を2つ挙げて、自分の主張を80~100語でまとめることが求められます。

インターナショナルスクールではほとんど毎週、簡単なエッセイの宿題を出されていたので書くことには慣れているはずでした。しかし、時間制限のあるテストには不慣れです。そこで、短時間でまとめるコツを伝えました。

まず、与えられたテーマをよく読んで理解します。それから余白に簡単な表を作成して、理由を挙げていきます。このときの理由は賛成でも反対でもかまいません。思いつく順番にメモを取っていきます。

このとき、書きやすいほうを書いていきます。これが制限時間内にライティングを仕上げる究極のコツです。

例えば「企業の在宅勤務は将来増えるとあなたは思いますか」というテーマが与えられたら、下の図のようなメモを取ります。

英検2級ライティングメモ

この場合、2つ以上の理由を挙げられたのは賛成側(そう思う)なので、こちらの立場を選択します。さらに、3つの理由のうち書きやすい2つに絞ります。上記の例では「通勤時間を節約できるから」と「交通費を節約できるから」を取り上げるのが最良の選択です。

字数が不足しそうなら、「For instance, …(例えば)」を使用して、具体例で肉付けすれば大丈夫です。

ライティングに必要な表現のパターンはサイエイの夏期講習で教えてくれました。

I think 自分の立場.  (私は~のように思います)
I have two reasons to support my opinion.(私の意見を支持する二つの理由があります)
First,… Second, …. (ひとつめは~。二つ目は~)
For instance, 具体例.(たとえば、~)
For these reasons, I think 結論.(これらの理由から私は~と思います)

これらの表現はほぼ暗唱していたので、あとは当てはめるだけで完成です。

字数をカウントしやすいように、大きめの字で1行につき7~8文字で書くように指導しました。こうすれば、掛け算で簡単に字数を計算できるからです。最後に必ず最初から読んで、綴りや文法の間違いを見つけて訂正するように伝えました。

また、インターネットから過去の問題を探して、その場で理由を挙げる練習だけに集中しました。1時間ほどの学習でしたが次第に自信を取り戻した様子でした。

一方、1級を受験する英検初体験の私は何が出題されるのかまったく理解していませんでした。インターネットで出題される問題数や時間配分などを調べて、メモをとりました。

その様子を見て「今ごろ何をやっているの? お父さんは、完全に英検をなめている!」と息子から非難され、私は苦笑するしかありませんでした。

小学生の英検受験者は保護者の付き添いが可能

試験会場は電車で二駅離れた高校でした。30分前には到着できるよう、息子・私・妻の3人で早めに家を出ました。このときに受験票と身分証は絶対に忘れないようにしましょう。
2級受験票

小学生が英検を受験する場合、解答用紙に個人データを正確に記入する必要があるので、保護者の付き添いが認められています。私は別会場で受験しなければならないので、妻にこの役をお願いしました。

10月としてはかなり暑い日で、駅から会場までの徒歩15分がとても長く感じました。駅から会場までの道は、受験者らしい人の長い列ができています。親子連れも多く、たくさんの小学生が英検を受験していることがわかりました。英検会場

会場に着くと、持参した受験票(写真付)に割印を押してもらいます。ここで付き添いの保護者には衣服に貼る保護者シールが配られます。
保護者シール

英検会場では混乱を避けるためにエレベーターの使用は禁止されています。2級は5階、1級は7階が会場でした。大量の汗をかきながら階段を上り、5階で息子と別れました。

子どもの受験者には保護者の付き添いが認められています。妻の話では、開始5分前までは子どもの机の隣に立ちながら、解答用紙に個人データを記入するのを手伝ったそうです。この記入が終わると保護者は退出して、指定された待合室に移動します。
保護者待合
待合室には各級のスケジュールが書いてあります。終了時間が近づくと、保護者は退出して会場建物の出口で子どもと待ち合わせをします。廊下で待つことはできないので注意しましょう。

英検3~5級を受験する子どもの付き添いがほとんどなので、2級が終わる頃には保護者の待合室は誰もいなくなっていたそうです。

・英検1級会場の様子

7階にある英検1級の会場に到着したころには、私は全身から汗が止まらない状態になっていました。教室に入ると、同じように汗が止まらない中年の受験者達が神妙な面持ちでラストスパートの勉強に打ち込んでいます。

スマートフォンの電源を切り、一冊も参考書を持ってこない私はすることがありません。仕方なく周囲を観察すると、ボロボロにすり切れた『英検1級単語集』を血眼になって読み返していたり、なぜか10年前のNEWSWEEKを熟読していたりする人がいます。

私の前にいる男性は、緊張のためか15分の間に3回もトイレに行きました。初めて目にする英検1級の異様な空気に唖然としながら、試験の準備をまったくしてこなかった自分を今さらながら猛省しました。

・親子とも英検の1次試験終了

英検1級は難易度が高いだけでなく、問題量が多いです。後半のリスニングもなかなか終わらず、正直「もう勘弁してください」という精神状態になります。「子どもを鼓舞するだけなら、準1級で充分では?」と妻を恨みました。

試験が終了して会場の外に出ると、先に試験を終えた息子と妻が待っていました。「英検2級の試験はどうだった」とたずねると「簡単だった」と自信ありげでした。直前にやったライティングが功を奏したようで、指定された字数で完成したとのことでした。

無理に英語を教えず、子どもから求められた部分だけを教えてあげたのはとても良かったと思います。

英検2級1次試験の結果発表と2次試験に向けて

英検1次試験の合格発表は2週間後の月曜日です。土曜日に学校行事があり、当日、息子は休みでした。試験の結果発表は午後です。結果が気になるのか、午前中はそわそわしながら過ごしていました。

・12時に父の結果発表

まず、12時からは1級の結果発表です。英検のサイトにアクセスして、IDとパスワードを入れると1次試験の結果が閲覧できます。

結果は予想に反して「1次試験合格」でした。私の合否には一切関心のない妻は、子どもと昼食中です。仕方なく子どもを呼んで合格の画面を見せました。子どもが妻に私の合格を伝えると「ウソでしょ」と妻の声が階下から聞こえてきました。

私が1次試験に合格する番狂わせがあり、息子は急に不安になってしまいました。2級の発表までの1時間、さらにそわそわして落ち着かない様子でした。

・13時に子どもの英検2級1次試験の合否発表

2級は受験者数が多いせいか、発表直後はアクセスが集中してなかなか合否発表が見られません。30分ほど放置して再びアクセスすると「英検2級1次試験合格」の文字がありました!
英検2級合格
英検バンドを見ると「+9」で、余裕で合格しています。英検バンドとは合格点を起点にして、25点刻みで±1で表示したものです。

今回2級を受験させましたが、合格を知ったとき息子は予想以上に喜びました。2級に合格しても冷めているのではと思っていたのですが、それは私の間違いでした。日本に帰国して初めて自分の英語に対して自信を取り戻せたことが大きかったのではと感じています。

2次試験の面接は、息子の得意分野なので特に対策はしません。暇なときに、過去問を使いながら数回練習してみるつもりです。

小学生の英検は、確実な級から少しずつステップアップしよう

今回の経験から、小学生が英検を受験するときは英検5級から少しずつステップアップすることをオススメします。どんな級でも合格すればうれしいので、その後の英語学習に好影響を与えるからです。

帰国子女でもいきなり準1級に合格すると、残りは1級しかありません。2級から始めて、細かく刻んだほうがモチベーションの維持には好都合です。

もし子どもが不合格でも、叱ったり非難したりするのは厳禁です。合否だけでなくCSEスコア(過去のスコアと比較して伸びを確認できる指標)や英検バンドに注目しましょう。受験ごとに少しずつ合格ラインに近づいていれば努力を評価してあげましょう。

私は英検の合否ばかりにとらわれる姿勢には今でも反対です。しかし、今回のように息子が大喜びしている様子を見ると、成長を確認しモチベーションを維持する点で、英検を受験することは効果的であると考えています。

英検2級2次試験(スピーキングテスト)と合格発表!

2次試験は最寄りの駅から7キロ以上離れた大学を会場に指定されました。会場で受付を済ませると、首から下げる袋を配布(写真)されます。これはスマートフォンなどを入れる袋で、スマートフォンを持っていなくても首から下げる決まりとなっています。
英検2次試験袋
控室で受験生は名前を呼ばれるまで待機します。その間に面接カードを記入します。ここまでは保護者の付き添いが認められています。記入後は保護者は保護者控室に移動して、子どもの試験終了まで待ちます。受付から試験終了まで約1時間でした。

さて、それから2週間後。インターネットで合格発表が確認できます(郵便でも送られてきます)。昼過ぎには発表でしたが、あえて息子が学校から帰ってくるまで待ちました。

IDやパスワードを入力して、試験結果を確認します。2次試験の出来があまり良くなかったらしく、少し不安気な息子でしたが「合格」の文字を見つけ大喜びでした。
英検2級合格
ちなみにCSEスコアは2242で英検2級には余裕をもって合格しましたが、準1級にはあと一歩届きませんでした。

予想通り、小学4年生では語彙のレベルがまだ未熟で出題内容にどうしても追いつかない部分が出てきます。例えば、2級でも「representative: 代理人」という単語は出てきますが、小学生では難しすぎて意味を理解できません。

英語・日本語にかかわらず、もう少し幅広い教養を身につけ語彙レベルを引き上げてから、準1級を受験したほうがいいと改めて感じました。

ちなみに、私も1級に合格しましたが、家族の反応は今ひとつでした(結構大変なんですけれどね)。

まとめ

帰国子女の英語力保持は、お母さんにとって悩みの種です。小学校で英語の授業が正式に導入されていますが、帰国子女のモチベーションを維持するのは難しいです。

このような場合、子どもの英語力に見合った英検にチャレンジさせることは、帰国子女にとってよい刺激になります。必要に応じて近所の英語スクールに通いながら、試験に向けて準備を進めましょう。

お母さんができることは、子どもをほめたり励ましたりすることです。また、お母さんかお父さんも同じように英検にチャレンジすると、子どもの競争心を刺激していい結果につながります。

帰国子女ではない小学生でも、英語学習のモチベーションアップや学習進度の確認の点で、英検の受験は大変効果的です。子どもの場合、英検5級から少しずつステップアップしたほうが、子どもは合格の喜びを多く味わえます。

英検では4技能(聴く・読む・話す・書く)をバランスよく試されます。2次試験ではスピーキングテストが課せられるので、普段からアウトプットの機会を確保しておくことが大切です。オンライン英会話を利用すれば時間や場所に拘束されず、比較的安価で続けられます。

級が上がるごとに自分の英語力の進歩を感じられるのが英検の良さです。「〇級なんて当たり前」と思わずに、合格の喜びを家族全員で共有しましょう。

小学生の子どもが英語を話せるようになる方法とは

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「英語をしゃべるとバカになる」という話を聞いたことがあるでしょうか。英語を話すには高度な情報処理が必要です。脳がその作業に追われてしまい、肝心の話す内容がおろそかになってしまうらしいのです。そのため話す内容のレベルが低下して「バカ」になるというものです。

私も海外で英語を使う仕事をした時期がありましたが、苦労したのが夕食の席でした。お酒を飲みながらのコミュニケーションは予想以上に大変でした。酔うと簡単な単語さえも思い出せずに、言いたいことの半分も言えなくなってしまいます。英語を話すと脳に負担がかかっていることが実感できました。

英語教育に関心のあるお母さんなら子どもには「英語ペラペラ」になって欲しいと思うはずです。しかし現実、英語ペラペラの小学生はほとんどいません。なぜなら、英語を話すのは小学生では難しすぎるからです。

ただ、英会話の仕組みと難しい部分を意識すれば、対策がハッキリと見えてきます。今回の記事では、小学生でもスピーキング力を伸ばせる有効なトレーニング法を紹介します。

英語を話す人の頭の中はどうなっているか

私たち日本人にとって日本語は母国語です。「言いたい何か」を頭に思い浮かべれば瞬時に日本語の文が口から出てきます。このとき日本語の文法を意識することはありません。人間の本能により文法を自然と身につけた結果です。

この能力は7歳くらいで急速に衰え、たとえ外国語の環境に移動しても日本語を覚えたようには自然と身につけるのは困難になります。外国語を身につけるためには勉強をするしかありません。

もちろん、子どもの中にはネイティブではないのに英語をスラスラと話せる人がいます。彼らを見ていると「なぜあんなにスラスラと英語を話せるのだろう」と不思議に思うかもしれません。でも、頭の中の活動を細かく見ていくと、決して簡単に話しているわけではないことがわかります。

ここでは「英語を話す」という行為を段階に分けて図で説明します。このプロセスを正確に理解したあとに、「小学生でも英語をペラペラと話すことができるか」について考えてみます。

第1段階:状況を把握し、言いたいことを思い浮かべる

まず、言葉に出す前に「状況」があります。例えば「レストランで友人と食事をしているシチュエーション」です。最近起きた出来事や考えたことなどをお互い話しながら、ランチを楽しんでいる状況です。

状況が明確になると、使用する英語の丁寧さが決まります。誰かの了解を得るなら、かしこまった場では“Would you mind~?”を使用し、友達なら“Is it OK if~?”で充分です。話すときの状況は英語表現に影響を与えるので大切な要素です。
speaking1

そして次に「言いたい何か」を頭に思い浮かべます。この時点ではボンヤリとしたイメージのです。例えば、次のようなことが該当します。

目の前にいる友人はグルメ好きである。そういえばここに来る途中、レストランの前にオープン待ちの長い行列ができていた…。そうだ、この話を友人に教えてあげよう!

この時点では「言いたい何か」は言語化されていません。イメージと感情が合わさったボンヤリとしたものです。次の第2段階で、このボンヤリとしたものを言語(英語)で伝えます。

第2段階:単語力と文法力

ではこのボンヤリとしたイメージを言葉に変えるにはどうしたらいいのでしょうか。それには2つの要素が不可欠です。それは「単語力」と「文法力」です。すでに説明したとおり、8歳以上の日本人は単語も文法も自然に身につきません。学習が必要です。
speaking2

先ほどのイメージを日本語にすると「ここに来る途中そのレストランのそばを通ったら、オープンを待つ長い行列があった」となります。この文を作るために必要な主な単語を挙げてみます。

walk past:~のそばを通る(歩く)
on one’s way here:ここへ来る途中
a long queue (line):長い行列
wait for:~を待つ

次にこれらの単語を組み立てるために必要な「文法」の学習項目を挙げてみます。

・分詞構文
・現在分詞の限定用法
・過去形
・to不定詞

ネイティブなら6歳の子どもでも言える内容です。ただ、日本人が英語で話すにはこれだけの知識が必要です。単語のレベルは中学校レベルです。文法に関していえば分詞構文は高校英語、その他は中学英語です。

では、高校生まで英語を真面目に学習していれば、この英語がすぐに口から出てくるのでしょうか。答えはノーです。なぜなら、「知っているだけ」の知識では「使えない」からです。もう少し詳しく解説します。

第3段階:必要な情報を引っ張り出せる能力

そもそも、たくさんある単語の中から適切な言葉を選んだり、使えそうな文法事項がすぐに頭に思い浮かべられたりできるまでには相当な訓練が必要です。何年も前に習ったことでも一瞬で引っ張り出せなければいけません。
speaking3

頭で覚えているうちは「ただの知識」です。学校の英語の授業では、教科書を読み先生の説明を聞いて、問題集などに取り組みながら正しい知識を身につけられます。しかし、どんなに内容を理解してもこれでは「知っているだけ」です。

「知っているだけ」から「使いこなせる」までのレベルには相当な差があると思ってください。頭で覚えるのではなく「口の筋肉に覚え込ませる」くらいの訓練が必要です。話すためには「話す」訓練をしなければいけません。

第4段階:正しい発音で声に出す

最後にようやく英語を話します。

Walking past the restaurant on my way here, I saw a long queue waiting for it to open.
(ここに来る途中レストランのそばを通ったら、オープン待ちの長い行列を見たよ)

このときに英語を日常的に使用する人達がストレスなく聴き取れる発音ができなければ、相手には伝わりません。単語を正しい発音で覚えるのはもちろん、英文となったときに特徴的な音の変化(消失・連結・変化)やイントネーションも身につけなければいけません。

発音に関してはネイティブレベルにこだわる必要はありません。世界で英語を使って日常的にコミュニケーションをしている人のうち、ネイティブは2割程度であり、残りはノンネイティブだからです。どこの国の人にも伝わる「標準的な英語」を話すことが肝心です。

上記のように、日本人が英語をスラスラと話すためには4つのステップをクリアしないといけません。さらに英会話を難しくしているのは「時間」です。「イメージ」から「発話」まで少なくとも2秒以内に処理しないと会話が間延びしてしまいます。

短時間に高度な処理をしつつ、話し終わる前に次の内容のイメージを思い浮かべなければいけません。英会話は簡単にできるものではなく、長期的な訓練が必要です。

自由な英会話は小学生には難しすぎる

では「小学生でも英語がペラペラと話せるかどうか」について検証します。

スピーキング練習で効果的なのは、「普段自分が日本語で話している内容どんどん英語にして、話せる表現を増やしていく」という方法です。これを続けるだけで、どんどんスピーキング力は向上していきます。高校生以上ならどんどんやるべきです。

ところが、小学生にこのトレーニングをやらせてもうまくいきません。その原因について説明します。

文法力・単語力が低すぎる

まず語彙力が低すぎます。一般的な小学5~6年生の語彙力(ボキャブラリーレベル)は、せいぜい300語程度です。これは言葉を話し始めた2歳児と同じくらいのレベルです。これでは小学5年生が普段考えることを英語で表現するのは不可能です。

自分の思考を自由に表現するには最低2000語レベルの語彙力(大学受験レベル)が必要です。根拠は、学習者向け英英辞書として定評のあるロングマンで定義に使われる語彙が2000語レベルだからです。2000語を使いこなせれば、ほとんどの表現を網羅できる証拠です。

もう一つの大きな問題は、文法を知らなさすぎることです。小学校では本格的な文法学習はしません。「主語+動詞+目的語…」の基本的な語順でさえも理解しているか怪しいレベルです。これでは英文を組み立てることができません。

文法力と単語力が低いレベルにもかかわらず、「さあ、自由に英語を話してごらん」と呼びかけても無言になるのは当然です。

「言いたいこと」と「言えること」のギャップが大きすぎてストレスになる

この事情がわかっていないネイティブや英語の先生は「間違いを恐れるから話さない」と勘違いしています。そうではなくて「話せない」のです。
speaking_stress

「言いたい何か」と「実際に言えるレベル」の格差が大きすぎて、子どもにはストレスがかかります。これを繰り返していくと子どもたちは英語嫌いになっていきます。

日常会話は「自由工作」

「普段自分が日本語で話している内容をどんどん英語にして、話せる表現を増やしていく」という方法は、例えるなら自由工作のです。「何を作っても何を使ってもいいから」はかえって難しいです。

何を作るか、どのような材料が必要か、使える工具はどれか、色はどうするかなど考えなければいけないことが多すぎます。

夏休みになると書店では工作キットのコーナーが設置されます。これは、自由工作の悩みから解放されたい子どもや親達の需要があるからです。

日常会話は小学生には難しすぎる

結論ですが、小学生の間に英語をペラペラと話せるようにはなりません。小学生のうちに英語ペラペラになることはほぼ不可能です。

しかし問題ありません。実は小学生でも取り組める効果的なスピーキングのトレーニング方法があります。それは「音読」です。スピーキングだけでなく、英語にかかわるすべての技能の向上が期待できます。小学生のうちから始めると中学生になればメキメキと英語力が向上します。

小学生でも取り組める「音読」とその効果について、以下詳しく説明します。

音読練習が効果的

英語学習において「音読」が効果的であることは、昔から知られています。でも多くの人は正確に音読の効果について理解できていません。そのため、ただ文字を読み上げるだけとか、流行りの「シャドウイング」だけ取り組んで効果を実感できずにいます。

音読練習は「プラモデル」のようなもの

大人向けのスピーキング練習方法が自由工作なら、音読練習は「プラモデル」です。音読トレーニングの詳細を下の図にまとめました。
ondoku1

プラモデルの特徴は「作るものはあらかじめ決められていて、必要な材料はすべて揃っている」ということです。そして指定された通りにパーツを組み立てると、誰でも格好いいロボットや車などを組み立てられます。

音読トレーニングには原稿(スクリプト)と音源(モデルリーディング)が用意されています。自由に話す代わりに、ネイティブの話す正しい英語をあたかも自分の言葉として声に出して読みます。

これなら12歳の知的レベルに近い内容を扱えるので、子どものストレスはかなり軽減されます。

パーツが単語、組立説明書は文法

実際のスピーキングでは、どの単語と文法を使うかを一瞬で考えなければいけません。しかし、小学生はほとんど単語も文法も知りません。そのため英語で話せる内容は非常に限られてしまいます。

音読では原稿があり、使用すべき単語と文法が用意されている状態です。これはあたかもプラモデルでパーツ(単語)と組立説明書(文法)が一式箱に入っているようなものです。

英会話の最も難しい部分(適切な単語と文法を選ぶこと)を「あらかじめ用意」してあげます。こうしてハードルを下げて、小学生でも英会話の疑似体験ができるようになります。

音読の具体例

実際の音読練習がどのようなものかを理解するために、具体例を見ながら体験してみましょう。まず、教材を用意しなければいけません。最低限必要なのは、「ネイティブによるモデル・リーディング(模範となる音読)を録音したもの(CD/録音データなど)」とそれを文字に起こした「スクリプト(原稿)」の2つです。

*私の知り合いのPaul先生にお願いして、オリジナル教材を作ってみました

・音声ファイル

https://hi5kids.net/wp-content/uploads/2018/09/音読素材.mp3

・スクリプト

Hello, my name is Paul.  (こんにちは、私の名前はポールです)
I’m from America. (わたしはアメリカから来ました)
This mug is on the shelf.  (このマグカップは棚にあります)
These mugs are also on the shelf. (これらのマグも棚にあります)
This mug is beautiful.  (このマグは美しいです)
These mugs are plain. (これらのマグは味気ないです)
This camera is old.  (このカメラは古いです)
This camera is new. (このカメラは新しいです)
Old camera, new camera.  (古いカメラに、新しいカメラ)
Smile! (笑って!)
This is a little pen.  (これは小さいペンです)
This is a big pen. (これは大きいペンです)
Little pen, big pen. (小さいペンに、大きいペン)
This is not a toy. (これはおもちゃではありません)
This is a real pen. (これは本物のペンです)
Dear Mother, (お母さんへ)
This is Paul.  (こちらはポールです)
That’s me! (それ、私のことですよ!)

子どもの場合、原稿が読まれている状況を理解するのが難しいことがあります。原稿が読まれている状況がひと目でわかる動画もあると理想的です。

・動画

 

一回の原稿の量はおよそ70語が良いでしょう。これは聴き取りやすいスピード(120語/分)で読まれた場合、40秒前後で完結する文量だからです。これくらいの長さなら小学生でも集中力を切らさずに取り組めます。

また一つのスクリプトにつき文法テーマを1つに絞ったものが理想です。イメージは中学校の英語の教科書です。中学校の英語教科書は内容が退屈であることが欠点ですが、音読用の素材としては優れています。今回の素材なら「This is~やThese are~」がターゲットとなる表現です。

音読練習の方法は多岐に渡り、ここではすべてを紹介できません。そこで、そのうちのひとつ「シャドウイング」と呼ばれる練習方法について説明します。前提条件として、単語や文法を充分に理解して、正しい発音で音読できる状態になっていることが求められます。

シャドウイングではスクリプトは一切見ません。音声を流し、聞こえてきた英語をそっくりそのまま真似をしながら後からついていきます。およそモデル音声から2~3語遅れてついていくのが理想です。

音への集中力が必要です。単語と文法を熟知しているはずなので、正しく聴き取れるはずです。「知らない単語は聴き取れない」とよく言われますが、「覚えたからこそ聞きとれる」ということを体感できることに意義があります。

最初は音を追うだけで精一杯です。しかし、慣れてきたら内容も理解しながら、自分が誰かに話しかけるようにしゃべると学習効果が高まります。このときに動画があると比較的容易に映像を思い浮かべることができます。これこそが「英会話の疑似体験」です。

このようなトレーニングを年単位で続けることにより、少しずつ自由に英語を話すための基本ができあがります。

音読トレーニングは英語の全ての技能を高める

今回はスピーキングに焦点を当てて紹介しています。でも音読トレーニングが優れているのは、英語にかかわるすべての技能を向上させる効果があることです。下の図の黄色いハイライトの部分に注目しましょう。
4技能+2

まず、素材となる原稿を読む(Reading)ことから始めます。このときに未習の単語や文法を学び(単語力・文法力)内容を理解します。

次に音読にはモデルとなるネイティブの音声を使用します。この音声を何度も聞きながら声に出すトレーニングをします(Listening・Speaking)。音読するときはこの原稿が読まれている状況を考えることが大切です(丁寧さの使い分け)。

声に出すときは、それぞれの単語の発音とアクセントに気をつかうのはもちろん、英語特有の音の変化(消失・連結・変化)をまねます。そして内容によっては感情も込めます。

音読の最終段階では、ディクテーション(口述筆記)をします。聞こえた英文を文字に書いて、正しく聴き取れたかどうかをチェックします。このときに綴りや文法のミスにも気づくので、Writing力を伸ばせます。

先述のように、普通の小学生は英語をペラペラと話すことはできません。

でもプラモデルのように「会話を疑似体験できるセット」を用意してあげれば、スピーキング力を中心に英語のあらゆる技能を伸ばすことが可能です。音読トレーニングは小学生だけでなく英語の基礎を身につけた中級者にとっても効果的です。

オンライン英語塾(1対1の完全個人指導)では、英検4級以上の生徒には音読トレーニングを取り入れています。詳細はこちらをクリック!

まとめ

ノンネイティブが英語を話すとき、頭の中の活動は想像以上に複雑です。特に、イメージを言葉にするときに「必要な単語」と「必要な文法」を瞬時に引っ張り出すにはかなりのトレーニングが必要です。

語彙力や文法力が低い小学生に、自由な英会話の練習をさせようとしてもうまくいきません。単語や文法のインプットが不十分だからです。普通の小学生が英語をペラペラと話せるようにはならないのは当然のことです。

しかし、小学生でもスピーキング力を磨く練習をすることは可能です。それは「音読」です。音読では自由な英会話では難しかった部分(適切な単語と文法を瞬時に思いつく)があらかじめ用意されています。

「言いたい何か」をイメージするところから、音声として話すまでの過程で必要なすべての情報がプラモデルのキットのように準備されています。これにより、実際の英語力よりも高いレベルの会話を扱うことができて、年齢相応の内容を話す疑似体験が可能になります。

「小学生が英語ペラペラ」になることはほぼ不可能です。でも、音読トレーニングを通じてスピーキング力を他の技能とともに伸ばすことは充分可能です。年単位で続ければ近い将来あなたの子どもの英語力は劇的に伸びます。

小学生が英検5級に合格する勉強法や考え方

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「子どもに英検5級を一発で合格させたい!」というお母さんは多いです。英検5級の受験者のほとんどは英語を習い始めて1年程度の子どもです。子どもが合格して達成感を味合わい、今後の英語学習の弾みになれば理想的です。

しかし、5級に関しては「合否」よりも大切なことがあります。それは「いかに質の高い英語学習法を身につけるか」ということです。

かつて私が英語の個人指導をしていたとき、同じくらいの能力の2人の生徒がいました。まったく同じ英語の授業を行ったところ、しばらくすると両者に明確な英語の実力差が現れました。当時の私には本当になぜこのようなことが起きるのか不思議でした。

今は原因がはっきりとわかります。英語が苦手な子と得意な子では「頭の中の活動量」が異なるからです。これが何年も続くと二人の英語力には大きな差が生じます。やっかいなのは、見た目には両者の違いがほとんどわからないことです。

英検の筆記問題は、文法事項の大切なポイントを幅広く網羅しています。その問題に一つひとつじっくりと取り組み、「質の高い学習」を習慣づけることは「合否」そのものよりもはるかに大切です。

ここでは、英検5級の学習を通じて、質の高い英語学習を身につける方法について詳しく解説します。

小学生向け英検5級対策の基礎知識

小学生が英語を学び始めて1年ほど経過したら、そろそろ「英検5級」の受験を検討してもいい頃です。これから英語を学習するために基盤を固めるためにも、英検の勉強はとても有効です。

私は試験のための学習には否定的です。「人々がコミュニケーションのために使用する道具」としての本来の英語を忘れてしまうからです。しかし「試験をきっかけにして正しい勉強法を身につける」という意味では英検の受験に大賛成です。

小学生は英語や検定試験に不慣れです。もしあなたが合否にこだわりすぎて接し方を誤ると、子どもは「英語嫌い」になりかねません。そこで、合否以外の指標にも注目して、子どもの実力を長期的な視点で見守るように気をつけましょう。

合否判定だけでなくCSEスコアにも注目

「英検」を受験すると得られる最大のメリットは、子どもの「現在地」がわかることです。以前とは異なり、現在は「〇級合格・不合格」の成績だけでなく「CSEスコア」をすべての受験者に示しています。

CSEとはCommon Scale for English(英語の共通尺度)の略です。この評価が導入された背景には英語資格試験のグローバル化があります。英語の試験にはTOEFL・IELTS・TOEICなどがあり、かつてはそれぞれ独自の基準で評価され受験者にとって不便でした。

そこでお手本にしたのがCEFR(Common European Framework of Reference for Languages:ヨーロッパ言語共通参照枠)と呼ばれる指標です。ヨーロッパは多言語社会のため共通して利用できる外国語の習得基準を設けたのです。

CSE
*英検ホームページから引用:英検スコアとCSEスコアの換算表

英検受験でわかるCSEスコアを見ると、CEFRにおけるレベルがわかります。そうすると他の試験を受けなくても、そのスコアの目安を簡単に換算できます。

また同じ英検5級合格でも「ギリギリ合格」と「余裕で合格」では実力は異なります。不合格だったしても「あと少しで合格できた」など子どもの実力を正確に把握することができます。

CSEスコアを活用して、スキル別の現在地や伸びを長期的に記録することで、子どもの英語学習に活用できます。

英検5級のレベルと小学生の合格率

お母さんは「英検5級」のレベルを正しく把握しましょう。おおまかに説明すると「中学校初級程度」です。習得語彙数は300~400語が必要です。

  • 英検による5級の目安
級 推奨目安 出題目安 出題形式
5級 中学初級程度 英語を習い始めた方の最初の目標。家族のこと、趣味やスポーツなど身近な話題が出題されます。
英語の基礎固めに最適です。
スピーキングテストも受験可能です。
  • 筆記
  • リスニング
  • 録音形式のスピーキングテスト

*英検ホームページから引用:各級の目安

小学生で英検5級を受験することは、中学1年のレベルと同じ試験を受けることと同じです。子どもが前向きに英検受験に取り組むだけでもほめてあげましょう。

数字・曜日・月・基本単語(名詞・動詞・形容詞・副詞)など少なくとも「正しく読めて意味がわかる」レベルであることが合格の条件です。

  • 英検5級の合格ライン・合格率の状況

公式な発表はありませんが、合格ラインは問題の65%の正解率に設定されているようです。5級はリーディングとリスニングでそれぞれ25点合計50点の配点になっています。したがって、33点を獲得すれば合格できるといえそうです。

受験者全体の8割以上が合格できているようですが、中学生の受験者が半分以上います。小学生だけの受験者に限定するともう少し合格率は低下するかもしれません。とはいえ、英語を習い始めて1年程度の小学生で2か月くらいの準備期間があるなら合格は決して難しくありません。

語彙力・文法力と4技能の関係

最近、一般の人にも英語の4技能(Listening, Speaking, Reading, Writing)が認知されるようになりました。しかし、「語彙力・文法力」がこれら4技能とどのような関係になっているのかを正しく把握している人は少ないです。

語彙力と文法力は英語力の中心です。このふたつが揃っていないと話になりません。そして4技能もそれぞれ独立した技能(スキル)ではなく、お互いに相互作用している関係です。これを下に図で表しました。

4技能相関図

例えば、I can swim fast.という基本文を暗唱する会話練習をしたとします。canは「~できる」という意味の助動詞でその次に動詞の原形(run)が来ます。これは文法の知識です。当然、それぞれの単語の意味を知らないと暗唱をしても意味がありません。

音読しているときは自分で自分の声を聴いているので「リスニング」の練習をしていることになります。一部を忘れてテキストを読めば「リーディング」紙に書いて覚えようとすれば「ライティング」の学習です。

英語の学習をするときは常に「語彙・文法」を中心に、4つの技能を複合的に使用しています。だから「リスニングを強化」するための勉強であっても、その他の能力が極端に低いと伸びが悪くなるのは当然です。

語彙・文法と4技能の関係を理解して学習することが必要であることをお母さんはきちんと把握しましょう。

リスニングが弱点の子どもには、こちらの動画セミナーによる学習法がオススメです。

小学生向け英検5級おすすめ問題集

大きめの書店に行くと英検対策のコーナーがあります。そこには参考書がたくさん並べられていてどれを選んだらよいか迷ってしまいます。
book store
英検の対策本は主に「その級に頻出する単語・熟語集」と「過去問を主体とした問題集」の二つに分かれています。

5級を受験する場合、単語・熟語集は不要です。5級に登場する単語は超基本的なものばかりです。わざわざ単語集で暗記するまでもなく、しばしば目にするので普通の問題集を進めながら意味を確認すれば大丈夫です。

また5級で扱う超基本単語はカバーする意味の範囲が広く、1対1の訳語を暗記するやり方になじみません。例えば、単語帳で「call:呼ぶ」と暗記しても、“Please call me tonight.”(今夜私に電話してください)のような文脈では役に立ちません。

簡単な単語ほど多義語(一つの言葉でいろいろな意味を持つ言葉)の傾向があります。そのため、実際の文の中での意味をしっかりと確認したほうが、より単語のイメージを正しくとらえることができます。

もちろん知識を整理したり辞書替わりに単語帳を利用したりするのは問題ありません。ただし、暗記するために単語帳を買う必要はありません。

小学生向けの英検問題集がよい

英検5級は英語学習を始めて1年程度の初心者が受験します。したがって中学生の受験者が多く、問題集の多くは中学生が使用することを前提にして書かれています。

ところが注意深く探すと小学生向けの英検ドリルが発売されていました。試しに1冊購入してみたところ、なかなかよく出来ているので紹介します。
小学生向け英検ドリル

私がおすすめするのは『小学生のための英検5級合格ドリル』(旺文社)です。価格は税別で1,100円でした。このシリーズは英検5~3級まで対応しています。小学生でも3級の受験者が増えていることを反映しているようです。

「小学生のための英検5級合格ドリル」おすすめポイント

では、『小学生のための英検5級合格ドリル』のおすすめポイントについて詳しく説明します。

・英検情報が充実している

英語の問題集でありながら、英検の試験についての詳しい説明が充実しています。ネットでもいろいろと調べられますが、活字での情報は信頼性が高く重宝します。例えば、受験のときに必要な持ち物や結果がいつ頃わかるのかなどの情報が掲載されています。

・すべての漢字にルビが振ってある

本書にあるすべての漢字にはルビ(読みがな)が振ってあります。そのため小学校低学年の子どもでも頑張ればこの問題集を利用して勉強できます。学習者の年齢不問で利用できるのはとてもありがたいことです。
ルビ

・問題量がちょうどよい

1~13のレッスンとおまけページで構成されていて、小学生が2か月前から取り組むのにちょうどいい分量です。学習計画のモデルについては後述しますが、毎日1レッスンをすすめるのに30分あれば大丈夫です。

・CD付きで音声が充実

CD付きの問題集は珍しくありませんが、どのレッスンも英語の音を大切にしているところに好感が持てます。CDを聞かないと問題を進められないので、自然と英文を聞く量は増えていきます。

CDのデータをスマホなどに移行して、CDプレイヤーを利用しなくても聞けるようにお母さんがセッティングしてあげましょう。英文は聞くだけでなく、必ず自分でリピートするように習慣づけると英語の上達するスピードは加速します。

・すべての英文の日本語訳が巻末にある

5級の英文は簡単なものばかりです。それでも小学生が学ぶときには、意味がわからない箇所がいくつか出てきます。そのようなときにやはり日本語訳があると安心して学習をすすめられます。

最後の仕上げとして、「巻末の日本語訳を見ながら英語に直してみる」トレーニングをすると、より英語を深く理解できるようになります。
全訳

このように「小学生のための」と銘打つだけあって、細かい配慮が感じられる問題集です。ではこの問題集を使用して、どのように学習計画を立てて実行したらいいのかを具体的に説明します。

小学生向け英検5級の対策と教え方

英検の1次試験は6月・10月・1月に行われます。私のおすすめは、長期休暇を絡めながら2か月前から準備することです。例えば10月に受験する場合、夏休み(8月)にスタートするといいでしょう。

ドリルは全部で4回繰り返しますが、最初の1回目が最も大変です。長期休暇をその大変な部分の学習に充てることで、子どもが規則正しい生活を送れるようになります。また、お母さんのアシストも普段よりは期待できるので、より合格できる確率が高まります。

  • 1回目

平日は頑張って30分で1レッスンを進めましょう。私の経験では土日はイベントが多く、思ったよりも余裕がありません。だから思い切って休みにするか、何らかの事情で平日にできなかった場合の予備日として活用しましょう。

このペースで進めていくと、3週間で1回目が終了します。

  • 2~3回目

2~3回目を繰り返すときは、CDを聞かなくてもいいです。その代わり各レッスンの英文はすべて声を出して音読しましょう。もし読み方に自信がない場合は、面倒くさがらずにCDを聞くようにしましょう。

ここでは「プチ予想問題にチャレンジ」の筆記問題に力を入れましょう。1回目では正解を選べばOKですが、2回目以降は「なぜ、その答えを選んだのか」「なぜ、他の選択肢ではいけないのか」を自分で説明できるようにしてください。

単に正解・不正解をチェックするだけでなく、このように根拠をしっかりと説明しながら問題を解くことで文法や語法の理解を確実にしていきます。できればこの部分だけはお母さんがチェックしてあげるのが理想です。

教え方のポイントは、子どもが説明に困ったときはヒントを小出しにしながら、一生懸命考えさせてることです。子どもが考えた分だけ、英語の伸びにつながります。

最後のダメ押し(4回目)の復習はお母さんと一緒に

最後のダメ押しとなる4回目の復習について説明します。まずは巻末の予想問題に挑戦してみましょう。このとき、お母さんがそばにいられる状況で、本番と同じように時間を決めて実施します。
予想問題
採点後、合格圏内(30点以上)であれば思いっきりほめてあげましょう。実際、ここまで計画通りに学習を進められれば立派です。もし得点が合格ラインに到達していなくても、良かったところをきちんと評価してあげましょう。

予想問題で間違えたところはきちんと学習して理解を確実にしましょう。ドリルについては、「プチ予想問題にチャレンジ」に絞って最初から最後までもう一度復習します。これで、英検5級の対策は終了です。

小学生が身につけたい! 英検5級仕上げの勉強法

各レッスンにある「プチ予想問題にチャレンジ」について補足します。小学生でも表面的な学習で終わりにしないために大切なポイントをまとめました。英検5級受験を機に正しい勉強法を身につけて、将来の飛躍につなげていきましょう。

・単語
選択肢から1つ正解を選ぶ問題で、正解以外の単語についても意味を知っているかどうかをチェックしましょう。同じ問題は2度と出ないので、知らない単語があればきちんと調べることが大切です。

知らなかった単語については、はじめに正しく発音できることを心がけましょう。それから意味を調べるように習慣づけしましょう。

リスニングで英語を理解する場合、単語を聞いた瞬間にイメージが頭に浮かぶかどうかが大切です。例えば、baseballを読んだときに「野球」という訳語が頭に浮かぶようでは、リスニングのスピードに対応できません。

そうではなくて、baseballを読んだら野球場の光景や選手の様子が頭の中で浮かぶようにしておきましょう。普段、音読するときにこのようなことを常に意識しておくと、リスニング対策になります。

・文法
イメージが大切なのは単語だけではありません。文法に関しても同じことがいえます。例えば現在進行形の-ingを見たときに、「今、〇〇している最中」のようなイメージが浮かぶかどうかはとても大切です。

リスニング力は「聴く」とき以外でも鍛えられます。上記のように、リーディングをしていて単語や文法を即座にイメージ化(映像化)できるようにしておくと、それはリスニングにおいてとても有利に働きます。

・テキストの英文はすべて自分に向けられていると考える
ドリルに掲載されているダイアローグ(対話文)やその他の問題文について、「自分ごととして読む」ように子どもに教えてあげましょう。自分と関係ない無機質な文ではなく、自分がその人になったつもりで音読するだけで、英語の定着はまったく変わってきます。

1冊のドリルをここまで深く学習すると本物の英語力が身につきます。合格ラインを大幅に上回る得点が取れた場合、CSEスコアに注目してください。もし英検4級の合格ラインに近かったらそれはとてもいい学習ができていることの証左となります。

英検3級まではお母さんと一緒に挑戦するのが理想

お母さんの役割として理想なのは、子どもの「ライバル」として一緒に英検を受験することです。英語な苦手なお母さんは尻込みするかもしれませんが、英語が苦手なお母さんのほうが子どもからすると追いつけるかもしれない」とやる気になるものです。

英語ができるお母さんだとつい自分の英語力を子どもに誇示してしまい、子どもが委縮してしまいます。一方的に教えるよりは、子どもと同じテキストを使いながら一緒に学ぶ姿勢を見せましょう。

英検3級は「中学校卒業程度」のレベルです。できれば、英検3級までは親子受験を続けて欲しいと思います。

e-ラーニングサイト「リトルフォックス」にはさまざまなレベルが用意されていて、子どもから大人まで学べる教材が用意されています。

まとめ

英語を学び始めて1年ほど経過したら、子どもに英検5級を受験させてみましょう。合否よりもその学習過程で身につけられる「効果的な学習法」に価値があるからです。

小学生が英検を受験する場合は、問題集の選び方に注意しましょう。特に小学校低学年の子どもが勉強するときは、小学生向けの問題集を使用することをおすすめします。漢字にルビが振ってあるなど配慮が行き届いているからです。

1次試験の日から逆算して2か月前から準備を進めましょう。長期休暇を上手に活用すれば、小学生でも充分に合格できます。

問題集を何度も繰り返しながら、少しずつ深く学べるように子どもを導きましょう。最初のうちはなかなか意識できないことでも、常に意識させるように促せば少しずつ習慣化されていきます。質の高い学習が身につくと、将来子どもの英語力は飛躍的に伸びます。

最初の検定試験なので、子どもは負担に感じるかもしれません。できればお母さんも一緒に受験してライバル的な存在になりましょう。「お母さんに負けたくない!」という気持ちが子どもをやる気にさせます。

子どもが英語スペリングを得意に!「ぶつぶつライティング」とは

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同じ能力の子どもが同じ授業を受けて同じ時間自習しても、しばらくすると英語力に明らかな差が現れ始めます。この現象は教員時代とても不思議に感じました。

そのときに立てた仮説は、「学びの深さに差がある」ことでした。傍目には同じように学んでいても、彼らの頭の中の活動量には相当な違いがあります。

問題は、「何をどのように考えているか」は本人以外誰にもわからないことです。思考方法は本人以外把握できないし、コントロールもできません。

同じことは英語を書くときにも当てはまります。もしあなたの子どもがテキストの英語をノートに写すときに目線が頻繁に往復したり黙々と書いていたりしていたら、それは私がまったくわからないアラビア語をコピーしているのと変わりません。

私の推奨する英文の写し方は「ぶつぶつライティング」です。方法はとても簡単です。英語を紙に書くとき、ぶつぶつつぶやきながら書くだけです。

「ぶつぶつライティング」を始めるタイミングは、フォニックスの基礎を終了してからです。3文字からなる単語(bag, fatなど)がある程度読めたら、「ぶつぶつライティング」を開始します。

まずは英語の苦手な子どもが、どのように考えて間違いを繰り返すのかを分析します。そして頭の中の活動量と質を高めるためのコツを解説します。

Mr. SmithをMr. Sumisu と書いてしまう原因は

あなたの子どもが何気なしに「Mr. Smith」を「Mr. Sumisu」と書いていたら、どのようなアドバイスをしますか?

正しい綴りを教えるだけなら簡単です。しかし、その子は似た間違いを今後も繰り返します。そうさせないためには、間違いの原因をじっくりと考える必要があります。

カタカナを当てはめているから

Sumisuのスペリングを見ると、カタカナとローマ字の影響を受けていることがわかります。まず、Smithの読み方を覚えるときに「スミス」とカタカナをふっています。そして、「スミス」というカタカナの音に対応させるためにローマ字でSumisuと綴ります。

(子どもの頭の中)Smith→「スミス」→Sumisu

カタカナで置き換えて覚えている限り、永遠に正しい綴りであるSmithにはたどり着けません。

カタカナで単語を覚える弊害はもう一つあります。それは、本来の音節の数と違う数で音をとらえるようになり、その単語を音で聴いても認識できなくなることです。

英語のSmithは1音節(1つの音の塊)で一気に読まれます。ところが「スミス」とカタカナ読みすると3音節として脳に記憶されます。ネイティブがSmithと発音したときに、記憶の音の数と異なるため正しく聴き取れません。

このように英単語を覚えるときにカタカナで覚えてしまうと綴りをローマ字化してしまったり、リスニングが苦手になったりします。

正しい英語の発音をしていないから

英語と日本語では音の数と種類が異なります。だから英語を日本語の音で読むことは「やってはいけない」というより、不可能です。

例えば、カタカナの「ス」に変換される英語の音には「s」「th」のふたつの音があります。しかし、これらはまったく異なる音で綴りでもはっきりと区別されています。

【th】の音を出すときは、上下の歯のすき間に舌先を軽く挟んで、空気を出すことで音を出します。【s】は上下の歯は合わせた状態で、歯のすき間から空気を出します。

まったく異なるふたつの音をカタカナの「ス」にまとめるのが、どれだけ馬鹿馬鹿しいことかわかっていただけたでしょうか。

英語を書くときに「音読」していないから

子どもが英語をノートに書くときは「お手本を写す」ことがほとんどです。例えば先生が黒板に書いた英語やテキストに書いてある英文を写すときが相当します。

そのときに一文字ずつ確認しながら写しているとしたら、それは英語の音も意味もまったくわかっていない証拠です。

英語のできる子どもが「He likes a hamburger very much.」という文を写すとき、まず一文を音読します。このときの音読はぶつぶつ小声でつぶやく程度か、声には出さなくても頭の中で音声化されます。もちろん内容に即した映像が頭の中で再生されています。

そして一気にその一文をブツブツつぶやきながら紙に書いていきます。文章が長くなればときどき本文を見直すこともあるでしょう。しかし、この程度の長さなら一気に写せます。

このとき必要な能力は総合力です。英語を英語の音で発音できて、それに対応する綴りも覚え、文法を理解していなければこのような写し方はできません。

「正しい音読をして(インプット)、それを音声で出しながらそれに対応した英語を紙に書く(アウトプット)」ことができる子どもは英語の理解力が高いです。

正しい「ぶつぶつライティング」を身につけよう

初心者には一文を一気に覚えて紙に書くのはハードルが高いでしょう。その場合には、もっといい方法があります。英語初心者でも効果的な学習を可能にする「たった一つの習慣」を紹介します。

それは英語を書くとき(写すとき)は、必ずぶつぶつとつぶやくことです。私は「ぶつぶつライティング」と呼んでいます。「ぶつぶつライティング」はとてもシンプルな習慣ですが効果は絶大です。コツがふたつあるので解説します。

正しい発音を心がけること

まず、「正しい発音を心がけること」がポイントです。カタカナではなく、英語の音で正しい発音をしようと努力することです。

ネイティブ並みの発音にする必要はありません。しかし、日本語の音(カタカナに置き換えた音)ではいけません。少なくとも自分では英語独自の音をきちんと出そうと努力することが大切です。

【θ】の他にも【f】【v】【l】【r】など特に注意しなければならない音があります。できるだけ理想の音に近づけるように子どもに意識させましょう。

音節単位でつぶやきながら単語を書く

つぶやきながら英語を書くときにはもう一つコツがあります。それは「音節単位」で読みながら書くことです。少々わかりにくいので「international(国際的な)」を例に挙げながら、理想的な「ぶつぶつライティング」を解説します。

(ダメな例)

internationalと一気に読む→internationalと無言でノートに写す

これでは音と綴りの関係を確認しながら書くことができません。

(良い例)

inと読みながらinと書く。
terと読みながらterと書く。
naと読みながらnaと書く。
tionと読みながらtionと書く。
alと読みながらalと書く。

このように音節(一気に読まれる音の単位)で区切りながら、ブツブツ読んで写すのが理想です。音節については辞書通りに厳密に分けなくても、おおまかな感覚でかまいません。

naの箇所はアクセントの位置なので、ブツブツつぶやくときも強めに読むように心がけます。

上記のように「正しい発音」で「音節ごとにつぶやきながら」写す習慣をつけるだけで、英語力はメキメキと向上します。

自分の感覚と本物の英語との違いに何度も気づく

正しい方法で「ぶつぶつライティング」を続けると、自分が思い込んでいた音と綴りの間違いに何度も気づくようになります。

例えば、アルファベットの「u」はローマ字では「ウ」として置き換えられるため、「ウ」という音を出すと認識する初心者はとても多いです。実際はアルファベットの「u」は喉奥で出される強い「ア」として発音されることがかなりあります。

umbrellaという単語とイラストがあったとします。子どもは傘を「アンブレラ」の音で覚えています。ぶつぶつライティングをしながら、この単語を書くとき頭の中では次のようなことを考えます。

umと読みながらumと書く→「uはアと読むのか…、それに次はnじゃなくてmか」
breと読みながらbreと書く→「レの部分はrか」(rの発音に気をつける)
llaと読みながらllaと書く→「ラはlがふたつか!」(lの発音にも気をつける)

(umbrellaの本当の音節はum・brel・laですが、感覚を優先しています)

この「すり合わせ作業」を何度も繰り返すことによって、正しい綴りを自動的に身につけられる仕組みです。

黒板の英文をノートに写す機会を無駄にしない

中学や高校で英語の授業を受けるとき、ノートやワークブックに英語を書く(写す)機会はたくさんあります。そのときに「ぶつぶつライティング」を続けた子どもと無言のまま文字を書き写しているだけの子どもでは相当な英語力に差が出ます。

授業中、声に出すことがはばかられるのであれば唇が動く程度に「ぶつぶつ」つぶやけばいいのです。書く時間すべてを「音声」と結び付ける作業をするだけで、そうでないときの何倍も濃密な学習効果を得られます。

さらに効果を高めたければ、英文を書いたあと目を離してもう一度口頭で英文をつぶやきます。そのときにその英文の意味に沿った状況をイメージしたり感情移入したりします。そしてその言葉を相手に言われたと仮定して、それに対する応答までを考えます。

例えば、You are too young to drive.(あなたは若すぎて車を運転できません)を写したら、顔を上げて口頭でこの英文を復唱します。

そのときに親が子どもに諭すように読みます。さらに自分が言われたときの反論まで考えます。When can I drive, then? (じゃあ、いつ車を運転できるの) という具合です。

ここまで深く学ぶ習慣をつけると、英文を単に読みあげるだけでなく会話の練習もしていることになります。

「ぶつぶつライティング」はただの習慣です。しかし、このたった一つの習慣が将来の英語力に大きな影響を与えます。お母さんは学習初期の段階から、この「ぶつぶつライティング」を習慣づけするように子どもにアドバイスをしましょう。

まとめ

ノートに英語を写す機会はたくさんあります。そのときに子どもが黙々と書いていたら要注意です。なぜならそのままでは英語の正しい綴りをいつまでも書けない可能性が高いからです。

私のおすすめは「ぶつぶつライティング」です。単語の音節ごとに正しい発音で読み上げながら綴りを書き写すだけです。たったこれだけの習慣で、自分の間違っていた音や綴りを何度も繰り返し確認できます。

中学校や高校に進むと英文をノートやワークブックに書く機会はとても多いです。その時間を最大限に効果的にするために、小学生の頃から「ぶつぶつライティング」の習慣をつけさせましょう。

頭の中の思考法・思考内容をコントロールできるのは子ども本人だけです。常に意識づけをしてあげて、習慣化されるまで続ける根気が必要です。

正しく音読していると書く練習をしなくてもスペリングを覚えてしまいます。そのための方法はこちらで紹介しています。

英語の勉強になる子供向け映画DVD:「英語と外国文化や歴史」を学ぼう!

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街の本屋さんの語学コーナーに行くと、海外ドラマや映画DVDを英語教材にした学習本が増えています。ネイティブの英語を楽しみながら学べるので、需要があるのでしょう。

また英語を学ぶ目標として「映画を字幕なしで楽しむこと」を挙げる人はとても多いです。映画と英語は相性がいいのです。

子どもの英語教材としても映画はおすすめです。しかし、子どもの英語のレベルは高くないので、ネイティブのセリフを聞き取るにはハードルが高すぎます。すべてのセリフを聞き取ろうとせずに、印象的なセリフに絞って学習したほうがうまくいきます。

英語以外でも、映画は「外国の文化・歴史・生活習慣」を学ぶ絶好の機会です。映画の舞台は現代だけでなく過去の出来事も舞台になるので歴史も学べます。

子どもの英語学習に向いている映画を探すにはコツがあります。それについても詳しく解説するので、参考にしてください。

子どもと映画を観よう

夏休みなどの長期休暇中「子どもに何か有意義なことをさせたい」と考えるお母さんは多いです。しかし、良いアイデアが思い浮かばずに、結局ダラダラと過ごしてしまう経験はありませんか。

私のおすすめは「子どもと良い映画を観ること」です。「夏休み中に15本映画を観て、30個のセリフを覚える」と具体的な目標を立てて実行できたら、充分に有意義な時間を過ごしたといえるでしょう。

映画のあと親子で映画について話し合い感想を述べるのは、議論の練習になります。映画で得た知識は将来英語圏の人と雑談するときにとても助かります。共通の映画で盛り上がったり意見交換できたりしたときは、映画を観ていて良かったと思います。

まず、映画ノートを一冊用意しましょう。子どもにタイトル(邦題と原題)を上に書かせて、観た日付を記入(英語で)させます。タイトルに知らない単語があったら、意味を調べさせましょう。ここまで準備できたら、あとはメモを取るだけです。

映画は英語圏の文化や習慣を学べる最高の教材

英語圏の国での文化・習慣について深く学ぶ教材として、映画は優れています。例えば、子ども向けの定番映画として『ホーム・アローン』があります。

「子どもが一人で家にいる」ことは日本ではそれほど珍しくありません。しかし、アメリカでは13歳未満の子どもを13歳以上の監督なしに一人にさせてはいけない」法律があるため、深刻度が違います。

よく中高生がアルバイトでベビーシッターをするシーンがアメリカのドラマで見られますが、そのような背景があるからです。それがわかると、「子どもを家でひとりにして家族が旅行に行ってしまった」のは日本以上に大事件であることを理解できます。

クリスマスは家族が集う機会でもあるので、皆が再開できるハッピーエンドはまさにクリスマスのテーマそのものです。

このように外国の文化や習慣を疑似体験できるのが、映画の良いところです。子どもと映画を観たあとはこのような豆知識を教えてあげると、子どもの教養レベルは高くなります。

このような雑学もノートにメモしておくと、知識が定着して忘れにくくなります。

好きなセリフを英語字幕で確認しよう

英語の映画ならもちろん英語を学べます。小学生で映画のセリフをすべて理解させるのはほとんど不可能です。そこで、子どもが印象に残った場面のセリフだけを1つか2つ選んでノートに記録してはどうでしょうか。

例えば『オズの魔法使』なら、最後のドロシーのセリフ“There’s no place like home.”(やっぱりおうちが一番)だけ、字幕表示を利用してノートに写します。

そしてそのセリフが読まれるときの役者のマネをして何度も音読します。映画を観終わった直後は特に登場人物に感情移入できます。シーンを思い浮かべながら気持ちを込めてセリフを繰り返すのがコツです。

応用で言葉の一部を置き換えてみるのもいい訓練です。“There’s no place like Disneyland.”(ディズニーランドが一番)のように子どもの考えや経験に合致した英文にしたほうが、頭に残りやすいです。

定額オンデマンドサービスが充実

映画はDVDでもいいし、定額オンデマンドサービスを利用してもいいです。大手のNetflixでは字幕や音声を切り替えられる機能があり、英語学習に重宝します。
字幕機能

レンタルだと返却日が気になります。返却も天気が悪かったりすると面倒です。その点、いつでも見られるオンデマンドサービスはとても便利です。

まだ利用していない人は最初の1か月はたいてい無料で利用できるので、この機会に試してみるといいでしょう。

どうやって子どもと楽しめる映画を見つけるか

映画が子どもの英語学習に役立つのはわかっていただけたと思います。しかし、たくさんのタイトルの中から「子どもの英語学習に適した映画」を選ぶのは簡単ではありません。

私もネットで「評判」を検索して探していた時期がありました。しかし、実際に見てみると評判ほど楽しくなかったり、英語学習の観点からは今ひとつだったりしたこともありました。

ディズニーのアニメならほぼ間違いないのでしょうが、毎回同じようなテイストだとやはり飽きてしまいます。

そこで活用したいのが「映画ガイドブック」です。

もっと簡単に英語の動画を楽しみたいなら、こちらの勉強法がオススメです

一冊揃えると超便利! 映画紹介本

限られた期間にできるだけ質の高い「子どもの英語学習に適した映画」をたくさん見るためには、やはり行き当たりばったりでは駄目です。そこで便利なのが映画ガイドブックです。

先生が薦める『英語学習のための特選映画100選』小学生編

私も1冊購入して大変便利だと感じたのは『英語学習のための特選映画100選(小学生編)』です。
英語紹介本
映画の基本情報はもちろん、英語学習の観点から役立つ情報がぎっしりと詰まっています。

執筆者は多数いますが、すべての映画は共通のフォーマットで構成されています。「セリフ紹介」「ふれあいポイント」「あらすじ」「映画情報」「おすすめの理由」「授業での留意点」「映画の背景と見所」「リスニング難易表」などです。

これらのうち「リスニング難易表」「セリフ紹介」「授業での留意点」について詳述します。

「リスニングの難易表」は便利

すべての映画には「リスニング難易表」があります。9個の評価項目があります。具体的には「会話スピード」「発音の明瞭さ」「アメリカ訛」「外国訛」「語彙」「専門用語」「ジョーク」「スラング」「文法」です。

それぞれ5段階で評価されていて、標準は3です。「スラング」は使用頻度が少ないと数字は小さくなります。「文法」はルールに忠実なほうが小さい数字です。初心者ほど数字が小さいものを選ぶとよいといえます。

この表をざっと眺めるだけで、子どものレベルに合った映画を選べるのでとても便利です。この本はもともと小学生編なので、はじめから難解な映画は含まれていません。でも作品によって難易度にかなりばらつきがあります。

「セリフ紹介」と「授業での留意点」

学校の先生用に執筆された本なので、「セリフの紹介」と「授業での留意点」が詳しく書いてあります。

ここに掲載されている情報はかなり詳細で、大人が読んでも勉強になります。何度も観たこともある映画でも新しい見方を与えてくれるので、もう一度観てみたい気持ちにさせてくれます。

全部を子どもに教えようとすると勉強臭がするので、教える内容は絞りましょう。

例えば、『アニー』の舞台は、1933年のニューヨークです。当時1929年に起こった世界大恐慌の影響で、経済はどん底でした。

1933年に米国大統領となったフランクリン・D・ルーズベルトは「ニューディール政策」と呼ばれる公共事業の拡大により失業率を改善して経済危機を乗り切りました。

中学校や高校の歴史でも登場しますが、子ども向けの映画で予習できるのは素晴らしいです。日本でも毎年人気のミュージカルなので、子どもが気に入ったら舞台を見せてあげても喜びそうです。

ちなみにアメリカの歴史上もう一人ルーズベルト大統領がいます。第26代大統領のセオドア・ルーズベルトです。映画『ナイトミュージアム』に登場します。

歌にも注目

映画と主題歌は切っても切り離せないものです。もし子どもが口ずさんだら、歌の一部でもいいので歌ってみましょう。

『アニー』ならTomorrow、『オズの魔法使』ならOver the Rainbowです。ノートに歌詞の一部を記入します。

Tomorrow, tomorrow, I love ya, tomorrow
You’re always a day away!

これだけ歌えるだけでも、子どもはうれしくなります。この部分はリフレイン(繰り返し)になっているから、満足度も高いです。上手に歌えたらほめてあげましょう。

私のおススメ映画

本の中では紹介されていませんでしたが、私が子どもと観ておもしろかった映画を一つ紹介します。たまたま観た映画で、今まで存在すら知りませんでした。邦題のつけ方を失敗しています。

「笑えて感動して泣けてくる」三拍子揃った映画『飛べ、バージル/ プロジェクトX』です。ぜひ、家族みんなで鑑賞してください。

・飛べ、バージル/ プロジェクトX

手話で人間の言葉を覚えたチンパンジーのバージルが、空軍の秘密プロジェクトに参加します。ところがそのプロジェクトは核戦争を想定したチンパンジーに爆撃機を操縦訓練させるものでした。

被ばくしてからどれくらい飛行できるかを実験するために次々に犠牲になるチンパンジーを救うために、若者2人が協力します。

冒頭で研究者がチンパンジーに言葉(英語)を教えるシーンがあります。チンパンジーにわかるように話す英語は、当然とてもわかりやすいです。英語を覚えたての子どもでも、理解できる英語が続くので楽しめます。

時代背景として、「米国とソビエト連邦が冷戦関係にあった」歴史を子どもに教えてあげる必要があります。そうしないと、なぜアメリカはチンパンジーを虐待しなければならなかったのか理解できないでしょう。

子ども向けの映画からでも深い教養を身につけられるのが映画のいいところです。

まとめ

もし子どもに夏休みを有意義に過ごさせるなら、英語の映画を観てみましょう。映画で印象に残ったセリフを英語で抜き出して、それを暗唱します。また、興味を持った生活習慣や文化などについて調べるのも大変勉強になります。

子ども向けの映画を選ぶのは難しいので、英語学習向けの映画ガイドブックを手元に用意するととても便利です。選ぶ段階ではリスニングの難易度について細かい指標があるので、役に立ちます。

その映画の時代背景や登場人物について子どもが調べるヒントを与えてあげると、海外や歴史に興味をもつきっかけになります。

観終わったあと親子で映画について語り合うのは、子どもにとってとてもいい勉強になります。親子で良い映画をたくさん見て、英語や外国の文化や歴史について学びましょう。

英語のパターンプラクティスはお母さんのジェスチャーで

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スポーツや楽器の練習など技能の向上には、基礎トレーニングは欠かせません。野球なら「素振り」ピアノなら「バイエルン」などが該当します。地味な練習ですが大切です。

英会話の練習にも似たような基礎練習があります。指示に従って、文章の一部を入れ替えながら瞬時に口頭で英作文をする「パターンプラクティス」です。

なぜ、パターンプラクティスが必要かについて説明します。

ある一つの英語表現を覚えたときに、それとまったく同じ文章を実際の場面で使える確率はかなり低いです。例えば、I have a dog. という表現を習ったあと、そのままこのフレーズを使うには、本当に自宅で犬を一匹飼って誰かに説明する場面を待たなければいけません。すべての条件が揃うのはなかなか厳しいです。

でも、誰かの家に遊びに行って「君、犬を飼ってるんだ!」という状況はあり得ます。または、犬ではなくてネコが複数いる状況に置かれるかもしれません。

そのときに、タイミングよくYou have cats. というためには、パターンプラクティスが有効です。パターンプラクティスは、覚えた表現をあらゆる文脈や状況に変換できるように鍛えるためのトレーニングといえるでしょう。

その際、合図の出し方を工夫しないと意味のある練習になりません。今回は私が教員の頃に教わったジェスチャーを使って「パターンプラクティス」をテンポ良く進める方法を紹介します。

簡単に出来て子どももゲーム感覚で楽しめるので、ぜひ取り入れてみてください。

何かと必要な人称のパターンプラクティス

英語の口頭練習を子どもにさせるとき、パターンプラクティスをやらせることがあります。パターンプラクティスとはターゲットの文章の一部を入替えて、できるだけ早く口頭で英作文する英会話の練習方法です。

その中でも最も多いのが、人称(I, You, He, She…など)を入れ替える練習です。いくつかその具体例を見てみましょう。

現在形(いつものこと形)のbe動詞の練習

I am a boy. がターゲット文(子どもに学ばせたいセンテンス)のとき、主語が変わることによってbe動詞(am, is, are)が変化することに慣れさせます。また、a boy/a girl/boys/girlsのいずれかに変えなくてはいけません。

子どもが男の子だったら、例えば次のように練習します。

I am a boy.  You are a boy.  He is a boy.  She is a girl.  We are boys.  You are boys.  They are boys.

具体的に人の写真を見たり、周囲の人達を見たりして練習すると「イメージ→英語に変換」できるようになります。

このときゆっくり紙に書いては効果がありません。テンポ良く口をついて出てくるまで練習するのがポイントです。

所有格の練習

パターンプラクティスでの人称は主格(I, You, Heなど)だけではありません。所有格の練習にも使われます。

ターゲット文:This is my book.

This is my book.  This is your book.  This is his book.  This is her book.  This is our book.  This is your book.  This is their book.

パターンプラクティスではしばしば人称を入れ替える練習が行われますが、そのときに問題になることがあります。それは「いかにテンポ良く人称を伝えるか」です。

ただでさえ単調なトレーニングなのに、間延びした合図を出すと子どもはすぐに飽きてしまいます。

主語を頭に思い浮かべながら適切な動詞を選ぶ練習が必要

「テンポ良く伝える」以外にも、実際にやってみると問題が生じることがわかります。例えばお母さん(A)と子ども(B)の間でこのようなパターンプラクティスをしたとします。

A: When I say “my,” you say “This is my book.”
B: Okay.
A: My.
B: This is my book.
A: Your.
B: This is your book.

実はこのパターンプラクティスは効果的とはいえません。なぜなら、お母さんが答え(my, yourなど)を先に伝えてしまい、子どもはそれを繰り返すだけだからです。これでは何も練習になっていません。

また単数形のyourと複数形のyourの違いも伝わらず、子どもも戸惑ってしまいます。

理想的なパターンプラクティスにするには「イメージ」を与えて、それを子どもに英語に変換させなければいけません。では一体、どうやったらいいのでしょうか。

ジェスチャーで示せば解決する

これから紹介するテクニックは私が教員時代に指導教諭から教わったものです。家庭でも簡単に応用できるので、試してみてください。

  • 1人称(I, my, me)は自分を指す

1人称単数

  • 2人称(you, your, you)は相手を指す

2人称単数

  • 3人称(he, his, him)は隣を指す

3人称単数 he

  • 3人称(she, her, her)は隣を指す

3人称単数 she

*複数形は両手で表現する

1人称複数

2人称複数

3人称複数

*itを使わせたいときは指で表現する

it

テンポ良く

試しに先ほどのターゲット文であるThis is my book. のパターンプラクティスをジェスチャーで練習してみます。

お母さんはこのように示します。

3人称複数

子どもはそのイメージから「their」を頭に思い浮かべます。そして、“This is their book.”と間髪置かずに口頭英作文をします。すぐにお母さんは次の人称ジェスチャーを見せます。

もし子どもの反応が遅すぎたら、理解が充分でない可能性があります。もう一度復習してから、パターンプラクティスに移行しましょう。

始めのうちは「1人称単数→2人称単数→3人称単数→1人称複数→2人称複数→3人称複数」の順番で進めていきます。慣れてきたらランダムに切り替えます。テンポ良くやると子どもはゲーム感覚で頑張ろうとして、結構盛り上がります。

あなたの家族の名前など具体的な人を当てはめて練習するとより現実感のある練習ができます。パターンプラクティスはどうしても単調になりがちなので、いろいろ工夫をしてバリエーションをつけましょう。

「一回でできるように」と焦らずに数日に分けて少しずつ練習すると、子どもが飽きるのを防げるし効率の良い復習ができます。

まとめ

英語の基本センテンスを覚えたあと、いろいろな文脈で使用できるようにするためにパターンプラクティスは有効な練習方法です。その際、人称を入れ替えて基本センテンスをもとにして瞬時に口頭英作文をすることがしばしばあります。

このときに人称をジェスチャーで示してあげると「イメージ→英語に変換」の作業がスムーズにできるようになります。最初にお母さんと子どもの間で取り決めをしておけば、その後ずっと使えるので便利です。

パターンプラクティスは単調になりがちな練習です。テンポ良く短めに練習することを心がけましょう。具体的なイメージを交えたりしながら変化をつけて子どもが飽きないようにしましょう。.

 

子どもの英語教育に熱心なお母さんへお伝えしたいこと

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あなたは子どもの頃、スポーツをしていましたか? 一生懸命プレーしている試合中、親が「何やってんだ〇〇! もっと速く走れ!」と大声で叫ぶ声が聞こえてきて嫌な気分になりませんでしたか?

私は少年野球をしていましたが、チャンスで打てないときやエラーをしたときに父親の怒鳴り声を聞いて「自分の子どもには絶対にこんなことは言わない!」と誓ったものです。

あれから数十年後。自分が親になり、あれほど嫌だった親の言動と同じことを言ってしまいそうになる自分がいます。そんなときは子どもの頃の自分の誓いを思い出すようにしています。

お母さんが英語教育に熱心なのは良いことです。しかし、それはあくまでも子どもの立場からサポートすることが前提です。子どもを自分の所有物のように扱ったり、すべてにおいて自分の命令に従わせようとしたりするのは間違っています。

英語教育の最悪の失敗は子どもを「英語嫌い」にしてしまうことです。本来、学ぶことは楽しいはずなのに「嫌な感情」を抱いてしまったなら、それは大人の責任です。

子どもが自らの意志で「もっと英語を学びたい」と思えるようにお母さんはサポートしましょう。その際「何を心がけなければいけないのか」について解説します。
勉強中の母娘

英語教育に熱心なお母さんが陥りがちな誤りとは

英語教育に熱心なお母さんに「なぜ、子どもに英語を学ばせたいのですか?」と質問すると、ほとんどの回答は次の3つに集約されます。

ひとつ目は「私は英語が苦手だったので、子どもには得意になって欲しいから」です。お母さんの英語コンプレックスが子どもの英語教育に駆り立てているパターンです。

コンプレックスが強いと子どもの英語教育に熱心になり過ぎる傾向があります。その結果、子どもの適性や自主性を無視して子どもに苦痛を感じさせる危険性が高まります。いわゆる「教育虐待」です。

ふたつ目は「これからの時代、英語を話せるのは必須だから」です。一見合理的に見える答えですが、子どもが成人する20年後の世界で何が必要とされるかなど誰にもわかりません。

私が高校生のとき(1980年代後半)社会の先生が「君たちが大人になったら衛星を通じてテレビ放送されるのが主流になる時代が来るよ」と雑談していたのを覚えています。いわゆる衛星放送(BS)です。

確かにその後すぐに衛星放送は始まりました。しかし、インターネットの出現は先生には予見できませんでした。大人ができる将来予想など現在の延長線でしかなく、まったく新しい未来など誰にも想像できません。

私は人口予想以外の未来予想はほとんど無意味だと思っています。誰にも準備できるものではなく、ただ変化に対応できるようにするだけです。

3つ目の答えは「英語ができると入試に有利だから」です。確かに英検の取得級によっては受験で加点されるなどの優遇措置があったり、大学受験では英語配点が高かったりします。

しかし、子どもの適性もわからないうちから大学進学する前提で話を進めているのは変です。また、入試の配点など小学生くらいの子どもにとっては正直「どうでもいい」話です。

「自身の英語コンプレックス克服」「時代の先読み」「入試における英語偏重」の3つの答えには共通して欠けている観点があります。それは、「子どもの立場で考えていない」ことです。

最悪なのは英語嫌いにしてしまうこと

子どもの英語教育で最悪の失敗は「子どもを英語嫌いにしてしまうこと」です。親のコンプレックスなど子どもには関係のない話です。時代の変化や入試での優位性についても、子どもには理解不能でしょう。

お母さんの意見を押しつけられて無理やり英語をやらされていたら、たまったものではありません。

英語はただの言語です。英語を主言語とする国では普段語として使われています。また、世界共通語としての役割もあり、世界中の人とのコミュニケーション手段として重宝されています。「嫌いになる」対象ではありません。

英語を通じて学べることに楽しさや喜びを子どもが感じられるように、お母さんがサポートするのが理想です。

私も親なのでお母さんの気持ちはよくわかります。私は水泳が苦手で今でもカナヅチです。学生の頃、友達から海に誘われると憂鬱でした。そのため息子には「水泳が得意になって欲しい」と強く思っていました。完全なコンプレックス型です。

しかし、息子も水泳が苦手で、プール教室に通っても全然上達しませんでした。イライラして子どもに文句を言いそうになったこともあります。かろうじて我慢しましたが、子どもに私の気持ちは伝わっていたかもしれません。

幸い指導の上手な先生に恵まれて人並みに泳げるようになり、プールを楽しいと感じるまでになりました。もしあのとき私が口やかましく水泳を押しつけていたら、むしろ私が願う方向と反対の結果になったはずです。

大切なのでもう一度繰り返します。最悪なのは子どもを「英語嫌い」にしてしまうことです。

子どもの立場で考えること

子どもの最大の利点は「好奇心が強い」ことです。この特性を最大限に活用して英語学習をさせると自発的に英語を学ぼうとします。何かに興味を持ったときの子どもの学ぶパワーは相当なものがあります。

私が小学校低学年までの子どもにおすすめしている「英語絵本の読み聞かせ」は、「楽しいストーリーを読みたい」「続きがどうなるのか知りたい」という子どもの好奇心を刺激します。

このとき英語は無理にやらされる勉強ではなく、好奇心を満たすために必要なことです。だから「英語についてもっと知りたい」という気持ちに子どもを駆り立てます。

もちろん面倒な暗記もときには必要です。しかし、その対価として「楽しさ」や「喜び」を得られるとわかれば子どもの英語学習への姿勢が異なってきます。

いったんお母さんの心にある英語への思いは胸にしまっておきましょう。そして、子ども目線でどうしたら知的に楽しく学べるのかを考えてみましょう。

最高にオススメなのが、英語の動画がたくさん見られるリトルフォックスです

英語が得意なお母さんも気をつけよう

強い英語コンプレックスが子どもの英語教育に向かうとあまりいい結果につながらないのと同様に、英語が得意なお母さんが子どもを苦しめてしまうことがあります。

これに関して私にも苦い思い出があります。私は英語が得意でしたし、かつて高校の英語教員でした。ところが自分の息子に英語を教えるとなると、本当に難しいことばかりでした。

もちろん教える内容が難しいのではありません。子どもへの接し方や教え方が難しいのです。恥ずかしい話ですが、子どもにわからない文法用語を多用したり、正確さを求めすぎて怒ってばかりしていたりしたことがあります。

また答えを与えすぎて、子どもが自ら法則を見つけ出す学ぶ喜びを奪ってしまうことも多々ありました。

子どもの英語の伸びが悪く、すぐに自分の誤りに気がつきました。そこで、全面的に指導法を見直しました。本を一緒に楽しんだり、子どもに考えさせる余地を与えたり、不正確な英語でもあえて無視したりするようになったのです。

英語が得意なお母さんも、子どもに英語を教えるときには細心の注意が必要です。

デンマークサッカー協会による「子どものサッカー指導者向け10カ条」

サッカー強豪国であるデンマークのサッカー協会による「子どものサッカー指導者向け10カ条」があります。英語とサッカーは無関係に感じるかもしれませんが、子どもに大人が何かを教えるという点では共通です。

そして忘れてならないのは「デンマークが世界でもトップクラスの教育先進国」であることです。サッカー関係者だけでなく、教育に関係するすべての大人は理解しておいたほうがいい示唆に溢れています。

10カ条の紹介

  1. 子どもたちはあなたのモノではない。
  2. 子どもたちはサッカーに夢中だ。
  3. 子どもたちはあなたとともにサッカー人生を歩んでいる。
  4. 子どもたちから求められることはあってもあなたから求めてはいけない。
  5. あなたの欲望を子どもたちを介して満たしてはならない。
  6. アドバイスはしてもあなたの考えを押し付けてはいけない。
  7. 子どもの体を守ること。しかし子どもたちの魂まで踏み込んではいけない。
  8. コーチは子どもの心になること。しかし子どもたちに大人のサッカーをさせてはいけない。
  9. コーチが子どもたちのサッカー人生をサポートすることは大切だ。しかし、自分で考えさせることが必要だ。
  10. コーチは子どもを教え導くことはできる。しかし、勝つことが大切か否かを決めるのは子どもたち自身だ。

このような10カ条が発表される背景には、サッカー指導において子どもとの接し方に問題のある大人が多いからです。日本だけの問題ではなく世界中で見られる問題です。だからこそ、大人が意識して気をつけなければいけないのです。

英語に当てはめて考えてみる

サッカー10カ条を英語教育に当てはめてみると、私たち大人の振舞いについてどうあるべきかが見えてきます。

1と5は、英語コンプレックスを持つお母さんには特に気をつけてもらいたいです。子どもには子どもの人生があるので、自分の意のままにしようとしてもいずれ破綻します。

私は4・6・9が心に刺さりました。つい答えを与えることで満足してしまい、子どもの頭で考えさせる機会を奪っていたからです。正しいことを伝えることは簡単ですが、本当に子どものためになるかどうかは真剣に考えなくてはいけません。

スイスサッカー協会の保護者むけポスター


おとなのみなさんへ

 

「ぼくたちのゲームを観に来てくれて、そしてぼくたちのこと、ぼくらのサッカーのことを気にかけてくれてどうもありがとう」

 

今日はぼくたちの1日

 

「ぼくたちは、サッカーをするのが楽しくて大好きなんだ。もちろん、ぼくらのうちのだれが勝っても楽しいんだ。でもぼくらにとって一番大事なのはプレーすることなんだよ」

 

だから、プレーをさせておいてください

 

「大声でさわがないでね。相手のチームや応援に対してもフェアな態度をとってね。ミスをしたからって、いちいち言わないで。そんなことを言われたらがっかりだし、言われたからってそう簡単にうまくできるようにはならないんだ」

 

すべてのこどもより

これはスイスサッカー協会が子どものサッカーを観戦する保護者むけに掲示したポスターの内容です。すべての大人はかつて子どもだったのに、いつの間にか当時の気持ちを忘れてしまいます。上記のポスターの内容は私が子どもの頃親に言われて嫌だったことそのものです。

私は少年野球で内野ゴロを打ち試合に負け、父親にけなされました。そのとき「大人になったら俺はこんなこと子どもには言わないぞ」という記憶がよみがえってきました。あなたにも一つくらい同じような経験があるはずです。

自分の子どもには同じ思いをさせてはいけません。

「何のために学ぶのか」の原点を忘れずに

本来「学ぶこと」は楽しいはずです。できなかったことができるようになったり、知識が膨らむと見える世界もグングン広がったりするからです。初めて自転車に乗れるようになって、生活圏が急に広がったときの感覚です。

人間の究極の目的は「幸せに生きること」です。AI(人工知能)の出現によって翻訳機能が完成され英語学習は不要になるという意見があります。本当かもしれないし、違うかもしれません。

しかし、AIには人間の学ぶ喜びを妨げることはできません。あらゆる分野で人間の能力を凌駕しても、知識欲は減退しないはずです。速く走る車やバイクが登場しても、陸上競技で速く走るために一生懸命練習する選手が消滅しないことを見れば明らかです。

私など大人になっても英語の歌の歌詞が聴き取れたり、自分で口ずさめたりすると嬉しいと感じます。翻訳機では決してこの喜びは味わえないでしょう。

人間の本能でいろいろなことを知りたいし、何かができるようになると幸せを感じます。お母さんが子どもの英語学習をサポートするときの接し方を考えるとき、子どもが「学ぶことの喜び」を感じられるように配慮しましょう。

まとめ

子どもに英語を学ばせたいと願うなら、子どもの立場で考えてあげないと「英語嫌い」になってしまう確率が高いです。英語は言語であり、そもそも「嫌い」になる対象ではありません。

例えば親子で英語絵本を楽しんでいて「続きを知りたい」欲求を満たすために学ぼうとするのが、本来のあるべき姿です。お母さんの考えや願望はもちろん理解できます。しかし、それは心の中にしまっておくほうが賢明です。

デンマークの「子どものサッカー指導者向け10カ条」を紹介しました。ひとつひとつ熟読すると、ほとんどのお母さんは一つくらい反省点が見つかるはずです。

「学びたい」「知りたい」という感情は、人間の基本的な欲求のひとつだと思います。そこを刺激してあげられるようにサポートするのが理想的な「英語教育に熱心なお母さん」の姿です。

私も一人でも多くの子ども達が「英語っておもしろい!」と感じてくれるように、お手伝いできればと考えています。一緒に頑張りましょう。

意外と難しい「現在形」と小学生のうちに知っておくべき時制とは

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「英文法の授業が大好きだった」人は少数派です。本来、英語の語順や用法をまったくわからない日本人のために説明してくれるありがたい授業なので、もう少し感謝されてもいいはずです。

ところが実際は「英文法など役に立たない」「細かい知識ばかり覚えさせられた」など最低の評価ばかりです。確かに参考書を見ると小難しい用語で埋め尽くされていて、楽しく読める内容ではありません。

参考書や教科書は「正しいこと」を伝えるのが目的で、「わかりやすく」伝えるのは教師の腕にかかっています。ところが多くの英語教師も「正しいこと」だけを伝えてしまい、生徒は混乱しているのが英文法の授業の実態です。

子どもが英語を学ぶときに避けて通れない文法の壁はいくつかあります。そのうちのひとつは時制です。「過去形・現在形・未来形」は日本語にはない概念なので、腑に落ちるまでにかなりの時間と労力が必要です。

その中でも特に「現在形」は「過去形・未来形」と比較しても理解するのが難しい時制です。ワークブックに取り組んでも英語スクールで習っても、正しく理解できている子どもは少ないです。

そこでお母さん向けに、「現在形」の本質について説明することにしました。楽しい話題ではありませんが、一度理解すると子どもにも良いアドバイスができます。ちょっとだけ辛抱して最後まで読んでください。

現在形は「今」ではない!

中学校で本格的に英語を学習すると最初に扱う時制は「現在形」です。その後に学習する過去形・未来形と合わせて「3つの基本時制」のうちのひとつです。

ところがこの「現在形」は意外とクセモノです。他の二つの時制にはない特徴があるので、正しく理解するには時間がかかります。

まずはお母さんが正しく理解して子どもの質問に答えられるように準備しておきましょう。

過去形・未来形は点、現在形だけ幅のある時制

学生時代に少しだけ戻って、3つの時制を復習しましょう。

*過去形

I was 10 years old in 2013. (私は2013年に10歳だった)

2013年の時点(過去)において、「10歳だった」と伝えています。

*未来形

I will be ten years old next year. (私は来年10歳になります)

来年の時点で10歳になります、と伝えています。

*現在形

I am 10 years old. (私は10歳です)

日本語訳は「私は10歳です」で間違ってはいませんが、もう少し深く考えてみましょう。昨日私は何歳でしたか? 明日私は何歳でしょうか?

現在形は「今」のことだけでなく、少し前から少し未来のことまでを含めた時間を表現しています。過去形と未来形がそれぞれの時間軸の点で表現できるのに対して、現在形には「幅」があるのです。

これは現在形の大きな特徴なので正しく理解しましょう。

現在形という用語が悪い! 「いつものこと形」と呼ぼう

現在形には「幅」があることはすでにお伝えしました。しかし、中学生、いや高校生でも正しく理解している生徒は少ないかもしれません。

混乱の一因は「現在形」という文法用語ではないかと考えています。日本語の現在とは「今」の時点のことです。

英語の現在形を子どもにわかりやすく伝えるために、現在形ではなく「いつものこと形」と呼ぶことを提唱します。これは私のオリジナルではなく、友人の英語の先生が教えてくれたことです。

「いつものこと形」なら、英語の現在形を的確に表しています。例えば、I drink coffee after meals. なら「私は食後コーヒーを飲みます」という「いつものこと」を表現しています。

昔、高校の受験参考書の解説には「現在の反復動作」「不変の真理」に現在形を用いると書いてありましたが、子どもにそんな説明をして理解できません。

「不変の真理」を表す例文として代表的なものを紹介します。

The earth goes around the sun.

これも「いつものこと」で充分説明できます。地球が太陽の周りを回っているのは「いつものこと」だからです。

子どもに3つの基本時制「過去形」「現在形」「未来形」を教えるときは、現在形は「いつものこと形」として理解させましょう。現在形だけ「幅」のある時制であることを教えてあげるだけで英語の理解度は格段に違ってきます。

「今」を語るなら、現在進行形

では今この時点のことを表すには、どうしたらいいのでしょうか。答えは、「現在進行形」です。

例文を見て違いを感じ取りましょう。

I listen to music every day.(現在形orいつものこと形)

I am listening to music.(現在進行形)

先述のとおり、「いつものこと形(現在形)」には幅が感じられます。おとといも昨日も今日も明日もあさっても「音楽を聴く」のです。

現在進行形では「(今)音楽を聴いている」ことを表しています。幅は感じられず、今この一点だけです。

子どもに時制を教えるのはプロでも難しいです。「現在」という文法用語に引きずられて、「今」を表す現在進行形と「いつものこと」を表す現在形を混同する傾向があるからです。

また「現在形」では「3人称・単数(he, she, itなど)」が主語になると動詞に「s」をつけるルールがあります。3つの基本時制の中で最も難しい時制です。

もし子どもが英語スクールや塾の先生から時制を教わって混乱していたら、お母さんがもう一度整理して教えてあげましょう。

3つの基本時制と3つの相

子どもが時制を学ぶときに混乱してしまうもう一つの原因は、時制の知識が整理されないまま詰め込まれるからです。3つの基本時制のあと、進行形や完了形などが追加されると訳がわからなくなります。

ここでは時制の概念をわかりやすくするために、表を用いて解説します。また、小学6年生までにどの時制まで学習しておいたほうがいいのか、の目安についても触れます。

  • すべての時制を一枚の表で理解する

まず、「過去形」「現在形」「未来形」の3つの基本時制があります。

基本 過去形 現在形 未来形

そして3つの基本時制だけでは表現できないニュアンスがあるため、さらに3つの概念を掛け合わせます。

基本 過去形 現在形 未来形
進行 過去進行形 現在進行形 未来進行形
完了 過去完了形 現在完了形 未来完了形
完了進行 過去完了進行形 現在完了進行形 未来完了進行形

ご覧のとおり、時制は全部で3×4=12あります。しかし、基本はあくまでも過去形・現在形・未来形しかありません。「進行」「完了」「完了進行」は「味付け」です。

麺の基本が、「うどん」「そば」「パスタ」とします。それに「カレー味」「カルボナーラ」「めんつゆ」の味付けをしていると考えればわかりやすいかもしれません(一部食べたくない組み合わせがありますが)。

基本 うどん そば パスタ
カレー カレーうどん カレーそば カレーパスタ
カルボナーラ カルボナーラうどん カルボナーラそば カルボナーラパスタ
めんつゆ めんつゆ+うどん めんつゆ+そば めんつゆ+パスタ

詳しい説明は割愛しますが、現在完了形は「現在形」の一種です。

I have just finished my homework.

これはたった「今」宿題を終えたという表現なので、現在形のグループであることは明らかです。

もし子どもに英語の時制について解説を求められて混乱してしまったら、一度この表を眺めてみることをおススメします。

小学6年生までに理解しておきたい時制はここまで

では、小学6年生までに時制についてどのあたりまで理解しておけばいいのか、の目安について解説します。

英語の絵本の読み聞かせをしたことのあるお母さんならすでにお気づきと思いますが、いきなり過去形のオンパレードです。なぜなら、物語は「~しました」という過去形で大部分が語られるからです。

まずは現在形・過去形を理解するところから始めましょう。お母さんが中学時代にやったような不規則動詞の「原形・過去形」を呪文のように唱える覚え方は、子どもには不向きに感じます。

例えば、子どもは絵本や本の音読を繰り返しながら、thoughtとthinkを別々に覚えてもいいです。そのあとどこかの時点でふたつの単語がつながって「同じ単語である」と認識でいれば大丈夫です。

余談ですが、未来形は正確には動詞は変化していません。willや be going toを組み合わせて表現するので「未来表現」と呼んだほうが適切です(これも英語教師の友人に教えてもらいました)。

3つの基本時制を理解したら、それに進行形の味付けを加えられれば表現の幅はグッと広がります。小学6年生までに、表で示された「赤とオレンジの枠」まで理解できれば充分です。
時制*学習の優先順位の第一位は 赤 >  黄色 > 緑 > 青

まとめ

「現在形」が表現するのは「今」の一点ではなく、幅のある「いつものこと」です。「今」に限定した内容を表すには「現在進行形」を用います。

この点において、「現在形」は他の基本時制である「過去形・未来形」とは決定的に異なります。また現在形においては、主語が3人称・単数の場合、動詞にsをつける決まりがあります。「現在形」は中学校で最初に習う時制ですが、実は最も難しい時制と言えます。

進行形・完了形・完了進行形は、「時制」への味付けです。これらのことを長期間に渡り一つずつ学ぶと頭の中が混乱してしまいます。しかし、一覧表で眺めればそれほど難しいことではありません。

小学生にも理解しておいて欲しいのは、3つの基本時制と進行形までで充分です。ここまで進めば簡単な本を読めるようになるので、英語学習のスピードは加速します。

小学生にも使える!「中学英語教科書」の実力とは?

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学生の頃、私は英語教材マニアでした。目新しい「〇〇メソッド」のようなタイトルを見つけたらほとんど何も考えずに購入しました。そして使用してしばらくすると、気づくことが2点ありました。

ひとつ目は、どんな教材にも「一つくらいは役立つ情報がある」ことです。その中のいくつかは今でも私の英語学習に影響を与えているものもあります。1500円くらいの本で一生使える情報が得られるなら悪い話ではありません。

そして、もうひとつ気づいたのは「中学の英語教科書は完成度が段違いである」ことでした。義務教育のときに「無料」で配布された教科書のほうが、自腹で購入したものよりレベルがはるかに高いのです。
中学英語教科書

通常高いお金を払えば払うほど「良い買い物をした」バイアス(思い込み)がかかります。「学校の教科書より、最新のこの〇〇メソッドのほうが優れている」と思いたいのが普通です。それにもかかわらず、学校教科書のほうが優れていると認めざるを得ないのです。

私がこのことを痛感したのは、15年前にベトナム語を勉強しようとしたときでした。当時はわかりやすいテキストがほとんどなく、大型の書店に行っても辞書と参考書合わせて10冊未満でした。

マイナー言語のテキストや辞書は、巨大な英語市場の教材と比べると、内容も作り込みのレベルもお話にならないほどお粗末です。英語教科書に該当する存在は、マイナー言語にはありません。

今回の記事では中学校で使用されている「英語教科書」が抜群に優れている理由を説明します。小学生の子どももすぐに中学に入学します。

子どもは無料で配られる教科書にありがたみを感じなくなっています。そんなときにはお母さんが「実は英語教科書っていうのはね…」とその価値を説明してあげましょう。子どもの英語への取り組み姿勢に影響することは間違いありません。

文法を体系的に学ぶ教材としては最高峰

学校英語教育を批判するときにやり玉にあがるもののひとつは「英語教科書」です。

「人生で一度も使ったことないThis is a pen.を教えている」とか「ネイティブでも使わない古い表現がある」という内容です(ちなみに私はThis is a pen. を実際の場面で一度だけ使いました)。

このような批判を聞くたびに私は「わかってないな」と感じます。もちろん教科書は完全無欠ではありません。しかし、英語教科書の完成度は語学教材において間違いなく最高レベルです。

英語以外の言語に興味を持って学習したことのある人ならわかりますが、英語教科書のレベルに達している教材は見たことがありません。

では、どのような点において学校の英語教科書は優れているのかについて具体的に説明します。

語彙・文法が「積み上げ式」

まず、「語彙・文法が積み上げ式である」ことです。例えばLesson 3の内容を見ると、Lesson 1~2までの内容と、今回新しく学ぶ内容だけで構成されています。それ以外のところからは単語も文法も使われていないのです。

英語教科書イメージ

これは算数の教科書の発想に似ています。足し算・引き算を学んだあとに、掛け算を学びます。足し算を学んでいる部分に、掛け算が混ざることはありません。

イギリスの有名な出版社から出ているESL(第二言語としての英語)教材を見ると、be動詞の疑問文のところにはいきなり疑問詞(What, Were, Whoなど)が登場します。これは日本の教科書ではありえません。

日本の教科書は学習者が一歩一歩学べることに重点を置いています。一方、海外の教材では内容を重視していて、そのターゲットの文法が自然に使われるシチュエーションを優先しています。そのため、純粋に積み上げ式で構成するのはほぼ不可能です。

どちらの教科書を使っても成果は出ているので、一概に白黒つけられるものではありません。

しかし、世の中の英語教材のほとんどは「シチュエーション型」で構成されていいます。積み上げ式で一歩ずつ英語を理解したい人にとっては、日本の英語教科書は唯一無二の教材です。

完璧に正しい

文部科学省の検定をパスしている教科書の編集には、多くの大学教授やネイティブが携わっています。彼らの目で何十ものチェックをパスしているので、使用されている英語表現に間違いはありません。

使用されている表現の中にはたしかに一般的ではない表現もあります。例えば、中学1年の英語教科書の最初にはおなじみの会話が掲載されています。

How are you?
I’m fine, thank you.  And you?

ネイティブにこの表現を見せると、「ダサい」とか「野暮ったい」と感じます。それを知った日本人は「もっとイケてる表現を教えるべきだ」と主張します。

How are you?
I feel good, because….

How are you? に対する答え方は複数考えられます。I feel good, because…. と答えれば、確かに自然な会話になるでしょう。しかし、一般動詞feelをSVCで使用するのは中2から学習します。さらにbecause(接続詞)もまだ学習していません。

自然でイケてる表現をストレートに掲載することが本当に英語初心者のためになるでしょうか?

英語教科書の編集に関わっている人達は「専門家」です。この英語があまり自然ではないことくらい百も承知です。しかし、彼らは生徒達が最もシンプルな形で英語の挨拶を覚えられるように配慮しているのです。「基本形」を覚えておけばあとで応用も効くので、まったく無駄ではありません。

例えるなら、赤ちゃんに最初に食べさせる離乳食のようなものです。離乳食を大人が食べてもおいしいとは感じません。しかし、衛生的で消化にいいもので添加物がほとんどないものです。赤ちゃんには最適です。

成長に合わせて少しずつ大人が食べるようなものを口にしていきます。物事には段階があるのです。

このことを知らずに「不自然だ」という理由だけで教科書を批判するのは、的外れと言わざるを得ません。

周辺教材が充実

中学生の頃、「教科書ガイド」にお世話になったお母さんは多いはずです。和訳が載っているのでそこに価値を感じて購入していたのではないでしょうか。

しかし、最近の英語の授業では和訳を求めるような場面はすっかり少なくなりました。では、「教科書ガイド」の価値は無くなったかといえば、そんなことはありません。

とにかく解説が豊富で、想定される質問のほぼすべてを網羅しています。大人で英語をやり直したいなら、教科書は使わずに「教科書ガイド」だけで学習を進められるほどです。

ひとつだけ難点を挙げると、読み方(発音)がカタカナ表記であることです。ここはやはり、最初の段階で英語の音で正しく覚えないと、永遠にカタカナ読みの呪縛から逃れられません。

わかりやすさを優先しすぎて(カタカナ表記)、学ばせるべき課題(正しい発音・フォニックス)から目をそらしすぎです。

もうひとつ必要なのはCDです。「教科書ガイド」と別売りになっていて、ふたつ揃えると5000円近くしますが、これは絶対に買ったほうがいいです。

よく「日本人英語教師の発音は悪い」と批判されています。それなら付属CDを聞けばいいだけです。CDやテープが存在しなかった大昔と違って簡単に解決できるのに、批判する意味がわかりません。

本文の音読部分だけ再生デバイスにコピーしておくと、より手軽に再生できます。できればスマホの再生アプリを利用して再生速度を変えられるようにしておくと、音読練習に便利です。

最後に「ワークブック(教科書に準拠した文法の問題集)」を揃えれば、教科書だけでは不足する問題数を補えます。ワークブックは学校の副教材で購入することが多いです。

余談ですが、英語教師が定期テストを作成するときは、ワークブックを参考にすることが多いです(私はそうでした)。毎回、オリジナルの問題は作るのは本当に面倒です。だからワークブックの問題をちょっとだけアレンジして作成するのが普通です。

生徒の立場から見れば、ワークブックをしっかり学習するだけで定期テスト対策は充分です。

このように教科書を中心として、「教科書ガイド」「付属CD」「ワークブック」の3点を揃えると、文法・語法の解説、ネイティブの音声、充実した文法問題が揃います。真剣に学習すれば、わからないことはほぼゼロの状態になります。

小学5年生以上の子どもがいて英語を本格的に学び始めているなら、中学1年の教科書とCDを揃えておくと、何かと役に立ちます。中古の教科書はAmazonでも購入できます。

英語教科書の欠点

上記のようにほとんどパーフェクトな英語教科書ですが、実は欠点もあります。その欠点は、学習のしやすさとトレードオフ(あちらを立てればこちらが立たず)の関係にあります。実際に英語教科書にはどのような欠点があって、それを補うためにはどうすればいいのかを解説します。

内容がつまらない

英語教科書の最大の欠点は「内容がつまらない」ことです。主な理由は、積み上げ式の構成を重視しているため、「使用できる語彙や文法に大きな制約」があります。その条件で中学生の知的好奇心を駆り立てる内容にするのは困難を極めるからです。

以前海外にいたときに、私の息子はチューター(家庭教師)に一時期お世話になったことがありました。彼女はときどきイギリスのESL教材を使用していました。

ある日、手渡したコピーにはセリフのない劇画調のマンガが印刷されていました。内容は「誘拐事件が発生。犯人が居眠りしている間に子どもは逃げ出して、犯人は逮捕される」というストーリーでした。

息子はセリフを考えて英語で書いていきます。最後に、すべての話の要約を英語でまとめて、先生の添削を受けていました。私は最初から最後まで隣で見ていましたが、とても興味を惹かれる内容で時間が短く感じました。

ただ、「英語習いたての子どもにransom(身代金)とかkidnap(誘拐をする)という単語は難しすぎるのでは」とも感じました(彼女は教え方が抜群に上手で、結果的には子どもは覚えていたので驚きました)。

一方、日本の教科書は本当につまらないです。昔に比べればイラストは現代風になっているし、自然なシチュエーション設定がされています。それでも、内容のほとんどは中学生の知的好奇心を喚起するものとは程遠いです。

例えば疑問詞(What)を学習するページを和訳すると、およそこのような会話が繰り広げられます。

A: 今朝、何食べた?
B: トーストと牛乳です。あなたはどうですか?
A: 僕はごはんとみそ汁です。
B: へえ、そうなんだ!

正直、どうでもいい内容です。中学生同士で他人の朝食の話をするなら、「輸入したプロテインを飲んでいる」「スーパーモデルが飲んでいるスムージーを飲んでいる」くらいの内容でないと話題にはなりません。

ほとんどの中学生にとっては、教科書本文は退屈極まりない内容です。しかし、先述のとおり積み上げ式の制限を考えると、これだけの会話を成立させるだけでも大変です。

退屈さは、英語学習の大敵です。やはり、簡単な英語で書かれた読書を続けながら、自分の精神年齢に少しでも近い読書を目指すことが大切です。この部分は教科書に期待せず、自分で開拓するしかありません。

教材のおもしろさと自然な英語を追及するなら、こちらの教材を使った学習がオススメです

文量が少ない

教科書は授業をスムーズに進めるために、構成が練られています。中学校の授業時間は50分です。つまり、この時間内に新出語句を扱い、本文を読んでポイントを伝え、ペアワークなどを通じて基本表現を学べるように構成されています。

そのため文章量が圧倒的に少ないのです。中学校3年間分の教科書本文はおよそ七千語といわれています。ネイティブの小3(7歳くらい)が読む本は1ページに100語あり、ひとつの本で100ページくらいです。トータル1万語です。

つまり日本の中学生が3年かけて読む英文の量は、ネイティブの小3が2時間で読み終わる本の約3分の2です。これでリーディング力が養われるわけがありません。

教科書はあくまでも「文法中心の授業を受けるためのもの」と考えて、長文を読むためのトレーニングは英語の読書を並行してすすめなければいけません。

アウトプットはどうするか

学校の授業では「英会話をする機会がない」といわれます。リアルな英会話を指すなら、そのとおりです。会話には相手が必要です。授業ではペアワークなどを頻繁に取り入れながら少しでも会話の機会を多く持たせようと教員は必死になっています。

本音を言うと、どちらも英語初心者同士なのでダイアローグ(対話文)の棒読みになるだけです。理想的には学習者よりもレベルの高い相手が必要です。しかし、学校の環境では、生徒一人ひとりにそんなことは実行不可能です。

そもそも初心者が英語を話せない最大の原因は「インプット」が全然足りていないからです。言葉や表現に詰まるとかのレベルではなく「何も思いつかず無言状態が続く」ことが物語っています。

「日本人はシャイだから英語を話そうとしない」とネイティブがコメントすることがありますが、そもそも頭の中にストックがないので最初のひと言さえ出ません。

自分でできることは、やはり教科書(または教科書ガイド)の徹底的な音読です。音読の仕上げには「日本語を英語に直す訓練」を取り入れます。そして、文章の一部や単語を入れ替えることで「自由英作文」の基礎力を養います。

このようなトレーニングを続けると会話の基礎が身につきます。そして、ある程度のストックができてきたら「オンライン英語教室」などのサービスを利用して会話練習をしたほうがいいです。

後述しますが、教科書の本文以外の部分には会話に役立つフレーズや豆知識がわかりやすくまとめられています。教科書を100%活用してフレーズの暗唱をすると、会話でも冒頭の部分が言えるようになり、表現に困る部分を減らせます。

効果的な活用法とは

授業時間に合わせた「教科書の短い本文」は、実は初心者の音読素材とし最適です。授業で学び、教科書ガイドに詳しい説明があるので、内容はほぼ完璧に理解しています。内容を理解していない英文の音読は、お経と同じです。つまり学習効果はありません。

詳しく内容を解説してくれている英文を音読に活用しない手はありません。音読に関する詳しい学習方法については、別の記事で取り上げていますので参考にしてください。

欄外や資料ページが充実している

教科書の欄外の小さい字で書かれた注意書きや、本文以外の資料ページをじっくりと見てみましょう。驚くほど役立つ情報がわかりやすく掲載されています。

例えば、最近の教科書には本文で使用されている語数(〇〇words)まで記入されています。ストップウォッチを利用すればどれくらいの速さで音読できるかを定期的に測定できます。

私が驚いたのは、中1の教科書の資料ページ「基本的な発音を覚えよう」でした。ほとんどの人は、「アルファベットがA~Zまで並べてあるだけ」と見向きもしないでしょう。

ところが、そこには大文字・小文字・発音記号(アルファベット読みではないフォニックス的な)・発音のコツ・その音を含む単語(アクセントが太字で表示)、そしてその絵すべてが収められています。

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これから英語を習う小学生のいるお母さんなら、この1ページのためだけに教科書を買っても価値があるほどです。私だったらこれを拡大コピーしてラミネート加工します。お風呂に貼ったり、リビングに貼ったりするだけで上質な「アルファベット表」を作成できます。

使いやすいアルファベット表を探すのは難しく、海外製のものは「L」の欄に「licorice」(リコリス: カンゾウという植物)などと日本人に馴染みのない単語が使われることがあります。日本の教科書はそのような単語は使用されていないので抜群に使いやすいのです。

教科書をバカにしている人達は、こうした「資料ページ」の価値をまったく理解していません。残念なのは、中学校の先生もこれらのページを「おまけ」程度に扱って、本文だけを追いかけてしまうことです。

中学校ではこれらのページに時間を割けないなら、小学校のうちに資料ページについて時間をかけて攻略するだけでも相当なアドバンテージになります。小学生のうちから教科書を買っておくといい理由はこのためです。

自分でどんどん読み進めてみる

先述のとおり、学校の英語教科書だけでは文章量がまったく足りていません。子どもの英語力にあった英語の本を並行してどんどん読むのがベストです。

ただ、せっかく本を購入しても「難しすぎて読めなかった」ということはしばしば起こります。

そこで、別の会社から出版されている英語教科書を読んでみるのもいい勉強になります。これのメリットは、普段使用している英語教科書と同様に「積み上げ式」で構成されていることです。

ほぼ同じ時期に同じ文法や単語を学習するので、極端に「内容がわからない」という事態を避けられます。他の学校で使用されている教科書なので、多少は新鮮に感じるかもしれません。

学校教科書なので基本的にそれほどおもしろくはありません。しかし、夏休みなどを利用して他校で採用されている教科書を読んでみるのは、とても効果的な学習方法です。

まとめ

積み上げ式で構成された中学英語教科書は、多数の専門家のチェックを受けた最高レベルの教材です。教科書ガイド・付属CD・ワークブックなども充実していて、教科書を中心に「痒いところに手が届く」状態です。

教科書の最大の欠点は「つまらない」ことです。わかりやすさを優先させるので、本文の内容は中学生の知的好奇心を刺激するものではありません。また、授業で使用されることを前提にしているので、文章量は極端に少ないです。

これらの欠点は各自で英語の読書を続けることで充分に補えます。教科書の最も有効な活用法は「音読素材」としての利用です。

付属のCDを使えば、さまざまなバリエーションで音読トレーニングをしながら総合的な英語力の向上を狙えます。

学校英語の欠点とされている英会話についても、その前段階である「英文のストック」は教科書の音読により増やせます。

教科書は本文だけでなく、欄外に書かれた小さい注意書きやおまけのように扱われている「資料ページ」がとても充実しています。これらを眺めるだけで、大人でも「なるほど!」と感心します。

小学5年生以上の子どもを持つお母さんは、思い切って中1の教科書・教科書ガイド・CDを揃えてしまいましょう。小学生にも役立つ情報が惜しみなく載っています。

お母さんは「教科書」の価値を正しく理解して、子どもが中学生になったときにはその知識をきちんと伝えてあげましょう。

形容詞の並び順は「心」で理解しよう

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英語を学び始めた頃「あれっ、これってどうなっているの?」と疑問に思うことはたくさんあります。しかし、その場ですぐに聞ける先生がいないとそのままになりがちです。

例えば、「私の茶色の新しい靴」を英語で書きたいときにふと手が止まります。

shoes

靴はshoes、これを修飾する言葉はmy, brown, newです。どれも簡単な形容詞ばかりですが、どの順番で並べたらいいのか迷ってしまいます。

そんなときに子どもがお母さんに質問してきたら、多くの人はインターネットで検索するはずです。そして、載っている答えを子どもに伝えます。

子どもを英語しかできない子どもではなく本当に賢く育てたければ、ここでひとつ立ち止まって二人で考えて欲しいと思います。「なぜ、この並び順なんだろうか?」

仮説でもいいので自分なりに納得する答えを出せれば充分です。丸暗記をさせるのと、「なぜ?」を考えさせるのとでは、将来、大きな差が開くと私は考えています。

今回は形容詞の順番を学びながら、お母さんと子どもが頭を使って考えるようになる英語学習のコツを説明します。

どうなっているの? 形容詞の順番

形容詞とは名詞の性質や状態を説明する言葉です。例えば、a beautiful flowerではbeautiful(美しい)という形容詞はflower(花)という名詞をより詳しく説明しています。

日本語でも「美しい花」と表現するので、語順で混乱することは子どもでもありません。しかし、形容詞が3つ以上続くと「どの順番で」それらを名詞の前につけるのか考えこんでしまいます。

3つくらいの形容詞が使われることは普通に起こりえます。形容詞を並べる順番には目安があって、自由に並べられるわけではありません。

参考書を開くと

「私のペン」はmy penで簡単です。「私の2本のペン」もmy two pensもそれほど迷わずに答えられます。

では、「私の2本の長い赤いペン」はどうでしょうか? longとredをどこに置いたらいいのでしょうか?

文法の参考書によると下の表のような順番が示されています。
adjectives order
形容詞の並び順にはある程度の目安があります。たしかに入れ替えて読んでみると「違和感」を覚えます。

しかし上の表を暗記するのは面倒ですし、すぐに忘れてしまいます。ネイティブはどのようにしてこれらの順番を覚えているのか調べてみました。

OSASCOMP(オサスコンプ)とは

ネイティブは形容詞の並び順に関して、それぞれの頭文字を取って「OSASCOMP」と覚える人もいます。どのようなものか詳しく説明します。

Opinion-Size-Age-Shape-Colour-Origin-Material-Purpose
  • Opinion(主観)

これは主観的な判断に関する言葉が該当します。

my perfect case

perfect(完璧な)はその人の主観的な意見なので、最初のほうに置きます。

  • Size(大きさ)

これは大きさ(big, small, largeなど)が該当します。

my perfect small case

  • Age(古さ)

これは古さ(old, newなど)が該当します。

my perfect small new case

  • Shape(形)

これは形が該当します。

my perfect small new round case

  • Colour(色)

これは色(black, white, redなど)が該当します。

my perfect small new round black case

  • Origin(出どころ)

これは出所・起源が該当します。

my perfect small new round black French case

  • Material(材料)

ここには材料が来ます。

my perfect small new round black French wooden case

  • Purpose(目的)

最後に目的が来ます。

my perfect small new round black French wooden pencil case

OSASCOMPを参考書の並び順に当てはめてみます。
OSASCOMP上記の説明で示した具体例は、あくまでも説明用のものです。実際は連続して形容詞を多用するのは避けられます。通常使用される形容詞は3つまでです。

また実際には多少の順番の入れ替わりはあり得ます。したがって、上記の並び順は絶対的なルールではありません。

日本語でもOSASCOMPでも、形容詞の並び順に関して「丸暗記」するのはおすすめしません。特に子どもに英語を教えるときは、できるだけ「暗記させない」工夫が必要です。

子どもを英語が得意にしたければ、安易に「丸暗記」させない

実は私は暗記科目が大の苦手でした。本当に「どうしてこんなに覚えられないのか」と自分でも呆れるほどです。そのため、高校では世界史や日本史のテストでは常に赤点を取り、夏休みに補習を受けなければいけないありさまでした。

あるとき英語のテストが返却されました。いつもより問題が難しく、平均点が40点台でした。先生は怒り心頭で「トップが90点で、その次が70点台だぞ。ひどすぎる!」と吠えまくっていました。

クラスメートの関心は「誰がトップだったのか」です。成績上位の常連も全滅でした。そして最後まで誰が最高点だったのかわからずじまいでした。

もうわかると思いますが、最高点は私でした。私は試験範囲を勉強して点数が上振れするのが嫌だったので、自分の英語力を正確に測るために一度も「試験範囲の勉強」をしたことがありませんでした(マネしないでください)。

もちろん、まったく英語を勉強しなかった訳ではありません。そのかわり英語で読書をしたり音読したり文法の学習は自分のペースで続けていました。

この経験から断言できますが、英語に暗記力はほとんど必要ありません。むしろすぐに「丸暗記」するのは、大事なことを学習する機会を奪ってしまうことにつながります。

なぜ、そうなっているのかを立ち止まって考える

前述のとおり私は暗記が苦手でした。そこで英語の文法や語法を学習するときはできるだけ丸暗記を避けて「なぜ、そうなるのか?」を常に考えるようにしていました。

語源や文化的な背景、人間の心理にまで考えを自分なりに巡らせて納得しながら英語を学習すると、忘れにくいし雑学も増えます。

例えば「たがをはずす」を聞いて「規律や束縛から抜け出す」と丸暗記すると、「たが」とは一体何なのかを学習する機会を失います(ちなみに「たが」は樽の外側にはめて締めるための輪のことです)。

たが

言葉は人間が長い歴史の中で作り上げてきたものです。何かしらの起源や意味、心理的なものがベースにあるものです。それに気づくか気づかないかは、そのときに限ればたいした違いではありません。

しかし10年・20年と経過すると、「丸暗記→テスト後に忘却」してしまう人と「なぜと疑問→理由を探す」の習慣がある人とでは、大きな差となって現れます。子どもの「地頭」を鍛えるためにも非常に有効な方法です。

文法理解は「心」で理解せよ

さきほどの形容詞の順番ですが、私はいちいち覚えていません。説明を書いておいてひどい話ですが「覚えられない」のです。

それでも何とかなっている私の頭の中を公開します。

「結びつきの強いものは近くに置きたい」心を理解する

名詞に近い形容詞に注目しましょう。「材料に関する形容詞」は「名詞」に最も近い形容詞です。材料は、その名詞が作られている素材そのものです。つまり、名詞ととても親密な関係にあります。

それに比べると「古さ・大きさ」などは、名詞と「距離が離れた形容詞」と考えられます。

形容詞の順番の心

そして、英語においては4つ以上の形容詞を一文の中で同時に使用することはあまり推奨されていません。だから、「ほどほどに覚えておけばいい」のです。

私の頭の中をさらけ出すと、「theとかmyが最初、次に数字、あとは心理的に結びつきの強い形容詞を名詞のそばに置く」程度にしか理解していません。

「いい加減な奴だ。そんなレベルでよく教員をしていたな!」と叱られそうですが、本当だから仕方ありません。これは形容詞の順番に限ったことではなく、文法の学習は常にこんな感じです。

大量の音読トレーニングをすることで、自然と形容詞の順番も身につきます

練習問題

それでは練習問題を載せておくので、お母さんは子どもと一緒に形容詞を正しい順番に並べて名詞を修飾してみましょう。ふたりでワイワイいいながらやってみると楽しいです。

1.名詞 a dressを修飾してみましょう

使う形容詞:white, perfect, new

2.名詞 the chairを修飾してみましょう

使う形容詞:wooden, Chinese, old

3.名詞 my shoesを修飾してみましょう

使う形容詞:old, leather, expensive

解答

1.a perfect new white dress

(Opinion-Age-Colour)

2.the old Chinese wooden chair

(Age-Origin-Material)

3.my expensive old leather shoes

(Opinion-Age-Material)

まとめ

形容詞とは名詞の性質や状態を説明する言葉です。通常は3つまでの形容詞が連続して使われることがあり、どの順番で並べるか迷ってしまいます。

参考書には詳しい説明はありますが、丸暗記するのは面倒です。OSASCOMPという頭字語を使って形容詞の順番を覚えることも可能ですが、これも基本的には暗記です。

言葉は人間が作り出したものであり、その裏側にはその言葉を使う人達の文化や心が現れています。すぐに丸暗記させず、「なぜ、そうなっているのか?」を子どもに考えさせるようにしましょう。

形容詞の場合は、「修飾する名詞と結びつきの強い形容詞ほど近くに置かれる」法則があることに気がつきます。

ちょっと立ち止まって心理的な面から文法や語法を理解すると、忘れにくくなると同時に地頭の良い子どもになります。「覚えるしかない」「そう決まっているから」と子どもに英語を押しつけないように気をつけましょう。

「なぜだろう」と考えると子どもは知的になります。お母さんはそういうきっかけを作ってあげられるようにサポートしてあげましょう。

 

これだけは知っておきたい! 「子どもの英語を伸ばす」接し方

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子どもの英語力に影響を与えるものはいろいろとあります。その中でもとりわけ「お母さんの子どもへの接し方」は影響力が大きいように感じます。なぜなら、普段最も長い時間子どもと接している人だからです。

中途半端な知識で子どもに無理やり英語を強制しては、子どもの英語力はすぐに頭打ちになるでしょう。しかし、まったく放任状態ではいつまでたっても英語を学ぶ習慣は身につきません。

今回は年齢層別に子どもの特徴を取り上げ、それに即したお母さんの接し方についてまとめました。私が実体験から学んだことなので、机上の空論ではありません。中学生以降、子どもの英語力が爆発的に向上するように正しくサポートしてあげましょう。

幼稚園~小学1・2年生へのサポート

小学校に入学しランドセル姿の子どもを見ると「ずいぶんと成長したな」と感じます。しかしながら、英語学習の観点からは小学校の低学年(1・2年生)は幼児とあまり変わりません。

この年齢までの子ども達の特性は大人とはかなり異なります。その点を理解してお母さんが接すると、上手に英語学習を始められます。

この年齢の子どもは、文字の読み書きは一般的に苦手です。このため、無理やり英語の本を読ませたり、ワークブックに取り組ませたりするのは逆効果です。もちろん個人差が大きいので、文字に興味を持ち始めたら少しずつ与えるのは大丈夫です。

子どもはおもしろそうなものには自然と惹きつけられます。反対に、関心がないものには一切取り組みません。大人のように「将来役に立つから」とか「教養のため」という理由で我慢しません。

あなたに覚えておいてほしいのは、「英語を使って楽しませる」ことです。

私は「英語絵本の読み聞かせ」をおすすめしています。これは「英語を使って楽しい話をお母さんと笑いながら読めるから」です。勉強の概念を持ち込まずに、英語に触れられる点で絵本の読み聞かせはとても優れています。

音に強い特性を活用して、勉強を意識させない

この時期の子どもが有利なのは、「恥ずかしがらずに英語の音をまねしようとする」特性があるからです。初めて英語を習う中学生に“th”(舌先を上下の歯の間に挟み空気を出す音)の発音を教えても、積極的にまねしようとはしません。「照れ臭さ」があるからです。

この点は幼児~小学1・2年生までの子どもには「抵抗感」がありません。「これ、上手にできるかな?」と促すとすぐにチャレンジします。英語の発音に関しては理屈よりも実践が大切です。小さい子どもが短期間で発音が上達するのはこれが理由です。

お母さんにできる具体的なこととして、「英語絵本の読み聞かせ」が最も取り組みやすいです。盛り上がる部分をお母さんが楽しく読んであげると、そのうち子どもは自分からまねして声を出して読み始めます。

発音を気にして読み聞かせに消極的なお母さんもいますが、これから多くの人の発音を聞く機会があるので心配しないでください。完璧に正しく読める人などいないので、できる範囲で頑張れば充分です。

このように絵本の読み聞かせを通して、英語に楽しみながら触れさせるようにしましょう。短い単語やセンテンスをまねするまで持っていければ、この年齢での英語教育は充分成功です。

結果をすぐに求めない

毎日絵本の読み聞かせをしても、「なかなか子どもが英語を声に出さない」と感じることもあります。見た目には子どもに変化がなくても、頭の内部で変化は蓄積されています。

だから結果をすぐに求めないで、半年~1年程度は待つようにしてください。長すぎると感じるかもしれませんが、日本語を話し始めるまでにも同じ時間がかかったはずです。

実は私も子どもに絵本の読み聞かせをしていて、子どもが英語を口にせずじれったく感じた時期がありました。子どもは絵本は好きだったので、私のところに「読んで」と持ってきます。私も楽しかったので、ときどき新しい本を買い足しました。

8か月くらい経った頃から、次のページをめくる前に子どもが英語を自分で読み始めました。文字を読んでいるというよりも、私の英語を耳で覚えていたようです。絵本の最も盛り上がるところは子どもの順番になり、ますます絵本が好きになったようでした。

変化が起きるまで待つのは大変ですが、「英語のため」と考えずに「親子で読書を楽しむ」程度に気楽に考えたほうが長く続けられます。

子ども自ら興味をもつように仕向ける

子どもに英語を「勉強」として押し付けるのは最悪です。反対に、何もせずに放ったらかしではいつまでたっても子どもは英語に興味を持つこともありません。やはりお母さんが「仕掛け」を作ることで、子どもが自分から英語に触れようと仕向けなければいけません。

リビングに一冊も本がない家庭と本棚に子どもが読みそうな本がたくさん並べてある家庭では、どちらが本好きの子どもが育つかといえば当然後者です。環境を提供するのがお母さんの役割です。

私は子どもに英語での読書を強制したことはありません。ただし、いろいろと策を講じました。例えば、新しく英語絵本を買ったときのことです。子どもがおもちゃで遊んでいる横で、その絵本を私が一生懸命読みます。

しばらくすると子どもは「それ、何?」と近づいてきます。「今お父さんが読んでいるから、あとでね」ともったいぶります。「僕も読みたいよ」とせがんだところで、「じゃあ一緒に読もうか?」と自然に読書につなげることができます。

このように子どもの意志で英語に触れるように策を講じるのが、英語好きな子どもを育てるコツです。

幼児~小学1・2年生は自分の意志で選んだおもしろそうなことには夢中になります。文字を書いたり読んだりするのはまだ苦手なので、無理にワークブックに取り組ませるのはやめたほうがいいです。

絵本の読み聞かせを中心に据えながら、子どもが自分の意志で英語に触れるように「仕掛け」を張り巡らせてください。

小学3年生へのサポート

小学校の先生の間では常識である「小3の壁」があります。それまでは幼稚園の延長だった学習内容が、小学3年生から一気に「小学校の勉強」へとレベルアップすることを指します。

もし、小学2年生と3年生の国語の教科書を見比べる機会があったら、ぜひ確認してみてください。文字の量や語彙レベルなど「小3の壁」を実感できるはずです。

しかし、この時期から「英語学習も一気にレベルアップしたほうがいい」と考えるのは早計です。私の意見ですが、この年齢の子どもは英語教師泣かせなのです。

文法はまだ早い

「文法学習も少しずつ始めた方がいいのでは」と考えるお母さんもいるかもしれません。しかし、この年齢の子どもに文法アプローチで英語学習をするのはやめたほうがいいです。

なぜなら文法のような抽象的な概念を理解するには、まだ幼過ぎるからです。では、これまでと同じように絵本を中心にすすめられるかといえば、それも難しくなります。なぜなら、子どもが普段読むようになっている本のレベルに合わないからです。

そして小学1・2年生と決定的に異なるのは、英語を話すことに「恥ずかしさ」や「間違えたら嫌だ」という抵抗を感じ始めるようになることです。

文法アプローチには早すぎて、音の練習もこれまで通りに素直にしなくなるのがこの年齢の特徴です。では、この時期にお母さんが心がけるべきことについて説明します。

思わず口まねしたくなるように仕向ける

ここでもお母さんの「仕掛け」が威力を発揮します。子どもはゲーム好きです。人間の本能として「勝ち負け」がかかると夢中になるようです。だからスポーツは多くの人に愛されています。

英語学習にもこの本能を上手に活用しましょう。お母さんは、子どもの「よきライバル」になってください。英語学習において競争するのです。

私がこれに気がついたのにはきっかけがありました。文法の問題を息子に教えているときに、“The police ( was, were) investigating the case….” (警察は事件を捜査していた)でどちらかを選ぶ問題がありました。息子はwereを選びましたが、私は「wasじゃない?」と反論したのです。

正解はwereです。これはthe police は見た目が単数でも「複数扱い」するからです。peopleと同じです。恥ずかしながら、私は本気で間違えてしまいました。解答を見た息子は大喜びです。滅多に私は間違えないので、鬼の首を取ったような喜びようでした。

これをきっかけに息子はあまり乗り気でなかった文法問題に積極的に取り組むようになりました。きっと「お父さんを打ち負かしてやりたい」と思ったからです。

英語の苦手なお母さんは、この点非常に有利なのです。なぜなら子どもを喜ばせる回数が増えるからです。「上から教える」スタイルではなく、「共に競い合う」スタンスで子どもと向き合ってみましょう。

好きな映画の傾向を把握する

子どもの「好きなこと」「嫌いなこと」「苦手なこと」が少しずつはっきりしてくる時期です。ときどき家族で映画を観ることもあるでしょう。普段から子どもの映画の好みを把握しておくと英語学習に役立ちます。

たとえば、プリンセスが好きな女の子ならディズニー作品がおすすめです。「英語音声」で一緒に見てみましょう。吹替で最初に見ておけば「英語音声」に切り替えても、どのセリフの場面かは理解できるはずです。

映画で英語を学ぶときにはコツがあります。私が中学生の頃にしていたことです。

実は映画のリスニングは最上級に難しいです。いきなりこれを押しつけたら映画そのものを嫌いになってしまいます。そうではなくて、まずは「映画のタイトル」に注目させます。

美女と野獣なら“Beauty and the Beast” が原題です。これで単語を二つ覚えられます。しかも絶対に忘れません。タイトルは文字で画面に出るので、聴き取れなくても大丈夫です。

有名な俳優が出演している場合は、その名前を見つけるのもいいトレーニングです。音と綴りを合わせられるのでフォニックスの訓練になります。

映画のセリフに関しては、「決まり文句」は聴き取りやすいはずです。美女と野獣なら最初のナレーションに“Once upon a time”(むかしむかし)という昔話にお決まりの表現が使われています。

このように小学生でも読めたり聴き取れるところを少しずつ増やすことで、好きな映画と英語学習を上手に結び付けられるようになります。

歌に興味を持たせる

歌が好きな子どもなら、洋楽も試す価値ありです。これまでと同様に押しつけると子どもは嫌がります。私だったら、車に乗ったときは「お父さんが聞く英語の歌」としてあらかじめ用意しておきます。

ここで子ども向けに“Old MacDonald had a farm”のような歌を集めると、子どもは「これは自分に勉強させるためだ」と勘づきます。

お母さんが好きな歌を選んでください。子ども向けでなくても全然かまいません。例えば、「Best Day of My Life」 です。

お母さんはあらかじめ歌詞を調べておいて、一部だけでも歌えるよう練習しましょう。歌を聴きながら自分で歌うだけでいいのです。

子どもは「意味はわからないけれど、いい歌だな」と思えば、勝手に興味を持ちます。家に帰ってから歌詞付きのYouTube動画を見せて、子どもの気が向けば自分で練習しはじめます。

文字タイプか音タイプか

小学3年生になると、「文字に強く反応するタイプ」と「音に強く反応するタイプ」に分かれます。前者の場合は、簡単な英語の本にチャレンジさせたほうがいいです。ただし、このときも音読を忘れないようにしましょう。

音に強く反応するなら、映画や歌と結び付けながら英語を学ぶといいです。

「4技能(聞く・話す・読む・書く)バランスよく学ばせたい」と思うお母さんもいるかもしれません。今は英語にのめり込むきっかけの段階なので、好きなところから始めてうまく軌道に載せることに集中しましょう。いずれバランスよく学ぶので安心してください。

小学4~6年生へのサポート

小学4~6年生の期間は、本格的な英語学習を開始できるチャンスです。テストや受験といったプレッシャーから解放されている間に、英語学習を開始できるメリットは大きいです。

ではこの時期の子どもにお母さんとして何ができるのかを詳しく説明します。

テストのための英語から遠い「今」がチャンス!

以前、私に「英単語をなかなか覚えられない」と相談に来た中学生がいました。そこで普段、どんな覚え方をしているかを再現してもらいました。

「木曜日は、T(ティー)・h(エイチ)・u(ユー)…」とつぶやきながら、紙に書き始めました。そこで私はその単語を声に出して読むようにいうと、彼は「わかりません」と答えました。

私は「英語ってまず、読めることが大切なんだけど、そう思わない?」とたずねると、その中学生は「でも、テストでは答えを書ければ〇をもらえるから関係ないですよね?」と真顔で答えました。

私にとっては衝撃的な回答でした。それは「教科や受験科目としてしか英語をとらえていない」とわかったからです。

英語は本来「コミュニケーションの道具」です。現実に英語を使って生活している国があるのです。しかし先ほどの中学生にとって、英語とは「教科」や「受験科目」のためでしか存在していません。彼のような生徒は例外ではありません。

小学4~6年生から本格的に英語を始めるメリットは、コミュニケーションの道具として英語を考えるようになることです。まずは、このことをお母さんにも強く意識してほしいと思います。

資格取得に夢中になり過ぎない

小学5年生くらいになると「英検準2級」に合格する子どもがチラホラと登場します。英語学習の進捗状況をチェックするために英検を受けるのは大賛成です。その結果「英検〇級合格」の資格がもらえるなら喜ばしいことです。

しかし、英検合格を目的にしてお母さんが子どもにプレッシャーをかけるようなことはやめてください。せっかく、「コミュニケーションとしての英語」を意識できる時期なのに、わざわざ「テストのための英語」を子どもに植え付けているからです。

周りの子どもの「英検〇級」に惑わされずに、「本物の英語力」をつけさせてあげるように考えてあげましょう。

音読練習+文法で基本を固めよう

小学5・6年生になったら、短めの素材で音読練習することを習慣化しましょう。教材は通信講座でも何かのテキストでもかまいません。ネイティブによるナチュラルスピードの音声付きのものが適しています。

このとき必要に応じて基本的な文法を学習すると、飛躍的に英語力を伸ばせます。最初に充分口頭練習を積んだ後、文法で理解を深めることが大切です。文法を先に学習すると知識だけの英語となり、実際の場面で使えるようにはなりません。

英語の得意なお母さんでも、そろそろプロの手を借りたほうがいい段階です。音読の重要性を認識している先生を探しましょう。やはりどの年齢から始めても、言葉の学習に音声の訓練は欠かせないのです。

この動画セミナーではリスニングだけでなく、英語4技能全体を底上げする方法を紹介しています

興味のある分野に絞った英語素材を自然に与える

小学3・4年生の項目でも触れましたが、子どもの興味はより細分化し高度になります。好きなものに没頭する能力を英語にも応用しないのはもったいないです。

専門知識があれば多少わからない単語があっても、類推しながら読めるものです。私は小学5年生頃、天体に興味がありました。毎晩のように天体望遠鏡で星を眺めているうちに、主な星雲・星団のある場所はほとんど暗記していました。

あるとき大きい書店で“SKY & TELESCOPE” というアメリカの天体ファン向けの雑誌が置いてありました。英語はほとんど読めませんでしたが、いくつかの単語はかなり正確に意味を把握できました。

たとえば、focus(焦点), objective lens(対物レンズ), nebula(星雲)などの単語は図や写真を見れば、簡単に意味がわかりました。

このように大人顔負けの知識欲がある子ども(〇〇博士タイプ)なら、英語と掛け合わせると相乗効果を発揮します。大都市に出かける機会があるなら、洋書の雑誌コーナーで趣味に関する雑誌を買ってあげましょう。

小学生のうちに身につけさせたい5つのこと

中学生になる前に、英語に関して子どもに身につけさせたいことを3つにまとめました。不思議なことに中学校の英語の先生がこのような話を小学校の先生に伝えることはほとんどありません。同様に高校の先生も中学の先生にこのような話をする機会はありません。

中学校以降、子どもが英語を楽しみながら一生懸命勉強して成績もグングン伸びるように、参考にしてください。

「コミュニケーションの道具としての英語」を体験させる

大切なことなので繰り返します。英語は世界的に使用されている言語です。英語はコミュニケーションの道具以外の何物でもありません。

当たり前のことですが、受験のことばかり意識し続けると、いつの間にか試験のための英語としかとらえなくなります。そして受験が終わった瞬間に英語の学習をやめてしまいます。

これを防ぐためには、実際に英語を使って生活している人たちを見せたり、体験させたりするのが効果的です。具体的には、海外旅行に連れて行ったり、英語キャンプや短期留学に参加させたりすることです。費用的に難しければ、ホームステイを一時的に受け入れるのもいいでしょう。

「英語が通じた喜び」と「うまく伝えられなかったフラストレーション」は、今後の英語学習を続ける大きなモチベーションになります。

日本人が少ない環境に、日本の子どもは慣れていません。マイノリティの立場になっても堂々と振る舞うためには、やはりコミュニケーション手段が必要です。そのようなことを体験から学ばせるのはとても意義があります。

楽しく努力する

小学生時代にどうしても身につけたいスキルは「楽しく努力する」ことです。努力と我慢は異なります。「英語は楽しい→もっと上手になりたい→努力する→少し上手になった→うれしい」循環に入ればしめたものです。

これは英語に限った話ではありません。スポーツや他の習いごとでもいいのです。どれか一つの分野で「楽しく努力」できる子どもは、きっと必要になれば他の分野でもできるからです。

学校の成績や受験だけでなく、一生を通じてこの能力は大切です。ぜひ、その基礎を小学校時代に身につけるようにサポートしてあげましょう。

声に出して読む習慣をつける

英語学習において静かに黙々と勉強しているようでは成功できません。とにかく声に出して読むことが重要です。

それを体系化したものが「音読トレーニング」です。極論を言えば、「音読トレーニング」を日常的に行うだけで、中学・高校の英語は充分に乗り切れます。

英語教育に携わる者ならほとんどの人は理解していますが、時間がかかるために生徒に音読練習の仕方を細かく指導している学校はほとんどありません。それなら家庭でお母さんが中心となって「音読トレーニング」の環境を整えるしかありません。

中学生で木曜日の綴りをSarsdayと書いてしまう生徒は珍しくありません。Thursdayが正解です。普段からthの発音を意識して何度も音読していたら、ありえない綴りの間違いです。

自分のできる範囲で精一杯、音読する訓練を年単位で続けると、英語の力は確実についてきます。ぜひ、小学校の間にそれが身につくようにしてあげましょう。

まとめ

幼少期は音の学習の適齢期です。お母さんの英語をたくさん聞かせてあげましょう。具体的には英語絵本の読み聞かせがおすすめの方法です。

小学3年生では興味や趣味に即した英語を与えると、自分から英語を学ぶようになります。文法学習はまだ早いので、あわてて取り組ませても効果的とはいえません。

小学校4~6年生からは本格的な英語学習を開始できます。受験まではまだ時間がたっぷりあるこの時期に、「コミュニケーションの道具」としての英語を強く意識させてあげましょう。

どの年齢層でも共通しているのは、「楽しく努力する」のが最も効率的な学習方法であることです。また、英語学習の基本は「音声」なので、年齢に即した方法で英語を音読すると中学生以降で英語力は飛躍的に伸びるようになります。

英語を教えるのは教師の仕事ですが、お母さんの子どもへの接し方は教師以上に影響力は大きいともいえます。ぜひ、子どもの特徴を正しく理解して、子どもみずから英語を学びたくなるような環境づくりをサポートしてあげましょう。

 

小学生の英語学習の始め方:最強自宅学習プラン

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2020年度から小学3年生からの英語が必修となりました。小学5年生からは英語の成績もつけられます。このような状況の中、「ウチの子も早めに準備しなくては」と考えるお母さんも多いかと思います。

しかし、子どものうちからあまり勉強に縛りつけるのもよくないし、他に習い事をしていると教室に通うのもなかなか大変です。

そこでまずは自宅で子どもに英語を学習させてみようと考える家庭が増えつつあるように感じます。「いつから始めたらいいのか」「何をさせたらいいのか」について悩んでいるお母さんも多いはずです。

そこで今回は、小学生~高校生まで指導経験のある私がオススメする、小学生からの英語学習の始め方について説明します。主に自宅で英語学習に取り組ませたいと考えているお母さんのために、大切な考え方や具体的な方法についてアドバイスします。

英語のゴールをどこに定めるかがポイント

まずは親子で英語のゴールがどこなのかについて話し合いましょう。一般的に英語を使って仕事をするためには、次の基準が目安になります。

社会人になる前に(20~21歳)、英検準1級レベル、TOEIC750~860点を取得

一般的な基準よりも高めですが、私の印象ではこれくらいに達していないと、英語を使った仕事は難しいと感じます。

「英語は必要になってから学べばよい」と考える人もいます。しかし、社会人になると忙しすぎて英語学習に思ったように時間を割けません。時間的余裕のあるうちに英語をマスターしたほうがよいです。

また、英語をある程度身につけておくことで、仕事の選択肢を広げたり、給与水準の高い仕事を選べることもあります。学生のうちにやれることは済ませておきましょう。

中学・高校の英語の授業を活用しながら、目標に向かって実力を積み上げていくのが最も賢いやり方です。

ゴールから逆算すると、小学校5年生あたりから始めると余裕をもってすすめられます。それより早くても構いませんが、文法については理解することができずに効率が悪くなります(発音などは早めのほうがいいです)。

小学生の英語自宅学習で最も大切なことは、子どもに「英語学習の正しい型」を身につけさせることです。正しい型とは主に「音読習慣を身につけること」です。具体的な内容について詳述します。

小学生のうちに自宅で英語学習の正しい型を

中学生に英語を指導していて、私はもどかしく感じることがあります。それは彼らが英語の音読にとても消極的なことです。

例えば、日本語を勉強している外国人が日本語を声に出さずに問題集だけに取り組んでいたら、どのように感じますか。「それでは使えるようにならない」と思うことでしょう。でも、英語を学ぶほとんどの中学生は音読に消極的なのが実態です。

「英語を声に出す」ことは、英語学習の基本です。しかし、彼らは黙々と問題集を解くだけでほとんど声に出して英文を読もうとはしません。恥ずかしいのか、間違えるのが怖いのか、理由ははっきりしませんが、とにかく声に出しません。

根気よく指導して半年くらいすると一部の生徒が積極的に声を出すようになります。しかし、多くの生徒は沈黙したままです。

小学生から英語を始める最大の価値は、英語を声に出す習慣をつけさせやすいことです。家庭で英語を学ばせるときはぜひ音読を取り入れるようにしましょう。中学生では遅すぎます。

自宅で身につけさせたい!英語音読の習慣

音読といっても本格的な音読のトレーニングのことではありません。英文を見たときに、声に出して読んでみるだけでよいのです。

英語を学ぶときは教材を使用します。そこには例文がたくさん載っています。そして多くの場合、CDやダウンロードできる音源が付属しています。これらを利用して、英文をまめに声に出して読み上げるだけで充分です。

注意して欲しいのは、カタカナ読みではダメです。【f】【v】【θ】【ð】【l】【r】など日本人が苦手とする発音に気をつけながら、CDのマネをして子どもに音読させるようにしましょう。

発音指導が苦手なお母さんは、動画サイトなどを利用して子どもと一緒に練習するようにしましょう。英文を見たら即ブツブツ声に出すくらいの状態にまで習慣化させれば成功です。

反対に、沈黙したままワークブックをこなしていたら、一緒に声に出して英語を音読するなどのサポートが必要です。次に、小学生のうちに攻略しておいたほうがよい英文法について説明します。

小学生の英語はbe動詞と一般動詞の現在形に時間をかけよう

英文法に関しては小学5年生から始めるとちょうどよいです。抽象的な概念を理解し始める年齢なので効率がいいです。ただし、文法用語だらけの教材で中学生と同じような学習を無理にさせると英語嫌いになってしまうので注意が必要です。

また子どもの成長に合わせて始めないと、混乱してしまいます。国語の返却されたテストを見て、主語・述語などの文法問題がある程度正解しているようなら大丈夫です。もし、充分に理解していないようなら英語の学習には早すぎます。

あせって「小学生のうちに英検3級を!」のような高すぎる目標も私は不要だと考えています。英語学習が順調に進み、結果的に3級を取得できたなら何も問題ありません。資格取得ばかりにとらわれるのはやめましょう。

私が小学生を指導するときに重要視しているのは、「be動詞と一般動詞の現在形」です。もう少し詳しく説明すると、肯定文・否定文・疑問文(疑問詞も含む)をすぐに口から出せる状態にまで慣れさせる、ということです。

理由は、「be動詞と一般動詞の現在形」が完全に理解できると、それ以降の文法の学習が飛躍的に効率がよくなります。

たとえば、助動詞canを習うとき、一般動詞のdoのパターンがとても役に立ちます。

You speak English.  You don’t speak English.  Do you speak English?
You can speak English.  You cannot speak English.  Can you speak English?

doの代わりにcanを置けば、理解しやすいです。

現在進行形の文の構造はbe動詞の文そのものです。

She is beautiful.  She isn’t beautiful.  Is she beautiful?
She is running.  She isn’t running.  Is she running?

個人的には「be動詞と一般動詞の現在形」は、それ以降の項目の3倍は時間をかける価値があると思っています。

しかし、中学校の指導計画ではその他の項目と同じ時間を配分されているため、理解が不十分でもそのまま進んでしまいます。疑問詞(What, How manyなど)を絡めて、疑問文などをスラスラと作れるようになるまで慣れておくと、必ず英語は伸びます。

英語が苦手になる生徒の多くは、この「be動詞と一般動詞の現在形」の理解と運用が不十分だからです。英語が苦手な生徒のできない原因は、音読の軽視と基本文法の理解と練習不足です。

小学生から英語を学ぶならこの分野を徹底的に攻略することが、後で英語の成績が急上昇することにつながります。

おすすめ教材

英語と日本語の大きな違いのひとつは、語順の重要性です。英語は語順が意味を決定するうえでとても大切な要素です。

日本語は「て・に・を・は」などの助詞が言葉の役割を決めているので、語順に比較的寛容です。しかし、英語は語順が入れ替わると意味がまったく異なります。

例えば、The dog bit the man.(犬が男にかみついた)と The man bit the dog.(男が犬にかみついた)では意味が変わってしまいます。

この語順を強く意識して「be動詞と一般動詞の現在形」を中心に学べる教材は、Jリサーチ出版『「意味順」だからできる!小学生のための英文法ドリル』です。

このドリルは1「be動詞マスター」と2「一般動詞マスター」に分かれています。1テーマで1冊なので、初めて英語を学ぶ小学生にはすぐに一冊を仕上げられて達成感が味わえます。

このテキストの最大の特徴は、「意味順」ボックスと呼ばれる色分けされた解答欄が用意されているところです。英語の文型が身につくように、主語は赤、動詞は青、目的語は緑とわかりやすく表示されているので、子どもは迷わずに英文を作ることができます。

解答欄は4線が引いてあって、英語を書き慣れない子どもでも、大文字や小文字の高さに注意しながら書けるように配慮されています。

一方、使いにくいところもあります。ダウンロードする形式の音声がありますが、読まれるスピードが遅すぎます。1.5倍速再生で聴いてちょうどいいくらいです。

高学年が使うときは、親がある程度補足しなければいけません。たとえば、冠詞(a, an, the)についての詳しい説明がないため、テキストとは別に説明してあげる必要があります。人称代名詞の所有格(my, yourなど)も説明がないのが残念です。

単語に読みやすいようにカタカナが振ってあるのもマイナスポイントです。子どもはこれを見て発音してしまうので、カタカナを読まないように指導する必要があります。

小学生向けの英語テキストは、最近ようやく本腰を入れて出版されています。ときどき書店をチェックして評判のよさそうなものを確かめておくようにしましょう。

テストに縛られない小学生の時期は英語学習にとても大切

中学校になると定期考査があります。英語の試験は試験範囲が決められていて、その中から出題されます。私の考えでは、試験範囲が限定されていることが、生徒の英語の成長を阻害しています。

本質を理解して英語を音読しながら慣れていって、ある時点で試験を受けるなら何も問題ありません。しかし、実際には直前に要領よく日本語訳を丸暗記して適当にごまかそうとする勉強を繰り返す生徒が多いのです。

ある程度広い範囲を学んだあと、どこが出るかわからない形式で出題するなら、生徒も小手先の勉強が通じないとわかるはずです。しかし、実際には試験範囲だけ単語の意味を暗記したりする適当な勉強法でも多少の点数が取れてしまいます。

中学校で英語の成績が伸びる子は、定期テストの範囲などにとらわれず常に先の目標に意識を向けています。過去に習ったことも忘れないように、言われなくても復習します。そのような学習姿勢が英語の実力に結びつきます。

小学校では定期テストがありません。小手先の勉強をする必要がないため、英語の基本に腰を据えて取り組めます。この時期を有効に利用して、その後の英文法の基礎となる「be動詞と一般動詞の現在形」をマスターするようにしましょう。

これが英語が得意な子どもにするためのコツです。

まとめ

小学校での英語教育が本格化し「家庭で子どもに英語を学ばせたい」と考えるお母さんは多いはずです。始める時期とどのように家庭で指導したらよいのか、に悩みます。

私は目安として小学5年生からが、家庭で英語を学び始めるのによいと感じます。抽象的な概念の理解力が高くなり、英文法の基本を効率的に学べるからです。

小学生のうちに絶対に身につけておきたいのは、英語を積極的に音読する習慣です。中学生になると多くの生徒は英語を声に出すことを嫌がります。声に出すことは言語学習の要なので、小学生のうちに音読を習慣化させましょう。

文法に関しては、「be動詞と一般動詞の現在形」の学習に力を入れましょう。頭で理解できているだけではダメです。肯定文・否定文・疑問文がすぐに口をついて出てくるレベルまで何度も練習することが大切です。

「be動詞と一般動詞の現在形」はその後の英文法の基礎となります。ここをしっかりとマスターしておくと、助動詞・進行形・過去形などを学ぶときでもあっという間に習得できます。

中学校では定期試験があり、直前の対策だけで乗り切ろうとする生徒がかなりいます。これを繰り返してもまったく実力がつかず、気がついたときには手遅れです。

試験がない小学校での英語学習時間はとても貴重です。あせらずに「be動詞と一般動詞の現在形」を音読しながら、家庭で取り組ませましょう。

子どものオンライン英会話:成果・効果を上げる復習方法

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子どもの英語力向上のためにオンライン英会話を始めたけれど、思ったほど成果を感じずマンネリ化していませんか。毎回単調なレッスンで、子どもが何を習ったかすぐに忘れてしまうような状況なら対応策を考えなければいけません。

まず、英会話の向上のためにどのようなトレーニングが必要なのかをお母さんが理解する必要があります。そして、レッスン後の「復習」を充実させ、「よし、今度はもっと上手に話してみよう」という気持ちで子どもにレッスンを受けさせることが大切です。

またあまり使われていないオンライン英会話の「リクエスト機能」を最大限に活用して、より自分の子どもに合わせたレッスンを受けられるようにすることも大切です。

そこで、今回は子どものオンライン英会話の効果・成果を高めるためのコツについて具体的に解説します。

オンライン英会話が子どもの英会話に効果的な理由

英会話の上達にはインプットとアウトプットの両方が必要です。単語・文法の知識を頭にストック(=インプット)して、それらの知識を使って話してみる(=アウトプット)ことでしか英会話の上達方法はありません。

インプットとアウトプットを50:50の比率で行うと理想的な英会話のトレーニングになります。しかし、日本で暮らす大多数の人は英語を使う機会がほとんどないためアウトプットが圧倒的に不足しています。

さらに、インプットの量も充分ではありません。毎日単語や文法を学習したり、英文を何度も音読して暗唱している人は受験生以外、ほとんどいないのが現状です。

そこでオンライン英会話を活用してアウトプットの時間を確保します。そして、レッスンのない日はインプットに集中します。インプットをしておくと意識が高まり、レッスンを能動的に受けられるようになるメリットもあります。

ここではインプットとアウトプットを繰り返しながら英会話が上達する様子を詳しく説明します。

英会話上達のしくみ

「日本語を覚えたときのように、英語も苦労しないで覚えたい」という気持ちはよくわかりますが、現実には不可能です。日本語が母国語として定着した小学生以上の子どもは、日本語をベースにしながら英語を学ぶしか方法はありません。

しかし、悲観する必要はまったくありません。9歳になると少しずつ論理的な思考力が発達してくるので、「文法」を最大限に活用しながら英語を効率的に学べるようになります。

言葉は学習範囲が広くすぐには効果が表れにくいため、努力が報われないように感じますがそんなことはありません。長期間継続すれば必ず英会話は上達します。ここで、インプットとアウトプットを繰り返しながら英会話を上達させる過程を確認してみましょう。

仮に“I want to do ~.”(私は~したい)という表現をマスターする過程を確認してみます。まず、「~したい」と表現したいのに、言えずにフラストレーションが溜まる経験をします。実際に言葉は発していませんが、アウトプットしようとして気づいたのです。

次に、先生に聞いたり辞書で調べたりして“want to do ~”という表現を知ります(インプット)。そして、“I want to play tennis.”(私はテニスをしたい)とか“I want to go to Disneyland.”(私はディズニーランドに行きたい)という英文を暗唱します(インプット)。

その後、会話をする機会に覚えたフレーズを利用してみます。例えば夏休みの思い出を話しているときに「僕は釣りに行きたかったけれど、お父さんはゴルフをしたかった」と表現しようとします。

そして、“I want to go fishing, but my father want to play golf.”と言ったとします(アウトプット)。これを聞いた先生から、「過去のことだから、wantはwantedに直してみよう」とアドバイスをもらいます。

このとき初めて動詞には過去形があることを学び、-edを動詞につけることを理解します(インプット)。そして次回から「いつものことを話すときはwantで、過去のことを話すときはwantedにしよう」と覚えます。

このように、たった一つの表現でさえもインプットとアウトプットを何度も繰り返しながら少しずつ学んでいくのが普通です。だから、英会話を本気で上達させたければインプットとアウトプットを毎日繰り返すしかありません。

アウトプットの機会確保のためにオンライン英会話が効果的

インプットは本があれば自分でもある程度はできます。アウトプット(話す)訓練も大人であれば英語でひとり言をブツブツいいながら練習することは可能です。しかし、子どもの場合はなかなかそこまで器用にできないので、会話をする相手が必要になります。

そこで活用できるのがオンライン英会話です。安い月謝で週に複数回のレッスンを受けられるので、英語でのアウトプットを習慣化するにはもってこいのシステムです。

もちろんこれまでみてきたように、頭の中のストック(英語の知識)が足りないと、口から英語はほとんど出てきません。だから、オンライン英会話でのアウトプットを増やすと同時に、レッスンのない日のインプット(単語・文法学習)がとても大切になってきます。

オンライン英会話のない日は、復習とインプットに集中

週3回のレッスン(各25分)でアウトプットの機会を確保した場合、残りの4日間はインプットに専念しましょう。このインプットの質と量で、英会話の流暢性が決定します。

復習には紙を使った学習が最適です。子ども向けのオンライン英会話では、無料の独自教材と市販の推奨教材が使えるようになっています。独自教材の場合はPDFなどをダウンロードできるようになっているので、プリントアウトしておくとよいでしょう。

レッスンを受けたら、その時に習った部分をテキストで確認します。音声と文字を結びつける学習はとても大切です。リーディング力は英語力の基本となります。また、オンライン英会話ではライティングが弱点なので、鉛筆で書きこむだけでその弱点を補えます。

では、もう少し具体的にどのような復習をすると英会話力が向上するのかを説明します。

英文法の知識を確実にする

その日に習った部分が「Is this ~?」(これは~ですか)なら、主語と動詞の順番が入れ替わっていることをテキストを見ながら確認します。

私はかつて英語教師でしたが、音声のほうが理解力が上がる生徒と文字で確認したほうが理解できる生徒の2タイプいることに気づきました。そのため、レッスンで同じことを説明されても文字や図をみながら確認したほうがより定着しやすくなるので、文字による復習はとても効果的です。

意味がわからないところがあれば、次回のレッスンで質問をしてみるとか、お母さんから教えてあげるようにしましょう。

話すときは文法を意識しすぎると流暢性が損なわれることがありますが、復習のときは英文法の細部の理解に努めます。ここをいい加減にすると、いつまでたっても英会話は上達しません。

知らなかった英単語を覚える

小学生は知っている単語数が不足しているので、知らない単語ばかりかもしれません。語彙力の向上は表現力の向上と直結しているので、積極的に覚えるようにしましょう。

単語については、まず発音が大切です。意味を調べて発音はいい加減に覚えては、英語は上達しません。意味を調べる前に発音とアクセントを調べます。

主要な単語なら、電子辞書で調べると音声が再生されるので、それを聴きながら自分の口でもマネをしてみます。特にカタカナ化されている単語は注意が必要です。日本語に引きずられてしまい誤った発音やアクセントをしてしまいがちです。

例えば、plastic(プラスチック)を覚えるとき、「ラ」の部分が【l】と【r】のどちらなのかを正確に発音するようにしないと、あとで混乱することになります。

小学生の子どもにとって大きな山となるのが、基本的な動詞です。一見簡単そうに見えますが、多用されるのでいろいろな意味や文脈に使用され、意味の範囲が広いものが多いので使いこなすのは大変です。

例えば、haveの基本の意味は「を持つ」です。しかし、“I have a dinner at 7:00.”のhaveは「食べる」という意味です。このように文脈によって意味が変化する基本動詞は英語初心者の子どもにとってやっかいな存在です。

これらの単語については多くの用例に触れながら語感を養うしかありません。

テキストの英文を暗唱する

テキストにはターゲットとなる基本文が書いてあります。ここまでの学習で、文法と単語を完全に理解していれば、基本文の内容も正確にわかるはずです。横に日本語の訳を書いておきましょう。準備ができたら、この英文を音読しながら英文を暗唱します。

  • 手順
  • 英文を集中して3回音読します。今度は、テキストから目を話して同じ英文を声に出して言ってみます。
  • 時間を空けて日本語訳を見ながら、英文を音読します。このとき、途中でわからなくなったら、もう一度最初から繰り返します。
  • スラスラ言えるまで繰り返す。

英文の暗唱は、すき間時間に取り組むと効果的です。思わずテレビをつけたくなる直前とか、風呂上がりの時間などの短時間を利用して集中して取り組むと覚えられるようになります。また、どこかに出かけるときもその部分のコピーやメモを持ち歩き暗唱するようにします。

能動的にレッスンを受けてみる

オンライン英会話で成果を上げるために最も大切なのは、「レッスンを能動的に受ける」ことです。毎回何も準備せずに何となくレッスンを受けても、英会話は上達しません。

そこでオンライン英会話でもっと効果を上げるために必要なコツをいくつか紹介します。

  • 今日の出来事を英語にしてみる

オンライン英会話の冒頭では、挨拶とちょっとしたフリーカンバセーション(自由会話)のやり取りがあります。

オンライン英会話がマンネリ化してくると、子どもは最低限の言葉だけでやり過ごしてしまい、講師が話しづらい状況を作り出してしまいます。

挨拶は毎回“How are you?”と質問されるので、“Fine, thank you.” だけで終わりにせず、“I’m good.”(調子いいです)など他の答え方も覚えておきましょう。気分に合わせて答えられるように下の表現を目の前の壁に貼っておくのもいいアイデアです。

I’m good.
I’m okay.
I’m excellent.

さらに、これだけで終わりにしないで1センテンスを追加するように心がけましょう。その場合は、but(しかし)かbecause(なぜならば)でつなぐとスムーズです。相手にできるだけ情報を伝えたほうが会話は弾むので毎回話す内容を決めておきましょう。

例えば、“I’m okay, but I have a lot of homework today.” と返事をすると、オンライン英会話の講師は必ず宿題のことについて反応するはずです。

“I’m excellent, because my father gave me a PS4.” と返事をすれば、講師は「へえ、何かゲームソフトは買ったの?」と質問を続けます。これらの質問にも答えられるように、あらかじめ準備をしてメモを取っておくと、会話はスムーズに進行します。

  • 伝えたいのに表現できない部分をメモする

オンライン英会話はパソコンやタブレットに向かってレッスンを受けています。でも、私の子どもが受けるときは必ず横にノートと鉛筆を用意させます。これはレッスン中に言えなかったことや、印象に残った先生のフレーズや注意点を書き残すためです。

レッスン後は必ずこのメモを見て、フレーズを覚えたり知らない単語を覚えたりするようにします。ノートには先述したフリーカンバセーションのネタをメモしておくのもいいです。

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オンライン英会話のレッスン予約欄にお母さんがリクエストをする

レッスンを能動的に受けるために活用したいのが、リクエスト欄です。レッスン予約をするときに細かい要望をメニューから選べたり、書き込めたりします。よくあるレッスンリクエストとしては、次のようなものです。

  • 日本語を使用して欲しい:学習初期の子どもでも戸惑わずにレッスンを受けられる
  • 発音指導をして欲しい:日本人が苦手な発音を中心に丁寧に指導してもらえる
  • センテンスを正して欲しい:自分の英語の間違いを指摘してもらい正確性を高める

またオンライン英会話によっては、もっと細かいリクエストを送ることも可能です。例えばあらかじめ英検5級の問題集をスキャンしておき、そのファイルを添付します。

コメント欄に「(1)~(10)までの問題に取り組ませてください(日本語可能)」と入れておくと、講師はそのリクエスト通りにレッスンを進めてくれます。

細かい要望をすることについて遠慮する必要はありません。教える講師の立場からすれば、細かく指定されたほうがレッスンの目標がハッキリするのでかえってやりやすくなります。子どもも明確な目的意識をもってレッスンを受けるので英会話の向上が早くなります。

このようにお母さんがひと手間かけるだけで、子どもは前向きに・能動的にオンライン英会話のレッスンを受けられるようになります。この機能を十分に活用して、ダラダラとレッスンを受けることのないようにしましょう。

まとめ

英語は積み重ね型の教科です。基礎レベルから少しずつ理解を固めて、より高度なものへと伸ばしていくことが大切です。

英会話では文法や単語などの知識をインプットして、会話の中で使ってみる(アウトプット)ことを繰り返しながら、少しずつ向上させていくのが定石です。そのためには、オンライン英会話のレッスンを受けたら復習を充実させることが大切です。

また、レッスン前に今日話すネタを決めておき、講師にうまく伝えてみようという気持ちが大切です。さらに、お母さんから子どもに必要とするレッスンの要望を細かくリクエストすると、子どもが最も必要とする内容に特化されるのでマンネリ化を避けられます。

英語学習は長期間に渡るものなので、工夫をして子どもの学習意欲を刺激しながら継続することが理想です。毎回「今度こそうまく伝えてみる!」という気持ちで子どもがレッスンを受けられるように、サポートしてあげましょう。

試合(会話)ばかりでは英語は上達しません。英語のトレーニングはこの方法がオススメです!

子どもを英語バカにしないために

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グローバル教育の一環として英語の重要性が高まる一方で、小学生には国語教育こそが大切であるという人達もいます。どちらの主張にも一理あり、白黒つけられるものではありません。

これから子どもの英語教育を検討中のお母さんとしては、どちらの説を信じたらいいのか悩むところでしょう。

実は元英語教師の私ですら、「子どもの英語教育は正しいのかどうか」と悩んだ時期がありました。子どもの人生に関わることなので、気軽に試すわけにもいきません。

ひとつだけハッキリわかっていたのは、「親が自信を持って大切だと思っていないことを子どもにやらせてはいけない」ことでした。そのため本格的に子どもの英語教育を始める前に、私(親)の方針を決めなければなりませんでした。

結果として、私は子どもの頃から英語教育を始めるほうを選びました。ネガティブな意見も参考にしつつ、どのように子どもに英語と向き合わせればいいのかを常に考えてきたつもりです。

今回は、子どもの頃から英語を勉強させると「英語バカ」になるという説は本当なのかどうかを検証してみます。英語バカとは「英語は話すけれども中身のない人」のことです。

「英語を話せて中身も充実した大人」に子どもを育てるために、お母さんが知るべきことをまとめました。最後まで読んでいただければ、安心して子どもの英語教育に取り組めるようになります。

子どもの英語教育に否定的な2大著書

私は英語教育関連の記事を必ず読むようにしています。投稿されたコメントの多くは子どもの英語教育に対してネガティブな意見です。注意すると「英語よりも国語教育を」「日本人で英語を必要とする人は1割」という共通のフレーズに気づきます。

おそらくこれらの出どころは、『国家の品格』(藤原正彦)と『日本人の9割に英語はいらない』(成毛眞)の2冊です。

出版当時、両方とも私は読みました。賛同できる部分があったのは確かです。しかし、何か「腑に落ちない」部分もあり、それが何だったのかをきちんと考え直してみます。

『国家の品格』藤原正彦

英語教育について語られているのは一部分です。そこだけ要約すると「小学生のうちは英語よりも国語や数学をしっかりと学びなさい」という主張です。

理由は、教養を深める手段として読書はとても大切なものだからです。そして数学は論理的な思考の訓練になるからです。時間の限られた小学生にとって英語学習はこれらの学習よりも優先されるべきではないという趣旨です。

内容の薄い英語を話す人に対して強烈に批判している部分を引用します。

ケンブリッジ大学で研究生活を送っていたときのことです。数学のノーベル賞と言われるフィールズ賞を取ったある大教授と会って、自己紹介をしました。すると、挨拶もそこそこに、その大教授はこう訊いてきました。

「夏目漱石の『こころ』の中の先生の自殺と、三島由紀夫の自殺とは何か関係があるのか」

(中略)

内容がないのに英語だけは上手いという人間は、日本のイメージを傷つけ、深い内容を持ちながら英語は話せないという大勢の日本人を、無邪気ながら冒涜しているのです。「内容ナシ英語ペラペラ」は海外では黙っていて欲しいくらいです。

初頭教育で、英語についやす時間はありません。とにかく国語です。一生懸命本を読ませ、日本の歴史や伝統文化を教え込む。活字文化を復活させ、読書文化を復活させる。それにより内容を作る。遠回りでも、これが国際人をつくるための最もよい方法です。

「真の国際人になるためには自国の歴史や文化を尊重し、読書を通じて教養を身につけなさい」というのが著者の主張です。

私も外国の人と話す機会はたくさんありました。しかし、夏目漱石や三島由紀夫について質問されたことはなく、「エリートの世界は違うな」と驚いた記憶があります。

『日本人の9割に英語はいらない』成毛眞

この本で一貫しているのは「英語学習とは暗記なので、教養を深めることにはならない」という主張です。そして論拠を示しながら、仕事で英語を必要とする日本人は1割に過ぎず、残りの9割には無用であると指摘しています。

著者は楽天やファーストリテイリングでの社内英語公用語への批判を展開します。その部分を引用します。

20代・30代は仕事で覚えなければならないことが山ほどあるのに、英語の勉強に時間を取られたら肝心の仕事に集中できない。仕事の段取り、社内や社外の調整、自社の商品やサービスに関する情報、市場の動向、販売やPRの戦略やテクニック、企画の作成など、この時期に身につけられなかったら、生涯仕事ができないビジネスマンのまま終わってしまう。ビジネスマンとして、基礎体力をつけなければならない時期に英語にかじりついている暇はないのである。

私はこれを読んだとき、「学生時代までに英語をある程度のレベルにまで仕上げておき、入社後は仕事のスキルを磨くことに集中するのが最良の策」と感じました。

この本で述べられているポイントを整理します。

・英語は暗記科目で教養は身につかない。日本語で読書をしたほうが効率的。
・英語を必要とする日本人は1割だけだから、全員が同じように学ぶ必要はない。
・専門分野を磨き、必要となってから手段としての英語を学べばよい。

高校までの進学率は97%を超えていますが、高校での学習内容を仕事に必要としている人は1割程度でしょう。英語だけに限定された話ではありません。

2冊の本に共通していること

『国家の品格』と『日本人の9割に英語はいらない』に共通しているポイントがあります。

・英語だけを勉強しても教養は身につかないから、中身のない人間になってしまう。

きちんと本を読めばわかりますが、両者とも「英語不要」とは主張していません。他の大切なもの(国語・自国の歴史や文化など)に英語は優先するものではないといっています。

世界的な数学者とグローバル企業で社長を務めた2人の著者の影響力は大きいです。彼らの経歴とメッセージのギャップが読者に強烈なインパクトを与えたのはたしかです。しかし、私はこの主張をそのまま受け入れられませんでした。以下、その理由を説明します。

英語を学んでも教養は身につかない?

論点は「英語を学んだら教養は身につくのか、つかないのか」です。私は英語力の高い人たちと交流する機会が何度もありました。彼らに対して少なくとも「教養がない」と感じたことはありませんでした。

世界的な数学者や大企業の社長からみれば、そんな判断をしている私も無教養な人間であると思われても仕方ありません。しかし一般的なレベルで考えると、「英語を学んでも教養は身につかない」という主張には納得できないのです。

技能+教養=英語力

私はこの問題を考えているうちに、2人の著者と私の間で「英語力」の認識が異なるのではないかと思いました。「中身のない英語」とか「英語は暗記科目」の部分から、彼らのいう「英語学習」とは「英語の技能訓練」だけを指していることがはっきりとわかります。

一方、私が認識している「英語学習」とは「技能」はもちろん、「教養」も含めての総合的な学習です。私が2冊の本で覚えた強い違和感は、この認識の違いから発生するものであることがわかりました。

漢字検定1級は教養があるのか?

まず、英語学習は決して技能訓練だけではないことを証明しなければなりません。イメージしやすくするために、日本語(国語)に置き換えて考えてみます。

例えば、国語の技能的要素に「漢字」の素養があります。漢字検定1級の問題集を開くと、私にはほとんど書けない・読めない漢字ばかりです。しかし、私は日本語の本を日常的に読み、こうして英語教育関連の記事を書いています。

もし、漢字検定1級の人が本も読まず、内容のある文章を書けなかったとしたら周囲の人はどのように感じるでしょうか? おそらく「ただの漢字バカ」として嘲笑するでしょう。

「英語ばかりを勉強していても教養は身につかない」主張は「漢字ばかり勉強していても教養は身につかない」ということと似ています。

では、「英語学習」における「技能」と「教養」はどのような関係になっているのかを見てみましょう。

技能と教養の関係は?

先ほどの日本語の例をもう一度考えてみましょう。難しい漢字を書けたり読めたりすることはマイナスでしょうか? ほとんどの人は「知っていたほうがいい」と答えるでしょう。高度な漢字の読み書きを覚えると、高度なレベルな読書が可能となるからです。

英語学習の技能訓練とは語彙増強、文法学習、4技能(聞く・読む・話す・書く)の訓練を指します。英語の語彙や文法の知識を増やせば、より正確に英語を理解できます。

英語の技能訓練は「天体望遠鏡のレンズを磨くこと」に似ています。収差の少ない大型のレンズを磨ければ、遠くの宇宙をより明るく細かく観察できます。

土星を望遠鏡で初めて観察したのはガリレオといわれています。記録の中でガリレオは「土星には耳がある」と表現しています。当時は望遠鏡の性能が低く、輪として見えなかったからです。

望遠鏡はその後改良されて耳のように見えたものは輪であることがわかります。人間の宇宙への好奇心が望遠鏡の精度を上げ、高性能の望遠鏡で見えたものにさらに探求心が駆り立てられる好循環が生まれて、天文学は発達していきます。

英語の技能を磨くことは、高性能なレンズの製造と同じです。レンズを使って遠くの世界を観察するのは、英語を通して触れる外国の書物や文化を学ぶことに似ています。

私が英語力と呼ぶものは、決して技能だけに限定したものではありません。その技能を駆使して得られる「教養」も含まれます。より詳しい情報がわかるにつれて、さらなる好奇心を満たそうと性能のよいレンズが必要となります。つまり「高い技能」が必要です。

こうして「技能訓練→精度の高い情報→(好奇心)→さらなる技能訓練」の上昇スパイラルが生まれていきます。

英語と教養

日本語先行・英語先行・同時並行でも教養は磨ける

日本人として国語力を磨いて、教養を深めようとすることに異論の余地はありません。しかし、英語でも教養を深めることは充分に可能です。英語力とはまさに「技能と教養」の総合力です。

私は小さい頃恐竜が好きで図書館で図鑑を借りていました。小学2年生で「白亜紀」「ジュラ紀」「三畳紀」という恐竜が栄えた時代の呼称を学びました。だから、映画「ジュラシックパーク」のタイトルを観たときは「Jurassic=ジュラ紀」であることはすぐにわかりました。

私の息子は海外のインターナショナルスクールでYear2~5まで学びました。Year3(日本の2年生相当)のときにちょうど学校で恐竜について学習したときに、「the Cretaceous period」「the Jurassic period」「the Triassic period」の言葉を覚えました。

私はどちらの言葉で先に学んでも、教養に差はないと考えます。息子も日本語の本を読んだときに、「三畳紀」を見れば「ああTriassicのことか」とすぐにわかるはずです。

確かに英語の場合は技能を身につけてからでないと、情報収集のレベルにまで到達しませんから、手間が一つ増えます。しかし、あるレベルを超えてしまえば、英語・日本語の同時並行で教養は磨けます。

英語で学ぶか日本語で学ぶかは、究極のところどちらでもかまいません。それよりも、子どもの「好奇心」こそが決定的な差を生みます。

技能の先で差がつく要素は「夢中になれる力・好奇心・成長願望」

英語でも日本語でも技能を身につけた後、それを活用して「どれだけの読書をしたか」とか「どれだけの経験を積んだか」は非常に大切です。その原動力になるものは、「夢中になれる力・好奇心・成長願望」です。

小学生で英検2級に合格する子どもは珍しくはありません。この時点では技術は身につけています。しかし、これを活用して積極的に英語の本を読まず、外国の人と関わろうとしなかったら「英語バカ」と呼ばれる可能性が高いです。

それは、「知らないことを知りたい」「この人はどういう考えを持った人なんだろう」と考える好奇心が欠けているからです。反対に好奇心旺盛な子どもなら、英語という道具を手に入れたら、積極的に本を読んだり映画を観たり外国人と会話したりしようとするはずです。

残念ながら好奇心の度合いや教養部分まで含めた英語力を測るテストや検定はありません。しかし、英語を学ぶ意味があるかどうかはこの部分にかかっているといっても過言ではありません。

技能テストである「英検〇級」だけでなく、子どもが知的好奇心を持っているかどうかをきちんと評価できるのは身近にいるお母さんやお父さんだと思います。

教養力は読書量と行動力に比例する

読書ほど効率のよい学習はありません。その分野の専門家やプロの小説家が労力をかけて書いた作品を数時間で読めてしまうからです。ビジネス書はおよそ1500円くらいなので、コストパフォーマンスも抜群に高いといえます。

私の妻は英語が得意ではありません。海外生活を始めた頃は、インターナショナルスクールに通う息子のことは私任せでした。ところが私が忙しいときに息子が誕生会に招待され、仕方なく妻が連れていくことになりました。

お母さん同士の会話はもちろん英語です。英語が得意でない妻は渋々出かけていきました。しかし家に帰ってくると、各国から来たお母さん同士でワイワイ会話が盛り上がった話を楽しそうにしていました。

このように、好奇心を失わずに英語で読書をしたり、ちょっとだけ勇気を出して外国の人と交流したりするだけで、人生は豊かになります。好奇心を持たずに行動もしなければ、せっかくの学びのチャンスをみすみす逃すことになります。

教養力は読書量と行動力に比例します。英語を学ぶなら、英語で読書をしたり外国の人と積極的に関わったりする姿勢が大切です。日本語でも同じです。子どもの国語力を磨いても、好奇心がなければ読書もせず行動も起こさないので、得られる恩恵は少ないはずです。

英語を学んでもバカになりません。「技能を通じて読書をしなかったり、英語を使って行動したりしないと、メリットがない」というのが正解です。それは英語でも日本語でも同じことです。

英語学習を通じて頭がよくなるワケ

私は英語学習を通じて子どもの頭をよくすることは可能だと思っています。英語を学ぶのは歴史の年号の暗記とは明らかに違います。どのような能力が身につくのかを詳しく解説します。

比喩表現・多義語で連想力アップ

英語のイディオムや多義語を学習するときは、「連想力」がフル回転します。「どうしてこのような言い回しになるのだろう」とか「この言葉はどうしてそんな意味にも使われるのか」のように、異なることに意味を見出して結びつけようとするからです。

例えば、受験でも頻出するイディオムに「look forward to~」(~を楽しみにする)があります。“I’m looking forward to seeing you.”(お会いできるのを楽しみにしています)のように使われます。

このイディオムを丸暗記しようとするのは英語センスがありません。「なぜlook forward toと表現されるのか」をしっかりと考えることが子どもの頭を良くするからです。

「lookは見る、forwardは前、これから起きる何か楽しみにしていることをじっと見つめている(考えている)状態だからかな」と、こじつけでもいいから関連づけるのです。

遠足に行く子どもは前日からソワソワします。遠足のことばかり考えるからです。そんな気持ちと重ね合わせることができれば、look forward toを覚えるのはただの暗記ではなく連想力を鍛えるよい機会となります。

他にも例を挙げてみます。bookは名詞なら「本」ですが、動詞では「を予約する」になります。まったく異なる意味のように感じるかもしれませんが、私ならこう考えます。

「予約するときは、帳面に日付・名前・電話番号を記入するからbookと言うのかもしれない」

これが正しいかどうかは調べていません。しかし、このように関連づけすることは言葉のトレーニングになります。

英文法の発見

英語学習を通じて英語に触れていると、子どもなりに疑問を持ったり法則を見出したりするようになります。

中学生の頃、私は洋画を見ていて俳優が“It could be possible.”(字幕:あり得るな)と話しているのを聞いて疑問に感じました。なぜ、現在形で話すべきところに助動詞canの過去形couldを使っているのかわからなかったのです。

この場合のcouldは人の感情を表現するときに使われる助動詞であり、見た目は過去形でも現在のことを表しています。正しい知識を学んだのはずっと後のことですが、あのとき疑問に感じたことが一気に理解できた喜びを覚えています。

過去形の概念を覚えたての子どもは、しばしばspeakedのような間違いをします(正しくはspoke)。しかし、これは規則動詞と呼ばれる動詞の過去形にはedをつけるルールを自分で推測した結果であり、高度な間違いです。

誰からも教わっていないのに、絵本などを通じて動詞の過去形に共通する形(ed)の法則を見つけて、それを応用しようとしているのは子どもが頭を使っている証拠です。

読書や映画を通じて得られる「行間を読む力」と「論理力」

文学作品を味わい、人とのコミュニケーションを豊かにする大切な能力のひとつは「行間を読む力」です。英語では「read between the lines」といいます。

一般的に欧米人はハッキリと論理的に言葉にして相手に伝える割合が高いと言われています。反対に日本語は、文脈に依存する割合が高く、相手の意図を行間からくみ取らなければならないことが多いようです。

私の意見ですが、世界中の人とコミュニケーションをとる場合は、両方に対応できなければいけません。英語ネイティブでもアメリカは論理的な言葉が好まれるのに対して、イギリス人は日本的な遠回しな表現が多いです。

日本語だけでなく英語で書かれた文章を読んだり、外国人との会話を通じてズレを感じながら経験値を高めたりするのは人間関係を豊かにしてくれます。

映画・本・人を通じて文化・習慣・知識を学ぶ

あるレベルを超えて英語を学ぼうとすると、教科書だけでなく「本物の英語」に触れなければなりません。読書だけでなく、映画を観たり、人と話をしたりすることが必要です。このような経験を重ねていくうちに、自然と外国の文化・習慣などに詳しくなります。

特に体験を通じて直接獲得した情報はとても貴重です。インターネットがどんなに発達していても本当に欲しい情報がなかなか見つからないことはよくあります。

私は家族を連れて3年半マレーシアに移住しました。そのための準備として、インターネットでいろいろと現地情報を収集しました。しかし、なかなか肝心な情報は得られませんでした。ところが5日間現地を視察したら、すべての疑問と不安は解消されました。

英語で現地の人から直接聞いた情報は精度が高く、子どもの学校選びに大いに参考になりました。もし、インターネットだけ(しかも日本語のサイト)で情報収集を済ませようとすれば、悪徳業者のカモになっていたかもしれません。

好奇心を忘れず面倒くさがらずに行動することで、英語を通じて貴重な情報を得ることができます。

英語学習を通じてあきらめない心を養う

英語をマスターするまでに日本人は約3000時間の学習が必要です。長期間の努力を必要としますが、これを続けられるのは「あきらめない心」があるからです。

楽器やスポーツと比較しても、英語は目に見える形としてすぐに結果があらわれません。モチベーションを維持しながら英語学習を継続するのは大変です。なかなか結果が見えない環境でもコツコツと取り組めたとしたら、他の分野でもその能力は活かせるはずです。

何かの研究者になって長期間成果が出ないと心が折れそうになることもあるでしょう。そういうときにも「あきらめない心」を持てることは素晴らしいと思います。

コツコツと学べば英語は必ず結果に表れます。リスニングを磨きたければ、この動画セミナーがおすすめです。

子どもの英語学習の誤解

子どもの英語学習に関して、誤解している方が多いように感じます。ここではいくつかのポイントに絞って取り上げてみます。

暗記力と英語力はあまり関係ない

英語=暗記科目と考える人が多いのです。しかし、英語力と暗記力はあまり関係ないです。私は歴史の年号を暗記するのが苦手で高校生の頃赤点ばかり取っていました。数字の羅列を暗記するのは苦痛で耐えられなかったのです。

一方、単語やイディオムは暗記ではなく、音読を通じて「何度も繰り返した結果、いつの間にか覚えていた」という勉強法を取っていました。

全員名前を知らない友人と同じクラスになったとしても、1か月もすれば名前・顔・およその性格を覚えてしまうのと似ています。

英語を学んでも暗記力は向上しません。歴史の年号をまったく覚えられない私がいうのだから間違いありません。

使えないバイリンガル(帰国子女)

「バイリンガルや帰国子女は(仕事で)使えない」意見をビジネス雑誌などでよく見かけます。国民性などを語るときと一緒で、決めつけるのはあまりいいことではありません。

もし彼らの教養が足りないと感じるなら、これは繰り返し述べているようにその人の好奇心や探求心が足りないせいです。高性能な天体望遠鏡を持っていても、宇宙に関心がなければ無駄になるのと同じです。

日本人でも教養のない人達はたくさんいます。彼らに英語を話すように訓練すれば、当然教養のないままです。バイリンガルだからダメなのではありません。

もし好奇心を忘れず成長願望の強い子どもが英語をマスターすれば、さらに飛躍できると考えるほうが自然です。

子どもの頃の英語教育は日本語に悪影響を与える

私の記事で何度も触れていますが、日本にいながら英語を勉強しても、母国語である日本語に悪影響を及ぼすようなことは起こりません。そこまで成果の上がる英語教育のノウハウがあるのなら、手加減すればいいだけだからです。

現在のところ、それほど効率的に英語を学べる方法は確立されていないません。

子どもの頃から英語学習を始めるメリットは、20歳以降は仕事や研究などの専門分野に集中できるからです。大人になってからでも英語は学べます。しかし、年齢を重ねるごとに忙しくなるので先に済ませておいたほうが好都合だからです。

幼児期に覚えた英語はすぐに忘れる

確かに音声だけで覚えた言語は、必要性がなくなるとすぐに忘れてしまいます。海外の幼稚園にいた頃は英語を話していたのに、日本に帰ったらほとんど忘れてしまった話はよく聞きます。

しかし、そのような事例がわかっているなら、フォニックスを学ばせ少しずつ読書をして文字からの英語学習を増やすべきです。忘れないようにするだけでなく、伸ばしていく努力が必要なのは当然のことです。

「しばらくピアノを弾かないと忘れてしまうから、小さい頃にピアノを習わせるのは意味がない」と主張する人がいたら、おかしな理屈だと感じるでしょう。練習を続ければいいのです。

まとめ

英語学習は単なる技能の訓練ではありません。技能を磨くことは望遠鏡のレンズを磨くことと同じで、より遠くの景色を明るくハッキリと見せてくれます。

英語技能を向上させると、より多くの英語で書かれた情報を得たり、外国人とのコミュニケーションの精度を高めたりすることが可能となります。

技能の向上によって得られる情報について、好奇心を持ち「より詳しく知りたい」と思うことが教養を深めることになります。

「英語力とは技能+教養」から成立しています。「英語を勉強すると英語バカになる」誤解は、英語学習を単なる技能面だけで考えているからです。

日本語しか話せなくても強い好奇心や探求心を持ち続ければ、子どもは成長し続けられます。しかし、好奇心の強い子どもが英語という道具を手に入れたとしたら、もっと別の角度にも成長できるはずです。

子どもの頃から英語学習を始めても弊害はありません。子どもの「夢中になれる能力」を大切にして、お母さんは英語学習のフォローをしてあげましょう。英語を話して中身もある大人になるのは可能なので安心してください。

英語教室やオンライン英会話を通じて、いろいろな国の大人と話をするのはとてもよい刺激になります。会話中に学んだその国の文化や習慣をあとで図書館などで調べれば、教養はどんどん高まります。

 

Tokyo Global Gatewayは子どもの英語の試合場所

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子どもが頑張って英語を勉強していると「実際に英語を使う機会を作ってあげたい」と思うお母さんもいるでしょう。資金や時間にゆとりがあれば、海外旅行や短期留学に参加させることもできます。しかし、現実にはなかなか難しい家庭が多いです。

「もう少し手軽に英語体験できるプログラムがあればいいのに」と思っていたお母さんに朗報です。2018年9月に東京版英語村であるTokyo Global Gatewayがオープンしました。

ここでは小学生から高校生までの子ども達が、閉鎖空間で半日~一日、英語「で」さまざまなプログラムに取り組みながら、幅広い教養と英語力を磨けます。

このTokyo Global Gatewayとはどのような施設なのかはもちろん、「この施設を利用することによって子どもの英語学習にどのような影響を与えられるのか」について説明します。

Tokyo Global Gatewayとは?

初めてTokyo Global Gateway(以下TGG)の名前を見たとき、私は「ん? インターネットの設定項目?」と思ってしまいました。実はこれ、構想段階では「東京英語村」というプロジェクト名でした。

わかりやすく例えると、子ども達が職業体験できる「キッザニア」がありますが、その英語教育版が「TGG」です。

TGG設立の目的

東京都教育委員会が主導してすすめられたTGGは英語を学ぶ子ども達のための教育施設です。2018年9月にオープン予定ですが、TGGのサイトを閲覧すると詳細を知ることができます。

プログラム監修者の松本茂教授によれば、英語を効率よく身に付けるには、PICサイクルに沿って学習することが大事。Pはpractice(個人学習)、Iはinteraction(対話型学習→学校の授業)、Cはcommunication(実践→TGG)の頭文字。これまで日本の英語学習にはCの部分が充分でなかったとおっしゃっています。部活動に例えるなら、普段の授業が練習に当たり、TGGは試合を担当します。試合に勝つことを目指すことで、毎日の練習方法は実践を想定してがらりと変わってくるように、児童・生徒の普段、英語に取り組む姿勢が大きく変わってくることを想定しています。部活動でも練習試合を多く組みますが、試合の場ほど技能の伸ばす機会はないでしょう。

*Tokyo Global Gatewayサイトより引用(太字は管理人が強調しています)

NHKの語学番組でもおなじみの松本先生(立教大学教授)に監修依頼をする気合の入れようです。引用の後半の太字で強調した部分に注目してください。

日頃の英語学習の成果を試す場所を提供するのがTGGの目的です。確かに試合のない練習だけの部活など、誰もやりたくありません。試合があることで、きつい練習も乗り越えられるし、そのスポーツの楽しさも感じられます。

使う場のない英語学習にも同じことが当てはまります。これまでは海外旅行や短期留学でしか、実践で英語を使用する場面はありませんでした。しかしこれからは、TGGがその場所を提供してくれます。英語学習中の子どもを持つお母さんも期待できそうです。

英語の試合が終わったら、練習(使うための訓練)が必要です。動画サイトを利用したリスニング学習法動画セミナーはこちらをクリック!

TGG設立の経緯

東京都が「英語村」に取り組んでいるニュースは、以前、私も見ました。いつ頃スタートしたのか調べてみると、2015年4月に東京都教育委員会が「英語村に関する有識者会議」を設置して検討を開始したようです。

ここから話し合いを重ね、参入企業の選定などを経て3年半後の2018年9月にオープンする予定です。行政が絡んだ事業にしてはスピーディーな動きです。2020年の東京オリンピックを意識してのことでしょう。

名称も英語村からいつの間にかTokyo Global Gatewayに変更されていました。「東京都で村って、桧原村みたいなイメージだな…」と思っていたら、ガラリとイメージチェンジをしてきたので正直びっくりしました。

場所は「東京都江東区青海2丁目4-32のタイム24ビル内」に決定しました。船の科学館や日本科学未来館のすぐ近くでゆりかもめ「テレコムセンター」駅から徒歩2分の場所です。

TGG、プログラムのベースはCLIL(クリル)

どのような観点からプログラムが提供されているのか気になったので、サイト内で公表されているTGGの特徴を一つひとつ見てみましょう。TGGオフィシャル動画を掲載します。

英語が飛び交う非日常な空間で成功体験が得られる!

TGG内の共通語はもちろん英語です。参加する子どもたちにはどこまで「ノージャパニーズ(日本語禁止)」を貫けるのかが見ものです。これはオリエンテーションの段階で、「英語を話すぞ!」という気持ちにさせられるかどうかにかかっています。

「エージェント」または「スペシャリスト」と呼ばれるイングリッシュ・スピーカーの力量も問われます。トイレに行きたい子どもは事前にフレーズを指導しておかないと、大変なことになりそうな予感がします。

児童・生徒 8 名につき 1 名のイングリッシュ・スピーカーがサポート!

プロモーションビデオを見ると、ネイティブだけでなくさまざまな国の人がイングリッシュ・スピーカーとなり、8人のグループを引率します。いろいろな国の英語を聞けるのはとてもいい経験だと思います。

1グループを8名にしたのも絶妙です。少なすぎると子どもからの発言が不活発になります。しかし、8名いれば一人くらいは引っ張ってくれる子どもがいるものです。全国から集まる知らない子ども同士で半日~一日過ごすのも楽しそうです。

小学生から高校生までさまざまなレベルに対応し、みんなが楽しめる!

英語習いたてのレベルから、かなりの上級者まで対応するようで素晴らしいです。ある程度の規模だからこそ、きめ細かい対応が可能になっています。児童と生徒が、事前に英語レベルを自己申告するのか、現地で測るのかは今のところ不明です。

英検は客観的に数字(スコア)で英語力を示してくれます。TGGを定期利用すると自分の英語力の伸びを主観で感じられます。英検の級が上がるのもうれしいですが、実践の場での実力の伸びを感じられるのは、また別の喜びがあります。

国際機関やグローバル企業、海外の団体などと連携したプログラムも用意!

プログラムを詳しく見ていくと、「国際問題について学ぼう」「グローバル・ビジネスを体験しよう」などと、世界的な企業や団体の協力を得ているものが含まれています。

中高生からは、身近な英語ばかりでなくグローバルな視点も大切です。こうしたプログラムは意識の高い生徒にはピッタリです。

英語教育の専門家が監修し、実践的かつ有効なプログラム!

TGGでは松本教授が監修し、CLIL(内容言語統合型学習)教授法をベースにして開発されたプログラムを提供しています。CLILとは、Content and Language Integrated Learningの頭文字で「クリル」と読みます。

CLILは新しい英語教育法で、理科や社会などの教科を英語で教える教育法です。イマ―ジョン教育と似ていますが、ネイティブが科目指導を目的として行うものはイマ―ジョン教育です。一方、CLILは「科目教育と語学教育の比率を均等に」行うものです。

簡単にいえば、施設内の体験型学習を通じて「幅広い分野の学習をしながら英語も身につけていく」内容です。学校や家庭で培った英語学習をベースにして、世の中のことを学んでいくことになります。

TGGの5つの特徴の評価できる点は、「学校・自習だけでは補えない分野に絞った」ことです。全国にも英語村と呼ばれるような施設はいくつかありますが、他とは一線を画したコンセプトは好感が持てます。

このような理想を追求するにはお金や場所、長期間安定的に運営する会社がなければ実現できません。あればいいなと思っていた空白部分に特化しているので、私は良い企画だなと感じます。

プログラムの詳細と利用料

TGGのプログラムはテーマ別に大きく2つのエリアに分かれています。それらは「アトラクション・エリア」と「アクティブイマ―ジョン・エリア」です。英語ばかりで、何だかよくわからないので、どのようなものなのかそれぞれ説明します。

アトラクション・エリア

アトラクション・エリアは海外旅行や留学などで想定される場面を意識していて、さらに4つのゾーンに分類されています(*画像はTGG公式サイトから転載しました)。

 

ファーマシー(薬局)を作ったのは評価できます。「熱が出た」「下痢」「咳」「のどが痛い」などの症状を英語でいえるのは、命にかかわることなのに学校英語では軽く扱う程度です。ここで学んでおけば、実際に海外の病院でも簡単に症状を説明できると思います。

 

スーベニアショップ(お土産屋さん)が個人的に気になります。ぜひ、値下げ交渉に立ち向かうタフな店員を常駐させ、ミッションの難易度を上げて欲しいです。

留学を想定したときの空間です。スクールオフィスとは事務室のことです。学校の手続きに関することで留学生はしばしば立ち寄ることになるので、これを発案した人は留学経験のある人だと思いました。

ここでのガイドは「エージェント」と呼ばれるイングリッシュ・スピーカーが担当します。

アクティブイマ―ジョン・エリア

こちらのエリアは英語で映像制作やビジネス・プログラムなどに挑戦するエリアです。こちらのエリアはまさにCLIL教授法を活用したプログラムです。TGGサイトからの説明文を引用します。

ここでは、グループで実験したり企画したりと共同作業を通じて、英語で専門知識を身につけられるプログラム(60 分/120 分)を体験。CLIL(内容言語統合型学習)の視点で開発されたプログラムもあります。専門的知識を身につけたスペシャリストを指南役に行われ、エージェントはサポート役に回って盛り上げます。

*TGG公式サイトから引用

具体的なプログラムを表にまとめましたので、ご覧ください。

身近なものから効果音を作り出そう コマ撮り作品を作ろう グループ対抗で頑丈な橋を造ろう
理想の街をつくって紹介しよう キャスター体験をしよう プログラミングを体験しよう
国際問題について学ぼう 未来の名刺を作成しよう ダンスパフォーマンスをしよう
世界の料理をつくろう 茶道で日本文化を学ぼう、伝えよう 演劇をしよう
グローバル・ビジネスを体験しよう 東京の魅力を紹介しよう

好奇心のある子ども達にとって、どれも魅力的です。「自分が子どもだったら絶対に楽しかっただろうな」と思える内容です。

それぞれのプログラムでは話し合わないとプロジェクトは進まないので、それぞれの実力のなかで精一杯英語を話すことが求められます。

利用料(学校利用)

施設の利用料は以下のとおりです。

日帰り
コース 都内 都外
1日コース

(8:30-16:00)

4,800円 6,800円
半日コース

(約4時間)

2,400円 3,500円

東京都教育委員会が始めた事業なので、東京都の子ども達は優遇されています。

学校単位での参加または個人での参加

学校単位または個人での参加になりますが、予約が必要です。参加する時間によってコースは変わるので、TGGのサイトをご覧ください。

サイトに書いてある「セッション」とは、学校でいえば「〇校時」の意味です。半日コースの場合、どのセッションに参加するかで、時間帯は異なるので注意してください。

TGGへの期待

オープン前から、親として非常に楽しみです。早めに実際に子どもを参加させてみて感想を聞いてみたいと思います。今の段階で、私がTGGについて抱く期待と要望を述べます。

モチベーションアップを期待できる

英語無用論の背景には「英語を勉強しても日本ではあまり使わない」事実があります。多くの日本人がこのように感じてしまうことに、共感できる部分もあります。

初期の学習段階から定期的に「英語を実際に使う場面」を体験させることはやはり必要だと感じます。TGG設立目的の中にあった「部活でいうところの試合」の場を日本の英語学習者に与えられることはとても有意義です。

英語の練習(学習)ばかりでは確かにモチベーションは下がります。英語学習に停滞感が出てきたらこうした施設を利用して、モチベーションアップを図るのは大切です。

英語を学ぶ意味を考える機会になる

英語を学ぶのは英語を話すためではなく、英語で何かを学んだり仕事をしたりするためです。英語の4技能(リーディング、リスニング、スピーキング、ライティング)とはそれを実現するための手段に過ぎません。

日本の学校では英語「で」何かをする場面があまりにも少なすぎて、道具としての英語を意識できませんでした。そのためほとんどの学習者にとって、「受験のための英語」以外に英語を学習する目的がありませんでした。

しかしTGGのような施設に行けば、英語で何かをする体験ができます。体験に勝る学習はありません。「英検〇級取得」「〇〇大学合格」のための英語は通過点に過ぎないことを子どもに理解させるには最適な場所です。

海外旅行や短期留学より効果的な部分もある

海外旅行や短期留学のほうが、TGGのような施設よりもリアリティがあるのは確かです。しかし、海外旅行や短期留学は多くの人にとって気軽に利用できるものではありません。

まず、費用の問題です。比較的距離が近く物価の安いアジア圏に出かけても、親子2人なら20万近くはかかるでしょう。兄弟姉妹がいればさらにコストがかかります。

次に海外旅行に出かけても、子どもが英語を使う場面はほとんどありません。ホテルの人とのやりとりやレストランでのオーダーも普通は親がします。よほど周到に用意しなければ、子どもが英語を話す機会はほとんどないといってよいでしょう。

留学なら語学プログラムが組み込まれているので、英語を話す機会はグッと増えます。でも、英語の勉強だけであれば、普段の学校の授業とそれほど変わらないかもしれません。時事問題や興味深いトピックについて、英語「で」学ぶ授業はそれほど多くないでしょう。

最後に、治安や健康面の不安が残ります。どんなに気を使っていても、渡航期間中は保護者の心配は尽きません。英語ネイティブの国であるアメリカやイギリスまで行けば、時差が大きく体調を崩しやすい傾向があります。

以上のことを総合的に考えると、TGGの利用料はそれほど高いとは思いません。安心で便利な東京の施設内で英語体験ができるので、お母さんも利用しやすいと思います。

地方に住む家族はは夏休みなどを利用して「東京ディズニーランド」と組み合わせてTGGを訪れるのもいいアイデアです。遊びと勉強のバランスが取れて、有意義な旅行になるでしょう。

待機する親やチビッ子にも英語のフォローがあるといい

TGGの対象年齢は小学生~高校生になっています。キッザニアを参考に予想すると、保護者は子どもと接触できないと思うので、長い空き時間ができます。

近くで人気の温泉施設「お台場大江戸温泉物語」で過ごすのも楽しそうですが、子どもは英語で頑張っているので、保護者もそのような体験ができるといいなあと感じます。

また、小学生未満の兄弟姉妹がいる場合も、キッズ用の英語保育園のようなものがあると便利です。

全国にもある英語村

TGGは東京の英語村ですが、似たような施設は全国にいくつかあります。ここでは小学生でも利用できそうなものに限り掲載します。「東京まではなかなか出かけられない」人は近くの英語村を利用しましょう。

・OSAKA ENGLISH VILLAGE(大阪)

TGGのアトラクション・エリアだけを拡大したイメージに近い施設です。幼稚園の年中~大人まで利用できます。施設とプログラムはアメリカを意識したものになっています。

・キッザニア東京・甲子園 英語プログラム(東京、兵庫県)

おなじみの職業体験ができるキッザニアですが、英語に特化したプログラムも用意されています。「ナビゲーター」と呼ばれるイングリッシュ・スピーカーが子ども達と一緒に5つまたは3つのアクティビティを連続して回ります。

私の息子もクアラルンプールのキッザニアで一日過ごしたことがあります。Firefighter(消防士)の訓練中“Left, right, left, right, attention!”の掛け声に合わせて行進していて楽しそうでした。

まとめ

TGGのような英語村を上手に利用すると、子どもの英語学習意欲は大いに高まります。学校利用を待つだけでなく、個人でも積極的に予約して利用したほうがいいです。近所の仲良しのお母さんと一緒に出掛けても楽しそうです。

英語「で」仲間とコミュニケーションを取りながら、何かのプロジェクトを成し遂げる喜びは貴重です。同じようなレベルの子ども達が集まるので、極端に劣等感を感じることもなく過ごせます。

オープン後はなかなか予約しづらい状況かもしれませんが、機会があればぜひ子どもを連れて行きましょう。

 

 

小学校英語、教科化でお母さんが取るべきスタンスは?

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2020年度から「小学校の英語、教科化」が全面実施となりました。お母さん世代は中学校から英語を学び始めたので、「小学校での英語って、どのような授業になるのだろう?」と疑問や不安を感じるかもしれません。

日本の英語教育は「何年学んでも話せない」と長年非難の的になってきました。これを受けて文部科学省は学習指導要領を改訂し「小学校での英語の教科化」を2020年度から全面実施することになりました。

そして批判の多かった大学入試英語も改革し、英語4技能(読む・聞く・書く・話す)をバランスよく測れる試験に移行する予定です。まさに戦後ほとんど変わらなかった英語教育が大きく変わる大転換期です。

ただし、これを機に日本人の英語力が向上するかどうかは不透明です。今後も検証と改革は続いていくでしょう。「英語教育は永遠に未完成」ともいえます。

では、このような環境でお母さんはどのように考え行動するべきなのでしょうか。このような変動期においては、国の方針に振り回されずに家庭で責任を持って英語教育に取り組む意識が必要です。

2020年度から小学校の英語は正式教科

長い間、日本では中学校になってから英語を正式教科として学び始めてきました。中学入学前の「英語ってどんな勉強するんだろう?」と期待と不安の入り混じった気持ちは、お母さん世代なら覚えているはずです。この当たり前だった中学校からの英語教育が大きく変わりました。

学習指導要領の改訂で、2020年度から小学5・6年生で正式な教科として「英語」が導入されることになりました。これは単に小学校から早めに英語を学ぶ話ではありません。

文部科学省は英語4技能(読む・聞く・書く・話す)をバランスよく伸ばすことに本気の姿勢です。コミュニケーション能力をきちんと測る大学入試改革を目指して、小学校~高校までの英語教育を大きく見直す大改革です。

学習指導要領

日本の学校教育法で定められている学校には「学習指導要領」が適用されます。2020年度から完全施行の学習指導要領(小学校)とそれ以前のものでどのように異なるのかを比較してみましょう。

・2020年度より前の学習指導要領

第1 目 標

外国語を通じて,言語や文化について体験的に理解を深め,積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り,外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しませながら,コミュニケーション能力の素地を養う。

「態度の育成」「慣れ親しませながら」「素地を養う」の部分から感じ取れるように、勉強っぽさはできるだけ排除して、英語を楽しむことに主眼を置いていました。

・2020年度移行の学習指導要領

第1 目 標

外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方を働かせ,外国語による聞くこと,読むこと,話すこと,書くことの言語活動を通して,コミュニケーションを図る基礎となる資質・能力を次のとおり育成することを目指す。

まず、英語4技能について明記しています。続きの部分も読んでみましょう。

(1) 外国語の音声や文字,語彙,表現,文構造,言語の働きなどについて,日 本語と外国語との違いに気付き,これらの知識を理解するとともに,読むこと,書くことに慣れ親しみ,聞くこと,読むこと,話すこと,書くことによる実際のコミュニケーションにおいて活用できる基礎的な技能を身に付けるようにする。

(2) コミュニケーションを行う目的や場面,状況などに応じて,身近で簡単な事柄について,聞いたり話したりするとともに,音声で十分に慣れ親しんだ外国語の語彙や基本的な表現を推測しながら読んだり,語順を意識しながら書いたりして,自分の考えや気持ちなどを伝え合うことができる基礎的な力を養う。

(3) 外国語の背景にある文化に対する理解を深め,他者に配慮しながら,主体的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとする態度を養う。

ご覧のとおり、4技能(聞く・読む・話す・書く)のバランスとコミュニケーション能力の養成を具体的に掲げていることから、前回までの学習指導要領とは英語の扱いはまったく異なります。

簡単にいえばこれまでは「楽しくやればよい」だけだった英語は、「基礎的な技能をしっかりと積み上げる」ものに変化したのです。

3・4年生は「外国語活動」、5・6年生は「教科」

では、このような目標を達成するために、どのように小学校で取り扱われるかを具体的に説明します。小学3・4年生は「外国語活動」として英語を学びます。年間35コマ(1コマ=45分)で約26時間が割り当てられています。

この外国語活動では、クイズ・ゲームなどを通じて楽しみながら英語の音声と基本的表現を学びます。教科ではないので評価は「文章での評価」となります(児童一人ひとりについて評価を書く担任の先生は大変です)。

次に、小学5・6年生では「教科」として英語を学びます。年間70コマ(1コマ=45分)で約52時間が割り当てられています。文字も扱う(読む・書く)ようになり、4技能をバランスよく学びます。算数や国語と同じ扱いで、担任の先生は児童を3段階で評価します。

小学5・6年生の英語では文法の指導をせずに、児童が日本語との構造の違いに気づくような形態をとるようです。

扱う内容を細かく見ていくと「3人称単数現在形の-s」とか「過去形」など中学校で学ぶ内容が含まれているので、担任の先生の指導力がポイントになっています。

文部科学省のサイトでは使用教科書や指導書などのサンプルが公開されていますので、こちらをクリックしてください。

中学卒業時の目標は英語で会話できること

文部科学省は、「中学校卒業時に英語で会話ができる」ことを目標に掲げています。小学校で合計156時間を英語(外国語活動)の授業に充てて早めのスタートを切っていますが、個人的にはかなりハードルの高い目標に感じます。

でも批判するのは簡単です。そういう目標を無理やりにでも掲げて、現場の先生の指導法や意識を変えていかないとダメだと判断したのかもしれません。学校の先生に限らず、ほとんどの人は現状維持を望んでいるので、現場の行動や意識を変えるのは容易ではありません。

実は私の子どもは2人とも、この新しい英語教育の対象になるので他人事ではありません。今後も関心を持って、どのような形で新しい英語教育が実施されていくのかを注目していこうと思います。

授業時数と必修語彙の増加、そして大学入試

小学3年生から英語学習が始まることで、授業時数と習得語彙の2つが増加しました。具体的な数字を見ながら、英語をマスターするのに充分かどうかを検証してみます。

小学校の授業時数の増加

小学校の英語授業時数は70コマ(53時間)から210コマ(158時間)へ増え、約103時間の増加です。中高の授業時数は変わらないと仮定すると、小~高までの英語授業は約900時間です。

日本人が英語をマスターするまでに必要な時間は3000時間といわれています。授業時間の3分の2の600時間を実質的な学習時間と考えると、これでようやく必要な5分の1を確保できることになります。

学校でできるのはこれが精一杯でしょう。英語以外にも学ぶことはたくさんあります。残りの2400時間は授業以外の家庭や塾で確保しなくてはいけません。あらためて日本人が英語を習得する壁は高いと感じます。

語彙レベルの増加

私が驚いたのは、小学校での習得語彙の目標が600~700語に設定されたことです。私が中学生だったころは1000語くらいだったので、当時の中学生の3分の2の単語数を小学生のうちに覚えなくてはいけないのです。小学英単語

そして中学では1600~1800語(2020年度以前は1200語)に目標習得語彙は増え、英語が苦手な生徒にとっては辛い状況になりそうです。

さらに「中学卒業時に英語で会話ができること」を目標にしていることから、単に意味を暗記しただけの単語(パッシブ・ボキャブラリー)を身につければいいわけではありません。自分で使いこなせる単語(アクティブ・ボキャブラリー)を増やす努力が求められます。

大学入試の変化

従来のセンター試験は読解9割・リスニング1割の配点でした。このリーディング偏重のテストから、民間のテストを利用しながら4技能の能力をバランスよく測るテストへと大きく舵を切る方向で話は進んでいるようです。

英語はどうしても時間がかかるので、このテストで乗り切れるのは「天才タイプ」と「コツコツタイプ」だけです。

「天才」タイプの受験生はすべての教科をそつなくこなしてしまう優等生です。彼らは制度がどのように変わっても関係ないでしょう。

もう一つのタイプは、子どもの頃から計画的に英語を学び続ける「コツコツ」タイプです。理想的なプランとしては中学校卒業時までに英検2級程度の英語力を身につけておいて、高校の3年間でコミュニケーション能力を徹底的に磨く作戦です。

でも現状から判断すると、受験生が皆このような結果を出せるはずがありません。大学は合格者が少なすぎると経営は成り立ちません。実際はそれほど高い英語力はなくても合格できるかもしれません。

合格ラインが低すぎると、英語教育改革は中途半端なものになってしまいます。そして再び「失敗」と批判されることでしょう。英語教育の改革には終わりはなさそうです。

根強い反対意見と私の考え

いつの世の中にも、新しい制度や考えに反対を唱える人がいます。それが正しいかどうかは年月を待つしかありません。英語教育改革もいろいろなアンケートを見ると半数近い国民は反対しているようです。

ここではこれらの反対意見について、考えてみたいと思います。

英語不要論1:日本にいる限り不要

「日常的に英語を使う人は日本人の1割に満たない」というのが、英語不要論者の主張です。確かに周りを見渡しても英語を使って仕事をしている人はほとんどいません。でもこれだけで英語は不要と考えるのは早計です。

「英語ができないから英語を使わずに済む仕事を選んでいる」と考えることもできそうです。英語ができる人や苦労してマスターした人は、その能力を活用したいと考えるのが自然だからです。

不要とまではいえなくても、「万人が英語を習う必要性はない」と感じている人は多いかもしれません。でもこの論理を当てはめると、他の教科についても小学校までで充分ともいえます。

このように考えていくと、英語不要論は学生時代英語が苦手だった人の僻みや妬みがベースになっているような気がするのは私だけでしょうか。かくいう私も、歴史が苦手だったので「暗記ばかりする歴史など意味ない!」とときどき主張しています。歴史の教養がある人からみたら、浅はかな意見に聞こえるかもしれません。

英語不要論2:日本語力が低下するから

英語を勉強すると日本語力が低下すると考える根拠には2種類あるようです。一つ目は、「英語の学習時間が国語の学習時間を圧迫し、国語力の低下を招く」という考え方です。

確かに影響は皆無とはいえないでしょう。でも、学力の半分以上は「生まれつきの資質や能力」で決定しています。これを口に出すのはタブーと考えられているかもしれませんが、誰もが感じていることです。

優秀な子は勉強時間を減らしても、国語力は低下しません。反対に、能力が低い子は学習時間を増やしても国語力は上昇しません。これが現実です。成績が中の上くらいの子どもは多少影響受ける程度です。

もう一つの根拠は、「英語を学ぶと日本語に干渉してしまい、その結果日本語が滅茶苦茶になる」という主張です。例えば、タレントのルー大柴さんのような英語混じりのおかしな日本語になるという意見です。

海外に住む子どもが英語の学校(現地校やインターナショナルスクールなど)に通っていると、これは普通にあり得る話です。でも日本で日本語を話している環境の中で、英語を学習をしてもこのような言語干渉はまず起きないと断言できます。

もし子どもの英語学習が日本語に悪影響を及ぼすほど強烈であれば、ある意味英語教育は大成功です。なぜなら、少し手を緩めればいいだけだからです。実際こんなことはあり得ないので、心配するだけ無駄です。

どちらの理由であっても、英語を学んだからといって国語である日本語の能力が低下することはありません。もし国語力が低下したなら、他の原因を探ったほうがよさそうです。

英語不要論3:何歳からでも学習できる

「英語は何歳からでも習得可能」というのは、その通りです。むしろ抽象的な概念を考えられるようになる中学生以降のほうが、文法を理解しやすいという利点があります。

でも、あなたの周りで大人になってから中国語やフランス語を習い始めて話せるようになった人はどれくらいいますか? 少なくとも私の知り合いにはいません。

大人になると忙しくなります。よほどバイタリティーのある人か、どうにもならない事情に追い込まれない限り、あらたに言語を覚えようとはしません。「何歳からでも習得可能」は「何歳になっても習得しない」ケースが圧倒的に多いです。

「必要を感じたときにだけ必要な人がやればよい」というのも一つの考え方です。でも、これは受け身の学びです。仕方なくやっているからです。何かにチャレンジして得意なものを身につけて、それを活かそうとする「攻めの学び」ではありません。

また受け身の英語であっても、「やりなおし」と「ゼロから」では必要な労力には雲泥の差があります。やはり、子どもの頃から英語を学んだほうがいいと考えるのがよさそうです。

効果に疑問:先生の問題

小学校の先生のうち、英語の免許を取得している人はおよそ5%だそうです。実際に現場で教えられるレベルの小学校教員は皆無といっていいでしょう。

私は高校で英語教員の経験があります。自分の子どもや他の子ども達にも個人的に英語を教えた経験があります。そのときに感じたのは「小学生に英語を教えるには、専門的な技術が必要である」ということです。

中学・高校と決定的に違うのは文法用語を使えないという足枷があることです。異なるアプローチをしなければ小学生に英語を教えられません。それと同時に、中学・高校へと進んだときに習う英語についても理解しておかないと、うまくバトンタッチできなくなります。

「小学校で英語、教科化」を前にして、現場の先生から不安の声が上がっているので、おそらく最初の5年間はまともに機能しない気がします。

私の考え

かつての英国植民地に行くと、その影響の大きさに驚くことがあります。英国は国土は日本の3分の2で、大きくありません。でも、世界への影響力はナンバーワンかもしれません。英語はその英国が世界に広めた言葉です。

世界の人口70億人のうち、英語を実用レベルで使用している人の数は25%の17.5億人といわれています。一方、日本の人口は1.2億人で、世界人口の1.7%しか日本語は使われていません。

デスクトップ・パソコンのOS(オペレーション・システム)に例えると、WindowsとMac OSを使っている人が大多数です。LinuxというOSもありますが、その普及率を調べると5%未満です。

Linuxを使っている人が「WindowsやMac OSは不要」と主張したら、あなたはどのように感じますか? 主張するのは自由ですが、WindowsやMacで利用できるサービスやソフトウェアを使えない人と仕事やコミュニケーションを取りづらいはずです。

国語である日本語を大切にするのは賛成ですが、英語を学ばなくていいという主張と絡めないで欲しいと思います。母国語を尊重しつつ、汎用性の高い英語も積極的に習得するというのが最も理にかなった態度だと思います。

「小学校の英語、必修化」の利点とは?

では、小学校からの英語必修化について利点を考えてみましょう。そもそも日本人が英語を学ぶ意義は本当にあるのかどうか、一人ひとりがしっかりと考える必要があると感じます。

英語を学ぶと得をするから

まず、「英語ができると得をする」ことが利点として挙げられます。もう少し正確にいうと、「英語が苦手な日本人が多いほど、日本語も英語もできる人は得をする」ということです。

私は勤めていた会社で、工業製品をベトナムで生産するときの立ち上げに関わったことがあります。数年で軌道に乗せてシェアを一気に拡大できました。私は入社して3か月だったので商品知識はほとんどありませんでしたが、英語に抵抗がなかったのはかなり有利に働きました。

ベトナムでのビジネスパートナーとは英語で会話をしました。何度も現地で意見交換をしながら少しずつ品質を高めていきました。

一方、競合会社も同じように中国やインドネシアへ生産拠点を移そうとしました。私の会社の何倍もの規模で設備投資をしたようです。でも、どこの会社も1年以内に撤退し海外生産は失敗に終わりました。

噂によると、誰も英語が話せないためコミュニケーションを取れず他人任せにしたようです。すぐにお金・品質・納期などの管理がコントロール不能になってあきらめたようです。

私が成功できたのは英語力が高かったというよりも、ライバルの英語力が不足していて私だけうまくいってしまったからです。他の会社の営業担当は本気で生産拠点を移すなら、このタイミングで英語を勉強しなければなりません。しかし、誰もそこまで本気にならなかったようです。

このように英語ができると得することはたくさんあります。もちろん英語ができるだけではダメで、行動力とかその他の要素も必要ですが、英語力が無駄になることはありません。

英語を学ばないと損をするから

先日、テレビで高級和牛ブランド「松阪牛」の偽物ブランドがシンガポールで出回っていると報道されていました。10年以上前から出回っているという話でしたが、日本の関係者は誰も気づかなかったようです。

たまたま市長が視察をしたときに、現地コンサルタントから指摘されて初めて気づいたようです。事の重大さに気づいた市長は、帰国後本物の松阪牛ブランドを輸出するための準備を始めます。そして生産者に輸出用の肉の生産を交渉しましたが、すぐに変更できるようなものではないらしく難航しているようです。

この話の教訓は、日本一の和牛ブランド関係者が誰も海外の情報を取得していなかったため、多大な損失を出してしまったということです。英語で情報収集を日常的にしていれば、10年以上も放置されることはなかったはずです。

英語を学ばないと損をすることがあるのです。実際は、損をしていることにさえ気づいていないかもしれません。英語を話す人には悪い人間もたくさんいます。彼らに対抗するには、英語を学ばなければなりません。

小学生でもできることを中学まで待つ必要がないから

「英語絵本の読み聞かせ」や日常の会話で英語を取り入れる「英語での育児」は幼稚園から始められます。本格的な読書も小学校入学前後のタイミングから可能ですし、音読トレーニングは小学生にはぴったりの英語学習法です。

本格的な文法学習は中学以降でいいと思います。でも、小学生にできることがあるなら中学生まで待つ必要はありません。強制的にやらせるのではなく、子どもの能力や興味に合わせて、やれる範囲で英語学習をすすめればいいのです。

小学5・6年生になれば、学習意欲の高い子なら文法も少しずつ学べるはずです。英会話スクールやオンライン英会話を活用すれば、英検4級の取得はそれほど困難ではありません。

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英語レベルが低いうちは、教材内容も幼稚だから

あまり触れられない問題ですが、英語学習初期はどうしても表現が限られるので教材内容が幼稚になってしまいます。

もし中学校の英語教科書が日本語で書かれていたら、まともな中学生だったらバカバカしくて読んでいられない内容です。でも、英語力が低いためそのような内容しか扱えないのも仕方がありません。

小学校から英語の基礎を始めれば、この英語レベルと精神年齢のギャップを小さくできます。子どもっぽい内容の英語でも、小学3年生くらいなら自然に受け入れられるでしょう。

精神年齢に適した英語を習うには、早めにスタートしたほうがストレスなく学習できると思います。

英語教育大改革期にお母さんのとるべきスタンスとは?

実は、私は「小学校からの英語教科化」には賛成でも反対でもありません。正直、どうでもいいと考えています。中学・高校で英語が必修でなくなったとしても、「子どもに英語を学ばせる」という私の考えや行動は変わりません。

なぜなら学校でどのように扱われるかとか入試に必要とかに関係なく、英語を必要だと感じているからです。可能な限り、子どもには英語を身につけて欲しいと思います。そのように私が考える理由について詳述します。

少子高齢化が急ピッチで進む日本の将来を考える

人類史上類を見ないペースで、日本の少子高齢化は進んでいます。日本語のシェアをOSに例えた話をしましたが、そのシェアはさらに急速に落ちていくのは確実です。

経済を維持するにはある程度の規模が必要です。中小企業も含めて、日本市場だけで商売を完結させようと考えることには相当の無理があります。

大量の移民を受け入れるか、アジア市場の一部に取り込まれるかの二者択一しか、日本経済を成長させる道は残されていません。そしてどちらを選んでも、言葉は大事な要素です。国語と同じように英語を学ぶことを当たり前に受け入れた方がいいと思います。

学校での英語にも良いところはある

従来の学校英語で最も成功しているのは「文法力」です。英語を第二言語として話す人たちと話すとわかりますが、日本人の英語文法力は高いです。運用力が足りないので、そこは子どもの頃から家庭教育などで補う必要があります。

文法は語彙力とともに英語4技能の基礎となるものです。大切な基礎のひとつは学校任せにしていても充分身につくのだから、これは大いに利用したほうがいいです。

学校英語の良いところを認め、徹底的に活用しましょう。

塾や学校を言い訳にせず、家庭で責任を持つ

良くない結果が出たときに「〇〇が大丈夫って言ったから」「まさか〇〇とは思わなかった」という言い訳をする人がいます。でもたいていの場合、彼らは危険性を事前に認識しています。「失敗したら他人のせいにできればいい」という考え方に問題の本質があります。

英語教育に関して、「文部科学省が大丈夫って言ったから」「小学校から英語を学んだのにまさか話せないとは思わなかった」という言い訳を用意しているなら、それはやめましょう。

少しでも学校での英語教育に不安があるなら、お母さん自身もしっかりと勉強するべきです。そして子どもにとってどうするのが最も良い選択なのかを真剣に考えてあげて、周囲に流されずに行動するようにしましょう。

私がこのような記事を書いているのは、子どもの英語教育について真剣に考えるお母さんのために力になりたいからです。

不向きと判断したら、時間とエネルギーを別のことに向ける

誤解しないでいただきたいのは、私は「英語がすべて」などと思っていません。一人ひとりの子どもには個性があり能力もいろいろです。英語の学習に明らかに不向きな子どもも大勢いることは承知しています。

人生の目標はとてもシンプルです。「幸せを感じる」ことができれば、人生は大成功です。英語ができないからといって、不幸になるわけがありません。幸せに生きるためのアプローチはたくさんあります。英語ができないくらいで、子どもを追い詰めるような言動はしないでください。

お母さんに強調しておきたいのは、「子どもの得意なことに時間とエネルギーを向けてあげてください」ということです。もし子供が英語好きなら伸ばしてあげればいいし、そうでなければ他のことを伸ばしてあげればいいのです。

確かにすべての教科で優秀な成績の子どももいます。でも、普通は2つか3つ得意な科目があればいいほうです。それらを上手に組み合わせながら、生きる力を高めていけるように導くのがお母さんとお父さんの役割です。

英語はあくまでもその一つにすぎません。英語至上主義という狭い視野で子どもと接するとそれは不幸の始まりです。

まとめ

小学校からの英語教育が本格化すると「英語嫌いが増える」といわれます。でも、早い段階から適性が絞られるのは、悪い話ではありません。

英語の得意な子・好きな子は、学校のペースを待たずにどんどん学べばいいと思います。学校の授業だけでは限界があるので、家庭でしっかりとサポートしましょう。

私は英語教育への批判と改革は永遠に続くと思います。日本人にとって英語習得は決して容易ではありません。国が検証と対策を繰り返すうちに、子どもは成長して成人します。

英語教育に関して何が悪いとか誰が悪いとか悪者探しをすることは、非生産的です。頭を切り替えて、自分の子どもの英語力はお母さんが主導し、結果に対して責任を取るという考え方に切り替えていきましょう。

お母さんができることは、あまり国の英語教育に振り回されないように気をつけて、家庭で責任をもって取り組むことです。子どもの個性を見極めながら、子どもの英語力を伸ばしてあげましょう。

子どもにピッタリ! 「チャンツ」を活用した英語学習法

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先日テレビを観ていたら、3歳の女の子が買い物をしながら「月が出た出た 月が出た(ヨイヨイ)…」と炭坑節を最後まで歌っていました。私は続きの歌詞を忘れていたのですが、驚くことにその子は最後まで完璧に歌えたのです。

盆踊りで聞こえた陽気な曲につられて何度も歌っているうちに、いつの間にか覚えたのでしょう。もしかしたら、誰かと一緒に盆踊りに参加して踊っていたのかもしれません。

このように、リズムや体の動きは記憶に好影響を与えます。もし、歌詞カードだけを見せて暗記するように3歳の子どもに命令しても、決して覚えられなかったはずです。

英語教授法のひとつにチャンツ(chants)と呼ばれるものがあります。リズムに合わせて英単語やセンテンスを繰り返すことで、英語独特のイントネーション(抑揚)や読まれるときのかたまり(chunk)を体得することができます。

英語教師の間では割とポピュラーな教授法ですが、普通の家庭でもお母さんが子どもに英語を教えるときに使えるテクニックです。言葉を覚えたての幼児には特に相性がよいので、ぜひコツを覚えて活用してみましょう。

外国語活動における「チャンツ」とは

英語教育の関係者なら「チャンツ」を利用した教授法についてしばしば目にします。しかし、深く理解して子どもの英語教育に応用している人は意外と少ないです。

もともと「チャンツ(chants)」には、「単調な歌」とか「(連呼する)語句」という意味があります。これが英語教育の中で使われるようになったのは、1971年にニューヨーク大学のCarolyn Grahamさんによって書かれた『Jazz Chants for Children』がきっかけでした。

この本をきっかけに世界中にチャンツを利用した英語教授法が一気に広まり、現在でも英語の授業(小学校や中学校の外国語活動)に利用されています。それでは、英語教育におけるチャンツとはいったいどのようなものなのか、詳しく見ていきましょう。

チャンツと英語学習における効果とは

日本語は平坦に一本調子に読まれる(話される)のが標準とされています。あまり抑揚をつけません。一方、英語圏の人たちは、抑揚をつけてかたまりごとに発話するのが基本です。

外国人が日本語を話す時、やたらと抑揚のある日本語を話すことがあります。あれは英語なら普通の話し方です。反対に、日本人が話す英語をネイティブが聞くと、一本調子に聞こえて違和感を覚えるはずです。

英語は重要な部分ほど強調されて読まれます。また、音のかたまり(チャンク)ごとに一気に読むのが正しい読み方です。例を見てみましょう。

日本語と英語のイントネーション

日本語では一語一語出来るだけ平坦に(抑揚をつけずに)読むと自然に聞こえます。一方、英語の場合は赤い*の部分を強く読みます。相手に最も伝えたい部分を強調するためです。

もう一つの英語の特徴は、一語ずつではなくかたまりごとに発話されることです。上の例では、Is itは別々に読まれずに、「イズイッ」と一気に読まれます。

「英語独特の抑揚のつけ方」と「かたまりごとに読む」練習をリズムに合わせて繰り返し練習することで、英語音声の基本を身につけていくというのがチャンツの正体です。もちろん、それに付随して、単語の意味や文法などを学習することもできます。

チャンツと歌との違いは

「それなら英語の歌でもいいのでは?」と考えるお母さんもいると思います。歌もチャンツも一定の拍子に合わせて、歌詞をはめ込んでいる点では同じです。しかし、決定的な相違点もいくつかあります。

一つ目は、チャンツにメロディは必要ありません。そういう意味では「ラップ」に近いといえるでしょう。

二つめは、歌詞は韻を踏んでいます(韻を踏むことを英語ではrhymeといいます)。ラップも韻を踏んでいますが、チャンツに韻は不要です。

三つめは、チャンツは単語を羅列しただけでも成立します。歌詞には「失恋して私の気持ちはどうなったか」のようにストーリーが存在します。チャンツの中にセンテンスを取り入れてストーリー仕立てにもできますが、単語を並べただけでもOKなのが歌とは異なります。

このように歌よりも制限が少ないのがチャンツの特徴なので、簡単に言語学習に取り入れることができます。

英語教育におけるチャンツが最も有効な対象年齢は

チャンツでは、リズムに合わせて大きな声で発話することにより、単語や文の英語らしい読み方を身につけていきます。そのため最も効果が認められるのは幼児です。幼児は聞こえてきた音をそっくりまねるのが得意ですから吸収が早いです。

一方、小学校高学年くらいになると人前でチャンツをするのは照れ臭くなります。遊び感覚で実際に発話しないとチャンツの効果は得られませんから、指導は難しくなります。照れさえなければ何歳になっても効果的です。

「チャンツ」を使った英語の指導例

チャンツを使った英語指導には学習内容によって2種類あります。一つ目はターゲットとする「単語を羅列したもの(vocabulary chants)」です。単語だけを扱ったチャンツです。単語を楽しく覚えるために有効な教授法です。

もう一つは、センテンスを扱った「文法チャンツ(grammar chants)」です。チャンツで扱うセンテンスに反復と対照をうまく絡ませると、文法事項を子どもに無理なく教えることができます。

まずは、単語だけを扱ったチャンツについてどのように家庭で取り入れられるかを具体的に見ていきましょう。

単語チャンツは元祖に聞け!

やはりチャンツといえば『Jazz Chants for Children』著者のCarolyn Grahamさんです。動画サイトで彼女を検索すると、彼女による実際の講演動画がヒットします。その中のひとつを紹介しながら、具体的な手法を見ていきましょう。

Carolynさんの“Simple Vocabulary Chants”というのが、単語だけのチャンツです。家庭で試すなら動画で説明される“Three word vocabulary chants”はとても参考になります。

Three Word Vocabulary Chantsチャンツの作り方

・ステップ1:トピックを選ぶ

まず、学ぶ単語のトピックを決めましょう。ここでは「スポーツ」に決めます。そして5,6個の単語を紙に書き出してみましょう。そして、それぞれの単語がいくつの音節からできているかをチェックします。

音節とは「単語が読まれるときの音のかたまり」です。例えば、tennis(テニス)という単語は、ten・nisで2音節の単語です。書き出した単語について何音節の単語なのかチェックします。

音節の見分け方にはある程度のルールがありますが、ややこしいです。自分で自信がないときは、辞書の見出しをみれば「・」で分かれ目が簡単にわかります。

ほとんどの英単語は1~3音節でできています。この傾向をうまく利用して、Carolynがいうthe magic formula(魔法の公式)に当てはめていきます。音節の数が2-3-1の順番で単語を並べると不思議なことに4拍子にぴったりとはまります。

脳はリズムがあると記憶力が増す性質があるようです。ジャズの基本は4拍子なので、これに合わせてチャンツします。(動画6:14あたりから)

(One, two, three, four,)

baseball (2)
basketball (3)
golf (1)
(Clap)

baseball (2)
basketball (3)
golf (1)
(Clap)

baseball (2)
basketball (3)
baseball (2)
basketball (3)

baseball (2)
basketball (3)
golf (1)
(Clap)

*( )内の数字は音節の数
*Clapは手拍子のこと

さすが、チャンツの創始者だけあって、見事にリズムにあてはめています。3音節のbasketballは結構難しいですが、リズムに合わせて発話しているうちに英語らしく読めるようになります。これが、チャンツの効果です。

トピックを変えても、音節だけ気をつければ応用できます。例えば、文房具のトピックにして、ruler, eraser, pen(ものさし、消しゴム、ペン)でも先ほどのパターンに当てはめることができます。

英語のチャンツに動作もつけよう

子どもと一緒にチャンツをするときは、その単語に合った動作をつけてあげるとより効果的です。子どもがついマネしたくなるのがコツです(動画の7:30あたりから、baseball, basketball, golfの動作をつけてみんなの前で披露しています)。

手拍子と動作をつけるだけでも楽しく学べそうですが、ピアノが得意なお母さんなら軽く伴奏をつけることもできそうです。私は楽器を演奏できませんが、もしできるならチャンツのときに利用すると楽しそうです。

文法のチャンツ

チャンツには単語のチャンツの他に、文法のチャンツもあります。チャンツを上手に利用すると小難しい文法用語を使わずに、子どもに文法事項を覚えさせることができます。

先ほどのCarolyn Grahamさんのレクチャー動画の後半ではGrammar Chants(文法チャンツ)について解説しています。ここでは、ちょっと視点を変えてオリジナルの文法チャンツを作ってみます。

PPAPのカラオケ音源を使う

世界で最も成功したチャンツのひとつは、ピコ太郎さんのPPAP(Pen-Pineapple-Apple-Pen)だと思います。妙に記憶に残る独特のリズム、シンプルな英語、わかりやすくておもしろい振り付けなどが作用して、一度聞いたら忘れられない仕上がりになっています。

私はマレーシアにいた頃、息子の同級生から「僕の歌を聞いてよ」といわれたのがPPAPでした。最初聞いたときは何が何だかわからず、苦笑いするしかありませんでした。しかし、その男の子のたった1回のPPAPは妙に私の記憶に残りました。

残念なことにピコ太郎さんは、I have a pen, I have a(an) apple. とanにするべきところをaと歌ってしまいました。きちんとanだったら、aとanを使い分ける文法チャンツとして後世に名を遺したかもしれません。

せっかくのいい素材なので、PPAPをBGMにして何か一つオリジナルの文法チャンツを作ってみます。

文法チャンツ作例:三単現のs

中学で習う英文法の最初の山場は、「三人称単数現在形のs」です。これを幼児に長々と説明すれば高確率で英語嫌いになります。自然に覚えられるようにするために、このトピックで文法チャンツを作ります。PPAPのカラオケに合わせてチャンツしてみましょう。

He likes red.
She likes red.
Oh, they like red.

I like blue.
You like blue.
Oh, we like blue.

They like red.
We like blue.
Oh, what color do you like?

What color do you like?

いかがでしょう? ピコ太郎さんは、英語チャンツに特化して活動したら最大限に才能を発揮できそうな気がするのは私だけでしょうか?

文法チャンツ作成のコツは、同じ表現を繰り返しつつ、違うところをハッキリと示すような文章にすることです。作例では「主語+like+色」を基本パターンにして、三人称であるHeとSheが主語になったときは、動詞にsをつけます。

英会話練習の「パターンプラクティス」に近いものです。できるだけ、子どもが日常的に使う表現や読み方を取り入れることがポイントです。It isよりもIt’s(短縮形)のほうがチャンツ向きといえます。

JackやSuzanなど具体的な名前が主語になっても動詞にsがつくので、チャンツだけですべてを教えることはできません。最終的には体系的な文法のレッスンが必要です。しかし、文法を学ぶための最初のステップとしては非常に優れた教授法です。

既成品の購入

英語教材のサイトでは、チャンツの英語教材(CD付)がたくさん販売されています。評判が良さそうなものなら購入してもいいでしょう。そのときは単語チャンツよりも文法チャンツのものを選んだほうが、お得感があります。

先述のとおり、単語チャンツは公式に当てはめればあっという間に自作できますが、文法チャンツは文法の知識や英文のチェックなどが必要だからです。時間と労力を節約する目的で市販品を購入するなら、文法チャンツを選びましょう。

まとめ

近所の書店で人気ナンバーワンの単語集はチャンツを活用したものでした。私は実際に購入して学習してみました。単調に単語が読まれる従来の単語集と比べると、チャンツの単語集は格段に継続しやすかったです。

収録されている単語や説明・例文には大した違いはありません。違いは、付属のCDに収録された音声が、テンポのいいリズムに合わせて読まれているだけです。たったこれだけの違いなのに「脳に優しく」感じたのは事実です。

大人でもこれだけの効果を感じるのだから、幼児期の子どもならなおさらです。単語や文法学習は味気ないものになりがちですが、チャンツを取り入れることによって自然といつの間にか覚えることができます。

チャンツによって体得された英語独特の抑揚やかたまりごとの発話は、リスニングの際に力を発揮します。ネイティブに近い感覚で英語を身につけるので、ネイティブが話す英語を聴き取れる確率は断然高くなるからです。

英単語チャンツなら家庭でも簡単に取り入れることができます。使用する音源をいくつか用意しておけば、何度でも使えます。英会話教室やオンライン英会話などと平行して、お母さんと一緒に英語チャンツを取り入れると相乗効果を期待できます。

フラッシュカードは子どもの英語学習に効果的?

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中学校の英語の授業で先生が英単語の書かれたカードを素早くめくりながら、生徒にリピートさせていた光景を覚えてるでしょうか? あのカードを「フラッシュカード」と呼びます。主に単語の復習として昔から人気のあった道具です。

フラッシュカードを上手に取り入れると幼児の英語学習にとても高い効果が得られます。ところが「フラッシュカード」についてインターネットで検索すると、ネガティブな情報を目にします。

そこで、フラッシュカードによる弊害はどのようなものなのか、それを最小限にしつつ効果を上げる学習方法はないのかについて具体的に説明します。中途半端な知識で行動するのは危険です。この記事を最後まで読めば安心して取り組めるようになります。

フラッシュカードとは

「フラッシュカード」の英語のスペリングはflash cardです。flashとは「瞬間的に現れるもの」の意味です。

フラッシュカードは英語の授業でどのように利用されているのか動画を見てみましょう。

なかなかテンポ良くカードをめくっていますね。主に単語の暗記に有効なツールとして昔から取り入れられてきました。家庭での英語教育にも上手に取り入れると、子どもの語彙を飛躍的に伸ばせます。

ただし、注意点もありますのでフラッシュカードの長所と短所を正しく理解した上で導入しましょう。

フラッシュカードの長所

先ほどの動画でもわかるように、それぞれのカードを見せる時間は1秒以内です。すると生徒は瞬時に全体を把握して言葉を覚えるようになります。強制的に細かいところに目がいかないようにしているのが特徴です。

フラッシュカードは第二次世界大戦中に敵の戦闘機を素早く見分ける力を養うための訓練として導入されたものだそうです。戦闘機のパイロットは、瞬時に敵/味方を識別したり敵の数を把握したりしなければなりません。

敵と味方の戦闘機の写真をフラッシュカードにして戦闘機の名前を覚えました。数の把握方法については、それぞれのカードにドット(黒い点)を打ちその数を言い当てる訓練をしていたそうです。

人間の認識能力では、4つか5つのドットまでは瞬時に数を把握できます。しかし、6以上になると端から「いち、に、さん…」と数えていかないと数を把握できません。

ところがフラッシュカードによる訓練を重ねると、ドットが100を超えても瞬時に数を正確に言い当てられるようになったそうです。このようにフラッシュカードは視覚情報を通して大量の情報を脳にインプットするのに適しています。

英語に応用すると、フラッシュカードに描かれた絵を見たときにそれに対応する英単語を口から瞬時に出せるようになります。さらに応用すれば、「絵-単語」だけでなく「絵-関連したセンテンス」もインプットできます。

ある程度の年齢になってから英語を学習すると「車の映像→くるま→car」のように、一回日本語を間に挟みます。フラッシュカードで学習するとイメージとcarが直結して、瞬時に英語を口から出せるようになります。

また、幼児で大量の語彙を身につけると周りの大人から「よく知っているね!」とほめられることが多くなります。その結果、自分に自信を持つようになり、さらなる学習意欲の向上につながるのがメリットです。

フラッシュカードの短所

一方、フラッシュカードによる弊害も報告されています。例えば、「思考力が育たない」「自主性がなくなった」「表情が乏しくなった」「物事に無関心になった」などです。

フラッシュカードによる学習とこれらの症状との間にきちんとした因果関係は証明されていないようです。ただし、イメージとしては「洗脳」に近いものなので、子どもの人格に影響を及ぼす可能性もないとは言い切れません。

これらの症状に共通する原因は、「受け身の学習を長時間行ったから」です。子どもは五感をフル活用しながら、身の回りの物と言葉を結びつけて学んでいきます。例えば、散歩の途中で出会った犬の頭をなでてふわふわした毛を触りながら「いぬ」という言葉を覚えます。

一方、フラッシュカードでは、紙にプリントされた犬の写真を見て瞬時に「イヌ」と発音を繰り返すだけです。体験を通じて学んでいないので、犬を触ったときの感触やかわいいと思う感情が抜け落ちています。

そのため物事に関する興味関心が育たなくなってしまう可能性は充分ありえます。

デメリットの対処法

フラッシュカードの弊害を恐れるあまり、「まったく取り組まない」のももったいないです。実は2つの点にさえ気をつければ、フラッシュカードの弊害を避けることは簡単です。

一つ目は、5分くらいの短時間で終わりにすることです。「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」といいますが、何事もやり過ぎはいけません。短時間に抑えることで悪影響をほとんど受けずに済みます。

二つ目はフラッシュカードで覚えた知識を実生活と結びつけることです。例えば、フラッシュカードで動物の英単語を覚えたとします。その後動物園に連れて行って実物を見せることで知識と体験を関連付けできます。

そのとき感じた「大きいな」とか「おもしろい顔をしているな」のように感情が揺さぶられる体験をすることで、受け身の知識から能動的な記憶へと転換できます。

このように長時間やり過ぎないこととできるだけ実体験を積ませることの2点を守れば、フラッシュカードによる学習の悪影響を最小限にとどめられます。

フラッシュカードに関する注意点

大量の情報インプットに向いているフラッシュカードですが、万能ではありません。フラッシュカードの学習に向いていないものや、より効果的な与え方をお母さんは把握するようにしましょう。

・学習内容によっては不向きである

幼児向けのフラッシュカードの基本は、カードの表に絵、裏面に単語が書かれているものです。このことから名詞(物の名前)とは非常に相性がいいです。

動詞(動作を表す言葉)には、swimとかrunなど多数あります。これらの言葉も比較的フラッシュカードと相性がいいです。絵で表現しやすいからです。

ところが形容詞や副詞になると事情が違ってきます。例えば、「硬い」意味のhardを学習するときに適切なイラストを選ぶのが難しいです。石と豆腐の絵を見せてもピンときません。

同様に、副詞も絵で表現するのは難しいかもしれません。「きちんと」の意味のnicelyを端的に表す絵は難しいです。

このように、「パッと絵を見て瞬時に言葉が浮かばないもの」はフラッシュカードを使用した学習に不向きです。既製品の中でそのようなカードが混ざっていたら、思い切って使用しないほうがいいです。

・カテゴリーごとにまとめること

フラッシュカードの1セットは、同じカテゴリーの言葉でまとめるのが基本です。例えば「動物」のカテゴリーを作ったら、動物以外のカードを混ぜないことです。

初めに“Today we are learning about animals.” と子どもに伝えましょう。このように伝えれば子どもは心構えができて学習内容を受け入れやすくなります。

・シャッフルの効用

同じカテゴリー内でシャッフルするのはかまいません。例えば、1~10までの数字を覚えるときに、「3、6、5、1…」のようにカードを混ぜて練習するのはとても有効です。

フラッシュカードを使わない学習方法だと、8(eight)を思い出すときに1(one)から順番に口にしないと言葉を思い出せないことが起こりえます。ランダムなフラッシュカードで訓練すれば、どの数字を見ても瞬時に口から出てくるようになります。

アナログフラッシュカードvs. デジタルフラッシュカード

フラッシュカードには紙で作ったアナログのものと、デジタル機器(パソコン、タブレット、スマートフォン)で使えるアプリを利用したデジタルのものがあります。

どちらにも一長一短あるので、特徴を理解して試してみましょう(この記事ではデジタルを推奨しています)。

アナログ式(紙のフラッシュカード)

Amazonなどで既製品を購入するか、プリンターを利用しながら自作して紙のフラッシュカードを用意します。それでは、紙のカードの長所と短所を考えてみましょう。

・紙のメリット

紙の良さは何といっても「目に優しい」ところです。幼児にはできるだけ目に負担をかけたくありません。この点は紙は優れています。

・紙のデメリット

使いこめば汚れたり曲がるのはは仕方ありません。数が増えてくれば紛失することもありますし、保管場所も考えなくてはいけません。

お母さんがフラッシュカードを適切に扱えるようになるまでは、訓練が必要なこともデメリットです。私も経験しましたが、10枚くらいのカードの束を持って子どもに見せながらテンポよくめくっていくのは結構難しいです。

手順は、手前のカードの裏側にある「apple」を覚えながら、そのカードを子ども側に移動させ「apple」と読み上げます(子どもにはリンゴの絵が見えている)。次の「banana」を頭にいれながら、カードを表に移動して「banana」と読みます。

これを1秒以内でできるように次々と繰り返すので、慣れないうちは大変です。しかし、ゆっくりやってはフラッシュカードの意味がありません(考える余地を与えてしまうため)。

デジタル式(アプリ:Quizletの紹介)

フラッシュカード学習をデジタル化するなら、アプリケーションの「Quizlet」がおすすめです。息子が通う学校のスペリングの宿題で存在を知りましたが大変便利です。

quizlet

Quizletの詳しい利用方法は後述するとして、ここでは長所と短所をまとめてみます。

・長所

オリジナルのカードを自由に作成できるのは、大変魅力的です。既製品の紙のフラッシュカードにも親しみやすいイラストが使用されています。しかし、子どものことを知り尽くしているお母さんが、子どもの趣味にあったイラストや写真を利用できるのは大きな利点です。

実際に使ってみると反応の悪いイラストや写真の入替えや、カードの追加・削除も自由自在です。また、紙のように場所を取らず、欲しいカードのセットをすぐに見つけられる機能も重宝します。

音声で英語を読み上げる(自動読みあげ)の機能があるので、英語の発音に不安を感じる人には便利です。

・デメリット

デジタル機器全般にいえることですが、目に負担がかかります。5分くらいの学習時間ならそれほど気にすることはありません。

Quizletでは他の誰かが作ってくれたフラッシュカードを利用できます。しかし、使い勝手が今一つのことが多く、結局自分で作ったほうがよいです。慣れるとそれほど手間はかかりませんが、忙しいお母さんは負担に感じるかもしれません。

アナログでもデジタルでもフラッシュカードの学習効果に違いはありません。個人的には、パソコンで学習セットを作る方が使い勝手が良いと感じました。

Quizletを利用した学習方法

Quizletはフラッシュカードのアプリというよりは、暗記学習用のツールです。その中の一機能にフラッシュカードによる学習があります。実際の画面には、さまざまな学習モードが表示されています。

綴り(スペリング)の学習もタイピングができれば可能ですが、幼児にはあまり使えない機能かもしれません。英語に限らず幅広い学習に応用できますし、大人になっても大変便利なアプリです。

Quizletとは

Quizlet_top

Quizletとは、オリジナルのフラッシュカードをオンライン上で作成できて、さまざまな学習モードで暗記ができるサービスです。初心者でも直感的に操作できるようになっていて、適当にボタンを押しているうちに簡単に理解できます。

他人の作成した「学習セット」を検索して利用することもできます。例えば、「英検4級単語」と検索するとそれに該当する学習セットがヒットするので、気に入ったものを選び学習に利用できます。

最も効果的な対象年齢は1歳~3歳

フラッシュカードを用いた学習(絵→音声)で最も効果が高いのは、1歳~3歳の幼児です。この年齢の子ども達は、文字からの干渉を受けずに映像をそのまま記憶する能力が高いそうです。

もちろん、小学生でも大人でもQuizletは暗記ツールとして効果的です。その場合は絵→音声だけでなく、英単語→日本語でも大丈夫です。

アカウントの取得

まず、Quizletにアクセスします。画面右上の「新規作成」を押すと、アカウント取得のウィンドウが現れますので、それぞれの項目に記入します。GoogleのアカウントやFacebookのアカウントからもログインできます。

Quizlet_account

アカウントは、お母さん用(先生)と子ども用(生徒)の2つ取得したほうがいいです。とりあえず、お母さん用だけを取得して、操作に慣れてから子どものアカウントを取得する方法でも大丈夫です。

お母さんは「先生用のアカウント」を取得して、子どもは「生徒用アカウント」で学習をすすめましょう。子どもの進捗状況をお母さんは確かめられます。息子の学校ではこれを使って宿題を出していたので、勉強していないと先生にすぐにバレました。

まずはあちこち開いてみて、使い勝手を確かめましょう。マニュアルを見るより、手を動かして試行錯誤するほうが早く覚えられます。

無料メルマガ「効果的な子どもの英単語学習法」に登録すると、特典で英検5級相当の英単語が Quizlet(学習アプリ)で学べます(動画解説付)

お母さんには有料のアップグレードがおすすめ

幼児が英語を学ぶときにはカードの表面に「絵(写真)」を挿入します。この機能を使うためには有料のアップグレードが必要です。1年で$34.99なので、月々およそ330円の利用料です。「設定」から支払いに進めます。

Quizlet_設定

設定の項目にはアカウントの種類を「先生」または「生徒」のどちらかから選べるようになっていますので、最初に間違えて選んだとしても後から変更できます。

Quizlet_設定2

作成

画面上の「作成する」をクリックすると、「新しい学習セットを作成する」の画面が現れます。最初にフラッシュカードのカテゴリーを決めて、タイトルを記入します。例えば動物のカテゴリーを作るなら「animals」と記入します。

Quizlet_studyset

後はフラッシュカードに該当する部分を作成するだけです。左側に単語、右側に画像を挿入していきます。例えば、左にdogと入れたら、右側の画像のアイコンを押すと自動的に犬の写真やイラストが出てきますので好きなものを選びクリックすると挿入されます。

Quizlet_studyset_making

この画像にはお母さんが撮影した写真や、インターネットの画像検索でダウンロードしたものを利用できます。例えば「family」のカテゴリーでは、「dad」に本物のお父さんの写真を使うなどの工夫もできます。

1カテゴリーにつき、10枚の単語カードを作りましょう。幼児の学習にはこれくらいの数は集中力が切れずにちょうどいいです。

カテゴリーは身の回りのものから始めて、職業、国旗など少しずつ世界を広げていくのがコツです。あまりにも抽象的で幼児の理解を超えるようなものは避けましょう。固有名詞は普通名詞を覚えさせたあとに取り入れるなど、順番にも配慮しましょう。

例えば動物の中で「bird」を覚えた後に、「sparrow」「hawk」「eagle」「owl」 などを覚えていくようにすると、頭の中に知識の階層が順序立てて組み立てられます。

学習方法

まず、パソコンのモニターの前にお母さんと子どもが座ります。小さな子どもなら、ひざの上に座らせてもいいです。キーボードの操作はお母さんの担当です。

“Today we are learning about animals.  Do you like animals?”などと子どもと英語で話しかけながら準備をしましょう。子どもと勉強するときは楽しくやるのが基本であることを忘れないようにしましょう。

Quizlet_study_mode

 

Quizlet_study_key

再生ボタンを押すと順番に「表→裏(単語読み上げ)」→次のカード、と自動で学習をすすめていきます。便利な機能ですが、残念なことに再生スピードはおよそ2秒で遅すぎます。これではフラッシュカードとしての効果は半減してしまいます。

仕方がないので、お母さんがキーボードを操作して素早くカードをめくりましょう。「spaceキー」で「カードをめくる」、「→キー」で「次のカード」にすすめます。紙のカードよりもずっと楽です。すぐに簡単にテンポ良くめくれます。

ある程度「絵→単語の読み上げ」をできるようになったら、センテンスにも挑戦しましょう。先ほど使った学習セットをコピーして、左側のセンテンスだけを変更します。

例えば、左に「I like cats.」-「猫の写真」とか、「She is sleeping on the sofa.」-「猫がソファーで寝ている写真」のように、センテンスを記入します。カテゴリーごとに同じ表現の方が混乱しません。学習セットのタイトルは「animals 現在進行形」のように設定します。

注意点

先述したように、長時間のフラッシュカードによる学習は危険性が指摘されています。「1回5分一日2回まで」のように時間と回数を制限しましょう。子どもの表情がぼんやりして機械的に解答しているだけの状態はよくありません。

子どもがまだ話せない時期は、リピートや発音練習はできません。話せるようになってから無理のないようにすすめていきましょう。お兄さんお姉さんがいる場合は、いっしょに取り組ませると盛り上がります。

受け身の学習にならないように、実生活の体験とフラッシュカードで覚えた知識をつなげるように意識しましょう。例えば、最近、乗り物カテゴリーで単語「bus」を覚えたとします。

お出かけしたときにバスを見かけたら、すかさず “What’s that?” とたずねましょう。子どもが “A bus!” と答えたら “Do you want to get on a bus?” と質問を続けます。

このように日常のあらゆる場面でカードの知識を体験と結びつけると、受け身の学習から能動的な学習へと変換できます。

お母さんへのアドバイス

Quizletには「自動読みあげ機能」があり、英語に関してはほぼ正しい発音とアクセントで再生されます。それを参考にしながら、お母さんも一緒に発音しながら子どもと一緒に勉強しましょう。

発音に関しては、ネイティブのような完璧さは不要です。ただし、L/R、TH/Sなど日本人がつまづきがちなポイントに注意をしながら読む練習は必要です。

フレーズやセンテンスを扱う場合はシンプルで自然な英語にしましょう。文章が正しいかどうか気になるようでしたら、英語に詳しい人に聞きましょう。

お母さんが読み上げるときは、気持ちや感情を込めるようにしましょう。子どもの学習効果において、お母さんの肉声にかなうものはありません。

楽しい雰囲気をつくるために、ジェスチャーや笑顔も大切です。毎回、フラッシュカードの学習を楽しみにするような雰囲気づくりができたら成功です。

最初は10枚のカードを覚えるだけでも時間がかかります。あせらずに根気強く続けましょう。5分間集中力を切らさずに続けられたら、子どもの集中力も相当高まっています。

まとめ

インターネットで「フラッシュカード」と検索すると、ネガティブな意見が多くヒットします。詳細は本文で紹介した通りです。何事にも両面がありますので、このような意見にも耳を傾けることは大切です。

しかし、過剰に恐れるあまりせっかくのプラスの面を無視してしまうのはもったいないです。日本語を介さずにイメージと英語を瞬時に結び付けて記憶できるトレーニング方法として効果は実証されています。

言葉や表現を数多く知るようになり、現実の世界と結び付けられるようになると、子どもは学ぶことの楽しさを感じるようになります。また集中して勉強する習慣をつけると、小学校や中学校にすすんでもきっと役に立ちます。

フラッシュカードは万能ではありませんが、要所要所で大きな威力を発揮します。正しい方法で子どもと一緒に楽しみながら取り組みましょう。

最終的には、いろいろな文脈の中で使われる単語の意味を何度も考えることによって、豊かなボキャブラリーは得られます。こちらの動画セミナーではその方法を詳しく説明しています。

子どものための英単語の覚え方(実践編)

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電車の中で、英語の単語集を開いて一生懸命暗記している高校生を見かけることがあります。学校で単語テストがあるのかもしれません。このような光景を見ると「頑張れよ」と応援したくなります。

そのような彼らの様子を見ていて、気になることがあります。暗記用シートが挟まった単語集をじっと見つめるだけで、口が動いていないのです。電車の中でも声に出ない程度にわずかでも口を動かして発音したほうが、使える単語として学べます。

学校の先生はきちんと時間を取って、学習の仕方を教えた方がいいです。授業以外の時間にも生徒が自習できるようにしたほうが英語は伸びるからです。

英語力は4技能(リーディング・リスニング・ライティング・スピーキング)から成り立っています。それを下から支えているのは「文法と語彙力」です。今回は子どもが語彙力を高めるための実際の手順を詳しく説明します。

幼児~小学校高学年の期間、能力や心が急激に変化します。大人の学習方法とは異なる部分をお母さんが理解して、子どものボキャビル(単語学習)をサポートしてあげましょう。

第一段階:最初にアクティブ・ボキャブラリーを300語覚える

小学校入学前の幼児であれば、ボキャビルよりも先にやっておくことが2つあります。まず、英語絵本の読み聞かせを通じて子どもが「英語の音」に慣れるようにしましょう。このときお母さんは発音を気にしすぎる必要はありません。ほどほどで大丈夫です。

もう一つのやるべきことは、「アルファベットとフォニックスの基本」を学ぶことです。アルファベットの読み方は単語で使用されるときの読み方と一致しないことが多いです。そのため綴りと音の緩い規則であるフォニックスを学ぶ必要があります。

まず、英語の音に慣れてアルファベットとフォニックスの基本を身につけたら、ボキャブラリーを意識した学習に進むことができます。ボキャビルのコツを学ぶと子どもの英語学習に弾みがつきます。

超基本単語300語を一気に攻略

文字から覚えるボキャビルは5歳くらいから可能です。だからといって単語集を買ってきて暗記するのは、この年齢の子どもには無理があります。

とりあえずの目標は、300語くらいの超基本単語です。「英語絵本の読み聞かせ」「英語での育児」を通じて、とりあえず意味がわかるようにします。暗記ではなく、生活に英語を取り込みながら何度も単語と英語の音・文字を結びつける作業を繰り返します。

具体的な方法は、家中の物に英語を書いた「ふせん」を貼ってみるのもひとつのアイディアです。やり方は簡単です。冷蔵庫に「fridge」と書いた付箋を貼るだけです。

そして毎日、“Do you want some milk?  It’s in the fridge.”とか“Close the fridge now.”と話しかければ、冷蔵庫がfridgeであることを覚えます。このように少しずつ単語を増やしていけば、身の回りの単語はかなり理解できるようになるはずです。

数字、曜日、月、色などは同じ種類でまとめて覚えたほうがいいので、フラッシュカードも利用したほうがいいです。そして、覚えた単語を実生活と結びつけることがポイントです。

毎朝お着替えをした時に、服の色を指で指しながら“You want to wear this one?  Yellow is your favorite color.”などと話しかければ、カードで覚えた単語と現実の世界が結びつき記憶が強化されます。

どの単語を覚えたらいいのかわからない場合は、Jリサーチ出版の『英語が得意になる! 最初に覚えたい600語 ゼロからスタート 小学英単語』(安河内哲也著)がオススメです。
小学英単語

基本単語をアクティブ・ボキャブラリーにする

聞いたり読んだりするときに意味がわかるけれど使うことはできない語彙を「パッシブ・ボキャブラリー」と呼びます。例えば、「矜持」は「きょうじ」と読み、意味は「プライドのこと」であると私は知っています。しかし、会話や文章を書くときに矜持という言葉は出てきません。

一方、「プライド」という言葉は日常会話で使います。このように自分で使いこなすことができる語彙のことを「アクティブ・ボキャブラリー」と呼びます。私にとって矜持はパッシブ・ボキャブラリーであり、プライドはアクティブ・ボキャブラリーです。

300語ほどの超基本単語を知っているだけでは、子どもは英語を話せません。意味を知っているだけの単語を「アクティブ」に変化させる必要があります。

使える単語にするためには、「使うトレーニング」が必要です。日本語環境で、子どもに英語を使わせるには3つのコツがあります。

一つ目は、英語での話しかけの中で、子どもが何かを欲しているときを狙います。例えば「牛乳飲みたい」と言ったらSay “Milk, please.”(ミルクちょうだい、って言ってごらん)と話しかけます。

“Milk, please.”と言わないといつまでたっても牛乳が飲めないので、子どもは英語を話さざるをえません。これを繰り返すと、牛乳を飲みたいと思ったら“Milk, please.”と言えるようになります。

自分で言えた単語のmilkもpleaseもアクティブ・ボキャブラリーです。このようにして、意味がわかるだけの言葉(パッシブ・ボキャブラリー)を使える言葉であるアクティブ・ボキャブラリーへと変えていきます。

二つ目の方法は、文字で覚えた単語やフレーズを子どもに使わせるやり方です。

例えば、スイッチパネルのところにturn on the light/ turn off the lightと書いておけば、アクティブにすることができます。

夕方暗い部屋に戻ったときお母さんが“It’s dark here.  What shall we do?”(ここ暗いわね。どうしましょ?)と子どもに問いかけます。子どもが“Turn on the light!”と言えばしめたものです。

三つ目の方法は、英語絵本に登場してきた動物やフレーズを実生活の中でも使わせることです。私が息子に読んだ絵本「Excuse me!」の中で、ゲップをした子が親からWhat do you say?と聞かれてExcuse me!と答える場面があります。

何度も繰り返し読んであげるうちに、子どもはセリフを暗記して“Excuse me!”と言えるようになりました。ある日、夕食を食べていたら息子がゲップをしたので、すかさず私は英語でWhat do you say?と尋ねると、ニヤリと笑いExcuse me!と答えたのです。

楽しみながら音読をするうちにフレーズを自分のものにして、実際の場面で使えるようになった瞬間です。

上記のような要領で、超基本単語をアクティブなものに変えていくことができます。「私はあなたを愛しています」をほとんどの人は“I love you.”と言えます。このレベルまで使いこなせる英単語を増やせば、会話力が向上していきます。

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第二段階:パッシブ・ボキャブラリーを1000語に増やす

アクティブ・ボキャブラリーとパッシブ・ボキャブラリーの数は常に「アクティブ<パッシブ」の状態です。「パッシブを増やしながら使用する頻度が高いものをアクティブに変えていく」という順番が正しいのです。

本格的に読書をするなら、パッシブ・ボキャブラリーも増やさなければいけません。ここでは子どものパッシブ・ボキャブラリーを増やす効果的な方法について説明します。

音読トレーニングで扱った単語を中心に覚える

目標とする語彙レベルは1500~2000語です。とりあえず1000語くらいの単語の意味がわかるようになると、絵本を卒業して簡単な本が読めるようになってきます。1000語と聞くと大変そうに感じるかもしれませんが、これでもネイティブの5歳に及びません。

単語の覚え方の原則は「繰り返し復習」と「読める→意味がわかる→(書ける)の順番を守ること」です。単語だけを取り上げて学習するのは小学生にはおススメできません。単調になりがちで飽きるからです。

おすすめは、音読トレーニングをしながら出会った単語を一つひとつ覚えていくことです。音読トレーニングは「意味がわかるものを正しい読み方で繰り返し行う」のが大原則なので、ついでに単語も覚えられるからです。

では新しく覚えた単語は、後で復習できるようにノートに記録したり、単語カードを作成したりした方がいいのでしょうか? 私の答えは「ノー」です。カードを作成する手間がかかりますし、後述する電子辞書を使えば時間ゼロでオリジナルの単語帳を作成できます。

また、このレベルの単語は使用頻度が高いので、しょっちゅう出会います。忘れたらまた覚え直すくらいの気持ちでまったく構いません。忘れないことに意識を置くより、繰り返し覚えることを意識したほうが良い結果につながります。

図鑑、マンガ、読書で気になった単語だけに絞って覚える

知らない単語をすべて調べて覚えようとしても疲れるだけです。どうしても意味が気になる言葉だけに絞って、英単語を電子辞書で調べましょう。

忘れてはいけないのは、「読み→意味」の順番です。かならず口に出して、何回か読み上げましょう。これらの中には絶対に試験に出題されなさそうな単語も含まれていますが、お構いなしに覚えたほうがいいです。

本気で新しい単語を覚えるのは音読を通じて行い、プラスアルファでそれ以外の機会で目にした気になる単語を取り扱うようにします。

ちなみに小学生の場合は、単語を書ける状態を目指さなくても大丈夫です。半分以上はフォニックスがわかれば音からスペリングを推測できます。また、音読トレーニングの仕上げとしてディクテーション(書き取り)を導入すれば、そこで学習できます。

電子辞書のヒストリー機能を使う

電子辞書があると、「ヒストリー機能(履歴機能)」を活用して単語を効率よく復習できます。音読練習やその他の機会で調べた知らない単語は、履歴に残るようになっています。

調べた単語が新しいほど、履歴の最初の方に表示されます。カーソルを合わせるだけで意味が小さく表示されるので、この機能を利用して復習をします。

読めないときや意味を忘れた単語にカーソルを合わせて決定ボタンを押すと、詳しい意味が表示されます。次に、ヒストリー画面を見ると、この単語は履歴の最初に移動します。

これを繰り返していくと、覚えられない単語ほど履歴の最初に表示されます。つまり、ヒストリー機能で復習するときは、上から順番に復習していくのがベストです。

ヒストリー機能に収録できる語数は決まっているので、一定数を超えると古いものから自動消去されます。最も覚えている可能性が高いものから消えていくので、わざわざ消去する必要もありません。

普段あまり活用されることのない地味な機能ですが、このように利用するといつの間にか子どもにカスタマイズされた単語帳を作ることができます。

覚えるためのコツ

目新しいコツがあるわけではありませんが、子どもでも応用できる単語暗記術をいくつか紹介します。

・接頭辞・接尾辞・語源を利用する

接頭辞・接尾辞・語源を利用した単語の覚え方はポピュラーですし、このレベルの語彙を増やすのには効果的な方法です。たとえば、happyに否定を表すun-という接頭辞をつけるとunhappy(不幸な)という意味になります。

・語感を利用する

語感を利用するのも効果的です。語感のセンサーが高いと、単語の覚えが早いのは確かです。thudは(どさっ)という物が落ちる音を表しますが、この感覚がすっと腑に落ちる子どもは英語センスがあります。

・連想力を発揮する

連想力が働く子どもは英語学習に向いています。全米プロフットボールリーグの王座決定戦を「スーパーボウル」と呼びますが、ボウルを「玉(ball)」と勘違いしている人が多いです。正しい綴りはSuper Bowlです。

bowlは料理に使う「ボウル」です。アメフトのスタジアムの形がボウル状なので、このように呼ばれているのです。bowlを1.料理に使うボウル 2.アメフトのスタジアムのように覚えるのではなく、共通するイメージが頭に浮かぶだけで語彙はグッと増えます。

・エピソード記憶を利用する

「エピソード記憶」を利用する方法もあります。エピソード記憶とは、何かを経験したときにそれに伴った事柄が記憶されることです。意図的に利用するのが難しいのが欠点ですが、努力不要で覚えられるのが長所です。

私の息子が幼児の頃、ボウルに入った氷水に手を入れて「冷たーい!」と叫んでいました。そこですかさず“It’s icy water.”と教えてあげました。それからしばらくして、「この前のicy water冷たかったねー」と話し始めました。

何か印象に残るような出来事(びっくりするほど冷たい水に触った)により、icy waterという単語の意味が強烈に記憶に残った結果です。このようにエピソード記憶には、忘れにくいという特徴があります。

普段の生活で子どもが大喜びしたり、びっくりしたりすることは山ほどあります。その経験と英単語がうまく結びつくと、忘れにくい記憶となり、パッシブの状態を飛び越えてアクティブ・ボキャブラリーとして一気に定着することも期待できます。

ポピュラーな単語暗記術をいくつか紹介しましたが、一つの方法に頼り過ぎてはいけません。覚えやすい特徴があれば利用するべきですが、上記のテクニックが常に有効というわけではありません。

その場合は丸暗記するしかありません。電子辞書のヒストリー機能を使いながら、復習を繰り返して覚えるように子どもにアドバイスをしましょう。

第三段階:アクティブ・ボキャブラリーを増やす

第二段階で1000~1500語レベルに到達すると、英検3級は合格できるようになっています。小学生でこのレベルまで到達すれば、なかなかの実力といえるでしょう。

しかし、英検3級に合格しても英語を話せる子どもは極めて少ないです。それは、1000語~1500語のボキャブラリーのほとんどが、パッシブだからです。

中学・高校・大学受験へと進むにしたがって覚える単語数は増えていきますが、ほとんどの学習者はパッシブのままに放置してしまいます。すると入試・資格試験は合格できても、英語を話せない人になってしまいます。

せっかく子どもの頃から英語学習に取り組むのなら、使える英語を身につけないともったいないです。そこで、読みと意味だけ知っているパッシブ・ボキャブラリーを少しでもアクティブなものに変えていく方法について解説します。

使えるようになりたければ、使って覚える

第一段階で説明した原則は、ここでも同じです。「使えるようになりたければ、使って覚える」ことが大切です。このレベルの語彙を使いこなすのはかなりハードですが、時間をかければ必ず攻略できます。

・ひとり言ブツブツ英会話

最初の頃よりも語彙レベルが上がっているので、第一段階で説明したような方法は通用しません。今回は、ひとり言ブツブツ英会話が有効です。

とりあえず、子どもに日常の雑談を30秒くらいの英語で表現させます。筆記用具は不要で、自分でブツブツ言うだけです。たとえば、家族で山梨県に墓参りにいったとしたらこのような感じです。

I went…(墓参りって何て言うんだろう)in Yamanashi.  (帰る途中)we saw few people.  Suddenly, we (見つけた) a deer on the road.  My father stopped the car and the deer looked at us (長い間)

最初はこれだけ言うのにも四苦八苦ですが、気にすることはありません。30秒どころか、数分かかるかもしれませんが、相手がいるわけではないので大丈夫です。

・和英辞書や翻訳ソフトで英作文

言えない部分を和英辞書で調べながら、ノートに文章を書いてみます。和英辞書でもぴったりとした表現が見つからなければ、翻訳ソフトを利用してみましょう。まだまだ改善の余地がありますが、シンプルな文章ならかなりの精度で日本語を英語に変換してくれます。

I visited my family grave with my family in Ymanashi.  On our way home, we saw few people.  Suddenly, we found a deer on the road.  My father stopped the car and the deer looked at us for a long time.

小学生では本格的に文法を習っていませんから、時制や複数形などのミスが多いのが普通です。書いた文章は、英語の先生に添削してもらいましょう。自分が表現したかったことを細かく伝えて、そのニュアンスに近い英語にしてもらいます。

・暗唱する

そしてこの英語をスムーズに感情を込めて言えるようになるまで、何度も繰り返しブツブツ言いながら練習します。翌日になってもスムーズに口をついて出るようなら、この文章の練習は終わりです。

このような練習を毎日ひたすら繰り返すと、英語で表現できることが徐々に増えていきます。

子ども特有のボキャビルに関する疑問

ここでは子どものボキャビルに関する疑問に回答します。子ども特有の事情により、大人とは違った難しさがあります。

子どもに理解できない単語が登場するがどうしたらいいか

小学生でも上級者になると、英検準2級くらいから難しめの単語が登場するようになります。たとえばpotentialは「潜在的な(形)、潜在力(名)」という意味ですが、このような抽象的な概念を表す言葉が増えてきます。

小学生4年生以下で「潜在的」という言葉をきちんと理解している子どもはほとんどいないでしょう。問題は、「潜在的な」という言葉や概念をしっかりと理解できないのに、英語と意味を暗記させることに意味はあるのか、ということです。

私の考えでは、子どもが気にせずに丸暗記できるならそのままでいいと思います。しかし、意味がわからない単語に嫌気がさしているようだったら、飛ばしてもいいと思っています。日本語で言葉の概念を正しく理解してから覚えれば大丈夫です。

いずれ中学生くらいになれば、きちんとその言葉を理解できるようになるからです。長い目で見れば大きな問題ではありません。

文法はどうするか

不規則動詞は、時制によって形が変化します。例えば、thinkはthought、readはread【発音:red】のようにです。

「最初に時制に関する文法の知識を教えないと混乱するのでは…」と英語が得意なお母さんは考えるかもしれません。しかし、文法のことはとりあえず保留にしておきましょう。

先ほどの例なら、thinkとthoughtを別々に覚えても構いません。いずれ、ふたつの動詞が同じ動詞であると気づきます。気がつかなかったとしても、中学校で本格的に文法を習えばすぐに理解できます。

文法を先に学んでから英語に触れるよりも、実際の英語に触れてモヤモヤを抱えているタイミングで文法を学んだほうが定着は早いといわれています。小学校の間は正確な文法理解を求めて焦り過ぎないようにしましょう。

まとめ

ボキャビルのコツは究極のところ、「単語によって付き合い方を変える」ことだと思います。

一緒にいる時間を増やさないと親友レベルの友人にはなりません。同じように、アクティブな語彙を増やしたければ、何度も会話で使ってみるという訓練を避けることはできません。一方、意味だけ分かればよい単語も存在します。

英語の勉強がある程度進むと、単語力が停滞する時期が必ずあります。すべての単語を全力で覚えようとすると英語が嫌になってしまいます。単語によっては気楽に付き合えばいいと考えるだけで、心にゆとりが生まれます。

英語力が停滞したら、お母さんから子どもにボキャビルの話をしてあげましょう。停滞期を乗り切るきっかけになるかもしれません。せっかく子どもの頃から英語を学び始めたのなら、使える英語が身につくようにサポートしてあげましょう。

小学生の英単語暗記法

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英単語の暗記は誰にとってもつらいものです。私も中学校で初めて英語を習ったとき、曜日の英単語に苦労しました。Sunday, Monday, Friday, Saturdayは比較的簡単でした。しかし、Wednesdayになると発音されない「d」を入れることを毎回忘れてしまい、テストで間違えてばかりいました。

小学生が英単語を覚える場合は、大人が覚える以上に大変です。ここで苦しさしか感じないと英語学習が苦痛になります。そこで、ある程度暗記の困難を緩和するテクニックが必要になります。万能ではありませんが、何らかの助けにはなるはずです。

学習指導要領の中で小学校の英語では卒業時までに600語程度の単語力を身につけておくことが求められています。そこで、どうすれば少しでも効率的に子どもが英単語を増やせるのかについて解説します。

小学生のための英単語暗記法

英単語学習は、文法学習と共に英語学習の核になるものです。よく言われる英語4技能(読む・聞く・書く・話す)はこの二つの知識をもとにして身につけることができます。これらの関係を図で表すと下のようになります。

お母さんによく観察して欲しいのは、知らない英単語に出会ったときに子どもが「どのようにその単語を調べて覚えようとしているか」ということです。簡単にいえば覚え方のステップです。

英語が伸びる子どもは、「読める(正しく発音)→意味がわかる→スペル(つづり)」の順番で知らない単語を覚えていきます。これまで個人指導も含めて多くの子どもを指導してきましたが、あとで英語が伸びる子どもはこのやり方を守っています。

まず、アクセントも含めて正しい発音でその単語を読めるように何度も口に出してブツブツ発音します。音を最初にマスターすると会話やリスニングで登場したときに使えるため、生きた知識になります。

最初に自己流の変な読み方(ローマ字読みなど)で適当に発話していると、あとで修正してもう一度正しい読み方を覚えなければなりません。最初から正しい読み方をマスターしたほうが労力は少なくて済みます。

次に、意味を調べます。ここはいろいろなテクニックを駆使して覚えるしかありません。テクニックについては後ほど解説します。これでもダメなら丸暗記が有効な方法です。

最後にスペリング(つづり)を覚えます。細かい話ですが、英語の得意な子どもはその英単語の発音をしながら、該当部分を紙に書くのが習慣づいています。

英語が伸びない子どもは知らない単語に出会うと、「意味→スペル(つづり)」のステップで単語を暗記しようとします。発音は無視するか、適当にローマ字読みをして流してしまうので、会話やリスニングで活用できる知識になりません。

知らない単語に出会ったら、意味やつづりよりも先に正しく発音できることを最優先にすることを子どもに習慣づけさせましょう。

究極の単語暗記法は反復すること

高校に入学したときのことを思い出してください。同級生と合うのは初めてなので、当然、名前と顔が一致しません。しかし、5月の連休前にはクラス全員の顔と名前は一致していたはずです。

この体験の中に、ボキャビル(語彙学習)の基本が隠されています。毎朝、担任の先生が点呼して、呼ばれた生徒は手を挙げます。授業中、先生が指名したらその子は返事をして答えます。子どもは胸に名札をつけているので、ひらがなが読めれば確認できます。

あなたは何度も顔と名前を一致させる作業を繰り返していたはずです。もちろん目立たない子や似た名前が複数いる場合は混乱しますが、確認作業を繰り返すうちに全員の顔と名前は一致するようになります。

英語のボキャビルの極意もまったく同じです。一日だけ一生懸命暗記しようとしても記憶は定着しません。英語が苦手な子どもほど、最初の1回で暗記をしようと試みますが特殊な才能がない限り覚えられません。

それよりも忘れることを前提に学習をするほうがはるかに現実的です。単語の綴り・読み・意味を一致させる作業を一定期間に何度も何度も繰り返す方が記憶は定着します。ですから究極の単語学習のコツは「90%以上の時間を復習に充てる」ことといえます。

小学生が覚えるべき英単語の一覧:おすすめ英単語帳

大学受験のときに、英語学習で単語帳を購入した経験のあるお母さんは多いでしょう。単語帳の役割を改めて考えてみると、「大学に合格するために必要な単語がわかる」ことです。

辞書にはたくさんの単語がありますが、すべてを覚えることはできません。そこで、「これさえ覚えれば何とかなる」という基準を与えてもらい、必要最低限の努力で英語の試験をパスできるためのツールが単語帳の役割です。

小学生が覚えておくと英語学習がはかどる単語が掲載されているのは、『ゼロからスタート 小学英単語』(安河内哲也著、Jリサーチ出版)です。

小学英単語

小学校の中・高学年向けに最初に覚えるべき600語が掲載されています。最初にイラスト付きで「いきもの」「果物」などのカテゴリーごとにイラスト付きで名詞が並んでいます。

次に動詞が掲載されていますが、原形だけでなく例文付きで過去形も紹介されています。英検4級では過去形について出題されるので、そのレベルまでは使用に耐えるつくりになっているのが好感が持てます。

最後に形容詞が紹介されています。本当に基礎的でよくつかわれるものが厳選されている印象を受けます。単語以外にも基礎的な英会話フレーズがあって、小学校の間はこれ一冊で充分間に合います。

単語帳以外の単語が大切な理由とは

単語帳は手元にあれば便利なのは確かです。しかし、ここに掲載されていない単語を「覚えなくてもいい」とか「重要ではない」と考えるのはやめましょう。

例えば、『ゼロからスタート 小学英単語』にはdinosaur(恐竜)という単語は掲載されていません。そのときに、「小学生は覚えなくてよい」と子どもにアドバイスをしてしまうとせっかく英単語を増やせる機会を台無しにしてしまいます。

私も含めてお母さん世代は中学校から英語を学びました。どうしても試験を意識した概念的な単語を多く覚えるようになります。ところが、実際の生活では日常的な単語のほうが重要です。

例えば指の名称(人差し指~小指)をすべて英語で言える人は意外と少ないです(正解は、the index finger, the middle ~, the ring ~, the little ~ or pinkie)。environment(環境)は知っているけれどこのような基礎的な単語がわからないのはバランスが悪いです。

学校英語だけでは身の回りの英語を網羅しきれません。「試験に出る・出ない」という狭い考えで単語勉強をすると実践的な英語力から外れてしまいます。歯磨き粉を意味するtooth pasteなどネイティブなら3歳でも知っている単語ですが、日本の中学生の多くはすぐに口から出てきません。

小学生の頃はテストに縛られないので、単語帳の枠にとらわれないようにしましょう。子どもが興味を持ったり気になったりしたなら、どんどん調べて教えてあげましょう。そのほうが豊かな英語力が育ちます。

小学生の英単語学習の難しさ

小学生で英語を学んでいる子どもの多くは、超初心者レベルです。大人が英単語を学習するのと異なり、特有の難しさがあります。その原因は主に、発音と文法に関するものです。

単語帳にはCDが付属していて、正しい英語の音を聴けます。また、電子辞書などを使用すると、正しい発音を再生できます。しかし、これだけでは小学生が正しい発音を学ぶことは難しいです。

例えば、telephone(電話)という単語を付属のCDなどで音を聴いても、正しい発音をできるようにはなりません。なぜなら、日本人の子どもならこの音を聞いたときに、脳内で「テレフォン」というカタカナに置き換えて処理するからです。

カタカナで「レ」と発音している限り「lかr」なのか、永遠にわかりません。phは本来【f】という上の歯を下唇に押し当てて息を吐きだす音ですが、カタカナの「フォ」で処理しているのでfoと書き間違える可能性が高いです。

この対策としては、正しい発音がある程度できるまでは英語の先生に指導してもらうのが一番です。英語の発音はフォニックス(音とつづりの法則)にある程度習熟すると、発音記号を読むことで独学でも単語学習を効率よく進めることが可能になります。

カタカナでルビをふるのがダメな理由

子どもの向けの教材では、英単語を読みやすくするためにカタカナのルビがふってあります。子どものためにカタカナのルビをふることに私は断固反対です。カタカナで発音すると、相手に伝わりませんし相手の発音を聞き取ることが難しくなります。

例えば、pencilを読むときに、無理やりカタカナをふると「ぺ・ン・スィ・ル」(4つの音)となります。ところが英語では、pen・cilの2つの音のかたまりで読まれます。ここに「音の数のズレ(差)」が生じる原因があります。

リスニングのときに「英語が速すぎて分からない」との悩みをよく聞きます。原因のひとつは、この音のかたまりの数の差です。日本人はカタカナで音を捉えていて音のかたまりは英語よりも多いのです。英語ではもっと少ない音のかたまりで一気に発話されます。

上の図のように、同じ3秒でも読まれる範囲は全然違ってきます。カタカナに慣れた日本人が英語を聞いていて処理できなくなるのは当然です。長めの単語や読みにくい単語が登場したら、音のかたまりで下線を引いてあげると子どもが読むときの助けになります。

また、英語は子音が連続する傾向があるのに対して、日本語は子音と母音が交互に現れます。例えば、 twelfth(12番目)の発音記号は【twelfθ】で、母音は【e】のひとつです。これをカタカナ読みで「トウェルフス」と読むと【towelfusu】となり、ネイティブが聴いてもまったく別単語にしか聞こえません。

話しても通じない、相手の話したことも理解できないような単語学習は時間のムダなので、カタカナ読みは絶対に避けるべきです。

文法の知識がないため単語学習が進まない

文法の知識不足も、小学生の単語学習の足かせになります。例えば、“We enjoyed the play.”のplayを「遊ぶ」とか「スポーツなどをする」と動詞として考えていると、いつまでたっても意味がわかりません。

この場合、the playと定冠詞のtheがついていることから、playは名詞であり「芝居」という意味になることがわからないと、文意があいまいなままになってしまいます。

文法の知識不足は別の形でも影響してきます。物語を読むと、過去形が頻出します。不規則動詞のwentを見て、すぐに「goの過去形だ」とは小学生は気づきません。

対策としては、単語リスト付の本や教材を使用するのがいいです。その文章での意味がそのまま掲載されているので、文法の知識不足による単語学習の効率の悪さが解消されます。

ドリル、プリントがオススメできない理由とは

私は小学生時代の勉強といえば、毎日の漢字練習を思い出します。一行に何個も同じ漢字を書かされて、本当に大変でした。思い返すと、あの練習をしているときは無言でした。ドリルやプリントをするときは無言で取り組む習慣が身に染みています。

英単語を学ぶときに、ドリルやプリントをおすすめできない理由はまさにこれです。黙々と紙に単語を書いても、正確な発音をする機会がないために実践で活用できないからです。声に出しながら取り組むならいいのですが、染み付いた習慣はなかなか変わりません。

単語カードは昔から定番の英単語暗記ツールですが、これも小学生にはおすすめしません。そもそも書くスピードが遅いので、カード作成に膨大な時間がかかります。これなら単語帳を音読しながら学習したほうが圧倒的に効率がよいです。

このように小学生は英語に関しては超初心者なので、英単語の暗記に関して大人以上に注意が必要です。雪だるまづくりと似ていて、最初ほど大きくするのは難しいのです。少しでも最初の負担を減らすために、小学生に有効な英単語の暗記法を紹介します。

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小学生の英単語暗記法

英単語の丸暗記は確かに苦痛です。そこで、その苦痛を半分程度に抑えるために、巷でいわれるいろいろな方法をすべて試してみましょう。具体的には、語源や外来語を利用したり、多読を積みながらさまざまな文脈で使用される単語を覚えていく方法です。

長い間英語学習を続けた私が断言しますが、「英単語をすぐに覚えられるたった一つの方法」は存在しません。手を変え品を変え、少しでも暗記の負担を減らすのが最も有効な手段です。もしそのどれもが通じなければ、最後は丸暗記が最も有効です。

そこで、丸暗記の量を少しでも減らしてくれる代表的なテクニックと注意点について、詳しく説明します。

語源で覚える

漢字の部首のように、英単語にも意味のあるパーツで構成されているものがあります。例えば接頭辞(単語の頭について意味を添えるもの)にex-が付くと、「外に」という意味になります。

この知識を利用すると、explode(爆発する)やexhale(息を吐きだす)などを比較的簡単に暗記できます。反対を意味するun-を活用すれば、unhappy(不幸な)を簡単に覚えられるなど、語源の知識は知っておいて損はありません。

しかし、語源の知識は万能ではありません。例えば、money(お金)には暗記に役立つ語源はありません。辞書で調べると「ローマで最初の貨幣が女神ユノ=モネタを司る神殿で鋳造されたから」とわかりますが、単語を覚えるのには何の役にも立ちません。

カタカナ語(外来語)を活用する

日本語は外来語が氾濫しています。私の目の前にあるパソコン雑誌を適当に開くと次のようなカタカナが見つかりました。

  • アップデート update(~を最新のものにする)
  • スマート smart (賢い)
  • タップ tap (コツコツとたたく)
  • アイコン icon (アイコン、像)
  • フォルダ folder (紙を挟む厚紙)
  • ページ page (ページ)

日頃から本や新聞を読む習慣のある小学生なら、カタカナの知識を英語に活かさないのはもったいないです。日頃から日本語を読んでいて意味があいまいなカタカナに触れたらすぐに調べる習慣をつけておきましょう。

この積み重ねがあると、英単語を覚えるときにも確実に役に立ちます。ただし、2つ注意しなければいけないことがあります。それは、和製英語と発音です。

和製英語とは、日本人が勝手に英単語を並べて作り出した言葉で、英語圏の人には通じない単語です。有名なものには、「アルバイト」「マンション」「ナイター」などがあります。

これらは正しい英語では「part-time job」「condominium(mansionは大邸宅の意)」「night game」となります。これらの和製英語には気をつけなければいけません。

また、発音については「カタカナ」は無視しましょう。特に2重母音(【ei】【ou】など)は、日本語のカタカナでは「ー(音引き)」で処理されることが多いです。

例えば、majorは正しい発音は「メイジャー」ですが、日本語では「メジャー」と表記・発音されるため、まったく参考にはなりません。

カタカナの意味の知識は活用しつつ、発音は丁寧にオリジナルの英単語を調べることが大切です。

多読で覚える

多読により語感が研ぎ澄まされるのは確かです。これはいろいろな文脈の中で使用される単語に触れるからです。

例えば「彼女は鏡をバッグから取り出した」という文章で “She took a mirror out of her bag.”と書いてあったとします。「から」ですぐに思いつくのは「from」です。しかし、ここでは out ofが使用されています。

日本語ではあいまいに処理されていますが、箱やバッグの中にあるものを取り出す場合の「から」は「out of」が正解です。「from」ではもともと中にあったというニュアンスが伝わらず変な意味になってしまうからです。これは、単語帳からは学べない貴重な知識です。

多読の経験を重ねると、多義語についても学べます。多義語とは「たくさんの意味や用法がある単語」です。一つの単語で複数の意味を持つので、単語帳で暗記するには不向きな単語です。

多義語を攻略するにはいろいろな用例に触れて実際に使いながら覚えるしかありません。tellという動詞は文脈によって意味や使い方が異なる単語です。

多義語

 

この単語の全体像を捉えるには異なる文脈での使われ方を見ていくしかありません。単語学習の観点からは多読は単語数を増やすのではなく、言葉のイメージを豊かにしていく効果があるといえます。多読で単語を覚えようとするのは非効率です。そもそも本を読める前提として9割以上の単語を知っていることが条件だからです。

しかし、単語帳で覚えた意味を実践で思い出す訓練や、ストーリーと関連づけて印象的な単語を覚えやすくする効果はあるので、多読は大切です。

以上、英単語を楽に覚えるコツを3つ(語源の活用・カタカナの知識・多読)を紹介しましたが、現実的にはこれらをすべて試してみることが肝心です。それでもダメなら、最後は根性で丸暗記するのが最後の手段です。英語学習の辛い部分ですが、長期的な視点に立って子どもをサポートしてください。

スペリングは「ぶつぶつライティング」で覚える

単語学習の仕上げとして、スペリング(つづり)について触れたいと思います。小学生の間は書けなくても問題ありませんが、中学校では英語の試験が始まり英単語を正確に書くことが求められます。

そのため、小学生のうちから少なくとも「正しいスペリングの覚え方」を身につけておくことが大切です。私のおすすめは「ぶつぶつライティング」です。これは声に出しながら、英単語を書く方法です。

例えば、mouth(口)を書くときは、【mau】と声に出しながらmouとつづります。声とスペリングを同時にすると、「ouはアウと発音するのか」と確認できます。

【th】を舌先を上下の歯に軽く挟んで息を出すことで発音しながらthとつづると、thの文字を見るとこの音を出すようになります。もしいい加減にカタカナの「ス」と発音していると、ネズミを意味するmouseと混同する可能性が出てきます。

英語が苦手な子どもほど黙々と英語を書いて覚えようとします。正しい発音でつぶやきながら書くだけで、英単語のスペリングは驚くほど正確に覚えられるようになります。ぜひ、子どもにぶつぶつライティングを習慣づけさせてください。

まとめ

小学生にとって英単語の習得は本当に大変です。しかし、英語力の核となる部分なので、正面から取り組む必要があります。

小学生が最低限覚えるべき英単語の一覧として、英単語集を手元に置いておくといいです。ただし、それ以外の単語学習にブレーキをかけないように注意しましょう。

辛い丸暗記を少しでも減らすために、語源やカタカナを活用したり多読を積むのは良いアイデアです。しかし、万能は暗記法は存在しないので、これらの方法がうまくいかないときには丸暗記の努力も必要です。

中学校に進めばスペリングも大切になるので、ブツブツつぶやきながら英語を書く習慣を小学校のときから身につけておくと有利です。簡単にできるので試してください。

単語に関しては、単語帳を開いて学習するだけでなく、あらゆる機会を通じて英単語を覚えようとする姿勢が大切です。町の看板、本で読んだ意味の分からないカタカナなど気になったら調べる好奇心と行動力を子どもが身につけると、英語力は加速度的に向上します。

子どもが学ぶ、初めてのアルファベットとフォニックス

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どんな英語の達人も最初の一歩は「アルファベット学習」です。お母さんの醍醐味は子どもの人生の第一歩に関われることでしょう。将来子どもが英語の達人になったとき、「あのとき、私とABCソング歌ったな…」と思い出せたら最高です。

子どもが言葉を覚える過程をふり返ってみましょう。お母さんの語りかけを聞きそれを真似することはどれだけ大切かわかります。英語学習も例外ではありません。「英語は苦手なので…」と言わずに、ぜひ、子どもと一緒に楽しみながらアルファベットを学びましょう。

アルファベットを学習するときは、その後のステップである「フォニックス(綴りと音のルール)」を意識すると、その後の学習効率は高まります。今回の記事では、アルファベットとフォニックスを学ぶときのポイントについて徹底的に解説します。

*記事内では発音を便宜上カタカナ表記していますが、カタカナでの発音指導には反対の立場です。

音声中心の学習を心がけよう

子どもに適した英語学習を考えるとき、おおまかに「小学校入学前」「小学校1~4年生」「小学5~6年生」の3つの時期に分けて考えます。実際は年齢でハッキリと分けられるものではなく、その子のレベルや成長に合わせて学習方法を変えていきます。

小学校入学前の子どもは、断然、音声を中心とした学習方法を意識したほうがいいです。文字や文法から始めると高い確率で、英語嫌いになったりつまずいたりします。なぜ、小さい子どもには音声中心の学習が合理的なのかを解説します。

音声中心の英語学習が合理的なわけ

小学校入学前の子どもには「音声中心の学習」が効果的である理由のひとつ目は、子どもの言語習得の過程を見れば明らかです。

子どもはお母さんの語りかけを通じて少しずつ言葉を理解します。成長してくると自分で同じ言葉を声に出して繰り返します。お母さんが自分を指して「ママ」と言えば、子どもはマネをして「ママ」と発話してそれが母親を示す言葉であることを理解します。

その他の言葉も「聞く→真似る→(お母さんが)修正→真似る」を繰り返して覚えていきます。ここまでの学習で文字はほとんど使われていません。音声だけで大人から言葉を学んでいくのは人間に備わった本能です。

年齢の低い子どもはつい最近までこの能力を発揮して日本語を習得しています。この能力を最大限に活用して学ぶほうが合理的です。このように考えていくと、年齢が低いほど音声での学習比率を高くするべきだとわかります。

ふたつ目の理由は、英語の場合、アルファベットを習ってもすぐに英語を読めるようにならないからです。日本語で「かきくけこ」を知っていれば「かき(柿)」は読めます。

ところが英語の場合、そうはいきません。アルファベットを習っても「fox」は読めません。なぜなら“f”はアルファベットでは「エフ」“o”は「オー」“x”は「エクス」と覚えるので、これらをつなぎ合わせると“fox”は「エフォーエクス」と滅茶苦茶になるからです。

このように文字から英語を学ばせようとすると日本語以上に手間がかかり、小さい子どもは「できる喜び」を感じる前に挫折してしまいます。これら二つの理由から、幼児は音声を中心として英語学習をすすめるのが正解です。

音声の学習とデジタル機器は相性抜群

スマートフォンが普及し、その他にもパソコンやタブレットを所有している家庭も多いことでしょう。これらのデジタル機器は、音声面からのサポートを必要とする子どもの英語学習に大変重宝します。

いつでもどこでも好きな動画を見られることの利点は、英語学習の強い味方です。小さい子どもは動くものが大好きです。テレビとラジオの人気と比べれば一目瞭然です。「見たい」「知りたい」「おもしろい」がきっかけとなって英語を学習する流れも自然です。

デジタル機器は子どもの眼の負担を考えれば無制限に見せていいものではありません。しかし、時間を守って与えれば、英語学習の強い味方になってくれるのは確かです。

子どもがハマる!楽しい動画サイトを活用した「リスニング学習法」動画セミナーで紹介しているリトルフォックスでは、フォニックスが学べるコンテンツもあります。

勉強臭さを徹底的に排除

「つまらない」と感じた瞬間に人間の脳はその対象からできるだけ離れるようにプログラムされているようです。私も学生時代、古いノートを棒読みする教授の授業はよくサボりましたし成績も悪かったです。

子どもはつまらないものに我慢できません。だから、英語学習をさせたければ「勉強臭さ(つまらない臭)」を徹底的に排除しなければなりません。逆説的ですが「勉強させるためには、勉強させてはいけない」のです。

子どもは絵本を読むのは勉強したいからではなく、楽しい話を読みたいからです。私の息子はYouTubeで英語でのゲーム中継を見てゲラゲラ笑っていました。おもしろい動画がたまたま英語の解説付きだっただけです。勉強のためにではありません。

勉強臭さを消すには3つの方法があります。ひとつ目は子どもが好きな物をよく観察して、それと英語を結びつける方法です。動物が出てくるかわいい話が好きな子どもなら、そのようなキャラクターが登場する英語の絵本を楽しく読んであげるなどの方法が効果的です。

ふたつ目は何でもゲーム化することです。ゲーム市場の大きさを考えれば、ゲーム好きは人間の本能です。この本能を利用しない手はありません。お母さんや兄弟と一緒に取り組んで、勝ったときには大喜びです。

例えばお菓子を賭けながらアルファベットの練習をしたり、お風呂タイムは正解しないとお風呂から出られなかったりとゲーム化します。負けたときに本気で泣き出すのが欠点ですが、たまに親に勝ったときには大喜びです。泣くのも喜ぶのも真剣である証拠です。

最後は、環境づくりです。例えば、おもちゃ部屋やトイレにイラストとそれに対応した英語を書いたカードが貼ってあるだけで、生活の中に英語が溶け込んでいる環境になります。勉強臭さがなくなるのでおすすめの方法です。

このように子どもの好きなことと結び付けたり、ゲーム化してみたり、生活環境に英語を取り入れたりすることで、勉強臭さはなくなります。「つまらない」は子どもにとって学習の大敵であると肝に銘じておきましょう。

英語学習ではとにかくほめる

出来たことをきちんと受け止めてほめてあげるのは指導の基本です。子どもが英語を覚えたときにはしっかりとほめてあげましょう。このときにしてはいけないのは、うわべだけほめるような言動や点数化されたものしかほめないような評価方法です。

頑張ってもいないものにわざとらしくほめられると、子どもは嘘を見抜きます。テストの結果だけをほめるのも良くありません。点数化された他人の評価を見ないとお母さんがほめてくれないのでは、普段のちいさな頑張りは無視されていることと同じです。

ほめるのは子どもをよく観察していないと出来ません。ちょっとした変化や向上を見逃さないことがほめるときのコツです。

言うまでもありませんが、ネガティブな発言は厳禁です。「もう忘れちゃったの?」とか「こんなの簡単じゃない」などの発言は、子どもの意欲を奪い去ります。

ここまで幼児や英語初心者の英語学習のコツを説明してきました。これらの要点を抑えつつ、具体的にアルファベットを覚える手順を見ていきましょう。

小学生のアルファベット学習

音声を中心とした英語学習が大切なのは確かです。しかし、さすがにアルファベットを飛ばしてすすめることはできません。ひらがな・カタカナ・漢字以外にもアルファベットを覚えなければならないので日本の子どもは大変ですが仕方ありません。

できるだけ子どもの負担にならないようにアルファベットを学ぶ方法を考えてみました。

まずはABCソング

まずは「ABCソング」から始めましょう。「きらきら星」のメロディーの歌が一番有名です。動画サイトでヒットした動画をチェックしてみると、微妙な違いに気がつきます。下の表にそれぞれの違いをまとめてみました。

はじめ(共通) 中 おわり(3パターン)
LMNOPが速い

2つのand

ABCDEFG HIJK LMNOP QRSTU and V

WX Y and Z

Now I know my ABCs.  Next time won’t you sing with me?(最も一般的)

ABCDEFG I am singing ABC.

Now you know your ABC.  Everybody sing with me.

LMNOPが速い

1つのand

LMNOP QRS TUV WX

Y and Z

ゆっくり

1つのand

LMN OPQRSTU

VW and XYZ

ゆっくり

andなし

LMN OPQRSTU V W XYZ

A~Kまではどのバージョンでも共通する部分です。問題はL~Zで、LMNOPを一気に歌うものと、ゆっくり歌うものの2タイプあります。またメロディーに合わせるためのandを入れる位置が違ったり、使わないものもあったりします。

一番下の「ゆっくりandなし」のABCソングは子どもにはおすすめです。余計なandがなく、一文字ごとにゆっくりと歌えるからです。MとNは発音が紛らわしいので、この部分は特にしっかりと発音させたいところです。

Mは上下の両唇を完全に合わせますが、Nは唇を開いたままです。このかたまりは、その前にLがあり舌先を上の歯の裏側に触れたまま音を出すのが正解です。お母さんは何度も口の形を見せてあげながら、子どもに覚えさせるしかありません。

おわりのパートにもいくつかパターンがあるので3つだけ表に掲載しました。ここはアルファベットと関係ないので、お母さんが歌うパートでいいと思います。

アルファベット表

動画などでA~Kまで歌えるようになったら、「アルファベット表」を買いましょう。Amazonなどで検索すると多くのアルファベット表がヒットします。後悔しないアルファベット表を選ぶためのコツを説明します。

  • アルファベット・単語・絵の3点が基本セット

アルファベット表を選ぶときは、そのアルファベットの大文字と小文字の両方が表記されて、その文字を使った単語とイラストが印刷されているものを選びましょう。Aだったら、appleと書いてあって、リンゴの絵が印刷されているものがいいです。

A a apple リンゴ

この3点セットは「フォニックス(英語のつづりと音の規則)」を同時に覚えるための必須条件です。とても大切なポイントなので、それ以外のものは論外です。

また、少々細かい話になりますが、母音は短母音だけを扱った単語に絞った方がいいです。短母音は文字通り短い一つの母音(a, e, i, o, u)のことです。短母音と長母音をまとめた表をご覧ください。

綴り 短母音 長母音(二重母音)
a [æ] apple [ei] face
e [e] egg [iː] meet
i [i] insect [ai] ice
o [ɔ] ox [ou] hope
u [ʌ] up [juː] cube

なじみのない短母音の音を最初に覚えておけば、長母音(二重母音)はアルファベットと同じ読み方で乗り切れるからです。例えば「I i」の項目なら、iceではなくinsectと書いてあるほうが子どもの学習に向いています。

もう一つ注目するポイントは、“X”の項目です。単語の頭にXを使用することを優先させると、xylophone(ザイロフォン:木琴)と表記されることが多いです。しかし、“X”をザイと読むことは例外です。

“X”は単語の中では圧倒的に【ks】で使用されることが多いので、“fox”や“box”を例として出されるほうが、後の学習効果は高いです。ここは語頭に使用されることにこだわらないほうが無難です。

  • お風呂に貼るなら防水タイプを

お風呂タイムにABCソングを歌うのもいいアイデアです。その場合、普通の紙では水に濡れてダメになってしまうので、防水かどうかを確認しなければなりません。

アルファベット表風呂場

アルファベットで覚えにくいところをシャンプーの泡で隠しておき、子どもに言わせてから水鉄砲で答え合わせをするのもおもしろそうです(ゲーム化です)。

  • ボロボロになっても使い倒す

壁用でもお風呂用でも、四角いマス目のなかにアルファベットとイラストが描かれているものがおすすめです。子どもがアルファベットをほとんど覚えた頃には、ポスターはボロボロです。

これをすぐに捨てずに、マス目に沿ってハサミで切り取ります。そして、厚紙に貼り付けると「単語カード」の出来上がりです。なじみ深い絵と単語が書いてあるので、いろいろとゲームに使えます。

  • ネイティブ用と日本人の子ども用どちらがいい?

アルファベット表には英語ネイティブの子ども向けのものと日本人の子ども向けのものの2種類があります。それぞれ長所短所があります。まずは下の表をご覧ください。

長所 短所
ネイティブ用 英語だけで表記されている なじみのない食べ物の単語や絵がある
日本人用 日本の子どもになじみのある単語が使われている カタカナで読み仮名がふってあり、不正確

カタカナの読み仮名は英語習得の弊害になりうるので、できれば避けたいところです。しかし、ネイティブ用のアルファベット表には日本人にはほとんど知られていない単語が使われていることがあり、子どもはイメージできません。

以前私が購入したアルファベット表には、Lのマスに“licorice”と書いてあり、ぜんまいのような絵が描いてありました。私も子どももいつもこのLで頭の中に「?」マークが浮かんでしまい一瞬シラケてしまいました。

リコリスは植物からとった成分でつくったグミのような甘いお菓子です。ヨーロッパでは人気のスイーツらしいのですが、日本人の味覚に合わないらしくほとんど流通していません。

この点は日本人用アルファベット表のLには“lion”とそのイラストが印刷されているので、子どものノリが違います。

難しいところですが、日本人用のアルファベット表を選んで、必要に応じてカタカナの読み仮名をマーカーで消しておくなどのひと工夫が必要です。

アルファベットの大文字と小文字をどう教えるか

あらためて考えてみると、大文字と小文字に相当する日本語の文字はありません。Cとcのように形が同じでサイズが小さくなるだけなら話は簡単です。一方、Rとrのように一見まったく別の文字が同じアルファベットであることを理解するのは意外と大変です。

私の場合は、しばらく大文字だけ扱っていました。あるとき子どもが「これ、何?」と小文字を指してたずねてきたので、「子どもの文字だよ」と答えました。

「犬は大人も子どもも大きさが違うだけで、形は同じでしょ。しかし、ニワトリとひよこは形が変わるよね。アルファベットも大人の文字と子どもの文字で似ているのもあれば、全然違うのもあるんだよ」と説明しました。

Bの小文字がbかdかで迷うことはしばらく続きました。それでも成長するにつれて、わかるようになりました。あまり神経質にならずに、少しずつ覚えていけば大丈夫です。お母さんはゆったりと構えておきましょう。

アルファベットのアプリで練習

従来はABCソングとアルファベット表だけで学習していました。しかし、スマートフォンやタブレットを使うとさらに効果的に覚えられます。各社からアプリケーションが提供されているので、いろいろ試してみて子どもと相性の良さそうなものを選びましょう。

アプリには有料のものと無料のものがあります。有料のものはサービスの一部を無料で試せるようになっています。無料のものは広告が表示されるようになっています。

ほとんどのアプリでは「指でなぞり書き」「フォニックス学習」をかわいいイラストやアニメを見ながら楽しく学べるようになっています。しばらく遊んでいるうちに数字の1~10まで覚えてしまうかもしれません。

子どもが英語を読むためのフォニックスの学習

フォニックスとは「綴りと音の規則」のことで、英語圏の子ども達は小学校に入ると必修になっているようです。この流れから日本でもこのフォニックスを導入する英語教室や学校が増えてきています。

一方、さまざまな理由から「フォニックスは不要」と言い切る人もいます。どちらの主張にも一理あるように感じますが、アプローチ方法が異なるだけで「英語を正しく読めるようになる」ゴールは共通です。

私の意見は、両者の中間にあります。「フォニックスは必要最低限のレベルまでを扱い、その後は正しい音(発音)を聞かせながら自然と英語の読み方を覚える」のがベストだと感じます。

フォニックスをまったく扱わないのはもったいないし、やりすぎはかえって遠回りになります。まずはフォニックスが必要な理由について、詳しく説明します。

フォニックスが必要な理由:英語の読み方を覚えるため

フォニックスが必要な理由を理解するために、日本語と英語で比較して、「あいうえお」と「ABC(アルファベット)」の違いを説明します。

例えば日本語で「あいうえお かきくけこ」まで子どもが覚えたとします。この子どもは「あかい かき(赤い柿)」を見たら、正しく読めるはずです。このことを図で表すと下のようになります。

日本語は読める

これは日本語の文字である「あいうえお…」は「1文字=1音」だからです。「あ」は「あ」の読み方ひとつだけです。だから、すぐに読めるのです。例外は「は」を「は」または「わ」と読むくらいです。

次に英語のアルファベットを「ABCDEFG」まで覚えた子どもがいたとします。その子は「BADGE(バッジ)」を初めて見たときに、正しく発音できるでしょうか? 答えはノーです。

なぜなら「アルファベットとしての読み方」と「単語の中で使われたときの音」は一致しないからです。アルファベットの「A(エイ)」はBADGEの中では「ア」です。これではアルファベットを覚えても読めません。

しかし「FACE(顔)」の中の「A」は「エイ」とアルファベット通りに読みます。文字から学習を始めたら、初めて英語を学ぶ子どもが混乱する理由はここにあります。

そこで登場するのが「フォニックス」です。単語の中で使われる音にはゆるい規則があって、これを学ぶと初めてみた単語でも子どもは自分で読めるようになります。図で表すと下のようになります。

alphabet_phonics

これが、フォニックスを学ぶメリットです。実際、単語の読み方がわかってくると読書量は飛躍的に伸びるので、英語力もそれに比例して伸びていきます。

こうなると「フォニックスをどんどん導入して早く読めるようにしましょう」という流れになるのですが、実際はそう簡単にはいきません。フォニックスを扱うことにはデメリットもあります。

フォニックスのデメリット

本格的なフォニックスの指導書を見ると、細かいルールだらけで専門の指導者でない限りとても覚えられません。子どもにこれらのルールをすべて覚えさせるのは非効率的です。

そしてフォニックス最大の欠点は、全単語の約25%はフォニックス・ルールの例外であることです。つまり、ルールを完璧にマスターしても4分の1の単語は読めるようにならないことになります。

実際フォニックスが確立される前でも、人びとは英語を読めるようになりました。今さらそんな「欠陥だらけのルール」を一生懸命に覚えることは無意味なのではないか、という主張もうなずけます。

ここで問題です。“ghoti”を読めるでしょうか? ヒントは、“rough”のghは【f】、“women”のoは【i】、“nation”のtiは【sh】の音です。これらを合わせると、“ghoti”は【fish】と読まなければいけません。

もちろんこのような単語はありません。アイルランドの劇作家であるバーナード・ショウが英語のつづりと音が滅茶苦茶であることを皮肉って「ghotiをfishと読むように」と提案したというエピソードから引用しました。

このように英語の綴りと読み方の関係は「ルールがあるような、ないような」関係といえます。このためフォニックス賛成・反対の意見が出てくるのです。

最低限のフォニックスだけで充分効果を発揮する

では「子どもにフォニックスを教えるべきか、やめておくべきか」を考えてみましょう。私の結論は「最低限のフォニックス」は子どもが文章をスムーズに読めるようになるために効果的だと考えています。

実際に子どもにフォニックスを学ばせる手順を5段階でまとめてみました。

1)アルファベットを覚える

前項で説明した通り、とりあえずアルファベットを覚えましょう。書けるのは後回しでかまわないので、A~Zまで読めることが大切です。小文字もセットで読めるようにしましょう。

2)母音は短母音、子音も代表的な一つの音だけを覚えさせる

「アルファベットの読み方と、単語の中の読み方は違う」ことを説明しますが、くどくど説明するのは無駄です。それより「Aa(エイ)、ア、ア、ア、Apple」のようにお母さんが声に出して読んでみせて、子どもにリピートさせるのが一番です。

先述した、短母音だけを扱ったアルファベット表はここで役に立ちます。

3)よくある子音の組み合わせを意識させる

ch/sh/wh/th/th/ph/ck/ngの子音の組み合わせは単語の中で頻出するので、絵本を読み聞かせするときに出てきたら、意識させたほうがいいです。

たとえば“chick”(ひよこ)が絵本に出てきたら、“ch”を含む別の単語を書きます。例えば、“cheese”“chest”などです。“ch”のところにアンダーラインを引き、「お母さんが音読→子どもはリピート」が効果的です。同様に最後の“ck”に慣れさせたければ、“clock”“sick”などを紙に書いて下線を引いて、子どもと音読するだけです。

同じ綴りで同じ読み方をする別の単語を書いて見せ、一緒に音読するのも広い意味でのフォニックス練習です。これをしばらく続けていくと、初めて見た単語でも自分で読めるようになってきます。

4)一つのアルファベットで別の音になることもあることを教える

先述したように母音(a,e,i,o,u)だけを取り上げても、短母音の読み方と長母音の読み方があります。Aaを「ア」としか読まないと思っているところに、「face」が出てきたら対応できません。

子どもが疑問に感じていたら、「あれっ、aをエイって読むこともあるんだね」と一緒に驚いてあげれば、「そんなもんか」と受け入れるようになります。子どもの適応力は大人が思う以上に高いのです。「子音+読まない“e”の前は“a”はエイと読む」などの理論は子どもには受け入れられません。

5)読まない字もあることを教える

英語の綴りには、読まない文字(silent letter)もたくさんあります。

私の息子は初めてeggを見たとき「エッグッグ」と読みました。これを聞いて私は少し感動しました。なぜなら、フォニックスのルールをなんとなくわかっている「良い間違い」だからです。

だから「おう、よく読めたね! でも最後のgは読まないから、『エッグ』って読むんだよ」と伝えました。その後も何回か読み間違えて一人で笑っていましたが、3回目くらいから間違えることはなくなりました。

eightのgh、knifeのk, bombのbはすべて発音されません。英語は本当に複雑です。しかし、一つひとつの綴りを目で確認して、お母さんの口まねをしながら身につけていけばそのうちマスターできるので安心してください。

このように、フォニックスの基本だけに絞って教えるだけでも充分効果を発揮します。1000語くらいの基本語彙をマスターする頃にはほとんどのフォニックスのパターンは出尽くしますし、主な例外的な読み方も網羅出来ます。

フォニックスのルールにしがみつくより、声を出して正しく読む練習を積むほうが手っ取り早く英語が読めるようになります。

まとめ

アルファベットの学習からフォニックスの基本につなげる部分は、後の英語力を伸ばすための大切なステップです。単語の読み方に関しては、英語は日本語よりも複雑なので、焦らずに声を出しながら身につけることが重要です。

お母さんが声に出してそれを子どもは真似をするのが最強の音声学習です。しかし、四六時中お母さんが指導するわけにもいきません。そういうときは、デジタル機器の利点を活用して子どもに遊びながら学ばせるのが効果的です。

フォニックスの基本をわかってくると、子どもは急速に英語の本を読めるようになります。読んだ文章量に比例して語彙や表現が増えていきます。この段階までくると学習効率は飛躍的に伸びるので、子どもは自分でも進歩を実感して「英語は楽しい」と感じるようになります。

お母さんの役割は「言って見せ、ゲーム感覚で学ばせ、出来たらほめる」だけです。英語学習の最初の一歩を順調に踏み出せるようにサポートしましょう。

小学生英語塾では中学校ではほとんど扱われないフォニックスの基礎についても指導しています。

小学生の英語通信講座の選び方

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突然ですが、通信講座にどのようなイメージを持っているでしょうか? 子どもの頃を思い出してください。毎月どっさり送られてくる教材に最初は意気揚々と取り組むものの、しばらくすると溜めてしまい、親に怒られながら課題を提出した…そんな経験ありませんでしょうか?

時代は変わり、今では紙の教材からタブレットやパソコンで学ぶ「デジタル教材」に移行しています。大手通信講座運営会社では小学生向けの英語にも力を入れています。従来のイメージのままでは、現在の通信講座を正しく理解することはできません。

「そろそろウチの子も英語を」と検討中のお母さんには、英語教室やオンライン英語レッスンだけでなく、通信講座も選択肢に入れることをおすすめします。自習を前提に構成されているので親が先生代わりになる必要はなく、忙しいお母さんにもぴったりです。

今回は、さまざまな観点から英語の通信講座をどのように選んだらいいのかを解説します。

小学生の英語通信講座:教材はどうなっているか

通信講座といえば毎月大量の紙教材が送られてくるイメージがありますが、実際は違います。大手の運営会社が提供する内容を調べてみると、通信講座は2つの大きな柱から構成されています。それらは「タブレット(またはパソコン)を使った学習教材」と「オンライン英会話レッスン」です。

これら2つの柱に加えて、「紙のワークブック」が必要に応じて送られてきます。デジタル教材とアナログ教材の長所と短所を抑えて、それぞれが補完しあうように考えられています。以後、これらの内容について詳しく説明します。

パソコン、タブレットを使い4技能を伸ばす英語教材

先述のように、教材の大部分はデジタル化されています。英語だけでなく他の教科も同様です。このことから大量に溜まっていく教材の保管場所に頭を悩ませる必要はなくなりました。デジタル教材の長所は写真・図・音声・動画を駆使して、わかりやすく学習内容を伝えられることです。

以前、私は英語教師として授業をしていたとき気づいたことがあります。それは、生徒には「視覚・聴覚に強く反応するタイプ」と「文字に強く反応するタイプ」の両方がいることです。黒板に色分けしたチョークで図を描いたり矢印(→)で修飾関係を示したりするのはそのためです。

デジタル教材では文字解説も含まれますから、どちらのタイプにも理解しやすく工夫されています。英語の場合は音声面の学習が不可欠なので、デジタル教材との相性は抜群です。

このことから、デジタル教材では4技能の「Reading(読む)」「Listening(聞く)」「Speaking(話す)」「Writing(書く)」をバランスよく伸ばすことができます。紙のワークブックでは、どうしてもReadingとWritingに偏りがちでしたが、この弱点はデジタル教材では解消されています。

なおデジタル教材の場合、Writingは鉛筆と消しゴムが使えないのでタブレットのタイピングで補っています。記憶の面では鉛筆で書いた方が優れていますが、ついでにタイピングを覚えてしまうのも将来的には役立ちそうです。

オンライン英語レッスン

Speakingに大切なのは、英文の暗唱(インプット)と話す訓練(アウトプット)の2つです。英文の暗唱は音読を繰り返すことによって体得しますが、アウトプットは実際に話すことによってしか訓練できません。

ひとりごとのように話し続ける訓練法もありますが、小学生には難しいです。どうしても生身の人間を相手にして話す練習が必要です。これを低コストで実現するのが「オンライン英語レッスン」です。

大手の通信講座では標準セットの中に、「オンライン英語レッスン」が月1回含まれています。好きな日時に予約を取り、その時間になったらパソコンやタブレットを使用して講師と英語で会話をします。

レッスンは15分程度です。内容は普段の学習と連動しているので、極端に会話に詰まるようなことはありません。「タブレットで学習した英語を話したら本当に通じた」喜びは、継続するためのモチベーション維持に効果的です。

紙のワークブック

従来の紙のワークブックにも良いところはあります。目は疲れにくいし、鉛筆で書き込める手軽さはデジタル教材にはない長所です。

通信講座運営会社もその点は把握していて、半年に1回ほどの頻度で紙のワークブックを届けているところがあります。たまには鉛筆を手に、黙々とワークブックに取り組むことも必要である証拠です。

このように大手の通信講座は、2つの柱「タブレット(またはパソコン)を使ったデジタル教材」「オンライン英語レッスン」と、「従来の紙のワークブック」(プラス1)で構成されています。

それぞれの長所を活かし短所はお互いに補いながら関連づけられていて、うまくできているなと感心します。では、このような通信講座は、他の学習形態と比較してどのようなメリットがあるのでしょうか?

英語通信講座のメリット

通信講座のメリットのひとつは「費用の安さ」です。大手の受講料を調べてみると、英語だけなら月々約2,000円~3,000円で設定されています。英会話教室に通う費用と比べると3分の1~5分の1程度です。

学年が上がるにつれて教育費がかさむのは頭痛のタネです。しかし、通信講座をうまく利用すると費用を抑えることができます。

さて、小学生が英語を学ぶときは、英会話教室に通うとかオンライン英会話を受講するなど、いくつか形態があります。ここからは、これらの学習スタイルと比較して通信講座で学ぶメリットについて考えてみます。

英会話教室と比較して

お勤めをされているお母さんの悩みは「習いごとの送迎」です。通信講座は自宅で受講できるので、もちろん送迎不要です。車での送迎は、車の所有コスト・駐車代・ガソリン代・事故リスクなどを伴いますが、こうした悩みからも解放されます。

また、教室に通う場合は曜日と時間は固定されていますが、通信講座は子どもの好きなときに取り組めます。宿題や習いごとで忙しい小学生でも、すき間時間を利用して取り組めるのは大きな利点です。

タブレットを利用した学習は、反復トレーニングが必要な場面で威力を発揮します。英会話教室でも分からないところは繰り返し説明してくれますが、回数には限度があります。

一方、タブレットでの学習なら反復回数は無制限です。例えば、発音のトレーニングをするとき、“th”の発音がなかなかできないとします。英会話教室の先生は根気よく教えてくれても、せいぜい10分くらいが限度でしょう。

「動画を見て、口まね、発音・録音、発音のチェック」ができるタブレット教材では、時間も回数も無制限です。機械が相手なので、先生に遠慮することは一切ありません。自分が納得するまでとことん学習することができます。

紙のワークブックと比較して

「自由な時間に学習できる」利点は紙のワークブックも同じです。しかし、デジタルでしか実現できなかったこともあります。ここではデジタル教材ならではの3つの長所を紹介します。

一つ目は、デジタル教材はカラフルな図・絵、音声、動画などを組み合わせて学習内容がわかりやすく理解できるように工夫されていることです。また、正解を選べば拍手や「Good job!」と再生され、子どものやる気を高める工夫もされています。

二つ目は、解説が至れり尽くせりなので親の指導はほとんど不要なことです。これは忙しいお母さんにとって朗報です。わからないところがあると子どもの学習は止まってしまうので、自習を継続させるために大切なポイントです。

ただし、ときには親ができたところをほめてあげたり励ましたりすることは大切です。通信講座のなかには子どもの学習履歴がネットで確認できて励ましコメントを送ることができる「見まもり機能」がついています。仕事でいそがしくても、励ましのコメントを投稿できます。

三つ目のメリットは、復習をしやすいことです。既習事項を復習したいとき、紙のワークブックでは欲しい情報を探すのにひと苦労です。何かの原因で紛失してしまえば、探し出すことができません。

一方、タブレットを利用した教材は欲しかった情報をすぐに検索できます。万が一端末を紛失したり故障させたりしても、情報は残っているので安心です。

このようにデジタル教材には、費用を抑えられるだけでなく、英会話教室や紙のワークブックよりも優れている点が多くあります。次に、通信講座のデメリットにはどのようなものがあるのか見ていきましょう。

英語通信講座のデメリット

おそらく通信講座を検討しているお母さんの心配事のひとつは、「子どもが継続できるかどうか」です。いつでもどこでも勉強できるのはメリットですが、同時にデメリットでもあります。

つまり、強制力がないので自分でやる意志がないと、学習を始めないからです。この問題に対処するには、2つの方法があります。「おもしろい教材を与える」方法と「あえて学習時間を事前に決める」方法です。

おもしろい教材は、子どもに英語学習は楽しいと感じさせるためです。教材のレベルをきちんと子どもにあったものを選んだり、子どもの興味を惹くような教材の内容であるかをチェックしたりすることで、ある程度は解決できます。

この点については、運営会社も努力をしています。インターネットに接続していることを利用して、運営会社は会員のデータを大量に収集しています。これは全国の子ども達の学習パターンを分析するためです。

例えば、成績優秀な子ども達の学習パターンを集めて、効果的な使い方を紹介できます。また、子どもが飽きたりつまずいたりする学習事項も細かく特定できるので、その部分の説明をより興味を惹くように改善しています。

このようにして通信講座の運営会社は、子どもが少しでも継続できるような教材開発に力を入れています。

もう一つの「あえて学習時間を事前に決める」方法は、意志の弱い子どもに有効です。例えば、時間割を作ってしまい、自宅での学習もそれに従って淡々とこなすようにします。

オンライン英語レッスンを利用して、習慣化することも可能です。オンライン英語レッスンは事前に予約が必要です。子どもはその内容を先に学習しないと困ったことになるので、自らすすんで勉強するようになります。ちょっとした強制です。

どのような方法をとるかは、子どもの性格や各家庭の事情に合わせて考えてください。自習を前提としてうまく作られている通信講座の教材ですが、お母さんが時間のあるときに学習状況を確認するだけでも、継続率は向上します。

タブレットを使うと眼は悪くなる?

デジタル教材の良さばかりに注目してしまいがちですが、長時間近い距離からモニターを見つめていると子どもの眼に負担がかかります。一回の使用に上限を設けたり、ときどき窓の外の景色をしばらく眺めたりして、眼を休ませましょう。

専用タブレットの中には使用時間を設定できる機能が付いているものもあるので、そういったものを利用することも検討しましょう。

英語の通信講座を選ぶときのポイント

小学生向けの英語通信講座はいくつかあります。これらの中から、どのようなポイントに気をつけながら最適な通信講座を選んだらよいのかを解説します。

ネット環境は整っているか

タブレットやパソコンの使用が前提となっているので、自宅に安定したインターネットの環境があるかどうかを確かめてください。同じ家の中でも部屋によっては通信速度が遅くなる場所が発生するので、子どもが学習するエリアでの確認が必要です。

動画を再生するのに問題なければ、通信速度の心配はありません。

専用タブレットかどうか

選択する通信講座によって、既に持っているパソコンやタブレットでの受講が可能なものと、提供会社が指定する専用タブレットを使用するものの2パターンがあります。費用的には前者の方が抑えられるのはいうまでもありません。

専用タブレットの場合は、最初にタブレットの購入費用が約1万円発生します。タブレット端末としては決して高くありません。問題は短期で解約したり子どもが落として故障させたりしたときに、初期費用以上の金額を請求されることです。

例えば、6か月未満の短期で解約すると、約3万円のタブレット代金を請求されることがあります。故障の際の交換対応では、有料保障サービスをつけないと4万円近い金額を請求されます。

いずれにしても、タブレット関連で発生しうる費用に関しては、事前に慎重に調べましょう。

専用タブレットにも長所はあります。子どもの利用を主体に考えて設計されているところです。例えば、有害なホームページの閲覧をできないようになっていて、インターネットでの検索に使用しても安心です。

また、子どもの使用を考えて一般的なタブレットよりも耐久性を重視した造りになっており、壊れにくくなっています。

レベル設定・コースの選定は慎重にする

受講レベルの設定は子どもの継続意欲に大きな影響を与えるので、慎重にしましょう。変更手続きは簡単にできますが、新しい教材が配信されるのは翌月からになります。

難易度だけでなく、コース選びにも注意しましょう。普通に基礎的な英語を学ぶだけなら問題ありません。でも、「英検対策をしたい」など具体的な目標がある場合は、それに対応したコースを選びましょう。

レベルやコースの変更によって、費用が変わることがあるので確認が必要です。

英語だけでも受講できるか

小学生の通信講座は国語・算数・理科・社会が主体です。これらの教科に追加して英語を始める場合は特に問題はありません。しかし、「英語だけを受講したい場合」には、個別の受講は可能かどうか確認をしましょう。

また、これまでも他の教科を受講していて、あらたに英語を追加する場合は割引が適用されることがあるので、調べたほうがお得です。

過去の復習をできるか

デジタル教材の強みの一つは、復習が容易であることは先述したとおりです。この特性を生かすためにも、過去の教材を利用できるかどうか、きちんと確かめましょう。幸いほとんどの通信講座では、受講期間中の復習は問題なくできるようです。

小学生向け英語通信教育:肝心の効果は

英語の学習を継続する際の大きな壁は、上達を実感しにくいことが挙げられます。例えば、算数では足し算のひっ算を学習したら、その場で正解が出せるようになり達成感を得られます。

一方、英語の場合、複数形の勉強をしても英会話力が向上することはほとんどありません。すべての技能が複雑に絡み合っているので、効果を実感するまでに相当な時間がかかります。

お母さんが最も気になるのは、英語の通信講座を受講して、どのくらい英語力が向上するのかということでしょう。特に、英語教室に通った場合と比較しての効果を知りたいはずです。

しかし、実際に効果を正確に測定するのは難しいことです。子どもの能力はそれぞれ異なるので、他の子どもと比較しても通信講座の正しい評価にはなりません。

英語教室に通っている子どもより通信講座を受講している子どもの方が英語が上達した場合、それは学習形態の違いよりも学習時間や頻度に影響を受けているかもしれません。

たった週1回の英語教室だけで済ませている子どもと、毎日15分程度英語に触れている通信講座の生徒では後者の方が伸びる可能性は高いです。しかし、毎日の音読練習を取り入れれば英語教室に通っている生徒が上回る可能性もあります。

このように通信講座の正確な評価は難しく、個人の体験を一般化することは適切ではありません。しかし、これでは通信講座がいいのか悪いのか判断材料がなくなってしまいます。そこで、デジタル教材の特性を考えてどのような段階の学習者に通信講座は最適なのかを考えてみます。

初期の基礎的な学習には効果的

英語学習において基礎はとても大切です。とりわけ、フォニックス(音とつづりの関係)や英語独特の発音方法などの音声面はこの学習初期に身につけさせたいものです。

私は「基礎的な学習には通信講座はかなり効果的である」と思っています。我が家では、子ども達はすでにこのレベルを超えてしまったので検証できません。しかし、デジタル教材の特性を考えると、音声面の基礎的な学習には利用価値が高いと考えます。

例えば、thの発音の仕方を例にとってみましょう。デジタル教材では、上下の歯の間に軽く舌を挟んで空気を出す様子を動画で見られます。モデルの音声は何度でも再生できて、自分の声を録音して正しい発音ができているか確認もできます。

タブレットではその気になれば何時間でも反復訓練できます。英会話教室の先生も根気強く指導してくれるかもしれませんが、さすがに何時間もというわけにはいきません。

「英語で伝える」という点においてはネイティブのような発音を目指す必要はありません。ほどほどでいいのです。しかし、上手に読める自信をつけた子どもと、そうでない子どもでは英語に対する興味関心は確実に変わってきます。

このような理由から、英語がゼロの状態から音声面の基礎を学ぶ段階においては、デジタル教材をつかった通信講座は利用価値が高いと私は思います。

ある程度まで達成できたら、一度やめるのもアリ

では、英語の基礎を身につけた後も通信講座は効果的でしょうか? この点については、私も正直判断が難しいです。とりあえず受講して1年経ったところで、「英検」や「英検Jr.(小学校低学年・幼児向けの英検)」を受験することをおすすめします。

できれば半年後にもう一度受けて、スコアの推移を観察してみましょう。もしスコアが順調に伸びていて子どもも続けたいと言っているなら、そのまま継続で問題ありません。

もしスコアの伸びが今一つだったり、子どもがあまり乗り気でなかったりする場合は一度やめて、別の計学習形態に変更することも検討してみましょう。

基礎がある程度身についた後は、より深く幅広い学習を求められるので、タブレットだけで済ませるには無理が生じます。本をたくさん読んだり、自分のことをいろいろと書いてみたりして暗唱するような学習にはタブレットは向いていません。

子どもの英語の伸びが鈍くなったのは「成長のサイン」です。このサインを見逃さないように、学習方法や学習形態が子どもの実情に合っているかどうかを常に見極めることが大切です。

まとめ

小学生が英語を学ぶときには、英会話教室、オンライン英語レッスン、通信講座、eラーニング、音読を中心とした自習などさまざまな方法があります。子どもの性格・レベル・家庭の事情によりどれが適しているのかは一概に決められません。

どれを選んだとしても、週1回程度の頻度ではほとんど上達は見込めません。通信講座は毎日少しずつ学習するように設計されていますから、英語に触れる頻度は格段に増します。

最初に選んだ学習方法が最適なのかどうか、ときどき「英検」や「英検Jr.」を活用しながら、客観的に判断するのが望ましいです。通信講座では親が常に見守る必要はありませんが、時間があるときは学習を見てあげると子どもの成長を感じたり、つまづきに気づいたりすることができます。

これまで見てきた通り、通信講座には良い点がたくさんあります。子どもの英語を伸ばすためのひとつの方法として頭に入れておきましょう。

小学生から始める「英語音読トレーニング」(実践編)

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書店の語学コーナーに行くと、斬新なタイトルがつけられた英語学習法に関する本がズラリと並んでいます。私は新しいものが好きなので、つい立ち読みしてしまいます。

そこで気がついたことがひとつあります。それは、ネーミングは違っても結局のところ「音読練習を否定している本は一冊もない」ということでした。

つまり、ほとんどの英語指導者は音読の効果を認めているということです。ただ、その方法が多少異なっているにすぎません。

小学生が長期間取り組めることを前提に、私の経験をもとに「英語音読トレーニングのやり方」をまとめてみました。まずは、私のやり方でしばらく試していただき、それぞれの状況に合わせてアレンジしてください。

小学生の音読に適したテキストとは?

小学生の音読トレーニング用のテキストを選ぶときは慎重にしましょう。中学生や高校生なら学校の英語教科書が最適です。しかし、小学生用の英語教科書は内容的にまとまりのある文章が少ないので不向きです。

お母さんが本や通信講座の題材などから探すしかありません。そこで、どのような観点で選べばいいのかを説明します。

おもしろい内容であること

結論からいいますと、圧倒的におもしろい内容であることが必要です。たとえば小学1年生の子どもに「環境問題」をテーマにしたテキストを使用しても、すぐに飽きてしまうのは明らかです。

普段、子どもが好んで見ている番組や本を思い出して、それに近い英語のテキストを探すといいでしょう。善悪がはっきりした登場人物や、動物や乗り物が出てくる話など、子どもによってハマるテキストはさまざまです。

続きが楽しみになるような内容なら音読を継続したくなるはずです。おもしろさには妥協しないで根気よく探しましょう。

セリフ(会話)と地の文が適度に混ざっていること

セリフと地の文が混ざっているテキストが、小学生の音読に適しています。セリフの部分には口語表現が多く含まれていますし、地の文ではやや難しめの表現や過去形が頻出します。

例えば、“It’s a piece of cake!” said Peter. (「簡単だよ!」とピーターはいいました)のセリフでは口語表現でよく使われる“it’s a piece of cake.”(楽勝だ)というフレーズが使われています。地の文では、“said”(sayの過去形)が使用されています。

このようにセリフと地の文が混ざっていると、バランス良く幅広い英語が学べるので音読には適しています。セリフのところには感情を込めて音読すると、感情と表現が結びついて学習効果が高まります。

難しすぎず、長すぎないこと

難易度にも気を使いましょう。絵や動画をヒントにしながら数回音声を聞いて、8割くらい理解できるのが理想です。つまり、2割程度わからない部分や聞きとれなかった部分が残るくらいがちょうどいい難しさです。

長さはノーマルスピードで読み上げて40秒くらいから始めましょう。集中力を切らさずにリスニングできる長さがそれくらいです。慣れてきたら少しずつ延ばしても大丈夫ですが、長くても1分くらいにしておきましょう。

音声、挿絵、動画付きであること

音読トレーニングをするときは、模範となる音声を何度も聞きます。したがって、ネイティブが収録した音声が絶対に必要です。車での移動中に練習できるように、スマホに音声ファイルを入れておくと便利です。

また、テキストに関連する挿絵も必要です。内容理解の助けになるからです。さらに、アニメーション(動画)がついていると、細かい部分まで理解することができます。

通信講座やeラーニング(インターネットを利用した学習サイト)の中には、動画(字幕ON・OFF)だけでなく、本文のテキストファイルや音声ファイルが用意されているものがあります。これらのファイルはダウンロードして自由に使えるのでとても便利です。

理想の音読教材を使った、音読によるリスニング強化はこちらを参考にしてください。

用意するものと環境づくり

音読トレーニングは習慣化しないと意味がありません。そのため、音読のたびに必要なものを探すようでは時間の無駄です。また、音読がどこまで進んだかをお母さんも子どもも一目でわかるようにする工夫が必要です。

ここではe-ラーニングの教材で音読することを前提に、用意するものを表にしてまとめてみました。

必要な物 目的
パソコン、スマートフォン(またはタブレット)、プリンター テキストの動画や音声を再生したり、印刷したりするため
ストップウォッチ 音読の速さを記録するため
筆記用具 テキストに記入できるように
チェックリスト(ondoku_checklist) 音読したらチェックしたり、秒数を記録したりするため
小さなカゴ 上記の物を入れておくため

パソコン、スマートフォン(またはタブレット)、プリンター

スマートフォンかタブレットがあればほとんどのことはできますが、一部の機能に制限がある場合があります。また、ゲームアプリに気が散ってしまって音読に集中できないこともあります。

パソコンがあれば、eラーニングのサイトをフル活用できます。プリンターで印刷したものを使用すれば、気が散って途中でゲームを始めてしまうようなこともありません。

初めは動画や絵を見ながら音声を聞くので、パソコン・スマートフォン・タブレットのいずれかが必要です。しかし、子どもの眼の負担を考えると、途中からできるだけ紙で読んだ方が好ましいです。

プリンターが一台あると、モニターを見つめることなく音読練習できるのでおすすめです。また、後述する穴埋め式のスクリプト(原稿)を作ったりするときにも、パソコンとプリンターがあった方が便利です。

その他

ストップウォッチは安いもので構わないので、ぜひ揃えたいアイテムです。ときどき音読のスピードを測って記録すると、自分の成長を数値で実感できるからです。お母さんや兄弟と競わせるなどして、ゲーム感覚で取り組ませることも長続きさせるコツです。

筆記用具も音読用に揃えてもいいかもしれません。鉛筆、消しゴム、赤ペンがあれば充分です。音がつながるところに印をいれたり、意味をメモしたりするときに使います。

カゴに入れておく

百均の店などで小さいカゴを購入して、その中に今週読むテキスト(本)、筆記用具、タブレット、ストップウォッチなどを入れておきましょう。

また、音読チェックリストもこの中に入れておくと、既に終わったこととこれからやるべきことが一目でわかるので便利です。できた項目にはチェックを入れたり、タイムを測ったときの秒数を記録したりします。

なお、上記の音読チェックリストについては「こちら(ondoku_checklist)」からもダウンロードできます(上記と同じファイルです)。実際に使用するときは、子どもの状況に合わせてアレンジしてください。

実際の手順

ここでは、音読トレーニングの手順を解説します。私の経験から、1週間で1つの音読トレーニングを終了するサイクルが最適と感じています。短時間の音読でも頭と口が疲れるので、7日目は休みにしてあります。忙しくてどうしてもできなかったときは、7日目の予備日を使いましょう。

1週間に当てはめて下の表のようにモデルプランを考えてみました。スピードに慣れてくる後半ほど密度が濃くなるように配慮してあります。

  音読メニュー
1日目 内容把握
発音・意味のチェック
2日目 リッスン&リピート
3日目 オーバーラッピング
スピードオーバーラッピング
4日目 イメージ読み
シャドウイング
5日目 シャドウイング
Read & Look Up
6日目 穴埋め・ディクテーション
会話練習
最後1回のリスニング
7日目 休み(予備日)

また、それぞれの音読活動がイメージしやすいように、実際の音読練習風景の動画を掲載します。下記の説明や注意事項と合わせて映像で確認すると、スムーズに理解できます。

以下、このモデルプランについて詳しく解説していきます。なお、最後に動画でも解説しているので、そちらも参考にしてみてください。

1日目:内容把握、発音・意味のチェック

テキストを用意できたら、音声を再生してリスニングを始めます。動画・挿絵などを参考にして、どのような内容が話されているのか英語の音に集中させます。3回くらい集中して聞いてみて、聞き取れないところを少なくしていきます。

次にテキストや字幕を読みながら音声を再生します。耳で聞きとれなかった部分を文字で読んで「ああ、このことだったのか」と子どもが納得することが大切です。

初めて見る単語は、発音も意味もわかりません。まずは、発音を確認して、何度も声に出して読ませましょう。それから意味を確認します。「最初に発音、次に意味」です。新しい単語を覚えるときは、この順番を守らせるようにしましょう。

知らない単語については、ときどき子どもに前後関係から意味を類推させてみましょう。すぐに答えを教えずに考えさせると良い頭のトレーニングになります。

一日目の目標は、英語の本文を読んで内容を把握したり、知らない単語の読み方や意味を学んだりすることです。子ども一人では難しいので、お母さんやお父さんが手伝ってあげましょう。ストーリーを一緒に楽しむような感じで教えてあげるのがコツです。

この日の最後に、子どものペースでテキストを一回音読させましょう。つっかえながらでも構いません。ストップウォッチで時間を計測して、秒数を記録させます。これで、一日目の音読トレーニングは終了です。

2日目:リッスン&リピート

一文ずつ聞く(Listen)→ 音読で繰り返す(Repeat)の順に進めていきます。一つの文が長すぎるときは、意味のかたまりごとにリッスン&リピートしていきます。

例えば“Taking care of a pet is a lot of work.”(ペットを飼うのは大変です)という文章が長すぎると感じたとします。 “Taking care of a pet/ is a lot of work.”というように、最初にお母さんがスラッシュ(/)を入れてあげると子どもは読みやすくなります。

音声のスピード、抑揚などをできるだけまねるようにリピートさせてください。セリフの部分は特に登場人物の気持ちになりきって読むように伝えましょう。

3日目:オーバーラッピング、スピードオーバーラッピング

・オーバーラッピング

オーバーラッピングとは「被せる」という意味です。つまり音声と同時に被せるようにして、テキストを読んでいきます。読み方が遅いと、モデルの音声とどんどんズレるので、頑張ってついていくように子どもを励ましましょう。

・スピードオーバーラッピング

スムーズに読めるようになったら、さらに速く読めるように「スピードオーバーラッピング」の練習をします。これにはスマホの再生アプリを利用します。音声ファイルをダウンロードして、「1.3倍速」で同じ英文を再生してオーバーラッピングしていくのです。

毎回詰まってしまうところは、音声なしでテキストを読みながら何度も音読させます。最初から完全にできるのは教材がやさしすぎる証拠です。10回くらい繰り返してやっと読めるようになるくらいが普通です。

この日の最後に、音声なしで音読してタイムを測りましょう。初日よりは確実に速く読めるようになっているはずです。時間が短くなっていたら、「上手に読めるようになったね!」とほめてあげましょう。

4日目:イメージ読み、シャドウイング

・イメージ読み

3日目は速く読むことに集中させましたが、4日目の最初は内容をかみしめるように音読させましょう。内容を理解できるペースで音読させます。これができると英語の語順で内容を理解できるようになるので、速読やリスニングの土台づくりに最適です。

コツは読みながら頭の中にその文章の動画が流れているように音読することです。日本語の文字が頭に浮かぶようだと処理速度が遅くなります。

例えば“Taking care of a pet is a lot of work.”と読んだときは、ペットの散歩に汗を流している人を思い浮かべるようにします。「ペットの世話をすることは…」と日本語の字幕が流れてしまうと次々に読まれる英文に追いつかなくなります。

・シャドウイング

今度はテキストを使わずに、音声だけを使用します。「シャドウイング」とは、再生される音から3語ほど遅れて追いかけるようにして音読するトレーニング方法です。文字は見ません。

途中で詰まっても気にせずに、できるところから再開するように伝えましょう。耳で聞こえた内容を頭に2秒ほどためておき、同じように英語を話します。わずか数秒ですが、情報を頭の中に蓄えることにより処理が遅れてもあわてず英語を理解できるようになります。

初めのうちはほとんど再現できずに子どもは嫌になってしまうかもしれません。しかし、繰り返し練習しているうちに少しずつできるようになっていきます。あまり完璧を求めず集中力が切れたところでおしまいにしましょう。

5日目:シャドウイング(仕上げ)、Read & Look Up

・シャドウイング(仕上げ)

不思議なことに、前日できなかった部分が一晩寝るとスムーズにシャドウイングできるようになっていることがあります。数回、前日と同じように練習したら、仕上げのシャドウイングに移ります。

今までは音を聞いて、その通りに話すことばかりに意識を集中させていたと思います。しかし、仕上げでは内容をしっかりと意識したシャドウイングに挑戦します。

「音声から聞こえる英語の映像を思い浮かべる → 頭に2秒分溜める → 同じように話す」という流れです。これはとても脳に負荷がかかる練習方法で大人でも長時間続けることはできません。

子どもなので完璧を目指さなくても構いません。「音ばっかり追いかけないで、どんな話か思い浮かべながらやってみよう」と注意をうながすだけで充分です。

・Read & Look Up

最後に、テキストを使ったトレーニングです。まず、一文を黙読させます。その文章を頭にためておいて、目線を上に向けます。そして、下を見ないで同じ内容を音読します。これがRead & Look Upです。

もし文章の終わりまでが長すぎるようでしたら、リッスン&リピートのときに書き込んだスラッシュごとに行っても大丈夫です。

6日目:穴埋め・ディクテーション、会話練習、最後1回のリスニング

・穴埋め

もしテキストをプリントアウトできるなら、キーワードになるようなところを3つくらい選び出して、空欄を作ったり黒いマジックで塗りつぶしたりします。

そして、全文をリスニングさせながらその空欄部分の英語を記入させます。これまで暗記してしまうほど読み込んでいるので、簡単に記入できるはずです。それでいいのです。最初は全然わからなかったものが聞き取れるようになったので大きな成長です。

・ディクテーション

余裕があればディクテーション(聞こえた音声を文字で書く)にも挑戦させましょう。一つの文を選んで、リスニングをしてそれを紙に文字で書き取ります。句読点や大文字・小文字の使いわけにも注意しながら、完璧な文章を再現させます。

注意点は必ず一文の最後まで聞いてから、鉛筆で書くように伝えることです。一語一語一時停止しながら書き取っては意味がありません。何度か聞いて完成したら、テキストと見比べてお母さんが赤ペンで訂正します。どこを間違えたのかを目で確認するのはとてもよい勉強になります。

・会話練習

いよいよ大詰めのトレーニングとなりました。お母さんが先生となって、セリフの一部を入れ替える口頭作文にチャレンジさせてください。

例えば、先ほどの“Taking care of a pet is a lot of work.”の前半部分を入れ換えれば、英会話に応用できます。「『赤ちゃんの世話は大変だ』って英語で何ていう?」と問いかけます。“a pet”を“a baby”にすれば立派な英語です。

これまでやった音読が会話に応用できることを実感させるためにも、このような口頭英作文はとても効果的です。

・最後のリスニング

最後に1回だけ、静かにリスニングをしましょう。一週間前とは違って、ほとんど完璧に聞きとれるようになっているはずです。子どもと一緒に「聞きとれるようになって、すごいね!」と喜んであげましょう。

以上の流れをイメージしやすいように、実際の音読練習風景の動画を掲載します。上記の説明や注意事項と合わせて映像で確認すると、スムーズに理解できるでしょう。

まとめ

動画では椅子に座って音読学習をしていますが、実際はどこでも構いません。例えば、習いごとに行く途中の車の中で、音声を再生しながらオーバーラッピングやシャドウイングをしても全然構いません。

そうすれば「勉強」っぽく感じさせずに、子どもに音読トレーニングをさせることができます。家に帰ったら、他のことに時間を使えるので子どももお母さんもうれしいはずです。

このように家庭ごとに工夫して、音読トレーニングを習慣化しましょう。地味なトレーニングですが、ほとんどの英語の達人が推奨している効果抜群の学習方法です。必ず効果があらわれると信じて続けてください。

小学生から始める「英語音読トレーニング」(理論編)

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子どもが英語教室に通い始めると、最初の一年でいろいろなことを覚えてきます。「英語教室に通わせて良かった」と感じるお母さんも多いでしょう。

しかし、そのまま右肩上がりで英語力がどんどん伸び続けることはありません。1年半を過ぎると、子どもの英語力が本当に伸びているのかどうか疑問を感じることが増えてくるはずです。

もし、あなたの子どもがアルファベット、発音、フォニックス(つづりと発音の法則)などの基本をすでに身につけているなら、次のステップにすすむ絶好のタイミングです。

とはいえ、やみくもにワークブックを家でやらせても子どもは嫌がるだけです。本当に身につく英語学習を積み上げて、子どもの英語力が確実に伸びるような学習方法を取り入れましょう。

私が推奨するのは「音読トレーニング」です。そこで今回は、英語音読が必要な理由とどのような効果があるのかについて述べていきます。

英語力は自宅学習の「量と質」で差がつく

英語は体育や音楽のような技能教科に似ています。これらの技能を伸ばすための指導法を参考にすれば、子どもの英語力を伸ばすヒントが見えてきます。

例えばピアノが上手に弾けるようになるための方法を見てみましょう。ピアノを習う子どもは、週1回30分のレッスンを受けるのが普通です。レッスンでは先生がマンツーマンで教えるので質の高い時間を過ごします。

しかし、たった週1回30分のレッスンだけでピアノが上達する子どもはいません。ピアノが上手な子どもは、例外なくその何倍も自宅で練習しています。つまり何かの技能を伸ばすには、質の高い指導と同時に圧倒的な練習量が必要です。

学校や英語教室だけでは量が足りない!

英語の習得にはおよそ3,000時間の学習が必要と言われています。学校で仮に週2コマ(1コマ=45分)1.5時間を1年間(35週で計算)実施したとして、1年でおよそ50時間学習したことになります。

しかし、学校の授業の1時間は「1時間学習した」とみなしていいのでしょうか? 厳密には学習時間とは「実際に英語の活動をしている時間」のことです。

例えば、先生の一方的な日本語での解説は、正確には英語学習時間にカウントすることはできません。あくまでも子どもが英語を「読む・聞く・話す・書く」のいずれかの活動をしている時間が「学習時間」です。

このように考えると、実際の学習時間は単純に合計した時間の4分の1くらいに減ってしまいます。上記の例でいうと、学校で年間50時間の英語授業を受けたとしても、実際の学習時間は約13時間になります。どんなに英語の先生が質の高い授業をしても、英語を身につけるための時間が圧倒的に不足しています。

このような学習時間不足を解消するには、毎日の自宅学習で補うしかありません。しかし、毎日たった10分~15分程度の英語学習を習慣化するだけで、子どもの英語力は確実に伸ばせます。

自宅学習は質も高める必要がある

学習時間不足は自宅学習で補う必要がありますが、「勉強時間」だけを気にしていてはいけません。自宅学習では、勉強の「質」にも気を配らなければなりません。繰り返しになりますが、英語は技能教科です。英語を「読む・聞く・話す・書く」活動をしない限り、成果を上げることは難しいでしょう。

例えば、ピアノは「ピアノを弾くこと」が練習の基本です。楽譜ばかり読んでピアノを弾かないとしたら、ピアノは上達しないでしょう。

同じように、英語学習の基本は音声のトレーニングだと私は考えています。もし、自宅学習の大半が問題集に黙々と取り組むだけだとしたら、英語を使えるようにはならないでしょう。

子どもの英語力を伸ばすためには、時間(量)の確保とともに「質の高いトレーニング」が必要です。では、具体的に何をしたらいいのかを説明します。

おすすめは4技能を伸ばす「音読トレーニング」

音読トレーニング

写真はリトルフォックスのプリンタブル機能で作った絵本を使って、音読練習をしているところです。詳しくはこちらを参考にしてください。

巷には英語学習法の情報が溢れています。私もいろいろと試してみましたが、最終的に「音読トレーニング」が最高の自宅学習法であると確信しています。

音読は「教科書を開いて文章を読み上げる単調な作業」と思われがちです。しかし、実際は非常に奥が深いトレーニング方法です。正しい方法で音読を継続すると4技能(読む・聞く・話す・書く)すべてを刺激することができます。

4つの技能に対して、どのように音読が効果的なのかを一つひとつ説明します。

・Reading(読む)

Readingに関しては音読のメリットは二つあります。一つ目のメリットは、英語の語順に従って音読するので強制的に英語の語順で内容を理解するようになることです。初心者にありがちな、語順に逆らって読んでしまう「返り読み」を防ぐことができます。これは速読につながる第一歩です。

二つ目のメリットは、音読のスピードと同じ速さで内容を理解することができるようになります。1分間に約150語が音読の最速ペースと言われているので、このレベルまでは音読だけで達成できます。ちなみに150語/分で読めれば、大学入試の英語長文でも安心です。

・Listening(聞く)

リーディングによって英語の語順のままに理解できるようになると、リスニングにも好影響をもたらします。なぜなら、聞こえた音の順番に内容を理解しなければならないリスニングは、まさにリーディング力が基礎だからです。

また、実際の音読トレーニングでは何十回もネイティブによる英語音声を聞くことになります。例えば、シャドウイングと呼ばれる練習方法では、モデルとなる音声を耳で聞きながら数語遅れで自分の口で同じ英語を話します。細かい音にも注意しながら何十回も繰り返します。

その結果、英語特有の「音の消失(sit down)」「音の連結(an egg)」「音の変化(meet you)」という日本人の聞き取りを難しくしている現象にも慣れます。

・Speaking(話す)

音読で体得した英文の一部を身の回りのものや人で置き換えると、それは英会話をしていることと同じです。例えば“I see yellow pencils.”を覚えていると、“You see yellow pencils.”と言えますし、“I see red pencils.”とも言えます。

このように暗唱できるパターンが多ければ多いほど、英会話ができるようになります。スピーキングのようなアウトプットには、大量のインプットが必要なのです。日頃から音読トレーニングを積んで、表現を覚えてしまうほど反復練習する必要があります。

・Writing(書く)

ライティングはすべての技能の集大成ともいうべき最も高度な技能です。文法・語彙・論理性・文体などさまざまな要素が絡みあうからです。日本人が日本語で小論文を書くのが大変であることを思い出してもらえれば、その難しさが想像できるでしょう。

小学生の段階では、スピーキングができるだけで充分です。なぜなら、スピーキングがライティングの基礎になるからです。

本格的なライティングは小学生には難しすぎます。そこで音読の最終段階で、文章の一部についてディクテーション(聞こえた英語を書いていくこと)を行うことで、ライティングのトレーニングをすることは充分可能です。

このように「音読トレーニング」は英語の4技能すべてに好影響をもたらします。これほど効果的な学習法は他に見当たりません。ここでもう一つ、「音読トレーニング」をするべき決定的な理由について述べます。

「ネイティブは音読していない」はウソ!

音読で効果を上げるには、年単位の努力が必要です。その必要性をきちんと理解していないと、子どももお母さんもすぐに心が折れてしまいます。

「ネイティブは音読トレーニングなんかしていないのに、なぜ必要なの?」と思うお母さんは多いかもしれません。しかし、実際はネイティブも気が遠くなるほどの音読トレーニングをしています。

例えば、幼児が“Pass me the salt, please.”(その塩を取ってください)といえるまでにどのような過程があったかを考えてみます。

最初は誰かがそう言っているのを何度も聞きながら(リスニング)、塩が入った瓶が手渡される様子を見るところから始まります(内容理解)。

次に、しょっぱい味がするものが“salt”であることを覚えます(単語学習)。それ以降は、塩が欲しいときは、“Salt.”と指で指しながら発話するはずです(音読)。

その後、おもちゃで遊んでいるときに“pass me~”(私に~を渡して)という表現を覚えます(音読)。このフレーズと以前覚えた“salt”を組み合わせて、塩が欲しくなったら“Pass me the salt.”と言い始めます(音読)。

しばらくすると親から「“please”をつけなさい」と教えられます。ここまで来てようやく、“Pass me the salt, please.”と場面に即して使えるようになります(音読)。

このようにネイティブは日常生活で無意識に大量の音読練習をして、少しずつ英語を身につけています。幼児が毎日1時間話していたとしたら、それは音読を1時間していることと同じです。

一方、日本人の子どもは日常生活で英語を使う場面がありません。そのため、テキストや音の素材を用意して、「人工的な音読練習」をする必要があります。毎日1時間は無理ですが、小学生の子どもでも毎日15分くらいの音読トレーニングを習慣化したいところです。

このように、無意識か意識的かの違いはあっても、英語学習には音読トレーニングは不可欠です。トレーニングの意味に疑問を持つと効果が薄れてしまいます。子どもに「何でこんなことするの?」と聞かれたら即答できるようにしておきましょう。

音読トレーニングの3つの注意点

音読トレーニングを効果的にするには、「英文を理解すること」「正しい発音で読むこと」「相手に伝えるつもりで音読すること」の3点に注意しなくてはいけません。順番に説明します。

・「英文を理解すること」

意味のわからない文章を何度も音読しても、使えるようにはなりません。先ほどの例で挙げたように、ネイティブによる無意識の音読でも、自分が話している内容(塩を取って欲しいと頼んでいる)は理解しています。

子どもなので、細かい文法事項の説明は不要です。しかし、少なくとも絵や動画を見ながら、どのような意味の文章なのかはきちんと理解する必要があります。「意味のわかる文章を音読する」ことが大切です。

意味がわからない単語が出てきたときは、お母さんがいきなり答えを教えるのではなく子どもに推測させるといいでしょう。前後の文脈や挿絵・映像を駆使して考えさせるのです。行間を読む力は日本語でも必要ですし、英単語力も伸ばすことができます。

・「正しい発音で読むこと」

めちゃくちゃな読み方では、聞いている相手に負担をかけてしまいます。ネイティブのような発音をする必要はありませんが、「英語らしい音(日本語にはない音)」に気をつけて読む必要があります。

例えば、日本語の母音である「あ」は1つだけです。一方、英語では「あ」に近い音は、“apple(アとエの中間)” “cut(のどの奥から出す)” “hot(口を大きく丸く開けて出すア)” “balloon(あいまいな母音のア)” のように複数あり、ネイティブはすべて使いわけています。

私が中学生の頃、このような発音練習の手間を省いて英語にカタカナの読み仮名をふらせる先生がいました。私はこの指導には大反対です。

例えば、pencilを読むときに、読み仮名をふると「ぺ・ン・スィ・ル」(4つの音)となります。ところが実際は、pen・cilの2つの音のかたまりで読まれます。

カタカナ読みを習慣づけてしまうと、オーバーラッピング(英語の音声と同時に読み上げる音読練習)のときに、音声についていけなくなります。読み上げる音の単位が、英語は少なくカタカナは多いからです。

このような理由から、本格的な音読トレーニングを始める前に、音声面の基礎を身につけておく必要があります。英語教室などで1年半ほど先生に発音を教えてもらった後、音読トレーニングを開始するのが理想です。

・「相手に伝えるつもりで読むこと」

現実の世界では、独り言以外は聞いている相手がいます。音読トレーニングは基本的に一人で行うものですが、目の前に聞いている人がいることを想定して音読することが大切です。

例えば「命令文にpleaseをつけると丁寧な依頼になる」と言われますが、実際はそれほど単純ではありません。言い方によっては、相手に断ることを許さない雰囲気になることもあります。

やさしい調子で“Open the window.”と相手にいうと、失礼どころかむしろ丁寧な依頼に聞こえます。登場人物の気持ちになりきり、相手がいるつもりで音読をすると、そのフレーズの表現力が豊かになります。

ここであらためて、ネイティブが無意識にやっている音読と、日本人の英語の音読を重ねてみましょう。ネイティブは伝えたいこと(意味がわかる文)を正しい発音(相手に伝わる発音)で、相手に対して(相手に伝えるつもりで)話しかけています。

つまりここで述べられている3つのポイントは、ネイティブの日常会話を再現したものです。これらのポイントを意識して音読トレーニングを続けると、より大きな効果を生み出すことができます。

どれくらいの期間で、どのように英語力は伸びるのか?

音読トレーニングは正しい方法で行えば、必ず効果はあらわれます。ただし、即効性はありません。個人差はありますが、早くても3か月、通常は1年以上継続しないと効果を実感できません。

我が家は家族で海外に住んでいた時期がありました。そのとき私は2人の子ども達に、真逆の英語教育をしました。

娘は中学校の授業以外に塾や英語教室には一切通いませんでした。中学校は日本人学校だったため、普通の日本の中学生とほぼ同じ環境でした。また、私は家で娘に英語を教えたことはほとんどありません。中1の頃、彼女の英語の成績は5段階で4か3でした。

一方、息子は海外のインターナショナルスクールに入学して、Year2~Year5(日本の小学1年~4年に相当)の3年半を過ごしました。当然、英語漬けの毎日です。私は息子に家で毎日英語を教えていました。入学当時の彼の英語力は、同級生と差がありすぎてどうしたものかと悩むほどでした。

唯一2人が共通して取り組んだのが、音読トレーニングです。娘は学校の教科書を中心に、息子はeラーニングの教材を中心に1年以上に渡り継続しました。2人ともほぼ毎日続けて、最後の方は完全に習慣化していました。

1年半後、娘は学校以外でまったく英語を習っていないのに、急に成績が伸びて5段階で5になりました。中3で英検3級に合格しましたが、成績表を見ると準2級も合格圏に届いていました。

息子は音読に取り組んでから、リーディング力が大幅に向上しました。文字を読むスピードが速くなり、難しい本にもチャレンジするようになりました。その結果、語彙力が大幅に向上して、それまで低迷していた成績が一気に平均を超えるようになりました。

娘も息子も1年以上音読を続けて、ようやく結果が出ました。時間はかかりますが、音読は正しい方法で継続すれば必ず結果がついてきます。

まとめ

英語教室や学校での英語の授業は、先生が教えてくれる貴重な時間です。しかし、圧倒的に時間(量)が足りません。

時間不足は自宅学習で補うしかありませんが、学習内容も追求したいです。それを可能にするのが音読トレーニングです。

ネイティブでさえも無意識の音読に膨大な時間を費やしています。日本人の子どもはふだん英語を使う機会がありません。そのため意識的に英語の音読を取り入れることが重要です。

最低でも3か月~1年くらい継続しないと結果が見えず、途中で嫌になることもあるでしょう。まずは、お母さんが音読の意義をきちんと理解しましょう。そして、子どもの音読をほめてあげたり、励ましたりして習慣化できるように支えてあげましょう。

子どもの英語力に変化が見られないと、音読の効果に疑問を持つこともあるかもしれません。しかし、効果を信じて継続すれば必ず子どもの英語力は向上します。

なお具体的な音読の方法については、「小学生から取り組む英語音読トレーニング(実践編)」で詳しく取り上げています。ぜひ、そちらも参考にしてください。

子どもの英語学習は何歳から? 子どもの英会話は意味ないって本当?

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「英語ができる人は早期英語教育に否定的です。やらせたがる人は英語ができない人です」

有名なコメンテーターがテレビで主張して、一時期話題になりました。

ネットでは「そうだ、そうだ! よくぞ言ってくれた」という意見が多かったようなのですが、私は「そうかな?」と感じました。

知り合いの英語上級者の家庭では、子どもの英語教育に割と積極的だからです。しかも良い結果を出しています。

彼らの子どもの様子を聞いてみても、日本語が遅れることはなさそうです。

「子どもの英語学習はいつから始めるのがベストなのか」

今回の記事では私の経験をもとに、

・子どもの頃を逃すと英語は身につかないのか

・英語力をキャリアに活かすためにはどのようなプランで学んだらいいのか

・早期英語教育は本当に無駄なのか

上記の3点について解説します。

子どもの英語はいつから始めるのが正解?

英語の仕事をしていると、ママさんから「英語は何歳から始めるのが正解なんですか?」とよく聞かれます。

結論から言いますと、何歳から英語学習を始めても問題ありません。

「えっ、そうなの?」と意外な表情を浮かべるママさんが多いのですが、事実です。

確かに脳科学的には子どものほうが音に関する感性が高いことは証明されているようです。【l】と【r】が聞き分けられるなどの、いわゆる英語耳が育ちやすいのはその一例です。

しかし、大人にも論理的な類推力や常識など、子どもよりもはるかに優れている分野があります。

それぞれの年齢や発達段階に応じた強みを生かせば、何歳から始めても英語の習得は可能です。

「〇〇歳までに始めないと、英語脳(耳)は育たない!」

このような広告を見て、「ウチの子はもう遅いのか…」などとあきらめたり、慌てて高額の教材を購入する必要はまったくありません。

反対に、退職後のおじいちゃんやおばあちゃんが英語を習い始めても、まったく遅すぎることはありません。努力に比例して英語を伸ばすことは可能です。

しかし、私は10歳から本格的に英語学習を始めることをおすすめしています。

「話が違うだろ!」とツッコミが入りそうですが、落ち着いて私の話を聞いてください。

一つ目の理由は、人間は10歳くらいから、論理的・抽象的な思考力が高まります。そうすると英文法を理解できるようになるので、効率的な英語学習が可能となるからです。

論理的習得能力グラフ

もう一つの理由は、その時期から始めると受験においても就職・仕事・転職においても最も英語の恩恵を受けられるからです。

このことについてもう少し詳しく説明しましょう。

英語による収入アップを目指すなら、10歳から英語を始めよう

多くの人が大学進学を実現していますが、現役で合格したとすると21~22歳(大学3~4年生)あたりで、就職活動の時期を迎えます。

この時期に履歴書で「私は英語ができますよ」とアピールしたければ、英検準1級レベル、TOEICなら800点以上が目安です。

難関大学の入試レベルでも、英検準1級には届きません。つまり難関大学に入学してからも英語学習を正しい方法で1年間学び続けることが求められます。

海外との取引がある会社や部門で働くことになると、一定水準以上の英語力は必須となります。どんな業務であっても、やはり英検準1級程度の英語力がないと、実際の業務に支障があるでしょう。

もちろん簡単なことではないので、このレベルの英語力を持ったビジネスパーソンはそうでない人よりも年収が高くなる傾向にあります。

その証拠に、高い英語力を証明するTOEICのスコアを持っている人は、より有利な条件の転職に成功する傾向が顕著にあるようです。

これらのことを総合的に考えると、21歳までには英検準1級レベル、TOEICなら800点以上を取得しておくと、就職・仕事・転職で大きなアドバンテージを得られることがわかります。

これをとりあえずのゴールと考えるなら、小学4年生(10歳)くらいから本格的な英語学習を開始したほうが良いと私は考えます。

受験英語で優位に立ち、大学入学後も英語学習を続ければ社会人になっても高い収入を得られる確率が高まるからです。

英語ができる社会人になるまでのざっくりプラン

目標とその達成時期が明確になったところで、どのようなプランで達成するかを大まかに頭に入れておきましょう。

下の図は小学4年生から大学生までの間でクリアするべきステップを示したものです。上の段は、お母さん世代が受けていた英語教育の様子です。下の段は今の子ども達が目標にするべき目安です。

お母さん達がかつて受けていた従来の英語教育よりも、一段階目標到達時期が早まっていることがわかります。

そして、よりコミュニケーション能力が重視され、リスニング・スピーキング・ライティングも含めた4技能をバランスよく伸ばすことが求められています。

つまり、やることが増えてより早い段階で達成しなければいけなくなったのです。

しかし、中学校・高校では他教科のレベルも上がり部活動など時間のやり繰りが大変になってきます。英語学習ばかりに時間を充てられません。

英語学習は年単位の努力が必要です。そうなると中学入学前の小学校時代にできるところは進めておくことがポイントになります。

結論として、

英語は何歳からでも学べます。しかし、将来の収入アップに最大限活用したければ、小学4年生から本格的な英語学習を始めましょう。

そうすれば社会人になる前に英検準1級(TOEIC800点以上)の取得もかなり現実的になります。

「それなら、もっと早く幼児期から英語教育を始めたらどうなの?」

という疑問が湧いてきますよね。そこで、早期英語教育について、メリットとデメリットを考えてみましょう。

幼児期から英語学習を始めるメリットとデメリット

私の住む地域では、英語のプレスクールが大盛況です。英語のネイティブが幼児を預かり英語で子どもを保育する場所です。

ときどき散歩で家の前を通る子ども達を見かけますが、ネイティブのような発音で英語の歌を歌いながら歩いています。

“Look!  It’s a butterfly.”  (見て!チョウチョウだよ)

簡単な英語だけれど、状況に合わせてスラスラときれいな発音で英語を話すのを見ると感心してしまいます。

我が家は一時期海外に住んでいたことがあります。当時5歳だった息子はインターナショナルスクールに入り、3年半通いました。帰国して1年以上経過しますが、今でも英語を話せます。

一方、日本語が完成しないうちからの英語教育に反対する意見も根強くあります。日本語に悪影響を及ぼすというのが主な理由です。

また、小さい頃から英会話教室に通わせても、まったく英語が上達しなかったという話もよく耳にします。

幼児期からの英語教育は本当に効果的なのか、またどのようなメリットとデメリットがあるのかについて説明します。

本気で英語を必要と子どもに感じさせられるかどうかがポイント

私の経験上、幼児期の英語教育を成功させるための条件はたった一つです。その条件とは「英語が生活に必要な言葉として本人が本気で認識すること」です。

幼児は教養のためとか将来のために勉強をするわけではありません。その言葉を覚えないとお母さんと話ができなかったり、友達と楽しく遊べないから、必死になって覚えるのです。

英語のプレスクールに通う子ども達は、おそらく一日の大半を過ごす場所では英語がメインで使われるため、覚えたほうが絶対に楽しく過ごせるから英語を話すのです。

インターナショナルスクールに通っていた私の息子は本来は社交的な性格でしたが、最初は英語ができずに無言で過ごしました。

しかし「友達と遊びたい」「先生の指示がわからないとマズイ…」と本能で悟り、幼児期の自然に言語をマスターできる能力と合わさり、3カ月後には簡単な英語を話すようになりました。

英会話教室に通わせても子どもがなかなか英語を話さない、というケースをよく耳にします。これは、子どもの中では生活に必要な言語として英語が認識されないため、メインの言語として使おうと思わないからです。

日本で過ごしながら、子どもに英語の必要性を感じさせる環境を作るのは大変です。しかし、その条件さえクリアすれば子どもは積極的に英語を覚えようとします。

必要性がなければ急速に英語を忘れる

幼児期を海外で過ごした子どもが日本に帰国すると、あっという間に英語を忘れるという話は本当です。

なぜなら、「もう英語は必要ない」と子どもの脳が感じるからです。特に、音声だけから覚えた英語は必要なくなると急速に忘れます。

これを防ぐには、本(文字)を読めるようにしておくのが有効です。

私は自分の息子で試してみました。海外にいるとき、話すことよりも英語で読書をすることに力を入れました。

簡単な本を一緒に読んだりしながら、少しずつ読書経験を積ませます。テレビは見られなかったので、暇な時間は読書をするか映画をみるしかありません。

2年くらいすると、ネイティブの子どもと同じくらいの本が読めるようになりました。

帰国後は普通の公立小学校に通っています。普段の会話はほぼ100%日本語です。しかし、文字から覚えた英語はほとんど忘れていません。

幼児期に運よく英語を話せるようになったなら、もうひと頑張りをして英語で本が読めるようにしておくようにしましょう。

そうすることで日本語環境に戻ったとしても、英語を忘れずに一生のスキルとして保持することができます。

幼児期の英会話はムダって本当?

では、そこまで徹底的にやらない「習い事としての英会話」は無駄なのでしょうか? 週1回、楽しく英語に触れるレッスンは時間とお金の無駄なのでしょうか?

私は中学校から英語を習い始め英語が得意になりました。現在は、英語上級者といわれる英検1級も取得しています。

大人になったある日のこと、母から私が英会話教室に通っていたことを聞かされました。ところが、私はまったくこの記憶がありません。

通ったことすら忘れているありさまなので、普通に考えると時間とお金の無駄です。

ところが、一つ私が「そうだったのか!」と腑に落ちたことがあります。それは、中学校で英語を習い始めたときに、私はすぐに英語らしい発音ができたのです。

【f/v】【th/θ】【l/r】などは日本人が苦手とする発音です。しかし、私は先生の見本の通りにほとんど初日からこれらの発音の使い分けができました。

クラスメイトがなかなか発音できないのを見て、「なぜ、こんなのもできないのだろう」と不思議に感じたのを覚えています。

もしかすると小さい頃に通った英会話教室で訓練していて、身体が覚えていたのかもしれません。

中学校では、英語を上手に読めることで気分が良くなり、英語好きになりました(単純な性格ですね!)。

この経験から、幼児期の週1回の英会話教室も、実は役に立ったといえるのではないかと感じます。

確かに、あまりにも高額な教材を購入したり、嫌がる子どもに無理やり英語を習わせるのは私も反対です。

しかし、幼児期に楽しく英語に触れる経験をすることは、たとえ英語を話せなかったとしても無駄ではないでしょう。

そういう意味では、英会話教室に通わなくても、親と英語の絵本を読んで楽しく過ごすだけでも充分です。

幼児期の英語教育は、楽しく学びながら将来役に立つことがあるかもしれないと大らかに構えておきましょう。

英語の早期教育は日本語に悪影響を及ぼすって本当?

海外に住む日本人の子ども達は多かれ少なかれ日本語の発達が遅れます。母親との会話は簡単なやり取りで済むため、高度な日本語の刺激が入らず幼児レベルのままであることが多いです。

特に漢字については海外では必要性がないのと、難易度が高いために年齢相応に覚える子どもはほとんどいません。

しかし、これらの話は海外に住む子どものことです。

日本に住む子どもが半日英語環境で毎日暮らしていたとしても、一歩外に出ればそこは日本です。この状況では、日本語への悪影響はほとんどありません。

人工的に極端な英語環境を作れば話は別ですが、そんなことはほとんど起こりません。したがって、幼児期から英語を学んだとしても日本語が育たなくなるなどの心配は無用です。

まとめ

英語を学ぶのに年齢は関係ありません。しかし、受験・就職・仕事・転職において英語力を武器に収入アップを目指すなら、小学4年生から本格的な英語学習を開始したほうが余裕をもって取り組めます。

さらに早い時期である幼児の英語教育については、賛否両論あります。子どもが英語を必要と感じる環境に置けば、高確率で英語を話すようになります。

日本にいながら週1回の英会話教室では英語を話すのは難しいでしょう。しかし、将来、本格的な英語学習を開始したときに思わぬ形で役立つ可能性もあるので無駄とは言い切れません。

幼児の英語教育については、楽しく学ばせることが大切です。高額すぎる教材を購入したり、嫌がる子どもに無理強いするのは厳禁です。お母さんはあまり前のめりにならないように注意しましょう。

私の周りの英語上級者の家庭でも積極的に子どもに英語学習をさせています。日本語力の低下や思考力が育たないなどの心配はしなくても大丈夫です。