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語彙力アップだけじゃない!子どもの英語、多読のメリットとは

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公立中学校に通う生徒は3年生になると高校受験を意識して勉強し始めます。10年前なら本格的な受験対策は夏休みからで充分間に合いました。

しかし、最近では難関校では都道府県で共通の問題ではなく、学校ごとの「自校作成問題」を出すようになりました。

東京都立高校の自校作成問題を詳しく見てみると、問題の難易度が高いだけでなく、英文の量がとにかく多いです。1分間に読む単語数をWPM(Word Per Minute)で表しますが、150WPM(中学生レベルなら最速)で読み続けてもほとんど見直す時間がないほどの量です。

学校の授業では精読(正確に読む)が中心です。教科書の1~2ページを1時間かけて正確な意味を解釈する、という授業スタイルです。精読だけでは、3年生の夏休みから本格的に長文対策に取り組んでも、難関校志望の場合は間に合いません。

私はある程度英語力があるのなら、小学生のうちから「多読」の習慣を取り入れるべきたと考えています。多読とは、語彙レベルの平易な英文を大量に長時間読み続けるリーディングです。

多読を通して子どもは豊かな語彙力を身につけます(詳細についてはこちらの記事をお読みください)。今回は、語彙力以外で多読によって得られるメリットについて詳しく説明します。

子どもの英語学習に多読を取り入れよう

過去形や助動詞をひと通り習ったら、小学生から英語の多読にチャレンジして欲しいと思います。物語はどうしても過去形中心で書かれるため、英検4級程度の文法知識が前提となります。

小学生の英語多読には、普通の洋書ではなく「語彙制限本」と呼ばれるものを教材にします。語彙制限本とは語彙レベルに応じて使用される単語レベルを調節して書かれた本のことです。

例えば、英単語1000語レベルの学習者でも読めるように書かれているため、辞書を引かずにストーリー展開に集中できます。ときどきレベル外の単語も登場しますが、その場合は注釈がつくようになっています。

多読の最大のメリットは語彙力が豊かになるところですが、それ以外にも英語の多読によって得られることを中心に説明します。

英文法の定着

文法は知識として覚えるだけではダメです。多読のなかで覚えた知識を何度も確認することで、記憶が強化されていきます。

例えば、money(お金)は数えられない名詞です。これを知識として覚えても、すぐに忘れてしまいます。また、英語を話したり書いたりするときに、数えられない名詞として使えないと意味がありません。

本を読んでいて、主人公が財布を拾ったとします。“Wow, there is so much money inside the wallet.”(ウォー!財布の中にたくさんお金がある!)というセリフを読んだとき、これまで覚えた知識が活躍します。

moneyは数えられない名詞なので、「たくさんのお金」というときはa lot of moneyかmuch moneyで表現します。そして動詞は単数扱いのisとなります。

文法知識として覚えたことが、多読を通じておもしろいストーリーの中で実際に使われているのを何度も確認することになります。無理に暗記している状態から、自然と頭の中に定着していきます。

また、まだ習っていない文法が文中に使われているとモヤモヤした感じが残ることがあります。軽いフラストレーションは語学のモチベーションを高めてくれます。

しばらくして昔に読んだ本を取り出して読み返すとき、以前よくわからなかったところがスラスラと頭に入ってくると自分の成長を実感できます。テストの点数が上がるよりも、このような瞬間に英語スイッチが入るものです。

読書を通じて異文化を学べる

簡単な英語で書かれてあっても、小説の舞台は外国です。日本とは異なる文化を垣間見ることができるため、異文化を学べる絶好の機会です。

小説は空間だけでなく、時代も飛び越えられます。古代ギリシアの話を読めば、演劇では男性が女性を演じていたとか、そのような知識が自然と身につきます。

留学をしなくても、英語を通じて歴史や多国の文化を深く知ることができるのが多読のよいところです。

マレーシアに住んでいた頃、子どもに「KOKKO & MAY」という英語版のマンガを買ってあげました。チャイニーズ系マレーシア人の男の子が主人公のマンガで、マレーシアの文化や習慣が満載でした。

学校の先生が生徒を棒でたたく指導をしているシーンなどがあり、日本との違いを興味深く感じたものです。実際に現地の親に確認すると、チャイニーズ系の学校では体罰は普通に認められている、とのことでした。

入試や英検の長文問題が楽になる

多読の楽しさがわかると、小学生でも1時間くらい英語を読み続けることができるようになります。この能力は、受験のときに大いに役に立ちます。

最近の難関公立高校の入試問題を見ると、英語の語数が驚くほど多いです。これは成績上位の生徒の点数を少しでも散らして評価しやすいようにするためです。都立の難関校では英語の合格基準が60点あたりになるように調節されています。

中学3年生になってから初めて長文に取り組む生徒と、小学生時代から英語の読書習慣がある生徒では大きな差が開くはずです。

語彙制限本であっても一冊の本の英語のボリュームはかなりのものです。この長さの英語を読むことに慣れていれば、英語の入試問題を読むのも苦になりません。

また、検定試験でも同様のことが当てはまります。社会人が受験するTOEICのリーディングパートでは速読だけでなく、斜め読みの技術がないと制限時間内に終了できません。

従来のように短めの文を細かく分析しながら読む「精読」に加えて、大量の英文をスピーディーに読む「多読」の能力は必須です。

読書の力は日本語も英語も共通

英語の本ばかり読ませると日本語能力に悪影響があるのでは、と心配されるお母さんもいるかもしれません。しかし、その心配は不要です。

どんな言語においても読書は教養を深めるために大切なものです。

我が家では息子が海外のインター校にいた間は、英語の読書に力を入れました。会話は学校で自然と身に付くため、リーディングは意識的に取り組みました。

子どもが好きそうなジャンルの本を目につくところに放置しておくと、いつの間にか本好きになっていました。

Year5(日本の小4)のときにはハリーポッター全巻を原書で読み切りました。もちろん知らない単語はたくさんあったようですが、読み飛ばしたり類推したりしたようです。

帰国後、日本語能力の低下がないか心配でしたが、杞憂に終わりました。国語の読解問題のテスト結果を見ると、それほど悪くなかったからです。

行間を読む力は、どの言語の読書をしても養われます。おそらく英語の読書を通じてそのような訓練をしていたため、日本語で読んでも登場人物の本当の気持ちなどが直接書かれていなくても予想できるようになっているのです。

英語の多読を続けると国語の読解力にも好影響を与えます。安心して取り組むようにしましょう。

まとめ

難関校の高校入試問題で、英語の長文量がとても増えています。かつては中3から長文対策をすれば間に合いましたが、今後はそれでは間に合いません。小学生から英語の多読に慣れ親しませることで、大量の英文を制限時間内に読み終わるようになります。

多読を通じて語彙力が向上するのは間違いありません。しかし、多読のメリットにはそれ以外にもあります。

参考書や問題集で知識として蓄えた文法をさまざまな文脈の中で確認することで、すぐに忘れてしまう知識ではなく一生頭に残るようになります。また、多読をすると舞台となっている国の文化や歴史についても深く知ることになります。

多読の楽しみを知ると、子どもでも1時間を超えて英語を読み続けるようになります。このような経験を積んでおくと、大量の英文を制限時間内に処理しなければならない入試や検定試験でもあわてずに済みます。

英検4級程度の英語力がついてきたら、子どもの英語教育に多読を取り入れましょう。

中学受験の英語入試について

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我が家には小学生の子どもがいますが私立中学の受験は考えておらず、割とのんびりと生活しています。日が暮れるまで校庭で遊び、帰ってから宿題をやる程度の毎日です。

一方、私の住む地域では教育熱心な家庭が多く、中学受験に向けて夜遅くまで塾に通う小学生が大勢います。夜9時頃の塾帰りの小学生を見て「小学生なのにすごいな」と感心していました。

先日何気なく塾のチラシを読んでいると、「中学受験で英語入試を採用する学校が増加している」という記事がありました。大学入試改革における英語4技能の総合評価と小学校での英語の教科化の影響です。

中学受験の英語試験について私はこれまでまったく知識がありませんでした。しかし、中学受験における英語入試についていろいろと調べてみたところ、いろいろと学びがありました。小学生の子どもを持つお母さんで中学受験を検討されている方に、私なりの見解を交えて解説します。

中学受験で英語入試を実施する学校は年々増加

首都圏模試センターの資料によると、2019年首都圏中学入試での「英語(選択)入試」(帰国生入試以外)の実施校は私立と国立を合わせて125校でした。5年前の2014年はわずかに15校だったことを考えると、大幅に増加しています。

*詳しい資料はこちらからダウンロード:https://www.syutoken-mosi.co.jp/blog/upload/a09cfcb8651fbddc970d8acb8d509148_7.pdf
(首都圏模試センター)

資料を細かく調べると、試験形態や英語を含めた科目数はバラバラです。それぞれの学校が独自の基準を設けて、試行錯誤している様子がわかります。基本的な問題を出す学校から、小学生向けとは思えないような難問を出す学校まで難易度もさまざまです。

中学受験の英語入試2つのタイプとは

中学受験の英語入試には大きく2つのタイプがあります。一つ目は、帰国子女向けの英語入試です。親の海外勤務に帯同し海外で教育を受けた子どもが、中学受験を機に帰国するケースを想定しています。

生徒募集要項にある「帰国生入試」はこれに該当します。出願資格には、海外在留期間〇年以上などの条件があります。

もう一つのタイプは、日本で生まれ育った普通の小学生が対象の「英語選択入試」です。英語を小学校の間学び、英語が得意科目なのでそれを活かして受験したい、という子どものために一般入試の一形式として英語を選択できるケースです。英語は選択科目であり、受験に必ず必要ではないところがポイントです。

この場合、英語以外の科目については学校ごとに異なりますが、下記のうちのいずれかに分類されます。

国語、算数、英語から2科目選択
算数と英語の2科目で受験
英語のみの1科目で受験

近年増加しているのは、上記のうちのいずれかによる一般入試における英語選択入試です。次に、超難関校や難関校での英語試験導入についての動向について調べてみました。

中学受験:超難関校では英語入試は未実施

「英語選択入試」を採用している中学校は、つい最近までは中堅・下位校だけでした。しかし、2017年から難関校でも徐々に採用されるようになり、2019年度入試では慶応湘南藤沢中等部でも「英語選択入試」がスタートしました。

一方、私のように中学受験に疎い者でも聞いたことのある御三家(麻布・開成・武蔵・桜蔭・雙葉・女子学院)においては、2019年時点では未実施です。

これらの超難関校に入学できるくらいの能力ならば、中学から英語を学んでも大学受験の頃には余裕で英検準1級レベルに到達するでしょう。そのためこれらの学校ではあえて英語を入試科目に入れる必要はない、と判断しているのかもしれません。

中学入試:難関校の英語入試のレベル

超難関校では様子見が続いていますが、難関校では少しずつ英語選択入試を導入する学校が増えています。そこで、実際の英語試験のレベルはどの程度のものなのかを調べてみました。

実際に英語入試問題がインターネット上に公開されている学校から、関西の難関校である「西大和学園中学校」の英語入試問題を参考にしました(2018年度英語重視型A方式筆記問題・東京会場)。

西大和学園中学校の英語入試問題の紹介

まず、問題用紙の表紙から度肝を抜かれました。目次や注意書きがすべて英語で書かれています。受験生はあらかじめ塾などで何が書かれているかを予習するのでしょうが、小学生向けの試験とは思えない仕様です。

・Section 1: Error identification 文法や語法の誤りを見つける問題(15問)

選択肢をよく見ると、「d 間違いがない」が含まれており、これが難易度を上げています。あいまいな文法理解では正答できない問題で、英検2級に合格できるくらいの英語力が必要です。

・Section 2: Choosing the appropriate words 文中の空欄に適した語句を選ぶ問題(15問)

過去形と現在分詞形の違い・関係代名詞の正確な知識・高度な語彙が求められます。全問正解する必要はないのでしょうが、私にもわからない単語が含まれている問題がありました。

・Section 3: Choosing the best response to the prompt 質問に対する適切な応答を選ぶ問題(10問)

前のセクションと比較すれば、やや易しめの問題ですが、あとに長文が控えているので悩んでいる時間はありません。

・Reading Comprehension  長文の内容一致問題(2問)

長文の内容一致問題が二つ(それぞれ5問)あります。英検2~準1級レベルのリーディング力が求められます。

正確さだけでなく、圧倒的な速読力が必要です。前半の問題で20分かけたとしたら、一つの長文には答える時間も含めて10分しかかけられません。

海外のインターナショナルスクールに3年半通った息子は、ハリーポッターシリーズを英語で読めますが、この問題を解かせたところ制限時間ギリギリでした(10問中9問正解)。日本で生まれ育った小学生にこの英語力を求めるとは、もう笑うしかありません。

西大和学園中学校の英語入試は相当難しい

私が過去問を見たところ、問題のレベルは英検2級相当の生徒なら6割くらいは正答できます。しかし、英検2級よりも難易度が高いと感じることが2つあります。

一つ目は解答時間が短いことです。相当な速読力が求められており、同じ文を繰り返し読み直す時間的余裕はありません。

二つ目は扱われるテーマや語彙レベルの高さです。長文ではハッブル宇宙望遠鏡やイギリスの児童文学作家のロアルド・ダールによる『チャーリーとチョコレート工場』がテーマです。これらの知識がなくても解答はできるでしょうが、ある程度の予備知識がなければ小学生でこの内容を理解できる子どもはかなり限られます。

難易度をまとめると、文法力は英検2級レベル、リーディングに関しては英検準1級に近い英語力がなければ高得点を取るのは難しいテストです。

結局、合否を決めるのは日頃の英語トレーニングの質と量です。こちらの動画セミナーで詳しく説明しています。

中学入試:難関校を本気で英語入試で受けるためのプラン

ここまで読んだほとんどのお母さんは「そんなの無理」と思ったことでしょう。実際、その通りで普通に英語を習ったくらいでは、小学6年生でこのテストに自信をもって解答できる子はほとんどいないでしょう。

さすがにこのレベルになると、生まれつきの頭の良さが絶対に必要です。もちろん相応の努力も必要です。ここまで読んでもチャレンジしたい、と思う小学生やお母さんのために一応、私なりのプランを考えてみました。

  • 小学6年生の夏前までには英検2級取得が最低ライン

難易度から判断すると、小学6年生の6月の英検までには2級を取得しなければなりません。ギリギリの合格ではダメで、あまり試験対策をしなくても余裕をもって合格できるくらいの英語力が必要です。

小学6年生の夏からは文法・語法の細かい知識を完成させつつ、多読と精読に時間をかけてリーディング力を向上させましょう。リーディングだけなら準1級に合格できるくらいの結果が欲しいです。

  • 小学3年生から本格的な英語学習をスタート

逆算すると、どんなに遅くても小学3年生になったらすぐに本格的な英語学習に取り組まなければいけません。中学レベルの英語は1年半~2年で完成(英検3級レベル)させましょう。

ワークブックに取り組むだけでは不充分です。早い段階から、多読に取り組むことも大切です。使用語彙数が限定された英語の本を日常的に読む習慣を身につけましょう。

英検2級の取得前後からは、語彙数を多少強引に伸ばすことも必要です。具体的には単語帳などを活用しながら、暗記に励む努力が求められます。

  • 一般教養も必須

先述のとおり長文で扱われる内容が高度なため、普段から幅広い分野に興味を持つことが大切です。テスト勉強だけでなく、図書館やインターネットなどを活用しながら自ら調べるような習慣が厚みのある知識や教養を作ります。

難関校の中学受験で英語を選択する場合は、相当な時間と努力が必要です。英語を選択できる入試が増えているとはいえ、複数校を受験することを考えると効率の良い方法とはいえない気がします。

英語が好きでたまらなくて何時間勉強しても苦にならず、抜群に英語力が伸びる生徒に限定されそうです。難関校の英語試験については、私はこのように感じました。

中学受験と英語学習の継続は可能か

中学受験の詳細については私は素人です。しかし、メディアなどの情報から相当大変であることは理解できます。受験科目としてではなく、子どもに英語を習わせ続けるかどうか悩むお母さんも多いかもしれません。

私は、中学受験の勉強をしながら、受験に必須ではない英語を学習し続けることは難しいと推測します。英語は教科の中でも成果が表れるまでに最も時間がかかる科目です。限られた時間のなかで、中学受験と英語学習を両立させるのは困難です。本格的な受験勉強に取り組むならそちらを優先させるほうが効率がいいのは間違いありません。

  • 本気で英語入試に絞る子ども以外はおすすめできない

このように考えると、難関校を志望する場合、あえて英語を選択する小学生はどのような子どもでしょうか。

何らかの事情で海外の学校に数年通っていて、英語の基礎がすでにありつつ国語や算数もできる生徒。
神童レベルで何を学んでもすぐに吸収してしまう生徒。
英語が好きでたまらなくて、大人がビックリするほど急激に英語力が伸びる生徒。

このような条件から「帰国生よりも該当者が少ないのでは」と私は感じました。

  • 中学校の意図がわからない

中学受験の対象のほとんどは私立なので、それぞれ学校の独自性があっていいと思います。しかし、中学入学前までにこのようなハイレベルな英語力を課して、その後の6年間をどのように教育するつもりなのか私のレベルでは理解できません。

このような難問を8割以上正答できる生徒なら、あと1年英語の授業を受ければほとんどの大学に合格できます。中学生で英検1級に合格も可能でしょう。残りの5年間、英語の教師は何か教えることが残っているのでしょうか?

私が無知なだけで、もっと高度な英語力を養成するプログラムがあるのかもしれません。いろいろと調べた結果、世の中には実にいろいろな学校があり、スーパーエリートの子どもがいるものだとあらためて感じました。

まとめ

中学受験において、帰国子女以外の生徒が受ける「英語選択入試」を採用する学校が急激に増加しています。最難関校では今のところ英語は導入されていませんが、一部の難関校には少しずつ広がっています。

難関校で実際に出題された過去問を見ると、小学生が受けるとは思えないほどのハイレベルな問題です。日本で生まれ育った普通の小学生が本気で英語で受験するとなると、努力だけでなく才能も必要です。

普通の中学受験を選択するなら、英語学習との両立は困難なのでやめたほうがいいでしょう。

それにしても入学前に英検準1級相当の英語力を持った小学生が、中学・高校の6年間でどのような英語教育を受けるのでしょうか。私にはわかりませんが、想像を超えた世界であることは間違いなさそうです。

子どもの英語リスニングは精聴で伸ばそう(実践編)

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「子どもの英語リスニングは精聴で伸ばそう(準備編)」でお伝えしたとおり、入試におけるリスニング力の重要性は高まっています。また、就職や昇進で参考にされる英語試験TOEIC のスコアは、リーディングとリスニングそれぞれの比率が1対1になっています。

これから英語を学ぶ子ども達は、早めにリスニング力を意識して伸ばすことが大切です。

しかし、リスニングは音声機器を使用しながらの個別学習が基本です。そのため、学校で教えてもらえると期待しないほうがいいです。また、自然と身につく能力ではなく、意識して伸ばす必要があることも大切なポイントです。

そこで、今回は家庭でもできるリスニング力を伸ばすための精聴(せいちょう)トレーニングの方法について、具体的に説明します。

子どものリスニング学習に使用するお話をLittle Foxから選ぼう

まずは子どもにLittle Foxのストーリー一覧を見せて、興味のありそうなものを自由に選ばせましょう。英検4級程度ならレベル2が適切です。レベル2から話が面白くなるので、高学年の子どもが見てもそれほど幼稚には感じません。

「Little Fox 英語童話ライブラリー」のサイトはこちらをクリック!

我が家の息子は海外にいた小学1年生の頃、レベル2の「Bird and Kip」 から始めました。リスニング学習法を説明するために、今回はレベル2の「Magic Marker」を取り上げます。

Magic Markerはエピソード1~8までが無料で楽しめるので、最初にチャレンジするにはもってこいです。

・子どもが集中できる長さを設定しよう

各エピソードは50秒未満になっています。集中力が続くなら、1エピソード丸ごとをリスニング素材にしましょう。初心者の場合、50秒でも長く感じるかもしれません。その場合は、前半か後半の30秒くらいに学習範囲を設定しましょう。

・用意するもの

用意するものは、A4の紙1枚と青と赤のボールペンです。黒のボールペンでも問題ありませんが、青は人間の集中力を高める効果があるらしいので私は青を使うようにしています。

これから動画を再生しながら、青ペンで英文を紙に書いていきます。鉛筆を使わないのは、スペリングの間違いも含めて記録に残すためです。

書き直したければ、二重線を引いて下またはとなりに英文を書いていきます。行間は指1本分くらい空けておき、あとで訂正や正解を書き込めるようにしておきます。

子どものリスニング:ディクテーションによる精聴トレーニング

リスニングの精聴トレーニングでは、ディクテーション(書き取り)が中心です。聴き取った英語を文字にして、紙に英文を書いていきます。紙に書くときは、英語のルールに従って書くように伝えます。

・大文字で書き始めること

・最後にピリオドを打つ

・セリフは“”で囲む

・短縮形はアポストロフィー(’)を使用する

最初から完ぺきにできる子どもはいないので、最初は大文字から始めることと最後にピリオドを打つことだけ意識させるようにしましょう。

・英語字幕なしで、エピソードを2回再生する

説明のために、Magic Marker 3: New Friendsを素材として扱います。

まずは、英語字幕が表示されないようにして2回エピソードを子どもに見せます。このときは、英文を書きません。エピソードを見ながら、およその内容を想像させることが目的です。

一文ごとに区切りながら英語を書き取る

次に、一文ずつ動画を再生します。1文ずつ再生するには、画面左下に表示される番号をクリックするだけです。これだけで何度でも再生できます。これがLittle Foxの学習機能が優れたところです。

普通の音声教材ではA-B間再生といって、開始位置と終わりの位置を設定しなければいけません。デジタルオーディオプレーヤーには3秒間戻る機能が備わっているものもありますが、必ずしもターゲット文の頭から始まるわけではありません。

一文を聴いてから、1センテンスを書きます。このとき注意するのは、聴いている途中から書き始めないことです。必ず1センテンスを聴いてから、書き始めてください。

これはできるだけ長い英語を頭の中に一時的にストックしておく力を養うためです。リテンション(保持力)と呼ばれていますが、リスニングの上達には欠かせない能力です。ちなみに同時通訳の人はこの能力が桁外れに高いです。

余談ですが、学校では先生が黒板に英語を書いてそれを生徒がノートに写します。リテンション能力が高い生徒は、一度英文を見ただけで書き写すことができます。私が教員をしていたとき、そのような生徒は例外なく英語力が高かったです。

・単語が書けない場合の対処法

小学生の場合、英単語を書けるレベルまで到達していないことも多いでしょう。その場合は、聴き取った単語を正確に発音して意味がわかるなら、書けた(聴けた)こととして見なしてもかまいません。

スペリングの正しさまでを追及すると、白紙になってしまいます。お母さんが、聴けた単語を代わりに書いてあげれば大丈夫です。

何十回も繰り返し再生して、本当の限界までリスニングをする

あとはこの作業を繰り返して、何とか聴き取れなかった部分を埋めていきます。簡単にあきらめてはいけません。少なくとも30回は集中して聴きましょう。

動画を見ながら意味を類推したり、文法面から読まれた単語を予想したりします。本当にわからなくても、聴こえた音をカタカナでもいいので記録します。こうして本当の限界までリスニングを繰り返してできるだけ空白部分を埋めます。

リスニング学習の最もきついパートですが、集中力を切らさずに取り組みましょう。

子どものリスニング:字幕付きで再生して、答え合わせをする

ディクテーションが終了したら、今度は英語字幕を表示して答え合わせをします。字幕を出すには、画面下の字幕のアイコンをクリックするだけです。

このときは赤ボールペンを使用します。チェックすべき箇所を列挙します。

大文字・小文字の使い分け、ピリオドなど。

スペリングが正しいかどうか

聴こえなかった空白部分の英語

チェックした紙は、一見グチャグチャな状態ですがこれが最高の教材になります。

参考までに息子が実際にディクテーションをした紙を掲載します。CNN ENGLISH EXPRESSという中上級者向けの英語学習雑誌の音声を利用しました。「僧衣で運転していたお坊さんに警察が罰金を課したことに反発した僧侶達のニュース」です。

最初のBuddhist(仏教の)は単語を知らないために聴き取れなかった場所です。中央のcampaignのスペリングに悪戦苦闘した様子や、fined(~に罰金を課した)をfind(を見つける)と勘違いしている様子がよくわかります。

動画セミナーでは書き取りができなくてもリスニング力を向上する方法を紹介しています。

聴き取れなかった理由を考えるのが、リスニング力向上の第一歩

赤字が聴き取れなかった部分です。答え合わせをしてみると、あれほど聴き取れなかった英語が、案外簡単な英語であるとわかりがっかりすることがあります。これは上級者でもよくあることです。

では、次に聴き取れなかった部分について一つひとつ原因を探りましょう。まず、「単語を知らなくて聴き取れなかった」と「単語を知っているのに聴き取れなかった」の二つに分けて説明します。

単語を知らなくて聴き取れなかった

「知らない単語は聴き取れない」のは当然です。これに対する唯一の対策は、単語を覚えることです。

まず、辞書で単語を調べたら発音とアクセントを覚えます。小学生だと発音記号を知らないので、辞書の音声機能などを利用して正しい発音を覚えてください。

発音を覚えたらその文脈に最もふさわしい意味を1つ覚えましょう。「英語→日本語」で何度かブツブツつぶやきます。

もう一度音声を聴いて、この部分がスムーズに聞き取れたらOKです。

単語を知っているのに聴き取れなかった

やっかいなのは「単語を知っているのに聴き取れないケース」です。この場合は、以下の原因を一つひとつ検討してみましょう。

・覚えている発音が実際の音と異なっていたから(間違って覚えていた)

たとえば、favorite「フェイヴァリット」と発音すべきこところを「ファヴォリット」と覚えていたら、読まれた音と知識が一致しないため聴き取れません。この場合は速やかに正しい発音を確認して、間違った記憶を訂正しなければなりません。

新しく単語を覚えるよりも、間違って覚えた単語の発音を訂正するほうがはるかに時間がかかるし面倒です。そのため、新しく単語を覚えるときは必ず正しい発音とアクセントを覚えるように心がけましょう。意味は忘れても構いません。

・文中で音が変化したから

文中では、英単語は一つひとつはっきりと発音されません。隣同士の単語の影響を受けて、音が変化します。ここでは代表的な3つの変化について取り上げます。

音が消える場合

good night(グッナイ)

p,t,k,b,d,gなどの文字で終わる場合は、その音はほとんど発音されないことがあります

音がつながる場合

an apple(アナップル), stand up(スタンダップ)

子音で終わる後のあとに母音で始まる語が続くとき、二つの音がつながります。これはゆっくり読むときもつながります。

音が変わる場合

meet you(ミーチュー), hold your hand(ホウルヂュア ハンド)

tやdなどの文字で終わる語のあとにyの文字で始まる語が続くと、2つの音が影響しあって別の音になることがあります。

1つの単語としての正しい発音やアクセントを覚えていても、これらの音の変化に対応できないと聴き取れないことがしばしば起こります。対処法は自分が音読するときにこれらの法則に従って読むことです。

自分がネイティブと同じような音の変化に従って読んでいれば、対応できるようになります。

・速く読まれて聴き取れなかった

英語は強弱や緩急をつけながら話されるのが一般的です。「弱」の部分や「急」の部分はほとんど音が出ていないことも多いので、聴き取るのが難しくなります。

たとえば、助動詞のwouldなどは音読されるときは「ッドゥ」とわずかに音が出るだけです。実際、何度も音声を聴いてもそもそも音が出されていないこともあります。

このようなときに役に立つのが文法の知識です。助動詞のうしろには動詞の原形が来るため、動詞の部分が聞き取れれば聴き取れなかった助動詞を頭の中で補えます。

I thought that they would come soon.(彼らはすぐに来ると思っていました)なら、過去の文脈の中でcameではなくcomeが使われていることにより、「おそらく助動詞のwouldが読まれたに違いない」と推測ができます。

文法の知識はリスニング力を向上させるためにも必須なので、しっかりと勉強しましょう。

・自分が知っている意味ではなく、予想外の意味で使用された

どんなに知っている単語でも、意外な意味で使われると素直に音が聞き取れないことがあります。

例:「book=本」の意味は知っていても、I will book a room at the hotel.(ホテルの部屋を予約します)のbookが聞き取れない。

これは自分の単語の知識を広げるチャンスととらえて「こんな意味があったのか」と学びましょう。次回からは不思議と聴き取れるようになります。

慣れてくると聴き取れなかった理由が手際よくわかるようになりますが、最初のうちはていねいに自分で考えることが大切です。

添削された英文を音読練習して、もう一度英語を聴き取る

リスニング力を伸ばすためには、原因の分析だけで終わらせてはいけません。何が自分に不足していたのかをハッキリと意識しながら、音声教材と同じように音読をします。

このときは文字が印刷された教材を使わずに、赤字だらけの添削済みの英文を使いながら音読するようにしましょう。

ナチュラルスピードで読まれる音声にかぶせるようにして音読を繰り返します。これはオーバーラッピングと呼ばれる音読トレーニングです。意味をきちんと理解しながら、同じように音読できるまで何度も練習しましょう。

最後にリスニングの仕上げとして、スクリプトを見ずに音声だけを静かに聞きます。最初の頃と違ってほとんどを理解できるようになっているはずです。ここまで終わったら、次の教材に移りましょう。

まとめ

子どものリスニング用教材として、Little Foxは最適です。無料で楽しめる話がたくさん公開されているので、まずは子どもの反応を見ながら有料会員になるかどうかを検討しましょう。

小学校5、6年生で英語学習歴が多少あるなら、レベル2から始めるといいです。1エピソード全体でも1分弱ですが、長すぎるなら前半の30秒だけを集中して聴きましょう。

具体的な精聴方法はディクテーションです。何度も繰り返し再生しながら、聴こえた英語を文字におこして英文を書いていきます。スペリングが難しければ、お母さんが手伝ってあげるか適当に書いておきましょう。

答え合わせは赤ペンで行います。聞こえなかった部分がハッキリとわかるようにするためです。そして、なぜ聴き取れなかったのかを子どもに考えさせましょう。知らない単語が聞こえないのは当然です。

知っている単語なのに聴き取れなかった部分について、その原因をきちんと考え対策を立てるようにしましょう。仕上げにモデルの音声と同じように読めるようになるまで何度も繰り返し音読の訓練をします。

モデルと同じように読めれば、少しずつリスニング力が向上していきます。

子どもがハマる!楽しい動画サイトを活用した「リスニング学習法」動画セミナーはこちら

子どもの英語リスニングは精聴で伸ばそう(準備編)

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英語学習の楽しみはいろいろありますが、英語を聴いてダイレクトに自分の脳で内容を理解できたときは「英語を学んできてよかったな」としみじみ思います。

英語を長く学ぶには、損得勘定ではなくこういう喜びが大きな原動力になります。子どもであっても、これは同じではないでしょうか。

一方で、リスニング能力が今後英語の試験で大きな比重を占めることになりそうです。社会人の昇進や就活などに使われるTOEICはリーディングとリスニングが半々なので、リスニングを得意にしておくと有利に働くことは間違いありません。

従来は文法・単語学習・リーディングなど優先で後回しにされがちでしたが、今後は早めにリスニング対策することが大切です。

今回は英語試験におけるリスニングの状況と、小学生がリスニング学習を始めるときに気をつけるポイントについて詳しく説明します。

子どもの英語リスニング力を伸ばそう

リスニングは4技能(読む・書く・聴く・話す)のうちのひとつです。しかし、リスニングは他の技能とも密接に関連しています。だから、リスニング能力だけを単独で伸ばすという考え方は正しくありません。これは他の技能にも当てはまることです。

英語を聴き取るには、まず単語力と文法力が必要です。英語教育に携わる人の間では常識ですが「知らない単語は聴き取れない」からです。したがって、知っている単語の数が多いほど聴き取れる確率は高まります。

文法が重要なのは次のような場面です。たとえば、“He’s been to Okinawa…” の短縮形の部分(He’s)の部分を聴き取るときに役立ちます。もし現在完了形(have+過去分詞)の知識があって、次に続くbeenを聴き取れればこの ’s がhasの省略形だと理解できます。

また、実際の英語でこの ’s を聴き取るのが難しかったとしても、文法の知識があれば「hasと言ったに違いない」と良い先入観を持てます。したがってリスニングを伸ばしたければ、文法を学ぶことが大前提です。

リスニングとリーディングには強い相関関係があります。リーディングで返り読み(目線を左に戻して何度も同じところを読む)をしている子どもは、リスニングで英語を理解することは不可能です。

なぜなら音声は聞こえた順番に消えるので、読まれたとおりに理解できなければそれで終わりです。返り読みをしていては、英語の内容を耳で聞きながら内容を理解することは不可能です。

スピーキングにおいては、一方的に自分だけが話すわけではありません。相手の言った内容や質問に正しく反応することで英会話は成立します。つまり、リスニングができないとスピーキングも成立しません。

これらのことから、リスニングを伸ばすためには単語と文法力を基礎にして、他の技能と同時に伸ばしていかないと難しいことがわかります。

リスニングが苦手な子どもは早めに克服しよう

中学・高校での英語のテストではあいかわらずリーディングが中心です。定期テストでもリスニングを導入していますが、配点はそれほど高くありません。そのため生徒はリスニング対策をつい後回しにしてしまいがちです。

ところが高校入試や大学入試ではリスニングの配点が今後高くなることが決定しています。センター試験では250点満点中50点でしたが、次の大学入試共通テストでは、英語の50%はリスニングにすることが検討されています。

リスニングは暗記科目のように一朝一夕に仕上げられません。日常的に英語音声を利用した地道なトレーニングを長期間実施して初めて身に付きます。

理想はそれぞれの学習段階に合わせて、リスニング能力を継続的に引き上げていくことです。リスニングに苦手意識を持たぬよう、小学生のうちから少しずつ英語の音声に慣れていく必要があります。

リスニングが得意だとこんなに得をする

リスニングが得意だと、そうでない生徒と比較してかなりのアドバンテージを得られます。英検でも大学入試問題でも、リスニング問題がもし文字で印刷されていたら実はかなり簡単な問題だからです。

つまり音さえ聞き取れれば、割と簡単に解答できるため貴重な得点源にすることができます。我が家の息子は小学4年生のときに英検2級に合格しました。海外のインターナショナルスクールに通っていたためリスニングは得意です。

成績表を細かく見ると、リーディングや語法の問題で少し間違いがありました。しかし、リスニング問題の出来は良好でした。英語を聴き取ることができれば、小学生でも理解できる内容であることの証明です。

中学・高校の英語の授業は英語で教えられる

今後、中学・高校の英語の授業は基本的に英語で行われる予定です。もし、リスニングが苦手だったら英語の授業がほとんど理解できない状態になります。

このような事態を防ぐために、文法の説明だけは日本語に切り替える先生が多いと予想されますが、オールイングリッシュの授業にこだわる先生なら文法も英語で説明するでしょう。

6年間の英語の授業をほとんど聴き取れない状態で過ごすなんて、かなりの苦痛だと思います。こうならないためにも、早い段階から生の英語を聴き取れるように対策をするべきです。

子どものリスニングは精聴から取り組もう

リスニングのトレーニングには大きく分けて精聴(せいちょう)と多聴(たちょう)があります。精聴とは短めの音声を利用して、一字一句逃さぬように神経と研ぎ澄ませながら英語を聴き取る訓練方法です。聴き取り精度を上げるのが目的です。

多聴とは、英語をたくさん聞くことです。聴き取れない部分に執着せずに長めの英語を聴くことです。映像やテロップなどを参考にしながら、聴き取れなかった部分を想像しながら英語を聴きます。多聴は集中力を切らさずに大意をつかむのが目的です。

英語の中級者以上(英検2級以上)なら、両方とも平行して取り組むのが一番です。しかし、小学生の場合はほとんど英語の音を捉えることができないため、精聴だけに集中しましょう。

リスニング対策を始めるタイミング

リスニングのトレーニングをするタイミングですが、英検でいえば4級を取得したあたりから少しずつ精聴を始めるといいです。この時期になれば、最低限の単語と文法を身につけているからです。

このレベルになるまでは、英語をモデルとなる音声のマネをして音読するだけで充分です。我流で音読しても正しく読めるようにならないので、英語の先生に指導してもらうのが一番です。

英語は文章として読まれる場合、音の変化を伴います。一例を挙げると、sit downでは、sit のtの音は消えて「スィッ ダウン」と発音されるのが普通です。このような英語特有の音の変化に慣れておくと、あとでリスニング力を伸ばすのに役立ちます。

英検4級を取得するまでは、英文を英語の音の変化にしたがって正しく音読するように訓練しておきましょう。語彙が600語を超え過去形や助動詞の基礎を学んだら、少しずつリスニングのトレーニングも取り入れていきましょう。

リスニングに効果的な子どもがハマる教材

リスニングの精聴トレーニングの詳細については「子どもの英語リスニングは精聴で伸ばそう(実践編)で説明しますが、何度も同じ英文を聞くので大人でもきついと感じるときがあります。

そのためリスニング学習に使用する教材はできるだけ子どもが「楽しい」「おもしろい」と感じる素材であることが望ましいです。平易な語彙を使用しながら内容が楽しい素材を探すのは難しいのですが、これはとても重要なことです。

以前、マレーシアに居住していたときインターナショナルスクールに通う息子のリスニング力を伸ばしたいと考えたことがありました。そのときに、いろいろと探した結果、まさに理想的なリスニング教材「Little Fox」を紹介します。

「Little Fox 英語童話ライブラリー」をおすすめする理由

息子が実際に使って効果を上げたのは「Little Fox 英語童話ライブラリー」でした。

レベル別に子ども向けの楽しいストーリーがたくさんあり、集中力が切れない長さにまとめられているところが素晴らしいです。人間は物語を欲するので、「次はどうなるのか」と興味や好奇心が喚起されます。これが英語学習を続けられるエンジンです。

400本近くの動画が無料で体験できます。小学生なら、レベル1か2から始めるとよいです。Little Foxの素晴らしさは、物語のおもしろさだけではありません。再生機能や学習機能がとても充実しています。

パソコンで再生する場合、動画の横に5つのアイコンが並んで見えます。

・クイズ(鉛筆のアイコン)

内容一致問題です。レベル2では、本文中の英語が一文読まれて、それと一致する絵を2つの中から選びます。英検4級くらいのレベルです。

・単語学習(ABのアイコン)

動画で登場した主な英単語が学習できます。掲載されている例文は動画の中の説明文やセリフと一致しているので、使用された文脈を思い出しながら学習できます。

子どもの学習者のために、スピーカーのアイコンを押せば単語の正しい発音を聞くことができます。日本語の定義で使用される漢字にはフリガナが振ってあるので、まさに至れり尽せりです。

・スペリング学習(クロスワードのアイコン)

英文字のタイピングができるなら、表示された単語をタイピングすることによって学習します。ちょっとしたゲームのようになっています。タイピングができない子どもには、使えない機能です。

・MP3ダウンロード(ヘッドホンのアイコン)

音声だけをダウンロードできます。スマートフォンなどにダウンロードしておけば、外出時に音声だけを聴いて物語を再生することができます。

動画の情報に頼らず音声だけで場面を想像したりできるため、リスニング力を磨くにはとてもありがたい機能です。

・プリンタブルブック(プリンターのアイコン)

A4の紙に印刷すると、一冊の絵本が出来上がる機能です。この機能は地味ですが、とても価値の高いものだと私は思います。

ホチキスで止めてテーブルの上に置いておくと、暇なときに子どもは英語を読むようになります。一度動画で内容を理解しているので、英語を読むのが苦になりません。

洋書はコンスタントに購入するとかなりの金額になります。有料版を使用したとしても、この機能だけで元が取れてしまいます。

・スクリプト(紫のアイコン)

最後は、動画の英文だけを印刷できる機能です。圧巻なのは、単語をクリックすると表示/非表示を切り替えられるため、オリジナルの「虫食い」テキストを簡単に作れるところです。

リスニングでポイントとなる部分をOFFにして、その他の部分をONにすれば子どもの能力に合わせたリスニングテストを作成できます。

精聴用と多聴用のエピソードを分ける

まじめなお母さんは、Little Foxのすべてのエピソードを精聴させようと考えるかもしれません。しかし、せっかく楽しい物語(動画)を子どもが楽しめなくなってしまいます。

そこで私のおすすめは、精聴用の動画と多聴用の動画を分けることです。子どもがある程度内容がわかるレベルなら、うるさいことは言わずに好きなストーリーを時間を決めて見せます。

おもしろいセリフは子どもが勝手に覚えるので、あまり英語の勉強と結び付けるのはよくありません。とにかく楽しませておけばいいです。

精聴用の動画は、1話すべて(または一部)を何度も何度も繰り返し聴きながらトレーニングをします。内容のおもしろさも大切ですが、レベルの選択が鍵になります。

30秒くらいの部分を取り上げて、字幕を見ずに何度も英語を聴きます。最初に聴いたときに、せめて4割くらい理解できるものを選ぶと挫折しないで済みます。

無料でもしばらくは学習できる

子どもが食いつくかどうかを確認するために、しばらくは無料で見られる範囲で試してみましょう。400本近い無料動画があるので、数か月は困りません。

子どもがハマったのを確認できたら、有料版の購読を検討しましょう。長期一括にするほど割安になっています。

アメリカドルでの価格設定なので、為替レートの変動により日本円での費用が異なりますので注意しましょう。

パソコン(タブレット)、インターネット環境は必須

Little Foxの機能を使い倒すなら、パソコン・プリンター・インターネット環境は必須です。スマートフォンやタブレットのアプリからも利用できますが、一部機能に制限がかかったり仕様が異なります。

リスニングは音声にかかわるトレーニングなので、デジタル機器の得意分野です。昔なら到底実現できなかった学習環境とコンテンツが世界中から利用できるようになっているので、積極的に英語学習に取り入れましょう。

具体的なトレーニング法については、こちらの動画セミナーで詳しく説明しています。

子どものリスニングで聞き流し教材は効果なし

新聞・雑誌などの広告で大々的に宣伝されているリスニング教材に「聞き流し教材」があります。勉強不要で、ただ音声を再生してれば自然と英語が聞き取れるようになる、というウリで人気があるようです。

しかし、断言しますが英語をただ聞き流すだけでは、BGMと何ら変わりません。学習効果はゼロです。聞き流すだけではリスニング力は向上しません。

多聴と聞き流しは似ているように感じる人もいるでしょう。しかし、多聴ではわからない部分を映像や文脈などで必死に補いながら英語を聴きます。何も考えずに英語を聞き流すときとはまったく異なります。

歌はリスニング学習にあまり向いていない

洋楽をリスニングに取り入れたいと考えるお母さんも多いかもしれません。確かに大好きな歌なら、リスニングには最適と考えたくなるのももっともです。

しかし、歌もまたリスニング学習の教材としてメインに使用するのに向いていません。なぜなら歌は独特の節がつくため普通に読まれる英語よりも聴き取るのが難しいからです。

NHKの朝ドラ『まんぷく』は人気のあったドラマなので、観た人も多かったと思います。その主題歌「あなたとトゥラッタッタ」はドリカムが歌っていましたが、日本語であるにもかかわらず、私はほとんど聴き取れませんでした。

これと同じ現象が英語でも起こります。ネイティブでも聴き取れない歌を日本人の子どもがリスニング学習に使うのは不適切です。

また、歌詞では文法的な正しさよりも語呂の良さを優先することがしばしばあります。たとえばビートルズが歌っていた「Ticket To Ride」では、she doesn’t careとすべき箇所がshe don’t careと歌われています(下の動画0:33あたり)。

ただし、歌は耳に残りやすいし、すべての歌がリスニングに不向きなわけではありません。息抜きに英語を楽しむ分にはまったく問題ありません。あくまでもリスニングのメイン教材としては不向きであるということです。

リスニングにまったく効果がないのが「聞き流し教材」です。また、洋楽の歌はネイティブでも聴き取りにくいことを考えると、リスニング学習の教材としては不向きです。

端的にまとめると、聞き流さないのがリスニング学習です。ストーリーのあるもの、内容がまとまっているものを標準的な英語で話された素材を使うのがポイントです。

まとめ

英語を攻略することが受験や入試には大切です。また、新しい大学共通テストではリスニングの配点を半分にまで引き上げることが検討されています。リスニング対策を後回しにせず、早めに取り組むことが求められています。

小学生が英語リスニングを本格的に始めるなら、英検4級を取得した頃がいいです。リスニングには精聴と多聴の二つのトレーニング方法がありますが、初心者の場合は精聴だけで充分です。

使用する教材は子どもが続けやすいものを選ぶのがポイントです。私のおすすめはLittle Foxです。とにかく内容が充実しているのと、欲しい学習機能がすべてそろっているので、リスニング教材としては最適です。

聞き流し教材や洋楽などをリスニングに活用するのはやめましょう。聴き取り能力を向上させるためには、集中して英語を聴き取る努力が求められるからです。

リスニング能力を伸ばすと、英語試験において圧倒的に有利なので頑張りましょう。

次の記事「子どもの英語リスニングは精聴で伸ばそう(実践編)」では、Little Foxを使って実際にどのように子どもにリスニング学習をさせるのかについて説明します。

小学生の英語文法の教え方と勉強法

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もし、「何でもいいからスワヒリ語で話してみよう」と言われて、すぐにスワヒリ語を話し始める人はいないはずです。英会話教室で「積極的に英会話をしましょう」と講師が呼び掛けても子どもの反応が良くないのは、どうしていいのかわからないからです。

幼児や小学校低学年の子どもたちなら、無邪気に周囲のまねをして英語の歌を歌ったり講師のフレーズを口真似したりします。しかし、高学年の子どもは精神的に成長していて論理的に新しいことを覚えようとします。そこで必要となるのがマニュアルです。

英語学習におけるマニュアルとは文法のことを指します。子どもは適齢期にわかりやすい文法が与えられると、英語を理解しやすくなります。しかし、文法を習っただけでは英語を使えるようにはなりません。文法に沿って繰り返し英語を使うトレーニングが不可欠です。

しばらくトレーニングを繰り返すと、次第に文法をほとんど意識しなくても口が動くようになります。

そこで、英語を使えるようになるために、最初に子どもが覚えるべき基礎的な文法について具体的に説明します。また、どのようなトレーニングをすれば文法をほとんど意識しなくても英語を使えるようになるのかについても解説します。

小学4年生からは英語の文法が必要

個人差はあるものの、小学4年生から少しずつ文法学習を始められます。小学校低学年までの小さい子どもは文法を教えても理解できません。そこで実際の英語にたくさん触れながら英語の規則に気づかせる手法をとります。

例えば、小学校低学年ではI have a dog. やHe has a nice car. などの用例を多く口にすることで、自然と「主語(I, He)+動詞(have, has)+目的語(a dog, a nice car)」のパターンを覚えていきます。

このような習得方法は「体験的習得」と呼ばれており、小さい子どもはこの能力に優れています。文法用語を使わずに覚えるので一見簡単に思われますが、実際は言葉の規則性を発見・理解するまでに膨大な時間を要します。

子どもが「ママ」という一単語を発してから、「ママはご飯を作っている」など3語の文章で話せるまでの時間を思い出してください。日本語漬けの状態でも1年はかかったはずです。簡単に日本語が話せるようになったわけではありません。

子どもは10歳頃を境に、自然に言語を習得する能力(体験的習得能力)が急速に衰えます。しかし、それと引き換えに文法を理解する能力(論理的習得能力)が急速に発達していきます。この年齢からは文法を勉強しながら英語を学ぶのが最も効率的です。
論理的習得能力グラフ
グラフで示した黄色の部分は、ちょうど小学1年生から6年生までの範囲です。小学4年生を境に二つの異なる能力が逆転しているのがわかります。つまり、10歳になったら文法からのアプローチを取り入れたほうが英語を早く理解できるようになります。

もしお母さんがこのことを知らずに、小学校高学年の子どもに対して幼い子どもと同じような英語教育をしているなら今すぐ考え直しましょう。

小学校では文法を学ばせると英語嫌いにつながるとして、文法を教えない授業が進められています。一見、子どもに配慮しているように感じられますが、実はこの配慮こそが子どもが英語を嫌いにさせている可能性があります。

小学4年生の子どもの一部は、文法を教えたほうが英語を効率的に理解できる年齢になっています。それにもかかわらず、小学校では遠慮して低学年の子どもへのやり方で英語を教えています。

そのために、子どもはいつまでたっても英語を理解できずストレスが溜まります。そして、英語嫌いになっていきます。

発達段階に差がある児童一人ひとりに対応した指導方法を採用するのは現実的ではないので、学校の先生を責めるつもりはありません。現状では、文法に関しては各家庭で個別に対応するしかありません。

小学生の基礎英文法:語順と否定文・疑問文の作り方

文法の授業といっても、小学生に難しい文法用語を使って細かい知識を覚えさせるようなことは無意味なだけでなく英語嫌いを作る原因となります。

小学生に教えるべき文法は、わかりやすい英語のマニュアルです。このマニュアルは大きく二つの内容に分けることができます。一つ目は、英語の語順です。語順がわかれば英文を読んだり、単語をその順番に並べれば大まかな英文を作れます。

二つ目は、基本的な文の形である平叙文(へいじょぶん:単に情報を伝える文)・否定文・疑問文の作り方です。英語の語順は平叙文が前提となっていますが、実際は否定文や疑問文の形に変える必要が出てきます。

英語の語順を知り、さらに否定文や疑問文に対応できれば英語の基本を身につけられます。未来形・過去形・現在進行形・現在完了形などを将来学ぶときにも、基本が身についていれば理解するのはそれほど難しくありません。

参考書不要! 小学生にもわかる英語の語順(3文型)

英語の5文型は高校で学ぶ内容です。「S(主語), V(動詞), O(目的語), C(補語)」などの記号を使って教えられるので、堅苦しくてあまりいい印象を持っていないお母さんも多いことでしょう。実際、いきなり難しい文法の参考書や問題集に取り組んでもすぐに飽きてしまいます。まずは最低限の知識に限定して学習するようにしましょう。

小学生にはこれらの知識をかみ砕いて教える必要があります。最初に主語・動詞・目的語などの文の要素(文中での役割を示したもの)を理解させます。これがわからないと語順を理解することができないので、大切なポイントです。

文の中の役割

すぐには理解できないので、あまり詰め込まないように注意しましょう。次に、高校で習う5文型のうち主な3つの文型だけに凝縮させた文型を示します。
am/ is/ are の文目的語がない文
目的語ありI gave her a present. (私は彼女に誕生プレゼントをあげた)のような第4文型とWe call him Ken. (私たちは彼をケンと呼びます)のような第5文型は思い切って省略しました。3つの基本的な文型をマスターしてから、必要なタイミングで知識を増やせばいいからです。

3つの基本文型と例文をセットにしたカードはこちらからダウンロードできますので、子どもの目につく壁に貼り、いつでも確認できるようにしておきましょう。

基本的な文の形:平叙文・否定文・疑問文の作り方

単に情報を伝える文を平叙文(へいじょぶん)といいます。肯定文と呼ばれることもあります。次にnotなどを用いて「~ではない」「~ません」という意味の文を否定文といいます。また、何かについて「~ですか」とたずねる文を疑問文といいます。

先述した文型の動詞に着目してください。「am/ is/ are」を用いた文型とそれ以外の動詞を使う文型の二つに分けることができます。この動詞の種類によって、否定文と肯定文の作り方が変わります。

中学校で英文法を本格的に勉強するようになると、最初につまずくポイントは中学1年生の1学期に訪れます。それは「am/ is/ are」を用いた文とその他の動詞を用いた文について、それぞれ正確に否定文と疑問文を作れずに混乱するからです。

・am/ is/ are の否定文は「notを付け足す」

否定文の基本的な考え方は「notを動詞のうしろに付け足す」発想です。日本語では「~ではありません」のように文末に否定語を持ってきますが、英語の場合は動詞のうしろに否定語notを付け足すのが特徴です。

平叙文 否定文
She is tall. She is not tall.

・その他の動詞の否定文は、do にnotを付け足す

doは「する」という意味です。すべての動詞は結局何かをすることです。例えば「think(考える), make(作る), run(走る)」などの動詞に共通しているのは、何かを「する(do)」ことです。

このように考えると、これらの動詞の前に常に( )に入ったdoがあると解釈できます。

You (do) go to school. (私は学校へ行きます)

go(行く)の意味にはdo(する)が含まれるので、いちいち書かないけれども実はこの位置にdoがあると考えます。否定文の基本的な発想は「動詞にnotを付け足す」ことなので、次のような否定文が完成します。

平叙文 否定文
You go to school. You do not go to school.

notを付け足すのは見えている動詞(go)ではなく、普段見えていないdoの後です。気をつけましょう。

・三単現のs

英語を使う人の意識では、会話をしている「私(達)とあなた(達)」と「その他の人や物」を分けます。その他の人や物が主語になるときは、動詞に(-s, -es)を付ける習慣があります。絵で表すと下のようになります。

3単現のs

例えば、「彼はよい車に乗っています」は会話をしている私(達)とあなた(達)以外の人について話をしています。さらに、彼は一人で、いつものこと(現在形)を表現しています。このようなときは動詞driveにsを付けてdrivesにします。いわゆる三人称・単数・現在形のs(略して三単現のs)です。

He drives a car. (彼は車を運転します)

この文にももちろんdoが本来は含まれています。

He (does) drive a car.

先ほど動詞にsを付けるといいましたが、doにs(音の関係上es)が付いてdoesになっていることに注目しましょう。平叙文ではわかりきっているためにdoesを隠しますが、動詞に-s, -esを付けなければいけないので、drivesになっていると考えましょう。

ではnotを使って否定文にしてみましょう。動詞のうしろにnotを付け足すのが基本発想なので、次のようになります。

平叙文 否定文
He drives a car.

(=He does drive a car.)

He does not drive a car.

否定文を作るとき、He does not drives a car. とdriveにsを付けないように気を付けましょう(すでにdoesについているので不要です)。

・am/ is/ are の疑問文は「主語と動詞を入れ替える」

「am/ is/ are」の疑問文は、主語と動詞を入れ替えます。疑問文を作るときの発想は、主語と動詞の入れ替えです。最後にクエスチョンマーク(?)を入れます。

平叙文 疑問文
She is tall. Is she tall?

・その他の動詞の疑問文も「主語と動詞(do/ does)を入れ替える」

その他の動詞でも疑問文の作り方は同じです。つまり主語と動詞を入れ替えます。ここでの動詞とはdoまたはdoesを指します。

平叙文 疑問文
I (do) go to school. Do you go to school?
She drives a car.

(=She does drive a car.)

Does she drive a car?

Iから始まる平叙文を疑問文にするときはDo you ~?の形にするのが一般的です。「私は~ですか?」と相手に尋ねる文は少し変だからです(実際はよくあります)。

否定文と疑問文の作り方をまとめます。否定文は動詞のうしろにnotを付け足して作ります。疑問文は、主語と動詞を入れ替えて作ります。am/ is/ are以外の動詞には本来do (またはdoes)が存在していることを理解するのがポイントです。

語順と平叙文・否定文・疑問文がわかれば英語が得意になる

英語の語順と平叙文・否定文・疑問文について理解することが最も大切です。これさえできれば文法学習の最大の山を乗り越えたも同然です。なぜなら基本的なルールさえ理解してしまえば、高度な英語表現にも簡単に応用できるからです。

例えば中学1年生で助動詞canを学ぶとき、doやdoesの位置に置き換えれば否定文や疑問文に応用できます。

I (do) speak English. I can speak English.
I do not speak English. I cannot speak English.
Do you speak English? Can you speak English?

私は英語が苦手な中学生の指導経験が多数ありますが、彼らのほとんどは基本の語順と平叙文・否定文・疑問文をきちんと理解できていません。理屈を理解せずに暗記しようとすると混乱するケースが多いので注意しましょう。

丸暗記でAre you ~?とかDo you ~?と覚えてしまうと、Are you go to school? という誤った文を作ってしまいます。一度変な理解をしてしまうと、あとで正しく覚え直すのは大変なので最初が肝心です。

すでに数年程度の英語学習歴がある子どもにも、語順や否定文・疑問文の作り方を教えることで散らかった知識が体系的に整理されます。それまで何となく口にしていた英語の語順がきちんと論理的に説明できるのでプラスの効果が生まれます。

文法の理解が早く正しくできるようになると学校のテストで点数を取ることは可能になります。しかし、それだけでは本当に英語を使えるようにはなりません。次に、習得した文法の知識を使って英語を使える(話せる)ようになるための方法を説明します。

英文法を知識で終わらせないための学習方法

英語上級者のように、文法を意識しなくても英語がスラスラと口から出てくるためのトレーニングを紹介します。

学校や英会話スクールで習った英文を材料にして家庭でトレーニングをしてみましょう。例えば、My favorite color is blue.(私の好きな色は青です)という表現を習ったら、これを材料にして文型を確認させます。

文型を確認するときは壁に貼ってある基本3文型のカードを見ながら学習を進めます。最初に動詞を確認させます。この場合はisが動詞です。青い色鉛筆でisを○で囲みます。

その次に主語を確認します。子どもは主語を1語だけと思い込んでいるので、すぐには答えられないかもしれません。そこでヒントでMy favorite colorに鉛筆で下線を引いてあげます。そうすると全体で主語であることが理解しやすくなります。これを赤で囲みます。
my favorite color is blue.

最後にblueという言葉がせつめい語なのか、それとも「in, on, atなど」なのかを考えさせます。正解はせつめい語です。この場合、isという動詞は左側の主語と右側のせつめい語が同じであること(イコール)を意味します。

ここまで細かく説明すれば、それぞれの単語がどういう意味でなぜその順番に並んでいたのかが理解できます。そうするとスッキリした状態で、英文の暗唱に気持ちを集中させることができます。

あまり細かいところまでやりすぎると混乱する原因になります。とりあえず学校や英会話スクールで習った基本文の理解だけにとどめておきましょう。

・否定文と疑問文も作ってみる

否定文と疑問文も作ってみましょう。否定文は動詞のうしろにnotを付け足すだけなので、My favorite color is not blue.で完成です。また、疑問文は主語と動詞を入れ替えてIs your favorite color blue?となります。myをyourに変えるのがポイントです。

否定文や疑問文を作るときは、紙に書かずに口頭で答えさせましょう。紙に書かせるとスペリングを正確に書けなければいけないので、英作文に集中できません。一度に複数の作業をさせると効果が低下するので、口頭英作文が最適です。

このように、たった一つの基本文だけでも、語順と否定文・疑問文の作り方までを繰り返し学ぶことができます。

ほとんどの英文が3つの文型に収まることがわかれば少しずつやる気が出てきます。一度考え方を伝えれば、自分で解決できないときだけ質問するようになります。そのときは壁に貼った文型のカードを確認しながら教えてあげましょう。

英会話につなげる小学生の文法学習

文法や語法を習ったときは、必ず学習事項を使った英文を暗唱することが必要です。実際の使用例を何度も声に出して言うことで、文法を筋肉に覚えこませます。

例えば「~が得意である:be good at ~」を習ったら、これを使ったHe is good at math.(彼は算数が得意である)という例文を暗唱します。やり方は次の通りです。

・英会話につなげるための文法学習ステップ1

まず、この文章の文型を確認します。「主語 is せつめい語」のパターンです。得意は「良い」と置き換えられるので、goodを使用しています。日本語がどのように英語に変えられるのかを理解すると言語感覚が磨かれます。得意な物を示すときは、atを使います。

ここまでをきちんと理解できたら、英文を見ながら3回音読しましょう。回数を増やしすぎると、意味を無視してお経を唱えるような状態になってしまいます。3回だけでいいので、覚えるつもりで集中します。

・英会話につなげるための文法学習ステップ2

次に何も見ないで3回音読してみます。このときに表現を忘れたり口ごもったりしたら、ステップ1からやり直します。

・英会話につなげるための文法学習ステップ3

最後に日本語訳を見ながら、日本語のどの部分がどのように英語に置き換えられているのかを確認しながら、英文を音読します。例文では「得意」の意味を「good」で表しているのが特徴です。これも3回音読します。

英会話練習の中心はステップ1~3をひたすら繰り返すことです。英文そのものを暗記することが目的ではありません。まったく同じ表現を使用する機会は、めったに訪れないからです。

それよりも「得意である」をgoodで表現できるとか、得意な分野や対象をatのうしろに置くなどのことを脳に染み込ませることが大切です。何気なく音読を繰り返しても効果はほとんどありません。

英会話に使える表現を瞬時に出せるために練習していることを忘れないでください。文型や文法を筋肉が覚えるくらいまで繰り返すと、少しずつ英語を話すことができるようになります。

英語を流ちょうに話す人は、文法を意識していないのではありません。文法を意識しながら数多くの練習を繰り返した結果、ほとんど意識せずに話せるようになっているだけです。文法は知識で終わらせるのではなく、使いこなせてこそ意味があります。

英語の文法を学ぶときに、ひと言も声を出さずに完了してはいけません。理屈を理解したらすぐに口頭練習を繰り返すことが大切です。もし、あなたの子どもが静かに英語を勉強していたらそれは間違った学習方法なのでアドバイスをしてあげましょう。

英語の総合力をつけるには、こちらの動画セミナーがオススメです。

まとめ

小さい子どもは体験を通して英語の語順などの文法を自然と身につける能力を備えています。しかし、10歳頃を境にしてその能力は衰えます。代わりに論理的に言語を習得する能力が急速に高まります。

このことから小学4年生からは少しずつ文法を学んだほうが、効率よく英語を身につけられることがわかります。初めに学ぶべき文法とは、基本的な文型(語順)と否定文・疑問文の作り方です。

また、これらの文法を学んだだけでは単なる知識で終わってしまいます。大切なのはこの知識を使って実際に口を動かして英文を暗唱しながら筋肉に文法を覚えこませることです。

「文法を意識するから英会話ができない」という間違った認識は捨てましょう。英語を流ちょうに話す人は学んだ文法を使って練習を繰り返した人です。

これから長い時間をかけて子どもたちは英語を学んでいきますが、お母さんからもときどき文法学習の意義を伝えてあげましょう。

小学生で英検3級に合格!おすすめ問題集と効果的な勉強法

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小学生で英検3級を目指すことについて、これまで私はあまり肯定的ではありませんでした。中学校からの英語の準備として考えた場合、4級まで取得していれば充分だと考えているからです。「親が英検3級を子どもに強制する」悪いイメージを抱いていました。

しかし、実際に合格した子どもやお母さんと話をしてその認識を改めました。意外にも子どもが前向きに3級取得に向けてコツコツと英語学習に取り組んでいたり、お母さんもその様子を見守りながら励ましているケースのほうが圧倒的でした。

たしかに小学生の間に英検3級に合格するには、能力だけでなく子どもの前向きな気持ちが不可欠です。母親が無理やり子どもに勉強させても合格は難しいでしょう。

私が推奨するのは親子受験です。学校を卒業してから英語から遠ざかっているお母さんも一緒に子どもと勉強するのです。親子で共通の目標をもって何かに取り組むことは、思い出作りにもぴったりです。

そこで、「どんどん難しい英語にも挑戦したい」という子どもを持つお母さんのために、小学生の間に英検3級に合格するための知識と具体的な勉強法について解説します。

英検3級:小学生の合格率と受験者数の推移

小学3年生からの英語必修化に伴い、小学生の英検志願者数は堅調に増加しています(2016年度約37万人)。その背景には、センター試験が廃止され英語については民間資格や検定の導入されたり、中学受験で英検資格保持者が優遇されるなどの状況もあるようです。

英検が合格率を開示していた最後の2013年度資料によると、英検3級の小学生の合格率は約53%(志願者数27,781人に対して13,767人が合格)でした。大まかな合格ラインは正答率6割といわれています。

当時よりも多くの小学生が受験していると仮定すると、毎年約1万5千人もの小学生が英検3級に合格していることになります。これらの統計から、計画的に英語学習を進めていけば小学生でも英検3級に合格できることがわかります。

英検3級の英語レベルについて

英検3級のレベルは大まかにいえば「中学校3年間で学習する英語」です。中学3年生で学習する主な文法事項を列挙してみます。

受動態
現在完了形
現在分詞・過去分詞
間接疑問文
関係代名詞

かつて「make(原形)/ made(過去形)/ made(過去分詞形)」などと不規則動詞の活用を暗記したと思いますが、それがちょうど中学3年生の内容です。受動態(~される)や現在完了形(~したところだ)を学習するときに必須の知識です。

文法の節(せつ)の概念が試される間接疑問文や関係代名詞は中学生にとっても理解に時間がかかる分野です。小学生で合格するためには、長期的な本腰を入れた学習が必要であり一夜漬けで合格することはありません。

品詞・修飾関係を理解できるかどうかが鍵

英検4級に合格したら、その勢いでそのまま継続して英語学習を続けましょう。子どもが英検3級の学習内容へ準備ができているかどうかのバロメーターは「品詞を理解できるか」と「修飾関係を理解できるか」の2点です。

英語の品詞は10種類に分類できます。その中でも少なくとも4つを理解できないと、英検3級に向けての学習に取り組めません。大事な4つの品詞とは「名詞・動詞・形容詞・副詞」です。子どもにもわかるように説明すると次のようになります。

品詞 働き 例
名詞 人や物の名前を表す desk, teacher, tree, John
動詞 人や物の動作を表す have, go, make, run
形容詞 名詞を修飾したり説明する beautiful, happy, tall
副詞 動詞・形容詞・他の副詞を修飾 slowly, always, tomorrow

品詞の理解に欠かせないのが修飾の概念です。修飾とは「ある語句が他の語句の意味を詳しく説明すること」です。小学校3・4年生くらいから国語の授業で修飾と被修飾(修飾される)との関係を学ぶようですが、これは英文法を理解するときにも大いに役に立ちます。

例えば、「やせた男が急ぎ足で歩いていた」という文では「やせた」は「男」を修飾しています。同様に「急ぎ足で」は「歩いていた」を修飾しています。

あなたの子どもが品詞を区別できて修飾関係を理解できる状態なら、英文法を少しずつ学ぶ準備が整っているといえます。もしこれらの理解が苦手な場合は、無理に英文法を教えると英語嫌いになってしまうので延期したほうがいいです。

小学生で英検3級を取得するためのロードマップ

仮に小学6年生で英検3級合格を目指すとしたら、どのような計画で進めていけば実現するのかを見てみましょう。
英検3級合格ロードマップ能力や時間配分などにより個人差はありますが、おおむねこのようなスケジュールで進めていけば英検3級に合格できます。

ここで「英検3級に合格するために6年間も費やすのは非効率的」と考えるお母さんがいても不思議ではありません。なぜなら、中学生になってから英語を学習しても中3で多くの生徒は英検3級に合格できるからです。

しかしそのように判断するのは早計です。中学校になると他教科の学習量の増加や部活動などの関係で、英語の音に慣れる時間が思うように取れません。カタカナ読みのまま英検を取得してもその後伸び悩むのはあきらかです。

資格取得に必要な期間だけを見れば非効率的かもしれませんが、小さい頃から正しい発音・アクセント・イントネーションを充分に積み重ねた経験は決して無駄ではありません。

文法事項に関しても同様です。例えば「to 不定詞」の用法を暗記しただけの状態と、「to 不定詞」を使用して瞬時に口頭で英作文できる状態では、同じ英検3級でもコミュニケーション能力に大きな開きがあります。

小学生の間に英検3級を目指すなら、小手先のテクニックにとらわれずに取り組むことを強く推奨します。

本格的な英語力を伸ばすトレーニングはこちらで紹介しています。

英検3級の出題内容

英検3級の1次試験は筆記試験とリスニングです。それに合格すると2次試験のスピーキングテストを受けます。英検4級まではスピーキングテストは合否に関係ありませんでしたが、3級以上は合否にも関係してくるので対策が欠かせません。

2017年度第1回の検定から、英検3級と準2級の筆記試験にもライティング(英作文)テストが導入されました。これにより3級以上は4技能(リーディング・ライティング・リスニング・スピーキング)についてバランスよく試されることになりました。

英検3級1次試験(筆記)

1次試験の筆記試験はマークシート方式の語法・読解問題とライティング(英作文)に大きく分かれます。

問題 形式 問題数
1(マークシート) 短文の穴埋め問題 15問
2(マークシート) 会話文の穴埋め問題 5問
3(マークシート) 長文の読解問題 10問
4(記述) 英作文問題 1問

・短文の穴埋め問題

短文または会話文の中の( )に入る適切な語(句)を選択肢の中から選びます。( )の前後の内容を理解できることがポイントです。

・会話文の穴埋め問題

ダイアローグ(対話)形式の会話文中の( )に入る適切な語句や文を選択肢から選びます。

・長文の読解問題

A, B, C 3つの英文を読み、内容に関する質問の答えを選びます。Aは「お知らせ・掲示」、Bは「Eメールや手紙文」、Cは「説明文」の内容です。BとCは文章量が多めなので、普段から長文に慣れていないと得点できません。

・英作文問題

与えられたトピックについて、自分の考えと理由二つを英語で書きます。語数の目安は25~35語です。一見難しそうに見えますが、コツをつかめば対策は容易です。実際の学習方法は後述します。

英検3級1次試験(リスニング)

リスニングテストは3つのパートで構成されています。

問題 形式 問題数
第1部 会話の応答文を選ぶ問題 10問
第2部 会話の内容に関する選択問題 10問
第3部 文の内容に関する選択問題 10問

・会話の応答文を選ぶ問題

イラストに関する二人の対話を聞き、応答としてふさわしいものを選びます。会話と選択肢は1回しか放送されません。

・会話の内容に関する選択問題

二人の対話を聞き、内容に関する質問の答えを選びます。会話と質問は2回ずつ放送されます。選択肢は問題用紙に書かれています。

・文の内容に関する選択問題

35語前後の英文を聞き、内容に関する質問の答えを選びます。英文と質問は2回放送されます。選択肢は問題用紙に書かれています。

英検3級2次試験(スピーキング)

イラスト付きの英文が書かれたカードを使用します。英文を20秒間黙読したあと、音読するように指示されます。続けて英文に関する質問が1つ、イラストに関する質問が1つ、あなた自身に関する2つの質問への解答が求められます。

普段から音読する習慣を身に着けていれば落ち着いて読めるはずです。質問への解答は、疑問詞に注意を払い「何について聞かれているか」を正しく把握することがポイントです。

上記のように英検3級の問題範囲は広範囲にわたるので、直前になってあわてて取り組んでも合格は不可能です。最低でも1年程度の時間をかけてコツコツと学習を続けましょう。

小学生が英検3級に合格するための問題集と勉強法

小学生が独学で英検3級レベルの英語を学ぼうとしても高確率で失敗します。中学校で習うような内容を基礎から教えてくれる英語スクールやオンライン英語のサービスなどを利用して、先生から英語を習うのが一番です。

授業で習った内容をきちんと定着させる復習として、家庭で問題集に取り組むようにしましょう。文法の基礎を理解するための問題集と4技能と関連させながら発展させる問題集の2種類を用意しましょう。

試験直前の2か月前からは過去問を中心に勉強を進めます。過去問に取り組む理由は文法の範囲が限定されない問題に慣れることです。普通の問題集では「現在分詞」などの項目でまとめられているため解答が予想できてしまうことが難点です。

これらの学習の流れを5つのステップにまとめたものが下の図です。
英検3級対策5ステップ

ステップ1:英語の先生から文法を教わる

現在通っている英会話スクールで英検3級の講座があれば受講しましょう。もし通える範囲に英検の講座があるスクールがなかったり、何らかの事情で子どもの送迎が困難であればオンライン英会話を利用する方法もあります。

繰り返しになりますが英検3級の出題内容は中学校レベルなので、小学生が独学でテキストから学ぶのはほとんど不可能です。理解が難しい部分を知り尽くしたプロの先生から教えてもらうのがベストです。

英検の筆記問題に限定すると日本人講師のほうがネイティブ講師よりも優れています。文法の問題を日本人にわかりやすく解説できるのは、同じ日本人の経験者のほうが圧倒的に有利だからです。

英文法の基本を教わったら、すぐに家庭での復習に取り組みます。宿題等が出されるなら先生の指示に従ってください。もし問題量が不足していたり理解が今一つなら、もう少し家庭学習を充実する必要があります。

ステップ2:教わった文法の理解(復習)

英文法を復習するときの問題集として私がオススメするのは『小学生のための英検3級合格ドリル』(旺文社)です。各Lessonの冒頭では漫画でターゲットの文法事項のエッセンスを説明しているので、小学生でも取り組みやすいように配慮されています。

細かい字で書いてある部分にも大切な情報が詰め込まれているので、すべて読むようにしましょう。英語スクールなどの先生から文法を習ったら、できるだけ間を空けずに該当部分をこの問題集で復習するようにしましょう。

もしこの段階で子どもが理解できない部分が多いようでしたら、お母さんが教えてあげましょう。それが難しいなら英会話スクールの先生に質問してクリアする必要があります。理解があいまいなまま問題演習を繰り返しても効果はありません。

ステップ3:該当する文法の問題演習(4技能と関連させる)

『小学生のための英検3級合格ドリル』で身に付くのは、知識としての文法です。この知識を4技能と関連付けながら、実際に応用するトレーニングが必要です。そのための問題集として『いちばんやさしい英検3級』(新星出版社)を使用しましょう。

最大の特徴は、各学習事項について必ず4技能と連携させているところです。文法の解説の後、以下のような6つのステップと最後のテストで構成されています。

STEP 1 単語トレーニング
STEP 2 リスニングトレーニング
STEP 3 会話トレーニング
STEP 4 モノローグトレーニング
STEP 5 単語・イディオム & ライティングトレーニング
STEP 6 ライティングトレーニング
Challenge 1 筆記問題
Challenge 2 リスニング問題

これらのステップにきちんと取り組むと、英語の総合力を底上げできます。とくにステップ6のライティングは英検3級の出題形式そのものなので、毎回これに取り組めば得点源にすることができます。

ライティングでは質問されたことについて、自分の意見を述べます。そしてその理由を2つ挙げます。最後にこれらの文章を25~35語でまとめます。このパターンに慣れておけば、英検3級のライティングは簡単に乗り切れます。

この解答パターンを応用すれば、将来英検準2級以上のライティング問題でも役立ちますし、スピーキングテストでも自分の意見を筋道を立てて伝えることができるようになります。

・『いちばんやさしい英検3級』の使い方

『いちばんやさしい英検3級』は問題集としては充実していますが、文法の解説は簡略化されていて小学生が読んでも理解は難しいです。かならず『小学生のための英検3級合格ドリル』で理解をしてから『いちばんやさしい英検3級』に取り組みましょう。

全部で4章ありますが、第1章は基本表現や文法の基礎(品詞など)について扱っています。まず最初に第1章を仕上げてしまいましょう。子どもの理解があいまいなら、英会話スクールの先生やお母さん・お父さんのサポートが必要です。

第1章が終了したら、先生から教わった学習箇所を見つけて取り組んでいきましょう。当然、問題集の順番どおりには進みませんので、勉強したところは記録をつけておきましょう。最終的にすべてカバーできたら1周目は完成です。

1周目が終わったらもう一度最初から今度は順番通りに問題集に取り組みましょう。2週目では音読トレーニングに集中すると効果的です。音読のやり方について以下詳しく説明します。

ステップ4:モノローグの音読トレーニング

2週目に問題集に取り組むときは、『いちばんやさしい英検3級』STEP 4のモノローグを利用して音読練習に力を入れましょう。モノローグとは「一人の人物がひとりごとの形式で話をすること」です。その他のステップは飛ばして大丈夫です。

このモノローグにはテキストと音声、そして日本語訳があります。発音やイントネーションに気を付けながら何度もテキストを声に出して読みましょう。知らない単語があれば覚えてください。

また、CD音声を追いかけるようにして音読(テキストを見ないで)する「シャドウイング」と呼ばれる音読練習にも挑戦してみましょう。音だけを追わずに意味も頭の中でイメージするように気を付けるのがコツです。

最後の仕上げとして、日本語訳を見ながら英文を声に出してみましょう。また、CDを利用して一文ごとに休止を入れながら、紙に聞こえた英文を書きとる「ディクテーション」はリスニング力を高める効果があります。

音読練習は野球でいえばキャッチボールや素振りに相当する「基礎トレーニング」です。漫然と読むのではなく、それぞれのステップで伸ばしたい部分を意識しながら取り組みましょう。音読についての詳細は別の記事「小学生から始める英語音読トレーニング(実践編)」で扱っているので参考にしてください。

ステップ5:過去問に取り組む

ほとんどの文法の問題集は、文法の学習事項別にまとめられています。例えば、現在完了形の項目では、現在完了形を問う問題が集められています。文法を初めて学習するときはこれで問題ありません。

しかし、英検では分野別に出題されません。ランダムに広範囲にわたる問題が出題されても対応できなければいけません。そのための訓練として最も優れているのが英検の過去問です。

過去問は英検ホームページから過去3回分まではダウンロードできるようになっています。もし、それより多くの問題に取り組みたければ『英検3級過去全問題集』(旺文社)を購入しましょう。

過去問の勉強法ですが、本来の解答時間は無視して徹底的にわからないところを潰すつもりで取り組みましょう。実例を挙げながらポイントを説明します。

A: Sam, I’d like you (   ) Susan with her math homework.

B: Sure.

1  help    2  helped    3  be helped    4  to help

*2018年度第2回検定一次試験(3級)より引用

正解は4のto help です。この問題に正解しても間違えても、丸つけをして終わりにしてはいけません。

なぜ、4が正解なのか理由を説明できるでしょうか。また、他の選択肢はなぜ( )に入れられないのかを説明できるようにしましょう。

次にI’dの部分に省略形が用いられていますが、何が省略されているか答えられるでしょうか(答えはwould)。I would like to doとI would like you to doの違いは説明できますか。また似たような表現I want you to doはすぐに思いつきますか。

さらにhelp+O+with…で「Oを…の面で手伝う」という意味になることを知っていますか。

これらのすべてにきちんと答えられたら、スラスラと読めるまで音読してみましょう。最後に英文を見ないで英文を書いてみましょう。

このようにたった一つの問題でも、正解以外の選択肢について考えたり、解答に直接関係のない表現を覚えたりすることがとても大切です。普通の解答時間の10倍以上時間がかかりますが、気にせずそのまま進めましょう。

このようにして密度の濃い学習を習慣づけると、英検3級で終わるような実力ではなくすぐに準2級を狙えるような本物の英語力を身につけることができます。英語が得意な人は自然にやっていることなので、まねしてみましょう。

2次のスピーキング対策にはオンライン英会話を取り入れよう

スピーキング練習は普段の音読学習などで対応できます。しかし、スポーツに試合が必要なように、スピーキングも練習だけでなく「試合」感覚が必要です。

もしネイティブと会話する機会がない場合は、オンライン英会話のサービスを利用するといいです。費用を抑えつつ20分程度の会話練習ができます。子どもの送迎の負担がないので、一度試してみる価値はあります。

外国人と英会話をする経験を積んでおくと、英検2次試験でも緊張することなく落ち着いてスピーキングテストを受けることができます。

特に講師が質問するときに「何について聞かれているか」をきちんと聴き取るように注意し、その質問に正しく回答することがポイントです。特にWh-やHowから始まる疑問文は、具体的な答えが必要なので会話練習をして素早く反応できるようにしましょう。

一夜漬けでスピーキングテスト対策をしても、口ごもって何秒も沈黙してしまう結果となります。日頃からの慣れが大切です。

英検3級は3回受験

英検3級からは4技能を強く意識して英語学習に取り組むことが求められます。音読を中心に据えながら、弱いところを克服するように子どもをサポートしてあげましょう。

小学生の間に英検3級に合格したければ、小学5年生の1月に実施される英検に申し込みをしましょう。そうすれば、6年生の10月の試験までに合計3回受験することができます。

不合格でも気にせずに、各技能のバランスを見ながら得意・不得意を知ることが大切です。平均的にすべての技能が上がるのが理想ですが、実際は偏りが生じるのが普通です。得意なところはさらに伸ばしつつ、苦手なところにも力を入れるようにしましょう。

不合格だったとしてもスコアが少しずつ伸びていれば、成長している証拠です。頑張った子どもをほめてあげるようにしましょう。もし小学生のうちに合格できなかったとしても、中学校で挽回するチャンスはあるので心配無用です。

まとめ

小学生の間に英検3級に合格するのは不可能ではありません。しかし、ハードルが高いのも事実です。

親が子どもの発育段階を無視して文法学習を押し付けるのはやめましょう。もし、品詞や修飾関係が理解できているようだったら、少しずつ英文法を学ぶようにしましょう。

英検3級では4技能についてバランスよく問われます。まずは日本人の英語の先生を見つけて、初歩から文法を教えてもらうようにしましょう。そして、家庭では復習と4技能を意識した演習に時間をかけることが大切です。

特に音読トレーニングは英語の基礎練習になるものなので、時間をかけてじっくりと取り組むようにしましょう。試験2か月前からは過去問を解きながら、密度の濃い学習を心がけましょう。

英検は年3回受験できるので、合格したい時期から逆算して3回は受けるようにします。結果に一喜一憂せず、苦手分野の発見や得意分野をさらに伸ばす指針に活用するようにしましょう。

子どもが「英語好き」の状態で、英検3級合格に向けて学習できるように、お母さんは励ましてあげましょう。合格したときは家族みんなでお祝いしてあげれば良い思い出になります。

小学生が英検3級に合格する単語の覚え方

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英単語の暗記を「楽しい」と感じる人はほとんどいません。必死に覚えても翌日には大半を忘れてしまい、やる気はみるみる低下していきます。私も最初の10ページくらいで単語帳を放り出した経験が何度かあります。

それでも何とか覚えたのは、やはり高校入試・大学受験など大切な「試験」があったからです。もし試験がなかったら、今の半分も英単語を覚えていなかったでしょう。

そう考えると、小学生で英検3級に合格するのは大変です。しかし、これを機会に中学卒業程度の語彙力を身につけたとしたら、英語の世界が広がり大きな武器になるのは間違いありません。そこで、小学生が英検3級に合格するための単語学習法について解説します。

英検3級に必要な単語数は1300語

英検3級の難易度は「中学卒業程度」とされており、小学生が英検3級に合格するのは決して簡単ではありません。単語に関しては1300語を知らないと問題を理解できません。しかし、時間をかけて計画的・効率的に取り組めば小学生でも合格は可能です。

英検3級以上はリーディングとリスニングだけでなく、ライティングとスピーキングも課されていて、4技能(聴く・話す・読む・書く)をバランスよく問う内容となっています。

それぞれの技能は単独で成立しているわけではなく相互に深く影響しています。4技能の中心にあるのは文法と単語力です。英語4技能と単語・文法学習の関係を整理したものを下の図にまとめました。

4skills

上の相関図を見てわかるのは、特定の技能のトレーニングをしていても常に他の技能や「単語・文法」が関連することです。例えば、リスニング力を向上させるために英語を聴くことはもちろん有効ですが、速読力(リーディング)も深く関連します。

単語力の増強についても同じことがあてはまります。つまり単語帳を使って暗記するだけが単語学習ではなく、文法学習や4技能のトレーニングと常に関連づけることを意識するようにしましょう。

英検3級合格の基準となる1300の英単語を小学生が覚えるためには工夫が必要です。根性だけで暗記しようとしても挫折します。無理に単語学習を強制すれば子どもは英語嫌いになってしまいます。

単語学習とは意味がわかる単語数を増やすだけではありません。日本語から英語に直せる数を増やすことも大切です。例えば「important」を見て「大切な」という意味であることを思い出せるのは単語学習の第一段階です。

しかし、話したり書いたりするためには「大切な」という日本語から「important」を瞬時に思い出すことが必要です。つまり意味だけ覚えている単語数を増やすだけでなく、「使える英単語」を増やすことも大切です。

下の図では同じ単語数を習得しているAさんとBさんの英語力を比較しています。両者の違いは「使える単語数」の違いです。同じ単語数を習得していても、使える単語数が圧倒的に多いBさんのほうがスピーキングやライティングにおいて有利です。
使える単語が多いと
英検3級からは4技能をバランスよく試されます。単語集で意味を暗記するだけでは不充分で、意味がわかるだけの単語を使える単語に変えていく努力が必要になります。

英検4級に合格しておこう

小学生が英検3級に挑戦するなら、その前に英検4級を取得しておきましょう。英検4級に出てくる単語レベルは600語程度です。そこまでをきっちりと覚えておけば、ゼロから1300語を覚えるよりはるかに楽だからです。

大学受験を経験したお母さんなら共感していただけると思いますが、知らない単語だらけの単語帳を暗記するのは本当に苦痛です。単語帳を開いたときに3分の1程度は意味がわかる状態なら、小学生でも前向きに単語学習に取り組めます。

英検3級合格に必要な残りの700語については単語帳を使用しながら、とりあえず意味がわかる単語を増やしておきましょう。英検3級の単語を小学生でも効率よく勉強するための具体的な方法について解説します。

小学生が英検3級に合格するための効果的な単語勉強法

小学生が英検3級対策として単語を覚えるとき、教材として「単語帳(紙の本)」「単語カード(自作)」「単語アプリ」の選択肢があります。私のおススメは単語帳です。

単語カードは作成に手間がかかり、持ち運びに適していないのでどこでも学習できるものではありません。単語アプリについては上手に使えば便利かもしれませんが、小学生はスマートフォンを使用するとゲームなどに夢中になり学習に集中できなくなる可能性が高いです。

単語帳は定番の『でる順パス単英検3級』(旺文社)を購入しましょう。試験に出る頻度(でる度A~C)で品詞別(動詞、名詞、形容詞・副詞その他)に構成されています。単語帳の最初ほど重要な単語が掲載されているので、途中で放棄したとしても最重要単語はカバーできます。

でる順パス単英検3級+赤シート
本の厚さは1センチ弱で、収録語数に圧倒されて気が滅入ることはありません。付属の暗記用の赤い半透明のシートを使用すると赤く印刷された訳語の文字が見えなくなり暗記に便利です。また、無料ですべての単語の音声が無料でダウンロードできるので、正確な発音を知ることができます。
でる度

この単語集にはbe satisfied with(に満足している)などの熟語やtake your time(ゆっくりしてください)などの会話表現も収録されていて、覚える優先順位が高いものばかりです。単語以外の熟語と会話表現も覚えてしまいましょう。

単語帳を購入するのは、暗記用に使用するだけでなく「辞書代わり」に便利だからです。小学生向けの英和辞典は出版されていますが、説明が不足していたりカタカナで読み方が書いてあったりするのであまりオススメできるものがありません。

本格的な英和辞典は漢字にルビがないため、定義の日本語が読めません。役に立たない英和辞書をわざわざ購入するくらいなら、英検3級の単語帳のほうが役に立ちます。

発音記号を覚えて単語学習を加速させる

『でる順パス単英検3級』はよくできた単語集ですが、欠点もあります。それは単語にすべてカタカナが振ってあることです。例えばfindには「ふアインド」と書いてあります。

日本語の「ふ」と英語の【f】の音は全く異なります。子どもにとってはカタカナのほうが覚えやすいので、どんなに注意してもカタカナ読みの癖がついてしまいます。

カタカナ読みの弊害は深刻です。リスニングで【f】で発音されても、覚えた「ふ」の音と異なるため聴き取りできません。また、誤った発音をしていると相手に理解してもらえません。学習初期の段階でカタカナ読みを排除することが重要です。
カタカナを消す
カタカナ読みをさせないために、お母さんはカタカナを黒く塗りつぶしてしまいましょう。面倒な作業ですが、カタカナで覚えてしまった子どもを後で矯正するほうがもっと手間がかかります。

次に発音記号を子どもに教えてしまいましょう。「発音記号なんて小学生には難しすぎる」と考えるお母さんもいるかもしれません。しかし、発音記号を覚えるのはそれほど難しくなく単語学習においてメリットが大きいのです。

覚え方はとても簡単です。子どもがすでに正しく読める単語を利用して、それと発音記号を見比べさせながら学習します。例えば、「animal」が読めれば【æ】(aとeが並んだ記号)がどのような音に対応しているかがわかります。

発音記号の多くはアルファベットと同じです。特殊な記号(ð, ʃ, ŋ, θなど)だけ覚えれば、発音記号はすぐにマスターできます。

発音記号が読めると初めて見る単語でも、とりあえず正しく発音することができます。いちいちCDで音声を確認する手間も省けて単語学習を効率的に進めることができます。わずかな期間でマスターできるので、この機会に発音記号を覚えましょう。

初めのうち子どもは自分の読み方に不安を感じるかもしれません。その場合はCDを再生して、発音記号からイメージした音と実際の音を比べながら修正しましょう。

動詞とその他(名詞・形容詞・副詞)で単語の覚え方を変えよう

先述のとおり、『でる順パス単英検3級』では「出る度(頻度)」により単語が配列されています。最も頻度が高いものは「出る度A」に収録されています。さらに品詞(動詞、名詞、形容詞・副詞・その他)によりカテゴリーが分かれています。

この分類を上手に利用して、覚え方に変化をつけるのがコツです。名詞・形容詞・副詞については、単語帳から暗記していくやり方で大丈夫です。しかし、動詞は活用(原形・過去形・過去分詞形)や使い方のルールを含めて覚える必要があります。

例えば「give=を与える」と覚えても、過去形(gave)過去分詞形(given)まで含めて覚えないと役に立ちません。これらの変化は文法学習と関連していて、受け身や現在完了を学ぶ前に過去分詞形を丸暗記してもあまり意味がありません。

また、動詞の用法についても理解しなくてはいけませn。「enjoy=を楽しむ」と覚えるだけでは不充分です。「~することを楽しむ」はenjoy + -ingで表現し、enjoy + to doとは使えないルールまで含めて覚えなければいけません。

このように動詞については、語形変化や使用法まで含めた知識の学習が必要です。単に意味だけ暗記しても使い物にならないので、英検3級の基本動詞は単語帳での暗記には向いていません。動詞は飛ばして、他の品詞から暗記しましょう。

一方、動詞以外の名詞・形容詞・副詞についてはとりあえず一つの訳語を覚えておきましょう。多義語(複数の意味がある言葉)もありますが、それは少しずつ慣れていけばいいことです。

進学校の生徒に学ぶ単語学習の極意とは

なお、私の近所に東大合格者が多い進学校があります。朝・夕は交差点で信号待ちをする生徒を見かけますが、初めて彼らを見たときに驚いたことがありました。

信号が赤に変わり歩道で立ち止まると、すぐに英単語集を開いてブツブツつぶやきながら単語を覚えています。青信号に変わるまで1分半、単語の暗記は続きます。
進学校生徒
さらに駅で電車待ちするときも、その高校の生徒だけは単語集を暗記しています。とにかくマメに単語集を開いて、わずかな時間でも集中して暗記しています。

私が高校生の頃はそんなことをした経験がないので、「さすが超進学校は違うなあ」と感心してしまいました。

あるとき私は英検1級の単語集を購入し暗記しようとしました。しかし、知らない単語が続出して挫折しそうになりました。そこで、進学校の生徒を参考にして、「スマホをポケットから取り出すときは必ず単語集を一度開く」という自分独自のルールを設定しました。

意味なくスマホを使おうとする回数は予想以上で、1日10回以上は単語集を開き、暗記をする習慣ができました。英検1級の単語はあまりなじみのない単語ばかりでしたが、毎日頻繁に眺めるうちにほとんど覚えられるようになりました。

正直言って、私は暗記が大の苦手です。高校時代は世界史・日本史で赤点を取り続け苦労したくらいです。そんな私でさえ難しいとされる英検1級の単語を覚えられたので、頻繁に復習するという勉強法は効果が高いといえます。

この経験から、単語学習の究極のコツは「高頻度の復習」です。数分間でいいので、何度も何度も繰り返しブツブツ単語を読みながら意味を復習していると、覚えにくい単語が徐々に減っていきます。

わざわざ単語学習の時間を設けて机に向かうのではなく、一日で何度も単語帳を開いてブツブツつぶやきながら覚えるようにしましょう。覚えてもすぐに忘れるのは普通のことです。気にせず、頻繁に復習することを習慣化するだけで単語は攻略できます。

ちなみに英検1級の単語を覚えたあとは、それまで難しかった英語の小説を少し楽に読めるようになり、ボキャブラリー増強の効果を実感できました。

多読と並行して取り組む

英検3級を目指すなら多読にもチャレンジしましょう。長い文章を読むことに慣れておくと、英検の読解問題を長いと感じなくなります。

子どもの英語力に見合った洋書の選び方を紹介します。アマゾンのトップページのカテゴリーから洋書を選びます。
アマゾンのカテゴリー
画面左側おすすめのところに「難易度別リーディングガイド」の項目があるのでこれをクリックします。
アマゾン難易度別

 

すると「Lexile指数」という指標が現れます。これは語彙の難易度や構文の複雑さなどから、読解力を数値化したものです。現在英検4級レベルならLexile指数は300L前後から始めるといいです。これはアメリカの小学1年生のレベルに相当します。
アマゾンのLexile指数子どもの興味関心に合わせて本を選ぶのは初めはなかなか大変ですが、子どもがハマったときにはお母さんもきっとうれしいはずです。

アマゾン検索結果

単語集では1単語につき一つの意味を対応させて覚えました。しかし、多読をすると同じ単語でも文脈によって複数の意味やニュアンスがあることが次第に理解できるようになります。豊かな語彙力を形成するためにも、子どもに多読をさせましょう。

英語総合力を鍛えたければ、こちらの動画セミナーがオススメです。

ボキャブラリーの増強がリスニング強化にもつながる理由とは

ボキャブラリーを増やし多読・速読に慣れてくると、リスニング力の向上にもつながります。英語上級者には常識になっている「知らない言葉は聴いてもわからない」という格言のようなものがあります。

子どもの頃、NHKのニュースを聞いても意味がわからなかった経験は誰でもあるはずです。語彙力が乏しいので「大統領は対抗措置として経済制裁を辞さない考えを示しました」と聞いても、子どもには意味がわかりません。

リスニング力の向上につながる単語学習とは、とにかく「正しい発音で読めること」を意識することです。知らない単語を見つけるとつい意味にばかり気を取られてしまいますが、最初にやるべきことは正しい発音ができることです。

もし知っている単語なのに聴き取れなかったときは、誤った発音で覚えてしまっている可能性があります。特にカタカナ読みを充てている場合は、リスニングが苦手になってしまう可能性が高く注意が必要です。

このように単語は単語帳だけでなく、多読やリスニングなどと関連させながら行われるべきです。お母さんは「3級を取得しさえばいい」という短期的な考え方をせずに、しっかりとした土台を築くようにさせましょう。

・使える単語を増やすには使うしかない

単語帳を使って単語の意味を暗記することは問題ありません。しかし、意味がわかるだけの単語を「使える単語」に変えることも必要です。

使える単語を増やすには実際に使うしかありません。普段使用しているテキストの「日本語訳を見ながら英語に直してみる」のはとても有効な勉強法です。

音読練習の途中でこの口頭英作文の訓練を取り入れておけば、少しずつ使える単語の数も増えていきます。紙に書くのも悪くはありませんが、時間がかかるのであまりおすすめはしません。口頭でテキパキと作文をするほうが大量の英作文に取り組めます。

さらにオンライン英会話のサービスなどを利用して、定期的に英語を話す機会を設けるようにしましょう。インプットとアウトプットを大量に行うことで、使える単語の数は増えていきます。

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まとめ

英検3級合格に必要な単語数はおよそ1300語です。単語帳を使って意味がわかる単語数を増やすだけでなく、単語の数も増やす必要があります。単語が増えると英語学習の効率が上がるので、早い段階から少しずつ取り組むことが大切です。

英検3級の合格を狙うなら、単語集は一冊揃えておきましょう。重要度と品詞別に分けられているので、最初のページから取り組めば効率のよい単語学習が可能です。この際、発音記号を覚えて正しい発音が瞬時にわかる状態にしておくと、学習効率が飛躍的に向上します。

単語帳に掲載されている単語を一様に覚えるのはやめましょう。名詞・形容詞・副詞などはそのまま暗記しても問題ありません。しかし、動詞は文法学習と関連させながら覚えるほうが使える知識となります。

ある程度暗記ができたら多読にも取り組みましょう。語彙力の向上はリスニングにも良い結果をもたらします。スピーキングやライティング力を伸ばすためにも、普段から口頭英作文の訓練を心がけましょう。

小手先の単語学習だけしかしなければ将来の伸びしろは期待できません。本物の英語力が身に付くように、子どもをサポートしましょう。

小学生が英検4級に合格するためのテキストと学習法

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あなたは英検4級を受けたことがあるでしょうか? 我が家の娘は中学生で初めて3級を受けたので、5級と4級は未受験のままです。私の周りでは英検4級を受験したという話をあまり聞きません。

英検5級は子どもが最初に受ける英検として人気があります。また、英検3級の取得者には高校入試において優遇措置を受けられるので、多くの中学生が受験します。このような状況から英検4級を飛ばす人が多いことが推測できます。

しかし、英検4級で出題される内容を詳しく調べると、英文法の大切な基礎が扱われています。級としての人気はなくても、ここで問われている内容はとても重要です。

英検4級の出題内容は中学2年生くらいまでの学習内容と重なります。そのため、小学生で英検4級に合格するためには本格的な英語学習が必要です。そこで、合格に必要な「レベル・学習量」と「対策」について具体的に説明します。

小学生の英検4級の合格率と出題内容

小学校低学年から英語を学び始めた子どもなら、小学校卒業時までに英検4級を取得することはそれほど難しくありません。週1回の英会話教室やオンライン英会話などを利用しながら、家庭でも毎日英語を学ぶ習慣があれば英検4級は充分に可能です。

英検4級の出題内容には、英文法の最重要項目が含まれています。これらの知識がしっかりと定着していると、将来複雑な英語を学ぶときにも容易に理解できるようになります。

小学校卒業時までに英検4級に合格していると、スタートダッシュをかけられるので中学校で英検準2級取得の可能性が高くなります。その場合、高校入試ではかなりの優遇措置を受けられます。具体的な優遇例については、日本英語検定協会のホームページに掲載されています。

・英検4級のレベルと小学生の合格率

英検4級の出題レベルは、中学2年生の英語試験と同レベルです。合格ラインはおよそ60~65%の正答率とされています。受験者全体の合格率は約70%で、小学生の合格率は約60%というデータがあります。

数字のとらえ方は人によってさまざまですが、小学生でも充分に合格できるという印象を受けたお母さんが多いのではないでしょうか。

英語学習歴3年、小学5年生以上なら英検4級にチャレンジ

小学生でも合格が狙える英検4級ですが、簡単ではありません。子どもの学習歴や能力によって個人差はありますが、英語学習歴3年で小学5年生以上なら英検4級にチャレンジしても問題ありません。

英検4級では短文だけでなく、長文問題が出題されます。単語さえわかれば意味が推測できる英検5級と異なり、4級では基礎的な文法力や長い文章を読む力が必要となります。

週1回の英語スクールと自宅での毎日の学習習慣(15分程度)があっても、これらのレベルに到達するまでに数年はかかるでしょう。特に子どもが得意とする英語の音(発音・フォニックス・リスニング)の学習は語学の要です。最初の1年でしっかりと仕上げましょう。

英文法の学習には抽象的な概念の理解が必須であり、9歳未満の子どもは苦手です。小学4年生から少しずつ文法を学び、1年から1年半経過すれば英検4級のレベルに無理なく到達できます。

同年齢の周囲の子どもが英検4級に合格したからといって、自分の子どもに安易に受験させるのは早計です。子どもの年齢・能力・適性・学習歴などを考慮しながら英検4級にチャレンジしましょう。

英検4級の出題内容

英検4級ではスピーキングテストがありますが、合否には関係ありません。そのため実質、筆記試験(リーディング)とリスニングの2技能について問われるだけです。それぞれの問題の構成を表で確認しましょう。

・筆記試験

問題 形式 問題数
1 短文の穴埋め問題 15問
2 会話文の穴埋め問題 5問
3 語句の並べ替え問題 5問
4 長文の読解問題 10問

上記の問題はすべて選択問題です。

・リスニング

問題 形式 問題数
第1部 会話の応答文を選ぶ問題 10問
第2部 会話の内容に関する選択問題 10問
第3部 文の内容に関する問題 10問

リスニングテストは3つのパートで構成されています。放送は2回繰り返されるので、1回目に聴き取れなくても2回目で確認できます。

英検4級で出題される文法と単語レベル

英検4級では時制(現在形・過去形・未来形)の理解が欠かせません。平叙文(~です)だけでなく、それぞれの時制における否定文(~ではありません)・疑問文(~ですか)についても理解する必要があります。

現在形はその名称から「今のこと」と誤解されやすい時制です。現在形で表現されるのは「いつものこと」です。I get up at 6.00 every day. は、「昨日も今日もおそらく明日も6時に起床する」の意味です。今のことを表現するには、現在進行形を使います。

過去形のポイントは、基本的な不規則動詞を覚えられるかどうかです。動詞にはedを語尾につければ過去形となる規則動詞と、別の形になる不規則動詞があります。つづりまでは問われないので、過去形を見たときにすぐに意味が分かれば大丈夫です。

makeなどの基本的な不規則動詞については、過去形(made)についてもセットで覚えておきましょう。普段から簡単な物語を音読する習慣があれば、過去形が頻出するので慌てずにすみます。

be going to やwillを用いた未来形の学習では、be動詞の基本や助動詞の知識が応用できるかどうかがポイントになります。助動詞は動詞の変化がない(助動詞+動詞の原形)ので、比較的簡単に理解できます。

・英検4級の単語レベル

英検4級の単語レベルは700語程度です。現在、中学校3年間での必修単語が1500程度なので、ちょうどその半分の語彙力が必要です。

英検4級に必要な単語力をつけるために、単語帳で暗記するのはオススメしません。それよりも後述する語彙制限のある薄い本を多読して基礎的な語彙力を養うほうが小学生には向いています。覚えたかどうかを確認するために使用するならJリサーチ出版の『小学生英単語』を用意しましょう。

小学英単語
語彙力のレベルチェックをするなら、中学2年生の英語教科書を利用します。初見の文章を1分間に120語のペースで読んで、8割以上の内容を理解できていれば大丈夫です。

もし120語未満のペースでしか読めなかったり理解力が8割を下回ったりする場合は、まだ英検4級の受験には早すぎます。これは読解テストだけの問題ではありません。リスニングにも大きく影響します。

リスニングができるためにはリーディング力が必要です。返り読み(右から左に視線が戻ること)をせずに一定のスピードで読んで理解できないと、リスニングはできないからです。読んでわからないものは聴いてもわかりません。

英検4級なら英語の動画サイトを利用した勉強法がオススメです。

英検4級合格に必要な文法力をどのように攻略するか

英検4級の合格には文法学習は必須です。体系的な学習が必要となるため、子どもにわかりやすく英文法を教えてくれる先生が必要です。また、これらの知識の定着を図るためにワークブックや問題集に取り組むことも必要になってきます。

ただし、文法の知識を「知識」のままで終わらせるのではなく、それを使って英語を話してみる訓練も同時にするべきです。口頭英作文と呼ばれる訓練です。英語スクールでは時間の都合上難しいので、できるだけ家庭で取り入れてほしい練習です。

例えば「to 不定詞」とは「to+動詞の原形」で「~すること」という意味になると学ぶのは「知識」です。この知識を定着させるために、下記のような問題に取り組みます。

I like (walk) in the park. 「( )の中の動詞を適切な形に直しなさい」 答え:to walk

多くの場合、ここで学習をやめてしまいます。しかし、それでは使える英語になりません。この知識を使って、短い英文を口頭で作文します。

彼の妹はバスケットボールをするのが好きです。(His sister likes to play basketball.)
私は水が飲みたいです。(I want to drink some water.)
私はお母さんを手伝いたいです。(I want to help my mother.)

このとき重視するのはスピードと文法の正確性です。2秒以内に文法的に正しい英語が口から出てくるまで練習します。できないときは、解答例を何度も音読して暗唱します。そしてしばらく時間を空けてから再び同じ作文に挑戦します。

解答例の英文暗唱から始めてはいけません。5秒間でも日本語に合った英語を一生懸命考えることが大切です。小学生には少々きついトレーニングですが、毎日少しずつこの作業を続けましょう。英文法が腑に落ちる瞬間(自分のものになる)が必ず訪れます。

英文法を使える状態にしておくと、リーディングはもちろんリスニングのときにも英文の構造を瞬時に理解できます。また3級以降は合否にかかわるスピーキングテストが始まるので、そのための準備にもなります。

小学生向けの英検4級おすすめテキスト・問題集

英検関連本で最強なのは旺文社です。そこから出版されている小学生向けの英検4級ドリル『小学生のためのよくわかる英検4級合格ドリル』を紹介します。中学生以上を対象とした一般的な英検参考書とは異なり、小学生受験者を意識したドリルです。
小学生のための英検4級合格ドリル

すべての漢字にはルビがふってあり、未修漢字の多い小学生でも読めるように配慮されています。また、難しい文法用語をできるだけ使わずに、小学生にもわかりやすい言葉で言い換えられているのが特徴です。

例えば、「to不定詞」は「to+動詞の元の形」と表現されています。「不定詞」という文法用語を避けて、平易な表現が採用されています。

オンライン英会話のリクエスト機能を活用すると、英検対策をしてくれる会社があります。管理人イチオシのオンライン英会話ランキングはこちらをクリック!

試験2か月前から準備をしよう

英検の1次試験は年3回、6月・10月・1月に実施されます。日頃からコツコツと英語学習を続けているなら、2か月前から準備をすれば充分です。なぜ2か月前からが最適かというと、長期休暇を利用できるからです。

6月受験なら春休みや連休、10月受験なら夏休み、1月受験なら冬休みが活用できます。長期休暇を有意義に過ごすためにも、英検に取り組むのは良い考えです。

先ほど紹介した『小学生のためのよくわかる英検4級合格ドリル』を使用するなら、1レッスンを3日のペースで進めましょう。1日15分の学習時間で、2日で各レッスンを終了できます。3日目は口頭英作文を中心に、知識から使える英語になるように訓練します。

口頭英作文で使用する文章は、お母さんがドリルに登場する例文を抜き出してノートに書いてあげます。

英検4級口頭英作文ノート

上の写真のように、片側に日本語をあらかじめ書いておきます。子どもは前日までに学んだ表現を使いながら、それぞれの文を英語で言ってみます。すぐに英語が出てこないときは、ドリルを広げて答えとなる英文を探して隣のページに書き写します。

英文がスムーズに口から出てくるまで音読を繰り返します。しばらく時間をおいてから再び日本語だけをみて英文がすぐに言えるかをチェックします。すべての文が一瞬で正確に言えれば、このレッスンは終了です。

英検の問題集ばかりでなく、英語での読書にもチャレンジ

英検の5級と4級で決定的に異なるのは、4級ではある程度のまとまりのある長文読解が出題されるところです。英検の問題集に掲載された長文だけに取り組むのではなく、日頃から英語での読書習慣を身に着けることを推奨します。

いきなり本格的な英語の読書は無理なので、使用語彙数を限定している本を購入しましょう。語彙制限をしている英語学習者向けの本はたくさんありますが、IBCパブリッシング株式会社から出版されている「ラダーシリーズ」をオススメします。

ラダーシリーズ*株式会社IBCパブリッシングのサイトより

LEVEL 1の使用語彙は1000語で、英検4級程度の学習者に最適です。ラダーシリーズをオススメする理由は、巻末にワードリストが付属していて辞書を引く必要がないからです。小学生が使える英和辞典がほとんどないので、これは重宝します。

一部の本には無料で朗読音声を公開しています。一度自分のペースで読んでから、2回目に読むときに朗読のペースに合わせて文字を目で追いながら内容を理解すれば、リスニングの訓練にもなります。

「ラダーシリーズ」のような多読用教材を利用しながら、長い文章を読むことに子どもを慣れさせましょう。集中して1冊読めれば、英検の長文問題など「長文」と感じなくなります。

我が家では小学生の息子は、朝学校に行く前に15分間洋書を読むのが習慣になっています。1学期だけで、ハリーポッターシリーズを2冊以上読み終えてしまいました。一度にたくさん読もうとすると英語の読書は大変ですが、少しずつなら攻略できます。

小学生が英検4級を受験:お母さんの心構え

先述のとおり、英検4級は数年計画で進めれば小学生でも合格可能です。しかし、残念ながら英検4級に落ちてしまうこともあり得ます。そのときは、子どもを非難したり叱ったりしてはいけません。中学生の内容にチャレンジしたので、その心意気をほめましょう。

中学の授業で英文法を基礎からやり直すので、挽回のチャンスはすぐに来ます。不合格になったからといって子どもがやる気をなくすような言動は慎みましょう。

英検4級を受験する究極の目的は合格ではなく、正しい英語学習のスタイルを身に着けることです。「英文を左から右へ返り読みしない」「覚えた文法を使って口頭英作文をする」などを続けていけば、英語力が飛躍的に伸びるときが必ず来ます。

合否にかかわらず、英語の勉強をコツコツ続けられた努力に対してお母さんは評価してあげましょう。子どもが英語に対して前向きな気持ちを持ち続けられるようにサポートすることがお母さんの大切な役割です。

まとめ

英検の中では影が薄い4級ですが、英文法の最重要項目が出題されます。数年以上の学習歴と文法を理解できる年齢に達していれば、小学生でも合格は充分可能です。

出題内容は筆記試験(リーディング)とリスニングの2技能だけです。スピーキングテストもありますが、合否には関係ありません。文法については時制による動詞の変化がポイントです。語彙力は中学校で学ぶ単語数の約半分(700語)が目安です。

リーディング力とリスニング力には相関関係があります。語彙制限のある薄い多読用の本を利用しながら、普段から英語の長文に親しむようにしておきましょう。

試験対策は試験2か月前から準備をします。小学生向けの英検ドリルを入手して、長期休暇を有効に使いながら学習をすすめていきましょう。文法については知識だけでなく、それを使って口頭英作文をして「使える文法」レベルまで高めておきましょう。

このとき、残念ながら英検4級に不合格だった場合、決して子どもを叱責してはいけません。英語学習を続けていけば、すぐに挽回するチャンスは回ってきます。子どもが英語好きでいられるように、お母さんは励ましましょう。

子どもの英語発音:無料アプリを使った練習方法

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私が英語学習を始めたのは中学生になってからでした。塾には通っていなかったので、学校の授業を受けながら少しずつ勉強していました。

3か月くらい経ったころ、私は他人より英語を上手に読めることに気がつきました。日本人が苦手なはずの「f, v, th, r, l」の発音が簡単にできました。自分では「英語の才能がある」と思っていました。

ある日、家で英語の教科書を音読していると、母が「やっぱり小さいときに英語を習っていたからうまいね」と言いました。何の話かまったく分からずたずねると、どうやら幼稚園のときに短期間、英語を習っていたらしいのです。

私は幼児期に英語の先生から発音訓練を受けていました。母から「英語らしい発音で歌を歌っていた」と聞かされました。英語はすっかり忘れてしまいましたが、子どもの頃に覚えた発音の筋肉は大きくなっても失われなかったようです。

子どもは英語の音に対して柔軟性があります。この時期に正しい発音を覚えると、英語学習において大きな利点となります。以下、英語の発音練習のコツと英語発音トレーニングに適したアプリについて詳しく説明します。
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日本人が苦手な英語の音

英語の発音が良くなると2つのメリットがあります。ひとつめは、英語を話すときに相手に伝わりやすいことです。聞き返されることが減るので、スムーズにコミュニケーションをとることができます。

もう一つのメリットは、英語の聴き取りが楽になることです。英語らしい発音をするのは、その音を毎回自分の耳で聞いていることと同じです。そのため他人が同じような英語を話したときも、それがどの単語のことか瞬時に聞き分けることができます。

このように英語の発音が良くなると、スピーキングだけでなくリスニングにも好影響を与えます。では具体的に「どのようにして英語の発音レベルを向上させればいいのか」について詳しく説明します。

日本語よりも英語のほうが音の数が多い

日本語と英語を構成する音の数を調べると、英語のほうが圧倒的に多いです。このことがわかると英語の発音をトレーニングするときにどういう姿勢で臨んだらいいのかがわかります。

・日本語に存在しない音がある

「英語のほうが音の数が多い」ということは「日本語には存在しない音がある」ということです。つまり、これまで出したことのない音を一から覚える必要があります。

未経験の音を出すのはとても違和感を覚えます。外から見える唇・舌先・歯だけでなく、口腔内の舌の位置や息の出し方まで意識しないと英語らしい音が出てきません。

私は学生のとき、英語の発音訓練を受けたことがあります。授業の翌日、口の周りが筋肉痛になったことを覚えています。慣れない筋肉を動かした証拠です。以下、日本人にとって未経験の英語の音を列挙しておきます。

・【f】/【v】(fan/ van)

【f】は上の歯で下唇の内側を軽く押さえ、強く息を出して発音します。【v】は【f】と同じ口の形で「ヴ」と発音します。
fとvの口の形

・【θ】/【ð】(throw/ this)

【θ】は舌の先を上下の歯で軽くかんだ状態で、息を出して発音します。【ð】は【θ】と同じ口の形で濁らせた音を出します。
thの口の形

・【r】/【l】(room/ look)

【r】は口の中で、舌を上に浮かせるようにして「ウ」に近い音を出します。
r の口の形
【l】は上の歯ぐきの裏側に舌先を軽くあてるような感じで発音します。
l の口の形

発音練習に関して、頭脳はほとんど不要です。それよりも口をいろいろ動かしながら理想的な音に近づけてみる試行錯誤が必要です。子どものが発音練習をするときは、正面に鏡を置き自分の口の形を常にチェックできるようにしてあげましょう。

日本語よりも強めに息を出さないと英語を発音することはできません。初心者のうちは少し大げさになるくらいでちょうどいいです。ときどき声を録音して、子どもに聞かせてみるのも発音の改善に効果的です。

幼児期から小学校低学年が最適

英語の発音練習に関しては、幼児から小学校低学年の頃に経験しておくのが理想的です。恥ずかしがったり面倒くさがったりせずに、好奇心旺盛に新しい音にチャレンジできる年齢だからです。

私の経験では、中学生や高校生に発音指導をするのはとても根気が必要です。彼らは新しい音を出すことを「恥ずかしい」「面倒くさい」と感じるからです。そして長期間指導する割にはあまり改善されないことも多いです。

低年齢のうちに発音練習を済ませておいたほうがいい理由はもう一つあります。それは「ローマ字」の弊害です。詳細は後述しますが、ローマ字は英語の読みとは似て非なるものなので、英語学習においては弊害でしかありません。

小学3年生から学校で「ローマ字」を習いますが、その前なら英語の音を素直に受け入れて練習できます。本格的な英語学習は後回しでもかまいませんが、発音は小学校低学年のうちに練習しておきましょう。

英語のカタカナ読みの弊害

子ども向けの英語教材では、英語に読み仮名(カタカナ)が記載されていることがほとんどです。子どもはすでに知っているカタカナを読むことで「英語を話している」と錯覚しますが、これでは英語を話していることになりません。

例えば日本語で「ア」と表記される英語の音には【æ】【ʌ】【a】【ə】の4つがあります。これらの違いは意味にも影響を与えるもので、すべてまとめてカタカナの「ア」ひとつで表現できません。

英語の4つのア

また、カタカナで音を覚えているとリスニング力は低下します。例えば「走る」意味の動詞の原形・現在分詞形「run」と過去形の「ran」があります。これらを両方ともカタカナの「ラン」と発音していたら、英語のrunを聞いてもどちらなのか判断できません。

run/ ran

リスニングで困らないためにも、カタカナに頼らずに英語を正しく発音することが大切か理解できます。

ローマ字は英語学習の妨げになる

ローマ字を習うことによって、英語の発音は余計に難しくなります。確かにローマ字と同じように英単語を読めるときもありますが、そうでない場合のほうが圧倒的に多いです。

私が中学生のころ英語の教科書を開いていると、母は「猫の話なのね」とつぶやきました。そのレッスンには猫など登場していないので、訳がわかりませんでした。

母になぜそう思ったのかをたずねて原因がわかりました。対話文の人物であるMikeを「ミケ(猫の名前)」と勘違いしたのです。

このようにローマ字読みが身体に染み付くと、英単語を学習するときに実際とは異なる覚え方をしてしまい危険です。このような理由から、ローマ字を学校で習う前に英語の発音に慣れておいて欲しいと私は考えます。

英語発音練習に無料アプリ「英語発音ドリルA to Z」

発音練習がやっかいなのは、ずっと先生につきっきりで教えてもらえないことです。最低でも1か月くらいは高頻度でトレーニングをすることが望ましいので、一人で練習できる方法を見つけなければいけません。

そんなときに重宝するのが、スマートフォンのアプリです。この記事を書くにあたり、英語の発音練習に適したアプリをいろいろと試してみました。

重視した評価ポイントは「価格:無料または格安」「信頼性:正しく評価してくれること」「文章単位:単語だけでなく文章でも練習できること」の3点です。この3つの条件に最も合致したアプリ「英語発音ドリルA to Z」について詳述します。
英語発音ドリル A to Z

「英語発音ドリルA to Z」

「英語発音ドリルA to Z」は無料で使えます。インストールを済ませると、「新しくデータを作る」画面が現れます。この機能により複数の利用者がそれぞれの学習履歴を残せます。まずは自分のデータを質問に従って入力しましょう。

 

 

入力B


・使い方

まず、発音練習に使用する例文を「カテゴリ」の中から選びます。先ほど入力した年齢が学習歴によって、使用する例文のレベルは異なります。
カテゴリー
チャレンジしたいカテゴリーを選んだら、レベルを選択して練習画面に移動します。

I'm on my way.自動でお手本の発音で例文が読まれます。スピードが速いので、もう一度聞きたい場合はオレンジ色の「お手本」と書いてあるところをタップします。

次に自分で読んでみましょう。まず、下のほうにある青いマイクの絵をタップします。すると「にんしき中」と書かれた緑色に変わります。できるだけお手本に近い読み方で、大きめの声で英語を読みます。

直後にスコアが右上に表示されます。もう一度チャレンジしたいときは、マイクのボタンを押せば何度でもできます。
スコア自分の声を再生したいときは、「あなた」と書いてある再生ボタンを押すと、直前に録音した自分の英語を確認できます。次の例文に移動するときは、マイクの横にある「次へ」をタップします。

使い方はとても簡単なので、教えてあげれば子どもでもひとりで練習できます。親子でスコアを競い合うと子どもは夢中になります。

スコアの信ぴょう性について

私が試すと毎回100点(二重丸)が出てしまうので、スコアの信ぴょう性について疑念が湧いてきました。そこで、英語の発音が苦手な妻にやってもらいました。

妻の英語に対しては、20点などの低い評価が連続しました。妻は「これ、壊れているでしょ」と文句を言っていましたが、正しい評価です。

また、英語の得意な息子にも試したら90点台で安定していました。3人しか試していませんが、このアプリのスコアはおおむね信頼できそうです。

「英語発音ドリルA to Z」にも欠点はあります。声の波形で分析していることから、まったく異なる音を当てはめても高評価が出てしまうことがあります。

例えば、“See you.” を“Thee you.” と発音しても、【s】と【θ】の違いを認識できずに、高評価が出てしまいました。おそらく、抑揚やアクセントがモデル音声と一致していれば正しく読んでいると認識してしまうからです。

このことから、まず個々の音の出し方については英語教室などで直接先生から習いましょう。その後、抑揚やアクセントに注意しながら「英語発音ドリルA to Z」を使用して短いセンテンスを読む練習をするのが理想です。

小学校高学年から英語の発音記号を覚えよう

英語の発音を学ぶときに「カタカナ」「ローマ字」は害でしかないことはすでに述べました。最近の教材にはCDが付属していて、新しく学ぶ英単語の発音を音声で確認できます。

しかし、CDだけに頼って発音を確認するのは2つの理由から学習効率が悪いと考えています。ひとつめは、音声の再生が面倒だからです。CDを再生するのはもちろん、該当の単語を見つけ出すにも時間がかかってしまいます。

もう一つの理由は、音だけを聞いても正しい発音を覚えられないからです。例えば、「バット」という音声を聞いたときbat(バット、こうもり) but(しかし) butt(たばこの吸いさし)なのか区別がつきません。

これらの理由から、英単語の発音を確認するときに毎回音声を再生すると効率が悪くなってしまいます。そこで活躍するのが「発音記号」です。学校の教科書にも単語の隣に必ず「発音記号」が表記されています。

ところがこれらの記号を覚えるのが面倒なため、先生も生徒もあまり積極的に発音記号を学ぼうとはしません。アルファベットだけでなく【ŋ】【æ】など見慣れない記号も覚えなくてはいけません。

しかし、やり方によっては小学校高学年の子どもにも発音記号を学ぶことは簡単です。そのコツについて説明します。

子どもが発音記号を覚えるためのコツ

まず、子どもが確実に読める英単語を活用します。例えば、dogなら発音記号は【dɔ(:)g】です。dとgはそのままで、口を大きく開けて発音する「オ」に該当する記号が【ɔ】であることが一目でわかります。

同じように、sheなら発音記号は【ʃ:】になります。【:】が音を伸ばす記号であるとわかれば、sが縦に伸びたような【ʃ】がshの部分を表していることが推測できます。

このようにして確実に正しい発音ができて綴りも読める英単語を利用しながら、少しずつ発音記号に慣れていくと、発音記号を見ただけでおよその音を知ることができます。

たとえば「心理学」psychology【saikaləʤi】という注意を要する単語を初めて見たときでも、発音記号を読めると「プシチョロジー」と読まずに最初から「サイコロジー」と発音できます。

私は変わっている子どもだったので、中学1年生のときに辞書の付録についていた発音記号を熟読して、独学で発音記号をマスターしました。そのため新しく単語を覚えるときは、意味よりも先に発音記号をチェックする癖がつき、正しい発音を効率よく学べました。

小学校高学年の子どもならそれほど難しくないので、少しずつ発音記号に慣れさせることを強くオススメします。

まとめ

日本語よりも英語のほうが構成する音の数は多いです。日本人が英語の発音が苦手な理由の一つは、この数の差にあります。

未経験の英語の音を無理やり日本語の音に当てはめても、英語を読んだことになりません。ローマ字は英語の発音とは異なる部分が多く、これも英語学習の妨げになります。

理想としては最初に小学校低学年までに英語教室やオンライン英会話などを利用して、英語らしい発音ができるようにトレーニングさせましょう。ひとつひとつの音がある程度読めたら、アプリを利用して完成度を高めていくといいです。

単語学習の効率を上げるために、小学校高学年からは少しずつ発音記号にも慣れていきましょう。確実に読める単語とその発音記号を比べることにより、見たことのない記号が何の音なのかを簡単に覚えられます。

音に強い子どもの特性を活かして、正しい英語の発音ができる筋肉をつけておきましょう。水泳や自転車と同様、一度覚えると大きくなっても忘れないのでオススメです。

小学生の英検2級体験記:帰国子女の英語力保持に英検を活用!

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小学校で本格的に英語が導入されています。我が家には小学4年生の息子がいて、彼も英語の授業を受けています。帰国子女で英語も年齢相応にはできるので、得意の英語力を活かして楽しく授業を受けていると私は思っていました。

ところが、学校での様子を聞いてみると、彼が英語力を発揮する機会はほとんどないようです。日本では英語を使用する機会がほとんどなく、授業中でさえもあまり英語を使えていない様子です。そのため息子は英語に関する自己評価が低下している様子でした。

そのときに思いついたのが英検の受験です。帰国子女の英語力保持や英語学習へのモチベーションアップのためにも、英検を受験してみることは有効ではないかと考えました。ここでは息子が英検2級を受験したときの様子や効果について詳しくレポートします。

帰国子女の英語力保持に英検を活用

帰国子女といっても彼らの英語力はひとくくりに語れません。海外の学校に通っていた期間や本人の学力によって大きく変わるからです。

また、帰国したときの年齢も英語力を測るうえで重要です。英語で読書ができる前に帰国してしまうと、音声(聴く・話す)から覚えた英語が中心です。音から覚えた英語は、文字を学習した後と比較して忘れやすい特徴があります。

海外の学校(現地校やインターナショナルスクール)に小学校の低学年で入学し、2年以上在籍して年齢相応の読書ができる子どもならかなりの英語力を期待できます。一般的にネイティブの小学6年生は、英検1~準1級レベルといわれています。

努力して覚えた英語なので、「帰国後も英語を忘れないようにさせたい」と願う帰国子女のお母さんは多いはずです。しかし、帰国子女が日本で英語を使う機会はほとんどありません。意識的に努力しないと英語力の保持は難しいのが現状です。

帰国子女の帰国後の苦労

我が家にはマレーシアのインターナショナルスクールで3年半(Year 2~5:およそ日本の小学1~5年に相当)学んだ息子がいます。成績は中の上で、英語によるコミュニケーションは問題ありませんでした。

小学4年生の4月に帰国しました。通っている学校は普通の公立小学校です。この時期に帰国したのは、日本人としての国語力をつけることを優先したからでした。

海外にいるときから国語(日本語)の勉強は続けていたので、帰国後も国語はほとんど問題なく対応できています。

しかし、問題は英語でした。学習指導要領の改訂により公立小学校でも英語の授業が導入されています。「他の生徒よりも英語ができるので楽しいだろう」と私は予想していました。しかし、息子の反応は意外なものでした。

どうやら英語の授業中に発言させてもらえないらしいのです。どんなに手を挙げても先生は目を合わせず、遅れて遠慮がちに挙手した別の生徒を指名するそうです。

私には先生の行動を理解できます。いつも息子ばかりを指していたら他の生徒が発言する機会を奪うことになります。このため、授業中に息子が英語を話す機会はほとんどありません。せっかくの英語の授業は「ストレスのたまる時間」になってしまいました。

1学期が終了し、通信簿を持って帰りました。ABCの3段階で各教科の観点別に評価が並んでいます。何気なく見ていると、英語の評価欄に目がとまりました。なんと「外国の文化や習慣に関心がある」がB評価だったのです。

5歳でマレーシアに移住し、英語環境に適応しようと努力していた息子の姿を毎日見ていた私には信じられない評価です。

私は息子には「気にするな」と言いました。しかし、日本の小学校には息子が自分の英語力に自信を感じられる機会や場所がありません。現状を打破するために思いついたのが「英検の受験」でした。

英検を取得すれば自信につながる

私は長いこと英語学習を続けてきましたが英検には無関心でした。資格試験対策ばかりに固執して小手先のテクニックに走るのは邪道だと思っているからです。そのため一度も受験したことがありませんでした。

しかし、息子が英語力に自信を感じられない状況は早急になんとかしなければと感じました。そこで夕食時に英検の受験を息子に提案しました。

息子は最初、あまり乗り気ではありませんでした。しかし、妻が「お父さんも英検1級を受けるから」と提案したとたん、彼の目の色が変わりました。私に対してライバル心を燃やし始めたのです。

妻の提案が功を奏し、息子は英検の受験を決心しました。今年2回目の英検まで2か月あったので、準備期間は充分でした。ちょうど夏休みが始まったところだったので、暇な時間を有効活用できます。さっそく申し込みをすることにしました。

小学生が英検2級に合格するための対策と勉強法

英検の出願は英検のホームページ上から完結します。
英検HP

息子の受験級は「英検2級」を選択しました。IDやパスワードを入力して、クレジットカードで支払いを済ませるだけです。このときのデータは後で大切になるので、忘れずに記録しておきましょう。

息子の英語力から「英検準1級でも合格できる」と思いましたが、あえて2級に決めました。理由は2つあります。

まず、英検2級の筆記試験で扱われる英単語には小学生には理解が難しいものが多数含まれているからです。例えば、insurance は名詞で「保険」の意味です。小学4年生では保険がどういうものなのか理解は難しいでしょう。

「insurance=保険」と訳語を暗記することは可能です。しかし、それでは単語を理解したことにはなりません。年齢相応に少しずつ教養を深めながら、単語の理解をすることが大切です。

試験の中で単語力は一要素にすぎないので、英検準1級の取得も可能です。ただ、これらの言葉をきちんと説明できるように教養を深めてから準1級を受験させたいと考えました。だから足場を固める意味でも2級からが妥当であると判断しました。

二つ目の理由は、成功体験を積ませるためです。準1級にチャレンジして不合格だった場合、息子の英語学習への意欲がそがれる可能性があったからです。小学校で活躍できず英検でも不合格だったとしたら、やる気を失いかねません。

これらの理由から、息子が余裕で合格できる英検2級を選択しました。英検2級の平均合格率は約25%といわれていますが、小学生の受験者で絞ると40%が合格しているようです。これは帰国子女の割合が多いことが主な要因ではないかと推測されます。

スクール探し:小学4年生から参加できる英検2級講座がない!

私は仕事で忙しいので、息子の英検対策を見てあげられません。そこで、近所の英語スクールの夏期講習に通わせることにしました。

しかし、ここで思わぬ苦労をすることになりました。小学4年生が参加できる英検2級対策のスクール(塾)が見つかりません。英検2級は高校卒業程度のレベルです。受験者の多くは高校生です。そのため講習は中学生以上に限定しているところばかりでした。

「自分で教えるしかないか…」とあきらめかけていたとき、最後に問い合わせをしたのが埼玉県を中心に展開する「サイエイ・インターナショナル」でした。事情を説明すると、体験レッスンに参加してレベルチェックをすることを条件に認めてくれました。

サイエイ・インターナショナル
さっそく指定された日時に息子を連れていき、体験レッスンを受講させました。一日のレッスンは2時間です。前半は日本人講師によるレッスンで、後半は外国人講師による英語でのレッスンです。

レッスン終了後、「英検2級で問題ないです」と講師からお墨付きをいただきました。その場で、5日間の夏期講習を2回分(合計10日間)に申し込みました。入学金はサービスしてもらい、約3万円の講習料でした。

講座の開設時間は中高生に合わせて19~21時の時間帯でした。小学生にはやや遅いですが、これは妥協するしかありません。

英検2級対策講座の様子と使用テキストについて

息子の普段の英語学習について説明します。帰国後は週1回(50分)のオンライン英会話(帰国子女向け)を継続しています。また、英語での読書はほぼ毎日続けています。土日はサッカーで忙しく、学習塾には通っていません。

サイエイ・インターナショナルの夏期講習が始まると、積極的に通い始めました。久しぶりに自分のレベルにあった英語のレッスンを受けられたので、うれしかったのかもしれません。

授業の様子をたずねると「俺しか手を挙げていないのに、先生が指してくれない」と、また同じ悩みを語りだしました。

ただし、授業後に外国人講師から「君ばかり指したら他の人が答えられなくなってしまうから、少し我慢してね」とフォローがあったようで、息子は納得している様子でした。

私は英語学習に関して口を挟むことはしませんでした。夏期講習で使用するテキストを確認すると、小手先のテクニックではなく本質的な理解を目指した授業をしていることが見て取れました。

英検2級では文法の問題も出ます。たまに誤答していましたが、おおむね良好でした。文法に関してはマレーシアにいたときに『Essential Grammar in Use』(写真)を使用して、1年かけて取り組んでいました。文法学習の問題集として非常に優れた良書です。
Essential Grammar in Use
自然な例文が充実しているのが特徴です。文法や語法の問題の正答率が高いのは、このときの学習の成果だと思います。

夏期講習に通わせて良かったことは2つあります。一つ目は、英検の「試験形式」に慣れたことです。選択肢から選んだり、リスニングテストがどのように実施されるのかを理解したりしておくことは大切です。

二つ目は、Writing(ライティング)対策のテキストの完成度の高さです。さすがに英検を軸にしている英語スクールだけあって、教材が洗練されています。エッセイ形式に不慣れな日本人学習者でもわかりやすく学べるように配慮されていました。
サイエイのテキスト

夏期講習終了後に先生と雑談すると、「ライティングの模擬試験をして最後まで書ききったのは息子さんだけでした」とほめてもらいました。稚拙な内容でも解答用紙を埋めようと努力したことを私もほめてあげました。

小学生のための英検2級必勝法

先述のとおり語彙力の面で、小学生はどうしても不利な面がでてきます。これをどのように他の能力で補うかが英検2級合格のポイントです。

まず、音声面を徹底的に鍛えることです。リスニングの内容には難しい単語はほとんど使われていません。つまりきちんと聴き取りができれば、簡単に答えることができます。帰国子女の場合、音声面は強いのでリスニングはほぼ満点が狙えます。

そして最も重要なのは、リーディング力です。語彙力は多少不足していても、それを補う速読力・多読力を徹底的に鍛えておきます。これは普段から年齢相応の英語での読書習慣があるかどうかがカギになります。
Harry Potter
文字を読むスピードが速ければ、ライティングに時間をかけることができます。テーマが小学生にとって難しくても、構成を考える時間が充分に取れれば完成させることができます。

数百ページの本を日常的に読んでいれば、英検の試験問題の長文などは「長い」と感じません。知らない単語に出会っても前後の文脈から類推する能力が高く、語彙力不足をカバーすることができます。

帰国子女ではない普通の小学生が英検2級に合格するのはかなり難しいのは事実です。しかし、充分な読書量とナチュラルスピードの英語に慣れておけば勝機が見えてきます。

リスニングが弱い子どもには、こちらの動画セミナーがオススメです。

小学生が英検2級に合格するためにお母さんができること

子どもの英検受験のためにお母さんができることは、「夏期講習の送迎」と「子どもをほめたり励ましたりする」だけです。たったこれだけのことで、子どもは前向きに勉強に取り組みます。

もう一つ子どものやる気に刺激を与えたのが、私(父)の英検1級受験でした。息子は私を打ち負かしたい一心で、一生懸命に勉強していました。
英検1級受験票

家庭でできるサポートとは、気持ちよく送迎をしてあげることや、ほめたり励ましたりすることです。また、親子で受験して適度に競争心をあおるのもとても効果的です。お母さんも(お父さんも可)面倒くさがらずに、一緒に英検にチャレンジすることをオススメします。

英検2級1次試験の当日の流れ

いよいよ英検の当日です。息子の2級と私の1級は午後からスタートなので、午前中は自然と英検の話題になります。

普段はあまり細かいことを気にしない息子ですが、さすがに落ち着かない様子です。不安に思っていることを聞き出すと「ライティングができるか不安」ということでした。

今まで私は英検の指導は一切しませんでしたが、最後に私から「ライティングのコツ」を教えることにしました。

・ライティングのコツをおさらい

英検2級では与えられたテーマについて自分の立場(賛成・反対)を明らかにします。そして理由を2つ挙げて、自分の主張を80~100語でまとめることが求められます。

インターナショナルスクールではほとんど毎週、簡単なエッセイの宿題を出されていたので書くことには慣れているはずでした。しかし、時間制限のあるテストには不慣れです。そこで、短時間でまとめるコツを伝えました。

まず、与えられたテーマをよく読んで理解します。それから余白に簡単な表を作成して、理由を挙げていきます。このときの理由は賛成でも反対でもかまいません。思いつく順番にメモを取っていきます。

このとき、書きやすいほうを書いていきます。これが制限時間内にライティングを仕上げる究極のコツです。

例えば「企業の在宅勤務は将来増えるとあなたは思いますか」というテーマが与えられたら、下の図のようなメモを取ります。

英検2級ライティングメモ

この場合、2つ以上の理由を挙げられたのは賛成側(そう思う)なので、こちらの立場を選択します。さらに、3つの理由のうち書きやすい2つに絞ります。上記の例では「通勤時間を節約できるから」と「交通費を節約できるから」を取り上げるのが最良の選択です。

字数が不足しそうなら、「For instance, …(例えば)」を使用して、具体例で肉付けすれば大丈夫です。

ライティングに必要な表現のパターンはサイエイの夏期講習で教えてくれました。

I think 自分の立場.  (私は~のように思います)
I have two reasons to support my opinion.(私の意見を支持する二つの理由があります)
First,… Second, …. (ひとつめは~。二つ目は~)
For instance, 具体例.(たとえば、~)
For these reasons, I think 結論.(これらの理由から私は~と思います)

これらの表現はほぼ暗唱していたので、あとは当てはめるだけで完成です。

字数をカウントしやすいように、大きめの字で1行につき7~8文字で書くように指導しました。こうすれば、掛け算で簡単に字数を計算できるからです。最後に必ず最初から読んで、綴りや文法の間違いを見つけて訂正するように伝えました。

また、インターネットから過去の問題を探して、その場で理由を挙げる練習だけに集中しました。1時間ほどの学習でしたが次第に自信を取り戻した様子でした。

一方、1級を受験する英検初体験の私は何が出題されるのかまったく理解していませんでした。インターネットで出題される問題数や時間配分などを調べて、メモをとりました。

その様子を見て「今ごろ何をやっているの? お父さんは、完全に英検をなめている!」と息子から非難され、私は苦笑するしかありませんでした。

小学生の英検受験者は保護者の付き添いが可能

試験会場は電車で二駅離れた高校でした。30分前には到着できるよう、息子・私・妻の3人で早めに家を出ました。このときに受験票と身分証は絶対に忘れないようにしましょう。
2級受験票

小学生が英検を受験する場合、解答用紙に個人データを正確に記入する必要があるので、保護者の付き添いが認められています。私は別会場で受験しなければならないので、妻にこの役をお願いしました。

10月としてはかなり暑い日で、駅から会場までの徒歩15分がとても長く感じました。駅から会場までの道は、受験者らしい人の長い列ができています。親子連れも多く、たくさんの小学生が英検を受験していることがわかりました。英検会場

会場に着くと、持参した受験票(写真付)に割印を押してもらいます。ここで付き添いの保護者には衣服に貼る保護者シールが配られます。
保護者シール

英検会場では混乱を避けるためにエレベーターの使用は禁止されています。2級は5階、1級は7階が会場でした。大量の汗をかきながら階段を上り、5階で息子と別れました。

子どもの受験者には保護者の付き添いが認められています。妻の話では、開始5分前までは子どもの机の隣に立ちながら、解答用紙に個人データを記入するのを手伝ったそうです。この記入が終わると保護者は退出して、指定された待合室に移動します。
保護者待合
待合室には各級のスケジュールが書いてあります。終了時間が近づくと、保護者は退出して会場建物の出口で子どもと待ち合わせをします。廊下で待つことはできないので注意しましょう。

英検3~5級を受験する子どもの付き添いがほとんどなので、2級が終わる頃には保護者の待合室は誰もいなくなっていたそうです。

・英検1級会場の様子

7階にある英検1級の会場に到着したころには、私は全身から汗が止まらない状態になっていました。教室に入ると、同じように汗が止まらない中年の受験者達が神妙な面持ちでラストスパートの勉強に打ち込んでいます。

スマートフォンの電源を切り、一冊も参考書を持ってこない私はすることがありません。仕方なく周囲を観察すると、ボロボロにすり切れた『英検1級単語集』を血眼になって読み返していたり、なぜか10年前のNEWSWEEKを熟読していたりする人がいます。

私の前にいる男性は、緊張のためか15分の間に3回もトイレに行きました。初めて目にする英検1級の異様な空気に唖然としながら、試験の準備をまったくしてこなかった自分を今さらながら猛省しました。

・親子とも英検の1次試験終了

英検1級は難易度が高いだけでなく、問題量が多いです。後半のリスニングもなかなか終わらず、正直「もう勘弁してください」という精神状態になります。「子どもを鼓舞するだけなら、準1級で充分では?」と妻を恨みました。

試験が終了して会場の外に出ると、先に試験を終えた息子と妻が待っていました。「英検2級の試験はどうだった」とたずねると「簡単だった」と自信ありげでした。直前にやったライティングが功を奏したようで、指定された字数で完成したとのことでした。

無理に英語を教えず、子どもから求められた部分だけを教えてあげたのはとても良かったと思います。

英検2級1次試験の結果発表と2次試験に向けて

英検1次試験の合格発表は2週間後の月曜日です。土曜日に学校行事があり、当日、息子は休みでした。試験の結果発表は午後です。結果が気になるのか、午前中はそわそわしながら過ごしていました。

・12時に父の結果発表

まず、12時からは1級の結果発表です。英検のサイトにアクセスして、IDとパスワードを入れると1次試験の結果が閲覧できます。

結果は予想に反して「1次試験合格」でした。私の合否には一切関心のない妻は、子どもと昼食中です。仕方なく子どもを呼んで合格の画面を見せました。子どもが妻に私の合格を伝えると「ウソでしょ」と妻の声が階下から聞こえてきました。

私が1次試験に合格する番狂わせがあり、息子は急に不安になってしまいました。2級の発表までの1時間、さらにそわそわして落ち着かない様子でした。

・13時に子どもの英検2級1次試験の合否発表

2級は受験者数が多いせいか、発表直後はアクセスが集中してなかなか合否発表が見られません。30分ほど放置して再びアクセスすると「英検2級1次試験合格」の文字がありました!
英検2級合格
英検バンドを見ると「+9」で、余裕で合格しています。英検バンドとは合格点を起点にして、25点刻みで±1で表示したものです。

今回2級を受験させましたが、合格を知ったとき息子は予想以上に喜びました。2級に合格しても冷めているのではと思っていたのですが、それは私の間違いでした。日本に帰国して初めて自分の英語に対して自信を取り戻せたことが大きかったのではと感じています。

2次試験の面接は、息子の得意分野なので特に対策はしません。暇なときに、過去問を使いながら数回練習してみるつもりです。

小学生の英検は、確実な級から少しずつステップアップしよう

今回の経験から、小学生が英検を受験するときは英検5級から少しずつステップアップすることをオススメします。どんな級でも合格すればうれしいので、その後の英語学習に好影響を与えるからです。

帰国子女でもいきなり準1級に合格すると、残りは1級しかありません。2級から始めて、細かく刻んだほうがモチベーションの維持には好都合です。

もし子どもが不合格でも、叱ったり非難したりするのは厳禁です。合否だけでなくCSEスコア(過去のスコアと比較して伸びを確認できる指標)や英検バンドに注目しましょう。受験ごとに少しずつ合格ラインに近づいていれば努力を評価してあげましょう。

私は英検の合否ばかりにとらわれる姿勢には今でも反対です。しかし、今回のように息子が大喜びしている様子を見ると、成長を確認しモチベーションを維持する点で、英検を受験することは効果的であると考えています。

英検2級2次試験(スピーキングテスト)と合格発表!

2次試験は最寄りの駅から7キロ以上離れた大学を会場に指定されました。会場で受付を済ませると、首から下げる袋を配布(写真)されます。これはスマートフォンなどを入れる袋で、スマートフォンを持っていなくても首から下げる決まりとなっています。
英検2次試験袋
控室で受験生は名前を呼ばれるまで待機します。その間に面接カードを記入します。ここまでは保護者の付き添いが認められています。記入後は保護者は保護者控室に移動して、子どもの試験終了まで待ちます。受付から試験終了まで約1時間でした。

さて、それから2週間後。インターネットで合格発表が確認できます(郵便でも送られてきます)。昼過ぎには発表でしたが、あえて息子が学校から帰ってくるまで待ちました。

IDやパスワードを入力して、試験結果を確認します。2次試験の出来があまり良くなかったらしく、少し不安気な息子でしたが「合格」の文字を見つけ大喜びでした。
英検2級合格
ちなみにCSEスコアは2242で英検2級には余裕をもって合格しましたが、準1級にはあと一歩届きませんでした。

予想通り、小学4年生では語彙のレベルがまだ未熟で出題内容にどうしても追いつかない部分が出てきます。例えば、2級でも「representative: 代理人」という単語は出てきますが、小学生では難しすぎて意味を理解できません。

英語・日本語にかかわらず、もう少し幅広い教養を身につけ語彙レベルを引き上げてから、準1級を受験したほうがいいと改めて感じました。

ちなみに、私も1級に合格しましたが、家族の反応は今ひとつでした(結構大変なんですけれどね)。

まとめ

帰国子女の英語力保持は、お母さんにとって悩みの種です。小学校で英語の授業が正式に導入されていますが、帰国子女のモチベーションを維持するのは難しいです。

このような場合、子どもの英語力に見合った英検にチャレンジさせることは、帰国子女にとってよい刺激になります。必要に応じて近所の英語スクールに通いながら、試験に向けて準備を進めましょう。

お母さんができることは、子どもをほめたり励ましたりすることです。また、お母さんかお父さんも同じように英検にチャレンジすると、子どもの競争心を刺激していい結果につながります。

帰国子女ではない小学生でも、英語学習のモチベーションアップや学習進度の確認の点で、英検の受験は大変効果的です。子どもの場合、英検5級から少しずつステップアップしたほうが、子どもは合格の喜びを多く味わえます。

英検では4技能(聴く・読む・話す・書く)をバランスよく試されます。2次試験ではスピーキングテストが課せられるので、普段からアウトプットの機会を確保しておくことが大切です。オンライン英会話を利用すれば時間や場所に拘束されず、比較的安価で続けられます。

級が上がるごとに自分の英語力の進歩を感じられるのが英検の良さです。「〇級なんて当たり前」と思わずに、合格の喜びを家族全員で共有しましょう。

子どもの英会話教室の決め方・選び方を現役講師にインタビュー

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「子どもの英会話教室はたくさんあるけれど、一体どれを選んだらよいのかわからない」という悩みは私の周りのお母さんからよく聞きます。我が家でも子どもが幼稚園の頃、英会話教室を探したことがありその気持ちはよくわかります。

当時、手当たり次第に体験レッスンを受けさせましたが、効率が悪かったと反省しています。やはり事前に英語教室の決め方・選び方に関して「基準」を持っておくことが大切です。

今まさに英会話教室選びで悩んでいるお母さんのために、現役の子ども英会話教室のA先生にインタビューしました。A先生は私の妻の友人で、教室の宣伝とは一切関係なく承諾していただけました。
インタビュー
A先生は現在、自分の英会話教室を経営されながら、小学校で導入された英語の授業の講師としても活躍されています。ご自身は大学時代カナダに留学経験があります。

名前や場所を非公開にすることを条件に、インタビューに応じていただけました。これから子どもの英語教室を探しているお母さんの参考になるように、次のポイントについて詳しく話をうかがいました。

・子どもの英語教育はいつから始めるのがいいのか
・子どもの英会話教室の選び方について
・子どもの英語力を伸ばす方法は何か

インタビューでは、長年の経験に裏付けされた貴重な意見を聞くことができました。これから子どものために英会話教室を探そうとしているお母さんにとって役立つ情報が満載です。

*インタビュアー(私)は管理人と表記します。

子どもの英語教育はいつから始めるのが正解か

・管理人
それでは、よろしくお願いします。はじめに「子どもの英語教育はいつから始めたらいいのか」について教えていただけますか。一部の意見では「小さい頃の英会話は無駄」という話を聞きます。それについてはどう考えていますか。

・A先生
はい、まず3歳以降なら無駄になることはありません。英語学習の開始年齢については、私は何歳から始めても大丈夫だと思います。

ただ、幼稚園から始めた子どもは英語の音に強くなる傾向があります。具体的には、リスニング力が高く、強く発音されない「複数形のs」をしっかりと聞き取ることができます。

小学6年生から始めた子どもでも、「中学校に入る前に英語を好きになれてよかった」と言ってくれています。だから何歳から始めても無駄になったり手遅れになったりすることはありません。

・管理人
音だけで学んだ英語は忘れやすい特徴があります。文字(リーディング・ライティング)を学習に取り入れていくのは何歳くらいからですか。

・A先生
年齢に応じて英語へのアプローチを変えるのは当然です。

私の教室では幼稚園までは読み書きはほとんどしません。アルファベットを見て認識できる程度です。小学1年生でアルファベットを仕上げ、歌いながらフォニックスの基本を身につけます。3文字の単語(web, top, cupなど)は1年生のうちに読めるようになります。

・管理人
文法に関しては小学校5年生くらいにならないと理解は難しいと思います。こちらの教室では英文法をどのように扱っていますか。

・A先生
そうですね。中学校と違っていきなり過去形も現在形も三人称単数現在形のsも混在するテキストを読みます。文法は大雑把な理解を目指しています。小学4年生くらいまでの子どもには「完璧な理解をしないと気持ちが悪い」という感覚はあまりありません。

5年生以上で文法に関して「なぜ」と質問をしてきた子どもには、個別に説明をします。中学校で文法の授業を受けて「ああ、そうだったんだ」と納得できればいいのではないでしょうか。

やはり中学入学前までに英語を始める意義は「英語を好きになる」ことに尽きます。これができなければ子どもに英語教育をする意味はありません。

・管理人
小学校高学年になると照れ臭さから英語の歌を歌わなくなったりゲームに積極的に参加しなくなったりする傾向があります。A先生はどのように対処されていますか。

・A先生
それはよくあります。特に親の参観日は、普段は無邪気に参加しているのに急に大人しくなる子どもは多いです。そういうときに無理強いはしません。本心は楽しいけれど、親を意識して関心がないふりをしているだけだとわかっていますから。

・管理人
小学校高学年から入ってきた子どもが、英語らしい発音をするのに抵抗を示すことはありませんか。

・A先生
ありません。小さい頃から英語を始めた子ども達に囲まれると、「自分も同じように発音しなくては」と意識するようです。英語らしい発音をすることには抵抗は感じていません。

もし周囲が日本語っぽい英語しか話していなければ、英語らしい発音をすることに抵抗を感じるかもしれません。

・管理人
興味深い話です。英語に対する恥ずかしさではなく、周りのクラスメイトと同じようにするという意識のほうが強いようですね。英語が得意な子どもに囲まれたほうが上達も早くなるのでしょう。

これは英会話教室に通わせる大きなメリットかもしれませんね。習熟度別のクラスではなく、あえて英語が得意な仲間に囲まれてみるのも刺激になっていいのかもしれません。

子どもの英語教室の決め方・選び方

・管理人
では、子どもの英語教室の選び方についてお伺いします。もしAさんが自分の子どもをこれから英語教室に通わせたいとき、どのようなポイントに注目しますか。

・A先生
体験レッスンを通じて、お母さんもお子さんも両方が「ここがいい」と感じるところが理想です。

・管理人
かつて私の子どもを英会話教室に入れたとき、大泣きで最初の2回くらいはレッスンにならなかったことがありました。けれども、先生が根気よく対応してくれて徐々に楽しく通うようになりました。

私は無理矢理通わせてしまいましたが、最初に親子で意見が一致しないときはどうしたらいいでしょうか。

・A先生
それは大変でしたね。私の教室でも泣き続けて体験レッスンにならなかったことがあります。そのときに大切なのは、先生がどのような対応をしてくれたかを観察することです。

トラブルがあるほうが先生の実力が見えます。根気よく楽しませようとしてくれる先生なら、しばらくすれば子どもは楽しく通えるのではないでしょうか。

・管理人
では、大手の英会話教室と小規模の教室のそれぞれの長所と短所について教えてください。

・A先生
大手の英会話教室は、教材が研究され尽くされているところがいいと思います。個人で経営しているところは、その先生の考えや実力がすべてなので当たり外れが大きくなるかもしれません。

・管理人
英語が苦手なお母さんでも判断できる英会話教室選びの基準はありますか。

・A先生
先ほどの話と重複するかもしれませんが、先生のとっさのときの対応力を見るべきだと思います。レッスンにはマニュアルがあります。しかし、子どもが想定どおりに答えなかったり機嫌が悪かったりするときに、先生がどのように対応するかはとても大切です。

マニュアル通りに進まなくても機転を利かせて、レッスンを進められる先生は頼れると思います。英語力も大切ですが、講師の人間力はもっと大切です。

英会話教室を選ぶときの注意点:月謝・振替授業の有無・教室の場所

・管理人
先生の能力以外に、子どもの英会話教室について確認しておくべきポイントはどんなことでしょうか。

・A先生
振替授業に対応してもらえるかどうかは大切です。子どもは体調を崩すことも多く、振替ができないと授業料が無駄になってしまいます。

月謝と教材費、初期費用や施設使用料などもきちんと確認しておきましょう。月謝だけを比較してもトータルで比べないと、きちんと比較したことになりません。もっと正確に比較するなら、年間の授業回数を確認して「授業1回あたりのコスト」で比較することが大切です。

車で送迎する必要があるときは、駐車場や車を一時停車できるかどうかも確認したほうがいいでしょう。自転車で通うなら駐輪場の確認も必要です。

英会話教室には設置場所によって2つのタイプに分かれます。私のように個人宅で開いている教室と、大規模な商業施設の中の教室です。商業施設の中にあれば子どものレッスン中、お母さんは買い物ができるので時間を有効利用できるかもしれません。

ただし、同じレッスン内容でもテナント料の違いにより月謝は数千円高くなるのが普通です。私の教室では月謝が6千円なので、同じ内容でも商業施設内の教室だと月謝は8千円です。年間で考えると結構な違いになります。

日本人講師と外国人講師のメリットとデメリット

・管理人
では、日本人講師と外国人(ネイティブ)講師のそれぞれのメリットとデメリットについて教えてください。子どもを英会話教室に通わせるとき、どちらの講師のほうがいいのでしょうか。

・A先生
日本人講師の最大のメリットは、日本人が苦手なポイントをすべて理解しているところです。また、例えば子どもが泣いているときでもその原因がすぐにわかり対応できるので、レッスンが停滞することがほとんどありません。

子どもの学習状況について、お母さんとのやりとりに関しても細かい情報交換が可能です。

一方で、外国人講師に教えてもらうメリットもあります。例えば、子ども達は肌や目の色が異なる人とも抵抗なく接するようになります。外国人に対する恐怖感は確実に減ります。

英会話教室に通って、どれくらい子どもは英語ができるようになるか

・管理人
英会話教室に子どもを通わせれば費用が発生します。そうなると気になるのが「効果」です。例えば、小学1年生から週1回の英会話教室に通った場合、子どもの英語力はどのように向上していくのかについて教えていただけますか。

・A先生
1年でアルファベットの大文字が書けるようになります。小文字はbとdが逆になったりして、完璧に書けるようにはなかなかなりません。単語に関しては、基礎的な食べ物や動物の単語を覚えます。ただし、すべて音声での理解であり文字が読めるわけではありません。

小学2年生になると、アルファベットは小文字もすべて書けるようになります。単語も3文字の単語なら書けます。リーディングも短い単語なら声に出して読めるようになります。

小学3年生では、接続詞(and, but, when, ifなど)があっても簡単な英文なら読めます。この時期から英検5級にチャレンジできます。これが小学3年生用の教材です(管理人に見せる)。
インタビュー2

・管理人
(教材を見ながら)want to doとかHe likes …とか結構難しい英語を理解できるんですね。では、小学6年生から英語を習い始めたら1年でどれくらいのレベルに到達できますか。

・A先生
小学5・6年生で英語を始めれば1年で英検5級にチャレンジできます。ただし、先ほどもお話したとおり、音声面(リスニング・発音)は小さい頃から始めた子どものほうが一般的に有利です。年齢が高くなるほど、文字認識の力が強くなりますね。

週一回のレッスンでも英語が伸びる子の特徴

・管理人
同じように英語教室に通っていても、英語力が伸びる子どもとそうでない子どもがいると思うのですが、何が違うと思いますか。

・A先生
ズバリ、親です。主にはお母さんです。レッスンは週1回しかありません。私の教室では毎日5分の家庭学習をするようにお願いしています。お母さんの協力がなければ、子どもは英語学習を習慣化することはできません。

・管理人
お母さん自身の英語力と子どもの英語力は関係ありますか。

・A先生
まったく関係ありません。やる気を起こさせるような声掛けをしてくれるだけでいいのです。頑張ったらほめてあげることです。これだけで子どもは英語に前向きに取り組むようになります。

私の教室で、子どもの送迎をお父さんがしている方がいます。そのお父さんは、教室に来ると簡単な英語で子どもに話しかけてくれます。英語を話す雰囲気を教室に来る前から作ってくれているので、私もやりやすいし子どもの英語力もどんどん伸びています。

・管理人
学習者本人である子どもの性格についてはどうでしょうか。英語が伸びる子どもはどのようなタイプでしょうか。

・A先生
以前、同じ学年でほぼ同時に入学した男の子二人がいました。一人はよくできる子で、もう一人はそそっかしくて単語をいつも間違えてばかりいました。

しばらくすると間違えてばかりいた子どもの英語力が急激に伸びて、もともとできる子を抜かしてしまいました。お母さんに確認すると、家で毎日時間をかけて一生懸命英語学習を続けていたようです。おそらくお母さんの励ましがあったと推測します。

・管理人
確かに英語の習得までは長い時間が必要なので、粘り強さは絶対に必要ですね。お母さんがほめたり励ましたりしながら、子どもに継続させるのが大切です。

ほめられながら学習を続けると結果が出る。それについてまたお母さんからほめられるとますますやる気になるという好循環が作れるのが理想的ですね。

本日は、長時間のインタビューをありがとうございました。

まとめ

A先生の人柄が暖かく、安心して子どもを任せられる感じが伝わってきました。インターネット全盛の時代であっても、リアルな教室では同年代の子ども達から刺激を受けられるのがメリットです。共に学ぶ仲間は貴重です。

印象的だったのは、子どもの英語教育に関してお母さんの役割がとても大きいことでした。子どもが前向きに取り組めるようなポジティブな声掛けをすることで子どもの英語力は飛躍的に伸びます。

子どもの英語教育の究極の目標は「英語は楽しいと思えること」です。これが達成できれば、子どもの英語教育は大成功です。このことを忘れずに、子どもに合った英語教室を選びましょう。

小学生の子どもが英語を話せるようになる方法とは

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「英語をしゃべるとバカになる」という話を聞いたことがあるでしょうか。英語を話すには高度な情報処理が必要です。脳がその作業に追われてしまい、肝心の話す内容がおろそかになってしまうらしいのです。そのため話す内容のレベルが低下して「バカ」になるというものです。

私も海外で英語を使う仕事をした時期がありましたが、苦労したのが夕食の席でした。お酒を飲みながらのコミュニケーションは予想以上に大変でした。酔うと簡単な単語さえも思い出せずに、言いたいことの半分も言えなくなってしまいます。英語を話すと脳に負担がかかっていることが実感できました。

英語教育に関心のあるお母さんなら子どもには「英語ペラペラ」になって欲しいと思うはずです。しかし現実、英語ペラペラの小学生はほとんどいません。なぜなら、英語を話すのは小学生では難しすぎるからです。

ただ、英会話の仕組みと難しい部分を意識すれば、対策がハッキリと見えてきます。今回の記事では、小学生でもスピーキング力を伸ばせる有効なトレーニング法を紹介します。

英語を話す人の頭の中はどうなっているか

私たち日本人にとって日本語は母国語です。「言いたい何か」を頭に思い浮かべれば瞬時に日本語の文が口から出てきます。このとき日本語の文法を意識することはありません。人間の本能により文法を自然と身につけた結果です。

この能力は7歳くらいで急速に衰え、たとえ外国語の環境に移動しても日本語を覚えたようには自然と身につけるのは困難になります。外国語を身につけるためには勉強をするしかありません。

もちろん、子どもの中にはネイティブではないのに英語をスラスラと話せる人がいます。彼らを見ていると「なぜあんなにスラスラと英語を話せるのだろう」と不思議に思うかもしれません。でも、頭の中の活動を細かく見ていくと、決して簡単に話しているわけではないことがわかります。

ここでは「英語を話す」という行為を段階に分けて図で説明します。このプロセスを正確に理解したあとに、「小学生でも英語をペラペラと話すことができるか」について考えてみます。

第1段階:状況を把握し、言いたいことを思い浮かべる

まず、言葉に出す前に「状況」があります。例えば「レストランで友人と食事をしているシチュエーション」です。最近起きた出来事や考えたことなどをお互い話しながら、ランチを楽しんでいる状況です。

状況が明確になると、使用する英語の丁寧さが決まります。誰かの了解を得るなら、かしこまった場では“Would you mind~?”を使用し、友達なら“Is it OK if~?”で充分です。話すときの状況は英語表現に影響を与えるので大切な要素です。
speaking1

そして次に「言いたい何か」を頭に思い浮かべます。この時点ではボンヤリとしたイメージのです。例えば、次のようなことが該当します。

目の前にいる友人はグルメ好きである。そういえばここに来る途中、レストランの前にオープン待ちの長い行列ができていた…。そうだ、この話を友人に教えてあげよう!

この時点では「言いたい何か」は言語化されていません。イメージと感情が合わさったボンヤリとしたものです。次の第2段階で、このボンヤリとしたものを言語(英語)で伝えます。

第2段階:単語力と文法力

ではこのボンヤリとしたイメージを言葉に変えるにはどうしたらいいのでしょうか。それには2つの要素が不可欠です。それは「単語力」と「文法力」です。すでに説明したとおり、8歳以上の日本人は単語も文法も自然に身につきません。学習が必要です。
speaking2

先ほどのイメージを日本語にすると「ここに来る途中そのレストランのそばを通ったら、オープンを待つ長い行列があった」となります。この文を作るために必要な主な単語を挙げてみます。

walk past:~のそばを通る(歩く)
on one’s way here:ここへ来る途中
a long queue (line):長い行列
wait for:~を待つ

次にこれらの単語を組み立てるために必要な「文法」の学習項目を挙げてみます。

・分詞構文
・現在分詞の限定用法
・過去形
・to不定詞

ネイティブなら6歳の子どもでも言える内容です。ただ、日本人が英語で話すにはこれだけの知識が必要です。単語のレベルは中学校レベルです。文法に関していえば分詞構文は高校英語、その他は中学英語です。

では、高校生まで英語を真面目に学習していれば、この英語がすぐに口から出てくるのでしょうか。答えはノーです。なぜなら、「知っているだけ」の知識では「使えない」からです。もう少し詳しく解説します。

第3段階:必要な情報を引っ張り出せる能力

そもそも、たくさんある単語の中から適切な言葉を選んだり、使えそうな文法事項がすぐに頭に思い浮かべられたりできるまでには相当な訓練が必要です。何年も前に習ったことでも一瞬で引っ張り出せなければいけません。
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頭で覚えているうちは「ただの知識」です。学校の英語の授業では、教科書を読み先生の説明を聞いて、問題集などに取り組みながら正しい知識を身につけられます。しかし、どんなに内容を理解してもこれでは「知っているだけ」です。

「知っているだけ」から「使いこなせる」までのレベルには相当な差があると思ってください。頭で覚えるのではなく「口の筋肉に覚え込ませる」くらいの訓練が必要です。話すためには「話す」訓練をしなければいけません。

第4段階:正しい発音で声に出す

最後にようやく英語を話します。

Walking past the restaurant on my way here, I saw a long queue waiting for it to open.
(ここに来る途中レストランのそばを通ったら、オープン待ちの長い行列を見たよ)

このときに英語を日常的に使用する人達がストレスなく聴き取れる発音ができなければ、相手には伝わりません。単語を正しい発音で覚えるのはもちろん、英文となったときに特徴的な音の変化(消失・連結・変化)やイントネーションも身につけなければいけません。

発音に関してはネイティブレベルにこだわる必要はありません。世界で英語を使って日常的にコミュニケーションをしている人のうち、ネイティブは2割程度であり、残りはノンネイティブだからです。どこの国の人にも伝わる「標準的な英語」を話すことが肝心です。

上記のように、日本人が英語をスラスラと話すためには4つのステップをクリアしないといけません。さらに英会話を難しくしているのは「時間」です。「イメージ」から「発話」まで少なくとも2秒以内に処理しないと会話が間延びしてしまいます。

短時間に高度な処理をしつつ、話し終わる前に次の内容のイメージを思い浮かべなければいけません。英会話は簡単にできるものではなく、長期的な訓練が必要です。

自由な英会話は小学生には難しすぎる

では「小学生でも英語がペラペラと話せるかどうか」について検証します。

スピーキング練習で効果的なのは、「普段自分が日本語で話している内容どんどん英語にして、話せる表現を増やしていく」という方法です。これを続けるだけで、どんどんスピーキング力は向上していきます。高校生以上ならどんどんやるべきです。

ところが、小学生にこのトレーニングをやらせてもうまくいきません。その原因について説明します。

文法力・単語力が低すぎる

まず語彙力が低すぎます。一般的な小学5~6年生の語彙力(ボキャブラリーレベル)は、せいぜい300語程度です。これは言葉を話し始めた2歳児と同じくらいのレベルです。これでは小学5年生が普段考えることを英語で表現するのは不可能です。

自分の思考を自由に表現するには最低2000語レベルの語彙力(大学受験レベル)が必要です。根拠は、学習者向け英英辞書として定評のあるロングマンで定義に使われる語彙が2000語レベルだからです。2000語を使いこなせれば、ほとんどの表現を網羅できる証拠です。

もう一つの大きな問題は、文法を知らなさすぎることです。小学校では本格的な文法学習はしません。「主語+動詞+目的語…」の基本的な語順でさえも理解しているか怪しいレベルです。これでは英文を組み立てることができません。

文法力と単語力が低いレベルにもかかわらず、「さあ、自由に英語を話してごらん」と呼びかけても無言になるのは当然です。

「言いたいこと」と「言えること」のギャップが大きすぎてストレスになる

この事情がわかっていないネイティブや英語の先生は「間違いを恐れるから話さない」と勘違いしています。そうではなくて「話せない」のです。
speaking_stress

「言いたい何か」と「実際に言えるレベル」の格差が大きすぎて、子どもにはストレスがかかります。これを繰り返していくと子どもたちは英語嫌いになっていきます。

日常会話は「自由工作」

「普段自分が日本語で話している内容をどんどん英語にして、話せる表現を増やしていく」という方法は、例えるなら自由工作のです。「何を作っても何を使ってもいいから」はかえって難しいです。

何を作るか、どのような材料が必要か、使える工具はどれか、色はどうするかなど考えなければいけないことが多すぎます。

夏休みになると書店では工作キットのコーナーが設置されます。これは、自由工作の悩みから解放されたい子どもや親達の需要があるからです。

日常会話は小学生には難しすぎる

結論ですが、小学生の間に英語をペラペラと話せるようにはなりません。小学生のうちに英語ペラペラになることはほぼ不可能です。

しかし問題ありません。実は小学生でも取り組める効果的なスピーキングのトレーニング方法があります。それは「音読」です。スピーキングだけでなく、英語にかかわるすべての技能の向上が期待できます。小学生のうちから始めると中学生になればメキメキと英語力が向上します。

小学生でも取り組める「音読」とその効果について、以下詳しく説明します。

音読練習が効果的

英語学習において「音読」が効果的であることは、昔から知られています。でも多くの人は正確に音読の効果について理解できていません。そのため、ただ文字を読み上げるだけとか、流行りの「シャドウイング」だけ取り組んで効果を実感できずにいます。

音読練習は「プラモデル」のようなもの

大人向けのスピーキング練習方法が自由工作なら、音読練習は「プラモデル」です。音読トレーニングの詳細を下の図にまとめました。
ondoku1

プラモデルの特徴は「作るものはあらかじめ決められていて、必要な材料はすべて揃っている」ということです。そして指定された通りにパーツを組み立てると、誰でも格好いいロボットや車などを組み立てられます。

音読トレーニングには原稿(スクリプト)と音源(モデルリーディング)が用意されています。自由に話す代わりに、ネイティブの話す正しい英語をあたかも自分の言葉として声に出して読みます。

これなら12歳の知的レベルに近い内容を扱えるので、子どものストレスはかなり軽減されます。

パーツが単語、組立説明書は文法

実際のスピーキングでは、どの単語と文法を使うかを一瞬で考えなければいけません。しかし、小学生はほとんど単語も文法も知りません。そのため英語で話せる内容は非常に限られてしまいます。

音読では原稿があり、使用すべき単語と文法が用意されている状態です。これはあたかもプラモデルでパーツ(単語)と組立説明書(文法)が一式箱に入っているようなものです。

英会話の最も難しい部分(適切な単語と文法を選ぶこと)を「あらかじめ用意」してあげます。こうしてハードルを下げて、小学生でも英会話の疑似体験ができるようになります。

音読の具体例

実際の音読練習がどのようなものかを理解するために、具体例を見ながら体験してみましょう。まず、教材を用意しなければいけません。最低限必要なのは、「ネイティブによるモデル・リーディング(模範となる音読)を録音したもの(CD/録音データなど)」とそれを文字に起こした「スクリプト(原稿)」の2つです。

*私の知り合いのPaul先生にお願いして、オリジナル教材を作ってみました

・音声ファイル

https://hi5kids.net/wp-content/uploads/2018/09/音読素材.mp3

・スクリプト

Hello, my name is Paul.  (こんにちは、私の名前はポールです)
I’m from America. (わたしはアメリカから来ました)
This mug is on the shelf.  (このマグカップは棚にあります)
These mugs are also on the shelf. (これらのマグも棚にあります)
This mug is beautiful.  (このマグは美しいです)
These mugs are plain. (これらのマグは味気ないです)
This camera is old.  (このカメラは古いです)
This camera is new. (このカメラは新しいです)
Old camera, new camera.  (古いカメラに、新しいカメラ)
Smile! (笑って!)
This is a little pen.  (これは小さいペンです)
This is a big pen. (これは大きいペンです)
Little pen, big pen. (小さいペンに、大きいペン)
This is not a toy. (これはおもちゃではありません)
This is a real pen. (これは本物のペンです)
Dear Mother, (お母さんへ)
This is Paul.  (こちらはポールです)
That’s me! (それ、私のことですよ!)

子どもの場合、原稿が読まれている状況を理解するのが難しいことがあります。原稿が読まれている状況がひと目でわかる動画もあると理想的です。

・動画

 

一回の原稿の量はおよそ70語が良いでしょう。これは聴き取りやすいスピード(120語/分)で読まれた場合、40秒前後で完結する文量だからです。これくらいの長さなら小学生でも集中力を切らさずに取り組めます。

また一つのスクリプトにつき文法テーマを1つに絞ったものが理想です。イメージは中学校の英語の教科書です。中学校の英語教科書は内容が退屈であることが欠点ですが、音読用の素材としては優れています。今回の素材なら「This is~やThese are~」がターゲットとなる表現です。

音読練習の方法は多岐に渡り、ここではすべてを紹介できません。そこで、そのうちのひとつ「シャドウイング」と呼ばれる練習方法について説明します。前提条件として、単語や文法を充分に理解して、正しい発音で音読できる状態になっていることが求められます。

シャドウイングではスクリプトは一切見ません。音声を流し、聞こえてきた英語をそっくりそのまま真似をしながら後からついていきます。およそモデル音声から2~3語遅れてついていくのが理想です。

音への集中力が必要です。単語と文法を熟知しているはずなので、正しく聴き取れるはずです。「知らない単語は聴き取れない」とよく言われますが、「覚えたからこそ聞きとれる」ということを体感できることに意義があります。

最初は音を追うだけで精一杯です。しかし、慣れてきたら内容も理解しながら、自分が誰かに話しかけるようにしゃべると学習効果が高まります。このときに動画があると比較的容易に映像を思い浮かべることができます。これこそが「英会話の疑似体験」です。

このようなトレーニングを年単位で続けることにより、少しずつ自由に英語を話すための基本ができあがります。

音読トレーニングは英語の全ての技能を高める

今回はスピーキングに焦点を当てて紹介しています。でも音読トレーニングが優れているのは、英語にかかわるすべての技能を向上させる効果があることです。下の図の黄色いハイライトの部分に注目しましょう。
4技能+2

まず、素材となる原稿を読む(Reading)ことから始めます。このときに未習の単語や文法を学び(単語力・文法力)内容を理解します。

次に音読にはモデルとなるネイティブの音声を使用します。この音声を何度も聞きながら声に出すトレーニングをします(Listening・Speaking)。音読するときはこの原稿が読まれている状況を考えることが大切です(丁寧さの使い分け)。

声に出すときは、それぞれの単語の発音とアクセントに気をつかうのはもちろん、英語特有の音の変化(消失・連結・変化)をまねます。そして内容によっては感情も込めます。

音読の最終段階では、ディクテーション(口述筆記)をします。聞こえた英文を文字に書いて、正しく聴き取れたかどうかをチェックします。このときに綴りや文法のミスにも気づくので、Writing力を伸ばせます。

先述のように、普通の小学生は英語をペラペラと話すことはできません。

でもプラモデルのように「会話を疑似体験できるセット」を用意してあげれば、スピーキング力を中心に英語のあらゆる技能を伸ばすことが可能です。音読トレーニングは小学生だけでなく英語の基礎を身につけた中級者にとっても効果的です。

オンライン英語塾(1対1の完全個人指導)では、英検4級以上の生徒には音読トレーニングを取り入れています。詳細はこちらをクリック!

まとめ

ノンネイティブが英語を話すとき、頭の中の活動は想像以上に複雑です。特に、イメージを言葉にするときに「必要な単語」と「必要な文法」を瞬時に引っ張り出すにはかなりのトレーニングが必要です。

語彙力や文法力が低い小学生に、自由な英会話の練習をさせようとしてもうまくいきません。単語や文法のインプットが不十分だからです。普通の小学生が英語をペラペラと話せるようにはならないのは当然のことです。

しかし、小学生でもスピーキング力を磨く練習をすることは可能です。それは「音読」です。音読では自由な英会話では難しかった部分(適切な単語と文法を瞬時に思いつく)があらかじめ用意されています。

「言いたい何か」をイメージするところから、音声として話すまでの過程で必要なすべての情報がプラモデルのキットのように準備されています。これにより、実際の英語力よりも高いレベルの会話を扱うことができて、年齢相応の内容を話す疑似体験が可能になります。

「小学生が英語ペラペラ」になることはほぼ不可能です。でも、音読トレーニングを通じてスピーキング力を他の技能とともに伸ばすことは充分可能です。年単位で続ければ近い将来あなたの子どもの英語力は劇的に伸びます。

紛らわしい「comeとgo」を小学生でも攻略できる方法

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私の父は九州の出身です。私は関東で育ちましたが、ときどき父の言葉で妙にひっかかる表現がありました。その一つは父が母に向かって言う「じぶん」でした。「じぶん、これから買い物行くの?」という具合でした。

私にとって「自分」は私(I)のことです。しかし文脈上、あきらかに父は「あなた」の意味で「じぶん」と呼びかけています。実は西日本では割と普通の表現であることを知ったときは本当に驚きました。

ここでのポイントは、視点の移動です。父の「じぶん」は、母の視点に立った「わたし」のことです。日本人だけでなく外国人も同じような使い方をすることから、人間にはときどき相手の立場になって語りかける性質があるようです。

今回のテーマである「come」は基本動詞ですが、ある条件が揃うときまさに「視点の移動」が適用されます。そのため反対の意味を持つ「go」と混乱してしまいます。

comeとgoは超基本単語です。しかし、使い方にはコツが必要です。日本で育った子どもは日本人の発想で英語を話そうとするため間違えがちです。状況を与えながら考えていけば子どもにも理解できるので、お母さんからきちんと説明してあげましょう。

comeを使うときは「相手の立場で」考えよう

普段、私たちは自分の視点から物事を見ています。そして言葉を話すときも基本的には自分から見た話をします。

ところがたまに相手の視点に意識を切り替えて話すこともあります。例えば、お母さんが子どもに向かって「お母さん、おやつを冷蔵庫に入れておいたからあとで食べてね」と語りかけたとします。

このときお母さんは自分のことを「お母さん」と呼んでいます。これは明らかに「子どもから見た視点」に意識を変化させている証拠です。西日本の人は相手に向かって「じぶん(あなた)」と話すのと似ています。

英語の基本動詞であるcome(来る)を使うときも、話し手の意識は「相手の視点」に切り替わることがあります。そのため動詞のgoと混乱してしまう子どもが多いです。ポイントさえつかめば子どもにも簡単に理解できます。

comeの意味は「来る」でOK

試しに英英辞典(オックスフォード新英英辞典)でcomeの定義を調べてみましょう。

come: move or travel towards or into a place thought of as near or familiar to the speaker.
(話し手に近いほうへ移動する)例文:Jess came into the kitchen.(ジェスはキッチンに来た)

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この例文の語り手は「私」です。私はすでにキッチンにいて、そこにジェスが来たからcomeを使って表現しています。「話し手(=私)のほうに移動する」に相当する日本語は「来る」で間違いなさそうです。

では、相手がキッチンにいて呼ばれたとき「僕は行くよ」と答えるときはどうでしょうか? 「行く」のだから「I’m going.」と考えがちですが、正解は「I’m coming.」です。その理由について以下詳述します。

相手の立場(聞き手の視点)に立つのがポイント

聞き手(you)のところへ行くときはcomeを使います。なぜならこの場合に限っては、視点が聞き手(you)に移動するからです。
come2

 

相手のほうへ移動するときに限っては「相手からの視点に移る」のです。

大切なポイントなのでもう一度繰り返します。相手のほうへ移動するときに限っては、「相手からの視点に移して」comeを使用します。

come homeそれともgo home?

理解を確かなものにするために、少し頭のトレーニングをしましょう。お母さんは子どもと一緒に考えてみて下さい。

(状況)あなたは友達の誕生パーティーに呼ばれました。

問題1.出かける前に、お母さんからWhere are you going?と質問されました。正しいほうを選びなさい。

I’m (going/ coming) to the birthday party.

問題2.誕生バーティ―に向かう途中、誕生日を迎える友達から「今どこ?」と電話がありました。答え方で正しいほうを選びなさい。

I’m (going/ coming) soon.

問題3.パーティーの途中、遅れてくる予定の友人Kから電話がありました。「あと5分でそっちに行くよ」という内容でした。電話を切ったあと、パーティー会場の仲間に「Kはあと5分で着くよ」と伝えるとき、どちらが正しいでしょうか?

K is (going/ coming) here in 5 minutes.

問題4.誕生パーティーも終わりが近づき、そろそろ家に帰る時間になりました。友達に「もう家に帰らないと」と伝えるとき、正しいほうを選びなさい。

I have to (go/ come) home now.

問題5.家のお母さんから電話があり「そろそろ帰らないとダメよ」と言われました。「もうすぐ家に帰るよ」と伝えるとき、正しいほうを選びなさい。

I’m (going/ coming) home soon.

解答

問題1.going
解説:聞き手はお母さんです。パーティーの場所は友達のところです。私のところに来るわけでもなく、聞き手のお母さんのところに行くわけでもありません。したがって離れた場所に行くので「going」が正解です。問題2.coming
解説:聞き手はあなた(友達)です。あなたの方向へ行く場合は、「あなた」に視点を移します。したがってcomingが正解です。問題3.coming
解説:これはcomeの本来の意味「(自分のほうへ)来る」意味なので、comingが正解です。

問題4.go
解説:家に帰るということは、聞き手からも自分のほうにも向かわないのでgoが正解です。

問題5.coming
解説:聞き手(お母さん)のほうへ向かうので、相手の立場に切り替えます。よってcomeが正解です。

comeとgoの使い分けはできましたか? ひとつだけ見分けるコツをお伝えします。それは「to you」を付けられるときは「come」を使う、というルールです。

例えば、ホテルで滞在中、フロントから電話がありました。「フロントで〇〇さんがお待ちです」といわれて「すぐに行きます」と伝えたいとき

I’m coming (to you) soon. →I’m coming soon.

となります。

相手の立場になって動詞を使う感覚は日本語にはない発想です。子どもが慣れるまでは時間がかかるかもしれません。しかし、日常的に頻繁に使う単語なのでマスターできるようにサポートしてあげましょう。

まとめ

comeは超基本動詞で意味は「来る」で間違いありません。基本的には「自分のほうへ移動する」ということです。ところが、自宅で待つお母さんに向かって「すぐに行くよ」の場合はgoではなくcomeを使います。I’m coming soon.が正解です。

comeとgoの使い分けを難しくしているのは、「あなたのほうへ移動する」条件のときのみ「視点が相手に移動するから」です。聞き手であるお母さんから見れば私は「来る」のでcomeを使用します。

一度理屈を理解し、あとは状況のなかで瞬時に使い分けができるようにトレーニングするしかありません。もし子どもの英語を聞いていて変だなと感じたら、お母さんからわかりやすく説明してあげましょう。

excitedそれともexciting? 子どもが混乱する原因はここにあった!

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「be interested in ~(~に興味がある)」「be surprised at~(~に驚く)」「be tired of~(~に飽きる)」は英語初心者にもなじみのある表現です。中学生の頃、何度も覚えた経験があると思います。

ところでこれらの表現に共通する「-ed」が気になりませんか? 「-ed」で終わるのは、過去形か過去分詞形(受け身または完了)です。

「be interested in ~(~に興味がある)」「be surprised at~(~に驚く)」「be tired of~(~に飽きる)」これらはすべて感情に関する表現の「形容詞」です。それなのに動詞にしかつかない「-ed」で終わるのはよくわかりません。

実はこれらの表現はすべて「受け身(受動態)」であり、形式は「be+動詞の過去分詞形」です。だからedで終わるのが正しいのです。

この表現がわかりにくい原因は、日本人と英語ネイティブの「発想の違い」にあります。ここをしっかりと理解すると、なぜ感情表現が「受け身」で表現されるのかわかります。

「僕はワクワクしていた」を英語でいうとき、「I was exciting.」と「I was excited.」のどちらが正しいのか子どもはしばしば混乱します。そんなときにズバリ教えられるように、お母さんのために解説します。

感情動詞の理解が難しい理由とは

動詞の種類の中で「感情動詞」と呼ばれるカテゴリーがあります。ひと言で説明すると「感情を引き起こす」意味の動詞です。

例えばsurpriseは動詞で「を驚かせる」意味です。用例としてはThe news surprised us.(そのニュースは私たちを驚かせた)となります。

視点を変えて私(I)を主語にした文章にするとき、子どもだけでなく大人でも混乱する傾向があります。I was surprising at the news. か、それとも I was surprised at the news.なのか混乱してしまいます。

実はこうした混乱は、感情にまつわる考え方が日本人と英語ネイティブで真逆であることが原因です。まずは両者の考え方の違いを詳しく解説します。

日本人の心理

日本人にとって、感情は「自分の心の中から発生する」ものです。「驚く」感情は自分の心の中から生じるものとして感じています。

日本人のびっくりした

ネイティブの心理

一方、英語ネイティブの感情に対する考え方は真逆です。「ニュース」が自分を「驚かした」結果、自分は「驚かされている」のです。これは受け身(受動態)の発想です。

ネイティブの発想

感情が発生するのは外部の何かに「された」からです。これを英語で表現するためには「過去分詞形(された形)」を使用します。先程の例ではsurprisedとなります。したがって「私はそのニュースに驚いた」の英語は次のようになります。

I was surprised at the news.

感情動詞の具体例

感情動詞の仲間は他にもたくさんあります。そのなかの一部を紹介します。

amaze をびっくりさせる
bore をうんざりさせる
disappoint をがっかりさせる
excite を興奮させる
scare をこわがらせる
tire  を疲れさせる
satisfy  を満足させる

これらはすべて原因となる物や人が主語になるときに使われる動詞です。例えば、The baseball game bored me.(その野球の試合は私をうんざりさせた)のように使用されます。

視点を変えて「私(I)」を中心に表現してみます。そうすると私は「うんざりさせられている(受け身)」ので、次のように表現できます。

I was bored with the baseball game.

(私はその野球の試合にうんざりさせられた)=自然な日本語にすると(うんざりした)

原因となる物・人を中心に語るときは-ingにする

今度は反対に、原因となる物や人を説明するときにはどうするかを見てみましょう。先程の例文では「つまらなくさせる(能動態)」のは「野球の試合」です。だから「その野球の試合はつまらない」と言いたければ、現在分詞と呼ばれる(-ing形)にします。

The baseball game was boring.(その野球の試合はつまらなかった)
The boring baseball game.(つまらない野球の試合)

子どももとても間違いやすい文法事項なので、子どもに正しいアドバイスを送れるようにお母さんのために問題を用意したので、一緒に考えてみましょう。

edとingの使い分けをマスターしよう

以前、上原浩二選手がメジャーリーグのボストン・レッドソックスでインタビューを受けたときに息子さんもマイクを向けられたことがありました。お父さんと一緒に渡米してアメリカで教育を受けているようで英語にも慣れている様子です。

実は私はこのシーンをテレビで見ていました。以下、女性リポーターと息子さんのやり取りです。
(リ:リポーター、子:息子)

リ: Your dad said he almost threw up out there.  How did you feel when he was pitching? (君のお父さんはもうちょっとで吐きそうだったって言ってたわ。彼のピッチングについてどう思った?)
子: I don’t know. (さあ)
リ:Did you get sick when he was out there, or excited? (お父さんがあそこにいたとき、吐きそうだった? それともワクワクしていた?)
子:Excited! (テレビのテロップにはEXCITINGの文字)

これを見ていたときに私は「あれっ」と思いました。息子さんの「Excited」が正しいのか、テレビの字幕の「EXCITING」が正しいのか、どちらかわかるでしょうか?

excited/ exciting

リポーターの質問は「Did you get sick when he was out there, or (did you get) excited?」でした。パパのピッチングが原因で、「あなたの感情は興奮させられたかしら?(受け身)」と聞いているのです。

よって正しい受け答えは、(I got) excited! です。上原投手の息子さんが正解で、テレビの字幕が間違いです

confusing/ confused

あなたの目の前に一卵性双生児の女の子が2人います。名前は「あやか」と「あやな」です。紛らわしいですね。この状況をconfuse(を困惑させる)という感情動詞を使って表現してみましょう。

I am (             ).
The twins are (               ).

問題:それぞれの( )の中に、confusing かconfusedのどちらかを入れてみましょう。

正解

I am confused.(私は混乱させられた=私は混乱した)
The twins are confusing.(その双子は紛らわしい)

まとめ

感情動詞から派生した「-ed」と「-ing」の使い分けは、子どもにとって難しく感じる部分です。その難しく感じる原因は、日本人と英語ネイティブの発想の違いにあります。

お母さんは図や具体例を示しながら子どもに教えてあげましょう。感情にまつわる表現は会話でも頻繁に使われます。瞬時に使い分けをするためには根本的な理解が欠かせません。

一度で理解できない子どもも多いはずなので、わかるまで何度も付き合ってあげる根気も必要です。

小学生が覚えておきたい「基本英単語」の取扱説明書

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「基本単語」と聞いたとき、ほとんどのお母さんは「簡単な単語」というイメージを抱くかもしれません。このイメージは半分正しく半分間違っています。簡単であるがゆえに最も使用頻度が高く、自由自在に単語を使いこなすことが求められるからです。

また簡単な単語ほど定義がたくさんある傾向があります。例えばreinstate(を復職させる)は英検1級レベルの単語です。辞書を引くと項目は数個で終了です。一方、基本単語のplayを辞書で引くと、多くの定義が並んでいてどれを覚えたらいいのか困るほどです。

基本単語を覚えるときには、英語を見て日本語の訳を答えられるだけでは不十分です。今回は、基本語を子どもに学ばせるとき注意すべきポイントについて解説します。

お母さんに協力をお願いしたいのは、根気よく子どもを見守ることです。単語はすぐには覚えられません。意味を忘れたからといって怒らずに、子どもを励ましながらボキャブラリーの定着を目指すのが理想です。

基本単語はすべてアクティブ・ボキャブラリーとして考えよう

小学生のうちに覚えたほうがいい単語数を600語程度と仮定します。これは中学2年生程度(英検4級)に相当します。中学校での必修語は1500語くらいまで増えることを想定すると、入学前にその4割を覚えておかないと取りこぼしが発生します。

ここで問題になるのは、「どの程度まで単語を学ぶか」です。その単語を「読んだときに意味がわかる程度」なのか、「日本語から瞬時に英語が口から出せるレベル」なのかでは学習方法も所要時間もまったく異なります。

小学生が学ぶ単語は「超基本語」ばかりなので、最終的には「日本語から瞬時に英語が口から出せるレベル」を目指しましょう。これは「スピーキング」や「ライティング」で使える単語にすることです。いわゆる「アクティブ・ボキャブラリー」にすることが目標です。

4技能で使いこなせる状態が目標

アクティブ・ボキャブラリーとして基本動詞を覚えるということは、4技能(リスニング・スピーキング・リーディング・ライティング)すべてにおいて活用できることを意味します。例を挙げて説明します。

基本動詞のひとつaskについて取り上げます。単語を覚えるときは最初に正しい発音(読み方)から入ります。電子辞書や先生が発音した音をよく聞いて学びます(リスニング)。次に中核となる意味とイメージを覚えます(リーディング)。

ask: たずねる、頼む

頼む

「パッシブ・ボキャブラリー(受信型の語彙)」の学習はここまでです。続いて「アクティブ・ボキャブラリー(発信型の語彙)」にするための訓練です。

単語を会話(スピーキング)で使うためには、よく使われる組み合わせを覚える必要があります。例えば「ask a question: 質問をする」「ask sb to do: 人に~するように頼む」「ask for: を求める」などが該当します。
*sb=somebodyのことで人が置かれる

最後に正しい綴りを覚え、文法の知識と絡めながら過去形はaskedになることを覚えるとライティングで活用できるようになります。

このように基本単語とは「頻繁に使用される言葉」であり、「覚えるのがやさしい単語」ではありません。運用法まで深く学ぶ必要があるため覚えるのは大変です。

名詞は「単語→イメージ」

具体的な名詞は日本語訳ではなく「瞬時にイメージできるかどうか」が重要です。特に普通名詞の場合はこれが当てはまります。

具体的な名詞は、そのものを思い浮かべればいいので簡単です。一方、抽象名詞は半ば強引にでも具体的なイメージを持つように子どもにアドバイスしましょう。そのほうが英語の処理速度が向上し使える単語になっていきます。

例えばhealth(健康)を覚えるときに、「健康」の訳語だけを暗記しても子どもの場合すぐに忘れてしまいます。そこからもう一歩すすめて、いかにも健康そうな人をイメージしてみることが大切です。

health

動詞・形容詞・副詞はコロケーションで覚える

先述のとおり、会話で単語を使えるようにするためには「コロケーション」で覚えることが必要です。コロケーションとは「ある単語とよく使われる組み合わせ」のことです。

例えばgoなら「go to school: 学校に行く」「go home: 家に帰る」が基本的なコロケーションになります。

覚え方は何度も暗唱するしかありません。紙に書くのも悪くはありませんが、数をこなすのが必要なので時間の制約上、口頭練習が基本です。正直とても大変なトレーニングですが、これを乗り切らないといつまで経ってもアクティブ・ボキャブラリーになりません。

多義語攻略は読書で鍛える

多義語とは「ひとつの単語で複数の意味を持つ単語」のことです。まじめな子どもは単語帳や辞書に書いてある日本語の意味をすべて覚えようとしますが、挫折するのがオチです。

多義語の攻略法は、まず中核になる意味を一つ覚えます。そしてできるだけそこから意味を広げられるようにイメージを柔軟に持つように心がけることが大切です。

次に、できるだけ英語での読書を習慣づけることです。基本単語はさまざまな文脈の中で繰り返し登場します。すると最初に覚えた「中核となる意味」から大きく外れる使い方をされていると違和感を抱くことがあります。

例えば「book=本」と覚えている子どもが、読書中に次のような文章に出会ったとします。

Jim’s father booked a large room at the hotel.

まずbookにedがついていることから動詞の過去形であることが推測されます。でもbookは本という意味しか知りませんから「違和感」を覚えます。

そこで先生に聞いたり辞書を調べたりすると「bookには予約する」意味があることを学びます。ここまでは少し勉強のできる子どもなら普通にやれるでしょう。でも、ここで終わらせてはいけません。

もう一つ踏み込んで「なぜ、本のbookが予約するという意味になるか」をしっかりと考えます。丸暗記よりも「なぜ?」を大切にして本質的な理解を目指します。

古い洋画を見ればホテルで予約を受けるときは宿泊名簿に記入しているシーンがあります。あの台帳がbook(本)であり、そこから動詞として使われるようになったことが想像できます。

このように読書を通じて多様な文脈の中で違和感を覚えるたびにチェックし、さらにそれを知っている知識と結び付けてみることで記憶は強化されていきます。

単語は覚えたようにしか身につかない

子どもの単語学習をサポートするにあたり、ひとつの原則を知っておく必要があります。それは「単語は覚えたようにしか身につかない」ことです。

英単語から訳語だけを結び付けて覚えると主に「リーディング」に使える単語となります。でも、その他のリスニング・スピーキング・ライティングの分野においてはあまり期待できません。なぜなら、そのような訓練をしていないからです。

さまざまなアプローチから単語を学ぶために最も効率のよい学習法は「音読トレーニング」です。決して楽ではありませんが、4技能と文法の能力を総動員することで「使える単語」が身につきます。

リスニングを伸ばす音読トレーニングについては、こちらの動画セミナーで紹介しています。

3色ボールペンの活用法

基本単語を学ぶときに便利なツールとして「3色ボールペン」があります。色の組み合わせは黒・青・赤がいいです。この3色ボールペンを使った基本単語の覚え方を紹介します(ここでは例として動詞の「listen」を覚えます)。

まず、先生の発音・CD・電子辞書の読み上げ機能などを使って正しい発音を覚えます。繰り返し子どもに発音させます。もちろん【l】と【r】の区別ができているかもきちんとチェックします。くれぐれもカタカナ読みで妥協しないように注意しましょう。

次に紙(広告の裏などでよい)を用意します。そして、音節(音のかたまり)ごとに読みながらそれに対応させて紙に綴りを書きます。こうするとアルファベットのl(エル)を見ながら【l】の発音をするので、文字と音を一致させられます。

またtがあるにもかかわらず、発音されないことにも気づきます。自分の先入観と実際の綴りのズレを何度も確認するのはとてもよい勉強になります。

次にlistenを含む例文「Tim listened to the radio.」を丸ごと音読します。CDの助けを借りながら正しい発音で読めるまで何度も練習します(最低20回)。listenedのedの発音は【d】です。細かいところまでこだわって発音しましょう。

スムーズに読めるようになったら、今度は3色ボールペンの黒を使って例文を見ないでブツブツつぶやきながら紙に英文を書いていきます。

まず、一回だけ英文を声に出して読みます。このときの意識はあたかも誰かに真剣に話しかけているようなつもりで読みましょう。

例えば壊れたラジオを前に怒っている父に自分が壊したのではないことを証明するシーンを思い浮かべます。そして父に向って「ティムがラジオを聴いていたよ」と言わなければいけません。

テキストを何かで隠しておいて、3色ボールペンの黒で英文を書きます。忘れた個所は飛ばして、思い出したところはすべて紙に書きましょう。

Tim listened                    radio.

忘れた個所は意味を思い出しながら必死になって思い出そうとさせましょう。子どもはすき間を埋めようと必死に頭を使いながら「どんな言葉が適切か」を探っています。簡単に正解を与えてはいけません。

どうしてもわからなかったら、正解の例文を見ます。でもすぐに全文を見てはいけません。先頭から少しずつカバーをずらして、一文字ずつ確認します。

例文ライティング

そうすると子どもは「to」がひらめきます。このようにして思い出すと、listen to というコロケーションが頭に残りやすくなります。同じようにradioの前のthまで見れば「the」を思いつくでしょう。

「話題に出ているラジオは、話している人も聞いている人もどのラジオのことか明らかだからtheが必要」と納得します。綴りを間違えたり抜かした言葉は赤で記入します。

これを5単語くらいをそれぞれの例文とともに黒ボールペンで写します。それが終わったら、青ボールペンで同じことを繰り返します(Round 2)。同じようにRound 3は赤ボールペンで書きます。ボールペンは消せないので、自分の間違いを確認しながら学べます。

すぐに同じ単語で3回書かないのは、一回忘れるためです。記憶の定着には「忘れる→思い出す」作業が欠かせません。時間を空けすぎると永遠に忘れてしまうので、忘れかけのタイミングで復習するのが効果的です。

復習のタイミングと頻度が鍵

その日の単語練習を終了したら、翌朝にもう一度復習するのも非常に効果的です。夕方~夜に新しい単語を扱い、翌朝に復習します。

朝は脳に余計な情報が溜まっていない状態なので、単語を定着させるタイミングとしては最適です。

このような形で1週間の中で5日間を単語学習に充て、土日の2日間は予備日としておきます。我が家の経験上、土日は意外とイベントが多く普段のほうが予定通り学習できます。5日で1サイクルとして考えると長続きするのでおすすめです。

「忘れたことを叱らない」

繰り返しになりますが、単語の定着には「忘れる→思い出す」行為の反復が不可欠です。子どもが何度も単語の意味を覚えられないのは普通です。お母さんから見ているとイライラが募ってきますが、絶対に叱ってはいけません。確実に子どもは英語嫌いになります。

忘れるのは人間の本能のようなものです。特に子どもは雑念が多く、興味がなければあっという間に忘れます。それを充分に理解して根気よく復習するように促しましょう。ただし「思い出そうとする」努力は怠らないようにお母さんは子どもに注意する必要はあります。

まとめ

小学生のうちに覚えておいたほうがいい英単語の数はおよそ600語です。これくらいをマスターしておくと、中学校でスムーズに英語の授業についていけるようになります。

小学校で学ぶ英単語はすべて「基本単語」です。基本単語は「最も使用頻度が高い単語」のことであり、「覚えるのが簡単」という意味ではありません。実際、600語はすべて英語で発信するときにも使えるようなアクティブな状態にしておく必要があります。

4技能で使える単語にするためには発音・意味のチェックから始まり、読書を通じて意味を思い出したり、コロケーションで覚えたりする多角的なトレーニングが必要です。

単語学習の基本は反復です。「忘れる→思い出す」を繰り返すことで記憶は定着していきます。お母さんは子どもの単語学習を見守るときに、忘れたことに対して叱ってはいけません。根気よく付き合いながら「思い出す」努力を促すようにしましょう。

基本単語をマスターするのは大変ですが、身につけると中学以降で大きな起爆剤となります。また単語の学習方法を確立するとその後の学習にも大いに活用できます。語彙力は英語力の根幹なので、じっくりと取り組んでいきましょう。

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小学生が英検5級に合格する勉強法や考え方

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「子どもに英検5級を一発で合格させたい!」というお母さんは多いです。英検5級の受験者のほとんどは英語を習い始めて1年程度の子どもです。子どもが合格して達成感を味合わい、今後の英語学習の弾みになれば理想的です。

しかし、5級に関しては「合否」よりも大切なことがあります。それは「いかに質の高い英語学習法を身につけるか」ということです。

かつて私が英語の個人指導をしていたとき、同じくらいの能力の2人の生徒がいました。まったく同じ英語の授業を行ったところ、しばらくすると両者に明確な英語の実力差が現れました。当時の私には本当になぜこのようなことが起きるのか不思議でした。

今は原因がはっきりとわかります。英語が苦手な子と得意な子では「頭の中の活動量」が異なるからです。これが何年も続くと二人の英語力には大きな差が生じます。やっかいなのは、見た目には両者の違いがほとんどわからないことです。

英検の筆記問題は、文法事項の大切なポイントを幅広く網羅しています。その問題に一つひとつじっくりと取り組み、「質の高い学習」を習慣づけることは「合否」そのものよりもはるかに大切です。

ここでは、英検5級の学習を通じて、質の高い英語学習を身につける方法について詳しく解説します。

小学生向け英検5級対策の基礎知識

小学生が英語を学び始めて1年ほど経過したら、そろそろ「英検5級」の受験を検討してもいい頃です。これから英語を学習するために基盤を固めるためにも、英検の勉強はとても有効です。

私は試験のための学習には否定的です。「人々がコミュニケーションのために使用する道具」としての本来の英語を忘れてしまうからです。しかし「試験をきっかけにして正しい勉強法を身につける」という意味では英検の受験に大賛成です。

小学生は英語や検定試験に不慣れです。もしあなたが合否にこだわりすぎて接し方を誤ると、子どもは「英語嫌い」になりかねません。そこで、合否以外の指標にも注目して、子どもの実力を長期的な視点で見守るように気をつけましょう。

合否判定だけでなくCSEスコアにも注目

「英検」を受験すると得られる最大のメリットは、子どもの「現在地」がわかることです。以前とは異なり、現在は「〇級合格・不合格」の成績だけでなく「CSEスコア」をすべての受験者に示しています。

CSEとはCommon Scale for English(英語の共通尺度)の略です。この評価が導入された背景には英語資格試験のグローバル化があります。英語の試験にはTOEFL・IELTS・TOEICなどがあり、かつてはそれぞれ独自の基準で評価され受験者にとって不便でした。

そこでお手本にしたのがCEFR(Common European Framework of Reference for Languages:ヨーロッパ言語共通参照枠)と呼ばれる指標です。ヨーロッパは多言語社会のため共通して利用できる外国語の習得基準を設けたのです。

CSE
*英検ホームページから引用:英検スコアとCSEスコアの換算表

英検受験でわかるCSEスコアを見ると、CEFRにおけるレベルがわかります。そうすると他の試験を受けなくても、そのスコアの目安を簡単に換算できます。

また同じ英検5級合格でも「ギリギリ合格」と「余裕で合格」では実力は異なります。不合格だったしても「あと少しで合格できた」など子どもの実力を正確に把握することができます。

CSEスコアを活用して、スキル別の現在地や伸びを長期的に記録することで、子どもの英語学習に活用できます。

英検5級のレベルと小学生の合格率

お母さんは「英検5級」のレベルを正しく把握しましょう。おおまかに説明すると「中学校初級程度」です。習得語彙数は300~400語が必要です。

  • 英検による5級の目安
級 推奨目安 出題目安 出題形式
5級 中学初級程度 英語を習い始めた方の最初の目標。家族のこと、趣味やスポーツなど身近な話題が出題されます。
英語の基礎固めに最適です。
スピーキングテストも受験可能です。
  • 筆記
  • リスニング
  • 録音形式のスピーキングテスト

*英検ホームページから引用:各級の目安

小学生で英検5級を受験することは、中学1年のレベルと同じ試験を受けることと同じです。子どもが前向きに英検受験に取り組むだけでもほめてあげましょう。

数字・曜日・月・基本単語(名詞・動詞・形容詞・副詞)など少なくとも「正しく読めて意味がわかる」レベルであることが合格の条件です。

  • 英検5級の合格ライン・合格率の状況

公式な発表はありませんが、合格ラインは問題の65%の正解率に設定されているようです。5級はリーディングとリスニングでそれぞれ25点合計50点の配点になっています。したがって、33点を獲得すれば合格できるといえそうです。

受験者全体の8割以上が合格できているようですが、中学生の受験者が半分以上います。小学生だけの受験者に限定するともう少し合格率は低下するかもしれません。とはいえ、英語を習い始めて1年程度の小学生で2か月くらいの準備期間があるなら合格は決して難しくありません。

語彙力・文法力と4技能の関係

最近、一般の人にも英語の4技能(Listening, Speaking, Reading, Writing)が認知されるようになりました。しかし、「語彙力・文法力」がこれら4技能とどのような関係になっているのかを正しく把握している人は少ないです。

語彙力と文法力は英語力の中心です。このふたつが揃っていないと話になりません。そして4技能もそれぞれ独立した技能(スキル)ではなく、お互いに相互作用している関係です。これを下に図で表しました。

4技能相関図

例えば、I can swim fast.という基本文を暗唱する会話練習をしたとします。canは「~できる」という意味の助動詞でその次に動詞の原形(run)が来ます。これは文法の知識です。当然、それぞれの単語の意味を知らないと暗唱をしても意味がありません。

音読しているときは自分で自分の声を聴いているので「リスニング」の練習をしていることになります。一部を忘れてテキストを読めば「リーディング」紙に書いて覚えようとすれば「ライティング」の学習です。

英語の学習をするときは常に「語彙・文法」を中心に、4つの技能を複合的に使用しています。だから「リスニングを強化」するための勉強であっても、その他の能力が極端に低いと伸びが悪くなるのは当然です。

語彙・文法と4技能の関係を理解して学習することが必要であることをお母さんはきちんと把握しましょう。

リスニングが弱点の子どもには、こちらの動画セミナーによる学習法がオススメです。

小学生向け英検5級おすすめ問題集

大きめの書店に行くと英検対策のコーナーがあります。そこには参考書がたくさん並べられていてどれを選んだらよいか迷ってしまいます。
book store
英検の対策本は主に「その級に頻出する単語・熟語集」と「過去問を主体とした問題集」の二つに分かれています。

5級を受験する場合、単語・熟語集は不要です。5級に登場する単語は超基本的なものばかりです。わざわざ単語集で暗記するまでもなく、しばしば目にするので普通の問題集を進めながら意味を確認すれば大丈夫です。

また5級で扱う超基本単語はカバーする意味の範囲が広く、1対1の訳語を暗記するやり方になじみません。例えば、単語帳で「call:呼ぶ」と暗記しても、“Please call me tonight.”(今夜私に電話してください)のような文脈では役に立ちません。

簡単な単語ほど多義語(一つの言葉でいろいろな意味を持つ言葉)の傾向があります。そのため、実際の文の中での意味をしっかりと確認したほうが、より単語のイメージを正しくとらえることができます。

もちろん知識を整理したり辞書替わりに単語帳を利用したりするのは問題ありません。ただし、暗記するために単語帳を買う必要はありません。

小学生向けの英検問題集がよい

英検5級は英語学習を始めて1年程度の初心者が受験します。したがって中学生の受験者が多く、問題集の多くは中学生が使用することを前提にして書かれています。

ところが注意深く探すと小学生向けの英検ドリルが発売されていました。試しに1冊購入してみたところ、なかなかよく出来ているので紹介します。
小学生向け英検ドリル

私がおすすめするのは『小学生のための英検5級合格ドリル』(旺文社)です。価格は税別で1,100円でした。このシリーズは英検5~3級まで対応しています。小学生でも3級の受験者が増えていることを反映しているようです。

「小学生のための英検5級合格ドリル」おすすめポイント

では、『小学生のための英検5級合格ドリル』のおすすめポイントについて詳しく説明します。

・英検情報が充実している

英語の問題集でありながら、英検の試験についての詳しい説明が充実しています。ネットでもいろいろと調べられますが、活字での情報は信頼性が高く重宝します。例えば、受験のときに必要な持ち物や結果がいつ頃わかるのかなどの情報が掲載されています。

・すべての漢字にルビが振ってある

本書にあるすべての漢字にはルビ(読みがな)が振ってあります。そのため小学校低学年の子どもでも頑張ればこの問題集を利用して勉強できます。学習者の年齢不問で利用できるのはとてもありがたいことです。
ルビ

・問題量がちょうどよい

1~13のレッスンとおまけページで構成されていて、小学生が2か月前から取り組むのにちょうどいい分量です。学習計画のモデルについては後述しますが、毎日1レッスンをすすめるのに30分あれば大丈夫です。

・CD付きで音声が充実

CD付きの問題集は珍しくありませんが、どのレッスンも英語の音を大切にしているところに好感が持てます。CDを聞かないと問題を進められないので、自然と英文を聞く量は増えていきます。

CDのデータをスマホなどに移行して、CDプレイヤーを利用しなくても聞けるようにお母さんがセッティングしてあげましょう。英文は聞くだけでなく、必ず自分でリピートするように習慣づけると英語の上達するスピードは加速します。

・すべての英文の日本語訳が巻末にある

5級の英文は簡単なものばかりです。それでも小学生が学ぶときには、意味がわからない箇所がいくつか出てきます。そのようなときにやはり日本語訳があると安心して学習をすすめられます。

最後の仕上げとして、「巻末の日本語訳を見ながら英語に直してみる」トレーニングをすると、より英語を深く理解できるようになります。
全訳

このように「小学生のための」と銘打つだけあって、細かい配慮が感じられる問題集です。ではこの問題集を使用して、どのように学習計画を立てて実行したらいいのかを具体的に説明します。

小学生向け英検5級の対策と教え方

英検の1次試験は6月・10月・1月に行われます。私のおすすめは、長期休暇を絡めながら2か月前から準備することです。例えば10月に受験する場合、夏休み(8月)にスタートするといいでしょう。

ドリルは全部で4回繰り返しますが、最初の1回目が最も大変です。長期休暇をその大変な部分の学習に充てることで、子どもが規則正しい生活を送れるようになります。また、お母さんのアシストも普段よりは期待できるので、より合格できる確率が高まります。

  • 1回目

平日は頑張って30分で1レッスンを進めましょう。私の経験では土日はイベントが多く、思ったよりも余裕がありません。だから思い切って休みにするか、何らかの事情で平日にできなかった場合の予備日として活用しましょう。

このペースで進めていくと、3週間で1回目が終了します。

  • 2~3回目

2~3回目を繰り返すときは、CDを聞かなくてもいいです。その代わり各レッスンの英文はすべて声を出して音読しましょう。もし読み方に自信がない場合は、面倒くさがらずにCDを聞くようにしましょう。

ここでは「プチ予想問題にチャレンジ」の筆記問題に力を入れましょう。1回目では正解を選べばOKですが、2回目以降は「なぜ、その答えを選んだのか」「なぜ、他の選択肢ではいけないのか」を自分で説明できるようにしてください。

単に正解・不正解をチェックするだけでなく、このように根拠をしっかりと説明しながら問題を解くことで文法や語法の理解を確実にしていきます。できればこの部分だけはお母さんがチェックしてあげるのが理想です。

教え方のポイントは、子どもが説明に困ったときはヒントを小出しにしながら、一生懸命考えさせてることです。子どもが考えた分だけ、英語の伸びにつながります。

最後のダメ押し(4回目)の復習はお母さんと一緒に

最後のダメ押しとなる4回目の復習について説明します。まずは巻末の予想問題に挑戦してみましょう。このとき、お母さんがそばにいられる状況で、本番と同じように時間を決めて実施します。
予想問題
採点後、合格圏内(30点以上)であれば思いっきりほめてあげましょう。実際、ここまで計画通りに学習を進められれば立派です。もし得点が合格ラインに到達していなくても、良かったところをきちんと評価してあげましょう。

予想問題で間違えたところはきちんと学習して理解を確実にしましょう。ドリルについては、「プチ予想問題にチャレンジ」に絞って最初から最後までもう一度復習します。これで、英検5級の対策は終了です。

小学生が身につけたい! 英検5級仕上げの勉強法

各レッスンにある「プチ予想問題にチャレンジ」について補足します。小学生でも表面的な学習で終わりにしないために大切なポイントをまとめました。英検5級受験を機に正しい勉強法を身につけて、将来の飛躍につなげていきましょう。

・単語
選択肢から1つ正解を選ぶ問題で、正解以外の単語についても意味を知っているかどうかをチェックしましょう。同じ問題は2度と出ないので、知らない単語があればきちんと調べることが大切です。

知らなかった単語については、はじめに正しく発音できることを心がけましょう。それから意味を調べるように習慣づけしましょう。

リスニングで英語を理解する場合、単語を聞いた瞬間にイメージが頭に浮かぶかどうかが大切です。例えば、baseballを読んだときに「野球」という訳語が頭に浮かぶようでは、リスニングのスピードに対応できません。

そうではなくて、baseballを読んだら野球場の光景や選手の様子が頭の中で浮かぶようにしておきましょう。普段、音読するときにこのようなことを常に意識しておくと、リスニング対策になります。

・文法
イメージが大切なのは単語だけではありません。文法に関しても同じことがいえます。例えば現在進行形の-ingを見たときに、「今、〇〇している最中」のようなイメージが浮かぶかどうかはとても大切です。

リスニング力は「聴く」とき以外でも鍛えられます。上記のように、リーディングをしていて単語や文法を即座にイメージ化(映像化)できるようにしておくと、それはリスニングにおいてとても有利に働きます。

・テキストの英文はすべて自分に向けられていると考える
ドリルに掲載されているダイアローグ(対話文)やその他の問題文について、「自分ごととして読む」ように子どもに教えてあげましょう。自分と関係ない無機質な文ではなく、自分がその人になったつもりで音読するだけで、英語の定着はまったく変わってきます。

1冊のドリルをここまで深く学習すると本物の英語力が身につきます。合格ラインを大幅に上回る得点が取れた場合、CSEスコアに注目してください。もし英検4級の合格ラインに近かったらそれはとてもいい学習ができていることの証左となります。

英検3級まではお母さんと一緒に挑戦するのが理想

お母さんの役割として理想なのは、子どもの「ライバル」として一緒に英検を受験することです。英語な苦手なお母さんは尻込みするかもしれませんが、英語が苦手なお母さんのほうが子どもからすると追いつけるかもしれない」とやる気になるものです。

英語ができるお母さんだとつい自分の英語力を子どもに誇示してしまい、子どもが委縮してしまいます。一方的に教えるよりは、子どもと同じテキストを使いながら一緒に学ぶ姿勢を見せましょう。

英検3級は「中学校卒業程度」のレベルです。できれば、英検3級までは親子受験を続けて欲しいと思います。

e-ラーニングサイト「リトルフォックス」にはさまざまなレベルが用意されていて、子どもから大人まで学べる教材が用意されています。

まとめ

英語を学び始めて1年ほど経過したら、子どもに英検5級を受験させてみましょう。合否よりもその学習過程で身につけられる「効果的な学習法」に価値があるからです。

小学生が英検を受験する場合は、問題集の選び方に注意しましょう。特に小学校低学年の子どもが勉強するときは、小学生向けの問題集を使用することをおすすめします。漢字にルビが振ってあるなど配慮が行き届いているからです。

1次試験の日から逆算して2か月前から準備を進めましょう。長期休暇を上手に活用すれば、小学生でも充分に合格できます。

問題集を何度も繰り返しながら、少しずつ深く学べるように子どもを導きましょう。最初のうちはなかなか意識できないことでも、常に意識させるように促せば少しずつ習慣化されていきます。質の高い学習が身につくと、将来子どもの英語力は飛躍的に伸びます。

最初の検定試験なので、子どもは負担に感じるかもしれません。できればお母さんも一緒に受験してライバル的な存在になりましょう。「お母さんに負けたくない!」という気持ちが子どもをやる気にさせます。

子どもが英語スペリングを得意に!「ぶつぶつライティング」とは

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同じ能力の子どもが同じ授業を受けて同じ時間自習しても、しばらくすると英語力に明らかな差が現れ始めます。この現象は教員時代とても不思議に感じました。

そのときに立てた仮説は、「学びの深さに差がある」ことでした。傍目には同じように学んでいても、彼らの頭の中の活動量には相当な違いがあります。

問題は、「何をどのように考えているか」は本人以外誰にもわからないことです。思考方法は本人以外把握できないし、コントロールもできません。

同じことは英語を書くときにも当てはまります。もしあなたの子どもがテキストの英語をノートに写すときに目線が頻繁に往復したり黙々と書いていたりしていたら、それは私がまったくわからないアラビア語をコピーしているのと変わりません。

私の推奨する英文の写し方は「ぶつぶつライティング」です。方法はとても簡単です。英語を紙に書くとき、ぶつぶつつぶやきながら書くだけです。

「ぶつぶつライティング」を始めるタイミングは、フォニックスの基礎を終了してからです。3文字からなる単語(bag, fatなど)がある程度読めたら、「ぶつぶつライティング」を開始します。

まずは英語の苦手な子どもが、どのように考えて間違いを繰り返すのかを分析します。そして頭の中の活動量と質を高めるためのコツを解説します。

Mr. SmithをMr. Sumisu と書いてしまう原因は

あなたの子どもが何気なしに「Mr. Smith」を「Mr. Sumisu」と書いていたら、どのようなアドバイスをしますか?

正しい綴りを教えるだけなら簡単です。しかし、その子は似た間違いを今後も繰り返します。そうさせないためには、間違いの原因をじっくりと考える必要があります。

カタカナを当てはめているから

Sumisuのスペリングを見ると、カタカナとローマ字の影響を受けていることがわかります。まず、Smithの読み方を覚えるときに「スミス」とカタカナをふっています。そして、「スミス」というカタカナの音に対応させるためにローマ字でSumisuと綴ります。

(子どもの頭の中)Smith→「スミス」→Sumisu

カタカナで置き換えて覚えている限り、永遠に正しい綴りであるSmithにはたどり着けません。

カタカナで単語を覚える弊害はもう一つあります。それは、本来の音節の数と違う数で音をとらえるようになり、その単語を音で聴いても認識できなくなることです。

英語のSmithは1音節(1つの音の塊)で一気に読まれます。ところが「スミス」とカタカナ読みすると3音節として脳に記憶されます。ネイティブがSmithと発音したときに、記憶の音の数と異なるため正しく聴き取れません。

このように英単語を覚えるときにカタカナで覚えてしまうと綴りをローマ字化してしまったり、リスニングが苦手になったりします。

正しい英語の発音をしていないから

英語と日本語では音の数と種類が異なります。だから英語を日本語の音で読むことは「やってはいけない」というより、不可能です。

例えば、カタカナの「ス」に変換される英語の音には「s」「th」のふたつの音があります。しかし、これらはまったく異なる音で綴りでもはっきりと区別されています。

【th】の音を出すときは、上下の歯のすき間に舌先を軽く挟んで、空気を出すことで音を出します。【s】は上下の歯は合わせた状態で、歯のすき間から空気を出します。

まったく異なるふたつの音をカタカナの「ス」にまとめるのが、どれだけ馬鹿馬鹿しいことかわかっていただけたでしょうか。

英語を書くときに「音読」していないから

子どもが英語をノートに書くときは「お手本を写す」ことがほとんどです。例えば先生が黒板に書いた英語やテキストに書いてある英文を写すときが相当します。

そのときに一文字ずつ確認しながら写しているとしたら、それは英語の音も意味もまったくわかっていない証拠です。

英語のできる子どもが「He likes a hamburger very much.」という文を写すとき、まず一文を音読します。このときの音読はぶつぶつ小声でつぶやく程度か、声には出さなくても頭の中で音声化されます。もちろん内容に即した映像が頭の中で再生されています。

そして一気にその一文をブツブツつぶやきながら紙に書いていきます。文章が長くなればときどき本文を見直すこともあるでしょう。しかし、この程度の長さなら一気に写せます。

このとき必要な能力は総合力です。英語を英語の音で発音できて、それに対応する綴りも覚え、文法を理解していなければこのような写し方はできません。

「正しい音読をして(インプット)、それを音声で出しながらそれに対応した英語を紙に書く(アウトプット)」ことができる子どもは英語の理解力が高いです。

正しい「ぶつぶつライティング」を身につけよう

初心者には一文を一気に覚えて紙に書くのはハードルが高いでしょう。その場合には、もっといい方法があります。英語初心者でも効果的な学習を可能にする「たった一つの習慣」を紹介します。

それは英語を書くとき(写すとき)は、必ずぶつぶつとつぶやくことです。私は「ぶつぶつライティング」と呼んでいます。「ぶつぶつライティング」はとてもシンプルな習慣ですが効果は絶大です。コツがふたつあるので解説します。

正しい発音を心がけること

まず、「正しい発音を心がけること」がポイントです。カタカナではなく、英語の音で正しい発音をしようと努力することです。

ネイティブ並みの発音にする必要はありません。しかし、日本語の音(カタカナに置き換えた音)ではいけません。少なくとも自分では英語独自の音をきちんと出そうと努力することが大切です。

【θ】の他にも【f】【v】【l】【r】など特に注意しなければならない音があります。できるだけ理想の音に近づけるように子どもに意識させましょう。

音節単位でつぶやきながら単語を書く

つぶやきながら英語を書くときにはもう一つコツがあります。それは「音節単位」で読みながら書くことです。少々わかりにくいので「international(国際的な)」を例に挙げながら、理想的な「ぶつぶつライティング」を解説します。

(ダメな例)

internationalと一気に読む→internationalと無言でノートに写す

これでは音と綴りの関係を確認しながら書くことができません。

(良い例)

inと読みながらinと書く。
terと読みながらterと書く。
naと読みながらnaと書く。
tionと読みながらtionと書く。
alと読みながらalと書く。

このように音節(一気に読まれる音の単位)で区切りながら、ブツブツ読んで写すのが理想です。音節については辞書通りに厳密に分けなくても、おおまかな感覚でかまいません。

naの箇所はアクセントの位置なので、ブツブツつぶやくときも強めに読むように心がけます。

上記のように「正しい発音」で「音節ごとにつぶやきながら」写す習慣をつけるだけで、英語力はメキメキと向上します。

自分の感覚と本物の英語との違いに何度も気づく

正しい方法で「ぶつぶつライティング」を続けると、自分が思い込んでいた音と綴りの間違いに何度も気づくようになります。

例えば、アルファベットの「u」はローマ字では「ウ」として置き換えられるため、「ウ」という音を出すと認識する初心者はとても多いです。実際はアルファベットの「u」は喉奥で出される強い「ア」として発音されることがかなりあります。

umbrellaという単語とイラストがあったとします。子どもは傘を「アンブレラ」の音で覚えています。ぶつぶつライティングをしながら、この単語を書くとき頭の中では次のようなことを考えます。

umと読みながらumと書く→「uはアと読むのか…、それに次はnじゃなくてmか」
breと読みながらbreと書く→「レの部分はrか」(rの発音に気をつける)
llaと読みながらllaと書く→「ラはlがふたつか!」(lの発音にも気をつける)

(umbrellaの本当の音節はum・brel・laですが、感覚を優先しています)

この「すり合わせ作業」を何度も繰り返すことによって、正しい綴りを自動的に身につけられる仕組みです。

黒板の英文をノートに写す機会を無駄にしない

中学や高校で英語の授業を受けるとき、ノートやワークブックに英語を書く(写す)機会はたくさんあります。そのときに「ぶつぶつライティング」を続けた子どもと無言のまま文字を書き写しているだけの子どもでは相当な英語力に差が出ます。

授業中、声に出すことがはばかられるのであれば唇が動く程度に「ぶつぶつ」つぶやけばいいのです。書く時間すべてを「音声」と結び付ける作業をするだけで、そうでないときの何倍も濃密な学習効果を得られます。

さらに効果を高めたければ、英文を書いたあと目を離してもう一度口頭で英文をつぶやきます。そのときにその英文の意味に沿った状況をイメージしたり感情移入したりします。そしてその言葉を相手に言われたと仮定して、それに対する応答までを考えます。

例えば、You are too young to drive.(あなたは若すぎて車を運転できません)を写したら、顔を上げて口頭でこの英文を復唱します。

そのときに親が子どもに諭すように読みます。さらに自分が言われたときの反論まで考えます。When can I drive, then? (じゃあ、いつ車を運転できるの) という具合です。

ここまで深く学ぶ習慣をつけると、英文を単に読みあげるだけでなく会話の練習もしていることになります。

「ぶつぶつライティング」はただの習慣です。しかし、このたった一つの習慣が将来の英語力に大きな影響を与えます。お母さんは学習初期の段階から、この「ぶつぶつライティング」を習慣づけするように子どもにアドバイスをしましょう。

まとめ

ノートに英語を写す機会はたくさんあります。そのときに子どもが黙々と書いていたら要注意です。なぜならそのままでは英語の正しい綴りをいつまでも書けない可能性が高いからです。

私のおすすめは「ぶつぶつライティング」です。単語の音節ごとに正しい発音で読み上げながら綴りを書き写すだけです。たったこれだけの習慣で、自分の間違っていた音や綴りを何度も繰り返し確認できます。

中学校や高校に進むと英文をノートやワークブックに書く機会はとても多いです。その時間を最大限に効果的にするために、小学生の頃から「ぶつぶつライティング」の習慣をつけさせましょう。

頭の中の思考法・思考内容をコントロールできるのは子ども本人だけです。常に意識づけをしてあげて、習慣化されるまで続ける根気が必要です。

正しく音読していると書く練習をしなくてもスペリングを覚えてしまいます。そのための方法はこちらで紹介しています。

子どもに英文法:「時制の一致」を教えてはいけない

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世の中には「知らないほうが幸せだった」雑学があります。例えば、「きゅうりは世界一栄養のない野菜」とか「エビのしっぽの成分はゴキブリの羽と同じ成分でできている」などが該当します。

学校で習う英文法にも似たものがあります。その代表例は「時制の一致」です。高校で英語を学んだ人なら一度は耳にしたことがあるはずです(忘れた人はそのまま忘れたほうが幸せですから、この先読まないでください)。

この知識はまさに「百害あって一利なし」です。今回の記事は、高校時代に英語を一生懸命勉強したお母さんに向けて書きました。「時制の一致」は理屈に合わない部分が多いので、振り回されないように気をつけましょう。

子どもに英語を教えるときも、「時制の一致」の知識を子どもに押しつけないようにしていただきたいと思います。

時制の一致とは

高校の英語文法には「時制の一致」という項目があります。私は受験勉強の際、機械的に「時制を一致」させるようについ考えてしまいます。このときは何の疑念も抱きませんでしたが、今となっては「ほとんどインチキ」とさえ感じています。

時制の一致の不合理さを説明する前に、「時制の一致」とはどのようなものだったか確認しましょう。

時制の一致のおさらい

例えば、She said, “I am a student.”(彼女は「私は生徒です」と言った)から“”(引用符)を取り除くとします。

すると、She said that she was a student.(彼女は彼女は生徒ですと言った)と書き換えられます。このときに「時制の一致」を適用しなければいけませんが、その理屈は下の表のようになります。

*時制の一致

主節 従属節
She said that she was a student.
主節の動詞said(過去形)に揃えるために→ 従属節の動詞(be)もwas(過去形)にする

「時制の一致」は変?

息子が海外のインターナショナルスクールに通っていた頃のことです。子どもを学校に迎えに行くと同級生のママさんに会いました。話題は今学期で母国(韓国)に戻ってしまう生徒の話です。

韓国に帰る女の子のお母さんから直接聞いていたので、私は次のように教えてあげました。“Her mom said (that) they would go back to Korea.”

主節の動詞saidの時制は過去形です。時制の一致のルールを適用して、willの過去形wouldを何も考えずに使いました。文法的には正しいです。

すると私の話を聞いていたママさんは目をまるくして“Oh, are they already gone?”(えっ、もういないの?)とたずねてきました。慌てて否定して「今学期が終わったら帰るんだよ」と訂正しました。

誤解の原因は私の「機械的な時制の一致」です。“He mom said they will go back to Korea after this term ends.”と伝えれば誤解されませんでした。しかし、この文には「時制の一致」が適用されていません。

例外だらけ

「時制の一致」には例外がたくさんあります。というより、一致しないことのほうが多くて、「そんなルールは存在しない」と表現したほうが適切です。

具体例をもう少し見てみましょう。

「時制の一致」をしなくてもよい例

People knew that water boils at 100℃.(人々は水が100度で沸騰することを知っていた)

この場合従属節の文章water boils at 100℃.は「不変の事実」なので現在形boilsのままにしなければいけません。boiledにはなりません。

時制の一致の例外はこれだけではありません。こうなると何がなんだかわからなくなってしまいます。

しかし、慌てないでください。英語における時制の発想はもっとシンプルです。子どもでも理解できます。

常に「今」と比較しよう

時制の大原則は、常に「今」と比較することです。これだけを頭に入れておけば、時制の一致など学ぶ必要はまったくありません。むしろ知らないほうがいいとさえいえます。

主節も従属節も「今」を基準にして時制を決めよう

She said, “I am a student.”

主節の動詞も従属節の動詞も、「今」を基準に考えてみましょう。彼女が言ったのは過去なので過去形のsaidを使います。

“”内のI は彼女のことなのでsheに変えます。be動詞の時制については、「今」を基準にします。現在彼女は学校を卒業して働いていたら、studentだったのは昔のことなので、wasにするのが正解です。

She said that she was a teacher.

この場合主節と従属節の時制は同じ過去形で一致しています。しかし、これはただの偶然です。

もし彼女の発言が昨日のことで、「今」も生徒なら「いつものこと」をあらわす現在形isを使用するのが正解です。だからShe said that she is a teacher.もあり得ます。

私が知り合いのママさんに間違えて伝えた発言も、「時制の一致」などにつられなければ簡単にわかります。

Her mom said, “We will go back to Korea.”

女の子のお母さんが発言したのは過去なので、過去形のsaidで正解です。

そして引用符内のweはher familyのことなのでtheyに置き換えます。彼らが韓国に戻るのは、私が発言している「今」を基準にすると未来のことなので、willを使うほうが誤解されません。
今を基準に考える

Her mom said that they will go back to Korea.

wouldでも文法上は間違っていませんが、この場合はwillのほうが適切でした。

主節の時制と従属節の時制はそもそも無関係

強調しておきたいのは「主節の時制と従属節の時制には何の関連性もない」ということです。それなのに受験勉強では繰り返し主節と従属節の時制を一致させようと問題を解き続けました。

そのときに問題に気づかなかったのは「たまたま一致していた」事例だけが、扱われていたからに過ぎません。

引用符の文章を間接話法(引用符ではない表現)を用いて表現するときは、動詞の時制よりも主語を正しく変えられるかどうかのほうがはるかに大切です。

例えば昨夜のパーティーでKateとMikeが“We are going to buy a house.”と発言していたとします。

これを間接話法で書き換えるとKate and Mike said that they were going to buy a house.となります。語り手である「私」から見てthat節内を書き換えるので、we→theyとするのが正しいです。

この視点の移動については子どもにもきちんと教えてあげましょう。

まとめ

英文法は英語を学ぶ上でとても大切です。しかし、「時制の一致」に関しては、むしろ知らないほうがマシです。

英語では時制の決め方はとてもシンプルで、常に「今」を基準にして決められています。そのため「従属節の動詞の時制を主節の動詞の時制に一致させる」ようにすると訳がわからなくなってしまいます。

子どもの英作文をチェックするときは、「時制の一致」の知識は忘れましょう。何も触れないほうが子どもは正しく理解する可能性が高いです。

英語の勉強になる子供向け映画DVD:「英語と外国文化や歴史」を学ぼう!

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街の本屋さんの語学コーナーに行くと、海外ドラマや映画DVDを英語教材にした学習本が増えています。ネイティブの英語を楽しみながら学べるので、需要があるのでしょう。

また英語を学ぶ目標として「映画を字幕なしで楽しむこと」を挙げる人はとても多いです。映画と英語は相性がいいのです。

子どもの英語教材としても映画はおすすめです。しかし、子どもの英語のレベルは高くないので、ネイティブのセリフを聞き取るにはハードルが高すぎます。すべてのセリフを聞き取ろうとせずに、印象的なセリフに絞って学習したほうがうまくいきます。

英語以外でも、映画は「外国の文化・歴史・生活習慣」を学ぶ絶好の機会です。映画の舞台は現代だけでなく過去の出来事も舞台になるので歴史も学べます。

子どもの英語学習に向いている映画を探すにはコツがあります。それについても詳しく解説するので、参考にしてください。

子どもと映画を観よう

夏休みなどの長期休暇中「子どもに何か有意義なことをさせたい」と考えるお母さんは多いです。しかし、良いアイデアが思い浮かばずに、結局ダラダラと過ごしてしまう経験はありませんか。

私のおすすめは「子どもと良い映画を観ること」です。「夏休み中に15本映画を観て、30個のセリフを覚える」と具体的な目標を立てて実行できたら、充分に有意義な時間を過ごしたといえるでしょう。

映画のあと親子で映画について話し合い感想を述べるのは、議論の練習になります。映画で得た知識は将来英語圏の人と雑談するときにとても助かります。共通の映画で盛り上がったり意見交換できたりしたときは、映画を観ていて良かったと思います。

まず、映画ノートを一冊用意しましょう。子どもにタイトル(邦題と原題)を上に書かせて、観た日付を記入(英語で)させます。タイトルに知らない単語があったら、意味を調べさせましょう。ここまで準備できたら、あとはメモを取るだけです。

映画は英語圏の文化や習慣を学べる最高の教材

英語圏の国での文化・習慣について深く学ぶ教材として、映画は優れています。例えば、子ども向けの定番映画として『ホーム・アローン』があります。

「子どもが一人で家にいる」ことは日本ではそれほど珍しくありません。しかし、アメリカでは13歳未満の子どもを13歳以上の監督なしに一人にさせてはいけない」法律があるため、深刻度が違います。

よく中高生がアルバイトでベビーシッターをするシーンがアメリカのドラマで見られますが、そのような背景があるからです。それがわかると、「子どもを家でひとりにして家族が旅行に行ってしまった」のは日本以上に大事件であることを理解できます。

クリスマスは家族が集う機会でもあるので、皆が再開できるハッピーエンドはまさにクリスマスのテーマそのものです。

このように外国の文化や習慣を疑似体験できるのが、映画の良いところです。子どもと映画を観たあとはこのような豆知識を教えてあげると、子どもの教養レベルは高くなります。

このような雑学もノートにメモしておくと、知識が定着して忘れにくくなります。

好きなセリフを英語字幕で確認しよう

英語の映画ならもちろん英語を学べます。小学生で映画のセリフをすべて理解させるのはほとんど不可能です。そこで、子どもが印象に残った場面のセリフだけを1つか2つ選んでノートに記録してはどうでしょうか。

例えば『オズの魔法使』なら、最後のドロシーのセリフ“There’s no place like home.”(やっぱりおうちが一番)だけ、字幕表示を利用してノートに写します。

そしてそのセリフが読まれるときの役者のマネをして何度も音読します。映画を観終わった直後は特に登場人物に感情移入できます。シーンを思い浮かべながら気持ちを込めてセリフを繰り返すのがコツです。

応用で言葉の一部を置き換えてみるのもいい訓練です。“There’s no place like Disneyland.”(ディズニーランドが一番)のように子どもの考えや経験に合致した英文にしたほうが、頭に残りやすいです。

定額オンデマンドサービスが充実

映画はDVDでもいいし、定額オンデマンドサービスを利用してもいいです。大手のNetflixでは字幕や音声を切り替えられる機能があり、英語学習に重宝します。
字幕機能

レンタルだと返却日が気になります。返却も天気が悪かったりすると面倒です。その点、いつでも見られるオンデマンドサービスはとても便利です。

まだ利用していない人は最初の1か月はたいてい無料で利用できるので、この機会に試してみるといいでしょう。

どうやって子どもと楽しめる映画を見つけるか

映画が子どもの英語学習に役立つのはわかっていただけたと思います。しかし、たくさんのタイトルの中から「子どもの英語学習に適した映画」を選ぶのは簡単ではありません。

私もネットで「評判」を検索して探していた時期がありました。しかし、実際に見てみると評判ほど楽しくなかったり、英語学習の観点からは今ひとつだったりしたこともありました。

ディズニーのアニメならほぼ間違いないのでしょうが、毎回同じようなテイストだとやはり飽きてしまいます。

そこで活用したいのが「映画ガイドブック」です。

もっと簡単に英語の動画を楽しみたいなら、こちらの勉強法がオススメです

一冊揃えると超便利! 映画紹介本

限られた期間にできるだけ質の高い「子どもの英語学習に適した映画」をたくさん見るためには、やはり行き当たりばったりでは駄目です。そこで便利なのが映画ガイドブックです。

先生が薦める『英語学習のための特選映画100選』小学生編

私も1冊購入して大変便利だと感じたのは『英語学習のための特選映画100選(小学生編)』です。
英語紹介本
映画の基本情報はもちろん、英語学習の観点から役立つ情報がぎっしりと詰まっています。

執筆者は多数いますが、すべての映画は共通のフォーマットで構成されています。「セリフ紹介」「ふれあいポイント」「あらすじ」「映画情報」「おすすめの理由」「授業での留意点」「映画の背景と見所」「リスニング難易表」などです。

これらのうち「リスニング難易表」「セリフ紹介」「授業での留意点」について詳述します。

「リスニングの難易表」は便利

すべての映画には「リスニング難易表」があります。9個の評価項目があります。具体的には「会話スピード」「発音の明瞭さ」「アメリカ訛」「外国訛」「語彙」「専門用語」「ジョーク」「スラング」「文法」です。

それぞれ5段階で評価されていて、標準は3です。「スラング」は使用頻度が少ないと数字は小さくなります。「文法」はルールに忠実なほうが小さい数字です。初心者ほど数字が小さいものを選ぶとよいといえます。

この表をざっと眺めるだけで、子どものレベルに合った映画を選べるのでとても便利です。この本はもともと小学生編なので、はじめから難解な映画は含まれていません。でも作品によって難易度にかなりばらつきがあります。

「セリフ紹介」と「授業での留意点」

学校の先生用に執筆された本なので、「セリフの紹介」と「授業での留意点」が詳しく書いてあります。

ここに掲載されている情報はかなり詳細で、大人が読んでも勉強になります。何度も観たこともある映画でも新しい見方を与えてくれるので、もう一度観てみたい気持ちにさせてくれます。

全部を子どもに教えようとすると勉強臭がするので、教える内容は絞りましょう。

例えば、『アニー』の舞台は、1933年のニューヨークです。当時1929年に起こった世界大恐慌の影響で、経済はどん底でした。

1933年に米国大統領となったフランクリン・D・ルーズベルトは「ニューディール政策」と呼ばれる公共事業の拡大により失業率を改善して経済危機を乗り切りました。

中学校や高校の歴史でも登場しますが、子ども向けの映画で予習できるのは素晴らしいです。日本でも毎年人気のミュージカルなので、子どもが気に入ったら舞台を見せてあげても喜びそうです。

ちなみにアメリカの歴史上もう一人ルーズベルト大統領がいます。第26代大統領のセオドア・ルーズベルトです。映画『ナイトミュージアム』に登場します。

歌にも注目

映画と主題歌は切っても切り離せないものです。もし子どもが口ずさんだら、歌の一部でもいいので歌ってみましょう。

『アニー』ならTomorrow、『オズの魔法使』ならOver the Rainbowです。ノートに歌詞の一部を記入します。

Tomorrow, tomorrow, I love ya, tomorrow
You’re always a day away!

これだけ歌えるだけでも、子どもはうれしくなります。この部分はリフレイン(繰り返し)になっているから、満足度も高いです。上手に歌えたらほめてあげましょう。

私のおススメ映画

本の中では紹介されていませんでしたが、私が子どもと観ておもしろかった映画を一つ紹介します。たまたま観た映画で、今まで存在すら知りませんでした。邦題のつけ方を失敗しています。

「笑えて感動して泣けてくる」三拍子揃った映画『飛べ、バージル/ プロジェクトX』です。ぜひ、家族みんなで鑑賞してください。

・飛べ、バージル/ プロジェクトX

手話で人間の言葉を覚えたチンパンジーのバージルが、空軍の秘密プロジェクトに参加します。ところがそのプロジェクトは核戦争を想定したチンパンジーに爆撃機を操縦訓練させるものでした。

被ばくしてからどれくらい飛行できるかを実験するために次々に犠牲になるチンパンジーを救うために、若者2人が協力します。

冒頭で研究者がチンパンジーに言葉(英語)を教えるシーンがあります。チンパンジーにわかるように話す英語は、当然とてもわかりやすいです。英語を覚えたての子どもでも、理解できる英語が続くので楽しめます。

時代背景として、「米国とソビエト連邦が冷戦関係にあった」歴史を子どもに教えてあげる必要があります。そうしないと、なぜアメリカはチンパンジーを虐待しなければならなかったのか理解できないでしょう。

子ども向けの映画からでも深い教養を身につけられるのが映画のいいところです。

まとめ

もし子どもに夏休みを有意義に過ごさせるなら、英語の映画を観てみましょう。映画で印象に残ったセリフを英語で抜き出して、それを暗唱します。また、興味を持った生活習慣や文化などについて調べるのも大変勉強になります。

子ども向けの映画を選ぶのは難しいので、英語学習向けの映画ガイドブックを手元に用意するととても便利です。選ぶ段階ではリスニングの難易度について細かい指標があるので、役に立ちます。

その映画の時代背景や登場人物について子どもが調べるヒントを与えてあげると、海外や歴史に興味をもつきっかけになります。

観終わったあと親子で映画について語り合うのは、子どもにとってとてもいい勉強になります。親子で良い映画をたくさん見て、英語や外国の文化や歴史について学びましょう。

子どものフォニックス教材選び:3文字英単語攻略法

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英会話教室に子どもを通わせると、子どもは英語を覚えます。ところが英語学習を中断すると、すぐに覚えた英語を忘れてしまいます。

同様に幼稚園~小学校低学年を英語圏の学校で過ごした帰国子女は、日本に戻るとあっという間に英語を忘れてしまいます。それは、音だけで英語を学んでいるからです。

もしあなたの子どもが小学生なら、音だけでなく文字からのアプローチも積極的に試みることをおすすめします。なぜなら、文字から学んだ英語は忘れにくい特徴があるからです。

ところが英語には「文字通りに発音されない」というやっかいな性質があります。そこで役立つのが「フォニックス(綴りと音の関係)」です。

今回はアルファベットを学び終わったあと、次のステップとしてフォニックスをどこまで勉強したらいいのかを具体的に解説します。フォニックスの基礎を身につけると意味不明だった英単語が読めるようになり、さらに「意味を知りたい」という意欲につながっていきます、

とても大事なスキルなので、子どもが楽しみながらフォニックスの基礎を学べる方法を紹介します。

アルファベットと実際の音は違うことを覚えさせる

私の経験上、英語が苦手な中学生のほとんどは「音読」が苦手です。つづりと音の関係(フォニックス)の基礎が身についていないからです。

英語の場合アルファベットを読めても、英単語は正しく読めません。例えば、F(エフ)O(オー)X(エクス)の3文字から出来ているFOXは「エフオーエクス」とは読まずに「フォックス」と発音されます。

これに対して日本語ではひらがなを読めれば、単語や文章を読めます。「き」「つ」「ね」がよめれば3文字の単語「きつね」も読めます。

英語と日本語の決定的な違いに気づかずに、英語に苦手意識を持ってしまう生徒が非常に多いです。残念なことに中学校の英語の先生もこの部分に時間をかけません。そして英語のできる生徒とできない生徒の差はどんどん開いてしまいます。

アルファベット表を活用して基本の「音」を覚える

英語の読み方には「緩いルール」があります。つづりと読み方の関係をまとめたものを「フォニックス」と呼びます。これを理解するためには、アルファベットが「別の音で読まれること」を学ばなければいけません。

別々に覚えると効率が悪いので、アルファベットを学ぶときに一緒に「別の音」を覚えさせましょう。

用意するものは「アルファベット表」です。大文字・小文字だけでなく、その文字を使用した単語とイラストが印刷されたものがいいです。「A/a」だったら、appleとリンゴの絵がセットになっているものです。

alphabet表*引用:「ちびむすドリル英語」(http://happylilac.net/alphabet-s.html)

これを使って「A(エイ)、ア、ア、ア、apple!」「B(ビー)、ブッ、ブッ、ブッ、banana!」のように、アルファベットの読み方(エイ、ビー)と単語に使われたときの音(ア、ブッ)をセットで覚えていきます。

この活動を通じて子どもは「アルファベットとしての読み方と違う音がある」ことを認識します。ここまでがフォニックスの最初の一歩です。

・アルファベット読みともう一つの読み方を覚えるまでが第一歩

実は単語の中では、アルファベット通りに発音されることも少なくありません。例えば、FACEのAはアルファベット読み(エイ)されます。これはアルファベットが読めればすぐに慣れるので特別に学ぶ必要はありません。

先述したように「A(エイ)、ア、ア、ア、apple!」と覚えると、アルファベット一文字に対して2種類の読み方(エイとア)を覚えたことになります。これだけでも読める単語はかなり広がります。

リビング、ランチョンマット、お風呂などに貼って声に出して覚える

アルファベットを覚えるときは、アルファベット表を子どもの目につく場所に複数個所貼っておきましょう。いつでもどこでも子どもが興味を持ったときに学習できるようにするためです。

私の場合は、リビング・お風呂・ランチョンマットの3ヵ所でした。ランチョンマットといってもアルファベット表を写真に撮ってA4サイズにプリントアウトして、それをラミネート加工しただけです。
アルファベット表風呂場
食べ終わって暇なとき、子どもは勝手にブツブツいいながら眺めています。読み方がわからなくなると聞いてくるので教えてあげました。お風呂のとき「A~Kまで言えたらお風呂から出ていいよ」とゲーム風にすると、顔を真っ赤にして必死になってやります。

英語を習い始めたら、アルファベットとそれぞれの基本的な音をセットで身につけます。これが完璧になったら、次のステップへと進みます。

フォニックスの基本は3文字英単語

次は「3文字の英単語を読む」トレーニングです。3文字の英単語は、bag, set, hit, dog, bug のように「子音+母音+子音」の組み合わせによる単語です。

アルファベットとは異なる「音」が身についていれば、それぞれの音を足し算するだけで「3文字英単語」は読めるようになります。

  • なぜ3文字単語か

3文字英単語を選ぶのには二つの理由があります。ひとつ目は「フォニックスの細かいルールに触れなくて済むから」です。

例えば、hatはアルファベットとは異なる音を理解していれば読むのは難しくありません。しかしこれにeを付け足して、hate(ヘイト:を嫌う)という4文字単語にしてしまうと一気に読みが難しくなります。

aは「エイ」のアルファベット読みになり、最後のeは発音されません。初心者である子どもには難しすぎる変化です。

3文字英単語を利用するふたつ目の理由は「扱える単語が一気に増えるから」です。もし2文字だけだと、is, in , on, upなどしか扱えず子どもにとって楽しくありません。

「英語を読めるようになった!」という達成感を子どもに味合わせるには、やはり3文字英単語が適しています。

フォニックスの基本:3つの音を足し算する

実際に教えるときは、まず一文字ずつの音の復習から入ります。ここでは、capを例に説明します。

母:Cを指しながら「クッ、クッ、クッ」
子:「クッ、クッ、クッ」
母:Aを指しながら「ア、ア、ア」
子:「ア、ア、ア」
母:Pを指しながら「プッ、プッ、プッ」
子:「プッ、プッ、プッ」
母:今の音全部足してみようか? 「クッ・ア・プッ、キャップ!」
子:cap!(キャップ)

このような感じでコツを示し子どもに「音を足す」感覚を理解させます。そして、少しずつ自分だけで読めるように導いていきます。

・フォニックスの効果

ここまで1~2か月ほど費やしますが、これができると今まで謎の文字だった英語が一気に意味のあるものに感じられます。

正しい音で読めると、子どもはかなり嬉しそうな反応をします。ここまでくればしめたもので、3文字英単語のフラッシュカード(片方に単語、反対側に絵)で瞬間的に読むトレーニングに移行することもできます。

フォニックスの基本はここまで

3文字英単語が読めれば、基本の終了まであと一歩です。最後の仕上げとしてdiagraph(ダイアグラフ)を覚えてしまいましょう。

ダイアグラフとは子音2字で新しい音を作るペアです。例えば、shで「シュ」・chで「チ」という音になります。全部で8個だけなので一気に覚えさせましょう。

th 【θ, ð】(例)think, then
ch【ʧ】(例)chat
sh【ʃ】(例)shut
gh【f】(例)cough
ph【f】(例)graph
wh【wh】(例)what
ck【k】(例)chick
ng【ŋ】(例)sing

ダイアグラフを学ぶと fishやrich などが読めるようになり、さらに英語学習のスピードは加速します。

私が考えるフォニックスの基本はここまでです。本格的なフォニックスの授業では、もっと細則を扱います。しかし私は深く学ぶことはおすすめしません。

なぜならルールが増えるにしたがって逆に読めなくなってしまうからです。また、ボキャブラリーが増えてくると例外がたくさん登場します。

例えばone, owlはフォニックスのルールでは読めるようになりません。そのためパッとひと目で読めるようにすることが推奨される単語です。いわゆる「sight word(サイトワード)」と呼ばれる単語です。

基礎が終わったら例外も含めて声に出しながら単語を覚えていけば、自然と英単語を読めるようになっていきます。少しくらいの間違いは、リーディングを学習しながら修正していけば問題ありません。

英単語を覚えるときの鉄則とは

英単語を覚えるときの鉄則は「正しい発音→意味→スペリング」の順番を守ることです。

英語が苦手な中学生は「Wednesday(発音はわからない)意味は水曜日。スペリングはウエドネスデイで覚えておこう」と考えます。

この生徒はリスニングを学ぶとき「ウエドネスデイはウェンズデイ」と2つの音で暗記しようとします。バカバカしく感じるかもしれませんが、このような覚え方をしている生徒は意外と多いのです。こんな単語学習では効率が悪すぎて、すぐに頭はパンクしてしまいます。

こんな覚え方をしないように、小学生のうちに英単語を覚えるときの鉄則を身につけて欲しいです。たったこれだけのコツで英語はずいぶんと楽に学べるはずです。

フォニックス教材を使ってゲーム感覚で楽しもう

フォニックスの基礎を子どもに学ばせるとき、市販の教材を利用するのはいいアイデアです。教材といっても高額なものは不要です。3文字英単語(Three-Letter Words)に絞ってカードを使った学習を紹介します。

絵合わせカードでフォニックスを学ぶ

Amazonで「Three-Letter Words」で検索すると多くの教材がヒットします。その中から「3 Letter Words (FlashKids Flash Cards)」Sterling Publishing Co., Inc.を選びました。

このカードは「3文字英単語をアルファベットだけでなく絵合わせによっても並べられる」のが特徴です。価格は467円ととてもリーズナブルです。

3 letter card

割と大きめのカードが届きました。この箱の中に86枚のカード(28単語×3)が入っています。カードの表には「1/3の絵とアルファベット(小文字)」が印刷されています。裏側には「アルファベット(小文字)」だけです。

bag Abag B

イラストは日本の子どもにも親しめる雰囲気のもので、海外の製品にありがちな「クドさ」は感じません。

遊び方

イラスト側を表にして、すべてのカードをランダムに広げます(畳1枚くらい)。次にイラストを参考にしながら3枚のカードを正しく並べます。ここまでは英語がわからなくても参加できるので、弟や妹がいるなら一緒にワイワイやりましょう。

3letterword_card1

cards B次に、イラストの下に書いてあるアルファベットを一音ずつ発音します。

「b・ビー、ブッ、ブッ、ブッ、a・エイ、ア、ア、ア、g・ジー、グッ、グッ、グッ」と子どもに発音させます。ここまではアルファベット表で練習をしているので、問題ないはずです。

大切なのは「音の足し算」です。「ブッ・ア・グッ…bag!」となれば完了です。初めのうちはそれほどスムーズにできませんが、イラストを頼りに少しずつ取り組みましょう。

これを繰り返していくと徐々に3文字英単語が読めるようになっていきます。お母さんの仕事は子どもをほめてやる気にさせるだけです。

裏側の活用

このカードの裏側はアルファベットだけがプリントされています。こちらの面の活用法も考えてみます。

cards C

始めにお母さんが3文字単語を読み上げます。その音を聞いて子どもは「スペリング」を想像しながらカードを並べます。イラストが見えないため、純粋に文字と音の関係を理解していないと単語を作れません。

またお母さんがダイアグラフ(th, sh, chなど)のカードを自作で追加すると「think」などを作れるようになり、さらにバリエーションと難易度を上げられます。こうしてゲーム感覚で楽しみながらフォニックスの基本を身につけられます。

小学校就学前の幼児でも、お兄ちゃんやお姉ちゃんと一緒に遊んでいるうちにフォニックスの基本を覚えてしまうかもしれません。

動画でフォニックスを学ぶなら、リトルフォックスがオススメです。

まとめ

フォニックスは例外や細かいルールが多いので、教育関係者でも否定的な意見を持つ人達がいます。ただ私は、「フォニックスの基本」は身につけたほうが絶対に英語をスムーズに読めると感じます。ただし、細かすぎるルールの学習は不要です。

アルファベットを学んだら、声を出しながらアルファベット読みとは異なる「音」を覚えましょう。それが充分に身についたら、3文字英単語を読めるようにします。3文字の単語は例外も少なく、少し頑張るだけで子どもでも読めるようになります。

3文字英単語の読み方を学ぶときに市販のカード教材を利用すると、弟や妹たちと一緒に遊びながら3文字英単語を学べます。価格も安いので、ひとつ揃えておくととても便利です。

フォニックスの基本が身につくと、少しずつ簡単な英語の本を読めるようになっていきます。文字から覚えた英語は忘れにくい特徴があります。英語学習の効率と定着が劇的に向上するので、時間をかけてしっかりと子どもに教えてあげましょう。

英語のパターンプラクティスはお母さんのジェスチャーで

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スポーツや楽器の練習など技能の向上には、基礎トレーニングは欠かせません。野球なら「素振り」ピアノなら「バイエルン」などが該当します。地味な練習ですが大切です。

英会話の練習にも似たような基礎練習があります。指示に従って、文章の一部を入れ替えながら瞬時に口頭で英作文をする「パターンプラクティス」です。

なぜ、パターンプラクティスが必要かについて説明します。

ある一つの英語表現を覚えたときに、それとまったく同じ文章を実際の場面で使える確率はかなり低いです。例えば、I have a dog. という表現を習ったあと、そのままこのフレーズを使うには、本当に自宅で犬を一匹飼って誰かに説明する場面を待たなければいけません。すべての条件が揃うのはなかなか厳しいです。

でも、誰かの家に遊びに行って「君、犬を飼ってるんだ!」という状況はあり得ます。または、犬ではなくてネコが複数いる状況に置かれるかもしれません。

そのときに、タイミングよくYou have cats. というためには、パターンプラクティスが有効です。パターンプラクティスは、覚えた表現をあらゆる文脈や状況に変換できるように鍛えるためのトレーニングといえるでしょう。

その際、合図の出し方を工夫しないと意味のある練習になりません。今回は私が教員の頃に教わったジェスチャーを使って「パターンプラクティス」をテンポ良く進める方法を紹介します。

簡単に出来て子どももゲーム感覚で楽しめるので、ぜひ取り入れてみてください。

何かと必要な人称のパターンプラクティス

英語の口頭練習を子どもにさせるとき、パターンプラクティスをやらせることがあります。パターンプラクティスとはターゲットの文章の一部を入替えて、できるだけ早く口頭で英作文する英会話の練習方法です。

その中でも最も多いのが、人称(I, You, He, She…など)を入れ替える練習です。いくつかその具体例を見てみましょう。

現在形(いつものこと形)のbe動詞の練習

I am a boy. がターゲット文(子どもに学ばせたいセンテンス)のとき、主語が変わることによってbe動詞(am, is, are)が変化することに慣れさせます。また、a boy/a girl/boys/girlsのいずれかに変えなくてはいけません。

子どもが男の子だったら、例えば次のように練習します。

I am a boy.  You are a boy.  He is a boy.  She is a girl.  We are boys.  You are boys.  They are boys.

具体的に人の写真を見たり、周囲の人達を見たりして練習すると「イメージ→英語に変換」できるようになります。

このときゆっくり紙に書いては効果がありません。テンポ良く口をついて出てくるまで練習するのがポイントです。

所有格の練習

パターンプラクティスでの人称は主格(I, You, Heなど)だけではありません。所有格の練習にも使われます。

ターゲット文:This is my book.

This is my book.  This is your book.  This is his book.  This is her book.  This is our book.  This is your book.  This is their book.

パターンプラクティスではしばしば人称を入れ替える練習が行われますが、そのときに問題になることがあります。それは「いかにテンポ良く人称を伝えるか」です。

ただでさえ単調なトレーニングなのに、間延びした合図を出すと子どもはすぐに飽きてしまいます。

主語を頭に思い浮かべながら適切な動詞を選ぶ練習が必要

「テンポ良く伝える」以外にも、実際にやってみると問題が生じることがわかります。例えばお母さん(A)と子ども(B)の間でこのようなパターンプラクティスをしたとします。

A: When I say “my,” you say “This is my book.”
B: Okay.
A: My.
B: This is my book.
A: Your.
B: This is your book.

実はこのパターンプラクティスは効果的とはいえません。なぜなら、お母さんが答え(my, yourなど)を先に伝えてしまい、子どもはそれを繰り返すだけだからです。これでは何も練習になっていません。

また単数形のyourと複数形のyourの違いも伝わらず、子どもも戸惑ってしまいます。

理想的なパターンプラクティスにするには「イメージ」を与えて、それを子どもに英語に変換させなければいけません。では一体、どうやったらいいのでしょうか。

ジェスチャーで示せば解決する

これから紹介するテクニックは私が教員時代に指導教諭から教わったものです。家庭でも簡単に応用できるので、試してみてください。

  • 1人称(I, my, me)は自分を指す

1人称単数

  • 2人称(you, your, you)は相手を指す

2人称単数

  • 3人称(he, his, him)は隣を指す

3人称単数 he

  • 3人称(she, her, her)は隣を指す

3人称単数 she

*複数形は両手で表現する

1人称複数

2人称複数

3人称複数

*itを使わせたいときは指で表現する

it

テンポ良く

試しに先ほどのターゲット文であるThis is my book. のパターンプラクティスをジェスチャーで練習してみます。

お母さんはこのように示します。

3人称複数

子どもはそのイメージから「their」を頭に思い浮かべます。そして、“This is their book.”と間髪置かずに口頭英作文をします。すぐにお母さんは次の人称ジェスチャーを見せます。

もし子どもの反応が遅すぎたら、理解が充分でない可能性があります。もう一度復習してから、パターンプラクティスに移行しましょう。

始めのうちは「1人称単数→2人称単数→3人称単数→1人称複数→2人称複数→3人称複数」の順番で進めていきます。慣れてきたらランダムに切り替えます。テンポ良くやると子どもはゲーム感覚で頑張ろうとして、結構盛り上がります。

あなたの家族の名前など具体的な人を当てはめて練習するとより現実感のある練習ができます。パターンプラクティスはどうしても単調になりがちなので、いろいろ工夫をしてバリエーションをつけましょう。

「一回でできるように」と焦らずに数日に分けて少しずつ練習すると、子どもが飽きるのを防げるし効率の良い復習ができます。

まとめ

英語の基本センテンスを覚えたあと、いろいろな文脈で使用できるようにするためにパターンプラクティスは有効な練習方法です。その際、人称を入れ替えて基本センテンスをもとにして瞬時に口頭英作文をすることがしばしばあります。

このときに人称をジェスチャーで示してあげると「イメージ→英語に変換」の作業がスムーズにできるようになります。最初にお母さんと子どもの間で取り決めをしておけば、その後ずっと使えるので便利です。

パターンプラクティスは単調になりがちな練習です。テンポ良く短めに練習することを心がけましょう。具体的なイメージを交えたりしながら変化をつけて子どもが飽きないようにしましょう。.

 

子どもの英語教育に熱心なお母さんへお伝えしたいこと

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あなたは子どもの頃、スポーツをしていましたか? 一生懸命プレーしている試合中、親が「何やってんだ〇〇! もっと速く走れ!」と大声で叫ぶ声が聞こえてきて嫌な気分になりませんでしたか?

私は少年野球をしていましたが、チャンスで打てないときやエラーをしたときに父親の怒鳴り声を聞いて「自分の子どもには絶対にこんなことは言わない!」と誓ったものです。

あれから数十年後。自分が親になり、あれほど嫌だった親の言動と同じことを言ってしまいそうになる自分がいます。そんなときは子どもの頃の自分の誓いを思い出すようにしています。

お母さんが英語教育に熱心なのは良いことです。しかし、それはあくまでも子どもの立場からサポートすることが前提です。子どもを自分の所有物のように扱ったり、すべてにおいて自分の命令に従わせようとしたりするのは間違っています。

英語教育の最悪の失敗は子どもを「英語嫌い」にしてしまうことです。本来、学ぶことは楽しいはずなのに「嫌な感情」を抱いてしまったなら、それは大人の責任です。

子どもが自らの意志で「もっと英語を学びたい」と思えるようにお母さんはサポートしましょう。その際「何を心がけなければいけないのか」について解説します。
勉強中の母娘

英語教育に熱心なお母さんが陥りがちな誤りとは

英語教育に熱心なお母さんに「なぜ、子どもに英語を学ばせたいのですか?」と質問すると、ほとんどの回答は次の3つに集約されます。

ひとつ目は「私は英語が苦手だったので、子どもには得意になって欲しいから」です。お母さんの英語コンプレックスが子どもの英語教育に駆り立てているパターンです。

コンプレックスが強いと子どもの英語教育に熱心になり過ぎる傾向があります。その結果、子どもの適性や自主性を無視して子どもに苦痛を感じさせる危険性が高まります。いわゆる「教育虐待」です。

ふたつ目は「これからの時代、英語を話せるのは必須だから」です。一見合理的に見える答えですが、子どもが成人する20年後の世界で何が必要とされるかなど誰にもわかりません。

私が高校生のとき(1980年代後半)社会の先生が「君たちが大人になったら衛星を通じてテレビ放送されるのが主流になる時代が来るよ」と雑談していたのを覚えています。いわゆる衛星放送(BS)です。

確かにその後すぐに衛星放送は始まりました。しかし、インターネットの出現は先生には予見できませんでした。大人ができる将来予想など現在の延長線でしかなく、まったく新しい未来など誰にも想像できません。

私は人口予想以外の未来予想はほとんど無意味だと思っています。誰にも準備できるものではなく、ただ変化に対応できるようにするだけです。

3つ目の答えは「英語ができると入試に有利だから」です。確かに英検の取得級によっては受験で加点されるなどの優遇措置があったり、大学受験では英語配点が高かったりします。

しかし、子どもの適性もわからないうちから大学進学する前提で話を進めているのは変です。また、入試の配点など小学生くらいの子どもにとっては正直「どうでもいい」話です。

「自身の英語コンプレックス克服」「時代の先読み」「入試における英語偏重」の3つの答えには共通して欠けている観点があります。それは、「子どもの立場で考えていない」ことです。

最悪なのは英語嫌いにしてしまうこと

子どもの英語教育で最悪の失敗は「子どもを英語嫌いにしてしまうこと」です。親のコンプレックスなど子どもには関係のない話です。時代の変化や入試での優位性についても、子どもには理解不能でしょう。

お母さんの意見を押しつけられて無理やり英語をやらされていたら、たまったものではありません。

英語はただの言語です。英語を主言語とする国では普段語として使われています。また、世界共通語としての役割もあり、世界中の人とのコミュニケーション手段として重宝されています。「嫌いになる」対象ではありません。

英語を通じて学べることに楽しさや喜びを子どもが感じられるように、お母さんがサポートするのが理想です。

私も親なのでお母さんの気持ちはよくわかります。私は水泳が苦手で今でもカナヅチです。学生の頃、友達から海に誘われると憂鬱でした。そのため息子には「水泳が得意になって欲しい」と強く思っていました。完全なコンプレックス型です。

しかし、息子も水泳が苦手で、プール教室に通っても全然上達しませんでした。イライラして子どもに文句を言いそうになったこともあります。かろうじて我慢しましたが、子どもに私の気持ちは伝わっていたかもしれません。

幸い指導の上手な先生に恵まれて人並みに泳げるようになり、プールを楽しいと感じるまでになりました。もしあのとき私が口やかましく水泳を押しつけていたら、むしろ私が願う方向と反対の結果になったはずです。

大切なのでもう一度繰り返します。最悪なのは子どもを「英語嫌い」にしてしまうことです。

子どもの立場で考えること

子どもの最大の利点は「好奇心が強い」ことです。この特性を最大限に活用して英語学習をさせると自発的に英語を学ぼうとします。何かに興味を持ったときの子どもの学ぶパワーは相当なものがあります。

私が小学校低学年までの子どもにおすすめしている「英語絵本の読み聞かせ」は、「楽しいストーリーを読みたい」「続きがどうなるのか知りたい」という子どもの好奇心を刺激します。

このとき英語は無理にやらされる勉強ではなく、好奇心を満たすために必要なことです。だから「英語についてもっと知りたい」という気持ちに子どもを駆り立てます。

もちろん面倒な暗記もときには必要です。しかし、その対価として「楽しさ」や「喜び」を得られるとわかれば子どもの英語学習への姿勢が異なってきます。

いったんお母さんの心にある英語への思いは胸にしまっておきましょう。そして、子ども目線でどうしたら知的に楽しく学べるのかを考えてみましょう。

最高にオススメなのが、英語の動画がたくさん見られるリトルフォックスです

英語が得意なお母さんも気をつけよう

強い英語コンプレックスが子どもの英語教育に向かうとあまりいい結果につながらないのと同様に、英語が得意なお母さんが子どもを苦しめてしまうことがあります。

これに関して私にも苦い思い出があります。私は英語が得意でしたし、かつて高校の英語教員でした。ところが自分の息子に英語を教えるとなると、本当に難しいことばかりでした。

もちろん教える内容が難しいのではありません。子どもへの接し方や教え方が難しいのです。恥ずかしい話ですが、子どもにわからない文法用語を多用したり、正確さを求めすぎて怒ってばかりしていたりしたことがあります。

また答えを与えすぎて、子どもが自ら法則を見つけ出す学ぶ喜びを奪ってしまうことも多々ありました。

子どもの英語の伸びが悪く、すぐに自分の誤りに気がつきました。そこで、全面的に指導法を見直しました。本を一緒に楽しんだり、子どもに考えさせる余地を与えたり、不正確な英語でもあえて無視したりするようになったのです。

英語が得意なお母さんも、子どもに英語を教えるときには細心の注意が必要です。

デンマークサッカー協会による「子どものサッカー指導者向け10カ条」

サッカー強豪国であるデンマークのサッカー協会による「子どものサッカー指導者向け10カ条」があります。英語とサッカーは無関係に感じるかもしれませんが、子どもに大人が何かを教えるという点では共通です。

そして忘れてならないのは「デンマークが世界でもトップクラスの教育先進国」であることです。サッカー関係者だけでなく、教育に関係するすべての大人は理解しておいたほうがいい示唆に溢れています。

10カ条の紹介

  1. 子どもたちはあなたのモノではない。
  2. 子どもたちはサッカーに夢中だ。
  3. 子どもたちはあなたとともにサッカー人生を歩んでいる。
  4. 子どもたちから求められることはあってもあなたから求めてはいけない。
  5. あなたの欲望を子どもたちを介して満たしてはならない。
  6. アドバイスはしてもあなたの考えを押し付けてはいけない。
  7. 子どもの体を守ること。しかし子どもたちの魂まで踏み込んではいけない。
  8. コーチは子どもの心になること。しかし子どもたちに大人のサッカーをさせてはいけない。
  9. コーチが子どもたちのサッカー人生をサポートすることは大切だ。しかし、自分で考えさせることが必要だ。
  10. コーチは子どもを教え導くことはできる。しかし、勝つことが大切か否かを決めるのは子どもたち自身だ。

このような10カ条が発表される背景には、サッカー指導において子どもとの接し方に問題のある大人が多いからです。日本だけの問題ではなく世界中で見られる問題です。だからこそ、大人が意識して気をつけなければいけないのです。

英語に当てはめて考えてみる

サッカー10カ条を英語教育に当てはめてみると、私たち大人の振舞いについてどうあるべきかが見えてきます。

1と5は、英語コンプレックスを持つお母さんには特に気をつけてもらいたいです。子どもには子どもの人生があるので、自分の意のままにしようとしてもいずれ破綻します。

私は4・6・9が心に刺さりました。つい答えを与えることで満足してしまい、子どもの頭で考えさせる機会を奪っていたからです。正しいことを伝えることは簡単ですが、本当に子どものためになるかどうかは真剣に考えなくてはいけません。

スイスサッカー協会の保護者むけポスター


おとなのみなさんへ

 

「ぼくたちのゲームを観に来てくれて、そしてぼくたちのこと、ぼくらのサッカーのことを気にかけてくれてどうもありがとう」

 

今日はぼくたちの1日

 

「ぼくたちは、サッカーをするのが楽しくて大好きなんだ。もちろん、ぼくらのうちのだれが勝っても楽しいんだ。でもぼくらにとって一番大事なのはプレーすることなんだよ」

 

だから、プレーをさせておいてください

 

「大声でさわがないでね。相手のチームや応援に対してもフェアな態度をとってね。ミスをしたからって、いちいち言わないで。そんなことを言われたらがっかりだし、言われたからってそう簡単にうまくできるようにはならないんだ」

 

すべてのこどもより

これはスイスサッカー協会が子どものサッカーを観戦する保護者むけに掲示したポスターの内容です。すべての大人はかつて子どもだったのに、いつの間にか当時の気持ちを忘れてしまいます。上記のポスターの内容は私が子どもの頃親に言われて嫌だったことそのものです。

私は少年野球で内野ゴロを打ち試合に負け、父親にけなされました。そのとき「大人になったら俺はこんなこと子どもには言わないぞ」という記憶がよみがえってきました。あなたにも一つくらい同じような経験があるはずです。

自分の子どもには同じ思いをさせてはいけません。

「何のために学ぶのか」の原点を忘れずに

本来「学ぶこと」は楽しいはずです。できなかったことができるようになったり、知識が膨らむと見える世界もグングン広がったりするからです。初めて自転車に乗れるようになって、生活圏が急に広がったときの感覚です。

人間の究極の目的は「幸せに生きること」です。AI(人工知能)の出現によって翻訳機能が完成され英語学習は不要になるという意見があります。本当かもしれないし、違うかもしれません。

しかし、AIには人間の学ぶ喜びを妨げることはできません。あらゆる分野で人間の能力を凌駕しても、知識欲は減退しないはずです。速く走る車やバイクが登場しても、陸上競技で速く走るために一生懸命練習する選手が消滅しないことを見れば明らかです。

私など大人になっても英語の歌の歌詞が聴き取れたり、自分で口ずさめたりすると嬉しいと感じます。翻訳機では決してこの喜びは味わえないでしょう。

人間の本能でいろいろなことを知りたいし、何かができるようになると幸せを感じます。お母さんが子どもの英語学習をサポートするときの接し方を考えるとき、子どもが「学ぶことの喜び」を感じられるように配慮しましょう。

まとめ

子どもに英語を学ばせたいと願うなら、子どもの立場で考えてあげないと「英語嫌い」になってしまう確率が高いです。英語は言語であり、そもそも「嫌い」になる対象ではありません。

例えば親子で英語絵本を楽しんでいて「続きを知りたい」欲求を満たすために学ぼうとするのが、本来のあるべき姿です。お母さんの考えや願望はもちろん理解できます。しかし、それは心の中にしまっておくほうが賢明です。

デンマークの「子どものサッカー指導者向け10カ条」を紹介しました。ひとつひとつ熟読すると、ほとんどのお母さんは一つくらい反省点が見つかるはずです。

「学びたい」「知りたい」という感情は、人間の基本的な欲求のひとつだと思います。そこを刺激してあげられるようにサポートするのが理想的な「英語教育に熱心なお母さん」の姿です。

私も一人でも多くの子ども達が「英語っておもしろい!」と感じてくれるように、お手伝いできればと考えています。一緒に頑張りましょう。

知る人ぞ知る「英語発音検定」を受験しました

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「英語の発音が悪いので、子どもの前であまり英語を話せない」と発音に苦手意識を持っているお母さんはいませんか? 発音に自信のない日本人はかなりいますが、私は「あまり気にしなくてもよい」と感じます。

日本人が目指すべきは「相手がストレスなく聴き取れる」発音を身につけることであり、ネイティブのような発音ではありません。あなたの英語の発音が悪くても、その後の学習過程で他人の英語をたくさん聞くので心配し過ぎなくても大丈夫です。

ただ、これまで自分の発音を客観的に測定してもらったことのあるお母さんはほとんどいないでしょう。また、子どもの英語を聞いていて「何か違う」と感じていても、どこをどのように改善したらいいのかよくわからないお母さんもいるはずです。

今回紹介するのは「英語発音検定試験」です。初耳のお母さんがほとんどと思いますが、2012年に発足した国際英語発音協会が主催する英語の発音に特化した試験です。

内容的に英検3級レベルから受験可能です。英語学習中の子どもはもちろん、子どもに絵本を読み聞かせ中のお母さんも一度受験しておくと、その後の発音改善の大きなヒントを得られます。

せっかくなので私も「英語発音検定試験」を実際に受験してみました。その体験記と併せて「英語発音検定試験」について解説します。

英語発音検定とは

ほとんどのお母さんは「英語発音検定試験(以下、発検)」について聞いたことがないはずです。実は私も知人に教えてもらうまで、一度も聞いたことがありませんでした。

英検やその他の検定試験と比較して、発検は「進学や就職で有利になるもの」ではありません。外に向けてアピールするのではなく、「自分の英語の発音をより改善するための指針を示すもの」です。

知名度の低い検定試験なので、はじめに概要を説明します。

主催団体

発検の主催団体は「一般社団法人 国際英語発音協会(English Pronunciation Association)」です。2012年に設立された比較的新しい団体で、ホームページを見るととてもシンプルです。

英語発音検定

大阪に所在地があり、顧問の中には大手予備校のカリスマ講師として有名な安河内哲也さんがいらっしゃいます(俳優の大泉 洋さんそっくりです)。

設立の趣旨

国際英語発音協会サイトのトップページに設立の趣旨が掲載されているので、一部を引用します。

主たる活動は英語発音検定試験(EPT)の実施及び英語発音指導士®の養成、認定です。 近年、英語教育の中でもスピーキングの重要性がクローズアップされています。しかし、そのスピーキングの基礎となる「英語発音」、「イントネーション」、「相手に通じるかどうか」のレベルを確認する手段が限られていました。結果として、自身の弱点を理解し、レベルアップのポイントを見つけることが難しいという声を耳にします。 当協会の発音検定は「ネイティブスピーカーにとっての聞き取り易さ」を出来るだけ客観的に判定し、受験者の長所、短所をお示しすることに主眼をおいています。 世の中に英語発音のメソッド、指導者は数多く存在します。しかし、指導者の発音レベル、指導方法について一定レベルに達した方を指導者として認定する機関はありませんでした。 当協会は特定の発音メソッド、指導方法を推奨する機関ではありません。一定レベルの英語発音を備えた方を対象に研修を通じ英語発音指導の要領を理解いただき、研修終了者を英語発音指導士®として認定します。

国際英語発音協会サイトより一部引用

「検定試験の実施」と「英語発音指導士の養成・認定」が活動内容の2本柱です。英語教育に携わる人以外、後者は関係ありません。

確かに英語の発音だけにフォーカスして、指導者の発音レベルや指導法について認定する機関は他に聞いたことがありません。

小学校でも英語教育が実施されている中で、小学校の先生もこの資格を取得しておけば保護者も安心して英語教育を任してくれるようになるかもしれません。何よりも自分が自信を持って大きな声で英語を話せるようになるのがメリットです。

試験の形態

肝心の検定試験には、3つの受験形態があります。

*会場受験

東京または大阪、いずれかの会場で決められた時間に受験をします。

*オンライン受験

会場受験が難しい人のためのSkypeを使用した試験です。

*団体特別受験

書類審査で事前に認可された団体が指定した日時や会場で受験できるシステムです。最低5名から可能です。

会場受験 オンライン受験 団体特別受験
場所 東京または大阪 自宅で受験可能 団体が指定
日時 協会が指定した日時 リストから自分で選ぶ 団体が指定
費用(税込)

*前払い

4,860円

詳細審査は9,720円

4,860円

詳細審査は9,720円

4,860円
必要なもの 身分証明書 身分証明書 身分証明書
備考 年3回開催 パソコン、ヘッドセット、インターネット環境が必要

PayPalによるカード決済も可能

5名以上から受験可能

上記の表で確認できるとおり、オンライン受験が最も手軽でおすすめです。試験時間は5分強で終了するので、そのためにわざわざ遠方から会場まで移動するのはおっくうです。

2つの試験と評価について

「発検(English Pronunciation Test:EPT)」は初見文、課題文などを音読する形式のテストです。「〇級合格・不合格」ではなく、100点満点で測定されます。

2018年2月からは英語初心者のために「EPT Basic」が開始されました。英検3級程度のレベルなら、EPT Basicを選びましょう。

EPT EPT Basic
対象レベル 150文字ほどの英文を初見で読める力のある人 例題の単語と簡単な英会話が読める方
問題1 簡単な英語の質問に答える 簡単な英語の質問に答える
問題2 アルファベットの読み上げ アルファベットの読み上げ
問題3 短い会話文 単語ペアを15個音読
問題4 初見の英文(100ワード強)を30秒間黙読してから音読 単語15個を音読
問題5 課題文3つのうちから1つを指定されて音読 会話文を音読
問題6 フレーズを10個音読

ホームページから評価ポイントを引用してみます。

特定地域のアクセント(アメリカ英語など)に限定せず、いかに多くの聞き手にとって分かりやすく自然に発話されているかを、個々の発音、リズム、イントネーションなどの側面から多角的に判定します。試験終了後にはスコアと共にコメントを付けてお送りしますので、今後の学習に役立てることができます。

 

国際英語発音協会サイトより引用

つまり、ネイティブのように発音することではなく、多くの聞き手にとってわかりやすく自然に発話されているかが評価されます。国際語として英語を使うときには、とても大切な観点でありきちんとツボを押さえていると感じました。

###英検3級ならEPT Basicがおすすめ

子どもが英語を学んで小学校6年生までに英検3級を取得できたら、大成功といえるでしょう。一般的に英検3級は中学校卒業時に到達しているのが望ましいとされているレベルです。

普通の小学生にはハードルが高いですが、もしこのレベルに到達しているなら一度EPT Basicを受験してみることをおすすめします。

発音に関しては大人になってからよりも、若いうちに修正したほうが圧倒的に短時間で済むからです。目的はノンネイティブの人々にもきちんと伝わる英語の発音を身につけることです。

中学に行く前に客観的に自分の発音の評価をしてもらえば、早い段階でより理想的な発音ができるようになります。

EPTでもEPT Basicでも、スコアと一緒にコメントがつくので学習に役立てることができます。より詳細なレポートが欲しい場合は、「詳細審査」が可能です。ただし、受験料は2倍になるので普通の学習者には不要でしょう。

オンライン受験体験記

知人から「発検」の存在を聞き好奇心がムクムクと沸き上がった私は、すぐに申し込みを決意しました。EPTの詳細審査で受験料は9,720円でした。詳細審査にしたのはより細かいレポートが欲しかったからです。

会場受験でも良かったのですが、時間節約のためにオンライン受験を選びました。

予約方法

国際英語発音協会のサイトから受験予約はできます。支払いは口座振替またはPayPalの決済システムを利用してクレジットカードでの決済も可能です(オンライン受験のみ)。

申込と支払いが終わると登録したe-mailのアドレスに「発検受験受付完了のお知らせ」のタイトルでメールが届きます。そこに指定されたスカイプ名にリクエストするように指示がありました。

スカイプを使用する

オンライン英会話と同じく、Skype(スカイプ)というテレビ電話機能を持つアプリケーションを使用します。そのためインターネット環境とヘッドセット(下の写真参照:またはマイク付きのイヤホン)は必須です。

画面共有により問題文を見る都合上、画面の小さいスマートフォンでの受験はやめたほうがいいです。最低でも画面の大きなタブレットかパソコンが必要です。

スカイプでは「音声だけで会話をする」か「映像と音声で会話をするか」選べます。発検では必ず映像+音声を選びます。受験生から試験官の顔は見えませんが、身分証明書の提示や画面共有機能を使うために映像が映るようにしなければいけません。

準備

数日前から3つの課題文の音読を練習しました。このうちの1つが出題されます。難解な英語は一切ありませんが、数字がところどころに登場したり、日本人に馴染みの薄い固有名詞(アメリカの都市名など)がちりばめられていたりします。

国際英語発音協会のサイト上には米国人男性と英国人女性による録音のサンプルがそれぞれの課題文にあります。私は米国人男性の音声を参考にして、それぞれ4回ずつ音読練習しました。これを3日間続けたので、ひとつの課題文につき12回練習したことになります。

普段なら問題なく読める英文です。しかし「パーフェクトに読みたい」気持ちが強くプレッシャーがかかるので、簡単な箇所でも詰まることがあります。モデルの音読スピードは比較的ゆっくりでした。それに合わせて飛ばし過ぎないようにセーブしながら練習しました。

当日

試験10分前にスタンバイを完了しました。始まるまでの時間は長く感じます。開始時間ちょうどにスカイプにコールが入りました。女性の声が聞こえ、身分証明書の提示を求められました。カメラに免許証を近づけて終了です。

試験は画面共有(双方で同じ画面が見られる)機能を使って、問題文を提示されます。始めは簡単な英語の質問に英語で答える問題です(ごく初歩レベルです)。名前と今日の日付は高確率で質問されるので、間違えないようにしましょう。

アルファベットがランダムに並べてあるものを一文字ずつ読みあげる問題は、簡単すぎてかえって緊張します。アルファベットを真面目に音読する機会はほとんどないので、脇汗が流れるのを感じました。

その後対話文を読みますがこれは難なく終了。疑問文のイントネーションを確認しているのでしょう。

続いて初見の英文の音読です。100文字強の長さの文章を最初に30秒黙読します。その後、音読を開始します。

「100文字を30秒で黙読する」を1分間で換算すると200文字のペースで黙読しなければならないことになります。かなりの英語上級者でないと最後まで読み切るのは不可能なペースです。

黙読の段階で確認しておくことは、「何の話か」「読みづらい単語はないか」くらいが精一杯です。

意識して大きめの声と落ち着いたスピードで音読することを心がけました。目立った失敗はなかったので、「実力は出せたかな」と感じました。

課題文は準備までに練習を積んだので問題なく読めました。

「結果は2週間以内にメールでお知らせします」と伝えられて、試験は終了しました。所要時間は6分程度でした。あっという間です。

こんなにすぐに終わるなら会場受験するメリットを感じられません。オンライン受験にして正解でした。

結果発表

受験からピッタリ2週間でメールにPDFが添付される形で結果が届きました。
発音検定スコア

スコアは85点(ハイレベル)。あと1点取れていれば「指導者レベル」だったので残念です。
発音検定スコアの見方
私はオプションで詳細審査をつけたので、細かいレポートがついてきました。

これによると、「母音のアの区別があいまい」なのと「アクセントの箇所をもう少し長めに発音する」の2点が指摘されていました。薄々は自分の弱点を感じていましたが、他の人からキチンと指摘されたので今後の参考になりました。

ちなみに、英検1級の2次試験に合格したときの成績表では発音の項目は9/10でしたので、かなり正確に評価されていると感じました。

音読トレーニングをしていれば、発音やイントネーションは上手になります

英語発音検定の活用方法

英語発音検定の受験動機は主に2つあります。ひとつは学習者が英語の発音を良くするヒントを得るためです。子どもやお母さんが受験するのはこのケースです。

もう一つは、主に英語を教える立場の人が「英語発音指導士」の資格取得を目的に受験するケースです。90点以上のハイスコアを出した人だけが受講できる講座を受けたのちに資格を得られます。

英語が得意な子どもが受験した場合の活用方法

英検3級相当の子どもが「発検」を受験した場合、スコアそのものに一喜一憂する必要はありません。そうではなくて認定証に掲載された「通じにくい音」「間違って発音されている音」を自覚できることに価値はあります。

th

例えば上記の記号に赤字が入っていれば、thanks, three, Thursdayなどの発音が苦手であることがわかります。今後はこの音を意識して矯正していけば効率良く発音を改善できます。

「子どもに英語絵本の音読をしてみたい」というお母さんにも「発検」はおすすめです。直したほうがいい発音のポイントが客観的にわかれば改善できるからです。また、自己評価よりもよいスコアであれば自信につなげることができます。

ちなみに、スコアが86点以上は「指導者レベル」、71~85は「ハイレベル」、56~70「英語発話学習者平均レベル」とサイトで紹介されています。

子どもの受験者とお母さんなら「56~70点を目安に」頑張ってみましょう。

まとめ

英語関連の資格試験としてはかなりマイナーな「英語発音検定試験」は、比較的新しく発足した「国際英語発音協会」が主催しています。サイトでも述べられている通り、ネイティブのような発音ではなく、「誰にでも通じる発音」を目標に設定されています。

受験には「会場受験」「オンライン受験」「団体特別受験」の3つの形態があります。個人で受験するなら私のおすすめは「オンライン受験」です。理由は日時が選べて自宅で受験できるからです。

試験は受験者のレベルに合わせて、「EPT」または「EPT Basic(初心者向け)」のどちらかを選択します。

私は前者を実際に受験してみました。簡単な文章でも、読み間違えに細心の注意を払うので意外と緊張します。試験時間は6分程度であっという間に終了します。結果は2週間以内に通知されます。

認定証には受験者の発音の弱点や誤りにチェックが入るので、今後の自分の発音矯正にとても役立ちます。子どもだけでなくお母さんも受験してみると、子どもの前でも堂々と英語を発音できるようになるのでおすすめです。

発音は意識しないと改善されません。「発検」を受験することで、自分の発音に意識を向けるきっかけになります。気軽に受けられる試験なので、子どもと一緒にお母さんも受験してみましょう。

小学生向けおもしろい英語なぞなぞでボキャブラリーと社交力アップ!

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子どもの友達が家に遊びに来ると、お母さんはその子と話をする機会があります。そのときに楽しく子どもと会話ができているでしょうか? つい、一方的に質問していませんか?

私なら「なぞなぞ」で盛り上げます。例えば「おやつ食べる?」と聞いておいて、「なぞなぞに正解したらあげるよ」と盛り上げます。ほとんどの子どもはこれに喰いついてくるので、知っているなぞなぞをいくつか出します。

子どもはなぞなぞに答えられればうれしいし、できなければ悔しいと感じます。でも同時に「だまされた爽快感」を覚えています。だから大人と子どもの心理的な距離が近くなり仲良くなれるのです。

英語でもいくつかなぞなぞをストックしておくと、外国人と交流があるときにとても重宝します。インターネットで検索するとたくさんヒットするので、お気に入りのものをプリントアウトしておきましょう。そして子どもに出題してみましょう。

少しくらいわからない単語があっても子どもは夢中になって読もうとします。そのため英語の学習にも「なぞなぞ」は適しているといえます。

大人の私が3回も引っかかった英語なぞなぞ!

英語の「なぞなぞ(riddles)」と聞くと必ず思い出す女の子がいます。マレーシアのインター校に息子が通っていたとき同級生だったキャリーです。

読書ボランティアをしていた関係で、学校で私を見かけるとときどき話しかけてくれました。頭も良くスポーツ万能の少女でした。そんな彼女はなぜか私に「なぞなぞ」を挑んでくるのです。

不敵な笑みを浮かべながら出題してきます。「大人が引っかかるわけないだろ」と甘くみていましたが、結果的に私は3回も引っかかってしまいました。

私が “You got me again!” (また、だまされた!)と悔しそうにすると、嬉しそうに去っていくのでした。この記事を読んでくれているお母さんにも同じ問題をだすので、チャレンジしてください。

*「Year 3」と書いてあるのは、私に出題したときのキャリーの学年です。

正解は記事の一番下(まとめのあと)に掲載します。

英語なぞなぞ:Year 3 編

Question 1: Do you know a pen with no body and no nose?
(胴体と鼻がないペンを知っている?)

ここでのnoseとはペン先のことです。

body, nose

英語なぞなぞ:Year 4 編

Question 2: Once upon a time, there was a cat which fell into a river.  A black cat saved the cat from drowning.  At the riverbank, what did the cat say to the black cat?
(むかしむかし、川に落ちたネコがいました。黒ネコはそのネコがおぼれているのを助けました。河岸でそのネコは黒ネコに何と言ったでしょうか?)

a black cat and a white cat

save A from -ing:  Aが~するのを救う
riverbank: 河岸

英語なぞなぞ:Year 5 編

最後は暑い日差しの中、ベンチでリラックスしていたらキャリーに不意を突かれた問題です。

Question 3:

Carrie: Hi.  Say exactly what I am saying. (私が言うとおりに言ってみて)
私: Okay. (いいよ)
Carrie: Blue, blue, blue.
私:Blue, blue, blue.
Carrie: Blue, blue, blue, blue, blue.
私:Blue, blue, blue, blue, blue.
Carrie: What is the colour of the sky? (空の色は何色?)
私: Blue?
Carrie: Ha, ha!
私: ?

blue sky

・息子も引っかかる

上記3つの問題はすべて家に帰ってから息子に試したところ、すべて引っかかりました。親子でキャリーにだまされてしまいました…。

なぞなぞの楽しいところは、だましてもだまされても「爽快感」が得られるところです。最初にだまされると、そのなぞなぞを覚えて他の誰かに試してみたくなります。

その際は問題文をまるごと暗唱しなければならないので、英語の勉強にもなります。

子どもがハマる! リスニング学習法を学ぶにはこちらの動画セミナーをご覧ください

なぞなぞに挑戦しよう

私の持ちネタは先ほどの3つで終わりです。もしお母さんがもっと他にもなぞなぞを知りたいなら、インターネットで「riddle for kids」と検索すると子ども向けのなぞなぞサイトがヒットします。riddleは英語で「なぞなぞ」のことです。

そのうちのひとつである「100 Brain Teasers with Answers for Kids and Adults」から、子ども向けのriddleを5つ引用します。teaseは「からかう、いじめる」の意味なので、brain teaserとは「脳をいじめるもの」の意味です。「なぞなぞ」の別の言い方です。

それぞれ必要とされる能力が異なるので、子どもと一緒に考えてみましょう。

Q1. 一般常識が問われる英語なぞなぞ

There are three houses.  One is red, one is blue, and one is white.  If the red house is to the left of the house in the middle, and the blue house is to the right to the house in the middle, where is the white house?
(3軒の家があります。ひとつは赤、ひとつは青、もう一つは白です。もし赤い家が真ん中の家の左で青い家は真ん中の家の右なら、白い家はどこでしょうか?)
In Washington, D.C.! (ワシントンD.C)

紙に絵を描いてまじめに考えていたら絶対にできません。「ホワイトハウスがアメリカ大統領の家である」一般常識がないと正解できません。

Q2. とんちが問われる英語なぞなぞ

You are in a cabin and it is pitch black.  You have one match on you.  Which do you light first, the newspaper, the lamp, the candle, or the fire?
(あなたは山小屋にいて、真っ暗です。あなたは何に最初に灯りをともしますか? 新聞紙、ランプ、ろうそく、それとも暖炉ですか)

pitch blackはpitch darkともいわれて「真っ暗」の意味です。
最後のfireはかまどのことです。

You light the match first! (マッチが最初)

ここでのlightは「火をつける」という意味の動詞です。

Q3. 文法力を問われる英語なぞなぞ

Who is bigger: Mr. Bigger, Mrs. Bigger. Or their baby? (どちらが大きいでしょうか。ビッガーさん(夫)かビッガーさん(妻)か。それとも彼らの赤ちゃんか。
The baby, because he is a little bigger. (赤ちゃん。なぜならちょっとだけ大きいから)

赤ちゃんだから「a little」をつけると、a little biggerで「少しだけ(より)大きい」の意味になります。だから、Bigger夫妻よりも大きいのです。

Q4. 熟語力を問われる英語なぞなぞ

A farmer has 17 sheep and all but nine die.  How many are left?
Nine.

これは意外と難しいです。ポイントはall butには2つ意味があるところです。

ひとつ目は「ほとんど」の意味。だから、「ほとんど9匹が死ぬので、17-9=8匹」となり、残りは8匹です。

もう一つは「~を除いてすべて」の意味です。だから、「9匹を除いてすべて死ぬ」ので残りは9匹です。

Q5. 常識がかえって邪魔になる英語なぞなぞ

In a year, there are 12 months.  Seven months have 31 days.  How many months have 28 days? (1年には12か月あります。7か月は31日まであります。28日あるのは何か月ありますか?)
They all do. (全部の月にある)

theyはmonthsのこと。すべての月には28日はあるので、これが答えです。

つい夢中になって読んでしまうのがriddleのいいところ

「なぞなぞ」の良いところは、時間を忘れてつい読んでしまうことです。英語を読むとなるとつい「勉強モード」になってしまいます。でも、なぞなぞなら楽しみながら読み進めることができます。

私も小学生のときなぞなぞの本を借りてきて、兄弟に出題して相手が引っかかると喜んでいました。お母さんが出題して子どもをひっかける。次に子どもがその問題文を暗唱して、お父さんや兄弟に出題してみる。お父さんや兄弟がだまされたら、子どもは大喜びです。

問題文では疑問文が使用されているので、疑問文を習ったばかりの子どもの練習にもなります。特にWh-やHowから始まる疑問文では、「何を聞かれているのか」「どのように答えるのか」を考えなければいけません。

英語なぞなぞをいくつか知っておくと、社交の場でも役に立つ

「なぞなぞ」をいくつかを覚えておくと、意外な場面で役に立ちます。例えば、海外に行ったとき同じ年代の子どもと仲良くしたい場合、なぞなぞをいくつか知っておくだけで仲良くなれます。

海外旅行に行ったとき、プールサイドで遊んでいる子どもの相手をしてあげるときに役立ちます。あまりやりすぎると“Mommy!”と親に言いつけに行くのでほどほどにしておきましょう。

まとめ

なぞなぞは出題しても解答しても楽しめます。英語ではなぞなぞのことはriddleといいます。インターネットではたくさんのなぞなぞが紹介されているので、お母さんは子どもに出題してみましょう。

一口になぞなぞと言ってみても、正解するためには一般常識や英語表現などを知っておく必要があります。雑学も増えるし英語の語彙力もアップするのでおすすめです。

お母さんから子どもに出題したら、子どもはその問題文を暗唱します。兄弟やお父さんに出題すれば今度は自分がだます側になれるのでモチベーションがアップします。

また、外国人の子どもと触れ合う機会があったときに英語でなぞなぞを覚えておくと仲良くなるチャンスが広がります。英語教室の先生に出題しても楽しそうですね。

キャリーのなぞなぞ正解と解説

Q1. Nobody knows. (誰にもわからない)

日本語に訳すと意味がわかりません。英語で読むと、no body, noseと同じ発音になります。

Q2. Meow. (にゃーお)

まあ、確かに。

Q3. What is the colour of the sky?

「同じことを繰り返して」と言われているので、まともに質問に答えた私が負け。

そういえば昔、「ピザって10回言ってみて」のあとヒジを指して「じゃあここは?」と問われて、「ヒザ!」と答えて恥ずかしかったことを思い出しました。

小学生にもわかるように比較表現「than」「as~as」を解説します

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お母さん世代なら覚えているでしょうが「than」や 「as ~ as」を使った比較表現は中学校で習いました。この頃に扱われる比較表現は簡単なので多くの生徒にとって理解は難しくありません。

ところが高校に入った途端、今まで見たこともない「than」や「as ~ as」の比較表現が登場します。中学まではA is taller than B. だったのが、高校に入るとA is taller than B is. と当然のように教えられます。

実は高校で習う比較表現は「最も基本的な型」です。中学で学ぶのは「究極に省略された型」または「文法から外れてしまった口語表現」です。

問題は、そのギャップを埋める指導がほとんどなされないことです。高校の英語教師は中学でどこまで教えるかついてあまり関心を払っていません。中学の先生も高校で教えられる内容についてあまり詳しく理解していません。

そこで今回の記事では「比較表現の基本」について詳しく解説しました。

小学生にとって比較表現は簡単ではありません。しかし、「最も基本的な型」を理解すれば、高校に進学したときもスムーズに学習できます。もし子どもの英語レベルが大丈夫そうだったら、時間をとってお母さんから「比較表現」を教えてみましょう。

Jane is taller than Mike. を徹底解説!

子どもに英語を教えるときは、「動画・写真・イラストなど視覚に訴えるもの」を活用するのが一般的です。特に比較表現では具体的なものを見せないと「AよりBが~」「AとBは同じくらい~」を理解しづらいです。

今回は3人の子どもの写真を用意しました。名前と年齢(数字)を追加しました。

これを使って小学生にもわかるように比較表現を解説します。たったの3ステップで誰でも理解できます。

Jane is tall. とMike is tall.

最初に「背比べ」をしてみます。形容詞の「tall」を基準にします。このとき本当に背が高いかどうかは関係ありません。背が低い者どうしを比べることもあります。実際に高いかどうかではなく、「高い」を基準にしてどちらが程度は強いのかを比べています。

まずJaneとMikeについて2つの文章を別々に作ります。

Jane is tall.  と Mike is tall.

比較の文章では常に程度の強いほうを左側(最初に)、程度の弱いほうを右側に置きます。子どもがこれらの文章を理解できなければ、比較表現は早すぎます。もう少し準備してから挑戦しましょう。ここまでが最初のステップです。

ふたつの文章をthanでつなごう

次に、さきほどの2つの文章を「than」を使ってつなぎます。thanは文法的には「接続詞」です。つまり文と文をつなぐ働きをします。

この「than」には特徴があって、これだけでは文章をつなげません。

例えば、「ボルト」は何かを固定するものです。しかし、これだけで何かと何かをつなぎ合わせることはできません。必ず「ナット」が必要です。

ボルト

thanをボルトに例えると、ナットは形容詞の比較級です。比較級とは簡単に言えば、形容詞の最後に-erをつけたり(old→older)形容詞の前にmoreをつけたりする(beautiful→more beautiful)ことで作れます。

比較級をボルトとナットに例える

すると次の文章ができあがります。

Jane is taller than Mike is tall.

ここまでが第2ステップです。

前に出てきたのと同じものは省略・削除

いよいよ最後のステップです。ここからは、余計なものを削除したり省略したりして形を整えていきます。

*共通している比較の「基準」はあとに登場するほうを削除する

今回は「tall」という共通する基準で比較しているので、うしろのtallは削除します。

Jane is taller than Mike is tall.

これでthanを使った比較級の最もスタンダードな文章が完成です。

*左側の文章と右側の文章の共通している部分は省略可能

この例文ではis(be動詞)が共通しているので省略できます(省略しなくてもいいです)。

Jane is taller than Mike (is).

これがギリギリまで削った型です。お母さん達が中学校で習った比較級のタイプはこれです。最も短いので初心者用のテキストにはこの文章が好まれて掲載されます。

省略しない変化もあるので、ひとつだけ紹介します。

Jane swims faster than Mike does.

swimsを繰り返し使わずに、doesに置き換えました。これはやや上級編です。もちろん、動詞そのものを省略しても大丈夫です。

Jane swims faster than Mike.

ここまで3ステップに分けて、thanを使った比較級の文章について解説しました。お母さんが中学校の頃に初めて習ったthanの例文は「省略の究極形」であることがポイントです。

最初にこの形から覚えるとその場は簡単です。しかし、将来スタンダードなタイプ(Jane is taller than Mike is.)を見たときに「えっ、何でMikeのあとにisがついているのだろう」と混乱してしまいます。

「最初に基本形を習ってから省略も可能」と理解したほうが、子どものためになると私は思っています。

Jane is as old as Billy. を徹底解説

比較表現にはthanの他に、「as ~ as」 を用いて「~と同じくらい…」の意味になる用法があります。ここでもthanと同じく3ステップに分けて詳しく説明します。

Jane is old. と Billy is old.

写真のJaneとBillyは同じ9歳です。そこで今度は「old」を基準にして等しいことを表すふたつの文章を用意します。ここでも強調したいほうを最初(左側)に置きます。

ここではJaneにフォーカスを当てて、「JaneとBillyは同い年です」という意味の文章を作ってみます。

Jane is old. と Billy is old.

ここまでが最初のステップです。

ふたつの文章をasでつなごう

次に、2つの文章をasでつなぎます。ここでもthanのときに登場した「ボルトとナット」の話を思い出してください。asだけで文章をつなげないので、左側の形容詞の前にasをナット代わりに置きます。

同等比較ボルトとナット

Jane is as old as Billy is old.

ここまでが第2ステップです。

前に出てきたのと同じものは省略・削除

いよいよ最後のステップです。ここからは、余計なものを削除したり省略したりして形を整えていきます。

*共通の比較の「基準」はあとに登場するほうを削除する

今回は「old」という共通する基準で比較しているので、うしろのoldは削除します。

Jane is as old as Billy is old.

これがas  asを使った比較級の最もスタンダードな形です。

*左側の文章と右側の文章の共通している部分は省略可能

Jane is as old as Billy is.

これが中学校の教科書にも出てくる究極まで削った形です。

「(2番目の)as」 は接続詞なので、うしろにセンテンス(主語+動詞…)が続くことを理解することが肝心です。省略されているものをイメージしながら補えれば合格です。

口語表現で注意すること

口語表現と聞くと「やさしい言葉」「イケてる言葉」を連想するかもしれません。しかし、そのほとんどは文法からズレていて、外国人にとってやっかいです。

これから紹介する口語表現は、本来の正統的な表現を超えるほど市民権を得ているのでなおさらやっかいです。

Jane is taller than Mike. を代名詞で書き換えてみる

Jane is taller than Mike. を代名詞を使って書き換えてみます。

She is taller than he.

これで正解ですが、「口語ではthanのうしろに目的格を置くことが多い」です。すると主格のheはhimに変化します。

She is taller than him.

これまで説明してきたように、thanのうしろにはセンテンス(主語+動詞…)が続きます。普通に考えればMikeの代名詞として文法的に正しいのは「he」です。

しかし、口語表現では頻繁にthanのうしろに目的格(ここではhim)を続けます。ある調査によると、ネイティブが自然に感じる比較表現を順番に並べると次のようになったそうです。

1位:She is taller than he is.
2位:She is taller than him. (1位と僅差で)
3位:She is taller than he. (低い支持率)

日本語でも本来正しくないとされる「ら抜き言葉」が徐々に多数派になりつつあります。英語でも似た現象が見られるのは興味深いです。

こんな文も読めるようになる

私が最も短く省略された形や口語体ではなく、比例表現の基本形から説明したのには理由があります。それは「最も応用が利く」からです。

入試では教科書の表現に留意して問題は作成されます。だから省略された型から学んでも支障はないです。

一方、ネイティブの子ども向けに書かれた本は、基本形を理解していないと読めない比較表現で溢れています。そのような文章にであったときに子どもが慌てないために、やはり基本形を抑えておいたほうがいいです。

「入試に出る・出ない」で学ぶ内容を考えるのではなく、本物の英語を理解するために学ぶという基準を忘れてはいけません。

ネイティブのYear3~4(小2~3)に人気のGeronimo Stiltonに出てくる比較表現

ネイティブの子どもが読む本の中で比較表現はどのように登場するのかを解説します。ここで取り上げるのはGeronimo Stiltonのシリーズです。

Geronimo Stiltonは新聞社を経営しているネズミです。このシリーズはネズミにまつわるダジャレがちりばめられていて、小学校低学年~中学年の子どもに人気の児童書です。

その中のTHE KARATE MOUSEでは、主人公のGeronimoが空手の試合に出場する話です。手強い相手と試合中の場面からの引用です。

Champrat was big, tall, and covered with muscles, but he was a lot slower than I was!
(チャンピオンのネズミは大きくて背が高くて筋肉に覆われていたが、僕よりずっと遅かった!)

Geronimo Stilton THE KARATE MOUSE

基本を理解していれば簡単に読める文章です。しかし、もしhe was a lot slower than me.とかhe was a lot slower than I.の形でしか比較表現を習っていなかったら、きっと混乱するでしょう。

やはり応用の利く基本形を学んだほうが近道です。

まとめ

「than」を使った比較表現と「as ~ as」 を使った比較表現を3つのステップに分けてわかりやすく解説しました。お母さんの多くは中学校から英語を本格的に学んでいますが、そのときに扱われる比較表現は最も省略がすすんだ形です。

thanもasも文章と文章をつなぐ役割をしているので、主語と動詞が続きます。条件が揃ったときだけ省略できます。

口語ではthanのあとを目的格にすることがあり、文法に忠実な文章と同じくらい広く使われています。英語学習者にとってはやっかいですが慣れるしかありません。

比較表現をきちんと理解して英文を読めるようになるためには、一度時間をかけて比較表現を子どもに基本から理解させる必要があります。それさえできれば一気に運用力も高まるので、安易に近道を選ばないようにしましょう。

意外と難しい「現在形」と小学生のうちに知っておくべき時制とは

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「英文法の授業が大好きだった」人は少数派です。本来、英語の語順や用法をまったくわからない日本人のために説明してくれるありがたい授業なので、もう少し感謝されてもいいはずです。

ところが実際は「英文法など役に立たない」「細かい知識ばかり覚えさせられた」など最低の評価ばかりです。確かに参考書を見ると小難しい用語で埋め尽くされていて、楽しく読める内容ではありません。

参考書や教科書は「正しいこと」を伝えるのが目的で、「わかりやすく」伝えるのは教師の腕にかかっています。ところが多くの英語教師も「正しいこと」だけを伝えてしまい、生徒は混乱しているのが英文法の授業の実態です。

子どもが英語を学ぶときに避けて通れない文法の壁はいくつかあります。そのうちのひとつは時制です。「過去形・現在形・未来形」は日本語にはない概念なので、腑に落ちるまでにかなりの時間と労力が必要です。

その中でも特に「現在形」は「過去形・未来形」と比較しても理解するのが難しい時制です。ワークブックに取り組んでも英語スクールで習っても、正しく理解できている子どもは少ないです。

そこでお母さん向けに、「現在形」の本質について説明することにしました。楽しい話題ではありませんが、一度理解すると子どもにも良いアドバイスができます。ちょっとだけ辛抱して最後まで読んでください。

現在形は「今」ではない!

中学校で本格的に英語を学習すると最初に扱う時制は「現在形」です。その後に学習する過去形・未来形と合わせて「3つの基本時制」のうちのひとつです。

ところがこの「現在形」は意外とクセモノです。他の二つの時制にはない特徴があるので、正しく理解するには時間がかかります。

まずはお母さんが正しく理解して子どもの質問に答えられるように準備しておきましょう。

過去形・未来形は点、現在形だけ幅のある時制

学生時代に少しだけ戻って、3つの時制を復習しましょう。

*過去形

I was 10 years old in 2013. (私は2013年に10歳だった)

2013年の時点(過去)において、「10歳だった」と伝えています。

*未来形

I will be ten years old next year. (私は来年10歳になります)

来年の時点で10歳になります、と伝えています。

*現在形

I am 10 years old. (私は10歳です)

日本語訳は「私は10歳です」で間違ってはいませんが、もう少し深く考えてみましょう。昨日私は何歳でしたか? 明日私は何歳でしょうか?

現在形は「今」のことだけでなく、少し前から少し未来のことまでを含めた時間を表現しています。過去形と未来形がそれぞれの時間軸の点で表現できるのに対して、現在形には「幅」があるのです。

これは現在形の大きな特徴なので正しく理解しましょう。

現在形という用語が悪い! 「いつものこと形」と呼ぼう

現在形には「幅」があることはすでにお伝えしました。しかし、中学生、いや高校生でも正しく理解している生徒は少ないかもしれません。

混乱の一因は「現在形」という文法用語ではないかと考えています。日本語の現在とは「今」の時点のことです。

英語の現在形を子どもにわかりやすく伝えるために、現在形ではなく「いつものこと形」と呼ぶことを提唱します。これは私のオリジナルではなく、友人の英語の先生が教えてくれたことです。

「いつものこと形」なら、英語の現在形を的確に表しています。例えば、I drink coffee after meals. なら「私は食後コーヒーを飲みます」という「いつものこと」を表現しています。

昔、高校の受験参考書の解説には「現在の反復動作」「不変の真理」に現在形を用いると書いてありましたが、子どもにそんな説明をして理解できません。

「不変の真理」を表す例文として代表的なものを紹介します。

The earth goes around the sun.

これも「いつものこと」で充分説明できます。地球が太陽の周りを回っているのは「いつものこと」だからです。

子どもに3つの基本時制「過去形」「現在形」「未来形」を教えるときは、現在形は「いつものこと形」として理解させましょう。現在形だけ「幅」のある時制であることを教えてあげるだけで英語の理解度は格段に違ってきます。

「今」を語るなら、現在進行形

では今この時点のことを表すには、どうしたらいいのでしょうか。答えは、「現在進行形」です。

例文を見て違いを感じ取りましょう。

I listen to music every day.(現在形orいつものこと形)

I am listening to music.(現在進行形)

先述のとおり、「いつものこと形(現在形)」には幅が感じられます。おとといも昨日も今日も明日もあさっても「音楽を聴く」のです。

現在進行形では「(今)音楽を聴いている」ことを表しています。幅は感じられず、今この一点だけです。

子どもに時制を教えるのはプロでも難しいです。「現在」という文法用語に引きずられて、「今」を表す現在進行形と「いつものこと」を表す現在形を混同する傾向があるからです。

また「現在形」では「3人称・単数(he, she, itなど)」が主語になると動詞に「s」をつけるルールがあります。3つの基本時制の中で最も難しい時制です。

もし子どもが英語スクールや塾の先生から時制を教わって混乱していたら、お母さんがもう一度整理して教えてあげましょう。

3つの基本時制と3つの相

子どもが時制を学ぶときに混乱してしまうもう一つの原因は、時制の知識が整理されないまま詰め込まれるからです。3つの基本時制のあと、進行形や完了形などが追加されると訳がわからなくなります。

ここでは時制の概念をわかりやすくするために、表を用いて解説します。また、小学6年生までにどの時制まで学習しておいたほうがいいのか、の目安についても触れます。

  • すべての時制を一枚の表で理解する

まず、「過去形」「現在形」「未来形」の3つの基本時制があります。

基本 過去形 現在形 未来形

そして3つの基本時制だけでは表現できないニュアンスがあるため、さらに3つの概念を掛け合わせます。

基本 過去形 現在形 未来形
進行 過去進行形 現在進行形 未来進行形
完了 過去完了形 現在完了形 未来完了形
完了進行 過去完了進行形 現在完了進行形 未来完了進行形

ご覧のとおり、時制は全部で3×4=12あります。しかし、基本はあくまでも過去形・現在形・未来形しかありません。「進行」「完了」「完了進行」は「味付け」です。

麺の基本が、「うどん」「そば」「パスタ」とします。それに「カレー味」「カルボナーラ」「めんつゆ」の味付けをしていると考えればわかりやすいかもしれません(一部食べたくない組み合わせがありますが)。

基本 うどん そば パスタ
カレー カレーうどん カレーそば カレーパスタ
カルボナーラ カルボナーラうどん カルボナーラそば カルボナーラパスタ
めんつゆ めんつゆ+うどん めんつゆ+そば めんつゆ+パスタ

詳しい説明は割愛しますが、現在完了形は「現在形」の一種です。

I have just finished my homework.

これはたった「今」宿題を終えたという表現なので、現在形のグループであることは明らかです。

もし子どもに英語の時制について解説を求められて混乱してしまったら、一度この表を眺めてみることをおススメします。

小学6年生までに理解しておきたい時制はここまで

では、小学6年生までに時制についてどのあたりまで理解しておけばいいのか、の目安について解説します。

英語の絵本の読み聞かせをしたことのあるお母さんならすでにお気づきと思いますが、いきなり過去形のオンパレードです。なぜなら、物語は「~しました」という過去形で大部分が語られるからです。

まずは現在形・過去形を理解するところから始めましょう。お母さんが中学時代にやったような不規則動詞の「原形・過去形」を呪文のように唱える覚え方は、子どもには不向きに感じます。

例えば、子どもは絵本や本の音読を繰り返しながら、thoughtとthinkを別々に覚えてもいいです。そのあとどこかの時点でふたつの単語がつながって「同じ単語である」と認識でいれば大丈夫です。

余談ですが、未来形は正確には動詞は変化していません。willや be going toを組み合わせて表現するので「未来表現」と呼んだほうが適切です(これも英語教師の友人に教えてもらいました)。

3つの基本時制を理解したら、それに進行形の味付けを加えられれば表現の幅はグッと広がります。小学6年生までに、表で示された「赤とオレンジの枠」まで理解できれば充分です。
時制*学習の優先順位の第一位は 赤 >  黄色 > 緑 > 青

まとめ

「現在形」が表現するのは「今」の一点ではなく、幅のある「いつものこと」です。「今」に限定した内容を表すには「現在進行形」を用います。

この点において、「現在形」は他の基本時制である「過去形・未来形」とは決定的に異なります。また現在形においては、主語が3人称・単数の場合、動詞にsをつける決まりがあります。「現在形」は中学校で最初に習う時制ですが、実は最も難しい時制と言えます。

進行形・完了形・完了進行形は、「時制」への味付けです。これらのことを長期間に渡り一つずつ学ぶと頭の中が混乱してしまいます。しかし、一覧表で眺めればそれほど難しいことではありません。

小学生にも理解しておいて欲しいのは、3つの基本時制と進行形までで充分です。ここまで進めば簡単な本を読めるようになるので、英語学習のスピードは加速します。

外国人講師vs.日本人講師:子どもが英語を習うならどっち?

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私の近所に英語で保育をするインターナショナルプリスクールがあります。自宅前の道路は子ども達の散歩コースになっていて、ネイティブの先生と歌を歌いながら歩いていきます。

蝶やトンボを見つけるとIt’s a butterfly! と叫んでいる様子や英語の歌を上手に歌うのを見ていると、この年代の子どもにはネイティブ講師が向いているんだろうなと感じます。

一方、小学校高学年の子どもを教えるときは、日本人講師が文法を説明したり単語の使い方を解説したりしたほうが、英語が伸びるケースが多いです。

子どもに英語を習わせるとき、外国人講師から学ぶのがよいのかそれとも日本人講師から学ぶのがよいのか迷うことがあります。

結論からいえば、どちらも長所と短所があり、子どもの年齢や目的に合わせて上手に使い分けるのがベストです。

そして英語の講師を選ぶとき、外国人か日本人かということ以上に大切なポイントがあります。これらのことをしっかりと理解して、お子さんの英語スクールや先生選びに役立てましょう。

外国人講師の長所と短所

外国人講師といっても、英語圏のネイティブとフィリピン人など(主にオンライン英会話の講師)のノンネイティブに分かれます。

今回の記事では両者を分けずに、英語を話す外国人講師として話したいと思います。

外国人講師の長所

  • 英語表現が豊かで自然であること

英語表現が豊富で自然であることは強みです。簡単な英単語を使うときでも、日本人はそのニュアンスに迷うことが多いです。

例えば、watch/see/look atの使い分けです。これくらいなら日本人講師でも説明できますが、英語にはこのような紛らわしい単語や表現がたくさんあります。

英単語が持つニュアンスを感覚的に理解できない日本人講師が苦手な分野です。

・発音やイントネーションがネイティブ

当然ながら、発音やイントネーションが英語ネイティブレベルのため、それをまねして声を出していけば、当然彼らの発音に近くなります。スピーキングやリスニング能力に良い影響を与えるでしょう。

・文化的な違いを教えてくれる

外国語を学ぶときはその国の文化についても深く学ぶことになります。留学や移住経験がない日本人講師の場合、外国の文化について学習者に伝えるのが難しいです。

海外ドラマを見ていた時のことです。クリスマスに主人公の男がヤドリギの下で好きな女性にキスをして次の瞬間「バシッ」と平手打ちされたシーンがありました。

クリスマスのときは、mistletoe(ヤドリギ)の下にいる少女にキスをしていいという習慣を知らなければ、なぜ彼が突然キスしたのか、何がおもしろいのかがわかりません。

外国文化の理解は英語への興味関心を高めてくれるきっかけになります。外国人講師が得意とする分野です。

・子どもが外国人慣れする

何かを鍛えようとするなら、そのものをやるのが一番です。英語でスピーキングを強化したいのに、リーディングばかりしていては成長が見込めません。

海外未経験の子ども達に外国人と話すことに慣れさせたければ、実際にさせるのが手っ取り早いのは間違いありません。

小学校での英語必修化にともない外国人講師が教えることは珍しくなくなりました。私の印象では以前より外国人慣れしている子どもが増えたと感じます。

外国人講師の短所

圧倒的に有利に見える外国人講師にも短所はあります。子どもの先生やスクールを選ぶ際には短所もしっかりと把握しておかないと、過剰な期待をしてトラブルの元となります。

・日本語がわからず親の細かい要望が伝わらない

英会話スクールに子どもを通わせると、講師と親のコミュニケーションは大事です。子どもの性格やレッスンの様子の情報を交換することで、よりきめ細やかな指導ができます。

ところがまったく日本語ができない外国人講師の場合、親が英語を話せない限り子どもについての情報交換をすることができません。

スクールによっては日本人講師が間に入ってサポートしてくれるところがありますが、必ずしもうまくいくとは限りません。

・英文法を上手に説明できない

外国人講師が最も苦手とする分野です。考えてみれば当然ですが、母国語は文法を意識して学んだわけではないので、特別な勉強をしなければ人に教えることはできません。

日本語で例を挙げてみます。「公園に遊びに行く」と「公園でサッカーをする」の「に」と「で」の使い分けを論理的に説明するのは、普通の日本人には難問です。

英文法に関しては日本の学校教育が最も力を入れている分野なので、教えるレベルの差が目立ってしまいます。

・日本人講師ほど細かい配慮をしない

マレーシアに住んでいるときに、息子が通うインターナショナルスクールの担任の先生を見ていて、先生の役割の違いを感じました。

授業が終わりランチタイムになると先生は職員室に移動して、そこでお昼ごはんを食べます。お昼の時間は先生は完全に休み時間です。このときに起きる生徒同士のトラブルは基本的に両者の間で解決します。

このような環境で育った外国人講師と日本の先生しか知らない親の間で何かトラブルが生じると、「なんて薄情なんだ」とか「責任感がなさすぎる」と感じることもあるでしょう。

外国人講師は英語のレッスンについてだけ責任がある、と理解しています。レッスン以外のことについてはノータッチです。

このように英語がペラペラの外国人講師にも長所と短所があります。子どもが5歳くらいまでの幼児には文法から入るアプローチはNGなので、指導に慣れた外国人講師のほうが良い結果が得られることが多いかもしれません。

日本人講師の長所と短所

では、日本人講師の長所と短所について説明します。ここでの日本人講師とは、英語が得意な「日本で生まれ育った人」という意味です。例えば日系アメリカ人はネイティブと同じなので日本人講師ではありません。

日本人講師の長所

・生徒からの細かい質問に対応できる

当然日本語ネイティブなので、生徒からの細かい相談や質問にきめ細かい対応ができます。例えば、「辞書はどれを買ったらいいですか」という質問には、日本人講師でないと適切な回答はできません。

「本領発揮って英語でどのように表現したらいいでしょうか」という質問も、「本領発揮」という日本語を理解していないと正しい答えを返せません。

このように生徒からの英語に関する質問に細かく対処できるのが日本人講師の強みの一つです。

・英文法は得意なので、教え方もうまい

「英文法」に関しては日本の英語教育は成功しています。英文法は語彙とともに英語学習の核となるものです。

小学4年生以上が外国語を学ぶときは、幼児が母国語を学ぶように自然と習得することができなくなります。その代わり、論理的に言語を学ぶ能力が高くなるので、文法を学ぶアプローチは大変有効です。

文法偏重であってはいけませんが、わかりやすく英語の文法、特に語順を子どもたちに教えられる日本人講師は貴重な存在です。

・英語学習者の苦労がわかる

日本語と英語は構造的に対極にある言語で、習得が難しいといわれています。日本人が英語をマスターするまでに約2~3千時間を必要とします。日本人講師はそれだけの時間を英語に費やしてきたので、学習者の悩みや苦労を理解してくれます。

海外に留学しなくても英語をマスターできる、という見本になるため、子ども達にとってはいい刺激になるかもしれません。

日本人講師の短所

・英語表現が不自然

かなりの英語上級者であっても、ネイティブには英語表現の豊かさやスピーキングにおける流暢性はかないません。いわゆるネイティブ表現などは教科書などでは登場しないため、長期間留学した人以外は知らないのが普通です。

発音もコミュニケーションには充分でも、ネイティブ並みとまではいかないことが多いです。日本人講師の英語を何時間聞いても、リスニング力の向上にはあまりつながらないと考えたほうがいいです。

・生徒がなんとか英語で伝えようとしなくなる

日本人講師が相手だと、生徒は日本語が使えるため、必死になって英語を話そうとしなくなります。つい日本語に逃げてしまいます。

苦しみながら英語をつないで何とか相手に伝えるのも大切なトレーニングですが、日本人相手にそこまでする生徒はほとんどいません。

日本人講師は、文法を中心に教える能力は高いです。特に9歳以上の子どもには論理的な英語学習が有効になるため、文法を効率よく教えられる日本人講師のほうが向いているといえます。

先生選びの究極のポイント:〇〇を伝える指導者であるか

ここまで外国人講師と日本人講師の長所と短所をそれぞれ詳しく見てきました。私も両者を比べる機会が多々ありましたが、外国人講師でも英文法を熟知している人も多く、例外はあることをご承知おきください。

最後に、私が考える英語の「先生選びで最も大切な究極のポイント」があります。それは、

「声を出すことの大切さを子どもたちに伝えられるかどうか」

ということです。お母さん達に強調しておきたいのは、「声を出す」重要性を伝えないような先生には絶対に子どもを預けてはいけません。

極端な言い方をすると、その先生がどれくらいの英語力があるかなどはそれほど重要ではありません。それよりも、英語を音読しないと英語は上達しない、というただ一つのメッセージをきちんと伝えられるかどうか、のほうがはるかに大切です。

私はこれまでたくさんの中学生に英語を指導してきました。もちろん私は音読の重要性を事あるごとに強調していますし、授業中も何度もいろいろな角度から音読させます。

しかし、残念なことにこれくらいの年齢になると、なぜか皆声を出しません。残念なことです。

中学入学前までに英語学習は「声を出す」ことが基本ということを身につけるだけで、英語が得意になります。

残念ながら中学になってからだと、ほとんどの場合手遅れです。外国人講師でも日本人講師でも構わないので、子どものうちに英語を口から出すことを上手に促してくれる先生を探すようにすることが、英語を話せる子どもを育てるポイントです。

まとめ

外国人講師にも日本人講師にも長所と短所があります。外国人講師は英語表現が豊かで自然であり、この点については日本人講師はかないません。また、母国の文化に精通しているため、子どもは言語以外のことについても学ぶことができます。

しかし、英語力が未熟な生徒からの質問や親とのコミュニケーションは苦手です。また、英文法については特別な訓練を受けていない限り、日本人講師に軍配が上がります。

日本人講師の良さは、日本人学習者の気持ちを理解し、きめ細かい指導ができるところです。9歳以上の子どもには英文法からのアプローチが効果的ですが、日本人講師が得意とする分野です。

一方、発音や英語表現の豊かさにおいてはネイティブにはかないません。また、生徒は英語を使ってなんとか伝えようとするかわりに、日本語を使って逃げるようになります。

このように外国人講師と日本人講師それぞれに一長一短があり、子どもの成長段階や英語力に合わせて使い分けるのがベストです。

さらに、最も大切なことは英語学習において「声を出す」ことの大切さを子どもたちに伝えられているかどうかです。音読は語学の基本ですが、中学生以降になると生徒は音読をしなくなります。

中学入学前に「英語学習=音読」くらいの習慣を身につけられれば、その後英語が得意になる可能性はかなり高くなります。

講師が外国人か日本人かだけでなく、この点をしっかりと伝えられる先生に子どもを預けることが重要です。.

子どもが英語ペラペラに:「英会話を弾ませる」コツとは?

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私の息子は週1回、オンラインで英語を学んでいます。冒頭は先生との挨拶や他愛もないフリーカンバセーション(自由な会話)で始まります。

相手(先生)の声は私には聞こえません。息子は“I’m 9 years old.” とか“I’m good.” と答える声だけが聞こえてきます。おそらく“How old are you?” とか“How are you?”と質問されているのでしょう。

レッスン後「先生の質問に答えるだけでは先生が話しづらいよ。もう一つ、センテンスを足してごらん」と私はアドバイスをしました。

息子は話し好きな性格なので、次から「1センテンス」を付け足して答えるようになりました。すると、画面上の先生も表情豊かになっているのが見てわかりました。

実は英会話のテキストには書いていない「会話を弾ませるコツ」があります。小学校高学年くらいの子どもなら難しくないので、お母さんからもアドバイスをしてあげましょう。

英語力の有無にかかわらず、話が続かない!

英語学習の目標に「日常会話」を挙げる人が多いのですが、実は日常会話は難しいです。すべてのジャンルに対して準備をしなければいけないし、突然話題が変わることもよくあります。

子どもは残酷なところがあって、相手にまったく気をつかいません。そのため、子どもの英会話初心者がネイティブの子ども達に混ざると、わずかなチャンスをものにできなければそのまま放置されます。

英語力(語彙力・文法力など)と会話を弾ませる「コミュニケーション能力」は別の能力です。日本人同士でも話が続かずに気まずい空気が流れることはよくあることから、そのことがわかります。

まずは話が続かない典型的なパターンを理解して、普段から意識的にトレーニングをしなくてはいけません。

話が続かないパターン

相手の質問に対して必要最低限しか答えないと、話は途切れてしまいます。「今日、お昼は何を食べたの?」と聞かれ「うどん」と答えれば相手の問いには答えています。英会話のテキストにもこのようなパターンです。テストではこれで正解です。

しかし、実際の場面では質問した相手はそれ以上話を膨らませられずに、気まずい雰囲気になってしまいます。

  • 英語力と会話を続けられるスキルは同じではない

このように英語力と会話を弾ませるスキルはまったく別物です。

A: What did you have for lunch?
B: I had udon.

テキストにはこのようなダイアローグ(対話)が無数に載っていて、質問と答えを暗唱します。この学習自体は間違っていません。英語力を上げるためには絶対に必要です。しかし、これだけでは会話を弾ませることはできません。

英語力を磨きつつ、コミュニケーション術も磨く

よく「聞き上手は話し上手」と言われます。これは「聞き手は黙っているだけでいい」という意味ではありません。相手が話を続けたくなるような質問を投げかけられる技量が必要です。

反対に、聞かれたほうは質問に答えるだけでなく「もう一つ、情報を付け足す」努力が必要です。そうしないと相手はツッコミようがないからです。

子どもに英会話の練習をさせるときには、常に「相手がいる」と想定するようにアドバイスをしましょう。そうすると、実際の場面でも会話を弾ませるための準備ができます。

今回の記事では、「答えるほう」に意識を向けてみました。会話を弾ませるための「答え方」について具体的に説明します。

英会話のコツ:「プラス1センテンス」で答えよう

Yes/ No Question(Are you~?など)はもちろん、Wh-?, How-?の質問には、とりあえず答えることが必要です。そして「もう一つセンテンスを付け加えるように心がける」と相手の興味や関心を引き出せるようになります。

センテンスを付け足すときには、二つのパターンがあります。ひとつは「理由を説明するもの」、もう一つは「逆接の接続詞(しかし、でも)でつなぐもの」です。以下、詳しく説明します。

理由(because)を説明する

A: What did you have for lunch? (お昼に何食べた)
B: I had udon, because my mom always cooks udon for lunch. (うどんです。なぜなら母はお昼はいつもうどんをつくるからです)

このように答えに理由を付け足すだけで、聞いた相手はいろいろと次の質問をしたくなります。「一週間に何日くらいうどんなの?」「温かいうどん、それとも冷たいうどん?」「うどんには天ぷらをつけるの?」「毎日うどんで飽きないの?」などです。

理由にはその人の日頃の習慣や意見が現れるので、ツッコミやすくなります。逆に、質問者の立場で相手がプラス1センテンスで答えてくれたら、その部分にもう一つ質問を投げかけてあげましょう。

逆接(but)でつなぐ

次は、逆接の接続詞でつなぐパターンです。例文を見てみましょう。

A: What did you have for lunch? (お昼に何食べた)
B: I had udon, but I wanted to have a hamburger. (うどんでしたが、ハンバーガーが食べたかったです)

but以下にはその人の本音が現れるので、理由を言われたときよりもさらにツッコミやすくなります。この場合は十中八九「なぜハンバーガーにしなかったの」と質問が続くはずです。

これも理由のときと同じく、自分が質問したなら相手のbut以下の内容に関して、きちんと返してあげることが重要です。

練習問題

では、練習問題です。次の質問に対して「プラス1センテンス」で答えてみましょう。理由を述べるパターンと逆接でつなぐパターンの2パターンで答えてください。

A: What time do you usually get up?

解答例

(理由)

B: I usually get up at 6 o’clock, because I have to have breakfast with my family at 6.15.

(逆接)

B: I usually get up at 6 o’clock, but someone rang my doorbell at 4 o’clock this morning!

もし、質問する立場だったらこれらの回答に対して、どのような質問を続けるかを考えます。このような訓練を子どもにさせるだけで、教科書的な対話だけでなく実践的な英会話術を身につけさせられます。

スポーツ選手が「練習するときは試合のつもりで、試合のときは練習のつもりで」取り組むという話と似ています。普段やらないことは本番でもできません。

また、日本語でも普段の会話から相手の質問に「プラス1センテンス」で答えるようにすると、会話が弾みやすくなります。

コミュニケーションの肝は相手の立場に立つこと

「プラス1センテンス」で回答すると、会話が盛り上がる様子をこれまで確認しました。これと冒頭で紹介した「話が弾まないパターン」を比較すると、ある一つの結論に達します。

それは「コミュニケーションの肝は相手の立場に立つこと」です。極論すれば、これだけを心がければ英語でも日本語でも会話を続けられます。

英語でも相手を楽しませる

簡単に言えば「おもしろい話」ができれば、相手を楽しませることができます。しかし、これは難しいです。

私はインド人の家庭に招待されたことがありました。そこで私は日本人ならほぼ笑ってくれるはずの笑い話をしました。しかし、まったく相手の表情は変わりませんでした。本当に冷や汗が出まくった苦い思い出です。

文化の異なる外国人は笑いのツボも異なります。どんなに英語を学んでも相手を常に笑わせるのは難しいです。

相手が話したいことを質問する

相手に対して予備知識がある場合は有効です。相手の得意なスポーツや趣味について、話題を振るのです。

英会話の教科書に載っているような例文は初対面の人には割と答えづらい質問が多いような気がします。

Where are you from? (あなたはどちらの出身ですか)
How old are you? (あなたは何歳ですか)
What is your name? (あなたの名前は何ですか)
What do you do? (あなたの職業は何ですか)

ほとんど、入国審査のような質問ばかりです。プライバシーや宗教・政治的な信条にかかわる質問は避けたほうがいいのは、日本語でも英語でも同じです。

その点、相手の趣味や詳しそうなことに質問をするのは会話を弾ませるためには大切なポイントです。

相手の欲しがる情報を与える

相手が得する情報を与えると、相手からどんどん質問がくるので会話は自然とスムーズになります。

試験前に学校を休んだ友人に、先生が話していたテスト範囲の詳しい情報を与えれば確実に食いついてきます。「相手の視点」に立てばそれほど難しいことではありません。

子どもの頃からこのような訓練をしておくと、将来営業の仕事をするときにもとても役に立つはずです。

相手に役立つ情報を与える

「相手の欲しがる情報」と似ていますが、相手はそもそも「何を必要としているか」わかっていないことがあります。そんなときに「役に立つ情報」を与えると会話は弾みます。

女の子ならファッション系の話とかアイドルの話題、男の子ならゲームの攻略法などが該当します。

英語で自由にこれらの話題を話すには高いレベルが要求されます。しかし、相手が興味を示してくれればこちらの英語に多少の間違いがあっても問題ではありません。

小学生の子どもに上記のことを意識しながら英語で会話をするのは、難しすぎます。しかし、自分ひとりで対話文の練習をするときに、「プラス1センテンス」を心がけるだけなら大丈夫です。

オンライン英会話に取り組む子どもの様子を見ていて「沈黙が多いな」と感じたら、それは先生も苦労している証拠です。「理由」や「逆接」でつなぐように子どもにアドバイスをしてあげましょう。

また、普段からそのような会話を日本語でも心がけると、周囲の友だちから「〇〇君は話しやすい」「〇〇ちゃんと話すと楽しい」と思ってもらえます。

まとめ

英語のテキストには、質問に対する「答え方」は書いてあります。しかし、「会話を弾ませるためのコツ」には触れていません。

相手の質問に答えただけでは、会話はまったく続きません。そこで、自分の答えにもう一つ文章を続けてみましょう。続け方には2つあります。

ひとつ目は、自分の答えの「理由」を述べるやり方です。その情報が詳しいほど、相手はその部分について興味をもってくれます。もう一つは、「逆接」でつなぐやり方です。自分の本音を表現できるので、相手は興味を惹かれます。

子どもが英会話の練習をするときは、テキストに載っている例文を暗唱するだけでは不充分です。仕上げとして「プラス1センテンス」を実践しましょう。そうするとオンライン英会話など実践的な場面でとても役に立ちます。

会話を弾ませることは、つまり「相手の立場になって会話をする」ことです。それさえ気をつければ会話中沈黙が続いて気まずい思いをすることが減ります。

日本語で会話するときも、お母さんから子どもに「プラス1センテンス」を意識するようにアドバイスしましょう。会話の質と量が高まれば、そうでない場合よりも英語の上達も早くなります。

小学生にも使える!「中学英語教科書」の実力とは?

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学生の頃、私は英語教材マニアでした。目新しい「〇〇メソッド」のようなタイトルを見つけたらほとんど何も考えずに購入しました。そして使用してしばらくすると、気づくことが2点ありました。

ひとつ目は、どんな教材にも「一つくらいは役立つ情報がある」ことです。その中のいくつかは今でも私の英語学習に影響を与えているものもあります。1500円くらいの本で一生使える情報が得られるなら悪い話ではありません。

そして、もうひとつ気づいたのは「中学の英語教科書は完成度が段違いである」ことでした。義務教育のときに「無料」で配布された教科書のほうが、自腹で購入したものよりレベルがはるかに高いのです。
中学英語教科書

通常高いお金を払えば払うほど「良い買い物をした」バイアス(思い込み)がかかります。「学校の教科書より、最新のこの〇〇メソッドのほうが優れている」と思いたいのが普通です。それにもかかわらず、学校教科書のほうが優れていると認めざるを得ないのです。

私がこのことを痛感したのは、15年前にベトナム語を勉強しようとしたときでした。当時はわかりやすいテキストがほとんどなく、大型の書店に行っても辞書と参考書合わせて10冊未満でした。

マイナー言語のテキストや辞書は、巨大な英語市場の教材と比べると、内容も作り込みのレベルもお話にならないほどお粗末です。英語教科書に該当する存在は、マイナー言語にはありません。

今回の記事では中学校で使用されている「英語教科書」が抜群に優れている理由を説明します。小学生の子どももすぐに中学に入学します。

子どもは無料で配られる教科書にありがたみを感じなくなっています。そんなときにはお母さんが「実は英語教科書っていうのはね…」とその価値を説明してあげましょう。子どもの英語への取り組み姿勢に影響することは間違いありません。

文法を体系的に学ぶ教材としては最高峰

学校英語教育を批判するときにやり玉にあがるもののひとつは「英語教科書」です。

「人生で一度も使ったことないThis is a pen.を教えている」とか「ネイティブでも使わない古い表現がある」という内容です(ちなみに私はThis is a pen. を実際の場面で一度だけ使いました)。

このような批判を聞くたびに私は「わかってないな」と感じます。もちろん教科書は完全無欠ではありません。しかし、英語教科書の完成度は語学教材において間違いなく最高レベルです。

英語以外の言語に興味を持って学習したことのある人ならわかりますが、英語教科書のレベルに達している教材は見たことがありません。

では、どのような点において学校の英語教科書は優れているのかについて具体的に説明します。

語彙・文法が「積み上げ式」

まず、「語彙・文法が積み上げ式である」ことです。例えばLesson 3の内容を見ると、Lesson 1~2までの内容と、今回新しく学ぶ内容だけで構成されています。それ以外のところからは単語も文法も使われていないのです。

英語教科書イメージ

これは算数の教科書の発想に似ています。足し算・引き算を学んだあとに、掛け算を学びます。足し算を学んでいる部分に、掛け算が混ざることはありません。

イギリスの有名な出版社から出ているESL(第二言語としての英語)教材を見ると、be動詞の疑問文のところにはいきなり疑問詞(What, Were, Whoなど)が登場します。これは日本の教科書ではありえません。

日本の教科書は学習者が一歩一歩学べることに重点を置いています。一方、海外の教材では内容を重視していて、そのターゲットの文法が自然に使われるシチュエーションを優先しています。そのため、純粋に積み上げ式で構成するのはほぼ不可能です。

どちらの教科書を使っても成果は出ているので、一概に白黒つけられるものではありません。

しかし、世の中の英語教材のほとんどは「シチュエーション型」で構成されていいます。積み上げ式で一歩ずつ英語を理解したい人にとっては、日本の英語教科書は唯一無二の教材です。

完璧に正しい

文部科学省の検定をパスしている教科書の編集には、多くの大学教授やネイティブが携わっています。彼らの目で何十ものチェックをパスしているので、使用されている英語表現に間違いはありません。

使用されている表現の中にはたしかに一般的ではない表現もあります。例えば、中学1年の英語教科書の最初にはおなじみの会話が掲載されています。

How are you?
I’m fine, thank you.  And you?

ネイティブにこの表現を見せると、「ダサい」とか「野暮ったい」と感じます。それを知った日本人は「もっとイケてる表現を教えるべきだ」と主張します。

How are you?
I feel good, because….

How are you? に対する答え方は複数考えられます。I feel good, because…. と答えれば、確かに自然な会話になるでしょう。しかし、一般動詞feelをSVCで使用するのは中2から学習します。さらにbecause(接続詞)もまだ学習していません。

自然でイケてる表現をストレートに掲載することが本当に英語初心者のためになるでしょうか?

英語教科書の編集に関わっている人達は「専門家」です。この英語があまり自然ではないことくらい百も承知です。しかし、彼らは生徒達が最もシンプルな形で英語の挨拶を覚えられるように配慮しているのです。「基本形」を覚えておけばあとで応用も効くので、まったく無駄ではありません。

例えるなら、赤ちゃんに最初に食べさせる離乳食のようなものです。離乳食を大人が食べてもおいしいとは感じません。しかし、衛生的で消化にいいもので添加物がほとんどないものです。赤ちゃんには最適です。

成長に合わせて少しずつ大人が食べるようなものを口にしていきます。物事には段階があるのです。

このことを知らずに「不自然だ」という理由だけで教科書を批判するのは、的外れと言わざるを得ません。

周辺教材が充実

中学生の頃、「教科書ガイド」にお世話になったお母さんは多いはずです。和訳が載っているのでそこに価値を感じて購入していたのではないでしょうか。

しかし、最近の英語の授業では和訳を求めるような場面はすっかり少なくなりました。では、「教科書ガイド」の価値は無くなったかといえば、そんなことはありません。

とにかく解説が豊富で、想定される質問のほぼすべてを網羅しています。大人で英語をやり直したいなら、教科書は使わずに「教科書ガイド」だけで学習を進められるほどです。

ひとつだけ難点を挙げると、読み方(発音)がカタカナ表記であることです。ここはやはり、最初の段階で英語の音で正しく覚えないと、永遠にカタカナ読みの呪縛から逃れられません。

わかりやすさを優先しすぎて(カタカナ表記)、学ばせるべき課題(正しい発音・フォニックス)から目をそらしすぎです。

もうひとつ必要なのはCDです。「教科書ガイド」と別売りになっていて、ふたつ揃えると5000円近くしますが、これは絶対に買ったほうがいいです。

よく「日本人英語教師の発音は悪い」と批判されています。それなら付属CDを聞けばいいだけです。CDやテープが存在しなかった大昔と違って簡単に解決できるのに、批判する意味がわかりません。

本文の音読部分だけ再生デバイスにコピーしておくと、より手軽に再生できます。できればスマホの再生アプリを利用して再生速度を変えられるようにしておくと、音読練習に便利です。

最後に「ワークブック(教科書に準拠した文法の問題集)」を揃えれば、教科書だけでは不足する問題数を補えます。ワークブックは学校の副教材で購入することが多いです。

余談ですが、英語教師が定期テストを作成するときは、ワークブックを参考にすることが多いです(私はそうでした)。毎回、オリジナルの問題は作るのは本当に面倒です。だからワークブックの問題をちょっとだけアレンジして作成するのが普通です。

生徒の立場から見れば、ワークブックをしっかり学習するだけで定期テスト対策は充分です。

このように教科書を中心として、「教科書ガイド」「付属CD」「ワークブック」の3点を揃えると、文法・語法の解説、ネイティブの音声、充実した文法問題が揃います。真剣に学習すれば、わからないことはほぼゼロの状態になります。

小学5年生以上の子どもがいて英語を本格的に学び始めているなら、中学1年の教科書とCDを揃えておくと、何かと役に立ちます。中古の教科書はAmazonでも購入できます。

英語教科書の欠点

上記のようにほとんどパーフェクトな英語教科書ですが、実は欠点もあります。その欠点は、学習のしやすさとトレードオフ(あちらを立てればこちらが立たず)の関係にあります。実際に英語教科書にはどのような欠点があって、それを補うためにはどうすればいいのかを解説します。

内容がつまらない

英語教科書の最大の欠点は「内容がつまらない」ことです。主な理由は、積み上げ式の構成を重視しているため、「使用できる語彙や文法に大きな制約」があります。その条件で中学生の知的好奇心を駆り立てる内容にするのは困難を極めるからです。

以前海外にいたときに、私の息子はチューター(家庭教師)に一時期お世話になったことがありました。彼女はときどきイギリスのESL教材を使用していました。

ある日、手渡したコピーにはセリフのない劇画調のマンガが印刷されていました。内容は「誘拐事件が発生。犯人が居眠りしている間に子どもは逃げ出して、犯人は逮捕される」というストーリーでした。

息子はセリフを考えて英語で書いていきます。最後に、すべての話の要約を英語でまとめて、先生の添削を受けていました。私は最初から最後まで隣で見ていましたが、とても興味を惹かれる内容で時間が短く感じました。

ただ、「英語習いたての子どもにransom(身代金)とかkidnap(誘拐をする)という単語は難しすぎるのでは」とも感じました(彼女は教え方が抜群に上手で、結果的には子どもは覚えていたので驚きました)。

一方、日本の教科書は本当につまらないです。昔に比べればイラストは現代風になっているし、自然なシチュエーション設定がされています。それでも、内容のほとんどは中学生の知的好奇心を喚起するものとは程遠いです。

例えば疑問詞(What)を学習するページを和訳すると、およそこのような会話が繰り広げられます。

A: 今朝、何食べた?
B: トーストと牛乳です。あなたはどうですか?
A: 僕はごはんとみそ汁です。
B: へえ、そうなんだ!

正直、どうでもいい内容です。中学生同士で他人の朝食の話をするなら、「輸入したプロテインを飲んでいる」「スーパーモデルが飲んでいるスムージーを飲んでいる」くらいの内容でないと話題にはなりません。

ほとんどの中学生にとっては、教科書本文は退屈極まりない内容です。しかし、先述のとおり積み上げ式の制限を考えると、これだけの会話を成立させるだけでも大変です。

退屈さは、英語学習の大敵です。やはり、簡単な英語で書かれた読書を続けながら、自分の精神年齢に少しでも近い読書を目指すことが大切です。この部分は教科書に期待せず、自分で開拓するしかありません。

教材のおもしろさと自然な英語を追及するなら、こちらの教材を使った学習がオススメです

文量が少ない

教科書は授業をスムーズに進めるために、構成が練られています。中学校の授業時間は50分です。つまり、この時間内に新出語句を扱い、本文を読んでポイントを伝え、ペアワークなどを通じて基本表現を学べるように構成されています。

そのため文章量が圧倒的に少ないのです。中学校3年間分の教科書本文はおよそ七千語といわれています。ネイティブの小3(7歳くらい)が読む本は1ページに100語あり、ひとつの本で100ページくらいです。トータル1万語です。

つまり日本の中学生が3年かけて読む英文の量は、ネイティブの小3が2時間で読み終わる本の約3分の2です。これでリーディング力が養われるわけがありません。

教科書はあくまでも「文法中心の授業を受けるためのもの」と考えて、長文を読むためのトレーニングは英語の読書を並行してすすめなければいけません。

アウトプットはどうするか

学校の授業では「英会話をする機会がない」といわれます。リアルな英会話を指すなら、そのとおりです。会話には相手が必要です。授業ではペアワークなどを頻繁に取り入れながら少しでも会話の機会を多く持たせようと教員は必死になっています。

本音を言うと、どちらも英語初心者同士なのでダイアローグ(対話文)の棒読みになるだけです。理想的には学習者よりもレベルの高い相手が必要です。しかし、学校の環境では、生徒一人ひとりにそんなことは実行不可能です。

そもそも初心者が英語を話せない最大の原因は「インプット」が全然足りていないからです。言葉や表現に詰まるとかのレベルではなく「何も思いつかず無言状態が続く」ことが物語っています。

「日本人はシャイだから英語を話そうとしない」とネイティブがコメントすることがありますが、そもそも頭の中にストックがないので最初のひと言さえ出ません。

自分でできることは、やはり教科書(または教科書ガイド)の徹底的な音読です。音読の仕上げには「日本語を英語に直す訓練」を取り入れます。そして、文章の一部や単語を入れ替えることで「自由英作文」の基礎力を養います。

このようなトレーニングを続けると会話の基礎が身につきます。そして、ある程度のストックができてきたら「オンライン英語教室」などのサービスを利用して会話練習をしたほうがいいです。

後述しますが、教科書の本文以外の部分には会話に役立つフレーズや豆知識がわかりやすくまとめられています。教科書を100%活用してフレーズの暗唱をすると、会話でも冒頭の部分が言えるようになり、表現に困る部分を減らせます。

効果的な活用法とは

授業時間に合わせた「教科書の短い本文」は、実は初心者の音読素材とし最適です。授業で学び、教科書ガイドに詳しい説明があるので、内容はほぼ完璧に理解しています。内容を理解していない英文の音読は、お経と同じです。つまり学習効果はありません。

詳しく内容を解説してくれている英文を音読に活用しない手はありません。音読に関する詳しい学習方法については、別の記事で取り上げていますので参考にしてください。

欄外や資料ページが充実している

教科書の欄外の小さい字で書かれた注意書きや、本文以外の資料ページをじっくりと見てみましょう。驚くほど役立つ情報がわかりやすく掲載されています。

例えば、最近の教科書には本文で使用されている語数(〇〇words)まで記入されています。ストップウォッチを利用すればどれくらいの速さで音読できるかを定期的に測定できます。

私が驚いたのは、中1の教科書の資料ページ「基本的な発音を覚えよう」でした。ほとんどの人は、「アルファベットがA~Zまで並べてあるだけ」と見向きもしないでしょう。

ところが、そこには大文字・小文字・発音記号(アルファベット読みではないフォニックス的な)・発音のコツ・その音を含む単語(アクセントが太字で表示)、そしてその絵すべてが収められています。

textbooks_content

これから英語を習う小学生のいるお母さんなら、この1ページのためだけに教科書を買っても価値があるほどです。私だったらこれを拡大コピーしてラミネート加工します。お風呂に貼ったり、リビングに貼ったりするだけで上質な「アルファベット表」を作成できます。

使いやすいアルファベット表を探すのは難しく、海外製のものは「L」の欄に「licorice」(リコリス: カンゾウという植物)などと日本人に馴染みのない単語が使われることがあります。日本の教科書はそのような単語は使用されていないので抜群に使いやすいのです。

教科書をバカにしている人達は、こうした「資料ページ」の価値をまったく理解していません。残念なのは、中学校の先生もこれらのページを「おまけ」程度に扱って、本文だけを追いかけてしまうことです。

中学校ではこれらのページに時間を割けないなら、小学校のうちに資料ページについて時間をかけて攻略するだけでも相当なアドバンテージになります。小学生のうちから教科書を買っておくといい理由はこのためです。

自分でどんどん読み進めてみる

先述のとおり、学校の英語教科書だけでは文章量がまったく足りていません。子どもの英語力にあった英語の本を並行してどんどん読むのがベストです。

ただ、せっかく本を購入しても「難しすぎて読めなかった」ということはしばしば起こります。

そこで、別の会社から出版されている英語教科書を読んでみるのもいい勉強になります。これのメリットは、普段使用している英語教科書と同様に「積み上げ式」で構成されていることです。

ほぼ同じ時期に同じ文法や単語を学習するので、極端に「内容がわからない」という事態を避けられます。他の学校で使用されている教科書なので、多少は新鮮に感じるかもしれません。

学校教科書なので基本的にそれほどおもしろくはありません。しかし、夏休みなどを利用して他校で採用されている教科書を読んでみるのは、とても効果的な学習方法です。

まとめ

積み上げ式で構成された中学英語教科書は、多数の専門家のチェックを受けた最高レベルの教材です。教科書ガイド・付属CD・ワークブックなども充実していて、教科書を中心に「痒いところに手が届く」状態です。

教科書の最大の欠点は「つまらない」ことです。わかりやすさを優先させるので、本文の内容は中学生の知的好奇心を刺激するものではありません。また、授業で使用されることを前提にしているので、文章量は極端に少ないです。

これらの欠点は各自で英語の読書を続けることで充分に補えます。教科書の最も有効な活用法は「音読素材」としての利用です。

付属のCDを使えば、さまざまなバリエーションで音読トレーニングをしながら総合的な英語力の向上を狙えます。

学校英語の欠点とされている英会話についても、その前段階である「英文のストック」は教科書の音読により増やせます。

教科書は本文だけでなく、欄外に書かれた小さい注意書きやおまけのように扱われている「資料ページ」がとても充実しています。これらを眺めるだけで、大人でも「なるほど!」と感心します。

小学5年生以上の子どもを持つお母さんは、思い切って中1の教科書・教科書ガイド・CDを揃えてしまいましょう。小学生にも役立つ情報が惜しみなく載っています。

お母さんは「教科書」の価値を正しく理解して、子どもが中学生になったときにはその知識をきちんと伝えてあげましょう。

形容詞の並び順は「心」で理解しよう

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英語を学び始めた頃「あれっ、これってどうなっているの?」と疑問に思うことはたくさんあります。しかし、その場ですぐに聞ける先生がいないとそのままになりがちです。

例えば、「私の茶色の新しい靴」を英語で書きたいときにふと手が止まります。

shoes

靴はshoes、これを修飾する言葉はmy, brown, newです。どれも簡単な形容詞ばかりですが、どの順番で並べたらいいのか迷ってしまいます。

そんなときに子どもがお母さんに質問してきたら、多くの人はインターネットで検索するはずです。そして、載っている答えを子どもに伝えます。

子どもを英語しかできない子どもではなく本当に賢く育てたければ、ここでひとつ立ち止まって二人で考えて欲しいと思います。「なぜ、この並び順なんだろうか?」

仮説でもいいので自分なりに納得する答えを出せれば充分です。丸暗記をさせるのと、「なぜ?」を考えさせるのとでは、将来、大きな差が開くと私は考えています。

今回は形容詞の順番を学びながら、お母さんと子どもが頭を使って考えるようになる英語学習のコツを説明します。

どうなっているの? 形容詞の順番

形容詞とは名詞の性質や状態を説明する言葉です。例えば、a beautiful flowerではbeautiful(美しい)という形容詞はflower(花)という名詞をより詳しく説明しています。

日本語でも「美しい花」と表現するので、語順で混乱することは子どもでもありません。しかし、形容詞が3つ以上続くと「どの順番で」それらを名詞の前につけるのか考えこんでしまいます。

3つくらいの形容詞が使われることは普通に起こりえます。形容詞を並べる順番には目安があって、自由に並べられるわけではありません。

参考書を開くと

「私のペン」はmy penで簡単です。「私の2本のペン」もmy two pensもそれほど迷わずに答えられます。

では、「私の2本の長い赤いペン」はどうでしょうか? longとredをどこに置いたらいいのでしょうか?

文法の参考書によると下の表のような順番が示されています。
adjectives order
形容詞の並び順にはある程度の目安があります。たしかに入れ替えて読んでみると「違和感」を覚えます。

しかし上の表を暗記するのは面倒ですし、すぐに忘れてしまいます。ネイティブはどのようにしてこれらの順番を覚えているのか調べてみました。

OSASCOMP(オサスコンプ)とは

ネイティブは形容詞の並び順に関して、それぞれの頭文字を取って「OSASCOMP」と覚える人もいます。どのようなものか詳しく説明します。

Opinion-Size-Age-Shape-Colour-Origin-Material-Purpose
  • Opinion(主観)

これは主観的な判断に関する言葉が該当します。

my perfect case

perfect(完璧な)はその人の主観的な意見なので、最初のほうに置きます。

  • Size(大きさ)

これは大きさ(big, small, largeなど)が該当します。

my perfect small case

  • Age(古さ)

これは古さ(old, newなど)が該当します。

my perfect small new case

  • Shape(形)

これは形が該当します。

my perfect small new round case

  • Colour(色)

これは色(black, white, redなど)が該当します。

my perfect small new round black case

  • Origin(出どころ)

これは出所・起源が該当します。

my perfect small new round black French case

  • Material(材料)

ここには材料が来ます。

my perfect small new round black French wooden case

  • Purpose(目的)

最後に目的が来ます。

my perfect small new round black French wooden pencil case

OSASCOMPを参考書の並び順に当てはめてみます。
OSASCOMP上記の説明で示した具体例は、あくまでも説明用のものです。実際は連続して形容詞を多用するのは避けられます。通常使用される形容詞は3つまでです。

また実際には多少の順番の入れ替わりはあり得ます。したがって、上記の並び順は絶対的なルールではありません。

日本語でもOSASCOMPでも、形容詞の並び順に関して「丸暗記」するのはおすすめしません。特に子どもに英語を教えるときは、できるだけ「暗記させない」工夫が必要です。

子どもを英語が得意にしたければ、安易に「丸暗記」させない

実は私は暗記科目が大の苦手でした。本当に「どうしてこんなに覚えられないのか」と自分でも呆れるほどです。そのため、高校では世界史や日本史のテストでは常に赤点を取り、夏休みに補習を受けなければいけないありさまでした。

あるとき英語のテストが返却されました。いつもより問題が難しく、平均点が40点台でした。先生は怒り心頭で「トップが90点で、その次が70点台だぞ。ひどすぎる!」と吠えまくっていました。

クラスメートの関心は「誰がトップだったのか」です。成績上位の常連も全滅でした。そして最後まで誰が最高点だったのかわからずじまいでした。

もうわかると思いますが、最高点は私でした。私は試験範囲を勉強して点数が上振れするのが嫌だったので、自分の英語力を正確に測るために一度も「試験範囲の勉強」をしたことがありませんでした(マネしないでください)。

もちろん、まったく英語を勉強しなかった訳ではありません。そのかわり英語で読書をしたり音読したり文法の学習は自分のペースで続けていました。

この経験から断言できますが、英語に暗記力はほとんど必要ありません。むしろすぐに「丸暗記」するのは、大事なことを学習する機会を奪ってしまうことにつながります。

なぜ、そうなっているのかを立ち止まって考える

前述のとおり私は暗記が苦手でした。そこで英語の文法や語法を学習するときはできるだけ丸暗記を避けて「なぜ、そうなるのか?」を常に考えるようにしていました。

語源や文化的な背景、人間の心理にまで考えを自分なりに巡らせて納得しながら英語を学習すると、忘れにくいし雑学も増えます。

例えば「たがをはずす」を聞いて「規律や束縛から抜け出す」と丸暗記すると、「たが」とは一体何なのかを学習する機会を失います(ちなみに「たが」は樽の外側にはめて締めるための輪のことです)。

たが

言葉は人間が長い歴史の中で作り上げてきたものです。何かしらの起源や意味、心理的なものがベースにあるものです。それに気づくか気づかないかは、そのときに限ればたいした違いではありません。

しかし10年・20年と経過すると、「丸暗記→テスト後に忘却」してしまう人と「なぜと疑問→理由を探す」の習慣がある人とでは、大きな差となって現れます。子どもの「地頭」を鍛えるためにも非常に有効な方法です。

文法理解は「心」で理解せよ

さきほどの形容詞の順番ですが、私はいちいち覚えていません。説明を書いておいてひどい話ですが「覚えられない」のです。

それでも何とかなっている私の頭の中を公開します。

「結びつきの強いものは近くに置きたい」心を理解する

名詞に近い形容詞に注目しましょう。「材料に関する形容詞」は「名詞」に最も近い形容詞です。材料は、その名詞が作られている素材そのものです。つまり、名詞ととても親密な関係にあります。

それに比べると「古さ・大きさ」などは、名詞と「距離が離れた形容詞」と考えられます。

形容詞の順番の心

そして、英語においては4つ以上の形容詞を一文の中で同時に使用することはあまり推奨されていません。だから、「ほどほどに覚えておけばいい」のです。

私の頭の中をさらけ出すと、「theとかmyが最初、次に数字、あとは心理的に結びつきの強い形容詞を名詞のそばに置く」程度にしか理解していません。

「いい加減な奴だ。そんなレベルでよく教員をしていたな!」と叱られそうですが、本当だから仕方ありません。これは形容詞の順番に限ったことではなく、文法の学習は常にこんな感じです。

大量の音読トレーニングをすることで、自然と形容詞の順番も身につきます

練習問題

それでは練習問題を載せておくので、お母さんは子どもと一緒に形容詞を正しい順番に並べて名詞を修飾してみましょう。ふたりでワイワイいいながらやってみると楽しいです。

1.名詞 a dressを修飾してみましょう

使う形容詞:white, perfect, new

2.名詞 the chairを修飾してみましょう

使う形容詞:wooden, Chinese, old

3.名詞 my shoesを修飾してみましょう

使う形容詞:old, leather, expensive

解答

1.a perfect new white dress

(Opinion-Age-Colour)

2.the old Chinese wooden chair

(Age-Origin-Material)

3.my expensive old leather shoes

(Opinion-Age-Material)

まとめ

形容詞とは名詞の性質や状態を説明する言葉です。通常は3つまでの形容詞が連続して使われることがあり、どの順番で並べるか迷ってしまいます。

参考書には詳しい説明はありますが、丸暗記するのは面倒です。OSASCOMPという頭字語を使って形容詞の順番を覚えることも可能ですが、これも基本的には暗記です。

言葉は人間が作り出したものであり、その裏側にはその言葉を使う人達の文化や心が現れています。すぐに丸暗記させず、「なぜ、そうなっているのか?」を子どもに考えさせるようにしましょう。

形容詞の場合は、「修飾する名詞と結びつきの強い形容詞ほど近くに置かれる」法則があることに気がつきます。

ちょっと立ち止まって心理的な面から文法や語法を理解すると、忘れにくくなると同時に地頭の良い子どもになります。「覚えるしかない」「そう決まっているから」と子どもに英語を押しつけないように気をつけましょう。

「なぜだろう」と考えると子どもは知的になります。お母さんはそういうきっかけを作ってあげられるようにサポートしてあげましょう。

 

「brother, sister, sibling」で英語と日本語のズレを確認しよう

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欧米で教育を受けた帰国子女は日本に帰国すると「(年齢の)上下関係や先輩後輩の感覚を理解できない」といわれますが、これは本当です。欧米では相手が自分より年上か年下かはあまり意識しません。

この文化的な違いは、英単語にも表れています。例えば、子どもでも知っているbrotherとsisterです。便宜上、日本語では「兄弟」とか「姉妹」と訳されています。しかし、お気づきのとおり、brotherとsisterには年上・年下の区別はありません。

brotherとsisterを使用していて、使いづらさを感じるのはこれが原因です。このように英語と日本語で1対1に対応していない単語はたくさんあります。

その他にも、英語を話すときに性別がわからないと迷ってしまう場面があります。性別がわからないbabyやpetの代名詞は、he/ she/ itのどれが適切なのでしょうか?

今回取り上げた単語はどれも子どもでも知っている単語ばかりです。お母さんがときどき子どもに英語の雑学を教えてあげると、子どもの知的好奇心を刺激できます。

「兄弟(姉妹)はいる?」と聞きたいときはどうするか?

「日本語を介さずに英語を話しなさい」というアドバイスをしばしば見かけます。私は学生時代からずっと英語を学んできましたが、正直未だにこの境地には至っていません。

確かに“Thanks.”レベルの表現は、すぐに口をついて出てきます。しかし、普通に何かを話すときはほんの一瞬でも「日本語」で内容を考えています。

「日本語で考えない」に縛られすぎるとかえって英語が出てこなくなります。だから自分の子どもにはあまりヒステリックに「日本語で考えるな」とは強制しないようにしています。

ただし、名詞に関しては「物のイメージ→英語」で覚えるほうがいいです。

 

apple

つまり「apple=リンゴ」ではなく、図のようにイメージと英単語をダイレクトに結びつけるのです。あとで日本語の「リンゴ」であると結びつけるのはOKですが、わざわざ日本語を間に挟んで記憶する必要はありません。

ところが英語と日本語は常に1対1で言葉が対応しているとは限りません。このタイプの単語を学ぶときは、日本語と比較しながら「重なる部分」と「重ならない部分」を確かめたほうが英語を深く理解できます。

子どもでも知っている単語の中にもそのような単語はたくさんあります。ここではbrotherとsisterについて取り上げます。

日本語の兄弟姉妹と英語のbrother & sister

日本語の「兄・弟・姉・妹」は男女を区別するだけでなく、年上・年下の関係も明確に示しています。アジア圏の上下関係を重んじる文化を感じます。

男 女
年上 兄 姉
年下 弟 妹

ちなみに日本語で「兄弟はいますか?」と質問されたときに、「はい、妹がいます」と答えても不自然ではありません。これは「兄弟」が「姉妹」の意味も含めて使われているからです。

次に英語のbrother/ sisterは男女を区別はしていますが、年上・年下は同じ扱いです。これを表で表したのが下です。

男 女
年上 brother sister
年下

英語で日本語と同じような意味で「兄弟(姉妹)はいますか?」と質問する場合、“Do you have any brothers or sisters?”となります。何だか面倒です。

さらに“Yes, I have a brother.”と相手が答えた場合、兄なのか弟なのかはっきりしません。年齢の上下を区別するときには、年上にはelderを年下にはyoungerをつけなければいけません。

男 女
年上 elder/ big brother elder/ big sister
年下 younger/ little brother younger/ little sister

*big brotherとかlittle brotherと表現することも多いです。

elderとよく似た単語で同じ形容詞のelderlyは「お年寄りの」の意味になります。私は勘違いしてelderとelderlyを混同していた時期がありました。紛らわしいので間違えないようい気をつけましょう。

英語にもあった! 「兄弟姉妹」を表す1単語とは

実は英語にはbrotherとsister以外にも「兄弟姉妹」すべてを網羅する便利な単語があります。それはsiblingです。

男 女
年上 sibling
年下

ご覧のように、たったの1語で済ませられるとても便利な単語なのです。しかも日常的にかなりの頻度で使用されています。

「兄弟はいますか?」の質問をsiblingで作文すると次のようになります。

“Do you have any siblings?”

だいぶ簡単に表現できます。

他にも何かの書類で“siblings”という記入欄を見たことがあります。かなり浸透している言葉なので、海外に行く機会のある人は知っておいたほうがいい単語です。

私が最も頻繁にsiblingを目にしたのは、インター校での保護者宛のメールでした。学期の最後のお迎えのときの注意にはこのようなメールが来ました。

Older children will be asked to sit with their younger siblings.  So when you drive through, the location of your youngest child should be where you stop to collect.
(年上の子どもは年下のきょうだいと座るように指示されます。だから車で来られるときは、一番年下のお子様の場所があなたが子どもを拾う場所です)

siblingは決して特殊な単語ではありません。子どもがbrotherとsisterを覚えたら、ついでにsiblingも教えてあげましょう。男女の区別をしなくてよいので、きっといろいろと役立つ場面が出てくるはずです。

babyの代名詞も難しい

簡単な英語なのに、いざ話そうとすると考えこんでしまうときがあります。

学校に子どもを迎えに来ると、知り合いのお母さんがかわいい赤ちゃんを抱っこしていました。ベビー服を見ると白のベビー服なので「男の子か女の子か」わかりません。

そこで「男の子ですか、女の子ですか?」と質問するときに、ふと止まってしまいました。

Is (  )a boy or a girl?

文法的には簡単なbe動詞の疑問文です。問題は(  )の中は「he/ she/ itのどれが適切なのか」です。
baby

参考書ではbabyの代名詞は、性別がわからないときはit、それ以外はhe, sheで受ける

文法の参考書では「babyの代名詞は、性別がわからないときはit、それ以外はhe, sheで受ける」と書いてあります。

しかし、いざ赤ちゃんを抱っこしているお母さんを前に、性別がわからないからといって「it」を使うのがはばかられたのです。試験の解答用紙には躊躇なくitと記入できます。ところが、実際の場面では「失礼になるのではないか」と不安で言えませんでした。

しばらくすると別のママ友が“How cute!  Can I hold her?”と近寄ってきたので、「女の子か!」とわかったので、そのあとは普通に会話できました。

itは奥の深い代名詞

文法上はitで間違いないのですが、やはり人間の感情としてかわいい赤ちゃんにitを使うのは気が引けてしまいます。このへんの微妙な感覚をいつかネイティブの人に聞いてみようと思っています。

冷静に考えれば、代名詞を使わずに“Is your baby a boy or a girl?”と聞けばよかったです。

そういえばスティーブン・キングのホラー小説に『IT』があります。2度映画化されて私も観ました。弱い子どもにしか見えない不気味な存在の「何か」は確かに「IT」でしか表せません。

このようにitには明確に既出の名詞を指す場合と、正体不明の何かを示すために使われる場合の両方があります。

ペットも同じ

赤ちゃんと同様に、ペットの場合も「性別がわからないときはit、それ以外はhe, sheで受ける」ルールが適用されます。

しかし、ペットを溺愛している飼い主に向かって、「it」とはなかなか言えないです。「モノ」の響きがあるからです。こういうときは主語を省略して「男の子ですか、女の子ですか?」と聞ける日本語は便利だなと感じます。

代名詞について子どもに教えるときに、ゴリゴリの暗記をさせるとすぐにあくびをし始めます。しかし、このような話を織り交ぜながら考えさせると、日本語と英語の違いについて理解を深めることができます。

まとめ

「brotherとsister」は英語習いたての子どもでも知っている単語です。しかし、日本語の「兄弟と姉妹」という訳語にはぴったりと一致していません。なぜなら、上下関係がわからないままだからです。

この違いに着目すると、その言語を使っている人達の文化が見えてきます。日本は人間関係において年齢を重視しています。一方、欧米の人達は日本ほど相手の年齢を気にしていません。だから区別する必要が薄いのです。

ところで、英語には兄弟姉妹すべてを包括した単語があります。それはsiblingです。決して特殊な単語ではなく、日常会話でもしばしば使用されます。

人を表す代名詞の場合は男女の区別をします(he/ she)。しかし、性別がよくわからない赤ちゃんやペットに対しては、itを使うことがあります。知識としては正しいのですが、いざお母さんや飼い主の前でitと言おうとすると、抵抗を感じてしまいます。

itは短い単語ですが、英語と日本語の違いを知り文化的な差異に気づかせるきっかけになります。

英語を勉強として捉えて、ワークブックばかりやらせると子どもは英語を嫌いになってしまいます。しかし、おやつの時間などに、子どもにこのような話をしてあげると言語や文化に対する興味を惹くことができます。

子どもの英語学習:多読を取り入れるとなぜ語彙が豊かになるのか

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子どもの国語力の低下が話題になると、いかに子どもに読書をさせるか、という議論につながります。なぜなら、読書をすると国語力が伸びると考えられているからです。

一般的に読書好きな人は、そうでない人に比べて語彙が豊かです。しかし、なぜそうなるのかについては、あまり深く考えられていないような気がします。

英語では多読を続けると語彙力は伸びます。これは単に知っている単語数が増える、ということではありません。すでに覚えている単語の別の意味を覚えたり、比喩表現に気づくなど、もっと広い意味で語彙が豊かになります。

そこで今回の記事では、なぜ小学生の英語に多読を取り入れると英語の語彙力を豊かにできるのか、について説明します。

小学生の英語学習で多読を取り入れると語彙が豊かになる理由

リーディング力を向上させるには、正確に一文ずつ英文を解釈していく「精読」と大まかな文意を捉えながら大量の英文を読む「多読」の訓練を並行するのが効果的です。学校では精読を中心に指導されるため、どうしても多読指導にまで手が回りません。

小学生でも英検4級に余裕で合格できるほどの実力があるなら、積極的に多読トレーニングを取り入れるべきです。過去形・進行形・助動詞など英語の基本を理解し始めたころなので、始めるにはちょうどよいタイミングです。

多読というと洋書を何時間も読み続けるイメージがあります。しかし、それはさすがに小学生には難しすぎます。

多読に使用する教材は、「語彙制限本」と呼ばれるジャンルのものを使用するようにしましょう。語彙制限本とは、使用されるボキャブラリーレベルを限定し、読者のレベルにあった英単語だけを使用して書かれた本のことです。

具体的には、「ラダーシリーズ」や「Oxford Bookworm Library」がこれに相当します。また、「リトルフォックス」というサイトでは、楽しい物語が動画や音声付で利用できるようになっています(本についての詳細はこちらをクリック)。

これらの語彙制限本を利用すれば語彙数がまだそれほど多くない小学生の英語学習者でもストーリーを楽しめます。多読は読む量が大切なので、子どもが興味をもって楽しく読めるものを選ぶようにしましょう。

多読の効能はいくつかありますが、ここでは多読を通じて語彙がどのように豊かになるのかを説明します。

知らなかった単語を覚えられる

語彙制限本であっても、知らない単語に必ず出会います。その中には、一般的に学校や検定などでは登場しないような単語も登場します。

そのような単語はキーワードであることが多く、文中で何度も登場します。そのたびに忘れかけていた意味を思い出すので、記憶が強化されます。

私も中学生の頃、夏休みに英語の副読本と呼ばれる薄い本が課題に出されたことがありました。はじめは嫌々でしたが、広島で被爆した女の子の話に引きこまれていきました。

その主人公は最後は白血病で亡くなるのですが、白血病を意味するleukemiaという難しい単語はその時に覚えました(そして今でも忘れていません)。

感動した話とleukemiaという単語が結びついて(いわゆるエピソード記憶)、忘れにくくなっているのかもしれません。

ちなみにアルクによるレベル別語彙リストSLV12000のうち上から2番目のLevel11にleukemiaが掲載されていました。中学生でもこのレベルの単語を一発で覚えられるのが、多読のパワーです。

学校英語では取り扱われない生活用語を覚えられる

料理の名前や日用品など、ネイティブなら幼児でも知っている英単語を覚えられます。日本の英語の教科書では、environment(環境)など小難しい単語はどんどん登場します。しかし、大学受験を控えた受験生でさえ、「小指」を英語で言うことができません。

正解は「little finger/pinky」ですが、このような単語は読書をしていると頻繁に登場します。

「こんな単語を覚えてもテストに出ないため無駄」と考える人もいます。しかし、私はそうは思いません。いざ外国で生活する場面が訪れたときは、非常に役立つからです。

学校で教えてくれない生活語を多読で補う。

日本の英語教育の偏りを正しくしてくれる効果が期待できます。

多義語の「核」を知ることができる

やさしい単語ほど辞書で調べると定義がたくさんあってウンザリした経験はありませんか。例えば、haveという動詞を使った3つの文を見てみましょう。

I have a car.(私は車を持っている)

I have breakfast.(私は朝食を食べる)

I have a cat.(私は猫を飼っている)

このようにhaveという一つの単語でも、使用される文脈によって「所有する」「食べる」「飼う」などの異なる意味で使用されます。多くの意味を持つ言葉を「多義語」と呼びます。

多義語を学習するときに、訳語をすべて暗記しようとするのは学習効率が悪いです。

大切なのはいろいろな用例に触れながら、中心にある「核」のイメージを固めていくことです。haveの中心(核)にある意味は、「取り込んでいる」イメージです。これを中心に文脈ごとに照らし合わせると、自然と訳語は思い浮かぶものです。

I have a car.(私は車を取り込んでいる。→私は車を持っている)

I have breakfast.(私は朝食を取り込んでいる。→私は朝食を食べる)

I have a cat.(私は猫を取り込んでいる。→私は猫を飼っている)

多読をすると大量の英文に触れるので、中心にある意味を探る作業を頻繁にすることになります。これは基礎単語を使いこなすときにも大切で、会話にも役立ちます。

知らない単語の意味を文脈から類推する能力が高まる

先述の通り、本を読むと知らない単語がたくさん登場します。すべて辞書で調べていたら時間がもったいないです。そういうときは前後の文脈から「多分、こんな意味だろう」と類推します。

例えば、neighbor(近所の人)という英単語を知らなくても、文脈から意味を類推できます。

I don’t like my neighbor.  They are noisy at night.

少なくとも、neighborが人であることがわかるため、近くに住んでいる人達のことを指すのだろうという類推ができます。

どんなに単語を覚えても知らない単語は登場します。類推力を高めておくと難しい英語でも物怖じしなくなります。

小学生でも高い類推力を持った子どもがときどきいます。これは日本語・英語どちらの読書でも養われる能力なので、これまでの日本語での読書経験がものを言うのかもしれません。

知らない単語を無視できる

語彙数を増やすことと矛盾しますが、多読のためには「知らない単語を無視する」能力も必要です。いちいち辞書で意味をしらべていたら、せっかくのストーリーが台無しです。

話の展開に重要でなければ、無視してかまいません。英語初心者は、どうしても一語一語の意味をすべて知らないと気になってしまい先に進めなくなるものです。

これを防ぐには、話の展開がおもしろい本を選ぶしかありません。先の展開が気になれば、いちいち辞書を引くのがもどかしくなります。そして、大切ではないと判断したらすぐに無視できるようになります。

ときには書店へ連れていこう

このように語彙の観点だけからも、多読によって子どもの英語力がメキメキと伸びることがわかります。読書を通じて「おもしろい」「楽しい」という感覚を覚えて、自発的に読書に没頭するようになると英語力は爆発的に伸びます。

ネットで本を注文するのもいいのですが、もし洋書を取り扱っている大型書店(紀伊國屋書店やジュンク堂など)を訪れる機会があるならぜひ語彙制限本コーナーにお子さんを連れて行ってあげましょう。

https://town.ietan.jp/ie-ikebukuro/97

「読める・読めない」の判断は子どもに任せたほうがいいです。ときには読まずに放置される本もあるかもしれません。そんなときでも、読書を強制しないように気をつけましょう。自発的な興味・関心に任せるのが一番です。

多読に慣れておくと、英検の長文や高校入試の長文問題でも圧倒的に速く読めるため有利です。小学生でも英検4級程度の文法力・語彙力があるなら積極的に多読を取り入れましょう。

まとめ

小学生で英検4級相当の実力があるなら、積極的に多読トレーニングを取り入れましょう。多読にはいくつかの効能がありますが、語彙力が豊かになるのは間違いありません。

語彙力が豊かになるといっても、単に知っている語彙数が増えるということではありません。学校英語で扱われないけれど子どもでも知っているような生活用語に触れる絶好のチャンスです。

多義語の攻略には訳語一つひとつの暗記ではなく、中心にある核のイメージを捉えられるかどうかが大切です。大量の英文に触れることによりこの感覚が研ぎ澄まされます。

知らない単語に出会ったときも、文脈から意味を類推できるようになります。反対に、話の展開にそれほど重要でないときには、知らない単語を無視して読み進めることもできるようになります。

このように小学生でも英語の多読にチャレンジすることにより、英語の語彙力を飛躍的に伸ばすことが可能です。洋書を取り扱っているような大型書店を訪れるときには、子どもに何冊か選ばせてあげましょう。

このような機会を親が多く作るだけで、子どもの英語力は大きく伸びます。

「fishの複数形はfish」からできる子どもを育てる

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私は25歳のとき、初の海外旅行先にニュージーランドを選びました。バスで国内を移動中、突然バスが田舎道で止まりました。

すると、何百頭のヒツジの群れが道路を横断しているのが見えました。人口よりもヒツジの数のほうが多いと言われるニュージーランドらしい光景でした。このとき突然「なぜ、sheepは複数形でもsheepなんだろうか?」と私は考えました。

sheepは複数形でもsをつけない代表的な名詞です。同じく、fishも複数形でも形は変わりません。「ヒツジと魚の共通点は何だろうか?」としばらく考えましたが、そのときは何も思い浮かびませんでした。

今回の記事は、単数形でも複数形でも形が同じ「fish」について取り上げてみます。子どもでも知っている単語ですが、実は奥が深い名詞です。

お母さんはこの記事の内容を雑談のなかで子どもに教えてあげてください。きっと興味を惹かれる子どももいるでしょう。

fishは単複同形の名詞

英語を学び始めて最初に嫌気がさすのは「名詞」に関する文法です。名詞の単数形・複数形や可算名詞(数えられる名詞)・不可算名詞(数えられない名詞)の概念は日本人には理解しがたい感覚です。

学習初期のうちは簡単です。appleは数えられる名詞(可算名詞)だけれどwaterは数えられない(不可算名詞)ことは、子どもでもほぼ理解できます。

しかし、次第に日本人の理解を超えていきます。例えばfurniture(家具)が数えられない名詞であることを知ると、子どもはもちろん大人でも混乱し始めます。

furnitureはいろいろな種類の家具の総称であるため正確には「家具類」のことを指します。だから、one furnitureとかtwo furnituresとは数えません。数える必要があるときは、a piece of furnitureとするか、two desksなどと具体的に表現します。

このように英語では名詞について独特の捉え方をしており、子どもの英語学習の負担になっています。

fishは単数形と複数形が同じ名詞

突然ですが、問題です。( )の中にfishを必要に応じて適切な形に直して入れてください。

I can swim like a (      ).
We caught a lot of (     ) yesterday.

解答です。

I can swim like a (fish).
We caught a lot of (fish) yesterday.

fishは子どもでも知っている単語です。注意しなくてはいけないのは、複数形になってもfishのまま(s, esがつかない)であることです。

学校のテストでもよく出るところなので、正解したお母さんも多かったかもしれません。

このように単数形も複数形も形が変わらないことを「単複同形(たんぷくどうけい)」と呼びます。

形が同じだけで単数形と複数形がある…つまり可算名詞

はじめに次の2文を読んでください。

I caught some fish.
I want some water.

ここで質問です。fishはappleと同様に数えられる名詞(可算名詞)でしょうか。それとも、waterと同様に数えられない名詞(不可算名詞)でしょうか。では、少しだけ考えてください。スタート!

正解:fishは可算名詞

形が変わらないので、waterと同じくfishは不可算名詞であると誤解する人が多いです。しかし、実際は、fish は数えられる名詞(可算名詞)です。複数形の「s(es)」が付かないだけです。

言葉だけではよくわからないので、表にして整理してみます。

表で確認してみる

単数形 複数形
可算名詞

(数えられる名詞)

apple apple apples
fish fish fish
不可算名詞

(数えられない名詞)

water water water

この表からわかるとおり、fishは複数形のときにs(-es)がつかないだけで、実は数えられる名詞です。だから、次のように表現できます。

I need two fish for dinner.

一方、waterにはone, two…と数字をつけることはできません。理由は数えられないからです。この場合は、下記のように入れ物(容器)にいれて数えるしかありません。

a glass of water, two glasses of water

単複同形の名詞に見える人間の歴史

fishのように単数形も複数形も形が変わらない名詞(可算名詞)は、他にもあります。

sheep(ヒツジ)
deer(シカ)

正確に調べたわけではありませんが、群れで行動する動物や人間が狩猟対象・家畜対象として認識している動物に、単複同形の名詞が多いように感じます。毎日見て世話をしたり食べたりしているといちいち「複数形のs」をつけるのが面倒になったのかもしれません。

文法を絶対的なルールとして捉える人もいますが、それは間違っています。言葉は人間的であいまいなものです。fishの扱いは人間の都合で見方を変えているだけです。合理的な理由があるわけではないのです。その証拠に時代によって文法は変化しています。

fish, sheep, deerが単複同形であることから、人間の狩りや動物の飼育の歴史を垣間見ることもできます。

単なる知識として子どもに押し付けると英語嫌いまっしぐらです。しかし、おやつの時間などに子どもとこのような話をしながら、「なぜそうなったか」について意見を出し合うと英語への理解や興味関心を引き出せます。

スーパーで売られている魚はどうやって表す?

以前、マレーシアに住んでいるときにマーケットにいくとデカい謎の魚を切り売りしていました(歯ごたえのある白身魚でおいしいです)。

妻に買い物を頼まれたときは、店のおばさんに“I’ll take four slices of fish.”(魚4切れちょうだい)と注文すると、手際よく切り身にして渡してくれました。

切り身はa slice of fish

four slices of fishという言い方は、a slice of breadと同じ表現です。つまり、fish(魚)を数えられない名詞として考えています。

つまり下の写真のような魚は不可算名詞です。

slices of fish

「肉」として扱われる場合の魚は不可算名詞です。このように決まった形を持たない物質として扱われる場合、数えることはできません。このような種類は「物質名詞」と呼ばれ、他にも下記のものなどが該当します。

cheese(チーズ), wine(ワイン), paper(紙), smoke(煙), iron(鉄), wood(木)など

そのような訳で、数えるときはa slice of fish, two slices of fishと表現することになります。

魚の「種類」を強調するときはfishes

実は、魚の「種類」を強調するときはfishesと表現することがあります。例えば下記のような文章でfishesは使われます。

There are many different kinds of fishes in this river.

(この川には多くの種類の魚がいます)

しかし、この文章でs(es)を付けずにfishを使用しても間違いではありません。子どもに細かいことを教えると混乱するので、やはりfishは単数形も複数形もfishで統一したほうがよいです。

上記のように、魚をどのような対象で見るかによってfishの扱い方が変わることがわかります。生物としてなら可算名詞としてのfish、切り身で売られているときは数えられない名詞(物質名詞)としてのfishとなります。

種類を強調するときのみfishesと表現することは可能です。しかし、fishでも間違いではないのであえて覚える必要はありません。

意外な単複同形名詞

海外旅行に行くとお金を支払う場面は多々あります。そのときにふと思うのは、「お金の単位には複数形のsをつけるのだろうか」という疑問です。

日頃音読している記憶では、“one hundred yen”が普通です。 “one hundred yens”は見たことがありません。

日本のお金「円」は単複同形の名詞です。

dollarにあって、yenにはないもの

では米国の通貨である「ドル(dollar)」はどうでしょうか。

実は、dollarにはsをつけます。つまり、one dollar、two dollars、three dollars…と続きます。同じく英語ネイティブであるイギリスの通貨「ポンド(pound)」も、複数形のsをつけます。

表

頭を整理するために、下の表をご覧ください。

単数形 複数
dollar dollar dollars
pound pound pounds
Euro/ euro Euro/ euro Euros/ euros
yen yen yen

表の中に「ユーロ」があります。英語での表記で、大文字から始めるか小文字から始めるかはまだあいまいです。複数形に関してはsをつけます。

根底にある考え方

アジアの通貨には複数形でも「s」を付けません。やはり英語ネイティブの価値観は「西欧中心主義」であることが、お金の数え方からもチラッとうかがえます。

文法は数学のようにきれいに割り切れるルールなど存在しません。すべて人間の心理や思考に基づいているので、あいまいな部分や文化的な価値観が現れています。

英語を深く学ぶとこのような違いにも気づきます。余談ですが英語の普及は完全に政治的なものです。大英帝国の植民地主義や20世紀に大国となったアメリカの影響力が大きかったからこそ、英語は共通語のような扱われ方をしています。

英語中心の世界が、英語ネイティブに有利に働いていることは間違いありません。

まとめ

fishは子どもでも知っている基本単語ですが、複数形のときも「s(es)」は付きません。いわゆる「単複同形」の名詞です。

形が変わらないため、waterと同じく不可算名詞として考える人がいます。しかし、それは誤解です。fishはあくまでも可算名詞で形が変わらないだけです。

おなじfishでもスーパーで切り身として売られている場合は、waterと同じ「不可算名詞」と同じ扱いになります。また、種類を強調するときはfishesと複数形の「es」をつけることもあります。

同じく紛らわしい名詞にお金の単位があります。yen(円)には、one yen, two yen, three yen…のように複数形のsをつけません。ところが、dollar(ドル)、pound(ポンド)、euro(ユーロ)にはsをつけます。

英語を母国語としない日本人から見ると謎の文法です。背景には人間の都合だったり政治的な力が働いていたりします。このような些細なことからも英語やそれを使う人達との文化的な違い・考え方の相違を感じられます。

理屈をこねて伝えると子どもは英語嫌いになります。しかし、何かの折にこれらの話を分かりやすく伝えてあげると、子どもの英語や異文化に対する興味・関心を喚起できます。

英語を学ぶ意味のひとつは異文化理解です。言葉を通じて世界を別の視点から眺められるようになります。英語を正しく学ぶとより深く世の中を見渡せる子どもになります。

小学生に英文法を学ばせるときのコツとは?

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子どもからテストを渡されて、最初に何をチェックしていますか? 「得点でしょ」というお母さんの声が聞こえてきそうです。

私は子どものテストを受け取ったら、得点よりも「学習内容」を先に見ます。今、何を勉強していているのかが気になるからです。そして、理解できていることと理解できていないことを確認します。得点にはあまり関心がありません。

私の専門は英語ですが、国語のテストは細かくチェックしています。特に「主部・述部・修飾語」の文法問題が出題されたときは注意深く見ています。なぜなら、この理解度によって英語文法を教えるべきタイミングを判断できるからです。

個人差はあるものの、小学4年生くらいから少しずつ英語文法を理解し始めるようになります。でもその年齢はまだ抽象的な概念の操作は得意ではありません。そのため文法を教えるときは慎重にしないと、一気に英語嫌いになってしまいます。

先生にお願いするにしてもお母さんが自分で教えるにしても、文法を何のために学ぶのかを正しく理解しなければいけません。日本人の子どもは、ネイティブのように無意識に英語を話せません。そのため、日本語と英語の違いを理屈で理解しなければいけません。

このときに必要なのが文法です。文法は正体不明の外国語をわかりやすく理解させてくれる便利な知識です。文法を学ぶと「自信をもって英語を使えるようになる」のが理想です。文法の知識が足枷になり英語を積極的に使えなくなってしまうのでは、本末転倒です。

この記事では英語学習には欠かせない英語文法を小学生が学ぶときに、どのようなことについて注意をしたらいいのかを詳述します。また、文法を理解できるタイミングの見極め方や具体的な方法について解説します。

小学4年生から英文法にチャレンジ

子どもが英語を学ぶときは「音の学習中心」ですすめたほうがいいです。アルファベット、フォニックスの基本、基本単語やセンテンスの音読を通じて英語の音に慣れていくのが理想です。

街の英語教室に子どもを通わせているお母さんの中には「遊びみたいなことばかりしている」と感じるかもしれません。しかし、遊びを通じて英語を発話する機会を多く作っているのならとても有意義です。

ところが小学3年生くらいになると、無邪気にリピートする子どもは少なくなります。積極的に英語を話そうとする姿勢が見られなくなってくるのです。

こうなるとそれまでと同じようなアプローチで学ぶのは難しくなります。それでも「音」の学習の重要性は変わりません。家で英語を音読したりするときは、お母さんは否定的な言葉を使わずにできるだけ良い部分をほめてあげるようにしましょう。

そもそも小さい子どもに特有の無邪気さが消えていくことは、悪いことではなく成長の証です。これまで何も考えずに言われた英語を「リピート」していたけれど、あるときから「あれ、日本語と全然違うぞ」と気がつき始めます。

これが「英語文法」への意識の始まりです。この疑問を感じ始めたタイミングをうまくとらえると、効果的に英語文法の学習を開始できます。これ以降は音の学習と文法の学習を並行して進めていくと効果的です。

日本語との違いを意識し始めたときが合図だが

例えば“I played football in the park yesterday.”(きのう公園でサッカーをした)を音読するとき、小学2年生までの子どもなら何も考えずに先生の後について大きな声で読み上げます。

しかし、小学3・4年生になると「あれっ、yesterday(きのう)は何で最後に来るんだろう?」「サッカーをしただから、football playになるはずなのに…」と日本語と英語の違いに気づき始めます。

このように子どもがモヤモヤした感情を持つようになったら、最初に文法を教える合図です。何かを「知りたい」と思っているタイミングで、必要な知識を学ぶのが最も効率がいいからです。乾いた砂に水をかけるとあっという間に吸収されるのと似ています。

ところが話はそれほど単純ではありません。この時期の子どもは文法のような抽象的な概念の学習はまだ苦手なのです。そのためお母さんが中学校で受けたような英語文法をそのまま学ぶことはできません。

無理に文法の知識を教え込もうとすると、たちまち英語嫌いになってしまいます。小学3・4年生は英語文法に意識を向け始めつつも、文法学習には早すぎる難しい年齢であるといえます。

国語の授業に注目

国語教科書を見ると小学2年生くらいから「主部と述部」について授業で習うようです。そして小学3年生では「修飾語」なども扱われています。

学校から国語のテストを持ち帰ってきたら、点数だけ確認するのではなく、このような文法をどこまで理解しているかをお母さんには確かめて欲しいのです。

3年生までの国語文法に関する事項をほぼ問題なく理解しているようだったら、英語の文法を学ぶ下地ができているサインです。もし、国語文法問題に誤りが多ければ、まだ抽象的な概念の学習には早すぎます。

英語文法の基礎を学ぶ合図は、国語文法のテストの結果がひとつのバロメーターになります。

あせりは厳禁だが、できそうならチャレンジ

成長段階を無視して文法学習を始めるのは絶対にやってはいけません。時間の無駄になるだけでなく、子どもが「英語嫌い」になってしまう可能性があるからです。そのため、国語の文法の理解度を見て大丈夫と思ったら、少しずつ英語文法の学習に取り組んでもいいです。

一般的には小学5年生くらいから英語文法を理解できるようになります。もし、心配ならそこまで待つのも悪くありません。

文法学習は彫刻制作と似ている

理想的な文法学習は、石膏彫刻の制作過程と似ています。

彫刻(面取り)

最初にノミとハンマーを使って大まかな形を作ります(面取り)。

彫刻仕上げ

それから徐々に全体のバランスに気を配りながら、細部を仕上げていきます。

これを文法学習に当てはめてみます。初めのうちは細かいところにこだわらず大切な部分だけを大まかに学習します。そして、少しずつ段階を経て細かい文法知識を身につけていくのが理想です。

細部から始めたらフリーズする

もし、石膏彫刻をするときにいきなり髪の毛の細かいところから彫りだしたらおそらく作品は失敗します。なぜなら、全体のバランスを見失うからです。

ところが中学校から始まる英語文法学習は、これに近いことが行われています。例えば中学校の1学期には「3単現のs」を扱います。

ネイティブの子どもでも小学校2年生くらいまでは「3単現のs」を間違えることがあります。2歳から英語を話し始めて5年以上英語漬けの子ども達です。彼らでさえ「3単現のs」は5年目で完成させる項目なのです。

一方、日本の中学校に目を移すと、中1の1学期には「3単現のs」を扱います。つまり本格的に英語を学び始めて数か月しか経っていません。

「-s, -x, -ch, -sh, 子音字+oで終わる動詞には-esをつける」「子音字+yで終わる動詞はyをiに変えて-esをつける」はテストでも頻出事項です。しかし、これらの知識は彫刻でいえば毛髪一本一本に相当します。

このような細かいルールから覚えていったら、誰でも頭はフリーズ状態になってしまいます。「英語を話しましょう」と言われても、無理に決まっています。

中学校以降の文法知識はテストを意識しています。このような細かい知識を問う問題にしないと、得点に差がつかず成績をつけられません。理想的な「英語をスッキリと理解するための文法」とはかけ離れた姿です。

お母さんができる対策としては、小学校までに文法の「面取り」作業を終えておくことです。そして、中学校以降で細部の仕上げに移行できるようにしてあげれば、子どもの頭もフリーズせずに英語の発話を妨げないようになります。

大事な部分を残して、細部は捨てる勇気を

小学生が英語文法を習うときは、大事な部分を残して細部は捨てる思い切りのよい指導が必要です。先ほどの「3単現のs」を再び例に挙げると、次のようなステップを踏むことになります。

1.私(たち)あなた(たち)以外の人やモノ(3人称)に意識を向ける

2.とりあえず私(たち)とあなた(たち)以外が主語で「いつものこと(現在形)」を表現するときは、動詞にsをつけてみる

3.複数ではなく単数のときだけ動詞にsをつけてみる

4.疑問文や否定文のときはdoesを使う

このようなステップを設けることで、少しずつ子どもでも「3単現のs」を理解できるようになります。「yをiに変えてesをつける」(study→studies)のような知識は中学校まで先送りしても問題ありません。

英文法の核は語順である

小学生が学ぶべき英語文法の大事な部分は「語順」です。英語ネイティブは意識せずに英文を作れます。しかし、日本人は「無意識に」英文を作ることはできません。意識的に文法(語順)を学ばなければ、いつまで経っても簡単な文章でさえも作れません。

英語は日本語よりも語順の制約が大きいので、文法初心者はまず基本的な文型(パターン)を理解することから始めるといいです。

小学生は手を動かして基本文型を学ぼう

文型を小学生に学ばせるときに、「SV」「主語、動詞、目的語、補語」のような用語を使っても、混乱するだけです。小学生は目に見える具体的な物の操作は得意です。文法を理解させたければ、できるだけ目に見える形で教えなければいけません。

英語教師でそのように指導してくれているなら、任せていても大丈夫です。しかし、小学5年生になっても何も文法を取り扱わなかったり、細かい知識を詰め込むような中学校の前倒しの授業をしていたりするならお母さんのフォローが必要です。

基本文型は「動詞」の理解が鍵

文型の「肝」は動詞の理解です。国語でいえば「述部」と似ています。動詞という用語はどうも小学生ウケが悪いです。ネイティブっぽく「action words(アクション・ワード)」と呼んだほうが、子どもはイメージしやすいこともあります。

まず、「目的語を必要とする動詞(他動詞)」と「目的語を必要としない動詞(自動詞)」の区別をできることが第一段階です。例えば、下のような例文をいくつか見せながら、動詞に線を引かせてみます。

I play football.
I live.
I read a book.
I want some water.
I walk.

次に、目的語(~を)を必要とする動詞は青色、不要なものは赤色で〇をつけます。

I play football.
I live.
I read a book.
I want some water.
I walk.

playのあとにfootball(目的語)が無かったら、意味が通じない感覚を理解させます。一方、live(生きる)は目的語が無くても文章は成立します。

上記の説明は高校で習う「SV(第1文型)」と「SVO(第3文型)」に相当します。「動詞には自動詞と他動詞の2種類ある」が、文型理解の第一歩になります。

小学4年生くらいなら、この二つを見分けるだけでも「スッキリ」する感覚が味わえます。

文型を「見える化」する方法

以前、100円ショップで購入したマグネットシートを使って、文型理解をするためのパズルのようなものを作成しました。子どもにも文法をわかりやすく伝える方法はないかと考えたときに試作しました。

これを使って、SVOO(第4文型)を実際に教えてみます。主語と動詞はすでに学習済みと仮定します。

1.紙に書いた例文を音読させる(意味はジェスチャーで分からせる)

I gave him a pen.

2.動詞に線を引かせる

I gave him a pen.

3.お母さんがセンテンスを4つの要素に切り分ける

I gave him a pen

4.SVOOの文型ブロックに切り分けた要素を貼り付けてみる

5.この動詞には二つの目的語をとって、順番は「人・物」となることを確認

目的語の順番「人・物」の説明は正確ではありません。しかし、正しい説明をしようとすると小学生の発話を妨げる「細かい知識」レベルになるので、あえて避けたほうが賢明です。

6.まったく別のセンテンスを音読して、切断、バラバラのブロックに貼り付けておく

I bought her a present

7.ブロックを組み立てて、英文を音読してみる

I bought her a present.

上記の練習を通して、この文型(第4文型)の動詞には特徴があることに気づきます。

give:「相手の元に何かを届ける」種類 show, sell, send, tell

buy:「相手のために何かする」種類  cook, make

上記のように、小学生は目の前のパズルに言葉を当てはめながら使われている動詞の特徴を理解すると、文型を理解しやすくなります。

扱う文型の順番

「自分で子どもに文型を教えてみたい」お母さんのために、小学生に文型を教えるときの順番について解説します。単純に第1文型~第5文型まで順番に学ぶよりも、次のような順番のほうが理解しやすいです。

1.SVとSVO(目的語不要の動詞と、目的語必須の動詞を対比して)

2.SVOO(SVOの流れから、目的語が二つある文型を扱ったほうがわかりやすいから)

3.SVOC(C:補語の概念を例文で理解させて、目的語とは異なることを理解)

4.SVC(補語のある文型をもう一つ扱い、目的語と違うことを確認。主にbe動詞が使われる)

文型はある時期に一気に教えるよりも、たまたま音読したり習ったりした英文に疑問を感じている様子のときに、少しずつ教えたほうが子どもの負担がないのでおすすめです。

忘れても「またどこかでやればいい」くらいのゆったりとした気持ちで子どもと接してください。一回で覚えられないからと叱ったりするのは最悪です。

ボンヤリをスッキリさせるのが理想の文法学習

先述したように、文法は本来、英語を読んでいて意味がわからずモヤモヤしているときに、スッキリと理解するためのものです。

特に疑問も感じていない段階で次から次へと知識を詰め込んでしまうと、細かい知識が足枷になって英語を積極的に使えなくなってしまいます。少々わかりづらいので、子どもの様子を観察しながらどのタイミングで何をどのように教えたらいいかを説明します。

PPAPをまねしているだけの段階

世界最強の英語チャンツは何といってもピコ太郎さんの「PPAP」です。これまでいろんな人や会社がまじめに教材を作ってきたのに、一瞬でそれを抜き去ってしまうほどのインパクトがありました。

その証拠に子どもにこのビデオを見せると、勝手に英語で歌い出します(ちなみにネイティブの子どもも歌っていました)。これが「音」の学習です。普通は「音読」がこれに相当します。

何か変だな、と気づく段階

子どもが小さいうちは口まねして終わりです。ところがある年齢になると、「あれっ?」と疑問に感じ始めます。日本語では「私はペンを持っています」(主語・目的語・動詞の順)なのに、なぜ英語では入れ替わっているのかに気づくからです。

子どもはその疑問を上手に言葉で表現できません。だから子どもから「質問があるんだけど」とはなかなか言いません。しかし、ここをお母さんが察知して「なんで順番が違うんだろうねえ」と共感してあげるだけで、子どもは自分で考えるようになります。

理屈を学び、スッキリする段階

このタイミングで文型「SVO」を学ぶと、子どもの頭の中はかなり整理されます。モヤモヤしながら歌っていた歌詞は正しい英語の語順だったことを理屈で理解するからです。

“I have a pen.  I have an apple.”の“a pen”“an apple”を別の言葉に置き換えたり、haveを別の他動詞に置き換えたりすれば、英語の表現力は一気に広がります。

同じ文型で違うことを表現できるところまで訓練すれば、文法は「自信をもって英語で伝えるための道具」として実感できるはずです。文法は面倒くさいものではなく、それがないと困るものとして子どもに認識されます。

あらたな疑問に出会う段階

しばらくして何かの場面で、“I sent him a letter.”(私は彼に手紙を送った)を見かけたとき、この子は再び「あれ?」と疑問に感じます。

“I sent a letter.”(手紙を送った)だったら理解できるが、「“him”って何だろう?」とモヤモヤした疑問を感じます。これも言葉ではうまく表現できないため、お母さんから「このhimって何だろうね」と学びのきっかけを作ってあげましょう。

こうして、ひとつずつ英語の文型を覚えて正しい英語を話したり書いたりできるようになります。もちろん、読んだり聞いたりするときも文法の知識なしには正しい理解はありえません。

まとめ

小学生が英文法を学ぶ適齢期の判断はとても難しいです。一般的に小学3年生までは文法のような抽象的概念の学習は苦手です。小学4年生くらいから、子どもの国語文法の理解度を観察しながら少しずつ始めるといいです。

日本人にとって英語は外国語です。ネイティブのように無意識に英語を使うことはできません。どうしても文法の知識が必要です。文法とは外国人にもその言葉を使えるようにしてくれる便利な道具です。

細かい知識でいきなり教え込んで、それが足枷になり英語を使えなくなってしまうのでは本末転倒です。彫刻を制作するように、大まかな形から徐々に細部を仕上げていくことを意識しましょう。

子どもが学ぶ英文法の最優先事項は、英語の基本文型です。文法を子どもに理解させるには、できるだけ具体的な教具を使用しながら、視覚に訴えることが大切です。手を動かしながら学ぶのも効果的な方法です。

理想は子どもが日本語との違いを意識しだしたタイミングで、その疑問に答えるように文法を与えてあげると吸収がいいです。

強調しておきたいのは、やはり語学の基礎は「音」の学習です。充分に音読練習を積みながら少しずつ文型も学んでいけると、子どもの英語の理解は深まります。文法による知識を学んだら定着させるためにも音読は欠かせません。

子どもの「もっと知りたい」好奇心を喚起できるように、文法学習をサポートしましょう。

小学生が英語のイディオムを攻略するために

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英語の単語集を開くと、最後のほうに「熟語リスト」があります。あれを見つけると「単語だけだって覚えるのは大変なのに、最後にこんなダメ押しがあるとは…」と私は憂鬱になります。

英語を学ぶ他の人達も同じように感じているようで、「イディオムや熟語は覚えるのが大変」という感想をよく聞きます。

英語を本格的に始めたばかりの子どもでも、覚えておいたほうがいいイディオムや熟語はたくさんあります。このときお母さんが「つべこべ言わずに覚えなさい」と言って子どもに接してしまうと、英語嫌いになってしまいます。

まず、お母さん自身がイディオムを覚えたほうがいい理由を理解しましょう。それから、わかりやすく子どもに学んだことを伝えてあげましょう。

やみくもに覚えるのではなく、覚えるコツがあることを教えてあげるのも大切です。

イディオムを増やすと英語表現の幅が広がったり、どの言葉を使えばいいのか迷ったりしたときの助けになります。確かに覚えるのは楽ではありません。しかし、実際の会話でも多用されるのでかなり役に立ちます。

この記事を読んで、イディオムへの理解を深めて学習に困っている子どもにアドバイスをあげられるようにしましょう。

イディオムを増やそう

私もかつては受験生だったので、参考書に載っていたイディオムには苦労しました。「make up for: ~の埋め合わせをする、count on: ~を頼る…」などとやみくもに暗記しようとしましたが、なかなか覚えられずイライラしました。

そもそも「一語で伝えられる単語があるのに、どうしてわざわざいくつかの単語を組み合わせて同じ意味を持たせなければいけないのか」と不満に思っていました。

ところが海外にいたときに、思いのほかこのとき覚えた熟語が役に立ったのです。子どもとの会話にはもちろん、大人同士の雑談にも登場するものばかりでした。受験勉強で覚えた熟語は無駄ではなかったのです。

辞書でidiomの定義を調べてみると

「イディオム(idiom)」という言葉があります。あらためて考えると、「イディオムと熟語の違いは何だろう」と今まで深く考えずに使っていたことに気づかされます。

英和辞書でidiomを調べると、「名詞 熟語、成句、慣用句、イディオム(個々の単語の意味を集めた意味とは異なる独自の意味を持つ語群)」と定義されています。

狭い意味では「慣用句」のことを指すようです。例えば、「full of beans」とは「元気いっぱい」の意味で “He is always full of beans.” のように使われます。元の意味は「豆でいっぱいだ」です。これが転じて「元気いっぱい」を表しています。

受験参考書などを見ると、このような「慣用句」だけでなくいわゆる「熟語」もイディオムとして扱われています。例えば、「look after(~の世話をする)」などもイディオムとして扱われているようです。

この記事では、熟語などを含めた広い意味で「イディオム」を使用しています。

イディオムは口語的

イディオムは基本的にはやさしい複数の単語で構成されています。そのため、書き言葉(文語)よりも話し言葉(口語)のなかで頻繁に使用されます。

私の親戚で二字熟語を多用する人がいます。奥さんに向かって「これから〇〇の活動を開始します。〇〇は最優先事項なので」とまじめな顔で会話をしています(ちなみに奥さんは笑いもせずに黙って聞いています)。

「これから〇〇してくるよ。〇〇は先にやっておかないといけないからね」と話せば、この状況では自然です。

このように意味は通じても、その場の状況にふさわしくない表現があります。会話の中ではやはり口語表現を使ったほうが自然です。

子どもが英語を覚えるときも、やさしい単語の組み合わせで表現できるイディオムから覚えて、少しずつ高次元な単語を身につけていくほうが自然です。

しかし、それはネイティブの話であって、外国語として学ぶ場合には一単語で覚えるよりも、イディオムを覚えるほうが大変なケースがしばしばあります。

表現に幅を持たせるためにも積極的に増やそう

将来的に高度な英語を学ぶときには、同じことを複数の表現方法を使って描写することが求められます。ライティングでは、「同じ単語を繰り返し使うのは好ましくない」という英語独特の謎ルールがあります。

「元気だ」を表すのに、energeticしか知らなかったら、シソーラス(類語辞典)を駆使してvigorousとかactiveなども使うようにする必要があります。

このように表現に幅を持たせるためにも、イディオムを増やしておくのは無駄ではありません。本格的に英語を習い始めた子どもには大変かもしれませんが、お母さんからイディオムが必要な理由を簡単に説明してあげるのは大切なことです。

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暗記よりも「こじつけ解釈と反復練習」

イディオムを苦々しく感じるのは、「複数の単語の組み合わせ」が原因です。1単語を覚えるよりも暗記の負担が大きいからです。look after, look up to, look into などのように、単語に続く前置詞によって意味が異なるのも混乱する要因です。

英語も日本語と同様「言葉」なので、まったく無意味な言葉の組み合わせをしているわけではありません。イディオムを気合で丸暗記しようとする前に、少しだけ時間をかけて「あること」をしてみましょう。覚えるのはグッと楽になります。

2つのタイプに分ける

イディオムに出会ったら、「あきらめて暗記する」ものと「なぜそのような意味になるかじっくり考える」タイプに分けましょう。この作業をしないでやみくもに根性論で暗記しようとしてもうまくいきません。

「フルハウス」(アメリカのテレビドラマ)のワンシーンです。次女のステファニーが末っ子のミシェルに向かって“You should look up to me.”(お姉ちゃんを尊敬しなさいよ)と偉そうに言うシーンがあります。

それに対してミシェルは「ワタシ、お姉ちゃんのこと見上げているよ(look up to)」と返します。

2人は背の高さが違います。姉はlook up to を「尊敬する」の意味で使っているのに、妹は「上を見る」と受け取っているのです。

もともとの意味は「見上げる」です。しかし、じっくりとこのシーンを思い浮かべれば、目下の者が目上の人を「見上げる→尊敬する」と解釈できます。

このようにイディオムの多くには、その意味になるに至った理由がわかるようなものも多いのです。

じっくりと言葉を味わう

イディオムを解釈するには、こじつけに近いほどの豊かな想像力・連想力が必要です。しかし、これが言語感覚を研ぎ澄ませてくれるのです。

英語を習いたての子どもがイディオムに出会ったら、まずは一つひとつの単語から連想されるイメージを持たせるようにしてください。ときにはお母さんが実演してあげることも必要です。

そうした作業を踏んで意味を教えた場合は、そうでないときと比較して記憶の定着が断然よくなります。このような勉強法は国語の慣用句を覚えるときにも有効です。

イディオムには前置詞(in, on, for, fromなど)が多く含まれています。このような連想を繰り返すことで、前置詞のイメージにも幅ができてより深く英語を理解できるようになります。

ひたすら反復練習

イディオムを構成する単語を味わって想像・連想をしたあとは、繰り返し反復練習をするしかありません。例文があるなら、その例文を何十回も暗唱します。

忘れた頃を見計らって、もう一度「思い出す」ために暗唱をします。このような反復とレーニングによって得られた記憶は、一回で暗記しようとするよりも結局は効率がいいのです。

単なる暗記と「覚えるほど」繰り返すこととは、勉強法も学習効果も異なります。

実際の用例に多くあたるほど、英語表現は定着します。こちらの動画セミナーではそのためのトレーニング方法を紹介しています。

難しいイディオムは例文まるごと暗唱

一方、覚えるしかないようなイディオムもあります。連想やイマジネーションを膨らませてもどうにもならないものです。

例えば、受験勉強のときに私が苦労したのは「might as well…as(~するくらいなら…したほうがましだ)」でした。

こんな組み合わせに、連想力を膨らませても意味ありません。

こういうときに有効なのは、そのセンテンスを丸ごと暗唱することです。当時の受験参考書に載っていたのは、“You might as well throw your money away as lend it to him”(彼に金を貸すくらいならそれを捨てたほうがましだ)でした。

暗記してしまうくらい「暗唱→忘れる→暗唱して思い出す」を繰り返すことで記憶を定着させました。実際、30年経った今でも覚えています。

優先的に覚えるべきイディオムとは

イディオムを「面倒くさい」と思っている子どものために、ひとつ「イディオムのほうが面倒臭くないこともある」と教えてあげましょう。

最優先にするのは、イディオムでないと表現できないものです。例えば、pay attention to~(~に注意を払う)があります。これをひとつの単語で置き換えようとしても、思い浮かびません。

この場合は、「覚える優先順位の高いイディオムである」と考えられます。

カバーする範囲が広いものは優先して覚えよう

イディオムのほうが使い勝手がいいケースもあります。

例えば「調べる」に相当する英語はたくさんあって、それぞれ文脈によって使い分けをしなければいけません。study:(学問的に)調べる、survey:(統計などによって)調査する、investigate:(警察などが)調べるなど、使い分けが大変なのです。

本を読むにはたくさんの単語を覚える必要がありますが、自分で話すときは一瞬で言葉を選ばなければいけません。

ところがlook intoというイディオムは、これらの意味を広くカバーできます。このようなイディオムは優先して覚えたほうがいいです。そして、使えるレベルにまで落とし込まなければいけません。

使うことによってしか定着しない

イディオムの多くは口語表現なので、英会話で使ってみるのが身につけるための一番の近道です。口語表現は会話で使ってみて、文語表現は本を読みながら覚えたりライティングを通じて覚えたりするのが王道です。

何かの技能を向上させたければ、その技能そのものを練習するのが基本です。look at, be different fromなどは基本的なイディオムですが、「連想→暗唱」で意味を覚えたあとは、子どもが積極的に使う状況にもっていかなければなかなか身につきません。

ひとつの表現を覚えたら、数日間はお母さんからその表現を使えそうな状況や場面を教えてあげて、口で言わせてみることをおすすめします。子どもは嫌がりながらも、なんとか思い出そうと努力するので、これの繰り返しが記憶の定着につながります。

まとめ

口語表現の幅を広げてくれるイディオムは受験だけでなく、英会話でもかなり役に立ちます。

イディオムを覚えるときに丸暗記はあまり賢いやりかたではありません。使われている単語の意味から、想像・連想を膨らませて意味につなげる作業をしましょう。

そのあとで暗唱を通じてその表現を繰り返し覚えるようにすると、忘れにくくなります。

また、口語表現が多いので実際に覚えたイディオムを使用して英語を話してみることが大切です。子どもが最近覚えたイディオムを思い出す機会をお母さんはできるだけ多く作ってあげましょう。そうすれば、子どもの記憶の定着を促すことができます。

子どもの英語の発音:ネイティブに近づくのは可能?

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私は中学生になってから英語を学び始めた普通の日本人です。30年以上前になりますが、中学校の先生の発音はお世辞にもお手本にできるようなものではありませんでした。

私は洋画が好きで、NHKで放送された字幕の物をビデオに録画して何度も見ていました。「本物の英語の発音」を耳にする機会が多く、彼らの口の形を参考にしながら何度も発音練習をしました。

その結果、周囲の生徒よりも英語らしい発音に近づくことができました。ネイティブ相手に英語を話しても発音が悪くて聞き返されることは滅多にありません。

しかし、私の息子は5~9歳の間、イギリス人の先生が担任のインターナショナルスクールに通っていました。クラスメイトにも英語ネイティブの子どもが何人もいる環境です。

1年もすると、息子の発音はあっという間に私のレベルを超えました。今では、私の発音をときどき直されることがあります。

このように発音の習得に関しては、幼児期に学ぶのが圧倒的に有利であることは確かです。しかし、小学生でもコツさえつかめばコミュニケーションには困らない程度の発音を身につけることは難しくありません。

今回は子どもの英語の発音を上達させるための、親が取るべき作戦について解説します。

子どもの英語の発音が良いほうがいい2つの理由

芸能人がたどたどしい英語を話して海外ロケをする番組が人気です。発音があまりにもひどいため現地の人から何度も聞き返されている様子が笑えます。

バラエティ番組としてはおもしろいのですが、これを見て「発音なんか日本人のカタカナ発音で良いのだ!」と開き直る人が多いのが気になります。

どうも「なぜ英語の発音を良くしなければいけないのか」について、理解が不足しているようです。英語の発音が下手なままではいけない二つの理由について、説明します。

相手に無用の負担を強いるから

さきほどの番組で、現地の人が根気よくヘタクソな英語に付き合ってくれるのは、親切心からです。「困っている人がいるから助けてあげよう」とか「撮影しているようだから、付き合ってやるか」というのが本音です。

対等の立場で話をするときに、英語として認識されないようなレベルの発音なら、相手にされません。ましてや仕事でこちらが相手にお願いする立場なら、ひどすぎる発音は完全に不利です。

「下手でも構わない」というのは話す方の理屈であり、聞かされるほうはたまったものではありません。相手に無用の負担を強いていることを意識して、最低限、通じるレベルの発音を身につけようと考えるのが礼儀です。

リスニングが得意になるから

発音が下手すぎる人のほとんどはリスニング力が低いです。英単語を自己流の音で覚えているので、本物の音を聞いたときに、音と意味が結びつかないからです。

例えば、I bought some oranges at the supermarket.(スーパーでオレンジを買ったんだ)という英語を日本人っぽく発音したとします。

boughtをboatと同じ音に、orangesをカタカナ発音で「オレンジズ」、supermarketは前にアクセントをつけずに「スーパーマーケット」と平坦にカタカナ読みします。

実際、このレベルの発音はそれほど珍しくありません。運が良ければ通じるかもしれませんし、突然話しかけたら「へっ?」という顔をされるかもしれません。

では、ネイティブがこの英文を口にしたときに、普段、めちゃくちゃな発音で覚えている日本人は意味を理解できるでしょうか。当然、できません。

最初からネイティブの発音をマネして覚えておけば、リスニングのときの負担はぐっと軽くなります。このように、発音を良くすることは英語を通じやすくするだけでなく、リスニング力を向上させるためにも必須です。

子どもの英語の発音上達法

では、子どもの英語の発音はどのようにしたら上手になるのでしょうか。先述の通り、この分野に関しては幼児のほうが高い適応力があるのは確かです。

そこで子どもの年齢を6歳未満と小学生以上に分けて説明します。

6歳未満の子どもが英語の発音を良くするための方法

極論ですが、あなたのお子さんが6歳未満なら、英語環境に放り込むのが一番です。英語圏の国に行き、3か月間プレスクールなどに通わせるだけで見違えるほど発音が上手になります。

人間には言語習得の本能があって、幼児期なら文法を介せずに言語を覚えることができます。数カ月程度だと英語を話すところまではいきませんが、歌を歌ったり単語レベルでも声を出していれば、かなり上達します。

私の印象ですが、この年齢の子どもの場合、先生から教わるというよりは周囲の子どもからの影響が最も大きいです。周りの子ども達がネイティブなら、それを見ながら自分も同じような発音をまねるようになります。

私の子どもはマレーシアにいたため、チャイニーズ系マレーシア人の家庭で育った子どもとも仲良しでした。彼らの間で「なまった(チャイニーズ系のような)英語」をふざけて話すのが一時的に流行していて、帰宅後もそのマネをしていました。

もちろん冗談だとわかっているので、きちんとした発音との区別はできます。

ただ、周りの子ども達の発音に与える影響はとても大きいことは私にもわかりました。

日本国内にいても、英語のプレスクールに通わせてみるなど、これに近い環境は作れるかもしれません。

子どもは環境に敏感で、周囲が誰も英語らしい発音で話さない中で一人だけネイティブのように話すというようにはなりません。

小学生以上の英語の発音上達法

7歳を過ぎると、幼児のように理屈無しで英語を覚えるようにはなりません。大人と同じように意識的なトレーニングが必要となります。

発音に関しては小学生のうちにある程度仕上げておいたほうが圧倒的に有利です。中学生になると恥ずかしがって声を出さなくなるため、英語らしい発音が身につきづらくなります。

小学生以上が発音を良くするためには、「日本人が話す英語がなぜ英語らしく聞こえないのか」という原因を知ることが一歩になります。そのあと、対策を講じたりトレーニングを積むことが大切です。

  • カタカナとローマ字百害あって一利なし

カタカナとローマ字は、英語の発音を台無しにする諸悪の根源のひとつです。英語をカタカナに変換する際、正確な音やスペリングは失われてしまいます。

またカタカナには和製英語と言われるオリジナルの英語からかけ離れたものが多く存在します。night gameが「ナイター」になってしまったのは有名な例です。

もうひとつの典型的なパターンは、二重母音(母音が連続する音)がカタカナでは「-(音引き)」に置き換えられてしまうものです。

major league → 「メジャーリーグ」(メイジャーと表記すべき)

notebook → 「ノート」(ノウトと表記すべきだし、ブックはどこへ消えた?)

私が生徒に英語を教えるときは、カタカナになっている英語を覚えるときは注意するように指導しています。「意味を覚えるのにはカタカナは役に立つけれど、発音はしっかりと本物の英語のほうをチェックするように」と何度も伝えます。

また、ローマ字も私は日本人の英語学習において弊害しかないと考えています。ローマ字は英語と何の関係もなく、日本語の音を英語に無理やり当てはめただけです。つまりローマ字は日本語です。

ローマ字は小学3年生くらいで、国語の中で教わります。「ふ」はFUと書くように指導されるのでしょうが、fを英語の【f】の発音では読みません。

これではローマ字など最初から指導しないほうが、英語学習には良い影響を与えるはずです。英語の発音に関しては、ローマ字を習う前までに始めたほうがよいというのが私の持論です。

日本語にはない英語の音を出すトレーニングをしよう

カタカナ英語やローマ字の件からもわかるように、英語本来の音を日本語の音の枠に押し込めることが問題です。英語の音の数は日本語よりも多いため、日本人にはなじみのない音を追加して覚える(発話してみる)トレーニングが必要です。

代表的な音を列挙してみます。

【f/v】 five, voice 「フと読んでしまう」

【l/r】 light, right「ら行の音で読んでしまう」

【ʃ/s】 she, see「区別せずに発音してしまう」

【θ/s】 think, sink「シと読んでしまう」

【ð/z】that 「ザットと読んでしまう」

「  」に日本人の典型的な発音例を挙げました。これらは意識して何度も何度も音を出しながら練習しないとなかなか修正されません。

英語の先生に指導してもらったり、自分で英語を音読した声を録音して聞いてみるのも一つの方法です。

英文を読むときに強弱をつけよう

発音そのものだけでなく、強弱のリズムが英語と日本語ではまったく異なります。これをマスターしないと、英語らしく聞こえることは永遠にありません。

次の英文を音読してみましょう。

I played the piano.(私ピアノを弾いた)

私が英語を教えてきた生徒の99%はこの文章を平坦によみます。しかし、英語を読むときは、強く読むべき場所と弱く読むべき場所を分けなければいけません。

一応、ルールのようなものがあるので簡単に挙げておきます。

代名詞は弱い

動詞は強く

冠詞は弱く

名詞は強く

さらに、単語の音どうしが干渉して「くっついたり」「変化したり」します。先ほどの例だと、played theは別々に発音されず、「プレイッザ」のように聞こえます。

これらを総合すると、次のようになります。

一語一語の単語の発音だけでなく、文を強弱つけて読めるようにすると、英語らしく聞こえるようになります。

大切なのは「ネイティブのように話したい!」という強い思い

書店に行けば発音に関する本はありますし、動画サイトなどでも詳しく説明しているので、いろいろと参考にしたらいいと思います。

しかし、最も大切なのは、「ネイティブのように話したい!」という強い思いだと私は思います。「まあ、いいや」と妥協してしまうと、発音トレーニングに力を入れないためいつまでたっても上達しません。

現在の日本の英語教育では発音のうまい・下手は成績にほとんど反映されないため、上達しようというモチベーションが育ちません。

動機は何でも構いません。「好きな歌を完コピしたい」「憧れのハリウッド俳優のようにしゃべりたい!」という動機があると、英語の発音トレーニングを頑張るという行動に向かわせてくれます。

「テストが乗り切れればいいや」としか英語を捉えていない生徒は、残念ながらほとんどの場合、発音が上手になることはありません。英語を教科としてとらえているか、コミュニケーションの道具としてとらえているかの違いです。

お母さん自身の英語の発音が下手でも構いません。子どもが自然と本物の英語にあこがれを抱くように少し工夫してみましょう。「ネイティブのように話したい!」と思うようになれば発音が上手になるチャンスは大きいです。

まとめ

英語の発音は2つの点で大切です。発音が良ければ、聞き手に負担を感じさせないため、コミュニケーションが円滑になります。また、良い英語の発音は、リスニング力の向上にもつながります。

発音の習得に関しては、6歳未満の幼児が圧倒的に有利です。最も確実な方法は、英語ネイティブの子ども達がいる環境に放り込むことです。

この年齢の子どもは先生よりも周囲の友達に最も大きな影響を受けるため、周囲の英語の発音をすぐにまねします。

幼児期を過ぎてしまった小学生でも、ポイントを押さえたトレーニングをすれば発音は上手になります。

そのためにはカタカナ英語から離れ、英語本来の音で覚えなければいけません。日本語の音にはない英語独特の発音を覚えることが大切です。

また個別の単語の発音だけでなく、文章として読まれるときの強弱にも気をつけるようにしましょう。

年齢が上がるほど英語らしい発音を身につけるのは大変になります。発音のトレーニングを続けるためには「ネイティブのように話したい!」という憧れを持つことも重要になります。

子どもが本物の英語に触れるような環境や機会を作ってあげましょう。お母さん自身が英語の発音が苦手でも、きっと子どもは前向きな気持ちで発音トレーニングをするようになります。

中学入学前までに英語を音読する習慣を

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先日、電車に乗ると、私の目の前に2歳くらいの男の子とお母さんが座っていました。電車内が混雑してきて、男の子がぐずり始めてしまいました。

するとお母さんが、バッグや服の色を示しながら色の名前を教え始めました。男の子はお母さんの言葉をまねして発話しています。ところが、「ももいろ」と何度お母さんが教えても、男の子は「ももいろ」と言えず、「もいろ」と間違えてしまいます。

お母さんも男の子も笑いながら同じことを繰り返しました。

言葉のまねにも飽きて5分ほど沈黙した後のことです。男の子が突然、もも色を指さして、「ももいろ」とつぶやいたのです。お母さんも子どもも大喜びでした。

この光景を見ていた私は「やはり、音読が語学の基本なんだな」と確信しました。私たちは忘れていますが、母国語を覚えるときもこの親子のように数限りない音読練習をしたはずです。

しかし、英語学習になると、ほとんどの子どもはなぜか黙々と勉強します。この傾向は年齢が上がるにつれて顕著になり、中学生になるとほとんどの生徒が音読することを避けるようになります。

原因は「音読をすることへの抵抗感」です。「間違えたら恥ずかしい」「下手くそな英語を声にするのが格好悪い」などと感じるのでしょう。

私は現在も中学生に英語を教えていますが、なかなか素直に音読する生徒に出会うことは少ないです。

「なんとか中学前に英語を音読する習慣をつけさせたい」

私はこのように強く思っています。「英語学習とは音読すること」くらいの意識で取り組めば、英語が得意になる生徒の数はかなり増えるはずです。

今回の記事では、音読が大切な理由と簡単な取り組み方ついて詳しく説明します。

英語学習の基本は音読

近年、一般の人達にも「英語の4技能」という言葉が浸透してきました。

語彙力と文法力を中心に、4つの技能は関連している。

これは「聞く」「話す」「読む」「書く」という4つの技能を指しています。学校のテストでは「読む」「書く」が重視されていますが、実際の英語を使う現場では同じくらい「聞く」「話す」技術も大切です。

英語は入試の一科目として存在しているわけではありません。コミュニケーションのための道具と考えるのが自然です。「聞く」「話す」の技能に直結する音読によるトレーニングを軽視していいはずがありません。

学校では音読の価値や方法について指導されない

英語が得意な人は音読の価値を理解しています。学校で英語を教える先生達も音読を大切に思っているはずです。

しかし、実際の授業の中で、音読についてきちんとした指導がされることはほとんどありません。「時間がない」「他にやるべきことが多すぎる」などの理由は理解できますが、大変残念です。

「音読」の習慣化について学校に期待するのは難しいのが現状です。そうなると小学生のうちに家庭で指導するしかありません。英文を見たらとりあえずブツブツ音読するくらいまでに習慣化してるのが理想です。

では、なぜ音読することが英語学習においてそんなに大切なのでしょうか。

音読のパワー:文法や語法の知識は音読して使える状態となる

例えば、中学生に英語の冠詞「a,an」について教えるとき、学校の先生や教科書の説明は次のようになります。

数えられる名詞で1つの物(人)のときには、名詞をつける。名詞が読まれるとき母音から始まる単語には、anをつける。

ほとんどの生徒はこのルールを理解します。例えば、bookならa bookに、eraserならan eraserと答えられます。

でも、「私は彼女に一時間前に会った」という英作文をさせるとかなりの生徒が、

× I met her a hour ago.

と書いてしまいます。

正解は、hourの発音は母音から始まるので、

〇 I met her an hour ago.

なぜこのような間違いをしてしまうのでしょうか。それは、anを使う条件を知識で覚えているからです。

正しくan hourと答えるためには、まず英語を音読する習慣が必要です。テスト中静かにしなければいけない場面でも頭の中で音声化しているかどうかが鍵になります。

an hour(「アナワー」と発音)を音読した経験があれば、a hourだと読みづらかったり何か変であったりすることに気がつきます。理屈だけでなく耳で覚えている感覚です。

音読を英語力向上につなげられるかどうかのポイントは、読む英文について正しく理解しているかどうかです。単語の意味、文法、語法、発音、アクセント、イントネーションなどすべてを理解してから音読練習するようにしましょう。

意味も分からずに音読するのは、何の役にも立ちません。

ネイティブに英語を質問すると、ブツブツつぶやいてから答える

ネイティブに英語の表現について「こういう言い方はしますか」とたずねると、かなりの確率でブツブツ英語をつぶやいてから答えてくれます。

ネイティブも知識として語法を覚えているだけでなく、実際に口で言ってみることで正しいかどうかを確認することが多いです。

私たち外国人が英語を学ぶなら、なおさら英語の表現を文章ごと音読する訓練を積まなければなりません。

このように、英語を知識として学ぶだけでなく、この知識を使える状態のレベルにまで引き上げるための訓練が音読ということになります。

英語を見たらとりあえず音読:教材にこだわらない

本格的な音読トレーニングにはそれに適した教材と方法があります。しかし、今回の記事ではもっとお手軽な方法について説明します。

英語のテキストや問題集に取り組むと、必ず例文が載っています。その例文を何度も声に出して読むことで、知識を使えるレベルにまで変化させることが可能となります。

例えば、homeは意外と使い方が難しい単語です。

I came home at six.(私は6時に帰宅した)

よくやってしまう間違いが、

× I came to home at six.

という間違いです。homeは「家に(帰宅)」という意味の副詞なので、前置詞のtoは不要です。

もうひとつ紛らわしいのが、at homeという表現です。この場合は、「家に(在宅)」を意味します。

My father was at home when I gave a call to him. (私が父に電話した時、彼は家にいた)

さらに「家」という名詞を使いたい時には、普通はhouseを使います。

He built a house. (彼は家を建てた)

さて、これらのhome, at home, houseの使い分けについて、知識として覚えるのは効率の良い勉強法といえるでしょうか。私も含めて普通の人は、丸暗記した知識はすぐに忘れてしまいます。

でも、それぞれの例文を丸ごと何度も音読して暗唱できるようになっていれば、間違えることはないでしょう。

問題集に取り組むときも音読してみる

例えば、英検の問題集をしていて次のような問題があったとします。

問題( )に入る最も適切なものを1~4の中から一つ選びなさい。

My school starts at 7:45, so I  (   ) my house at 7:15.

1 ride   2 go  3 take  4 leave

正解は4です。

この問題文には大切な語法がいくつも含まれています。

starts の s は三単現の s 、時刻を言うときは at を使う、leave ~で「~を発つ・離れる」、家(建物)の意味のときはhouseを使う、などです。

こんなに大切な学習ポイントがたくさんあるのに、〇か×だけで終わらせるなんてもったいなさすぎます。私が指導するときは、たとえ正解してもこの文章を丸ごと暗唱させます。

テストで間違えたところの正解文については、最低40回くらいは音読することを生徒に伝えています。真面目にやっている生徒は確実に英語の成績が伸びます。

英会話の場面ですぐに口から出せる表現は、何度も音読した表現だけです。本当に簡単な方法ですが、実践する生徒はわずかしかいません。

このように、音読教材用の短いストーリーを扱う本格的なものとは別に、文法の教科書に出てくる短い例文でも何度も音読することは英語学習においてとても大切なポイントとなります。

お子さんが静かに英語を勉強していたら、注意しましょう

日頃、子どもが英語の勉強をしているときに、静かに机に向かっていたらあまり良くない傾向です。反対に、ときどき声を出して英語を読んでいれば、順調です。

例えば単語を覚えるときにも音読練習が基本となります。小学生時代の漢字書き取りの習慣からなのか、英語をひたすら紙に書いて覚えようとする子どもが多いです。しかし、これは非常に効率が悪く、使える英語につながらないのでやめましょう。

単語を覚えるときの順番は、1)正しい発音・アクセントで何度も音読する、2)意味の確認、3)スペリングを覚える、の3ステップが基本です。

音読するときにはカタカナ発音しないように注意しましょう。thingという単語を覚えるときにいい加減に「シング」と発音すると、単語を書くときに「sing」とか「shing」と書いてしまう原因になります。

正しい発音は正しいスペリングにもつながります。最後に実際に書いてみて確認してみましょう。しかし、音読「9」に対して書く「1」の比率で充分です。単純に読み上げる方が書くスピードよりも5倍は早いので効率が良いからです。

文法・会話・単語など英語の学習の基礎はすべて音読です。私もかつて中学生の頃、何度も英語を音読した翌日は口の周りの筋肉が筋肉痛になりました。英語の筋肉をつけるまでに時間がかかりましたが、確実に英語力は伸びました。

まとめ

音読は英語学習の中心となるものですが、中学生になるとほとんどの生徒は音読することに消極的です。恥ずかしさが主な原因です。私たち日本人でも日本語を覚えるときに数限りない音読と失敗を重ねていますが、そんなことは忘れてしまうようです。

しかし、これではいつまでたっても英語を得意にはなりません。

そこで英語を音読する習慣を小学生のうちに身につけさせることが成功の鍵となります。

音読は、英語の知識を使える状態にするための訓練です。英語が苦手な生徒は文法を知識のまま覚えようとして失敗します。反対に、理解した文法事項を含む例文を何度も音読すると、使える状態になります。

単語学習でも、小学生の時の漢字の書き取り練習のように黙々と書き連ねている生徒が多いのですが、これでは英語を得意にはなりません。ここでもやはり何度も音読することが大切となります。

英語を習い始めた小学生のお母さんにはぜひ、子どもが静かに英語を勉強していないかチェックして欲しいと思います。英語は体育や楽器のような技能教科です。

音読せずに黙って問題集に向かっているのは、素振りをしないで野球を上手になろうとするようなものです。中学入学前までに英語音読の習慣を家庭で身につけるようにアドバイスしましょう。.

NHKの英語アニメ「リトル・チャロ」を小学生が攻略する方法

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1970年代、テレビで世界名作劇場が放映されていました。この頃私は幼稚園~小学生の子どもだったので「フランダースの犬」「あらいぐまラスカル」などを毎回楽しみにしていました。ストーリーを好むのは人間の習性かもしれません。

「英語の楽しいコンテンツなら、子どもも夢中になって英語を学ぶはず」と多くの人は考えます。実際、それは確かに正しいです。

しかし、現実には難しい問題があります。「楽しい」=「英語学習向き」とは限らないからです。ディズニーアニメは確かに楽しいし、大好きな子どもも多いはずです。ただ、使用されている英語は容赦ないネイティブ用のナチュラルスピードです。

なぜならそれらは英語学習者向けに作られているわけではありません。そのため気の利いた大人びた表現やギリギリの俗語が盛り込まれています。

「日本人の英語学習者に配慮されたおもしろいアニメがあったらな」と私もいつも思っていました。そこへ登場したのが「リトル・チャロ」です。さすがNHKだけあって、クオリティは素晴らしいです。

この「リトル・チャロ」を活用して、小学生でも英語を学べる方法を詳しく説明します。アニメ好き・動物好きの子どもならハマること間違いなしです。

「リトル・チャロ」の紹介

アニメ「リトル・チャロ」は2008年にNHKで放送された英語のアニメです。これは単なるアニメ作品とは異なり、英語学習のコンテンツとして活用できるように綿密に制作されています。

放送当時私もテレビで偶然見つけたときは「へえ、おもしろそう」とだけ思いましたが、それっきりでした。「リトル・チャロ」の再放送をきっかけにあらためてコンテンツを観ると「非常に優れた英語学習コンテンツ」だと感心しました。

平易な英語で制作されていますが、活用の仕方によっては初心者から中・上級者まで幅広く英語学習に利用できます。「中学生くらいのときにこんなコンテンツと出会えていたらもっと英語にのめり込めたのに」と私は今の子ども達をうらやましく感じます。

ストーリー

日本人の少年・翔太の飼い犬であった子犬のチャロは、アメリカ旅行から帰るときニューヨークの空港で迷子になってしまうところから話は始まります。

チャロは翔太に再び会えることを願いながら、仲間の犬たちとの交流を深めていきます。途中、笑いや涙の展開を織り交ぜつつ話は展開していきます。そしてついに、まったくの偶然から翔太の父にチャロは発見されて、無事、日本に帰国して翔太との再会を果たします。

主人公がかわいい子犬なので、小学校低学年の子どもも感情移入しやすいです。昔、私が子どもの頃テレビで見ていた「母をたずねて三千里」のような中毒性のあるストーリーです。最後は思わず泣いてしまう話です。

英語の特徴

使用されている語彙レベルは「中学校+アルファ」です。ナレーションと登場人物のセリフによって構成されています。もちろん、声優はそれぞれ異なる人が対応しています。

チャロ以外の登場人物はネイティブ・スピーカー(犬も含めて)なので、英語を流暢に話します。チャロは日本の子犬なので英語はそれほど得意ではありません。

使用されている英語は不自然ではない程度にゆっくりと発音されるため、リスニング初心者向けにピッタリの教材です。

アクティブ・ボキャブラリー(意味がわかるだけでなく、話したり書いたりするときに使える語彙)を増やしたい中・上級者にも学ぶところが多い教材です。限られた語彙の中でこれほど豊かに表現できることのサンプル集です。

英語が得意なお母さんは、ぜひ親子で楽しみながら英語学習に利用してみましょう。

一般的な映画(アニメ)と比較して英語教材として優れているところ

書店の語学コーナーでも、「DVDを教材にして英語を学ぶ」テーマの本は売れています。私も海外ドラマは大好きなので、これまでにも何度もこれらを利用して英語学習に役立ててきました。

しかし、いざ英語のアニメや洋画を英語初心者が学習に使おうとすると、問題が生じます。たとえば「アナと雪の女王」は一時期大ヒットして子どもも大好きなディズニー作品です。しかしながら、正直私でもすべての英語を聞き取れません。

英語圏(主にハリウッド)で制作されたアニメ・映画は、ネイティブ用に作られています。そのため会話のスピードは、英語を学習している日本人の子どもにとっては速すぎます。

また語彙レベルも学習者向けにコントロールされていません。子ども向けのアニメでも、英検1級レベルの単語が頻繁に登場します。さらに、省略表現や俗語表現も多く、学習教材としては使い勝手が悪いことが多いです。

英語音声がないシーンやただの絶叫シーンも多く、英語を学ぶときにいちいち飛ばすのは面倒です。

盲点なのは日本語字幕の内容は、英語のセリフを完璧にカバーしていないことです。字数制限があるため、短い日本語で「意訳」しなければいけないからです。そのため英文の細かい意味がわからずモヤモヤとした気分になることがしばしばあります。

また、同様に英語のセリフすべてが「英語字幕」として表示されるわけではありません。長すぎる部分は別の表現に置き換えられるのが普通です。

一方、NHKが英語学習者を意識して制作した「リトル・チャロ」はこれまで指摘した問題のすべてが解消されています。話される英語はすべて漏れなく字幕に表示されます。日本語の字幕も極端な意訳はなくて、ほとんどの英語のセリフを網羅しています。

語彙レベルは「中学校+アルファ」です。これは英語学習者用の英英辞書の定義で使用される語彙レベルとほぼ同じです。つまり、ここに出てくる語彙を充分に使いこなせれば、日常のほとんどのことは表現できる証拠です。

リトル・チャロは「ナレーションとセリフ」で構成されています。読まれるスピードは聴き取りやすい速さです。英語学習には速すぎても遅すぎてもダメですが、英語初心者向けに絶妙な速さを設定しています。

さらに使用されている英語は「完璧に正しい英語」であり、安心して英語学習に使えます。口語表現も「How come~?」など普通の表現ばかりで、子どもがまねしてもまったく問題ありません。

1話5分で構成されているので集中力は持続しますし、余計な無音シーンがほとんどないのも、学習効率を高めてくれます。

「リトル・チャロ」は英語学習者のツボを知り尽くして制作されているのがわかっていただけたでしょうか?

リトルフォックスというe-ラーニングサイトではリトルチャロのような動画教材が豊富に見られます。これを活用した学習法の動画セミナーはこちらで確認できます

「リトル・チャロ」はどうやったら見られるか

「リトル・チャロ」は再放送を待てば無料で見られますが、日本語字幕しか利用できません。英語学習には英語の台本(スクリプト)が必須です。

組み合わせとしては、以下のとおりです。

CD + テキスト
DVD(スクリプトは字幕表示を利用)
えいごで旅するリトル・チャロ(任天堂DS)

小学生でゲーム機DSを持っているなら、リトル・チャロのソフトを購入するといいです(評判も上々です)。テキスト+CDはすでに中古を探すしかないのと、子どもなら映像を確認したいと思うでしょう。

DVDを購入すれば、映像をテレビで楽しめて、英語字幕表示に切り替えればスクリプトも確認できます。

しかし、私は上記以外の方法で「リトル・チャロ」を観ました。それは高校生の娘が持っていた「電子辞書」でした。

おすすめは電子辞書の収録版

最近の電子辞書には、本来の辞書機能以外の「学習コンテンツ」が充実しているモデルがあります。その中に、「リトル・チャロ」を収録した電子辞書があります。

英語系の電子辞書の大手はカシオとシャープですが、全てのモデルに「リトル・チャロ」が収録されているわけではありません。実際に購入するときは、店頭で実物を手に取って確認したほうが確実です。

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娘の持っていた辞書はシャープのBRAIN(PW-SH4)では、「リトル・チャロ」全話が収録されています。カシオのXD-G4800には確実に収録されています。

両者の違いは、シャープでは紙芝居風に収録(シーンごとの静止画)されているのに対して、カシオでは動画が再生できます。

 

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小学生の子どもなら動画で見られたほうが楽しいかもしれません。一度、動画を観たことのある場合は、紙芝居風のほうが英語に集中できるともいえます。

では、なぜDVDではなく電子辞書で収録されたものが「英語学習におすすめなのか」について説明します。

おすすめの理由1:どこでも持ち運びができるから

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英語学習を続けるコツは、「いつでもどこでも」することです。電子辞書は携帯に便利です(大きさを比較するために、スマホと並べて撮影)。イヤホンと一緒に持ち歩いていつでもどこでも「リトル・チャロ」で英語を学べます。

電子辞書には「前回のファイルを再生」というメニューがついています。これを利用すれば、直前に学習したエピソードを素早く再生できます。細切れ学習には不可欠な機能です。

DVDプレイヤーではテレビが設置してあるところでないと学習できません。どちらが英語学習を継続できるかは明らかです。

たとえば朝、学校に行く前に5分だけ「リトル・チャロ」を観るときに、お父さんがテレビでニュースを観ていても、電子辞書なら問題ありません。

おすすめの理由2:字幕表示の切り替えが一瞬でできる

DVDプレイヤーでも字幕表示の切り替えはもちろんできます。しかし、一時停止中に切り替えることはできません。再生中に字幕の切り替えボタンを押して、少し間が空いた後切り替わります。このわずかな時間が英語学習をするときはストレスに感じます。

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一方、電子辞書の場合には一時停止中でも、言語を一瞬で切り替えられます(赤丸のボタン)。また、読まれている部分は赤い文字で表記されます(カラオケのように)。さらに、英語と日本語を同時に表示させることも可能です。この場合、該当する日本語訳はハイライトで表示されます。

欲しい情報を一瞬で入手できるのが、電子辞書収録版の優れているところです。

おすすめの理由3:セリフをタップすると、その場所から即再生するから

「リトル・チャロ」を英語学習に利用するときに、「音読練習」は欠かせません。そのときモデルとなる音声を何度も聞きながら、自分で声に出して練習しなければいけません。

DVDプレイヤーがもどかしいのは、聞きたい部分だけを繰り返しすぐに再生できないことです。「戻る」ボタンだけでは細かい頭出しはできません。

電子辞書の収録版では、スクリプトの部分をタップするとそこから「即」再生されます。これは大変ありがたい機能で、何度もモデルを聞きながら音読練習するのにうってつけです。

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携帯性に優れ、字幕表示の切り替えやセリフがすぐに再生されるので、電子辞書の収録版「リトル・チャロ」はおすすめです。

すでに電子辞書を持っている場合や、DVDが家にある場合には、わざわざ「リトル・チャロ」が収録された電子辞書を買う必要はありません。しかし、もしまだ電子辞書を持っていなくてそろそろ買おうと思っているなら、「リトル・チャロ」が収録されたものがいいです。

小学生でも「リトル・チャロ」を攻略できる方法とは

では、「リトル・チャロ」を利用して、小学生でも取り組める英語学習法について解説します。ポイントは「何を目的にして」「どのように学習するか」です。

「リトル・チャロ」は平易な英語しか使われていませんが、ほとんどの小学生にとっては難しい語彙レベルです。無理にリスニングに取り組ませても、すぐにあきらめてしまいます。

私のおすすめは、「リスニング」ではなく「英文暗唱」です。セリフの一部を繰り返し「音読」して、あたかも自分が声優になったかのようにスクリプトを読まないでセリフを言えたら完成です。

「音読」する過程で、Reading「読む」、Listening「聴く」、Speaking「話す」の3技能をバランスよく鍛えられます。小学校高学年なら、最後の仕上げとしてディクテーションをすればWriting「書く」もカバーできます。

すべてのセリフやナレーションでこれをやるのは非現実的なので、一部に絞り込んで取り組んでみましょう。

チャロは日本の犬…だからやさしい英語しか話さない

設定上、チャロは日本の子犬なので、簡単な英語しか話せません。発音もわざと日本人っぽく演じられています。これに対して「正しい発音ではないので、教材としては不適格」と決めつけてしまう人がいますが、私はそうは思いません。

チャロの姿は子どもからみれば「自分」なのです。小学生がニューヨークで親と離れ離れになったようなものです。

NHKがチャロの発音を日本人っぽくしたのは、おそらく「親しみやすさ」を視聴者に与えて、共感させるためです。

チャロは、やさしい短い英語を日本人っぽく一生懸命に話しています。この部分に的を絞り、小学生の子どもに音読練習させるのは理にかなっています。正しい発音は、ナレーションや他の仲間の犬たちから学べばいいのです。

チャロはもちろん主人公なので、子どもの満足度も高いはずです。小学生なら、チャロのセリフに絞って、音読練習してみましょう。これが攻略のコツです。

意味を理解して、セリフの音読練習

ここからは普通の音読練習と同じです。まずはストーリーをしっかりと理解するところから始めましょう。意味のわからない英語を何度音読しても、学習効果はありません。

チャロはしばしば日本語を話したり、犬の吠える声で「Arf!」と叫んだりしますが、そこは飛ばしましょう。

最初のエピソードの頃は、片言英語の部分が多いので、小学生でも簡単にまねできます。エピソードが進むにつれて、きちんとした文章が増えていきます(チャロの英語力が向上していきます)。

小学生には未習事項の「過去形」や「現在進行形」が頻繁に使われていますが、小学生に細かい文法解説は基本的に不要です。そのまま英語を繰り返しまねることだけに集中させましょう。

英語を日本語にしてみる

ここでもう一度、英語を理解しているか日本語にしてみましょう。正確に訳すのが目的ではありません。およその意味でよいので、英語の大意を理解しているかどうかを確認します。

意味を言えない場合、単語を知らないか文法を理解していないかのどちらかです。単語を知らない場合は、お母さんが教えてあげてください。

ここまでの段階で、「正確に英語を聞けて・音読できて・意味を理解している」状態であることがポイントです。

オーバーラッピング、シャドウイング、日本語→英語

次は、実際のスピードに合わせて音読する練習です。チャロのパートの少し前から再生して、チャロの声と同時に重ねて音読します。これがオーバーラッピングと呼ばれる音読練習です。

慣れてきたら、再生速度を一段階速めてもオーバーラッピングできるように練習してみましょう。電子辞書にも再生速度を調節できるボタンがあります。

充分にオーバーラッピングをしたあとは、シャドウイングに移ります。「シャドウイング」とは、シャドウ(影)のように「読まれる音声より3語くらい遅れて音読するトレーニング法」のことです

このときに音ばかりを追いかけるのではなく、チャロのセリフの内容に意識を向けましょう。

大変疲れる音読トレーニングですが、1語1語ではなくかたまりで英語を処理できるようになります。リスニング力を高めるときの基礎となるトレーニングです。

シャドウイングの次は、日本語字幕を読みながら該当する英語を口に出して読む練習です。英作に時間がかかるのは、ここまでの口頭練習が不足しているからです。もう一度、オーバーラッピングに戻って反復練習しましょう。

一瞬で言えるようになるまでには、一般的に50回~100回程度の反復練習が必要です。

アニメに合わせて演じる&ディクテーション

今度は声優になってアフレコをするつもりで、映像を観ながらチャロのセリフを言いましょう。このときに棒読みではダメです。チャロの心情をくみ取って、息づかいまでまねるつもりで練習しましょう。

感情と英語表現を結びつける訓練をすると、実際に自分がそれと近い感情になったときに英文が思い浮かぶようにするためです。ここまでくれば、ほとんどゴールです。

小学校高学年の子どもなら、最後の仕上げとして「ディクテーション(書き取り)」にも取り組んでみましょう。字幕をOFFにして、チャロのセリフの部分だけを聞いたあと、紙に英文を書きます。句読点(ピリオドやカンマ)なども正確に書きましょう。

このように紙に書くと、あいまいに覚えていた綴りや文法事項を確認できます。最後は必ず字幕をONにして、英語に誤りがないか答え合わせをします。

チャロのセリフは少ないですが、徹底して音読するのはそれなりに大変です。エピソードによっては英語を話さずに「Arf!」だけのものもありますが、その場合は音読練習せずにストーリーを楽しめばいいです。

しばらくしてから音読練習をしたエピソードを再生すると、チャロの部分の英語はすべて聞きとれるはずです。英語の学習はこれの繰り返しです。楽しみながら続けられるようにお母さんはサポートしてあげましょう。

まとめ

アニメとして楽しめて、英語学習用のコンテンツとしても細かく配慮されている「リトル・チャロ」を使えば、小学生でも楽しく英語を学べます。

DVDなどで再生してもいいのですが、DSのソフトや電子辞書に収録されている「リトル・チャロ」を活用すると、英語学習の効率が飛躍的にアップします。

平易で比較的ゆっくりとした英語で話されていますが、小学生がリスニング教材として使うにはレベルが高すぎます。それよりも、小学生の子どもと等身大の主人公「チャロ」のセリフに的を絞って、音読練習したほうがいいです。

電子辞書の再生機能をフル活用しながら、いろいろな角度から繰り返し音読練習しましょう。ひとつのセリフにつき最低50回は必要です。

しばらく経ってそのエピソードを観ると、チャロの英語は完璧に理解できるはずです。それが音読による学習効果です。

「リトル・チャロ」はディズニーのアニメよりもずっと日本人の子ども向きのコンテンツです。子どもの英語学習がマンネリ化してきたら、「リトル・チャロ」を利用した英語学習にチャレンジしてみましょう。

多様化する小学生対象の「国内の英語サマースクール」

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私の小学生時代の思い出のひとつは「夏のキャンプ」です。いとこに誘われて1泊のキャンプに行きました。「原人」と呼ばれていたひげ面のインストラクターに連れられて川遊びしたのは今でも楽しい記憶としてよみがえってきます。

そのような夏のアクティビティと「英語」を合わせたものは、「英語サマースクール」と呼ばれています。その内容は実に多彩で、アウトドアはもちろんインドア中心のスクールもたくさんあります。

家族以外との宿泊経験のない子どもを誰かに預けるのは、お母さんとしては不安に感じるかもしれません。また、肝心の英語力はどう変化するのかも気になるところです。

今回は「日本国内のサマースクール」に焦点を当てて、プログラムの詳細について説明します。また、子どもを参加させるときのお母さんの心構えについて私の意見をまとめました。

夏休みの最高の思い出になるようなスクールを選んであげましょう。

canoe

サマースクールとは

「英語サマースクール」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか? 英語を学ぶのはもちろんですが、それ以外はどんなイメージでしょうか?「キャンプ・カヌー・スポーツ・教室内での勉強」など、人によってさまざまな光景をイメージしたと思います。

実は広い意味ではこれらすべて「サマースクール」と呼ばれる活動です。ネイティブのインストラクターや講師は、英語初心者の子ども達にも楽しめるようにこれらの活動をサポートしてくれます。

「英語サマースクール」は開催地が海外(英語圏)か国内かによって大きく二つに分かれます。今回は、日本国内で開催される「英語サマースクール」について詳しく説明します。

国内と海外のどちらがいい?

海外に行くほうがハードルは高くなるのは間違いありません。パスポートの取得に始まり、親からの物理的・精神的な距離が遠くなることから、子どもは緊張します。時差の大きいアメリカ・カナダ・イギリスへの移動は体力的にも大変です。参加費も当然高くなります。

海外のサマースクール(アメリカ・カナダで2週間)なら40万円近くは見積もる必要があります。

英語力に関しても、ハードルは高いです。海外でのサマースクールに参加して成果を感じるためには、最低2年くらいの学習歴は必要です。

しかし、そのような高い壁を克服できたときの達成感もまたひとしおです。また異文化を肌で感じられる経験はとても貴重です。特に同い年の外国人との交流はかけがえのない体験となるはずです。

一方、国内で行われる「英語サマースクール」の利点は何でしょうか?

まずは「安心感」が違います。子どもが熱を出したりケガをしたりしても、親はすぐに迎えに行けます。時差はないし、気候も普段の生活と大差ありません。渡航費がかからないため、参加費は10万円以内で収まるところがほとんどです。

国内のデメリットとしては、異国の文化を感じることはできないこと、参加者は日本人の子どもだらけなので「英語を話す」プレッシャーを回避して「日本語で話してしまう」傾向にあることです。

それでも、小学校で英語を習い始めたばかりの子どもや、家族以外の人と宿泊を伴う旅行経験のない子どもなら、国内の「英語サマースクール」から始めるほうが無難です。

参加後の様子を見ながら「海外にも行ってみたい」と子どもが言い出して、予算や状況が許されるなら来年の計画として海外サマースクールへの参加を検討するといいです。

アウトドア中心とインドア中心

日本国内の英語サマースクールは内容が多様化しています。「アウトドア中心」と「インドア中心」の2種類に大別できます。それぞれネイティブのインストラクターや講師が中心となって、さまざまな活動を進めます。

「アウトドア中心」のものは「英語サマーキャンプ」とも呼ばれます。「アウトドア」の良いところは、「英語を学ぶ」のではなく「英語で学ぶ」ところです。英語はあくまでもコミュニケーションの道具として扱われています。

それまでは「学校で教科として学ぶ英語」しか知らなかった子どもが、言葉を学ぶ原点を見つめなおすようになります。

「インドア」では宿泊を伴うスクールだけでなく、一定期間、その場所に通うタイプのものもあります。日本国内のインターナショナルスクールが夏休みの間場所を解放して、普段はインター校に通っていない子どもも受け入れているのはその典型です。

「インドア中心」のサマースクールでも、通常の英語の授業の他に「体験型のアクティビティ」が盛り込まれているようです。

活動内容と期間で選ぶ

インターネットで「国内 英語 サマースクール」のキーワードで検索すると、たくさんの情報がヒットします。あまりにもたくさんあるので、何を選んだらよいのか迷ってしまいます。

人気のコースは募集を開始してすぐに定員に達してしまうこともあります。遅くとも5月の連休にはチェックしたほうがいいです。

選ぶ基準は「活動内容(アウトドアかインドア)と開催期間」です。夏休みに入ってすぐの7月下旬は特に人気が高いので、あまり迷っている時間はありません。おそらく毎年参加するリピーターが早めに申し込んでいると思われます。

仲の良い友だちと参加するなら、なおさら早めにお母さん同士で日程を決める必要があります。

英語のレベル別になっているところもある

活動内容とは別に、英語の習熟度によってコースを分けているスクールもあります。同じくらいのレベルグループなら、インストラクターもコントロールしやすいです。参加者も「自分だけ英語を理解できなかった」という劣等感を感じずに済みます。

親心としてつい「ちょっとハイレベル」なグループに入れたくなる気持ちは理解できます。でも、子どもの英語力と性格をきちんと考慮して、適切なコースを選びましょう。不明な点があれば、主催者に遠慮せずに質問しましょう。

ちなみに帰国子女を対象にした「ハイレベル」なコースも用意されています。

英語のサマースクール(アウトドア)

キャンプといっても、サバイバル的なものではなく、子どもでも安心・安全に参加できるタイプのものがほとんどです。それでも、川遊びや山登りでは危険はゼロではありません。インストラクターがきちんと資格を持っているかどうか確かめましょう。

食品アレルギーや普段飲まなければならない薬がある場合は、事前に確実に伝えましょう。パンフレットや説明会、ホームページなどでそれに関する細かい記載のあるスクールを選んだほうが安心です。

前述したように、教室で学ぶのと違って英語で「アウトドア活動」などのアクティビティをするのが中心です。英語での指示を理解して「何かをやり遂げた」喜びを得られるのが、このタイプのスクールの良いところです。

英語のサマースクール(インドア)

「机に座って英語の授業を集中的に受ける」のがインドアタイプの主流です。しかし、こちらのほうも内容が多様化しています。こちらに参加させるお母さんは、「英語力について何かしらの向上」を期待している傾向が強いようです。

開催期間は3日~5日間くらいがほとんどです。この短い間で、お母さんにも伝わるような「成果」がスクールには求められます。そのため彼らも、あの手この手でいろいろと工夫を凝らした内容を提供しています。

アクティビティ&ワークショップ

主に、幼児~小学校低学年の参加者向けには、ゲームや歌などの楽しいアクティビティを通じて英語に慣れ親しませる内容が盛り込まれています。また、「英語で」何かの作品を造り上げるような作業をグループで行います。

幼児中心なので、宿泊ではなく「通いタイプ」が多いです。普段通っている幼稚園などととは違うお友達と楽しい時間を過ごせれば成功です。講師はもちろん英語で指示を出しますが、短期間なので英語力の急上昇は期待しないほうがいいです。

英語でのドラマ

短期間で成果を出すために、「英語での演劇」にチャレンジするコースです。お母さんは「書かれた台本じゃなくて、自由な会話を英語でして欲しい」と思うかもしれません。
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しかし、演劇は英語を覚えるのにかなり有効な手法だと私は思います。私の息子がインターナショナルスクールに通っていたときも、毎年大きな「演劇」がありました。

最初は英語が不得手だったので、短いセリフしか与えられませんでした。それでも、人前で堂々と英語を話せたので本人も自信につながったようです。2年目以降は徐々にセリフは長くなりましたが、前年にも増して堂々した演技でした。

セリフは何度も何度も繰り返して声に出して覚えます。つまり、音読と同じ効果があります。ただの音読よりも優れているのは、セリフを話す状況が明確で、その人物の心境に合わせてセリフを読むところです。これは音読より現実の世界に近いものです。

驚いたことに、帰国して数年経ってもセリフの一部や挿入歌などを口ずさむことがあります。繰り返し音読練習することの学習効果が高いことの証明です。

私は子どもをサマースクールに参加させたことはありません。それでも、「ドラマ」タイプはおもしろそうだと感じています。

英語学習

いわゆる英語の「お勉強」です。ただし、普段受けている学校での授業と違って、「オールイングリッシュ」で行われます。発言も積極的に行うように要求されるので、緊張感は段違いでしょう。

一般的にネイティブの先生は「ほめ上手」です。日本人には未体験レベルで「ほめられる」ので、子どもによっては大きな自信につながります。

以前、仕事の関係でニュージーランド人が経営する会社の女性スタッフと食事をすることがありました。普段の社長の様子をたずねると「彼はとにかくほめますね。ちょっとしたことでもYou’re a champion! と言って大げさにほめてくれるんです」とうれしそうでした。

大人だってほめられるといい気分になるのです。子どもならなおさらです。これがきっかけで「英語好き」になるかもしれません。

英検対策

「短期間で成果を出す」点では、検定対策もいいかもしれません。私は「英検の級だけを目標にした英語学習」は推奨していません。しかし、英検を受ける予定があるなら、短期間で集中して成果を上げるのは悪いことではありません。

英検合格がやや難しく感じられる3級から活用するといいでしょう(小学生で3級を狙う子どもは上級者です)。特にネイティブを活かして、面接練習を豊富にできるのがメリットです。

無事、目標の級に合格できたら「参加してよかった」とお母さんも納得です。

お母さんの心構え

サマースクールに子どもを参加させるとき、お母さんはどのような心構えでいるべきでしょうか? 同じスクールに参加しても、満足しているお母さんもいれば「不満だらけ」のお母さんもいます。

子どももお母さんも「参加して(させて)良かったな」と心から思えるために必要な「心構え」について説明します。

英語力向上の過大な期待はやめよう

海外でも国内でも、スクールの期間は数日~2週間程度です。確かにその期間は英語漬けの状態になります。しかし、語学習得の観点からすればそんな短期間で英語力の向上は無理です。

私は日本から英語ゼロで海外のインター校に入学してくる子ども達を何人も見てきました。英語を話し始めるまでの期間は、一般的に3か月~1年は必要です。これは「片言」レベルの話なので、ネイティブの子ども達と遜色ないレベルになるには数年は必要です。

だからサマースクールだけで英語力を大幅に向上させるのは不可能です。もし、お母さんが過度にそのような期待をしてしまうと、子どもは「お母さんの期待に応えられなかったから、ボク(ワタシは)ダメなんだ」と勘違いしてしまいます。

楽しい経験になるはずだったのに、お母さんの無茶な期待で不幸になってしまうのは避けましょう。

参加後の子どもの気持ちを大切にしよう

人間は忘れる動物です。帰宅直後は英語に対するモチベーションが高まっています。その時期を何もしないでやり過ごすのはあまりにももったいないです。英語学習の習慣づけのきっかけにしましょう。

スクールに参加するとわかりますが、普段音読などで繰り返し覚えたフレーズでなければ実際の場面ではすぐに口から出てきません。基礎練習の大切さを子どもは体験しているこのタイミングがチャンスです。

「英語は声に出して読むことが大切だよ」「毎日少しずつ音読の練習をしてみようか」など、現実的な目標を設定して、一段ギアアップした英語学習に移行しましょう。

参加者が得られる成果

サマースクールに参加しても「英語力そのものの向上はそれほど期待できない」ことは先述したとおりです。では、子どもがサマースクールに参加して得られる学習効果とはいったいどのようなものでしょうか?

英語への興味が高まる

何といっても英語への興味が高まります。たとえ短期間でも、英語を理解しようと頑張らないと楽しい活動はできません。それまでは「雑音」として英語を聞き流していたのが、「意味のある言葉」「有益な言語」として認識するようになります。

なぜ海外の現地校やインター校に移った日本人の子どもが英語を話せるようになるかというと、「必要性」を肌で感じているからです。英語を話せないと友だちと遊べません。先生の言うことも理解できません。英語に対する真剣度が違うのです。

日本国内でそのような環境に身を置くことは皆無です。しかし、サマースクールはたとえ短期間でも「英語の必要性」を感じられる貴重な時間となります。

英語「で」何かを学ぶ体験

私はこれが最も貴重な体験だと思います。日本人はどうしても英語を学校の「教科」や「受験科目」として考えています。そのため「解答欄に記入できればいい」と考えて音声を軽視したり、受験が終わると英語から離れてしまったりする残念な人が多いです。

しかし、アクティビティは、英語「で」何かを学ぶ体験そのものです。「何か楽しいことにチャレンジするために英語が必要」という動機なら、成績や受験に関係なく一生英語を学び続ける原動力になります。

帰宅したらぜひお母さんから子どもにこのような話をしてあげましょう。普段は関心を示さない内容かもしれません。しかし、サマースクール直後なら真剣に耳を傾けるはずです。

「もっと話せるようになりたい」につながるふたつの体験

サマースクールに参加中、子どもは二つの経験をします。つたない英語でも「通じた喜び」と、簡単なことでも「英語で言えなかった」フラストレーションです。実は、どちらも今後の英語学習を継続するために必要な経験です。

片言の英語でも、相手が理解してくれた喜びはひとしおです。英語の学習は長期間に渡る努力が不可欠です。そのため「ごほうび」がないと心理的に消耗してしまいます。「通じた喜び」は最高の瞬間です。

一方、「どうやって火をつけるんですか?」のように、日本語なら幼稚園児でも言えることを英語でうまく言えないことがあります。参加中このようなフラストレーションを子どもは頻繁に感じます。

あまりフラストレーションが多すぎるとやる気を失ってしまいます。しかし、適度なフラストレーションは「もっと勉強して英語を話せるようになりたい」気持ちにさせてくれます。

もし、参加者の英語レベルが細かく分かれているなら、子どもに合ったレベルに参加させましょう。うまくいくと、「通じた喜び」と「フラストレーション」の両方をバランスよく体験させられます。

モチベーションが最高潮になっているところで、英語の本格的なトレーニングを始めましょう。

まとめ

夏休みに子どもを「サマースクールに参加させたい」と計画中なら、5月の連休までにはチェックしましょう。人気のコースや日程はすぐに埋まってしまいます。

日本国内の英語サマースクール(サマーキャンプ)なら、手軽にお手頃な費用で参加できます。

それぞれのスクールでは、さまざまな内容を用意しています。子どもの適性に合わせて、どのスクールに参加させるのがよいのか子どもと相談しながら決めましょう。英語の習熟度に合わせたコースを用意しているスクールもあります。

短期間のサマースクールで、英語力の急激な向上を期待するのは禁物です。しかし、英語への興味を高めたり、コミュニケーションの道具として英語を再認識したりできる貴重な機会です。

また、英語で生活しながら「通じた喜び」と「通じないフラストレーション」の両方を体験できます。これらは両方ともその後の英語学習を継続するために大切な経験です。

比較的時間に余裕のある小学生のときは、サマースクールに参加するチャンスです。子どもが「参加してよかった」と笑顔で帰宅できるようなスクールを見つけてあげましょう。

子どもの英単語:生活の中にある英語を利用しよう

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突然ですが、「あなたの周りに英単語はいくつあるか」教えてください。目をつぶって。ハイ、始め!

どうでしたか? 「一つもありません」と答えたお母さんが多いと思います。では目を開けて、今度は英語を探すつもりでぐるりと部屋の中を見渡してください。カレンダーの曜日の「Sun」、電源タップの「on」、電気ポットの「push」など次々に見つかるはずです。

普段の生活圏にたくさん英語があるのだから、これらをフル活用して子どもの語彙力を増強しましょう。勉強を前面に打ち出すと子どもは逃げ出します。ゲーム感覚で取り組むことをおすすめします。

身の回りの英語はこれから何度も目にします。繰り返し触れることで、忘れにくくなる効果があります。ぜひ、最後まで記事を読んで、さっそく取り組んでみましょう。

子どもの身の回りの英単語を利用しよう

「日本人が英語を話せないのは、英語を使う環境がないから」という指摘は一理あります。確かに日常生活で、英語を話す場面はほとんどありません。

しかし、日本は英語で溢れています。カタカナ語も含めて、外に出ると英語やその他の言語で書かれた看板・ポスターなどを頻繁に目にします。

「子どもに英語に興味をもってもらいたい」と思うなら、まずは生活圏に「英語」を見つけて、興味を持たせるところから始めましょう。

近所の看板に注目しよう

休みの日、子どもと外に出かけるなら、とりあえず近所の看板に注目してみましょう。「ウチの近所には英語の看板はそんなに多くない」と思うかもしれません。

しかし、それは普段あまり意識せずに素通りしているからです。子どもとゲーム感覚で、近所の英単語を探し出し、その意味を予想したり調べたりするだけでもいい勉強になります。

カラーバス効果とは

有名な心理学用語で「カラーバス効果」というものがあります。何かを意識すると、それに関係する情報が目に飛び込んでくる現象です。

私が今の場所に引っ越しをして3週間が過ぎた頃のことです。髪が伸びたので床屋さんを探しに外に出てみると、たくさんの床屋さんがあることに初めて気がつきました。

引っ越してから3週間、同じ景色を見ていても床屋さんの存在にさえ気づきませんでした。これはまさしく「カラーバス効果」によるものです。

あなたの近所にもきっと英単語が溢れているはずです。子どもに「今日は〇〇に出かけるよ。途中で英単語を見つけてみよう」と声をかけてみましょう。少し意識するだけで、普段まったく気づかなかった「英単語」をたくさん見つけ出せます。

子どもが英単語を得意になるテクニック

私は中学生の頃から英語が得意でした。あるとき気づいたのは、「他の生徒より私のほうが単語に関して敏感だ」ということでした。

当時流行していた洋楽バンドの「カルチャー・クラブ」が話題に出たとき、「カルチャーって何?」と気になりました。友達のCDジャケットで綴りを見て辞書で調べました。

「cultureって文化のことか。そういえば駅前にあるカルチャー・スクールっていろんな習いごとをするところだから、文化って言葉が使われていたんだ…」

このように、一語調べたらできる限り別の何かと関連づけるのが習慣でした。当時は意識をしていませんでしたが、これは記憶を定着させるのにとても良い方法です。

もちろんすべての単語をこのように展開できるわけではありません。無理矢理暗記するしかないものも結構あります。しかし知らない単語に出会ったときのちょっとした行動習慣がその後の語彙力にかなり影響を与えるのは間違いありません。

頻繁に思い出すと忘れなくなる

英単語に対して敏感になるのも大切ですが、やはり人間は忘れます。「覚える→忘れる→再び覚える→忘れる→覚える」という反復をすることで、記憶は定着していきます。

子どもと街歩きをして英語を集めて、一週間経って再び同じコースを歩いたとき、子どもはカラーバス効果により再び同じ単語を目にします。ここで忘れかけていた意味を思い出すかもしれないし、忘れてしまっているかもしれません。

そこでお母さんが「〇〇はこういう意味だったっけ?」とヒントを出せば、記憶は定着していきます。そのあとまったく別の場所で別の文脈で同じ単語を見たとき、さらに単語の意味はより豊かな形で記憶に残っていきます。

ボキャブラリーの増強はこれの繰り返しです。すべての単語をこのように覚えられるわけではありません。単語集を使わないと、いつまでたっても登場しない単語もあります。しかし、実体験に基づいた単語は「忘れにくい」特徴があります。

ぜひ、子どもと外出するときは英単語を意識させてみてください。このときくれぐれも「勉強っぽさ」を出さずに、ゲーム感覚を演出するように心がけましょう。

街に出て英語を探そう

まずは、論より証拠。私が昨日、駅の反対側にある床屋さんへ往復した間に見かけた英単語(英文)を集めてみました。自分でもびっくりするくらいたくさん見つけられました。

Rental Dance Studio
rental dance studio日本語では「スタジオ」ですが、英語の場合「ストゥディオ」と発音します。「お金を払って、ダンスをする場所を提供している看板だよ」と子どもに教えてあげると、何の看板かわかるようになります。

FOR RENT
for rent

アメリカ映画を観ていると、家の前に立つ「FOR RENT」の看板を目にします。rentは名詞で「賃貸料」のことなので、「FOR RENT」で「賃貸用(に募集中)」の意味です。

同様に「FOR SALE」は「売り家」のことです。

82 seats/ 18 seats
seats

何気ない看板ですが、学ぶことは多いです。まず、数字を読めるでしょうか? 「Eighty-two, Eighteen」です。次に、seatの読み方のコツは、最初のsを隠すと「食べる」意味の「eat」になります。

偶然、ハンバーガーショップなので、seatのついでにeatも関連付けて覚えてしまいましょう。

Station Information/ Guide Map
station information

観光地に行けば「i」のマークはよく見かけます。informationのことです。

ENTRANCE
entrance

「entrance」は名詞なので入口、動詞に変わると「enter」で「~に入る」意味です。注意しなければならないのは、「toやintoなどの前置詞は不要である」ことです。

例文)The train entered a tunnel.(電車はトンネルに入った)

West Exit
west exit

まず、「exit」は「出口」のことで、「entrance」の反意語です。

次に方角の「west」を覚えたなら、ついでに他の方向も覚えてしまいましょう。

QUEEN’S ISETAN
queen's isetan

200メートルの距離に「QUEEN’S ISETAN」と「BURGER KING」があるこの街はさながら「王国」(kingdom)です! 「Queen’s」の「’s]は所有を表しているので「女王の伊勢丹」の意味になります。

WHOPPER
whopper

バーガーキングで限定販売中だった「whopper」【名詞】は「途方もなく大きいもの」の意味です。試しに注文してみると、隣のチーズバーガーよりもふた回りくらい大きかったです。私はこの単語を初めて知りましたが、体験と結びついたので意味を忘れることはないでしょう。

Elevator
elevator

イギリス英語だと「lift」と表記されます。

Tickets/ Charge
tickets

交通形ICカードをチャージするときは、英語では「top up」とか「load」を使います。英語の「charge」は「請求する・充電する」意味になってしまいます。

BURGER KING
burger king

BURGER KINGで「バーガーの王様」の意味です。

MAKE A DIFFERENCE/ THIS SUMMER/ ANYTIME FITNESS
anytime

「different」【形容詞】は「異なる」で、その名詞形が「difference」です。「make a difference」で「違いを作れ!」という意味です。スポーツジムのキャッチコピーです。

「anytime」は「いつでも」の意です(ここは24時間オープンがウリのジムです)

3 COINS
3 coins

100円硬貨3枚で買えるから「3 coins」。

TAXI
taxi

「take a taxi」で「タクシーに乗る」の 意味です。

STAFF
staff

「staff」はほとんど日本語化していて意味は「スタッフ」です。難しいのは「staff」は集合名詞(複数のグループを一つのものとして扱う)なので「I am a staff.」と言えません。正しくは「I am a member of the staff.」です。意外と奥の深い単語です。

Billiards/ Darts
darts

billiardの綴りを注意深く見ながら、発音してみましょう。カタカナ読みすると「ヤ」に相当する「y」は含まれていません。指で綴りを追いながらゆっくりと読み上げる練習をすると、フォニックス(綴りと発音のルール)の練習にもなります。

We are Reds! / We are supporting Urawa Reds.
reds

「We are ~.」でbe動詞の現在形まで学習できます。

片道10分でも、こんなにたくさんの看板やポスターに英語を見つけられました。次に、これらの単語を効率よく覚える方法を紹介します。そしてその単語を関連付けたり、横に展開したりして、さらに豊かな語彙力を身につけるための工夫を説明します。

語彙力増強法

さきほど集めた近所の英語を使って、子どもにどのように与えると英語が得意になるかを説明します。集めたままにするのではなく、この「ひと手間」をかけることによって、子どものボキャブラリーは何倍も豊かになります。

正しく読んで反復する

お母さんにぜひ実践して欲しいのは、新しい単語に出会ったときは子どもに「正しく音読させる」ことです。まずは、綴りを見ながら一緒に発音してみましょう。もし、読み方がわからなかったら、音声付きの電子辞書やスマートフォンで調べましょう。

意味を調べるのは「正しく音読できた」あとです。読めない単語は「使えない単語」だからです。

では「正しく読めて意味がわかった」ら、次は覚えた単語を関連付けたり「横に展開」させたりしてボキャブラリーを膨らませます。

反意語

集めた単語を眺めてみると、反意語(反対の意味を持つ言葉)やペアやグループで覚えたほうがいい言葉に気づきます。

king/ queen(王/女王)

entrance/ exit(入口/出口)

east/ west/ south/ north(東西南北)

品詞を変えてみる

dart【名詞】ダーツ(の矢)【動詞】さっと動く

例文 The lizard darted to the bush. (トカゲは草むらへさっと動いた)

ダーツの矢と同じように、「ス―ッと移動する」イメージはつかめましたか?

rent【名詞】賃貸料、 rental【名詞】家賃、賃貸し【形容詞】賃貸の

子どもには「賃貸とは何か」を説明する必要があります。英語を学ぶことは日本語の理解を深めることにもつながるので、面倒くさがらずに教えてあげましょう。

複数形

seats/ tickets/ darts/ coins/ billiards/ reds

名詞にsをつけるだけの単純なものばかりですが、読み方に意識を向けましょう。無声音で終わる場合は【s】、有声音で終わる場合は【z】の音になります。

無声音とは声帯を振動させないで出す音です。のどに指をあてて発音しても、振動を感じなければ無声音です。反対に、振動を感じるときは有声音といます。

seat, ticket, dartの t の音は無声音(声帯が振動しない音)なので、s をつけると「ツ」の音になります。反対にcoin, billiard, redのn, dの音は有声音なので、「ズ」の音です。

文法

We are reds./ We are supporting reds.

埼玉県の浦和はサッカーの街で、いたるところに「浦和レッズ」の存在を感じます。毎日、「We are reds.」と声に出して読んでいれば、「Weのbe動詞は何だっけ」と考えなくても出てくるようになります。

「We are supporting reds.」には現在進行形(be+-ing)が使われています。

現在の状態「私たちはレッズを応援しています」を表しているので、本来は「We support reds.」の現在形で表現するべきです。おなじような例でマクドナルドのCMでも「I’m lovin’ it」がありました。

あえて進行形にすることで、躍動感を演出していると思われます。ちなみに、supportに-erをつけるとsupporter(サポーター:応援する人)になります。

ケガしたときに使うサポーターも「支える」意味が中心にあります。ケガした患部を「支えるもの」という意味です。

support 一語だけでも、ここまで話を膨らませられます。

まとめ

このように私たちの身の周りにはたくさんの英語や英語に由来するカタカナがあります。普段気がつかないだけで、その気になればいくつも見つけることができます。

もし子どもが英語を勉強しているなら、これらの単語を教材にしてみましょう。街で見つけたら、「正しく音読」したあと、意味を調べます。

このようなことを続けているうちに、単語どうしで関連付けするとさらに語彙力は増していきます。

街歩きはその後何度も反復します。そのたびに同じ単語を読むので、自然に復習することになります。このようにして覚えると単語の読み方や意味は忘れにくくなります。

この勉強法の一番の目的は、子どもの英語に対する感性を高めておくことです。ちょっと気になる単語に出会ったときに、読み方を学び意味を調べるだけでも大きな進歩です。そこからさらに別の何かと結び付けられるようになると、記憶は強化されます。

お母さんのちょっとしたアドバイスで取り組めるので、ぜひチャレンジしてみてください。

小学生でも大丈夫! 英語エッセイから学ぶ「論理的思考力」のススメ2

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以前、国語の先生が言っていたことで印象的なことがあります。「これまで世の中の詩人は5・7・5(7・7)の俳句や短歌以外の定型詩を追求してきたが、誰も超えられなかった」

確かにその通りです。交通標語「手をあげて 横断歩道を渡りましょう」は「5・7」のリズムで、日本人なら無意識のうちに「おさまりが良い」と感じます。万葉集にはすでに5・7・5・7・7は完成されていたので、1200年以上受け継がれていることになります。

同じような「型」は外国にもあります。英語の「5パラグラフ・エッセイ」もその一つです。自分の意見や主張を書くときに、相手に伝わりやすい形式として編み出された「型」です。

世の中がグローバル化するなか、さまざまな文化的背景を持った人たちが共通のロジック(論理)でコミュニケーションを取る必要性が高まっています。そのときに、「5パラグラフ・エッセイ」は中心的な役割を果たします。

アメリカ人なら子どものころから5パラグラフ・エッセイの「型」を徹底的に学びます。日本でも作文指導である程度は扱われますが、アメリカほど深く学ぶ機会はありません。

英語をコミュニケーションの道具として学ぶなら、英語だけでなく伝えるための「ロジック」は欠かせません。Four Square Writing Methodを活用すると、日本の小学生でも簡単に学べます。

今回は、Four Square Writing Methodを使った簡単な論理展開の練習をしてみましょう。作文の宿題で困っているときに、お母さんが教えてあげると子どもは受け入れやすくなります。

Four Square Writing Methodってどんなもの?

アメリカの小学生にエッセイ(小論文)の書き方を指導するために考案されたのが「Four Square Writing Method」です。3人の先生(Judith S. Gould, Evan Jay Gould and Mary F. Burke)によって書かれた本の中で、詳しく紹介されています。

息子がインターナショナルスクールに通っていたころ、毎週出されるエッセイの宿題に苦労していました。夏休みにこのテキストを使ってエッセイの書き方を学ぶと、「何を書いたらいいのか」で困ることがなくなりました。

Amazon­の洋書カテゴリーで「four square writing method」と検索すると、このシリーズがズラリと表示されます。対象年齢別や目的別に細かく分かれているので、子どもに合ったテキストを選ぶことができます。

私が購入したのは「Four Square Writing Method for Grades 4-6」です。息子は最初から最後まで読んではいませんが、それでもエッセイの基本的な部分は学べました。

A4の紙一枚あれば、いつでもどこでもできる

Four Squareの良いところは、紙一枚とペンがあればいつでもどこでもエッセイを書くのに必要な情報を整理できることです。

子どもに教えているうちに、今では私も活用しています。この手のものでは「マインドマップ」が有名です。しかし、文章を書くときはFour Squareのほうが私は使いやすいです。

以前、娘の卒業謝恩会でスピーチ予定のお父さんが突然欠席することになり、私が代わりをお願いされました。

残り時間たったの5分でした。卓上にあった紙ナプキンにボールペンでFour Squareを書き、スピーチプランをまとめました。そのメモを見ながらのスピーチでしたが、「わかりやすかった」と参加者からほめてもらいました。

まずは、実際に言葉を入れながらFour Squareの利用法を覚えていきましょう。

5つのマスの関係性を理解するために、単語を入れてみる

初めに「Four Square」の書き方を見てみましょう。A4の紙を用意して、同じように線を引いてください。
four_square_function

たったこれだけです。真ん中にマスを書き、あとは外側の部分を4つに分割するだけです。1のマス(中心)は「メイン・アイデア用」、2~3のマスは「メイン・アイデアを支えるための詳しい理由や根拠用」、4のマスは「まとめ用」です。

ここでは例として「めん類」についての簡単な文章を作成してみます。

  • 中心のマスは「メイン・アイデア」

最初にすることは、「メイン・アイデア」を書くことです。中心の言葉は「めん類」なので、中心のマスには「めん類」と書きます。

常に中心に「めん類」が見えるので、途中から話題がそれることはありません。

  • 2~3のマスに詳しい情報を入れる

次に、2~3のマスに「めん」に関する詳しい情報をいれます。ここでは「そば」「うどん」「パスタ」を入れてみます。

中心に「めん」があります。それを囲むようにして「そば」「うどん」「パスタ」が配置されます。2~3のマスの内容は、メイン・アイデアから外れていないことが確認できます。

そば、ざるそば、モリそばを入れてしまうのはNGです。なぜなら、この場合メイン・アイデアは「そば」にするべきだからです。

  • 4のマスに「まとめ」

第4のマスには「まとめ」を入れます。ここは文章にしてみましょう。
four_square_noodle

そば、うどん、パスタはめん類です。

一見、「エッセイ」の形式とはまったくかけ離れた姿です。しかし、5つのマスの関係性を端的に表しています。いわば、エッセイの骨格です。話題の中心は「めん類」で、3つの詳細情報があり、まとめですべてをつなぎ合わせています。

復習します。初めに「めん類」について書こうと決めて1のマスに記入します。次に、それに関する詳細情報を2~4のマスに入れます。そして、5のマスで、まとめを書きます。

練習問題「球技」

それでは理解を確実にするために、今度は「球技」について練習してみましょう。紙と鉛筆を用意して、真ん中にマスを書いたら外側の部分を4等分にします。

four_square_ball

まとめの文章は書けましたか?

テニス、野球、サッカーは球技です。

ここまでは、超初心者向けに5つのマスがどのような関係になっているかを解説しました。次は、文章をそれぞれのマスに入れていき論理的な文章を作る過程について解説します。

5つのマスに文章を入れて、つなげてみよう

ここからは、5つのマスに文章を入れていきます。これをマスターすると、簡単なエッセイなら書けるようになります。英語のエッセイを書く場合は、当然英語でセンテンスを書いていきます。

小学生は普段の作文に応用するためにも、日本語で慣らしておきましょう。英語力が向上してきたら、英文で書くことにも挑戦しても遅くはありません。

  • 中心に自分の意見を入れる

真ん中のマスにメイン・アイデアを入れます。今回は文章で書いてみましょう。例として「教科書をすべて持ち帰るのはやめるべきだ」という主張で書いていきます。

  • 2~4のマスに詳しい情報を入れる

メイン・アイデアを書いたら、この主張を支えるための詳細な理由・根拠・データなどを第2~4のマスに入れていきます。それぞれのマスには同じ内容のことは書かないように注意しましょう。

2のマスには「ランドセルが重すぎて、背骨に悪影響を与える」と書いてみます。実際、教科書が大型化していたり内容が増えたりしたことにより、全体の重さは昔よりも重くなっています。

3のマスには「家庭学習にほとんど使わない音楽・図工・道徳の教科書は学校に置いておいても問題ない」と書きます。

国語の教科書は宿題の音読に使用するので、持ち帰る必要があるのはわかります。算数は計算方法の確認に必要かもしれません。しかし、その他の教科については、必要なときだけ家に持ち帰れば充分です。

4のマスを埋めるのは、少々大変です。2・3のマスに見劣りしないだけの理由や根拠を示さないといけないからです。

4のマスには「教材のデジタル化を進めれば、タブレット端末で見られるようにできるから」と記入します。可能な新しい技術を取り入れて、不便を解消する提案です。

ここまでくればあと一歩です。

  • 5のマスにまとめの文章

5のマスには「まとめ」を書きます。まず、真ん中のマスで示したメイン・アイデアを繰り返します。このことにより、最初と最後でブレない(一貫性のある)構造を作ります。

「教科書をすべて持ち帰るのはやめるべきだ」

そして、2~4のマスで示した理由や根拠、提案を簡潔に示します。

「教科書をすべて持ち帰るのはやめるべきだ。なぜなら、重いランドセルは子どもの背骨に悪影響を与えるし、持ち帰る必要のある教科書は数冊だけだし、タブレット端末に教科書の内容を収められるからだ」
作文

 

ここまでの文章をすべてまとめてみます。

僕は、教科書をすべて持ち帰るのはやめるべきだと思う。
第一の理由は、重すぎるランドセルは子どもの背骨に悪影響を与えるからだ。
第二の理由は、家庭学習にほとんど使わない音楽・図工・道徳の教科書は学校に置いておいても問題ないからだ。
第三の理由は、教材のデジタル化を進めれば、タブレット端末で見られるようにできるからだ。
結論として、教科書をすべて持ち帰るのはやめるべきだ。なぜなら、重いランドセルは子どもの背骨に悪影響を与えるし、持ち帰る必要のある教科書は数冊だけだし、タブレットを導入すれば紙の教科書は不要になるからだ。

文章としては洗練されていません。しかし、作者の主張は明確に伝わります。これが5パラグラフ・ライティングの威力です。

実際はもう少し自然な日本語で文章を書きます。最後のまとめには、冒頭をそのまま繰り返すのではなく、未来志向にしたり作者の意志を加えたりします。

より自然な日本語で肉付けすると下記のようになります。

毎日の登下校でランドセルを下すとホッとする。なぜならランドセルがとても重いからだ。ランドセルが重くなる主な原因は教科書を毎日持ち帰るからだ。僕は「教科書をすべて持ち帰るのはやめるべきだ」と思う。

第一の理由は、重すぎるランドセルは子どもの背骨に悪影響を与えるからだ。新聞で読んだがひどい場合には背骨が曲がってしまうらしい。

二つ目の理由は、音楽・図工・道徳の教科書は家に持ち帰る必要がないからだ。宿題で使うから家に持ち帰るのであって、必要もないのに持ち帰るのはおかしい。

最後の理由は、一人一台タブレット端末を持てば、すべての教科書のデータを見られるようになるからだ。

結論として、今すぐ政府は教科書を毎日持ち帰らなくてもいいと学校に指示を出すべきだ。工夫すれば軽く出来たりタブレット端末に収めたりできるのに、健康を害してまですべての教科書を毎日持ち帰るのはどう考えても問題だからだ。

小学生の子どもの作文なら、このレベルでも充分です。文章を長くしたければ、導入部分や2~4のマスの情報を膨らませればいいだけです。

練習問題「遠足は楽しい」

Four Squareを使って文章のプランを考えてみましょう。メイン・アイデアは「遠足は楽しい」です。簡単な文章でいいので、それぞれのマスを埋めてみましょう(模範解答はありませんが、自分で試してみて下さい)。

英語ではどうなる?

英語で書く場合も基本的なやり方は同じです。エッセイで頻繁に使われる単語やフレーズがあるので、下にまとめておきます。

first of all(まず初めに)/ secondly(第二に)/ finally(最後に)/ because(なぜなら)/ in conclusion(結論として)/ such as(~のような)/ for instance(たとえば)/ but(しかし)/ however(しかしながら)

2のマスの冒頭にFirst of all、3のマスの初めにSecondly、4のマスの初めにFinallyが対応します。最後のまとめ(5のマス)の冒頭には目印としてIn conclusionで書き始めると「まとめが書いてあるな」と読者はすぐにわかります。

英語でエッセイを書くのは小学生では難しいと思います。しかし、エッセイで必要となる論理展開を身につけておけば、英語力が備わったときにスムーズにエッセイを書けるようになります。できるところはさっさと進めておきましょう。

英検3級からはライティングで意見を述べることが求められます。勉強法がわからない場合は、オンライン英語塾(1対1の完全個人指導)にご相談ください。

まとめ

最初は、単語をそれぞれのマスに入れてみて最後に一つの文章を作ることから始めてみましょう。これでそれぞれのマスの関連性を理解できます。

慣れてきたら、簡単な文章を入れていきます。真ん中のマスには作者の主張を入れます。それを常に頭に入れながら、2~4のマスに詳細(理由・根拠)を埋めていきます。

最後の5のマスで、最初の主張を繰り返してから、もう一度すべての理由をもう一度簡単に示します。「まとめ」です。

子どもは「英語エッセイの書き方」として学ぶ必要はありません。日本語でもエッセイの論理展開は充分に身につきます。作文の宿題で困っているときに、お母さんが教えてあげるといいでしょう。

英検を定期的に受験している子どもなら、3級以上のライティングでエッセイライティングの素養を試されます。文章を書くときだけでなく、スピーチやプレゼンをするときにも大変役に立つスキルです。

日頃の作文でも応用できるように、子どもに上手に教えてあげましょう。

小学生でも大丈夫! 英語エッセイから学ぶ「論理的思考力」のススメ1

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日本語で「エッセイ」と言えば、雑誌の連載を思い浮かべるかもしれません。自由な形式で筆者は気ままに文章を書いています。いわゆる「随筆」です。

ところで英語の「エッセイ(essay)」とは「小論文」です。 自由な形式とは反対に「きっちりとした論理構成」で書かれています。

英語圏、特にアメリカではessayを書く訓練を小学校1年生から積み上げています。自分の主張を論理的に展開して説得力のある文章を書けることがゴールです。

英検3級以上の「ライティング」で得点するには、論理的な構成の文章を書くことを求められます。本格的なエッセイではありませんが、根底にある論理展開は共通です。

英検3級ライティングのサンプル問題と解説はこちらからダウンロードできるので、興味のあるお母さんは一度目を通してみてください(英検ホームページより引用:https://www.eiken.or.jp/eiken/exam/grade_3/pdf/DrWrite_grade3.pdf)。

英語力を身につけても、「エッセイ」の基本構成を知らないとどのように書いたらいいのかさっぱりわかりません。困ったことに日本の小学校では小論文の指導はほとんどされておらず、日本人が苦手な分野のひとつです。

そこで2回に分けて、英語のエッセイについて理解を深め、具体的にどのような方法で勉強すると論理的な文章を書く基礎を身につけられるのかを説明します。

英語のエッセイとは

仮に完璧な翻訳機が発明されたとします。日本人とアメリカ人の両者はあるテーマ(例えば、朝食にはパンと米のどちらが優れているか)について、討論をしたとします。アメリカ人はパンを支持、日本人はごはんを支持します。

平均すれば、おそらくアメリカ人のほうが「説得力がある」論理展開をするはずです。なぜなら、彼らは「他人を説得する文章」を書く訓練を小さい頃から積み上げているからです。

日本人は劣勢になると「だって、日本では昔から決まっているから」とか「米農家を守るため」といった感情論に訴える傾向があります。しかし、これでは国際的にはまともな議論として受け付けてもらえません。

英語を身につけてコミュニケーションをとるのは外国の人達です。彼らは論理的思考の中で生きているので、そこに合わせていかないと文法的に正しい英語を話していても主張は通りません。

基本は5パラグラフ・エッセイ

エッセイの構成は5 Paragraph Essay(5パラグラフ・エッセイ)が基本です。つまり、5つのパラグラフ(段落)から、ひとつの小論文が構成されています。それぞれのパラグラフには明確な役割があります。

構成は次の通りです。

第1パラグラフ:導入(テーマの説明+自分の主張)
第2パラグラフ:説明1(導入で書いたことについての理由)
第3パラグラフ:説明2(導入で書いたことについての理由)
第4パラグラフ:説明3(導入で書いたことについての理由)
第5パラグラフ:結論(自分の主張を繰り返して、最終的な結論)

日本の作文は主に感想文

日本の国語の授業でも作文指導はあります。しかし、そのほとんどは日記だったり、読書感想文だったりです。そこで求められるのは、心情の描写です。もちろん心情描写を必要とされる場面もあります。

しかし、「自分の主張を説得力のある構成で書く訓練」も同じくらい必要なはずです。しかし、自分の主張を論理的に展開することを求められる作文はめったにありません。

子どもの頃からの英語教育に反対する人の理由のひとつに、「英語を学ぶ前に論理的な思考力を養成する必要がある。そのためにまずは国語教育を充実させよ」というものがあります。その肝心な国語教育の中では、論理的な思考をあまり磨けない現状があります。

エッセイを書く訓練をすると、人生で役に立つ場面が多々あります。しかしながら学校教育ではなかなかエッセイを学ぶ機会はありません。現状では家庭でお母さんが主体となって子どもに論理的な思考をさせるトレーニングをしたほうがいいです。

論理展開に慣れると得られるメリット

論理的な構成を立てられないままだとどのような弊害が起きるのかを考えてみましょう。

たとえば、校長先生の朝礼スピーチを思い出してください。長時間スピーチをした割には何を言いたかったのかさっぱり伝わらず、終わった瞬間に内容を忘れたことはありませんか? 結婚式でのスピーチの内容がよくわからなかったことはありませんか?

書くときだけでなく話すときでさえも、筋道を立てた話し方を心がけないと相手に言いたいことが伝わりません。このようにエッセイで必要とされる論理構成力がなければ、相手に自分の意見を伝えられないのです。

ではエッセイ力を活用できる場面について具体的に説明します。

小論文を書くときの基礎になる

何といっても大学入試での小論文や大学での論文作成に役に立ちます。私は入学試験に小論文があったため、予備校で小論文の講座を受講しました。また、大学ではネイティブの先生から簡単なエッセイの指導も受けられました。

本格的な英語のエッセイを書けるほどの実力はありません。しかし、基本的な論理構成の立て方を身につけたおかげで、他の人にわかりやすい文章を書くことはできます。

その他にも応用できる場面

会社に入ればパワーポイントでプレゼンをすることもあるでしょう。プレゼンの資料を作成するときにも、5Paragraph Essayは役に立ちます。とにかく主張が明快なので「何を言っているのかわからない」状態を回避することができます。

企画書を書くときもシンプルにまとめられるので、上司にもしっかりと読んでもらえる確率がグッと高まります。

英語に話を限定しても、英検3級以上の筆記試験では短いライティングが出題されます。そのときも、5パラグラフ・エッセイを応用することで、自分の意見を明快に伝えることができます。

どんな訓練が必要か

もちろん本格的なエッセイの指導は普通のお母さんには難しいです。しかし、紙1枚だけで取り組める「簡単な5 Paragraph Essay」なら家庭でも指導可能です。ここではその基本的な考え方を説明します。

  • Four Square Writing Methodとは

Four Square Writing Methodとはアメリカの3人の先生によって書かれた本です。シリーズでいくつも関連書籍が出版されていて、Amazonの洋書カテゴリーから注文できます。

four square writing method

このシリーズの優れている点は、一枚の紙に「枠」を作りその枠に情報を埋めていくことによって、5パラグラフ・エッセイが書けるようになることです。

「なあんだ、それだけか」と思わないでください。実際に自分でやってみるとわかりますが、白紙を渡されて第1パラグラフから順番に文章を書こうとしても、すぐに行き詰ってしまいます。

ところが単純な線で仕切られたシートを使うと全体を俯瞰しながら文章を書けます。そして、最初から最後まで自分の主張がぶれない文章を書くことができます。

映画「オペラハット」の話

1930年代のアメリカ映画で「オペラハット」があります。田舎に住んでいた素朴な青年が、偶然、巨額の遺産を受け取ったところからドラマは始まります。金銭トラブルに巻き込まれて身の潔白を証明する法廷で、彼はそこにいる人たちのクセについて言及します。

LD: …For instance, the judge here is, is an O-filler.

(たとえば、ここにいらっしゃる裁判長はO(オー)埋め人ですね)

Judge: A what?

(何ですって?)

LD: An O-filler.  You fill in all the spaces in the Os with your pencil.  I was watching him.

(O埋め人です。あなたはすべてのアルファベットのOの中を鉛筆で塗りつぶします。私は見ていましたよ)

LD=Longfellow Deeds(主人公の青年)、Judge=裁判長

なぜこのような映画の1シーンを引用したかといえば、これは端的に人間の性質を表しているからです。枠で囲まれていると、その中を何かで埋めたくなるのです。

作文をするのは慣れないうちは苦しい作業です。白紙とにらめっこしていてもなかなかアイデアは出てきません。一方、枠で仕切りを作ると、空間が気になります。そして頑張って空間を埋めようとアイデアを絞り出します。

この人間の性質をうまく利用したのがFour Square Writing Methodです。これはアメリカの小学生向けに書かれた教材なので、日本の小学生が英語で学ぶには難しすぎます。しかし、日本語でも論理展開の訓練はできます。

このFour Squareの助けを借りながら、お母さんが主体となって家庭で子どものために論理的な主張をする練習をするのはそれほど難しいことではありません。英語で学ぶ必要はなく、日本語でも学べます。

普段の宿題で活用してみる

子どもがこのFour Square Writing Methodを受け入れやすいのは、作文の宿題のときでしょう。私も経験がありますが、何を書いたらいいのかわからず、無駄に時間は過ぎるばかりです。

こういうときにお母さんがいいタイミングで助け舟を出しましょう。「実は作文を上手に書ける方法があるんだけど知りたい?」と切り出せば、子どもは「どんなの?」と聞いて来るでしょう。

Four Square Writing Methodを利用した論理構成の学習については、次の記事「小学生でも大丈夫! 英語エッセイから学ぶ「論理的思考力」のススメ2」で具体的に解説します。

まとめ

日本語でのエッセイは「随筆」の意味で使われることがほとんどですが、英語におけるessayとは「小論文」のことです。アメリカでは小学校からエッセイを書く訓練に取り組んでいます。

エッセイの基本構成は5パラグラフ・エッセイと呼ばれるものです。

第1パラグラフ:導入(テーマの説明+自分の主張)
第2パラグラフ:説明1(導入で書いたことについての理由)
第3パラグラフ:説明2(導入で書いたことについての理由)
第4パラグラフ:説明3(導入で書いたことについての理由)
第5パラグラフ:結論(自分の主張を繰り返して、最終的な結論)

エッセイの論理構成をマスターすると、進学・就職・仕事などあらゆる場面で将来役に立ちます。しかし、不慣れな子どもにいきなりこのような構成で本格的な文章は書けません。

その場合、Four Square Writing Skillというアメリカの子ども向けに開発された方法が効果的です。あらかじめフレームを決めておいて、その中に情報を埋めることで論理的な文章を作成できます。

家庭でもお母さんが子どもに教えられる具体的なトレーニング方法は次回の記事「小学生でも大丈夫! 英語エッセイから学ぶ「論理的思考力」のススメ2」で紹介します。

小学生に英語文法を教える秘訣とは?

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子どもを英語教室に通わせていて「なぜ、もっと英語の文法を教えてくれないのかしら」と不満に思ったことはありますか? お母さんが中学校のときは文法中心に英語を学び、テストでも問われたのは文法理解が中心でした。

まだまだ時間はあるとはいえ、将来の受験のことを考えると「文法を教えて欲しい」と思う気持ちもわからなくはありません。

小学生に文法を教えない理由のひとつは、文法を教えるには小学4年生までは幼過ぎるからです。文法学習とは抽象的な概念を理解することです。一般的に小学5年生以上でないと、文法学習はうまくいきません。

もうひとつの理由は、子どもが通っている英語教室でも実は「文法をきちんと教えている」のかもしれません。でも、お母さんが中学校で習った方法とは異なるので、文法を教えているように感じないだけです。

小学5年生くらいからは少しずつ文法を教えられます。ただし、小学生に教えるときにはコツがあります。これは英語教師の仕事の範疇です。でも、お母さんが大まかにそのコツを理解しておくことはとても有意義です。

小学生に英語の文法を教えるときは、帰納法が基本

お母さんが中学校や高校のときに受けた英語の授業を思い出してください。おおまかにいえば「最初に文法の説明→練習問題・読解→答え合わせ」の順番だったはずです。このような授業展開は「演繹法(えんえきほう)」と呼ばれています。

演繹法で、小学生に英語文法を教えても「英語嫌い」を量産するだけです。ここでは「小学生に適した英語文法の指導法」について詳しく説明します。

帰納法と演繹法

初めに「帰納法(きのうほう)」と「演繹法(えんえきほう)」について説明します。この際厳密な定義は無視して、車の運転に例えることにします。

「帰納法」で車の運転を覚える場合、実際に運転をするところから始めます。エンジンをかけてドライブにシフトすると車はスルスルと動き始めます。慌てた初心者ドライバーはブレーキと思い、右側のペダルを踏むと急発進。正面の壁にぶつかって止まります。

ここでドライバーは、ドライブに入れるとスルスルと動くこと(クリープ現象)と右側のペダルがどうやらアクセルであることを理解します。このようにして、実践を重ねながら車の仕組みや交通ルールを覚えていくのが「帰納法」です。

「演繹法」では、最初に車の仕組みと交通ルールをきっちりと教わります。そのあと実際に車に乗って、覚えた知識に従って車の運転をします。これが「演繹法」です。

車の運転は命にかかわります。だから教習所では、演繹法と帰納法のバランスをうまくとりながら教習が進められます。でも、小学生が英語文法を学ぶときは、「帰納法」で教えたほうが圧倒的に理解は早いです。

英語で何度間違えても、命の危険はありません。では、英語文法の学習における実技教習に相当するものとはいったい何でしょうか?

音読を繰り返すと、自然と法則を見出してボンヤリと理解し始める

小学生にとって英語の音読練習は「教習所内の技能教習」です。いきなり「英語を話しましょう」といわれてもポカンとして何をすればいいのかわかりません。

そこで、シンプルで正しい英語をいくつも与えて大きな声で音読させます。このとき、意味もわからずお経のように唱えていても効果はありません。きちんと意味を理解している状態で、何度も音読させます。

このような訓練を繰り返すと、子どもなりにボンヤリと英文の「法則」や「ルール」を理解し始めます。

音読から文法を学ぶ例

ピコ太郎さんの「PPAP」は一時期大流行しました。おそらく小学生も何十回と知らず知らずのうちに「I have a pen.」と歌いながら「英語を音読」したはずです。

映像から「私はペンを持っている」という意味は明らかです。それを何度も口頭練習します。そのうち勘のいい小学生は、英語では「私は/持っている/ペンを(主語+動詞+目的語)」の順番になることを覚えてしまいます。

ここまで口頭練習を積み上げた段階で、お母さんや先生が英語の基本的な語順について少しだけ説明してあげれば、小学生でも無理なく文法を理解できます。これが帰納法のメリットです。

初めに口頭練習したあとに、文法をあたえよう

このように小学生に英語文法を教えるときは、初めに口頭練習をたっぷり与えてから、最後に「ざっくりとした」文法を教えます。これが最も効果的な指導法です。

英語が得意なお母さんはつい、初めに文法を教えてからワークブックに取り組ませようとします。これはお母さんがかつて受けた演繹法による授業の影響です。

実はプロの英語教師もついやってしまいがちな失敗です。自分が受けてきた英語教育の呪縛からなかなか抜け出せず、同じ指導を繰り返してしまうのです。

長年、子どもに英語を指導してきた先生を観察していると、この「帰納法」の原則を忠実に守っています。

細かいところにどこまで目をつぶるか

ではなぜ、中学や高校では帰納法による英語文法の指導が主流でないのかという疑問が残ります。それは、多くの情報を伝えるときは「帰納法」は効率が悪すぎるからです。

たとえば名詞に複数形のsをつけるときに、演繹法ならこのように指導できます。

  1. sだけ最後につける
  2. 語尾がs, x, sh, ch, oのときはesをつける
  3. 語尾がf, feのときは、f, feをvに変えてesをつける
  4. 子音字+yで終わるときは、yをiにかえてesをつける

このあと問題に取り組みながら、複数形の作り方を覚えていきます。

帰納法で教える場合、“I don’t have a watch, but my dad has a lot of watches.”のような文に繰り返し触れることにより、何となく「watchはwatchesだったような…」という感覚を覚えるところまで進めます。そして最後に、先ほどのルール2を与えます。

一つひとつのルールにたいして大量の文を与えて音読をするとなると、膨大な時間を必要とします。これが、中学高校の授業ではあまり採用されない最大の理由です。

「効率的に英語文法を学べるなら小学生にも演繹法で教えるべきでは?」と思うかもしれません。でも、それは実際には難しいのです。なぜなら多くの文法事項を初めに教えると、小学生では英語嫌いになったり、そもそも理解できなかったりするからです。

今の段階で何を優先させるかを見極める

小学生には帰納法中心の指導が優れているのは間違いありません。なぜなら、細かい文法の知識は不要だからです。教えるべき大切な部分にだけ絞り、帰納法で扱うのが良いのです。

正しくない英語でも、「目をつぶれる部分と目をつぶれない部分」があります。この見極めができるのがプロ教師の腕の見せどころです。

「目をつぶれる間違い」とは、たとえば“I have a lot of watchs.”(正しくはwatches)のような間違いです。「目をつぶれない」のは、“I a lot of watches have.”のような語順に関する間違いです。

文法は「英語理解のためにどうしても必要な部分」に絞り、帰納法で教えていくのが大切なポイントです。

小学生での英語の文法は、彫刻でいえば「面取り」の段階で充分です。

彫刻(面取り)

これを中学・高校の英語の授業で細かいところを整えていき完成させるイメージです。

彫刻仕上げ

初めから細部にこだわり過ぎる文法指導は小学生には禁物です。

やっかいな三単現

「三単現(三人称・単数・現在形)のs」は教えるのが難しい項目のひとつです。私だったらまず、簡単な英語の本を音読しながら動詞にsがついた文とsがつかない文を大量に音読させます。

しばらくすると、子どもは「あれ?」と気がつきます。「動詞の部分にsがつくことがあるけれど、なぜだろう?」と不思議に思うのです。

自分から質問してきたときが、最初に教えるタイミングです。

何となく理解している子ども

ネイティブの子どもでも、三単現のsは「何となく使い分け」している状態です。きちんと根拠を説明できるわけではありません。

インター校の教室に掲示されていた作文を読むと、Year 3(日本の小2くらい)のネイティブの生徒でも、s を書き落としているミスを見つけたことがありました。

おそらく彼らの頭の中では「過去形にはsはつけない。いつものことを説明するときに、その場にいない人でひとりのときはsをつける。ひとつのものにもつける」程度の理解です。

小学生ならこれで充分ですし、まったく間違っていません。

私の失敗談

インター校に通っていた息子が小学2年生のころでした。宿題で書いた作文に先生が三単現のsを赤ペンで書き足していました。息子はこのとき初めて「なんでこうなるの?」と質問してきました。

これ以前に、すでに“Does he ~?”とか“He doesn’t ~.”などの表現は話していたので、理解していると私は思っていました。

そこで試しに中学生に教えるように、理屈をこねて説明してみました。するとすぐに大きなあくびをし始めて飽きてしまいました。完全にやってはいけない指導法です。

今の私なら次のように指導します。

T: Talk about yourself. What do you have?
S: I have some books.
T: Ok. How about your sister?
S: She has some books, too.
T: Why did you say “has” instead of “have”?TはTeacher(先生)、SはStudent(生徒)

このように導けば、どういう場合に動詞にsをつけるのかをぼんやりと理解しはじめます。こうして、何回か口頭練習したあと、最後にまとめとして簡単な文法の説明をします。

もちろん、すぐにスッキリとは理解できません。何度も何度も間違えを繰り返して、ようやく少しずつ理解します。根気よく待つしかありません。ちなみに息子が「三単現のs」をほぼ間違えなくなったのは、小学4年生になってからでした。

口頭練習による対比が理解のポイント

子どもの指導に有効な帰納法を用いる場合は「対比させる」のがポイントです。このことを理解するために、「現在完了形」を例に挙げて説明します。

  • 現在完了形を例に
T: What is your birthday?
S: My birthday is May 5th, 2010.
T: Where were you born?
S: I was born in this town.
T: You lived in this town 10 years ago, right? (黒板に書く)Where do you live now?
S: I live in this town.(黒板に書く)
T: Oh, you have lived in this town for 10 years! (黒板に書く)TはTeacher(先生)、SはStudent(生徒)

10years ago

I lived in this town 10 years ago.

now

I live in this town.

→I have lived in this town for 10 years.

10年前についての情報を過去形で、現在の情報を現在形で表現して対比させます。そして、現在形の一種として「(今では)10年間ずっとこの町に住んでいます」という現在完了形の感覚を覚えさせます。

帰納法で学ばせるときは、いかに効果的な対比を見せられるかがポイントです。

このようにしてできた自分に関する現在完了の例文を何度も口頭練習させます。すると、最初のhaveは「持つ」という意味はなく、「ずっと~してきた」の意味を添えたいときに使っているだけだと何となく理解し始めます。

もちろん、最後はかならずまとめとして情報を整理してあげます。すると子どもは「ああ、やっぱりな」と腑に落ちます。もし、自分の理解に誤りがあればここで気づくので、それはそれでいい勉強になります。

すべて理解したところで、ダメ押しの口頭練習が必要です。忘れた頃に反復して練習します。このようにして、少しずつ英語の力をつけていきます。

ガチガチの文法用語から入ると、英語の心は理解できない

もし、先ほどの「現在完了形」を演繹法で、文法用語から導入したらどうなるでしょうか? 優秀な小学5年生なら、中学生と同じく理解してしまう子どももいるかもしれません。でもそれは「理解」であり、「使える」文法にはなりません。

「現在完了形: have (has) +過去分詞形=ずっと~してきた(継続)」を最初に学んでも、空欄補充のテスト以外で役に立つことはありません。

“I have lived in this town for 10 years.”と話すときの話し手は「僕はこの町に10年住んでるよ(だから、(今)僕は君よりこの町について詳しいよ)」という心情が現れています。

この感覚をつかむためには、実例に即して口頭練習を積んでから文法を理解しないといけません。

テストで正解をもらうだけなら知識だけでもなんとかなります。しかし、「本物の英語力」を身につけるためには「なぜ、その表現(文法)は必要なのか?」まで深く理解しないと、使えるようにはなりません。

この観点でみると、haveに続く過去分詞形を少々間違えたとしても、たいした問題ではありません。

このように自分の体験に関連した英語を対比させて、口頭練習を充分に積んだ後に情報を整理してあげるのが小学生には効果的な文法の教え方です。

小学生の間に口頭練習を積むのが大切

小学生の間に口頭練習を大量に積んでおくと、中学校での英語の授業をとても有効な時間にできます。学校英語では英語を話せるようにならないと批判されますが、活用しだいではありがたい文法確認の貴重なチャンスなのです。

先ほどの現在完了形で、過去分詞形の理解が曖昧だったとします。それでも口頭練習をたくさんすると、have made, have read, have watched…のように口と耳が何となく覚えています。

もちろん、間違えて覚えているところもたくさんあります。その部分をきっちりとあぶりだして、仕上げていくのが学校での英語の授業です。すでに英語の心がわかり、使うシチュエーションを理解し、発音をできる状態なので、最後に知識を固めれば鬼に金棒です。

中学校の英語の授業をゼロから学んでも、話せるようになるまでに長時間必要です。でも、小学生までに口頭練習を積み上げていれば、英語を話せるようになるまであと一歩です。学校英語はムダではないのです。

こちらの動画セミナーでは音読トレーニングを通じて、英語4技能の向上を図る方法を紹介しています

考える割合が減る(=無意識化)は英会話への第一歩

すでに音読練習をしていて仕上げの文法を覚えれば、それほど考えなくても口をついて英語表現が出てくるようになります。ほんの一瞬頭を使うだけで文章の構文を思いつくので、難しい部分やうまく伝えるための論理展開に頭を使えます。

英語を話せる人達は、頭を使わずに英語を出せる(話す・書く)割合が多いのです。これが英会話のコツです。小学生のうちに音読訓練をしておくと、中学高校で英語力のカーブは急上昇します。

中学・高校で一気に英語力を伸ばすために

小学生の段階で、「英検〇級」というテストの結果にこだわり過ぎると、お母さんはあせって結果を求めようとしてしまいます。

音読練習をすると確実に英語力は向上しますが、必ずしもテストの点数に反映されません。テストでは「〇か×」を問われます。「70%の理解」は「×」だからです。帰納法による文法学習はテストの点にすぐには反映されません。

子どもは楽しく努力をしてせっかく英語力を蓄積しているのに、低く評価されたり怒られたりしたらたまったものではありません。中学高校にすすんで、授業で文法の完成度を上げればテストの点などあとからついてきます。

帰納法中心で学ぶ子どもに対しては、テストの点に現れない部分をお母さんに評価して欲しいと思います。そうすれば子どもも「お母さん、わかってくれているな」という感覚を持てるはずです。

まとめ

子どもの英語学習の8割は音読練習に充てられるべきです。音読練習とは、教科書を声に出して読むだけではありません。お母さんの口まねをして英語を話すのも立派な音読練習です。英語の歌を口ずさむのも音読練習のひとつです。

子どもは大量の英語に触れながら、少しずつ英語の語順などを自然と身につけていきます。このような「あいまいな理解」をしたところで、少しずつ文法の説明を受けて理解を確かな物にしていきます。

試行錯誤を繰り返しながら規則性をボンヤリと見つけさせ、最後に教師がまとめで知識を与える「帰納法」が子どもへの文法指導には有効です。

小学生までに音読練習を積み上げておくと、中高での英語の授業はあいまいな知識をチェックする時間になります。それまでの疑問点は一気に晴れますし、迷いがなくなるので「使える英語」を身につけられます。

小学生の頃に文法の知識ばかりを詰め込んでも、英語を話せるようにはなりません。上手な英語の先生なら、口頭練習を多くとりながら文法のまとめをしています。

小学生に英語の文法を教えるときは、いろいろと気をつけなければいけません。安心して英語教室に通わせるためにもこのことを理解しておくと良いです。

これだけは知っておきたい! 「子どもの英語を伸ばす」接し方

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子どもの英語力に影響を与えるものはいろいろとあります。その中でもとりわけ「お母さんの子どもへの接し方」は影響力が大きいように感じます。なぜなら、普段最も長い時間子どもと接している人だからです。

中途半端な知識で子どもに無理やり英語を強制しては、子どもの英語力はすぐに頭打ちになるでしょう。しかし、まったく放任状態ではいつまでたっても英語を学ぶ習慣は身につきません。

今回は年齢層別に子どもの特徴を取り上げ、それに即したお母さんの接し方についてまとめました。私が実体験から学んだことなので、机上の空論ではありません。中学生以降、子どもの英語力が爆発的に向上するように正しくサポートしてあげましょう。

幼稚園~小学1・2年生へのサポート

小学校に入学しランドセル姿の子どもを見ると「ずいぶんと成長したな」と感じます。しかしながら、英語学習の観点からは小学校の低学年(1・2年生)は幼児とあまり変わりません。

この年齢までの子ども達の特性は大人とはかなり異なります。その点を理解してお母さんが接すると、上手に英語学習を始められます。

この年齢の子どもは、文字の読み書きは一般的に苦手です。このため、無理やり英語の本を読ませたり、ワークブックに取り組ませたりするのは逆効果です。もちろん個人差が大きいので、文字に興味を持ち始めたら少しずつ与えるのは大丈夫です。

子どもはおもしろそうなものには自然と惹きつけられます。反対に、関心がないものには一切取り組みません。大人のように「将来役に立つから」とか「教養のため」という理由で我慢しません。

あなたに覚えておいてほしいのは、「英語を使って楽しませる」ことです。

私は「英語絵本の読み聞かせ」をおすすめしています。これは「英語を使って楽しい話をお母さんと笑いながら読めるから」です。勉強の概念を持ち込まずに、英語に触れられる点で絵本の読み聞かせはとても優れています。

音に強い特性を活用して、勉強を意識させない

この時期の子どもが有利なのは、「恥ずかしがらずに英語の音をまねしようとする」特性があるからです。初めて英語を習う中学生に“th”(舌先を上下の歯の間に挟み空気を出す音)の発音を教えても、積極的にまねしようとはしません。「照れ臭さ」があるからです。

この点は幼児~小学1・2年生までの子どもには「抵抗感」がありません。「これ、上手にできるかな?」と促すとすぐにチャレンジします。英語の発音に関しては理屈よりも実践が大切です。小さい子どもが短期間で発音が上達するのはこれが理由です。

お母さんにできる具体的なこととして、「英語絵本の読み聞かせ」が最も取り組みやすいです。盛り上がる部分をお母さんが楽しく読んであげると、そのうち子どもは自分からまねして声を出して読み始めます。

発音を気にして読み聞かせに消極的なお母さんもいますが、これから多くの人の発音を聞く機会があるので心配しないでください。完璧に正しく読める人などいないので、できる範囲で頑張れば充分です。

このように絵本の読み聞かせを通して、英語に楽しみながら触れさせるようにしましょう。短い単語やセンテンスをまねするまで持っていければ、この年齢での英語教育は充分成功です。

結果をすぐに求めない

毎日絵本の読み聞かせをしても、「なかなか子どもが英語を声に出さない」と感じることもあります。見た目には子どもに変化がなくても、頭の内部で変化は蓄積されています。

だから結果をすぐに求めないで、半年~1年程度は待つようにしてください。長すぎると感じるかもしれませんが、日本語を話し始めるまでにも同じ時間がかかったはずです。

実は私も子どもに絵本の読み聞かせをしていて、子どもが英語を口にせずじれったく感じた時期がありました。子どもは絵本は好きだったので、私のところに「読んで」と持ってきます。私も楽しかったので、ときどき新しい本を買い足しました。

8か月くらい経った頃から、次のページをめくる前に子どもが英語を自分で読み始めました。文字を読んでいるというよりも、私の英語を耳で覚えていたようです。絵本の最も盛り上がるところは子どもの順番になり、ますます絵本が好きになったようでした。

変化が起きるまで待つのは大変ですが、「英語のため」と考えずに「親子で読書を楽しむ」程度に気楽に考えたほうが長く続けられます。

子ども自ら興味をもつように仕向ける

子どもに英語を「勉強」として押し付けるのは最悪です。反対に、何もせずに放ったらかしではいつまでたっても子どもは英語に興味を持つこともありません。やはりお母さんが「仕掛け」を作ることで、子どもが自分から英語に触れようと仕向けなければいけません。

リビングに一冊も本がない家庭と本棚に子どもが読みそうな本がたくさん並べてある家庭では、どちらが本好きの子どもが育つかといえば当然後者です。環境を提供するのがお母さんの役割です。

私は子どもに英語での読書を強制したことはありません。ただし、いろいろと策を講じました。例えば、新しく英語絵本を買ったときのことです。子どもがおもちゃで遊んでいる横で、その絵本を私が一生懸命読みます。

しばらくすると子どもは「それ、何?」と近づいてきます。「今お父さんが読んでいるから、あとでね」ともったいぶります。「僕も読みたいよ」とせがんだところで、「じゃあ一緒に読もうか?」と自然に読書につなげることができます。

このように子どもの意志で英語に触れるように策を講じるのが、英語好きな子どもを育てるコツです。

幼児~小学1・2年生は自分の意志で選んだおもしろそうなことには夢中になります。文字を書いたり読んだりするのはまだ苦手なので、無理にワークブックに取り組ませるのはやめたほうがいいです。

絵本の読み聞かせを中心に据えながら、子どもが自分の意志で英語に触れるように「仕掛け」を張り巡らせてください。

小学3年生へのサポート

小学校の先生の間では常識である「小3の壁」があります。それまでは幼稚園の延長だった学習内容が、小学3年生から一気に「小学校の勉強」へとレベルアップすることを指します。

もし、小学2年生と3年生の国語の教科書を見比べる機会があったら、ぜひ確認してみてください。文字の量や語彙レベルなど「小3の壁」を実感できるはずです。

しかし、この時期から「英語学習も一気にレベルアップしたほうがいい」と考えるのは早計です。私の意見ですが、この年齢の子どもは英語教師泣かせなのです。

文法はまだ早い

「文法学習も少しずつ始めた方がいいのでは」と考えるお母さんもいるかもしれません。しかし、この年齢の子どもに文法アプローチで英語学習をするのはやめたほうがいいです。

なぜなら文法のような抽象的な概念を理解するには、まだ幼過ぎるからです。では、これまでと同じように絵本を中心にすすめられるかといえば、それも難しくなります。なぜなら、子どもが普段読むようになっている本のレベルに合わないからです。

そして小学1・2年生と決定的に異なるのは、英語を話すことに「恥ずかしさ」や「間違えたら嫌だ」という抵抗を感じ始めるようになることです。

文法アプローチには早すぎて、音の練習もこれまで通りに素直にしなくなるのがこの年齢の特徴です。では、この時期にお母さんが心がけるべきことについて説明します。

思わず口まねしたくなるように仕向ける

ここでもお母さんの「仕掛け」が威力を発揮します。子どもはゲーム好きです。人間の本能として「勝ち負け」がかかると夢中になるようです。だからスポーツは多くの人に愛されています。

英語学習にもこの本能を上手に活用しましょう。お母さんは、子どもの「よきライバル」になってください。英語学習において競争するのです。

私がこれに気がついたのにはきっかけがありました。文法の問題を息子に教えているときに、“The police ( was, were) investigating the case….” (警察は事件を捜査していた)でどちらかを選ぶ問題がありました。息子はwereを選びましたが、私は「wasじゃない?」と反論したのです。

正解はwereです。これはthe police は見た目が単数でも「複数扱い」するからです。peopleと同じです。恥ずかしながら、私は本気で間違えてしまいました。解答を見た息子は大喜びです。滅多に私は間違えないので、鬼の首を取ったような喜びようでした。

これをきっかけに息子はあまり乗り気でなかった文法問題に積極的に取り組むようになりました。きっと「お父さんを打ち負かしてやりたい」と思ったからです。

英語の苦手なお母さんは、この点非常に有利なのです。なぜなら子どもを喜ばせる回数が増えるからです。「上から教える」スタイルではなく、「共に競い合う」スタンスで子どもと向き合ってみましょう。

好きな映画の傾向を把握する

子どもの「好きなこと」「嫌いなこと」「苦手なこと」が少しずつはっきりしてくる時期です。ときどき家族で映画を観ることもあるでしょう。普段から子どもの映画の好みを把握しておくと英語学習に役立ちます。

たとえば、プリンセスが好きな女の子ならディズニー作品がおすすめです。「英語音声」で一緒に見てみましょう。吹替で最初に見ておけば「英語音声」に切り替えても、どのセリフの場面かは理解できるはずです。

映画で英語を学ぶときにはコツがあります。私が中学生の頃にしていたことです。

実は映画のリスニングは最上級に難しいです。いきなりこれを押しつけたら映画そのものを嫌いになってしまいます。そうではなくて、まずは「映画のタイトル」に注目させます。

美女と野獣なら“Beauty and the Beast” が原題です。これで単語を二つ覚えられます。しかも絶対に忘れません。タイトルは文字で画面に出るので、聴き取れなくても大丈夫です。

有名な俳優が出演している場合は、その名前を見つけるのもいいトレーニングです。音と綴りを合わせられるのでフォニックスの訓練になります。

映画のセリフに関しては、「決まり文句」は聴き取りやすいはずです。美女と野獣なら最初のナレーションに“Once upon a time”(むかしむかし)という昔話にお決まりの表現が使われています。

このように小学生でも読めたり聴き取れるところを少しずつ増やすことで、好きな映画と英語学習を上手に結び付けられるようになります。

歌に興味を持たせる

歌が好きな子どもなら、洋楽も試す価値ありです。これまでと同様に押しつけると子どもは嫌がります。私だったら、車に乗ったときは「お父さんが聞く英語の歌」としてあらかじめ用意しておきます。

ここで子ども向けに“Old MacDonald had a farm”のような歌を集めると、子どもは「これは自分に勉強させるためだ」と勘づきます。

お母さんが好きな歌を選んでください。子ども向けでなくても全然かまいません。例えば、「Best Day of My Life」 です。

お母さんはあらかじめ歌詞を調べておいて、一部だけでも歌えるよう練習しましょう。歌を聴きながら自分で歌うだけでいいのです。

子どもは「意味はわからないけれど、いい歌だな」と思えば、勝手に興味を持ちます。家に帰ってから歌詞付きのYouTube動画を見せて、子どもの気が向けば自分で練習しはじめます。

文字タイプか音タイプか

小学3年生になると、「文字に強く反応するタイプ」と「音に強く反応するタイプ」に分かれます。前者の場合は、簡単な英語の本にチャレンジさせたほうがいいです。ただし、このときも音読を忘れないようにしましょう。

音に強く反応するなら、映画や歌と結び付けながら英語を学ぶといいです。

「4技能(聞く・話す・読む・書く)バランスよく学ばせたい」と思うお母さんもいるかもしれません。今は英語にのめり込むきっかけの段階なので、好きなところから始めてうまく軌道に載せることに集中しましょう。いずれバランスよく学ぶので安心してください。

小学4~6年生へのサポート

小学4~6年生の期間は、本格的な英語学習を開始できるチャンスです。テストや受験といったプレッシャーから解放されている間に、英語学習を開始できるメリットは大きいです。

ではこの時期の子どもにお母さんとして何ができるのかを詳しく説明します。

テストのための英語から遠い「今」がチャンス!

以前、私に「英単語をなかなか覚えられない」と相談に来た中学生がいました。そこで普段、どんな覚え方をしているかを再現してもらいました。

「木曜日は、T(ティー)・h(エイチ)・u(ユー)…」とつぶやきながら、紙に書き始めました。そこで私はその単語を声に出して読むようにいうと、彼は「わかりません」と答えました。

私は「英語ってまず、読めることが大切なんだけど、そう思わない?」とたずねると、その中学生は「でも、テストでは答えを書ければ〇をもらえるから関係ないですよね?」と真顔で答えました。

私にとっては衝撃的な回答でした。それは「教科や受験科目としてしか英語をとらえていない」とわかったからです。

英語は本来「コミュニケーションの道具」です。現実に英語を使って生活している国があるのです。しかし先ほどの中学生にとって、英語とは「教科」や「受験科目」のためでしか存在していません。彼のような生徒は例外ではありません。

小学4~6年生から本格的に英語を始めるメリットは、コミュニケーションの道具として英語を考えるようになることです。まずは、このことをお母さんにも強く意識してほしいと思います。

資格取得に夢中になり過ぎない

小学5年生くらいになると「英検準2級」に合格する子どもがチラホラと登場します。英語学習の進捗状況をチェックするために英検を受けるのは大賛成です。その結果「英検〇級合格」の資格がもらえるなら喜ばしいことです。

しかし、英検合格を目的にしてお母さんが子どもにプレッシャーをかけるようなことはやめてください。せっかく、「コミュニケーションとしての英語」を意識できる時期なのに、わざわざ「テストのための英語」を子どもに植え付けているからです。

周りの子どもの「英検〇級」に惑わされずに、「本物の英語力」をつけさせてあげるように考えてあげましょう。

音読練習+文法で基本を固めよう

小学5・6年生になったら、短めの素材で音読練習することを習慣化しましょう。教材は通信講座でも何かのテキストでもかまいません。ネイティブによるナチュラルスピードの音声付きのものが適しています。

このとき必要に応じて基本的な文法を学習すると、飛躍的に英語力を伸ばせます。最初に充分口頭練習を積んだ後、文法で理解を深めることが大切です。文法を先に学習すると知識だけの英語となり、実際の場面で使えるようにはなりません。

英語の得意なお母さんでも、そろそろプロの手を借りたほうがいい段階です。音読の重要性を認識している先生を探しましょう。やはりどの年齢から始めても、言葉の学習に音声の訓練は欠かせないのです。

この動画セミナーではリスニングだけでなく、英語4技能全体を底上げする方法を紹介しています

興味のある分野に絞った英語素材を自然に与える

小学3・4年生の項目でも触れましたが、子どもの興味はより細分化し高度になります。好きなものに没頭する能力を英語にも応用しないのはもったいないです。

専門知識があれば多少わからない単語があっても、類推しながら読めるものです。私は小学5年生頃、天体に興味がありました。毎晩のように天体望遠鏡で星を眺めているうちに、主な星雲・星団のある場所はほとんど暗記していました。

あるとき大きい書店で“SKY & TELESCOPE” というアメリカの天体ファン向けの雑誌が置いてありました。英語はほとんど読めませんでしたが、いくつかの単語はかなり正確に意味を把握できました。

たとえば、focus(焦点), objective lens(対物レンズ), nebula(星雲)などの単語は図や写真を見れば、簡単に意味がわかりました。

このように大人顔負けの知識欲がある子ども(〇〇博士タイプ)なら、英語と掛け合わせると相乗効果を発揮します。大都市に出かける機会があるなら、洋書の雑誌コーナーで趣味に関する雑誌を買ってあげましょう。

小学生のうちに身につけさせたい5つのこと

中学生になる前に、英語に関して子どもに身につけさせたいことを3つにまとめました。不思議なことに中学校の英語の先生がこのような話を小学校の先生に伝えることはほとんどありません。同様に高校の先生も中学の先生にこのような話をする機会はありません。

中学校以降、子どもが英語を楽しみながら一生懸命勉強して成績もグングン伸びるように、参考にしてください。

「コミュニケーションの道具としての英語」を体験させる

大切なことなので繰り返します。英語は世界的に使用されている言語です。英語はコミュニケーションの道具以外の何物でもありません。

当たり前のことですが、受験のことばかり意識し続けると、いつの間にか試験のための英語としかとらえなくなります。そして受験が終わった瞬間に英語の学習をやめてしまいます。

これを防ぐためには、実際に英語を使って生活している人たちを見せたり、体験させたりするのが効果的です。具体的には、海外旅行に連れて行ったり、英語キャンプや短期留学に参加させたりすることです。費用的に難しければ、ホームステイを一時的に受け入れるのもいいでしょう。

「英語が通じた喜び」と「うまく伝えられなかったフラストレーション」は、今後の英語学習を続ける大きなモチベーションになります。

日本人が少ない環境に、日本の子どもは慣れていません。マイノリティの立場になっても堂々と振る舞うためには、やはりコミュニケーション手段が必要です。そのようなことを体験から学ばせるのはとても意義があります。

楽しく努力する

小学生時代にどうしても身につけたいスキルは「楽しく努力する」ことです。努力と我慢は異なります。「英語は楽しい→もっと上手になりたい→努力する→少し上手になった→うれしい」循環に入ればしめたものです。

これは英語に限った話ではありません。スポーツや他の習いごとでもいいのです。どれか一つの分野で「楽しく努力」できる子どもは、きっと必要になれば他の分野でもできるからです。

学校の成績や受験だけでなく、一生を通じてこの能力は大切です。ぜひ、その基礎を小学校時代に身につけるようにサポートしてあげましょう。

声に出して読む習慣をつける

英語学習において静かに黙々と勉強しているようでは成功できません。とにかく声に出して読むことが重要です。

それを体系化したものが「音読トレーニング」です。極論を言えば、「音読トレーニング」を日常的に行うだけで、中学・高校の英語は充分に乗り切れます。

英語教育に携わる者ならほとんどの人は理解していますが、時間がかかるために生徒に音読練習の仕方を細かく指導している学校はほとんどありません。それなら家庭でお母さんが中心となって「音読トレーニング」の環境を整えるしかありません。

中学生で木曜日の綴りをSarsdayと書いてしまう生徒は珍しくありません。Thursdayが正解です。普段からthの発音を意識して何度も音読していたら、ありえない綴りの間違いです。

自分のできる範囲で精一杯、音読する訓練を年単位で続けると、英語の力は確実についてきます。ぜひ、小学校の間にそれが身につくようにしてあげましょう。

まとめ

幼少期は音の学習の適齢期です。お母さんの英語をたくさん聞かせてあげましょう。具体的には英語絵本の読み聞かせがおすすめの方法です。

小学3年生では興味や趣味に即した英語を与えると、自分から英語を学ぶようになります。文法学習はまだ早いので、あわてて取り組ませても効果的とはいえません。

小学校4~6年生からは本格的な英語学習を開始できます。受験まではまだ時間がたっぷりあるこの時期に、「コミュニケーションの道具」としての英語を強く意識させてあげましょう。

どの年齢層でも共通しているのは、「楽しく努力する」のが最も効率的な学習方法であることです。また、英語学習の基本は「音声」なので、年齢に即した方法で英語を音読すると中学生以降で英語力は飛躍的に伸びるようになります。

英語を教えるのは教師の仕事ですが、お母さんの子どもへの接し方は教師以上に影響力は大きいともいえます。ぜひ、子どもの特徴を正しく理解して、子どもみずから英語を学びたくなるような環境づくりをサポートしてあげましょう。

 

小学生のリーディングに「スラッシュリーディング」は必要?

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あなたの子どもは英語を読むとき「左から右へ」読めているでしょうか? 日本語と英語では語順はまったく異なるので、英語を読んでもつい思考は日本語になってしまいます。そして、日本語で意味を取ろうとして、目線は右から左へ逆方向に何度も戻ってしまいます。

このような読み方を続けていると、速読はいつまでたってもできるようになりません。速読できないと多読も難しいので、英語力は向上しません。

小学校低学年までの子どもは素直に左から右に読めます。なぜなら、日本語(国語)が頭に完全に定着していないので、英語を読むときは英語の語順で読もうとするからです。

一方、小学校中学年は日本語の完成期です。自然な日本語の語順に沿って英語を読もうとするので、目線は何度も逆方向に戻ってしまいます。

今回はそのような症状を改善するのに有効な「スラッシュリーディング」について解説します。

スラッシュリーディングって何?

お母さんに大学受験の経験があれば、一度くらいはスラッシュリーディングについて聞いたことがあるかもしれません。名前を聞いたことがなくても、参考書で英文にスラッシュをいれて解説しているのは「スラッシュリーディングの応用」です。

スラッシュ

それでもよくわからないお母さんのために、あらためて「スラッシュリーディング」について例を挙げて説明します。

実例を見てみよう

まずはスラッシュ(/)なしの英文を読んでみましょう。英文のあとに和訳を掲載します。

The fireplace keeps me warm like a blanket on the chilly nights.  My cat likes to sleep on my lap when I sit near the fire.
(寒い夜には毛布のように暖炉は私を温めてくれます。私のネコは私が火のそばに座っているときにひざの上で寝るのが好きです)

英語に慣れている人なら難なく左から右へ読める文章です。しかし、英語初心者の場合、日本語の語順で読んでしまいがちです。初心者の思考を追ってみましょう。

(最初の文を最後まで読んで)「寒い夜に…(like a blanketを読みながら)毛布のように…(先頭に戻って)暖炉は私を温めます」

このように初心者は長い文章に出会うと、英語の自然な順番(左→右)へと目線が一定に動きません。日本語の順番にしたがって英文を理解しようとして、逆方向(右→左)に戻りながら読んでしまいます。これを「返り読み」といいます。

「返り読み」をするといつまでたっても英文を速く読めません。そのためいわゆる「長文」を読めないので、受験でも困ったことになります。

次に、英文を意味のかたまりごとにスラッシュを入れてわかりやすくしてみます。これを読むときは、かたまりごとに意味を捉えるようにしてください(参考までに日本語訳をつけました)。

The fireplace keeps me warm/ like a blanket/ on the chilly nights.  My cat likes to sleep/ on my lap/ when I sit/ near the fire.
(暖炉は私を温めてくれます/ 毛布のように/ 寒い夜には。私のネコは寝るのが好きです/ 私のヒザの上で/ 私が座っているときに/ 火のそばで)

このように短いかたまりごとに英文を分けると、初心者でも英語の順番で読めるようになります。これがスラッシュリーディングの効果です。

目的

スラッシュリーディングの目的は「英文を英語の順番で(左→右)、かたまりごとに意味を理解すること」です。

小学校低学年までの子どもなら英語をそのままに受け入れることが多く、反対側から読んでいくようなことはありません。しかし日本語が確立した年齢の小学3~4年生以降では、「返り読み」をするようになります。

特に和訳をする習慣があると、この傾向は顕著になります。お母さんは子どもが理解しているかどうかを確認するときに何気なく「日本語でどういう意味?」と聞くかもしれません。きれいな日本語で答えてばかりいると、つい日本語の順番で読もうとするようになります。

そのような学習者のために短いかたまりごとに意味を捉えるように強制的に読ませる仕掛けがスラッシュリーディングです。

細かく切るか、長めに切るか

さきほどの例文を使って、短いかたまりにした場合と長いかたまりにした場合を見てみましょう。

  • 短く区切った場合
My cat likes to sleep/ on my lap/ when I sit/ near the fire.
  • 長いかたまりにした場合
My cat likes to sleep on my lap/ when I sit near the fire.

ある程度英語を読める子どもなら、「短く区切った英文」はかえって読みづらいです。また、最初は短いほうが理解しやすかったとしても、徐々に長いかたまりで読めるように学習をすすめるのが普通です。

区切る長さは子どもの英語力に応じて、能力が高ければ高いほど「長めのかたまり」で与えたほうがいいです(最終的にはスラッシュなしで読めるのが目的です)。

読むときのコツ

スラッシュリーディングをするときのコツは、「情報を付け足していく」イメージで読むことです。さきほどの例文を使うと次のようになります。

My cat likes to sleep/ on my lap/ when I sit/ near the fire.

「私のネコは寝るのが好き/(どこで?)私のヒザの上で/(いつ?)私が座っているとき/ (どこで?)火の近くで」

このように、ひとつの情報に対してツッコミ(かっこの中)を入れながら、読むとテンポよく読めるようになります。

このとき日本語でつぶやきながら読まないようにしてください。あくまでも、英語で意味を取りながら読むようにするのが理想です。頭の中で「かたまりごとに映像が再生される」感覚です。子どもにこの感覚を伝えるのは難しいのですが、とても大切です。

スラッシュリーディングの効果とは?

ここではスラッシュリーディングの効果を3つ挙げます。私も受験勉強をしていた頃、一時期スラッシュリーディングを試して効果を実感できたことがあります。

効果1:英文を日本語の語順で読んでしまう「返り読み」を防ぐ

漢文の授業を思い出してください。漢文を読むときに「レ点や一二点」のことを覚えているでしょうか?

本来の漢文(中国語)は、上から下に読むものです。しかし、それでは日本語の語順に合わないために、わざわざあのような記号を考案して日本語風に読めるようにしているのです。

英語を返り読みするのも、レ点や一二点こそないものの、同じ発想です。英語を読んでいるようで実は日本語を読んでいるようなものです。そのため目線が本来とは逆である右から左に頻繁に移動します。

スラッシュリーディングの第一の効果は「英語を英語の順番で読めるようになる」ことです。

効果2:読むスピードを上げる

目線が逆方向に戻らないので、当然長文を読む時間は短くなります。入試に長文問題は必ず出題されるので、制限時間内に読むためには「返り読みをしない」ことが第一段階です。

慣れてくると一回で処理できる量が増えてくるので、大きいかたまりで一度に意味を捉えられるようになります。その結果、ますます読むスピードを上げることができます。これが、スラッシュリーディングの第2の効果です。

リスニング力の基礎になる

「スラッシュリーディング」は呼び名のとおり「リーディング」訓練の一種です。しかし、効果はリーディングだけではありません。リスニングの基礎力にもなります。

音声で読まれる英語は当然英語の順番に従って読まれます。文字と違って音は聞こえるとすぐに消えてしまいます。つまり英語の順番で、一度も戻れない状態で、英語を理解しなければなりません。

勘のいいお母さんならわかると思いますが、まさに「スラッシュリーディング」で期待される効果そのものです。英語の順番で読める訓練をしておくと、リスニングのときも聞こえた順番で理解できるようになるからです。

これがスラッシュリーディングの第3の効果です。

このようにスラッシュ(/)をかたまりごとに入れることにより、英文を正しい順番で速く読めるようになるだけでなく、リスニング力の基礎を養うことができます。

リスニングのトレーニング方法についてはこちらの動画セミナーを参考にしてください。

スラッシュを入れる場所

スラッシュリーディングの効果は理解できました。しかし、「どこにスラッシュを入れたらいいのかわからない」のでは、練習できません。ここでは、スラッシュを入れるべき目安となる基準について説明します。

スラッシュを入れる場所の目安とは?

  • カンマ( , )、セミコロン(;)、コロン(:)の後
  • 前置詞句の前と後
  • that節、疑問詞節、whether/ if節の前
  • 関係代名詞、関係副詞の前
  • 不定詞、分詞、動名詞の前
  • 接続詞(when, because, ifなど)の前
  • 長い目的語や補語の前
  • 長い主語の後

なんだか文法の参考書のような用語が並んでしまいました。大切なのは「英文の構造上の節目となる部分にスラッシュを入れられるかどうか」です。不適切なところにスラッシュを入れてしまうとかえって英文を読み間違えてしまうことも起こりえます。

初心者が間違えがちな例を挙げて説明します。

The man arrested on Monday was innocent.

この文章の主語はwasです。The man~Mondayまでが長い主語です。したがって、次のように区切るのが正解です。

(正)The man arrested on Monday/ was innocent.
(月曜日に逮捕された男は/ 無実だった)

英文の文法構造を理解していないと、arrestedを動詞と思い込んで次のように区切ってしまいます。

(誤)The man arrested/ on Monday/ was innocent.
(男は逮捕した/ 月曜日に/ 無実だった?)

このようにスラッシュリーディングを自分で英語学習に取り入れようとしても、ある程度の文法構造を理解していないとトレーニングできません。

実際のすすめかた

文法用語を駆使しながら厳格にスラッシュを入れていくのを一文一文検討するのはあまりにも非効率的です。

極端なことをいえば「意味のまとまりをとらえて、読みやすいかたまりでスラッシュを入れる」のが理想です。スラッシュを入れる位置にあれこれ頭を悩ましていても、ちっとも勉強していることにはならないからです。

スラッシュリーディングの欠点

ここまでの説明を読んで「スラッシュリーディングはとっつきにくい」と感じたお母さんも多いはずです。実際、英語の先生でもスラッシュリーディングに批判的な人もいます。

ここではスラッシュリーディングの2つの欠点について詳しく述べてみます。

適切な位置にスラッシュを入れられる人はすでに構造を理解している

「英文の構造の切れ目を目安に適切にスラッシュを入れていく」ことをスムーズにできる人は、すでに英文構造を理解できている人です。その人にはスラッシュリーディングは必要ありません。

英文の途中にスラッシュなど入れなくても、頭から順番に読めていれば、わざわざスラッシュを入れる必要はありません。

これが第一の欠点です。

スラッシュを入れることだけに意識を向けすぎて、かえって効率が悪くなる人がいる

「スラッシュをどこに入れるか」ばかりに意識を向けすぎて、英語の学習効率を悪くしている人をたまに見かけます。

鉛筆でスラッシュを入れたけれど、正しい場所かどうかが気になり落ち着かないのです。これでは学習効率は悪くなるだけです。こんなことなら、スラッシュなしで読む訓練を積んだほうが効率はいいです。これが二つめの欠点です。

万能策ではないが、スラッシュリーディングが効果的な場面3つ

英語の指導法・学習法にはいろいろあります。しかし、「万能な指導法・学習法は存在しない」ことを覚えておくと、いろいろと役に立ちます。

私の経験ですが、「フォニックス」は英語をこれから読もうとしている子どもにはとても有効な学習法です。ただ、細かいことまで説明し始めると、かえって英語を正しく読むまでに時間を費やしてしまいます。

どんな指導法・学習法も「それだけやっていれば大丈夫」ということはありません。スラッシュリーディングにも同じことが当てはまります。リーディングをするときにいつまでもスラッシュばかり引いているようでは、ちっとも成長しません。

次に、もし私がスラッシュリーディングを活用するとしたら「どのような場面に絞るか」について説明します。

経験者が初心者を指導するときに有効

長文に挑戦する子どもに対して、英語の先生やお母さんがスラッシュを入れて読みやすくしてあげるのはとてもいいことです。

また、スラッシュの代わりに改行するのも同じ効果があります。

My cat likes to sleep
on my lap
when I sit
near the fire.

このようにすると強制的にそのかたまりしか目に入ってこないので、より「返り読み」はできないようになります。

初心者がどのくらい文の構造を理解しているかを確認するとき

お母さんが、子どもに「意味のかたまりごとにスラッシュを1つ入れてみてごらん」と子どもに鉛筆で入れさせるのも効果的です。これは子どもが英語の構造をどれくらい理解しているかを確かめるためです。

文法用語を知らなくても英語を正しく読める子どもは何となく区切りが見えるものです。「この文章は長いから、一本スラッシュを入れてみよう。どこがいいかな」と具体的に数を指定すると子どもは混乱しません。

明らかに不適切な場所にスラッシュを入れた場合は、子どもは正しく読めていないことがわかります。

私の場合は子どもに音読させると、その子がどれくらい英語を理解しているかはすぐにわかります。意味を理解して読んでいる子どもは、「息つぎ」の場所がスラッシュを入れるべき場所になっているからです。

反対にまったく意味を理解していない子どもは「切ってはいけない場所」で「息つぎ」を入れてしまいます。

長く複雑な英文のときだけスラッシュを入れてみるのもよい

子どもが自習しているとき、一文が長い英文の意味を理解しづらいときがあります。そのようなときは「スラッシュを入れてみる」ことで、グッと理解しやすくなることがあります。

ある程度英語読解能力のある子どもに限られますが、普段からお母さんがそのようなアドバイスをしておくといいです。「困ったときの対処法」としてスラッシュリーディングを活用するはずです。

まとめ

小学校中学年以降の子どもならついやってしまいがちな「返り読み」を防ぐ方法として、スラッシュリーディングは有効です。

しかし、英文構造を理解していないとスラッシュを入れる位置がわからなかったり、迷ってしまったりする欠点もあります。

反対に自分で簡単に適切なところにスラッシュを入れられるなら、すでにスラッシュリーディングのトレーニングは不要です。

子どもが長文を読むのが辛そうなときは、ところどころにお母さんがスラッシュを引いてあげると子どもの理解の助けになります。スラッシュリーディングを信奉するのではなく、場面を絞って活用したほうがいいです。

スラッシュリーディングはリスニング力の基礎としても役立ちます。上手に取り入れてあげると、子どもの英語力は飛躍的に伸びることもあります。

英語は英語の順番に読むのが正解です。もし子どもがこの段階で困っているなら、スラッシュリーディングを活用して、子どもをサポートしてあげましょう。

小学生の英語学習の始め方:最強自宅学習プラン

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2020年度から小学3年生からの英語が必修となりました。小学5年生からは英語の成績もつけられます。このような状況の中、「ウチの子も早めに準備しなくては」と考えるお母さんも多いかと思います。

しかし、子どものうちからあまり勉強に縛りつけるのもよくないし、他に習い事をしていると教室に通うのもなかなか大変です。

そこでまずは自宅で子どもに英語を学習させてみようと考える家庭が増えつつあるように感じます。「いつから始めたらいいのか」「何をさせたらいいのか」について悩んでいるお母さんも多いはずです。

そこで今回は、小学生~高校生まで指導経験のある私がオススメする、小学生からの英語学習の始め方について説明します。主に自宅で英語学習に取り組ませたいと考えているお母さんのために、大切な考え方や具体的な方法についてアドバイスします。

英語のゴールをどこに定めるかがポイント

まずは親子で英語のゴールがどこなのかについて話し合いましょう。一般的に英語を使って仕事をするためには、次の基準が目安になります。

社会人になる前に(20~21歳)、英検準1級レベル、TOEIC750~860点を取得

一般的な基準よりも高めですが、私の印象ではこれくらいに達していないと、英語を使った仕事は難しいと感じます。

「英語は必要になってから学べばよい」と考える人もいます。しかし、社会人になると忙しすぎて英語学習に思ったように時間を割けません。時間的余裕のあるうちに英語をマスターしたほうがよいです。

また、英語をある程度身につけておくことで、仕事の選択肢を広げたり、給与水準の高い仕事を選べることもあります。学生のうちにやれることは済ませておきましょう。

中学・高校の英語の授業を活用しながら、目標に向かって実力を積み上げていくのが最も賢いやり方です。

ゴールから逆算すると、小学校5年生あたりから始めると余裕をもってすすめられます。それより早くても構いませんが、文法については理解することができずに効率が悪くなります(発音などは早めのほうがいいです)。

小学生の英語自宅学習で最も大切なことは、子どもに「英語学習の正しい型」を身につけさせることです。正しい型とは主に「音読習慣を身につけること」です。具体的な内容について詳述します。

小学生のうちに自宅で英語学習の正しい型を

中学生に英語を指導していて、私はもどかしく感じることがあります。それは彼らが英語の音読にとても消極的なことです。

例えば、日本語を勉強している外国人が日本語を声に出さずに問題集だけに取り組んでいたら、どのように感じますか。「それでは使えるようにならない」と思うことでしょう。でも、英語を学ぶほとんどの中学生は音読に消極的なのが実態です。

「英語を声に出す」ことは、英語学習の基本です。しかし、彼らは黙々と問題集を解くだけでほとんど声に出して英文を読もうとはしません。恥ずかしいのか、間違えるのが怖いのか、理由ははっきりしませんが、とにかく声に出しません。

根気よく指導して半年くらいすると一部の生徒が積極的に声を出すようになります。しかし、多くの生徒は沈黙したままです。

小学生から英語を始める最大の価値は、英語を声に出す習慣をつけさせやすいことです。家庭で英語を学ばせるときはぜひ音読を取り入れるようにしましょう。中学生では遅すぎます。

自宅で身につけさせたい!英語音読の習慣

音読といっても本格的な音読のトレーニングのことではありません。英文を見たときに、声に出して読んでみるだけでよいのです。

英語を学ぶときは教材を使用します。そこには例文がたくさん載っています。そして多くの場合、CDやダウンロードできる音源が付属しています。これらを利用して、英文をまめに声に出して読み上げるだけで充分です。

注意して欲しいのは、カタカナ読みではダメです。【f】【v】【θ】【ð】【l】【r】など日本人が苦手とする発音に気をつけながら、CDのマネをして子どもに音読させるようにしましょう。

発音指導が苦手なお母さんは、動画サイトなどを利用して子どもと一緒に練習するようにしましょう。英文を見たら即ブツブツ声に出すくらいの状態にまで習慣化させれば成功です。

反対に、沈黙したままワークブックをこなしていたら、一緒に声に出して英語を音読するなどのサポートが必要です。次に、小学生のうちに攻略しておいたほうがよい英文法について説明します。

小学生の英語はbe動詞と一般動詞の現在形に時間をかけよう

英文法に関しては小学5年生から始めるとちょうどよいです。抽象的な概念を理解し始める年齢なので効率がいいです。ただし、文法用語だらけの教材で中学生と同じような学習を無理にさせると英語嫌いになってしまうので注意が必要です。

また子どもの成長に合わせて始めないと、混乱してしまいます。国語の返却されたテストを見て、主語・述語などの文法問題がある程度正解しているようなら大丈夫です。もし、充分に理解していないようなら英語の学習には早すぎます。

あせって「小学生のうちに英検3級を!」のような高すぎる目標も私は不要だと考えています。英語学習が順調に進み、結果的に3級を取得できたなら何も問題ありません。資格取得ばかりにとらわれるのはやめましょう。

私が小学生を指導するときに重要視しているのは、「be動詞と一般動詞の現在形」です。もう少し詳しく説明すると、肯定文・否定文・疑問文(疑問詞も含む)をすぐに口から出せる状態にまで慣れさせる、ということです。

理由は、「be動詞と一般動詞の現在形」が完全に理解できると、それ以降の文法の学習が飛躍的に効率がよくなります。

たとえば、助動詞canを習うとき、一般動詞のdoのパターンがとても役に立ちます。

You speak English.  You don’t speak English.  Do you speak English?
You can speak English.  You cannot speak English.  Can you speak English?

doの代わりにcanを置けば、理解しやすいです。

現在進行形の文の構造はbe動詞の文そのものです。

She is beautiful.  She isn’t beautiful.  Is she beautiful?
She is running.  She isn’t running.  Is she running?

個人的には「be動詞と一般動詞の現在形」は、それ以降の項目の3倍は時間をかける価値があると思っています。

しかし、中学校の指導計画ではその他の項目と同じ時間を配分されているため、理解が不十分でもそのまま進んでしまいます。疑問詞(What, How manyなど)を絡めて、疑問文などをスラスラと作れるようになるまで慣れておくと、必ず英語は伸びます。

英語が苦手になる生徒の多くは、この「be動詞と一般動詞の現在形」の理解と運用が不十分だからです。英語が苦手な生徒のできない原因は、音読の軽視と基本文法の理解と練習不足です。

小学生から英語を学ぶならこの分野を徹底的に攻略することが、後で英語の成績が急上昇することにつながります。

おすすめ教材

英語と日本語の大きな違いのひとつは、語順の重要性です。英語は語順が意味を決定するうえでとても大切な要素です。

日本語は「て・に・を・は」などの助詞が言葉の役割を決めているので、語順に比較的寛容です。しかし、英語は語順が入れ替わると意味がまったく異なります。

例えば、The dog bit the man.(犬が男にかみついた)と The man bit the dog.(男が犬にかみついた)では意味が変わってしまいます。

この語順を強く意識して「be動詞と一般動詞の現在形」を中心に学べる教材は、Jリサーチ出版『「意味順」だからできる!小学生のための英文法ドリル』です。

このドリルは1「be動詞マスター」と2「一般動詞マスター」に分かれています。1テーマで1冊なので、初めて英語を学ぶ小学生にはすぐに一冊を仕上げられて達成感が味わえます。

このテキストの最大の特徴は、「意味順」ボックスと呼ばれる色分けされた解答欄が用意されているところです。英語の文型が身につくように、主語は赤、動詞は青、目的語は緑とわかりやすく表示されているので、子どもは迷わずに英文を作ることができます。

解答欄は4線が引いてあって、英語を書き慣れない子どもでも、大文字や小文字の高さに注意しながら書けるように配慮されています。

一方、使いにくいところもあります。ダウンロードする形式の音声がありますが、読まれるスピードが遅すぎます。1.5倍速再生で聴いてちょうどいいくらいです。

高学年が使うときは、親がある程度補足しなければいけません。たとえば、冠詞(a, an, the)についての詳しい説明がないため、テキストとは別に説明してあげる必要があります。人称代名詞の所有格(my, yourなど)も説明がないのが残念です。

単語に読みやすいようにカタカナが振ってあるのもマイナスポイントです。子どもはこれを見て発音してしまうので、カタカナを読まないように指導する必要があります。

小学生向けの英語テキストは、最近ようやく本腰を入れて出版されています。ときどき書店をチェックして評判のよさそうなものを確かめておくようにしましょう。

テストに縛られない小学生の時期は英語学習にとても大切

中学校になると定期考査があります。英語の試験は試験範囲が決められていて、その中から出題されます。私の考えでは、試験範囲が限定されていることが、生徒の英語の成長を阻害しています。

本質を理解して英語を音読しながら慣れていって、ある時点で試験を受けるなら何も問題ありません。しかし、実際には直前に要領よく日本語訳を丸暗記して適当にごまかそうとする勉強を繰り返す生徒が多いのです。

ある程度広い範囲を学んだあと、どこが出るかわからない形式で出題するなら、生徒も小手先の勉強が通じないとわかるはずです。しかし、実際には試験範囲だけ単語の意味を暗記したりする適当な勉強法でも多少の点数が取れてしまいます。

中学校で英語の成績が伸びる子は、定期テストの範囲などにとらわれず常に先の目標に意識を向けています。過去に習ったことも忘れないように、言われなくても復習します。そのような学習姿勢が英語の実力に結びつきます。

小学校では定期テストがありません。小手先の勉強をする必要がないため、英語の基本に腰を据えて取り組めます。この時期を有効に利用して、その後の英文法の基礎となる「be動詞と一般動詞の現在形」をマスターするようにしましょう。

これが英語が得意な子どもにするためのコツです。

まとめ

小学校での英語教育が本格化し「家庭で子どもに英語を学ばせたい」と考えるお母さんは多いはずです。始める時期とどのように家庭で指導したらよいのか、に悩みます。

私は目安として小学5年生からが、家庭で英語を学び始めるのによいと感じます。抽象的な概念の理解力が高くなり、英文法の基本を効率的に学べるからです。

小学生のうちに絶対に身につけておきたいのは、英語を積極的に音読する習慣です。中学生になると多くの生徒は英語を声に出すことを嫌がります。声に出すことは言語学習の要なので、小学生のうちに音読を習慣化させましょう。

文法に関しては、「be動詞と一般動詞の現在形」の学習に力を入れましょう。頭で理解できているだけではダメです。肯定文・否定文・疑問文がすぐに口をついて出てくるレベルまで何度も練習することが大切です。

「be動詞と一般動詞の現在形」はその後の英文法の基礎となります。ここをしっかりとマスターしておくと、助動詞・進行形・過去形などを学ぶときでもあっという間に習得できます。

中学校では定期試験があり、直前の対策だけで乗り切ろうとする生徒がかなりいます。これを繰り返してもまったく実力がつかず、気がついたときには手遅れです。

試験がない小学校での英語学習時間はとても貴重です。あせらずに「be動詞と一般動詞の現在形」を音読しながら、家庭で取り組ませましょう。

小学生のための、ワンランク上の「英語で自己紹介」

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私は以前、海外に住んでいたときにあるチャットグループに参加していました。スマートフォンでアプリを開くと参加者のプロフィール画像が見られます。それらの写真とひとことコメントはどれもアピール力がとても強く驚きました。

「これはハリウッド女優か?」と見紛うまでに加工された自撮り写真は、笑顔で自信に溢れています。日本人ならそもそも自分の顔をアップで載せる人は少数派なので、これは大きな文化的な違いといえるでしょう。

子どもの自己紹介においても状況はまったく同じです。日本なら名前や年齢を言って、「よろしくお願いします」で終わらせてしまうのが一般的です。しかし、英語で同じように自己紹介すると、圧倒的にアピール力が足りません。

英語での自己紹介で最も大切なのは、「フレンドリーさ」「ポジティブ感」の演出です。そのツボさえ押さえれば、簡単な英語表現でも「ワンランク上」の自己紹介ができるようになります。

今回は小学生でもできる「ワンランク上の英語で自己紹介」について詳述します。

Hello, my name is ~.  I’m ~ years old. で終わり?

英語の授業で子どもに自己紹介をしてもらうと、ほとんどの子は “My name is ~.  I’m ~ years old.”まではスムーズにいえますが、その先が続けられません。主な原因は準備不足にあります。

自己紹介は、最も準備しやすいテーマです。自分自身のことなので、ひと通り英語でいえるようにしておくといろいろな場面で活用できます。

このときのポイントは、自己紹介の「構成」と「英語表現」です。自己紹介にはある程度決まり切った型(テンプレート)があるので、これを意識しながら原稿を練り上げるといいです。

まずは実際のインターナショナルスクールに掲示されていたYear 6(日本の小学5~6年生)による自己紹介の例を見てみましょう。

みんなの前で口頭で発表するなら、日頃の音読練習がモノを言います。

ネイティブの実例を見てみよう

self-introduction

あるインターナショナルスクールの男の子と女の子それぞれ二人ずつ自己紹介文を掲載します。Prefect(風紀委員のようなもの)のメンバーで、学校の生徒向けに掲示されていたものです。

これらを参考にすると、英語学習中の小学生でもワンランク上の自己紹介ができるようになります。

男の子1

My name is Tim.  If you are in trouble, come talk to me.  The class I’m in is 6JM.  I’ll try and sort any mayhem.  The house I’m in is Yellow house.  I was chosen as a prefect by Mr. T(校長先生の名前).

I was born on the 12th of February.  I’m always smiling and merry.  I enjoy all kinds of sports.  I’ll usually be in the four-square court.

I hope to see you around the school.  I’ll make sure you follow every rule.

 

和訳

僕の名前はティムです。困ったことがあるなら、話に来てください。僕のクラスは6JMです。どんな騒動でも対処しますよ。僕のハウス(縦割りに色分けして競い合う)は黄色です。T校長先生によって、風紀委員に選ばれました。

僕は2月12日生まれです。いつでも笑顔で陽気です。あらゆるスポーツが好きです。いつも「フォー・スクエア・コート」にいますよ。

学校で会えるといいですね。みんなが規則を守っているかどうかを確認します。

女の子1

Hi there, kids!  For you who don’t know me yet: I am Eliza from 6JA and one of the school prefects.

Here is a short fact file: I am in yellow house.  I don’t have a favourite colour because I like all colours.

I wanted to become a prefect so that I could help the school and you.

If you need help with something on the field, you can look out for me for help.

 

和訳

やあ、みなさん。まだ私を知らないあなた方のために。私は6JAのエルザで、学校風紀委員の一人です。

こちらは(私の)簡単な調査ファイルです。私は黄色のハウスです。私はお気に入りの色はありません。全部の色が好きです。

私は学校とあなた達を助けるために風紀委員になりたいと思いました。もし、校庭で何か助けが必要なら、私を探してくださいね。

男の子2

I want to take on the role of the Prefect because I have a thirst to contribute to the school community by helping to ensure my fellow school mates abide our 学校名’ rules and regulations including the 8 Golden Rules.

(中略)

Now a little bit about myself.  I enjoy playing tennis, swimming, football, and basketball.  These activities have prepared me to be tolerant, tenacious and work effectively in a team.  I have been with 学校名 since Nursery and I feel very honoured to be a part of the Prefect Team.  Have a pleasant day!

和訳

私が風紀委員の役を引き受けたのは以下の理由からです。学校の仲間たちに校則と8ゴールデン・ルールを含めた規則を確実に守ってもらう手伝いをすることで、学校に貢献したい渇望があるからです。

ではここで少々私のことを。私はテニス、水泳、サッカー、そしてバスケットボールをするのが好きです。これらの活動を通じて学んだのは辛抱強さと粘り強さそしてチームの中で効果的に働くことです。私はこの学校に保育園の頃からいます。そして風紀委員の一員であることにとても誇りを感じています。それでは良い一日をお過ごしください!

女の子2

Hi!  My name is フルネーム and you can call me Ting.  I have been in 学校名 since nursery till Y6, so 学校名 has been in my life for 8 years.

I wanted to be a prefect so that I can help the school and the children.  You can find me around school wearing a prefect badge and I could be the one to open your car door each morning.

My interests are swimming, cooking, reading and having fun with my friends.  When I grow up, I want to be a travel journalist and travel around the world.  What do you want to be when you grow up?

和訳

やあ! 私の名前は〇〇です。ティンと呼んでね。保育園から6年生までずっとこの学校にいます。だから学校は私の人生の中の8年間を占めています。

学校や子ども達を助けるために風紀委員になりたかったのです。学校では風紀委員のバッジをつけている私を見つけられます。そして毎朝車のドアを開けている一人かもしれません。

私の趣味は水泳、料理、読書そして友だちと遊ぶことです。大人になったら、旅行記者になって世界中を旅してまわりたいです。あなたは大人になったら何になりたい?

自己紹介のパターン

4人の子ども達の自己紹介文を掲載しました。よく読むと共通する構成や順番があることに気がつきます。これらをまとめてみましたので、子どもの自己紹介文を作成するときの参考にしましょう。

呼びかけ

以前、日本人学校に交流会に来たインター校の生徒達が日本人の生徒と記念撮影をした写真を見たことがあります。印象的だったのは、日本人の子ども達は全員真面目な表情で写っているのに対して、インター校の生徒達は全員歯を見せてニッコリと笑っているのです。

これは文化による違いです。日本人は記念撮影の際は真面目な表情をするように求められることが多く、外国人との記念撮影でもつい真面目な表情をしてしまうのです。環境によってこのような行動を取るのです。

その証拠に、インター校で育った日本人の子どもはカメラを向けるとすぐに笑顔を作ります。日本人が条件反射的に「ピースサイン」をするようなものです。

話がそれました。英語で自己紹介するときは、つかみの部分で「フレンドリーさ」を演出しましょう。写真なら笑顔が大切です。英語表現については後述します。

名前・所属・年齢

名前・所属・年齢はきっちりと書いておきましょう。定型表現で乗り切れるので、簡単に覚えられます。

ちなみにY6JMとはクラス名です。最初のY6はYear 6(6年生)のことです。これに続くアルファベットの2文字は、担任の先生のイニシャルです。例えば、担任の名前がHarrison Fordだったら、Y6HFとなります。

日本の学校なら6th grade, class 2(6年2組)と表記すれば大丈夫です。

出没箇所

正直私も戸惑ったのですが、「学校のどの辺に行けば自分に会えるか」の謎アピールです。日本の小学生はこのようなことは書きませんが、なぜかこの学校では半分の生徒がそのことに触れています。

おもしろい自己PRなので、日本の小学生でも書いてみるとおもしろいです。英語表現については後述します。

好きなことや性格

定番の説明です。自分の好きな色、スポーツ、自分の特徴などが該当します。これもできるだけポジティブな情報を盛り込みましょう。

一見つまらなさそうな情報でも、その人の性格を判断するのに貴重な情報となることはよくあります。「血液型はB型なので…」のような説明に科学的根拠は皆無です。しかし、そんな情報でさえも読み手(聞き手)は勝手に想像を膨らませてくれるからです。

将来なりたいもの

これも定番の情報です。なりたい職業を伝えるとその人の「性格や得意なこと」をイメージしやすくなります。だからこれらの情報を自己紹介に入れると効果的です。

締め

やはり締めの言葉がないと自己紹介が締まらないので、ひとこと入れるようにしたほうがいいです。簡単に“Have a pleasant day!”(良い一日を)で充分です。

役立つ英語表現

ここからは、先ほど紹介した自己紹介の構成順に、英語でどのように表現していくのかを具体的に説明します。最後に自己紹介の例文(全文)を掲載したので、参考にしてください。

呼びかけ

冒頭の部分は、小学生の子どもなら“Hi, there!”(やあ、こんにちは)くらいの調子で始めるとフレンドリーさを演出できます。簡単に “Hello!” で始めてもいいです。

  • 呼びかけ表現のまとめ
Hi, there!

名前・所属・年齢

“My name is ~.” と教科書的に名前を伝えるだけでも悪くはありません。しかし、ここではもう一つだけ文章を足してこのような表現にしましょう。

“My name is Kentaro Kawasaki(フルネーム), and you can call me Ken(呼び名).”

冒頭でのフレンドリーさを演出した流れをそのまま受け継いで、フルネームを伝えた後で呼び名も追加します。「〇〇って呼んでね」と言われたら、グッと親しみやすくなります。

次に所属の紹介です。先述のとおり「〇年〇組」の表現は英語圏では一般的ではありません。担任の先生の名前を使って表現します。例えば、“I’m in Mr. Smith’s class.” (私はスミス先生のクラスです)となります。

日本式のクラス(例えば4年3組)を英語で表現すると、「(序数)grade, class(組番号)」(4th grade, class 3)となります。

英語表現は、“I’m in 4th grade, class 3.”で大丈夫です。ネイティブの英語表現を真似すると、“The class I’m in is ~.”(私のいるクラスは~です)となります。“The class I’m in is 4th grade, class 3.”です。

最後に年齢です。“I’m ~ years old.”(私は~歳です)は小学生でもなじみのある表現です。よくあることですが、もうすぐ誕生日が近づいている場合(公開される頃には歳が変わっている)とか、つい最近誕生日を迎えた場合の表現も覚えておきましょう。

たとえば、現在10歳でもうすぐ11歳になる場合は次のようになります。“I’m 10 years old, but I’m turning 11 soon.” また、11歳になったばかりなら、“I turned 11.”となります。覚えておいて損はない表現です。

  • 名前・所属・年齢に関する表現のまとめ
My name is Kentaro Kawasaki and you can call me Ken.  I’m in 5th grade, class 1.  I’m 10 years old, but I’m turning 11 soon.

出没箇所

日本ではあまりなじみのない「出没箇所アピール」ですが、斬新なので取り入れてみましょう。

たとえば鉄棒が好きで、休み時間はいつもそこにいるのなら次のようになります。“You can find me around the bars.”

また、見た目の特徴があるのならそれについても触れたほうがいい自己紹介になります。例えばハリーポッターのような丸いメガネをかけているならこのようになります。“You can find me around the school wearing round glasses like Harry Potter.”

  • 出没箇所の表現のまとめ
“You can find me in the library wearing round glasses like Harry potter.”

好きなことや性格

ここでのおすすめ英語表現は2つあります。ひとつめは、“I enjoy ~ing.” です。3つ挙げるなら、A, B, and Cです。4つならA, B, C, and D(最後のandの前にはカンマを入れましょう)。ふたつのときは、A and Bのように単純にand でつなぎます。

“I enjoy playing tennis, swimming, and basketball.”

もう一つの表現方法は、“My interests are ~.”(私の関心ごとは~です)。特にこれといった趣味がない場合でも、悩む必要はありません。

“My interest is having fun with my friends.”(私の関心ごとは友達と楽しく過ごすことです)程度でもかまいません。

低学年なら好きな色を紹介するのも、手軽でおすすめです。日本人の会話では血液型からその人の性格を連想することが多いですが、これと似たような感覚です。簡単に“My favorite color is blue.”のように伝えれば充分です。

  • 好きなことの表現まとめ
“My interests are swimming, football, and reading.  My favorite color is red.”

将来なりたいもの

将来なりたい職業などに触れておくと、自分のことをより詳しく知ってもらえます。これも定型文があります。“When I grow up, I want to be a ~.”(大人になったら、~になりたい)とストレートに伝えましょう。

  • 将来なりたいもの表現のまとめ
“When I grow up, I want to be a policeman.”

締め

締めの言葉です。あくまでも「フレンドリーかつポジティブに」が基本です。

あいさつ的に終わらせるなら、簡単に“Have a nice day!” で大丈夫です。頼りがいのある自分をアピールするなら、“If you need help with something, you can count on me.”(もし何か困ったことがあるなら、ボクに任せて)くらい強気でオーケーです。

  • 締めの表現まとめ
“Have a nice day!”
  • 自己紹介例全文

Hi, there!  My name is Kentaro Kawasaki and you can call me Ken.  I’m in 5th grade, class 1.  I’m 10 years old, but I’m turning 11 soon.

You can find me in the library wearing round glasses like Harry Potter.

My interests are swimming, football, and reading.  My favorite color is red.  When I grow up, I want to be a policeman.

If you need help with something, you can count on me!

自己紹介をする機会は人生で多い

自己紹介をする機会は新学期だけではありません。インターネット上でのブログやフェイスブックなどには自己プロフィール欄があり、これらも自己紹介と同じです。

実は私自身、このような自己紹介欄を埋めるのがとても苦手です。なぜなら、自分の良い面を伝えることを遠慮したり、あまりにも他人の評価を気にしすぎたりするからです。つい無難な事実だけを書いてしまいがちです。

自己紹介で最も大切なのは、「フレンドリーさ」や「ポジティブさ」の演出と他人から覚えてもらうことです。嫌な部分は明かす必要はありません。

子どものうちに自己紹介の定番パターンを身につけておくと、その後の人生で何度も役にたちます。そしてそれが就職活動の自己PRにも少なからず影響を与えることになります。

英語で自己紹介することを通じて、自己紹介パターンを持つことはとても役に立つことなのでおすすめです。

まとめ

自分のことは書く内容に困ることはありません。決まりきった英語表現を使いこなすだけでも、名前や年齢だけに触れる自己紹介よりもワンランク上の自己紹介ができるようになります。

自己紹介は一度作ったら、そのまま放置するものではありません。年齢とともに情報を入れ替える必要があります。また、もっと高度な内容を盛り込みたくなってくるものです。

そのようなときは身近に利用できる英語の先生を見つけて、アドバイスをもらうといいでしょう。「〇〇のように書き直したいけれど、どうすればいいですか?」と質問すれば、きっといいアイデアをもらえるはずです。

写真付きの自己紹介なら、笑顔も忘れないようにしましょう!

アプリを使って親子で英語チャットに挑戦!

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ある英会話学校の人から聞いた話です。子どもを通わせているお母さんから「ウチの子、全然英語を話さないんですよ」とよくグチを聞かされるそうです。その家庭では日本語しか話さないので、当然の結果です。

実際、日本の小学生が英語を使う機会はほとんどありません。ほとんどの子どもは「親に言われて」「英語は受験に必要だから」だけの理由で英語を学んでいます。これでは受験科目としての英語からの呪縛から逃れられません。

もし、日本にいても「英語を使わないとならない」状況を日常的に作り出せるとしたら興味ありませんか? お母さんとお父さんにも協力してもらいますが、お金や時間はほとんどかけずに取り組む方法があります。

WhatsApp を使って親子で英語チャット

「ネイティブがいないので英語を話さない」と言っていたら、日本では英語を使用する機会はありません。「日本にいてもどうすれば英語を使う機会を増やせるか」と考え方を変えましょう。

私が試してみて効果的だった「WhatsApp(ワッツアップ)」というアプリを使った親子での「英語グループチャット」を紹介します。

WhatsApp

生活に英語を取り入れる

英語を使えるようになりたければ、「実際に使う」ことでしか上達しません。ところが英語を話せる人が周囲にいないと、会話の練習にならないのも事実です。そしてほとんどの人はここであきらめてしまいます。

そこで普通の家庭でも生活に英語を取り入れる方法として、「親子で英語チャット」を提案したいと思います。

私自身、息子が幼稚園のころ一時期「英語で育児」してみようと挑戦したものの、思った以上に子どもの抵抗が強く失敗したことがあります。日本語を話し出す前ならうまくいったかもしれませんが、時間を戻せません。

一方、息子が小学生になったときしばらくの間「英語でチャット」をしたことがありました。初めはほんの遊びだったのですが、意外と毎日続けられました。会話の中身は他愛ないことや本当に必要な連絡も含まれていました。

チャットでは、必要なこと・言いたいとこをシンプルな英語で表現します。子どもが英語を実際に使う実践の場として、とてもいいと感じます。

「伝えたい」ことを英語で伝えるから、英語が身につく

英語学習において、例文の暗唱は避けられません。何度も何度も繰り返し口頭で練習します。

しかし、その表現を自分のものにするまでには、あともう1ステップ必要です。それは、その暗唱した表現を応用して、「自分が伝えたいことを表現する」ことです。

例えば、“John has to do a lot of homework today.”(ジョンは今日たくさん宿題をしなければいけない)という例文を暗唱したとします。しかし、これだけでは記憶は薄れていってしまいます。

そこで、実際の状況で “I have to do a lot of homework today.”と何度か使うと記憶は定着します。日常会話で使用するのが一番です。

暗唱した例文は、日常生活で使ってこそ身につくようになります。

親子だから間違えても恥ずかしくない

小学生になると、間違うことの恥ずかしさを強く感じるようになります。そのため「間違えても気にしないで」と諭しても、積極的に英語を話そうとはしません。

でも、親子だけのグループチャットならリラックスして英語でコミュニケーションを取れるはずです。

お母さんは英語を間違えても気にしないでください。お互い間違いをしながら、少しずつ上達すればいいのです。親子で英語を教え合うような関係が理想です。

文字が残るから訂正・復習が容易

会話では「瞬時に英文を口から出せること」と「相手の英語を聴き取る」二つのハードルがあります。標準的な小学生では、この二つをクリアするのはかなり大変です。

一方、チャットなら文章を入力するまでに考える時間があります。相手からの言葉も文字として残るので、知らない単語を確認することも可能です。

英作文を速くできて音声で表現したものが、英会話です。つまり、文字だけ投稿していても会話練習の基礎になっていることに注目してください。

間違えた英語を送ってしまっても、それはそれでいい教材になります。親子のうち誰かが気づいて、チャット上で正しい綴りや文章を教えてあげましょう。次からその表現を真似すれば、少しずつ洗練された表現ができるようになります。

このようにチャットでは文字による履歴が残るので、訂正をしたり復習したりが簡単です。できれば毎晩、その日の会話を振り返って正しい言い方や綴りを学ぶ時間を設けると、理想的なオリジナルテキストとなります。

WhatsAppを使おう!

親子の英語チャットに使うアプリとして、私はLINE(ライン)ではなくWhatsApp(ワッツアップ)をおすすめします。LINEは日本では大変メジャーなアプリですが、世界的にみると圧倒的にWhatsAppのほうが利用されています。

単に利用者数の多さがWhatsAppを選ぶ理由ではありません。親子の英語チャットにWhatsAppのほうがふさわしいと思われるポイントをいくつか紹介します。

スタンプ機能を使えないから英語学習にはWhatsAppがいい

LINE人気の原点は、言葉の代わりにムード(気分)を表す「スタンプ機能」が充実していることにあります。忙しいときばかりでなく、細かいことを濁したいときにも便利な機能で、日本人のコミュニケーション特性にピッタリです。

しかし、英語学習を目的としたチャットでは、この「スタンプ機能」が邪魔になってしまいます。英語で表現するのが目的なので、お母さんの問いかけにたいして、スタンプばかりで返信しては意味ないからです。

WhatsAppには絵文字がありますが、あくまでも文章に添えるものです。絵文字だけで返信するのは不自然です。そのため「なんとか英語の文で伝えよう」と一生懸命頭を使って考えるようになります。

ゲームがなくシンプルだから英語に集中できる

ラインにはニュースやゲームなど子どもの気が散るサービスがあります。ビジネスとしては優秀でも、英語学習ツールとしては危険です。

その点、WhatsAppはチャット機能に特化しています。子どもがいつの間にかゲームで遊んでしまったりサイトを閲覧したりして、無駄な時間を過ごすことが起こりにくいです。

子どもの使用するスマホやタブレットには、余計なアプリを入れないようにしておくことも忘れないでください。

グループ作成したらお父さんや他の親族にも英語で参加してもらう

グループ作成のやり方は、LINEとほとんど同じです。グループ名は「〇〇 Chat」のようにして、英語っぽい名前がいいです。プロフィールの写真も子どもの好きなように設定してあげましょう。

最初に参加するのはお母さんと子どもです。そして、普段忙しくてなかなか子どもの英語教育に関われないお父さんにも参加してもらいましょう。もし、難しければ英語の得意な親族に参加をお願いしてみましょう。

参加するメンバーの選択基準は、子どもが間違えてもおおらかに対応してくれる人です。基本はやはり両親と子どもです。あまり人数が多いと人任せになってしまうので、3人くらいのほうが投稿する頻度は高くなります。

英語を打つならフリック入力からQWERTY(クワーティ)入力に

子どもが使用する端末は、お母さんの古いスマートホンやタブレットで充分です。わざわざ新しいものを購入する必要はありません。

ひとつだけお母さんが事前に設定してあげたほうがいいことがあります。それは、入力方式をフリック入力ではなく、QWERTY(クワーティ)入力に切り替えることです。QWERTYとはパソコンのキーボードのような配列のことで、英文の入力には適しています。

こうすることで、ストレスなく英語を入力できるようになります。必要な機器や周辺環境、設定をまとめます。

・スマートホンかタブレット(古いので充分)
・Wi-Fi環境が自宅にあること(SIMカード不要)
・入力方式をQWERTYに切り替えてあげる

親子でどんな英会話をするか

準備が整っていざ英語でチャットを始めようと思っても「何を話したらいいのか」わかりません。どのようにすすめると毎日のチャットを継続できるかについてまとめます。

連絡、親子のコミュニケーションに

お母さんが働いていれば、子どもへの伝言としてチャットを利用しましょう。仕事が終わって帰宅するのが6時なら、そのことを子どもに英語で伝えます。“I will be home at 6.” のようにシンプルに書くのがコツです。

英語だからといって、特別なことを話す必要はありません。日常必要なことをシンプルに伝えればいいのです。これを積み重ねると、必要な英語表現を覚えられるようになります。

英会話の具体例

まだイメージしにくいお母さんのために、サンプルとしてチャット例を紹介しておきます(お母さん、お父さん、みきちゃんの3人でグループを作成していると仮定)

Mum: Hi, Miki.  The cupcake is in the fridge.  Take in the laundry before 5 o’clock.
(ミキ、カップケーキが冷蔵庫にあるよ。5時前に洗濯物を取り込んでおいてね)
Miki: When are you home?
(いつ帰ってくるの)
Mum: I will be home around 6 o’clock.
(6時くらいかな)
Miki: Ok.
(了解)
Dad: I will have dinner at home tonight.
(今夜は家でご飯食べるよ)
Mum: What do you want to have for dinner tonight?
(今夜の夕ご飯は何を食べたい?)
Dad: I like fish better than meat.  How about you, Miki?
(肉より魚がいいな。ミキはどう?)
Miki: Me, too.
(私も)

このように、普段の連絡用に利用すれば一石二鳥です。夫婦の会話も子どもは読むので、勉強になります。

一日一回は必ず書く

毎日、必ず一回は全員がチャットに投稿するように決めておきましょう。どんなに忙しくてもひとことでいいので、習慣づけるようにします。ひとりが約束を守らないと、他の人たちも次第にフェイドアウトしてしまいます。

毎日そんなにおもしろいネタはありません。ちょっとしたことを短いセンテンスでいいので書くことが大切です。

英語で日記を書く学習方法がありますが、ひとりで毎日書き続けるのは意外と大変です。しかし、仲間がいて皆が何らかの投稿をすればそれに応えようと頑張れます。

子どもの反応が芳しくないときは、これから述べるポイントに気をつけてみてください。

子どもから英語を引き出す方法

最も効果的なのは「チャットを読まないと不利益を被る」か「チャットを読んで投稿すると得する」のどちらかの状況をつくることです。このような状況で英語を使用すると、英語は教養のための言語から、「必要な言語」として刷り込まれます。

例えば、大好きなケーキが冷蔵庫に入っていれば、それをチャットで伝えます。Cakeの単語は分かっても、fridge(冷蔵庫)を知らないと食べられないので、一生懸命調べるはずです。

たとえ「ケーキ→冷蔵庫」と予想できたとしても、ケーキを発見できればfridgeを覚えられます。

子どもにとって大切な情報を英語で伝えましょう。例えば、お小遣いの支給日なら、このように伝えます。

Mum: What is the date of today?
Miki: It is March 1st.
Mum: You forget something important.
Miki: What do I forget?
Mum: I won’t tell you that.  Guess what.
Miki: I have no idea.

このようにできるだけ子どもの投稿を促すような質問をすることで、会話はつながっていきます。

翻訳ソフトや会話本をそろえておく

お母さんかお父さんのどちらかが英語が得意なら問題ありません。両方とも得意でない場合は、英語で投稿するのは面倒になります。このような場合、ゼロから英文を考えるのは難しいので、日常会話の本を一冊備えておくといいでしょう。

また、WhatsAppと同時に翻訳アプリをインストールしておけば、ある程度までは英語に直してくれます。ほとんどの場合、間違えている部分があります。それを見つけるのも勉強になります。

英語のチャットはテストではありません。カンニングしていいのです。できるだけハードルを下げて、親子での英語チャットを習慣化しましょう。

英語でチャットをするときのルール決め

親子の英語チャットでは、大まかなルールを作っておいたほうがうまくいきます。その中でも特に大切だと思われるものだけ取り上げてみます。

英語しか使ってはいけない

最も守るのが難しいルールは「英語しか使ってはいけない」ことです。誰かが日本語を使い出すと、なし崩し的になってしまい元には戻れません。チャンスは一度きりなので、必ず英語で通すようにしてください。

ただし、魚や植物の名前などの一部はローマ字表記のほうがいい場合もあります。例えば、夕食にさんまを食べようと思っているとき「saury(サンマ)」を使っても理解できません(実は私も今調べました)。

このようなときは “I wonder if we are going to have sanma for dinner.”と投稿したほうがわかりやすいはずです。

このような例外は別にして、基本的には英語で通すことを第一のルールにしましょう。

英語を間違っても怒らない

親子でチャットをする利点は「間違いを気にしない」ことでした。しかし、お母さんやお父さんが、子どもの英語文法や綴りなどをうるさく注意してばかりでは、子どもは嫌になってしまいます。

しかし、訂正してあげないといつまで経っても上達しません。子どものやる気をそがずに訂正するには、ふたつ方法があります。

ひとつ目は、毎晩その日の投稿を見直してよりよい文章を教えてあげることです。「これは何ていえばいいのだろう」というフラストレーションからその日のうちに開放されるので、子どもにとって嫌な気分になりづらいです。

もう一つは、聞きなおすような(確認するような)感じで投稿してあげることです。例をご覧ください。

Miki: I am hungry.  I want have some snacks.(have の前にtoが抜けている)
Mum: Oh, you are hungry.  You want to have some snacks, right?(WhatsAppでは文字に色をつけたり、太字にするような文字修飾機能はありません)

このように聞きなおすと、自然と子どもに正しい英文を伝えることができます。うまく学習すると、次回からはこの表現を真似するようになります。

一方的に正解を伝えるばかりではなく、子どもに気づかせるのも大切です。

略語やネットスラングは使用しない

外国の人とチャットをするとあまりの略語やスラングの多さに、英語を理解できないほどです。代表的なものを挙げると、FYI: For Your Information(参考まで)、ASAP: As Soon As Possible(できるだけはやく)です。

このような表現は小学生の英語学習には不要なので、使わないようにしましょう。面倒でも省略しないで書くことをおすすめします。

同様にスラング(俗語)もできるだけ使わないようにしましょう。日本人が好んで使うOh my God! は、おすすめしません。なぜなら、みだりに「神」の名を口にするのは慎むべきとされているからです。

驚きを表現するときは、Oh my goodness.やOh my gosh.などを代わりに使用するようにしましょう。

子どもは家でのみ利用する

子どもだけでネットを使用するときには、注意が必要です。くれぐれも悪意のあるサイトに騙されないように注意しておきましょう。

無用なトラブルを避けるためにも、「親子チャット以外では使用しないこと」「スマホを家の外に持ち出さないこと」をルールにしておきましょう。

子どもをネットから完全に遮断するのが難しい今日、早めにネットの正しい使い方を教えておくのは必要です。

まとめ

日本で普通の生活をしていると英語に触れる時間はほとんどありません。しかし、英語を定着させるにはどうしても「使う」状況が必要です。WhatsAppを利用してグループを作り、親子で英語チャットを続けましょう。「英語を使う」状況を自然に作ることができます。

チャットは文字による会話です。これを早く正しくできるようになり音声化できれば、会話力もアップします。会話の本や翻訳ソフトの力を借りてもかまいません。無理なく続けられる方法を見つけましょう。

最低でも数か月続けると、よく使う表現については覚えるようになります。使うことによって覚えた表現は忘れにくい特徴があります。お金をかけずに取り入れられる学習法なので、ぜひチャレンジしてみましょう。

オンライン英会話では質問をするときにチャット機能を使用することがあります。日頃から簡潔に英文を書く訓練をしていると、英会話の授業でも役に立ちます。

 

子どものオンライン英会話:成果・効果を上げる復習方法

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子どもの英語力向上のためにオンライン英会話を始めたけれど、思ったほど成果を感じずマンネリ化していませんか。毎回単調なレッスンで、子どもが何を習ったかすぐに忘れてしまうような状況なら対応策を考えなければいけません。

まず、英会話の向上のためにどのようなトレーニングが必要なのかをお母さんが理解する必要があります。そして、レッスン後の「復習」を充実させ、「よし、今度はもっと上手に話してみよう」という気持ちで子どもにレッスンを受けさせることが大切です。

またあまり使われていないオンライン英会話の「リクエスト機能」を最大限に活用して、より自分の子どもに合わせたレッスンを受けられるようにすることも大切です。

そこで、今回は子どものオンライン英会話の効果・成果を高めるためのコツについて具体的に解説します。

オンライン英会話が子どもの英会話に効果的な理由

英会話の上達にはインプットとアウトプットの両方が必要です。単語・文法の知識を頭にストック(=インプット)して、それらの知識を使って話してみる(=アウトプット)ことでしか英会話の上達方法はありません。

インプットとアウトプットを50:50の比率で行うと理想的な英会話のトレーニングになります。しかし、日本で暮らす大多数の人は英語を使う機会がほとんどないためアウトプットが圧倒的に不足しています。

さらに、インプットの量も充分ではありません。毎日単語や文法を学習したり、英文を何度も音読して暗唱している人は受験生以外、ほとんどいないのが現状です。

そこでオンライン英会話を活用してアウトプットの時間を確保します。そして、レッスンのない日はインプットに集中します。インプットをしておくと意識が高まり、レッスンを能動的に受けられるようになるメリットもあります。

ここではインプットとアウトプットを繰り返しながら英会話が上達する様子を詳しく説明します。

英会話上達のしくみ

「日本語を覚えたときのように、英語も苦労しないで覚えたい」という気持ちはよくわかりますが、現実には不可能です。日本語が母国語として定着した小学生以上の子どもは、日本語をベースにしながら英語を学ぶしか方法はありません。

しかし、悲観する必要はまったくありません。9歳になると少しずつ論理的な思考力が発達してくるので、「文法」を最大限に活用しながら英語を効率的に学べるようになります。

言葉は学習範囲が広くすぐには効果が表れにくいため、努力が報われないように感じますがそんなことはありません。長期間継続すれば必ず英会話は上達します。ここで、インプットとアウトプットを繰り返しながら英会話を上達させる過程を確認してみましょう。

仮に“I want to do ~.”(私は~したい)という表現をマスターする過程を確認してみます。まず、「~したい」と表現したいのに、言えずにフラストレーションが溜まる経験をします。実際に言葉は発していませんが、アウトプットしようとして気づいたのです。

次に、先生に聞いたり辞書で調べたりして“want to do ~”という表現を知ります(インプット)。そして、“I want to play tennis.”(私はテニスをしたい)とか“I want to go to Disneyland.”(私はディズニーランドに行きたい)という英文を暗唱します(インプット)。

その後、会話をする機会に覚えたフレーズを利用してみます。例えば夏休みの思い出を話しているときに「僕は釣りに行きたかったけれど、お父さんはゴルフをしたかった」と表現しようとします。

そして、“I want to go fishing, but my father want to play golf.”と言ったとします(アウトプット)。これを聞いた先生から、「過去のことだから、wantはwantedに直してみよう」とアドバイスをもらいます。

このとき初めて動詞には過去形があることを学び、-edを動詞につけることを理解します(インプット)。そして次回から「いつものことを話すときはwantで、過去のことを話すときはwantedにしよう」と覚えます。

このように、たった一つの表現でさえもインプットとアウトプットを何度も繰り返しながら少しずつ学んでいくのが普通です。だから、英会話を本気で上達させたければインプットとアウトプットを毎日繰り返すしかありません。

アウトプットの機会確保のためにオンライン英会話が効果的

インプットは本があれば自分でもある程度はできます。アウトプット(話す)訓練も大人であれば英語でひとり言をブツブツいいながら練習することは可能です。しかし、子どもの場合はなかなかそこまで器用にできないので、会話をする相手が必要になります。

そこで活用できるのがオンライン英会話です。安い月謝で週に複数回のレッスンを受けられるので、英語でのアウトプットを習慣化するにはもってこいのシステムです。

もちろんこれまでみてきたように、頭の中のストック(英語の知識)が足りないと、口から英語はほとんど出てきません。だから、オンライン英会話でのアウトプットを増やすと同時に、レッスンのない日のインプット(単語・文法学習)がとても大切になってきます。

オンライン英会話のない日は、復習とインプットに集中

週3回のレッスン(各25分)でアウトプットの機会を確保した場合、残りの4日間はインプットに専念しましょう。このインプットの質と量で、英会話の流暢性が決定します。

復習には紙を使った学習が最適です。子ども向けのオンライン英会話では、無料の独自教材と市販の推奨教材が使えるようになっています。独自教材の場合はPDFなどをダウンロードできるようになっているので、プリントアウトしておくとよいでしょう。

レッスンを受けたら、その時に習った部分をテキストで確認します。音声と文字を結びつける学習はとても大切です。リーディング力は英語力の基本となります。また、オンライン英会話ではライティングが弱点なので、鉛筆で書きこむだけでその弱点を補えます。

では、もう少し具体的にどのような復習をすると英会話力が向上するのかを説明します。

英文法の知識を確実にする

その日に習った部分が「Is this ~?」(これは~ですか)なら、主語と動詞の順番が入れ替わっていることをテキストを見ながら確認します。

私はかつて英語教師でしたが、音声のほうが理解力が上がる生徒と文字で確認したほうが理解できる生徒の2タイプいることに気づきました。そのため、レッスンで同じことを説明されても文字や図をみながら確認したほうがより定着しやすくなるので、文字による復習はとても効果的です。

意味がわからないところがあれば、次回のレッスンで質問をしてみるとか、お母さんから教えてあげるようにしましょう。

話すときは文法を意識しすぎると流暢性が損なわれることがありますが、復習のときは英文法の細部の理解に努めます。ここをいい加減にすると、いつまでたっても英会話は上達しません。

知らなかった英単語を覚える

小学生は知っている単語数が不足しているので、知らない単語ばかりかもしれません。語彙力の向上は表現力の向上と直結しているので、積極的に覚えるようにしましょう。

単語については、まず発音が大切です。意味を調べて発音はいい加減に覚えては、英語は上達しません。意味を調べる前に発音とアクセントを調べます。

主要な単語なら、電子辞書で調べると音声が再生されるので、それを聴きながら自分の口でもマネをしてみます。特にカタカナ化されている単語は注意が必要です。日本語に引きずられてしまい誤った発音やアクセントをしてしまいがちです。

例えば、plastic(プラスチック)を覚えるとき、「ラ」の部分が【l】と【r】のどちらなのかを正確に発音するようにしないと、あとで混乱することになります。

小学生の子どもにとって大きな山となるのが、基本的な動詞です。一見簡単そうに見えますが、多用されるのでいろいろな意味や文脈に使用され、意味の範囲が広いものが多いので使いこなすのは大変です。

例えば、haveの基本の意味は「を持つ」です。しかし、“I have a dinner at 7:00.”のhaveは「食べる」という意味です。このように文脈によって意味が変化する基本動詞は英語初心者の子どもにとってやっかいな存在です。

これらの単語については多くの用例に触れながら語感を養うしかありません。

テキストの英文を暗唱する

テキストにはターゲットとなる基本文が書いてあります。ここまでの学習で、文法と単語を完全に理解していれば、基本文の内容も正確にわかるはずです。横に日本語の訳を書いておきましょう。準備ができたら、この英文を音読しながら英文を暗唱します。

  • 手順
  • 英文を集中して3回音読します。今度は、テキストから目を話して同じ英文を声に出して言ってみます。
  • 時間を空けて日本語訳を見ながら、英文を音読します。このとき、途中でわからなくなったら、もう一度最初から繰り返します。
  • スラスラ言えるまで繰り返す。

英文の暗唱は、すき間時間に取り組むと効果的です。思わずテレビをつけたくなる直前とか、風呂上がりの時間などの短時間を利用して集中して取り組むと覚えられるようになります。また、どこかに出かけるときもその部分のコピーやメモを持ち歩き暗唱するようにします。

能動的にレッスンを受けてみる

オンライン英会話で成果を上げるために最も大切なのは、「レッスンを能動的に受ける」ことです。毎回何も準備せずに何となくレッスンを受けても、英会話は上達しません。

そこでオンライン英会話でもっと効果を上げるために必要なコツをいくつか紹介します。

  • 今日の出来事を英語にしてみる

オンライン英会話の冒頭では、挨拶とちょっとしたフリーカンバセーション(自由会話)のやり取りがあります。

オンライン英会話がマンネリ化してくると、子どもは最低限の言葉だけでやり過ごしてしまい、講師が話しづらい状況を作り出してしまいます。

挨拶は毎回“How are you?”と質問されるので、“Fine, thank you.” だけで終わりにせず、“I’m good.”(調子いいです)など他の答え方も覚えておきましょう。気分に合わせて答えられるように下の表現を目の前の壁に貼っておくのもいいアイデアです。

I’m good.
I’m okay.
I’m excellent.

さらに、これだけで終わりにしないで1センテンスを追加するように心がけましょう。その場合は、but(しかし)かbecause(なぜならば)でつなぐとスムーズです。相手にできるだけ情報を伝えたほうが会話は弾むので毎回話す内容を決めておきましょう。

例えば、“I’m okay, but I have a lot of homework today.” と返事をすると、オンライン英会話の講師は必ず宿題のことについて反応するはずです。

“I’m excellent, because my father gave me a PS4.” と返事をすれば、講師は「へえ、何かゲームソフトは買ったの?」と質問を続けます。これらの質問にも答えられるように、あらかじめ準備をしてメモを取っておくと、会話はスムーズに進行します。

  • 伝えたいのに表現できない部分をメモする

オンライン英会話はパソコンやタブレットに向かってレッスンを受けています。でも、私の子どもが受けるときは必ず横にノートと鉛筆を用意させます。これはレッスン中に言えなかったことや、印象に残った先生のフレーズや注意点を書き残すためです。

レッスン後は必ずこのメモを見て、フレーズを覚えたり知らない単語を覚えたりするようにします。ノートには先述したフリーカンバセーションのネタをメモしておくのもいいです。

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オンライン英会話のレッスン予約欄にお母さんがリクエストをする

レッスンを能動的に受けるために活用したいのが、リクエスト欄です。レッスン予約をするときに細かい要望をメニューから選べたり、書き込めたりします。よくあるレッスンリクエストとしては、次のようなものです。

  • 日本語を使用して欲しい:学習初期の子どもでも戸惑わずにレッスンを受けられる
  • 発音指導をして欲しい:日本人が苦手な発音を中心に丁寧に指導してもらえる
  • センテンスを正して欲しい:自分の英語の間違いを指摘してもらい正確性を高める

またオンライン英会話によっては、もっと細かいリクエストを送ることも可能です。例えばあらかじめ英検5級の問題集をスキャンしておき、そのファイルを添付します。

コメント欄に「(1)~(10)までの問題に取り組ませてください(日本語可能)」と入れておくと、講師はそのリクエスト通りにレッスンを進めてくれます。</