突然ですがあなたにひとつ試してほしいことがあります。「〇歳の壁」というキーワードで、〇の中に2歳~10歳まで順に入れて検索してみてください。おそらくどの数字を入れても「〇歳の壁」の情報がヒットします。
それにしてもたくさんの「壁」があるものです。そして、そのほとんどは教材を売るために業者が作り上げたものであることは想像できます。英語の場合なら「〇歳を過ぎると英語を吸収しなくなる」という半ば脅し文句のようなものです。
セールストークとわかっていながら「今から英語を始めないと、最高の時期を逃してしまう」とつい不安になるものです。最初の子どもの場合はなおさらです。
このようなお母さんにこそ、今回の記事をきちんと読んでいただきたいと思います。結論からいえば、英語は何歳からでも習得できます(ただし、アプロ―チは年齢によって変える必要があります)。
高額な教材を契約してしまう前に今一度冷静になって、教材選びで後悔しないための視点を持つようにしてください。
これだけは知っておきたい幼児向け英語教材の大原則
英語教材を選ぶときほとんどのお母さんは、クチコミサイトやランキングサイトを検索します。これらのサイトには有益な情報も含まれていますが、最終的には自分で判断して決めなければいけません。
このときに大切ないくつかの「大原則」があります。その中でも、つい勘違いしてしまいがちなことを中心に説明します。教材選びで後悔した経験のあるお母さんはその原因をきちんと理解すれば、次回からはより賢い選択ができるようになります。
英語教材だけでは子どもの英語は伸びない
英語指導の経験から断言できますが、教材だけでは英語は伸びません。少しわからない部分があって、そこを理解できるようになって達成感を味わったり、英語力が少しずつ伸びたりするようになります。そのためにはどうしても指導者が必要です。
もし子ども一人で学んで理解できるのなら、その教材はやさしすぎます。
指導者が必要なもうひとつの理由は、先の展開を見据えた人が指導すると学習効率が段違いに良くなるからです。
例えば、助動詞の「can」をある教材では「~できる」の意味で扱っているとします。確かにこれは正しいのですが、使われる状況によってはbe able to doのほうが適切だったり、文脈によっては「ありうる」という意味に使われたりすることもあります。
このような横展開できる指導者がいると、そのあとの学習効率が極めて高くなります。ところが初めて英語を学ぶ人が独習する場合、このような関連づけはできません。ある程度マスターした人がふり返って初めてわかることだからです。
エベレストなど難易度の高い山に挑戦する登山家は、シェルパと呼ばれる地元の人たちを雇います。彼らは表舞台に立つことはありません。しかし、山を知り尽くしている彼らのサポートなしでは、一流の登山家といえども登頂を成功させることはできません。
シェルパと指導者は似ています。間違いやすいポイントを先回りして察知しながら子どもに助言を与えることで、子どもは最短距離で学習することができます。
繰り返しになりますが、教材だけで子どもの英語力を伸ばすことはできません。そして最も身近な指導者はお母さんです。よい教材に巡り合えたらそれで終わりではないことは承知しておきましょう。
英語を学ぶなら「今しかない」のセールストークに惑わされない
幼児向け英語教材のセールストークを眺めていると「今しかない」のオンパレードです。「脳が柔らかいうちに…」「英語耳は〇歳まで」などがその典型です。
実証済みの事実ですが、英語は何歳からでも学習可能です。一定の年齢を過ぎても語学が習得できます。
小学生がいる家庭には「〇年生から学校の勉強は難しくなります!」「この春がラストチャンス!」と謳った通信講座の案内が毎春送られてきます。これらの説に大した根拠はありません。
賢いお母さんは、このようなセールストークに惑わされないようにしてください。
高額な英語教材は避ける
高額な教材を避けたほうがいいのには、ふたつ理由があります。ひとつめは、コストパフォーマンスが悪くなるからです。
時計に例えてみます。数千円で購入できる時計は、私のような素人にも安っぽく見えます。そして価格が上がるほどに高級感は増していきます。ところがある一定の価格を超えたところから、ほとんど品質に差はなくなります。
私は時計にまったく興味がないので、5万円台の時計と100万円の時計の違いがまったくわかりません。時計に詳しい人に聞いたところ、実際、使われている部品はほとんど変わらないとのことでした。
時計ならブランドに価値を見出すのもありです。しかし、英語教材にブランドなど関係ありません。子どもにとって有益かどうかだけです。
時計と同じく教材もそれなりに凝ったものにするためには手間暇かけるので、ある程度までは価格とクオリティは比例するかもしれません。しかし、何十万もするような高額教材を買ってみても劇的な効果を得られるとは思いません。
もう一つ、高額な教材を避けるべき理由があります。それは、子どもに合っていないと感じながらも、お母さんが「もったいない」とズルズルと使い続けてしまうからです。
また、明らかに子どもが興味を示していなくても「せっかく始めたのだから、しっかりやりなさい!」と怒鳴ってしまうこともあります。それは「損をしたくない」と焦るお母さんの感情から出てくる言葉です。
手頃な価格の教材であればさっさと見切りをつけて、別の教材に切り替えられます。このように高額教材を使うと、かえって子どもの英語学習の妨げになることもあるので注意が必要です。
絵本以外なら、映像・音声中心の英語教材を与えよう
幼児の英語学習のおすすめは「英語絵本の読み聞かせ」です。もちろん「英語の絵本」が教材です。これなら新品で購入しても毎月3,000円くらいで収まります。
これだけでも英語に親しむには充分です。しかし、もう一歩進んで英語力を伸ばしたいなら、音声面にフォーカスを当てた教材を利用してみましょう。
音や映像から単語や表現をまねするような活動を取り入れるようにすると、将来の英語力を伸ばす基盤がしっかりとします。
英語絵本以外の教材を取り入れるなら、映像・音楽が収録された教材で思わず口まねしてしまうようなものがいいです。学習内容としてはチャンツでフォニックスの基礎を学べるようなものが適しています。
ランキングサイトやクチコミサイトであっても、教材の正しい評価がされているとは限りません。売り手の論理に惑わされずに、自信を持って取捨選択できるようになりましょう。
幼児向け英語教材選びのポイント
「教材選びの大原則」を抑えたら、ここからは具体的なポイントについて説明します。慌てて選ぶとお金だけでなく「大切な時間」を失います。最短距離で最大限の効果を生むためにも、ひとつひとつを確認していきます。
子どものレベルを知り、現実的な目標を設定すること
お母さんの役割でとても大切なのは、子どものレベルを把握することです。これを間違えてしまうと教材選びは難航します。もう一つ大切なのは、数か月のスパンで現実的な目標を設定することです。
例えば「英語を話せるようになって欲しい」というのは現実的な目標ではありません。話すといっても、“Good morning.”のあいさつレベルなのか、“I don’t like green peppers because it tastes bitter.”と話せるレベルなのかはっきりしないからです。
「3か月後に、あいさつと数字を1から10までスラスラと言えるようになる」のように具体的な目標を立てるほど、最適な教材を絞り込むことができます。
すべてに万能な教材はありません。そのかわり、目標を絞り込むほどそこにターゲットを合わせた教材を選ようになります。
まとめると「子どもの現在のレベルを正しく把握」して、「3か月程度先の具体的な目標を立てる」ことが、教材選びには欠かせません。
子どもが楽しみながら英語を学べること
子どもは「楽しい」と感じることは夢中になります。反対に、押しつけられたつまらないものからは逃げようとします。大人だって本音はそうですが、感情を押し殺して我慢しているだけです。
つまり子どもに英語学習を継続させたければ、その教材について「楽しい」と感じさせることが必須条件です。楽しいと感じるツボは、子どもによって異なります。男の子と女の子でも異なります。
つまりここでも必要なのは、子どもをよく観察してどんなものに興味を惹かれるのかを理解することです。
教材選びは大変ですが、ハマれるものを見つけると期待以上に英語が伸びます。ほどんどの子どもにはそういうツボはあります。根気よく探してみましょう。
身近な題材
教材の題材は、子どもにも理解できる身近なものが無難です。ファンタジーでも子どもが楽しめるなら問題ありませんが、日常生活で目にする世界を取り扱った教材に主軸を置きましょう。
覚えた英語表現を使ってみるのが学習の最終段階です。もし、身の回りのことと学ぶ英語が関連していなかったら、英語を使う機会が減ってしまいます。
私の息子は3歳のとき「工事車両」が大好きでした。工事現場で穴を掘るショベルカーを飽きもせず、ずっと観察していました。
あるとき英語の絵本にカッコいいショベルカーが登場しました。ショベルカーは英語で「excavator」ですが、大人でも知っている人はほとんどいません。ところが私が何度も読んでいるうちに息子はこの単語を覚えてしまいました。
さらに工事現場でショベルカーを発見すると、“Excavator!”と叫んだことがあります。もし、見たこともない動物や妖精が登場する話だけしか与えていなかったら、このように現実世界と英語を結びつける機会はなくなります。
幼児向けの教材では、身近な題材を扱ったものを基本に選びましょう。
続けやすい費用
子どもの英語教育全般にいえることですが、家計が苦しいのに無理をしてはいけません。それぞれの家庭で無理なく続けられる金額を超えないように気をつけましょう。
英語学習は長期間続けるものです。金額的に無理なことは続きません。あまりお母さんが我慢しすぎると、家族全員が幸せではない状態となります。
先述したように、教材だけで効率的な学習はできません。指導してくれる人にもお金がかかります。もし他にも習いごとがあれば、英語教材だけ無理をするのもおかしな話です。
全体のバランスをみながら、決して金銭的に無理をし過ぎないように気をつけましょう。お母さんの顔が引きつっていては、子どもは楽しく学習できません。
教材を利用して英語学習を進めるためのアドバイス
教材購入後、子どもへの教材の与え方について説明します。一つの教材について1か月~1年くらい取り組むので、取り組み方次第で効果はかなり違ったものになります。
日常生活に英語を取り入れる
教材でだけ英語に触れていると「勉強としての英語」の認識から逃れられません。やはり、何らかの形で生活の一部に英語を取り入れて、「道具として」英語を捉えるようになるのが理想です。
しかし、日本国内で英語を使う環境を求めてもほとんど不可能です。簡単に取り組めるものとしては「英語絵本の読み聞かせ」が有効です。「英語で楽しい読書タイム」を日課にできれば充分です。
教材で学んだ単語や表現の一部を子ども部屋に貼るのも良いアイディアです。英会話教室ではアルファベット表、カラフルなイラスト、英単語が壁にきれいに貼られています。
子どもは無意識に英語を眺めています。これらの装飾は「英語を使う」雰囲気づくりに大いに役立っています。
「英語で育児」をできるならそれが理想です。しかし、それをできるお母さんはまだまだ少数です。「子どもと英会話をしなくては」と大げさに考えて何もしないより、できそうなことから少しずつ取り入れたほうが結果に結びつきやすいです。
NGワードは「勉強」
子どもには「勉強」という言葉は極力使わないようにしましょう。「勉強」には「苦行」のような響きがあって、徐々に子どもは嫌がるようになります。英語だけならまだしも、他の学習にも支障が出ては最悪です。
お母さんひとりで何もかもやろうとすると、ときどき苦しく感じることがあるかもしれません。忙しいときは特に子どもと穏やかな気持ちで相手できないときもあります。
そんなときは土日はお父さんと一緒に教材に取り組んでもらいましょう。楽しみながら続けると、そのうち「幼稚園のお休みの日にお父さんとやる」暗黙の了解ができあがります。
お父さんがわからないふりをしてあげれば、子どもは積極的に教えてあげようと頑張り始めます。なぜなら、子どもは大人に教えてあげるのが大好きだからです。
これを続けていくと習慣化されます。幼児の集中力はせいぜい15分程度なので、仕事で疲れているお父さんにもなんとか協力してくれるようにお母さんから頼んでみてください。
まとめ
おさらいですが、幼児向け英語教材で後悔しないための原則は下記のとおりです。
「今しかない」のセールストークに惑わされない
高額な教材は避ける
絵本以外なら、映像・音声中心の教材を与えよう
子どもが夢中になる教材を利用しながら、お母さん自身が教えてあげたり指導者の助けを借りたりすることで学習効率は飛躍的に高くなります。
くれぐれも高いお金を支払ったあとで「もったいないから」と無理やり合わない教材を使用することのないように注意しましょう。どうしても不安なら、比較的低価格のオンライン英会話などからスタートして子どもの興味関心を確かめてからにしましょう。