突然ですが、通信講座にどのようなイメージを持っているでしょうか? 子どもの頃を思い出してください。毎月どっさり送られてくる教材に最初は意気揚々と取り組むものの、しばらくすると溜めてしまい、親に怒られながら課題を提出した…そんな経験ありませんでしょうか?
時代は変わり、今では紙の教材からタブレットやパソコンで学ぶ「デジタル教材」に移行しています。大手通信講座運営会社では小学生向けの英語にも力を入れています。従来のイメージのままでは、現在の通信講座を正しく理解することはできません。
「そろそろウチの子も英語を」と検討中のお母さんには、英語教室やオンライン英語レッスンだけでなく、通信講座も選択肢に入れることをおすすめします。自習を前提に構成されているので親が先生代わりになる必要はなく、忙しいお母さんにもぴったりです。
今回は、さまざまな観点から英語の通信講座をどのように選んだらいいのかを解説します。
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小学生の英語通信講座:教材はどうなっているか
通信講座といえば毎月大量の紙教材が送られてくるイメージがありますが、実際は違います。大手の運営会社が提供する内容を調べてみると、通信講座は2つの大きな柱から構成されています。それらは「タブレット(またはパソコン)を使った学習教材」と「オンライン英会話レッスン」です。
これら2つの柱に加えて、「紙のワークブック」が必要に応じて送られてきます。デジタル教材とアナログ教材の長所と短所を抑えて、それぞれが補完しあうように考えられています。以後、これらの内容について詳しく説明します。
パソコン、タブレットを使い4技能を伸ばす英語教材
先述のように、教材の大部分はデジタル化されています。英語だけでなく他の教科も同様です。このことから大量に溜まっていく教材の保管場所に頭を悩ませる必要はなくなりました。デジタル教材の長所は写真・図・音声・動画を駆使して、わかりやすく学習内容を伝えられることです。
以前、私は英語教師として授業をしていたとき気づいたことがあります。それは、生徒には「視覚・聴覚に強く反応するタイプ」と「文字に強く反応するタイプ」の両方がいることです。黒板に色分けしたチョークで図を描いたり矢印(→)で修飾関係を示したりするのはそのためです。
デジタル教材では文字解説も含まれますから、どちらのタイプにも理解しやすく工夫されています。英語の場合は音声面の学習が不可欠なので、デジタル教材との相性は抜群です。
このことから、デジタル教材では4技能の「Reading(読む)」「Listening(聞く)」「Speaking(話す)」「Writing(書く)」をバランスよく伸ばすことができます。紙のワークブックでは、どうしてもReadingとWritingに偏りがちでしたが、この弱点はデジタル教材では解消されています。
なおデジタル教材の場合、Writingは鉛筆と消しゴムが使えないのでタブレットのタイピングで補っています。記憶の面では鉛筆で書いた方が優れていますが、ついでにタイピングを覚えてしまうのも将来的には役立ちそうです。
オンライン英語レッスン
Speakingに大切なのは、英文の暗唱(インプット)と話す訓練(アウトプット)の2つです。英文の暗唱は音読を繰り返すことによって体得しますが、アウトプットは実際に話すことによってしか訓練できません。
ひとりごとのように話し続ける訓練法もありますが、小学生には難しいです。どうしても生身の人間を相手にして話す練習が必要です。これを低コストで実現するのが「オンライン英語レッスン」です。
大手の通信講座では標準セットの中に、「オンライン英語レッスン」が月1回含まれています。好きな日時に予約を取り、その時間になったらパソコンやタブレットを使用して講師と英語で会話をします。
レッスンは15分程度です。内容は普段の学習と連動しているので、極端に会話に詰まるようなことはありません。「タブレットで学習した英語を話したら本当に通じた」喜びは、継続するためのモチベーション維持に効果的です。
紙のワークブック
従来の紙のワークブックにも良いところはあります。目は疲れにくいし、鉛筆で書き込める手軽さはデジタル教材にはない長所です。
通信講座運営会社もその点は把握していて、半年に1回ほどの頻度で紙のワークブックを届けているところがあります。たまには鉛筆を手に、黙々とワークブックに取り組むことも必要である証拠です。
このように大手の通信講座は、2つの柱「タブレット(またはパソコン)を使ったデジタル教材」「オンライン英語レッスン」と、「従来の紙のワークブック」(プラス1)で構成されています。
それぞれの長所を活かし短所はお互いに補いながら関連づけられていて、うまくできているなと感心します。では、このような通信講座は、他の学習形態と比較してどのようなメリットがあるのでしょうか?
英語通信講座のメリット
通信講座のメリットのひとつは「費用の安さ」です。大手の受講料を調べてみると、英語だけなら月々約2,000円~3,000円で設定されています。英会話教室に通う費用と比べると3分の1~5分の1程度です。
学年が上がるにつれて教育費がかさむのは頭痛のタネです。しかし、通信講座をうまく利用すると費用を抑えることができます。
さて、小学生が英語を学ぶときは、英会話教室に通うとかオンライン英会話を受講するなど、いくつか形態があります。ここからは、これらの学習スタイルと比較して通信講座で学ぶメリットについて考えてみます。
英会話教室と比較して
お勤めをされているお母さんの悩みは「習いごとの送迎」です。通信講座は自宅で受講できるので、もちろん送迎不要です。車での送迎は、車の所有コスト・駐車代・ガソリン代・事故リスクなどを伴いますが、こうした悩みからも解放されます。
また、教室に通う場合は曜日と時間は固定されていますが、通信講座は子どもの好きなときに取り組めます。宿題や習いごとで忙しい小学生でも、すき間時間を利用して取り組めるのは大きな利点です。
タブレットを利用した学習は、反復トレーニングが必要な場面で威力を発揮します。英会話教室でも分からないところは繰り返し説明してくれますが、回数には限度があります。
一方、タブレットでの学習なら反復回数は無制限です。例えば、発音のトレーニングをするとき、“th”の発音がなかなかできないとします。英会話教室の先生は根気よく教えてくれても、せいぜい10分くらいが限度でしょう。
「動画を見て、口まね、発音・録音、発音のチェック」ができるタブレット教材では、時間も回数も無制限です。機械が相手なので、先生に遠慮することは一切ありません。自分が納得するまでとことん学習することができます。
紙のワークブックと比較して
「自由な時間に学習できる」利点は紙のワークブックも同じです。しかし、デジタルでしか実現できなかったこともあります。ここではデジタル教材ならではの3つの長所を紹介します。
一つ目は、デジタル教材はカラフルな図・絵、音声、動画などを組み合わせて学習内容がわかりやすく理解できるように工夫されていることです。また、正解を選べば拍手や「Good job!」と再生され、子どものやる気を高める工夫もされています。
二つ目は、解説が至れり尽くせりなので親の指導はほとんど不要なことです。これは忙しいお母さんにとって朗報です。わからないところがあると子どもの学習は止まってしまうので、自習を継続させるために大切なポイントです。
ただし、ときには親ができたところをほめてあげたり励ましたりすることは大切です。通信講座のなかには子どもの学習履歴がネットで確認できて励ましコメントを送ることができる「見まもり機能」がついています。仕事でいそがしくても、励ましのコメントを投稿できます。
三つ目のメリットは、復習をしやすいことです。既習事項を復習したいとき、紙のワークブックでは欲しい情報を探すのにひと苦労です。何かの原因で紛失してしまえば、探し出すことができません。
一方、タブレットを利用した教材は欲しかった情報をすぐに検索できます。万が一端末を紛失したり故障させたりしても、情報は残っているので安心です。
このようにデジタル教材には、費用を抑えられるだけでなく、英会話教室や紙のワークブックよりも優れている点が多くあります。次に、通信講座のデメリットにはどのようなものがあるのか見ていきましょう。
英語通信講座のデメリット
おそらく通信講座を検討しているお母さんの心配事のひとつは、「子どもが継続できるかどうか」です。いつでもどこでも勉強できるのはメリットですが、同時にデメリットでもあります。
つまり、強制力がないので自分でやる意志がないと、学習を始めないからです。この問題に対処するには、2つの方法があります。「おもしろい教材を与える」方法と「あえて学習時間を事前に決める」方法です。
おもしろい教材は、子どもに英語学習は楽しいと感じさせるためです。教材のレベルをきちんと子どもにあったものを選んだり、子どもの興味を惹くような教材の内容であるかをチェックしたりすることで、ある程度は解決できます。
この点については、運営会社も努力をしています。インターネットに接続していることを利用して、運営会社は会員のデータを大量に収集しています。これは全国の子ども達の学習パターンを分析するためです。
例えば、成績優秀な子ども達の学習パターンを集めて、効果的な使い方を紹介できます。また、子どもが飽きたりつまずいたりする学習事項も細かく特定できるので、その部分の説明をより興味を惹くように改善しています。
このようにして通信講座の運営会社は、子どもが少しでも継続できるような教材開発に力を入れています。
もう一つの「あえて学習時間を事前に決める」方法は、意志の弱い子どもに有効です。例えば、時間割を作ってしまい、自宅での学習もそれに従って淡々とこなすようにします。
オンライン英語レッスンを利用して、習慣化することも可能です。オンライン英語レッスンは事前に予約が必要です。子どもはその内容を先に学習しないと困ったことになるので、自らすすんで勉強するようになります。ちょっとした強制です。
どのような方法をとるかは、子どもの性格や各家庭の事情に合わせて考えてください。自習を前提としてうまく作られている通信講座の教材ですが、お母さんが時間のあるときに学習状況を確認するだけでも、継続率は向上します。
タブレットを使うと眼は悪くなる?
デジタル教材の良さばかりに注目してしまいがちですが、長時間近い距離からモニターを見つめていると子どもの眼に負担がかかります。一回の使用に上限を設けたり、ときどき窓の外の景色をしばらく眺めたりして、眼を休ませましょう。
専用タブレットの中には使用時間を設定できる機能が付いているものもあるので、そういったものを利用することも検討しましょう。
英語の通信講座を選ぶときのポイント
小学生向けの英語通信講座はいくつかあります。これらの中から、どのようなポイントに気をつけながら最適な通信講座を選んだらよいのかを解説します。
ネット環境は整っているか
タブレットやパソコンの使用が前提となっているので、自宅に安定したインターネットの環境があるかどうかを確かめてください。同じ家の中でも部屋によっては通信速度が遅くなる場所が発生するので、子どもが学習するエリアでの確認が必要です。
動画を再生するのに問題なければ、通信速度の心配はありません。
専用タブレットかどうか
選択する通信講座によって、既に持っているパソコンやタブレットでの受講が可能なものと、提供会社が指定する専用タブレットを使用するものの2パターンがあります。費用的には前者の方が抑えられるのはいうまでもありません。
専用タブレットの場合は、最初にタブレットの購入費用が約1万円発生します。タブレット端末としては決して高くありません。問題は短期で解約したり子どもが落として故障させたりしたときに、初期費用以上の金額を請求されることです。
例えば、6か月未満の短期で解約すると、約3万円のタブレット代金を請求されることがあります。故障の際の交換対応では、有料保障サービスをつけないと4万円近い金額を請求されます。
いずれにしても、タブレット関連で発生しうる費用に関しては、事前に慎重に調べましょう。
専用タブレットにも長所はあります。子どもの利用を主体に考えて設計されているところです。例えば、有害なホームページの閲覧をできないようになっていて、インターネットでの検索に使用しても安心です。
また、子どもの使用を考えて一般的なタブレットよりも耐久性を重視した造りになっており、壊れにくくなっています。
レベル設定・コースの選定は慎重にする
受講レベルの設定は子どもの継続意欲に大きな影響を与えるので、慎重にしましょう。変更手続きは簡単にできますが、新しい教材が配信されるのは翌月からになります。
難易度だけでなく、コース選びにも注意しましょう。普通に基礎的な英語を学ぶだけなら問題ありません。でも、「英検対策をしたい」など具体的な目標がある場合は、それに対応したコースを選びましょう。
レベルやコースの変更によって、費用が変わることがあるので確認が必要です。
英語だけでも受講できるか
小学生の通信講座は国語・算数・理科・社会が主体です。これらの教科に追加して英語を始める場合は特に問題はありません。しかし、「英語だけを受講したい場合」には、個別の受講は可能かどうか確認をしましょう。
また、これまでも他の教科を受講していて、あらたに英語を追加する場合は割引が適用されることがあるので、調べたほうがお得です。
過去の復習をできるか
デジタル教材の強みの一つは、復習が容易であることは先述したとおりです。この特性を生かすためにも、過去の教材を利用できるかどうか、きちんと確かめましょう。幸いほとんどの通信講座では、受講期間中の復習は問題なくできるようです。
小学生向け英語通信教育:肝心の効果は
英語の学習を継続する際の大きな壁は、上達を実感しにくいことが挙げられます。例えば、算数では足し算のひっ算を学習したら、その場で正解が出せるようになり達成感を得られます。
一方、英語の場合、複数形の勉強をしても英会話力が向上することはほとんどありません。すべての技能が複雑に絡み合っているので、効果を実感するまでに相当な時間がかかります。
お母さんが最も気になるのは、英語の通信講座を受講して、どのくらい英語力が向上するのかということでしょう。特に、英語教室に通った場合と比較しての効果を知りたいはずです。
しかし、実際に効果を正確に測定するのは難しいことです。子どもの能力はそれぞれ異なるので、他の子どもと比較しても通信講座の正しい評価にはなりません。
英語教室に通っている子どもより通信講座を受講している子どもの方が英語が上達した場合、それは学習形態の違いよりも学習時間や頻度に影響を受けているかもしれません。
たった週1回の英語教室だけで済ませている子どもと、毎日15分程度英語に触れている通信講座の生徒では後者の方が伸びる可能性は高いです。しかし、毎日の音読練習を取り入れれば英語教室に通っている生徒が上回る可能性もあります。
このように通信講座の正確な評価は難しく、個人の体験を一般化することは適切ではありません。しかし、これでは通信講座がいいのか悪いのか判断材料がなくなってしまいます。そこで、デジタル教材の特性を考えてどのような段階の学習者に通信講座は最適なのかを考えてみます。
初期の基礎的な学習には効果的
英語学習において基礎はとても大切です。とりわけ、フォニックス(音とつづりの関係)や英語独特の発音方法などの音声面はこの学習初期に身につけさせたいものです。
私は「基礎的な学習には通信講座はかなり効果的である」と思っています。我が家では、子ども達はすでにこのレベルを超えてしまったので検証できません。しかし、デジタル教材の特性を考えると、音声面の基礎的な学習には利用価値が高いと考えます。
例えば、thの発音の仕方を例にとってみましょう。デジタル教材では、上下の歯の間に軽く舌を挟んで空気を出す様子を動画で見られます。モデルの音声は何度でも再生できて、自分の声を録音して正しい発音ができているか確認もできます。
タブレットではその気になれば何時間でも反復訓練できます。英会話教室の先生も根気強く指導してくれるかもしれませんが、さすがに何時間もというわけにはいきません。
「英語で伝える」という点においてはネイティブのような発音を目指す必要はありません。ほどほどでいいのです。しかし、上手に読める自信をつけた子どもと、そうでない子どもでは英語に対する興味関心は確実に変わってきます。
このような理由から、英語がゼロの状態から音声面の基礎を学ぶ段階においては、デジタル教材をつかった通信講座は利用価値が高いと私は思います。
ある程度まで達成できたら、一度やめるのもアリ
では、英語の基礎を身につけた後も通信講座は効果的でしょうか? この点については、私も正直判断が難しいです。とりあえず受講して1年経ったところで、「英検」や「英検Jr.(小学校低学年・幼児向けの英検)」を受験することをおすすめします。
できれば半年後にもう一度受けて、スコアの推移を観察してみましょう。もしスコアが順調に伸びていて子どもも続けたいと言っているなら、そのまま継続で問題ありません。
もしスコアの伸びが今一つだったり、子どもがあまり乗り気でなかったりする場合は一度やめて、別の計学習形態に変更することも検討してみましょう。
基礎がある程度身についた後は、より深く幅広い学習を求められるので、タブレットだけで済ませるには無理が生じます。本をたくさん読んだり、自分のことをいろいろと書いてみたりして暗唱するような学習にはタブレットは向いていません。
子どもの英語の伸びが鈍くなったのは「成長のサイン」です。このサインを見逃さないように、学習方法や学習形態が子どもの実情に合っているかどうかを常に見極めることが大切です。
まとめ
小学生が英語を学ぶときには、英会話教室、オンライン英語レッスン、通信講座、eラーニング、音読を中心とした自習などさまざまな方法があります。子どもの性格・レベル・家庭の事情によりどれが適しているのかは一概に決められません。
どれを選んだとしても、週1回程度の頻度ではほとんど上達は見込めません。通信講座は毎日少しずつ学習するように設計されていますから、英語に触れる頻度は格段に増します。
最初に選んだ学習方法が最適なのかどうか、ときどき「英検」や「英検Jr.」を活用しながら、客観的に判断するのが望ましいです。通信講座では親が常に見守る必要はありませんが、時間があるときは学習を見てあげると子どもの成長を感じたり、つまづきに気づいたりすることができます。
これまで見てきた通り、通信講座には良い点がたくさんあります。子どもの英語を伸ばすためのひとつの方法として頭に入れておきましょう。