私は以前、海外に住んでいたときにあるチャットグループに参加していました。スマートフォンでアプリを開くと参加者のプロフィール画像が見られます。それらの写真とひとことコメントはどれもアピール力がとても強く驚きました。
「これはハリウッド女優か?」と見紛うまでに加工された自撮り写真は、笑顔で自信に溢れています。日本人ならそもそも自分の顔をアップで載せる人は少数派なので、これは大きな文化的な違いといえるでしょう。
子どもの自己紹介においても状況はまったく同じです。日本なら名前や年齢を言って、「よろしくお願いします」で終わらせてしまうのが一般的です。しかし、英語で同じように自己紹介すると、圧倒的にアピール力が足りません。
英語での自己紹介で最も大切なのは、「フレンドリーさ」「ポジティブ感」の演出です。そのツボさえ押さえれば、簡単な英語表現でも「ワンランク上」の自己紹介ができるようになります。
今回は小学生でもできる「ワンランク上の英語で自己紹介」について詳述します。
Contents
Hello, my name is ~. I’m ~ years old. で終わり?
英語の授業で子どもに自己紹介をしてもらうと、ほとんどの子は “My name is ~. I’m ~ years old.”まではスムーズにいえますが、その先が続けられません。主な原因は準備不足にあります。
自己紹介は、最も準備しやすいテーマです。自分自身のことなので、ひと通り英語でいえるようにしておくといろいろな場面で活用できます。
このときのポイントは、自己紹介の「構成」と「英語表現」です。自己紹介にはある程度決まり切った型(テンプレート)があるので、これを意識しながら原稿を練り上げるといいです。
まずは実際のインターナショナルスクールに掲示されていたYear 6(日本の小学5~6年生)による自己紹介の例を見てみましょう。
みんなの前で口頭で発表するなら、日頃の音読練習がモノを言います。
ネイティブの実例を見てみよう
あるインターナショナルスクールの男の子と女の子それぞれ二人ずつ自己紹介文を掲載します。Prefect(風紀委員のようなもの)のメンバーで、学校の生徒向けに掲示されていたものです。
これらを参考にすると、英語学習中の小学生でもワンランク上の自己紹介ができるようになります。
男の子1
My name is Tim. If you are in trouble, come talk to me. The class I’m in is 6JM. I’ll try and sort any mayhem. The house I’m in is Yellow house. I was chosen as a prefect by Mr. T(校長先生の名前).
I was born on the 12th of February. I’m always smiling and merry. I enjoy all kinds of sports. I’ll usually be in the four-square court.
I hope to see you around the school. I’ll make sure you follow every rule.
和訳
僕の名前はティムです。困ったことがあるなら、話に来てください。僕のクラスは6JMです。どんな騒動でも対処しますよ。僕のハウス(縦割りに色分けして競い合う)は黄色です。T校長先生によって、風紀委員に選ばれました。
僕は2月12日生まれです。いつでも笑顔で陽気です。あらゆるスポーツが好きです。いつも「フォー・スクエア・コート」にいますよ。
学校で会えるといいですね。みんなが規則を守っているかどうかを確認します。
女の子1
Hi there, kids! For you who don’t know me yet: I am Eliza from 6JA and one of the school prefects.
Here is a short fact file: I am in yellow house. I don’t have a favourite colour because I like all colours.
I wanted to become a prefect so that I could help the school and you.
If you need help with something on the field, you can look out for me for help.
和訳
やあ、みなさん。まだ私を知らないあなた方のために。私は6JAのエルザで、学校風紀委員の一人です。
こちらは(私の)簡単な調査ファイルです。私は黄色のハウスです。私はお気に入りの色はありません。全部の色が好きです。
私は学校とあなた達を助けるために風紀委員になりたいと思いました。もし、校庭で何か助けが必要なら、私を探してくださいね。
男の子2
I want to take on the role of the Prefect because I have a thirst to contribute to the school community by helping to ensure my fellow school mates abide our 学校名’ rules and regulations including the 8 Golden Rules.
(中略)
Now a little bit about myself. I enjoy playing tennis, swimming, football, and basketball. These activities have prepared me to be tolerant, tenacious and work effectively in a team. I have been with 学校名 since Nursery and I feel very honoured to be a part of the Prefect Team. Have a pleasant day!
和訳
私が風紀委員の役を引き受けたのは以下の理由からです。学校の仲間たちに校則と8ゴールデン・ルールを含めた規則を確実に守ってもらう手伝いをすることで、学校に貢献したい渇望があるからです。
ではここで少々私のことを。私はテニス、水泳、サッカー、そしてバスケットボールをするのが好きです。これらの活動を通じて学んだのは辛抱強さと粘り強さそしてチームの中で効果的に働くことです。私はこの学校に保育園の頃からいます。そして風紀委員の一員であることにとても誇りを感じています。それでは良い一日をお過ごしください!
女の子2
Hi! My name is フルネーム and you can call me Ting. I have been in 学校名 since nursery till Y6, so 学校名 has been in my life for 8 years.
I wanted to be a prefect so that I can help the school and the children. You can find me around school wearing a prefect badge and I could be the one to open your car door each morning.
My interests are swimming, cooking, reading and having fun with my friends. When I grow up, I want to be a travel journalist and travel around the world. What do you want to be when you grow up?
和訳
やあ! 私の名前は〇〇です。ティンと呼んでね。保育園から6年生までずっとこの学校にいます。だから学校は私の人生の中の8年間を占めています。
学校や子ども達を助けるために風紀委員になりたかったのです。学校では風紀委員のバッジをつけている私を見つけられます。そして毎朝車のドアを開けている一人かもしれません。
私の趣味は水泳、料理、読書そして友だちと遊ぶことです。大人になったら、旅行記者になって世界中を旅してまわりたいです。あなたは大人になったら何になりたい?
自己紹介のパターン
4人の子ども達の自己紹介文を掲載しました。よく読むと共通する構成や順番があることに気がつきます。これらをまとめてみましたので、子どもの自己紹介文を作成するときの参考にしましょう。
呼びかけ
以前、日本人学校に交流会に来たインター校の生徒達が日本人の生徒と記念撮影をした写真を見たことがあります。印象的だったのは、日本人の子ども達は全員真面目な表情で写っているのに対して、インター校の生徒達は全員歯を見せてニッコリと笑っているのです。
これは文化による違いです。日本人は記念撮影の際は真面目な表情をするように求められることが多く、外国人との記念撮影でもつい真面目な表情をしてしまうのです。環境によってこのような行動を取るのです。
その証拠に、インター校で育った日本人の子どもはカメラを向けるとすぐに笑顔を作ります。日本人が条件反射的に「ピースサイン」をするようなものです。
話がそれました。英語で自己紹介するときは、つかみの部分で「フレンドリーさ」を演出しましょう。写真なら笑顔が大切です。英語表現については後述します。
名前・所属・年齢
名前・所属・年齢はきっちりと書いておきましょう。定型表現で乗り切れるので、簡単に覚えられます。
ちなみにY6JMとはクラス名です。最初のY6はYear 6(6年生)のことです。これに続くアルファベットの2文字は、担任の先生のイニシャルです。例えば、担任の名前がHarrison Fordだったら、Y6HFとなります。
日本の学校なら6th grade, class 2(6年2組)と表記すれば大丈夫です。
出没箇所
正直私も戸惑ったのですが、「学校のどの辺に行けば自分に会えるか」の謎アピールです。日本の小学生はこのようなことは書きませんが、なぜかこの学校では半分の生徒がそのことに触れています。
おもしろい自己PRなので、日本の小学生でも書いてみるとおもしろいです。英語表現については後述します。
好きなことや性格
定番の説明です。自分の好きな色、スポーツ、自分の特徴などが該当します。これもできるだけポジティブな情報を盛り込みましょう。
一見つまらなさそうな情報でも、その人の性格を判断するのに貴重な情報となることはよくあります。「血液型はB型なので…」のような説明に科学的根拠は皆無です。しかし、そんな情報でさえも読み手(聞き手)は勝手に想像を膨らませてくれるからです。
将来なりたいもの
これも定番の情報です。なりたい職業を伝えるとその人の「性格や得意なこと」をイメージしやすくなります。だからこれらの情報を自己紹介に入れると効果的です。
締め
やはり締めの言葉がないと自己紹介が締まらないので、ひとこと入れるようにしたほうがいいです。簡単に“Have a pleasant day!”(良い一日を)で充分です。
役立つ英語表現
ここからは、先ほど紹介した自己紹介の構成順に、英語でどのように表現していくのかを具体的に説明します。最後に自己紹介の例文(全文)を掲載したので、参考にしてください。
呼びかけ
冒頭の部分は、小学生の子どもなら“Hi, there!”(やあ、こんにちは)くらいの調子で始めるとフレンドリーさを演出できます。簡単に “Hello!” で始めてもいいです。
- 呼びかけ表現のまとめ
名前・所属・年齢
“My name is ~.” と教科書的に名前を伝えるだけでも悪くはありません。しかし、ここではもう一つだけ文章を足してこのような表現にしましょう。
“My name is Kentaro Kawasaki(フルネーム), and you can call me Ken(呼び名).”
冒頭でのフレンドリーさを演出した流れをそのまま受け継いで、フルネームを伝えた後で呼び名も追加します。「〇〇って呼んでね」と言われたら、グッと親しみやすくなります。
次に所属の紹介です。先述のとおり「〇年〇組」の表現は英語圏では一般的ではありません。担任の先生の名前を使って表現します。例えば、“I’m in Mr. Smith’s class.” (私はスミス先生のクラスです)となります。
日本式のクラス(例えば4年3組)を英語で表現すると、「(序数)grade, class(組番号)」(4th grade, class 3)となります。
英語表現は、“I’m in 4th grade, class 3.”で大丈夫です。ネイティブの英語表現を真似すると、“The class I’m in is ~.”(私のいるクラスは~です)となります。“The class I’m in is 4th grade, class 3.”です。
最後に年齢です。“I’m ~ years old.”(私は~歳です)は小学生でもなじみのある表現です。よくあることですが、もうすぐ誕生日が近づいている場合(公開される頃には歳が変わっている)とか、つい最近誕生日を迎えた場合の表現も覚えておきましょう。
たとえば、現在10歳でもうすぐ11歳になる場合は次のようになります。“I’m 10 years old, but I’m turning 11 soon.” また、11歳になったばかりなら、“I turned 11.”となります。覚えておいて損はない表現です。
- 名前・所属・年齢に関する表現のまとめ
出没箇所
日本ではあまりなじみのない「出没箇所アピール」ですが、斬新なので取り入れてみましょう。
たとえば鉄棒が好きで、休み時間はいつもそこにいるのなら次のようになります。“You can find me around the bars.”
また、見た目の特徴があるのならそれについても触れたほうがいい自己紹介になります。例えばハリーポッターのような丸いメガネをかけているならこのようになります。“You can find me around the school wearing round glasses like Harry Potter.”
- 出没箇所の表現のまとめ
好きなことや性格
ここでのおすすめ英語表現は2つあります。ひとつめは、“I enjoy ~ing.” です。3つ挙げるなら、A, B, and Cです。4つならA, B, C, and D(最後のandの前にはカンマを入れましょう)。ふたつのときは、A and Bのように単純にand でつなぎます。
“I enjoy playing tennis, swimming, and basketball.”
もう一つの表現方法は、“My interests are ~.”(私の関心ごとは~です)。特にこれといった趣味がない場合でも、悩む必要はありません。
“My interest is having fun with my friends.”(私の関心ごとは友達と楽しく過ごすことです)程度でもかまいません。
低学年なら好きな色を紹介するのも、手軽でおすすめです。日本人の会話では血液型からその人の性格を連想することが多いですが、これと似たような感覚です。簡単に“My favorite color is blue.”のように伝えれば充分です。
- 好きなことの表現まとめ
将来なりたいもの
将来なりたい職業などに触れておくと、自分のことをより詳しく知ってもらえます。これも定型文があります。“When I grow up, I want to be a ~.”(大人になったら、~になりたい)とストレートに伝えましょう。
- 将来なりたいもの表現のまとめ
締め
締めの言葉です。あくまでも「フレンドリーかつポジティブに」が基本です。
あいさつ的に終わらせるなら、簡単に“Have a nice day!” で大丈夫です。頼りがいのある自分をアピールするなら、“If you need help with something, you can count on me.”(もし何か困ったことがあるなら、ボクに任せて)くらい強気でオーケーです。
- 締めの表現まとめ
- 自己紹介例全文
Hi, there! My name is Kentaro Kawasaki and you can call me Ken. I’m in 5th grade, class 1. I’m 10 years old, but I’m turning 11 soon.
You can find me in the library wearing round glasses like Harry Potter.
My interests are swimming, football, and reading. My favorite color is red. When I grow up, I want to be a policeman.
If you need help with something, you can count on me!
自己紹介をする機会は人生で多い
自己紹介をする機会は新学期だけではありません。インターネット上でのブログやフェイスブックなどには自己プロフィール欄があり、これらも自己紹介と同じです。
実は私自身、このような自己紹介欄を埋めるのがとても苦手です。なぜなら、自分の良い面を伝えることを遠慮したり、あまりにも他人の評価を気にしすぎたりするからです。つい無難な事実だけを書いてしまいがちです。
自己紹介で最も大切なのは、「フレンドリーさ」や「ポジティブさ」の演出と他人から覚えてもらうことです。嫌な部分は明かす必要はありません。
子どものうちに自己紹介の定番パターンを身につけておくと、その後の人生で何度も役にたちます。そしてそれが就職活動の自己PRにも少なからず影響を与えることになります。
英語で自己紹介することを通じて、自己紹介パターンを持つことはとても役に立つことなのでおすすめです。
まとめ
自分のことは書く内容に困ることはありません。決まりきった英語表現を使いこなすだけでも、名前や年齢だけに触れる自己紹介よりもワンランク上の自己紹介ができるようになります。
自己紹介は一度作ったら、そのまま放置するものではありません。年齢とともに情報を入れ替える必要があります。また、もっと高度な内容を盛り込みたくなってくるものです。
そのようなときは身近に利用できる英語の先生を見つけて、アドバイスをもらうといいでしょう。「〇〇のように書き直したいけれど、どうすればいいですか?」と質問すれば、きっといいアイデアをもらえるはずです。
写真付きの自己紹介なら、笑顔も忘れないようにしましょう!