私の近所に英語で保育をするインターナショナルプリスクールがあります。自宅前の道路は子ども達の散歩コースになっていて、ネイティブの先生と歌を歌いながら歩いていきます。
蝶やトンボを見つけるとIt’s a butterfly! と叫んでいる様子や英語の歌を上手に歌うのを見ていると、この年代の子どもにはネイティブ講師が向いているんだろうなと感じます。
一方、小学校高学年の子どもを教えるときは、日本人講師が文法を説明したり単語の使い方を解説したりしたほうが、英語が伸びるケースが多いです。
子どもに英語を習わせるとき、外国人講師から学ぶのがよいのかそれとも日本人講師から学ぶのがよいのか迷うことがあります。
結論からいえば、どちらも長所と短所があり、子どもの年齢や目的に合わせて上手に使い分けるのがベストです。
そして英語の講師を選ぶとき、外国人か日本人かということ以上に大切なポイントがあります。これらのことをしっかりと理解して、お子さんの英語スクールや先生選びに役立てましょう。
Contents
外国人講師の長所と短所
外国人講師といっても、英語圏のネイティブとフィリピン人など(主にオンライン英会話の講師)のノンネイティブに分かれます。
今回の記事では両者を分けずに、英語を話す外国人講師として話したいと思います。
外国人講師の長所
- 英語表現が豊かで自然であること
英語表現が豊富で自然であることは強みです。簡単な英単語を使うときでも、日本人はそのニュアンスに迷うことが多いです。
例えば、watch/see/look atの使い分けです。これくらいなら日本人講師でも説明できますが、英語にはこのような紛らわしい単語や表現がたくさんあります。
英単語が持つニュアンスを感覚的に理解できない日本人講師が苦手な分野です。
・発音やイントネーションがネイティブ
当然ながら、発音やイントネーションが英語ネイティブレベルのため、それをまねして声を出していけば、当然彼らの発音に近くなります。スピーキングやリスニング能力に良い影響を与えるでしょう。
・文化的な違いを教えてくれる
外国語を学ぶときはその国の文化についても深く学ぶことになります。留学や移住経験がない日本人講師の場合、外国の文化について学習者に伝えるのが難しいです。
海外ドラマを見ていた時のことです。クリスマスに主人公の男がヤドリギの下で好きな女性にキスをして次の瞬間「バシッ」と平手打ちされたシーンがありました。
クリスマスのときは、mistletoe(ヤドリギ)の下にいる少女にキスをしていいという習慣を知らなければ、なぜ彼が突然キスしたのか、何がおもしろいのかがわかりません。
外国文化の理解は英語への興味関心を高めてくれるきっかけになります。外国人講師が得意とする分野です。
・子どもが外国人慣れする
何かを鍛えようとするなら、そのものをやるのが一番です。英語でスピーキングを強化したいのに、リーディングばかりしていては成長が見込めません。
海外未経験の子ども達に外国人と話すことに慣れさせたければ、実際にさせるのが手っ取り早いのは間違いありません。
小学校での英語必修化にともない外国人講師が教えることは珍しくなくなりました。私の印象では以前より外国人慣れしている子どもが増えたと感じます。
外国人講師の短所
圧倒的に有利に見える外国人講師にも短所はあります。子どもの先生やスクールを選ぶ際には短所もしっかりと把握しておかないと、過剰な期待をしてトラブルの元となります。
・日本語がわからず親の細かい要望が伝わらない
英会話スクールに子どもを通わせると、講師と親のコミュニケーションは大事です。子どもの性格やレッスンの様子の情報を交換することで、よりきめ細やかな指導ができます。
ところがまったく日本語ができない外国人講師の場合、親が英語を話せない限り子どもについての情報交換をすることができません。
スクールによっては日本人講師が間に入ってサポートしてくれるところがありますが、必ずしもうまくいくとは限りません。
・英文法を上手に説明できない
外国人講師が最も苦手とする分野です。考えてみれば当然ですが、母国語は文法を意識して学んだわけではないので、特別な勉強をしなければ人に教えることはできません。
日本語で例を挙げてみます。「公園に遊びに行く」と「公園でサッカーをする」の「に」と「で」の使い分けを論理的に説明するのは、普通の日本人には難問です。
英文法に関しては日本の学校教育が最も力を入れている分野なので、教えるレベルの差が目立ってしまいます。
・日本人講師ほど細かい配慮をしない
マレーシアに住んでいるときに、息子が通うインターナショナルスクールの担任の先生を見ていて、先生の役割の違いを感じました。
授業が終わりランチタイムになると先生は職員室に移動して、そこでお昼ごはんを食べます。お昼の時間は先生は完全に休み時間です。このときに起きる生徒同士のトラブルは基本的に両者の間で解決します。
このような環境で育った外国人講師と日本の先生しか知らない親の間で何かトラブルが生じると、「なんて薄情なんだ」とか「責任感がなさすぎる」と感じることもあるでしょう。
外国人講師は英語のレッスンについてだけ責任がある、と理解しています。レッスン以外のことについてはノータッチです。
このように英語がペラペラの外国人講師にも長所と短所があります。子どもが5歳くらいまでの幼児には文法から入るアプローチはNGなので、指導に慣れた外国人講師のほうが良い結果が得られることが多いかもしれません。
日本人講師の長所と短所
では、日本人講師の長所と短所について説明します。ここでの日本人講師とは、英語が得意な「日本で生まれ育った人」という意味です。例えば日系アメリカ人はネイティブと同じなので日本人講師ではありません。
日本人講師の長所
・生徒からの細かい質問に対応できる
当然日本語ネイティブなので、生徒からの細かい相談や質問にきめ細かい対応ができます。例えば、「辞書はどれを買ったらいいですか」という質問には、日本人講師でないと適切な回答はできません。
「本領発揮って英語でどのように表現したらいいでしょうか」という質問も、「本領発揮」という日本語を理解していないと正しい答えを返せません。
このように生徒からの英語に関する質問に細かく対処できるのが日本人講師の強みの一つです。
・英文法は得意なので、教え方もうまい
「英文法」に関しては日本の英語教育は成功しています。英文法は語彙とともに英語学習の核となるものです。
小学4年生以上が外国語を学ぶときは、幼児が母国語を学ぶように自然と習得することができなくなります。その代わり、論理的に言語を学ぶ能力が高くなるので、文法を学ぶアプローチは大変有効です。
文法偏重であってはいけませんが、わかりやすく英語の文法、特に語順を子どもたちに教えられる日本人講師は貴重な存在です。
・英語学習者の苦労がわかる
日本語と英語は構造的に対極にある言語で、習得が難しいといわれています。日本人が英語をマスターするまでに約2~3千時間を必要とします。日本人講師はそれだけの時間を英語に費やしてきたので、学習者の悩みや苦労を理解してくれます。
海外に留学しなくても英語をマスターできる、という見本になるため、子ども達にとってはいい刺激になるかもしれません。
日本人講師の短所
・英語表現が不自然
かなりの英語上級者であっても、ネイティブには英語表現の豊かさやスピーキングにおける流暢性はかないません。いわゆるネイティブ表現などは教科書などでは登場しないため、長期間留学した人以外は知らないのが普通です。
発音もコミュニケーションには充分でも、ネイティブ並みとまではいかないことが多いです。日本人講師の英語を何時間聞いても、リスニング力の向上にはあまりつながらないと考えたほうがいいです。
・生徒がなんとか英語で伝えようとしなくなる
日本人講師が相手だと、生徒は日本語が使えるため、必死になって英語を話そうとしなくなります。つい日本語に逃げてしまいます。
苦しみながら英語をつないで何とか相手に伝えるのも大切なトレーニングですが、日本人相手にそこまでする生徒はほとんどいません。
日本人講師は、文法を中心に教える能力は高いです。特に9歳以上の子どもには論理的な英語学習が有効になるため、文法を効率よく教えられる日本人講師のほうが向いているといえます。
先生選びの究極のポイント:〇〇を伝える指導者であるか
ここまで外国人講師と日本人講師の長所と短所をそれぞれ詳しく見てきました。私も両者を比べる機会が多々ありましたが、外国人講師でも英文法を熟知している人も多く、例外はあることをご承知おきください。
最後に、私が考える英語の「先生選びで最も大切な究極のポイント」があります。それは、
ということです。お母さん達に強調しておきたいのは、「声を出す」重要性を伝えないような先生には絶対に子どもを預けてはいけません。
極端な言い方をすると、その先生がどれくらいの英語力があるかなどはそれほど重要ではありません。それよりも、英語を音読しないと英語は上達しない、というただ一つのメッセージをきちんと伝えられるかどうか、のほうがはるかに大切です。
私はこれまでたくさんの中学生に英語を指導してきました。もちろん私は音読の重要性を事あるごとに強調していますし、授業中も何度もいろいろな角度から音読させます。
しかし、残念なことにこれくらいの年齢になると、なぜか皆声を出しません。残念なことです。
中学入学前までに英語学習は「声を出す」ことが基本ということを身につけるだけで、英語が得意になります。
残念ながら中学になってからだと、ほとんどの場合手遅れです。外国人講師でも日本人講師でも構わないので、子どものうちに英語を口から出すことを上手に促してくれる先生を探すようにすることが、英語を話せる子どもを育てるポイントです。
まとめ
外国人講師にも日本人講師にも長所と短所があります。外国人講師は英語表現が豊かで自然であり、この点については日本人講師はかないません。また、母国の文化に精通しているため、子どもは言語以外のことについても学ぶことができます。
しかし、英語力が未熟な生徒からの質問や親とのコミュニケーションは苦手です。また、英文法については特別な訓練を受けていない限り、日本人講師に軍配が上がります。
日本人講師の良さは、日本人学習者の気持ちを理解し、きめ細かい指導ができるところです。9歳以上の子どもには英文法からのアプローチが効果的ですが、日本人講師が得意とする分野です。
一方、発音や英語表現の豊かさにおいてはネイティブにはかないません。また、生徒は英語を使ってなんとか伝えようとするかわりに、日本語を使って逃げるようになります。
このように外国人講師と日本人講師それぞれに一長一短があり、子どもの成長段階や英語力に合わせて使い分けるのがベストです。
さらに、最も大切なことは英語学習において「声を出す」ことの大切さを子どもたちに伝えられているかどうかです。音読は語学の基本ですが、中学生以降になると生徒は音読をしなくなります。
中学入学前に「英語学習=音読」くらいの習慣を身につけられれば、その後英語が得意になる可能性はかなり高くなります。
講師が外国人か日本人かだけでなく、この点をしっかりと伝えられる先生に子どもを預けることが重要です。.