博報堂こそだて家族研究所が実施した「子どもの習い事・身につけさせたいスキル」に関する調査があります。この調査によると、子どもに身につけさせたいスキルは「英語/英会話」がダントツの一位でした。(参照:博報堂こそだて家族研究所)
学校における必修科目として英語の存在感が大きいことが理由です。また、「義務教育期間中はずっと英語の習い事を続けて欲しい」と望んでいるお母さんが多いようです。
英語の習い事とは多くの場合、英語教室のことを意味します。ところが、いざ英語教室を探すとなると何からスタートすればいいのかわかりません。ママ友のクチコミは参考になりますが、これだけでは決め手になりません。
スマートフォンで検索すれば英語教室の情報を得ることはできます。でも、情報が多すぎてかえって選べなくなります。そこで、「どのような手順で探せば優良な英語教室を見つけられるか」を順に解説します。
Contents
英語教室の強みとは?
英語教室に子どもを通わせることは、「子どもの英語教育の一部を外注する」ことと似ています。そのような視点で考えると、英語教室に通わせる主な理由は以下の3つになります。
- 自分ができないことを英語教室にお願いする
- 自分でもできるが時間や効率の関係であえて英語教室にお願いする
- 家庭教師やオンライン英語教室(スカイプ英会話)ではできないことを英語教室にお願いする
1と2の理由を即答できる人は多いです。子どもに自信をもって英語を教えられるお母さんは限られていますし、子どもの英語教育のために充分な時間を割ける人は少数派だからです。
しかし、最も重視すべき項目は3です。英語の先生を探すだけなら、家庭教師やオンライン英語教室(スカイプ英会話)などの選択肢もあります。ただ、実店舗型の英語教室には、これらにはない強みがあります。まずは、その強みを知る必要があります。
私が考える英語教室の強みは、先生と生徒が同じ空間で英語のレッスンができることです。また、一緒に学ぶ仲間がいることもプラス材料です。
例えば、ワークブックに色を塗ったり文字を書いたりする学習は英語教室では簡単ですが、オンラインでは難しいです。ゲームなどのアクティビティは同じ空間に仲間がいないと成立しません。
このように、実店舗型の英語教室には家庭教師やオンライン英語教室にはない強みがあります。これを理解した上で、英語教室に魅力を感じるなら、具体的に選ぶ作業に移ります。
子どもの英語教室の決め方:事前調査の手順
手当たり次第に体験レッスンに申し込むのは時間の無駄です。事前調査はスマートフォンがあればできます。ここでは数か所に絞り込むまでのステップを5つに分けて順に解説します。
通える範囲の英会話教室か
通常、レッスンは週1回です。悪天候でも、毎回無理なく送迎できるかどうかは大切です。どんなに優良な教室でも、通える範囲にないなら存在しないのと同じです。交通手段にかかわらず、片道20分以上かかるならあきらめたほうがいいでしょう。
また、教室の近くに買い物ができる場所があると便利です。子どもがレッスンを受けている間、お母さんはそこで日用品などを買えるので、時間の有効利用ができます。
英会話教室の系統をチェック
子どもの英語教室を調べてみると、「英会話系」「塾系」「英語で習いごと系」の3つに系統が分かれています。これらの系統について、解説します。
- 英会話系
一般的な英語教室で、ネイティブや日本人講師がゲームなどを通じて英語の基礎を教えてくれます。小さい子どもの場合は音声中心の授業です。読み書きや文法も年齢に応じて教えてくれます。
- 塾系
中学受験の塾が英語に特化したクラスを開講しているパターンです。小学校の学習指導要領を意識しながら、中学校で習う英語を前倒しで教えているところが多いです。単語学習や基本例文の暗唱を中心に据えて、英会話系とは差別化を図っています。
- 英語で習いごと系
数は少ないですが、英語で何かの習い事をする教室です。例えば、ネイティブのインストラクターが体操を教えている教室などが該当します。英語そのものの学習よりは、好きな習い事を通して英語に親しむことが目的です。
英語を本格的に学ぶのなら「英会話系」か「塾系」でしょう。「英会話系」は教える内容や学習方法の自由度が高いです。その反面、授業計画から逸脱することもあるので、計画にのっとってレッスンが行われているか確認しましょう。
「塾系」は小学生に中学英語の一部を前倒しで教えることが基本です。レッスン内容は親に理解しやすい反面、子どもが楽しいと感じるかどうかがポイントでしょう。
小学生の間は本格的な英語の学習は必要ないと考えるお母さんもいると思います。その場合、英語で習いごと系の教室も検討の価値ありです。
全国展開の大手英会話教室vs.町の小さい英会話教室
英語を教える能力に資本金は関係ありません。通えるエリアにあるならば、小さい英語教室でもまったく問題ありません。
一般的な傾向として、大手の場合、レッスンはある程度マニュアル化されています。つまり、違う町のスクールに通ったとしても授業内容やレベルはあまり変わりません。また大手の教育系企業の看板を掲げた小規模英会話教室も、教材レベルは比較的高く教室ごとのレベルのバラつきは少ないです。
一方、町の小さい教室では講師(兼経営者)の実力=教室のレベルです。小さい教室の場合は、どれくらいの期間運営されているか調べてみましょう。長期間(少なくとも5年以上)地元の人たちに愛されている教室には納得する理由があるはずです。
英会話教室の月謝と一時金
大手英語教室の月謝は月々1万円ほどで、それとは別に教材費や諸費用がかかります。小さな教室だと7千円くらいの月謝だけで大丈夫なところもあります。
英語教室は年単位で通い続けないと効果は表れません。家計に負担をかけすぎないように、毎月の月謝と一時金(初期費用など)がどれくらい必要かチェックしましょう。
有力候補の英語教室に関しては、費用に関する疑問点をあらかじめまとめておくといいです。
英会話教室のクチコミ情報の読み方
クチコミ情報の読み方は、飲食店のクチコミサイトの見方と似ています。投稿数は人気の目安になります。最高評価と最低評価の極端なクチコミは除外して、真ん中のクチコミを丁寧に読みましょう。教室のホームページからはわからない情報は貴重です。
例えば、「子どもの学校終了時刻の変更に合わせて、クラスを変えてくれた」などの情報は利用者にしか知りえないものです。
小さい教室での「講師の高評価」はそのまま「教室の高評価」となります。その講師がほとんど一人で教えているからです。彼らは異動もなければ、辞めることもほとんどありません。
反対に大手英語教室で「〇〇先生は教え方がうまい」と書いてあっても、その先生があなたの子どもを教えてくれるとは限りません。大手英語教室の場合は、先生に関する情報よりも授業内容を参考にしましょう。
ここまでが事前調査の手順です。すき間時間にスマートフォンで検索すれば、数日でいくつかの英語教室に絞れます。子どもの予定を確認しながら、体験レッスンの申し込みをしてみましょう。
もし周囲に英語教室が見つからない場合は、無理に遠方の教室を探しても挫折するだけです。「英語教室の強みは得られないことを理解した上でオンライン英語教室などを利用する」という発想に切り替える必要があります。
英会話教室の体験レッスンはここをチェック!
候補となる英語教室を絞り込めたら、次は体験レッスンの予約をしましょう。
車での送迎なら駐車場の状況を確認します。教室の第一印象も大切です。明らかに清掃が行き届いていない教室は、考え直したほうがいいかもしれません。ハロウィーンなど季節ごとの飾りで、子どもが楽しめる雰囲気づくりをしているかもチェックします。
楽しいと感じないことに子どもは絶対に夢中になることはありません。義務で英語を学習するわけではないので、子どもが楽しいと感じたかどうかはとても大切な要素です。
幼児は初めての場所で泣き出すこともあります。そのときの対応ぶりもチェックするといいでしょう。根気よくなだめすかしてレッスンに参加させようと努力してくれる先生なら好印象です。
さて、肝心の体験レッスンですが、英語教育に詳しくなくても良し悪しは判断できます。判断の基準は、「次の8項目をどれだけ網羅しているか」です。この8項目は「子どもが最初に身につけるべき項目」です。
(難易度が易しい順に並べてあります)
- アルファベットを読めて書ける
- 英語らしい発音を身につける
- さまざまな人の英語に触れる
- フォニックス(つづりと音のルール)の基本を身につける
- 決まり文句を覚える
- 基本の名詞・形容詞を読めて意味がわかる
- 前置詞(on, in, under など)の使い分けができる
- 命令文を聞いてその通りに行動できる
良いレッスンは、一回のレッスンの中でこれらの項目を複数カバーしています。子どもの集中力を保つために、短いサイクルで回す工夫もしてあります。例えば、良いレッスンの例は以下のような流れで行われます。
最初の挨拶は先生の“How’s the weather today?”(今日の天気は何?)から始まり、生徒は“It’s sunny!”(晴れです)と答えます。決まり文句の学習です。
アルファベットソングを歌い、「A(エイ) ア,ア,ア, apple!」で口頭練習。これはアルファベットの学習とフォニックスの基本を目的にしています。
英語の口の動きに慣らしたところで、ピクチャーカードを見せながら“big”“small”などの基本単語を覚えます。英語らしい発音の指導と基本単語の学習です。
動詞の“walk”(歩く)を歩きながら学習。続いて“Walk around!”と先生の命令文に合わせて、教室内を歩き回るアクティビティへと発展させます。命令文の学習です。言葉と動作を結びつけて学習する代表的な教授法のひとつです。
このように、一回のレッスンで、上記の項目が複数扱われていることが重要です。
私が高校の英語教員になりたてのころ、研修で教わったのは「授業で扱わなければ、生徒は学ばない」という原則でした。例えば、writing(書く)技能を伸ばしたければ、授業で書かせないと生徒は学ぶ機会がありません。
たった一回の体験レッスンですべてを判断できません。しかし、基礎的な項目のうち少なくとも半分以上を扱っていなければ、授業内容に疑問符がつきます。ダメな授業はテンポが悪く、一つか二つの項目をダラダラと繰り返しているだけです。
また、レッスン後は費用の詳細を確認しましょう。月謝と初期費用、そして教材費や設備費などの費用を細かくチェックします。こちらの気になる質問に誠実に答えてくれるかも肝心です。契約する前に疑問点はすべて解消しておきましょう。
ここまでくれば満足度の高い教室を選ぶのはそれほど難しくありません。限られた中から100点満点の教室を探すのは難しいので、ある程度の妥協は必要です。でも、今回紹介した手順で教室選びをすすめていけば、少なくともダメな教室を選ぶことはありません。
近所に良い英会話教室が見つからなかったり、送迎ができなかったりする場合は、オンライン英語塾(1対1の完全個人指導)を検討するのもいいでしょう。詳細はこちらをクリック!
英会話教室通学後に気をつけること
英語教室に子どもの教育を丸投げしていては、なかなかいい結果は得られません。子どもの英語教育に関心を持ち続けましょう。とはいってもお母さんが英語をガミガミ教える必要はありません。親が関心を持って見ているサインを子どもが感じられるかがポイントです。
毎回出される宿題は、休日にお父さんと一緒に取り組んでもいいかもしれません。たまにお父さんが英語を間違えることもあります。「お父さんよりできた!」と子どもは喜ぶので「すごいね!」とほめてあげればいいのです。子どもは飽きやすいので、20分くらいで終了するのがコツです。
このように、夫婦がお互いに子どもをサポートするのは自然なことです。夫婦の会話で子どもの英語に関する話題になるのは良い傾向です。
ただ、英語教室や宿題だけでは英語に触れる時間は短すぎます。そのため、宿題以外にも家庭で英語に触れる機会を作るようにしましょう。
例えば、英語絵本の読み聞かせは、家庭でも英語を自然に取り入れられておすすめです。また、車に乗ったら英語の歌を再生して親子で歌うだけでも立派な勉強です。毎日の積み重ねを大切にしましょう。
教室に通い始めて1年くらい経過したら、成果を確認することも必要です。幼児であれば「英検Jr.(子ども向けの英検)」、小学生なら「英検」を半年ごとに受けてその推移を見ていけば成長を数字で確認できます。
あまり進歩がなければ、英語教室の内容を再チェックして教室は適切かどうか判断する必要があります。思い切って別の教室に変えることを検討しましょう。
まとめ
子どもを英会話教室に通わせる前に、英会話教室の強みを把握する必要があります。お母さんが英語が得意でなかったり、忙しいので英語教育を任せたりするのは普通のことです。それ以外にも、英会話教室にしかできないことの価値を認識することが大切です。
子どもが定期的に通う場合、親の送迎の負担は大きいです。月謝についても毎月の固定費が増えるので、慎重に検討しなければいけません。いくつかに候補を絞ったら、体験レッスンを受けてみましょう。
週一回の英会話教室でのレッスンだけでは子どもの英語力は伸びません。やはり家庭での取り組みが大切です。お母さんだけでなくお父さんにも手伝ってもらって、子どもの英語教育をサポートしていきましょう。関心を持ち続けて励ますことがポイントです。