あなたは英検4級を受けたことがあるでしょうか? 我が家の娘は中学生で初めて3級を受けたので、5級と4級は未受験のままです。私の周りでは英検4級を受験したという話をあまり聞きません。
英検5級は子どもが最初に受ける英検として人気があります。また、英検3級の取得者には高校入試において優遇措置を受けられるので、多くの中学生が受験します。このような状況から英検4級を飛ばす人が多いことが推測できます。
しかし、英検4級で出題される内容を詳しく調べると、英文法の大切な基礎が扱われています。級としての人気はなくても、ここで問われている内容はとても重要です。
英検4級の出題内容は中学2年生くらいまでの学習内容と重なります。そのため、小学生で英検4級に合格するためには本格的な英語学習が必要です。そこで、合格に必要な「レベル・学習量」と「対策」について具体的に説明します。
Contents
小学生の英検4級の合格率と出題内容
小学校低学年から英語を学び始めた子どもなら、小学校卒業時までに英検4級を取得することはそれほど難しくありません。週1回の英会話教室やオンライン英会話などを利用しながら、家庭でも毎日英語を学ぶ習慣があれば英検4級は充分に可能です。
英検4級の出題内容には、英文法の最重要項目が含まれています。これらの知識がしっかりと定着していると、将来複雑な英語を学ぶときにも容易に理解できるようになります。
小学校卒業時までに英検4級に合格していると、スタートダッシュをかけられるので中学校で英検準2級取得の可能性が高くなります。その場合、高校入試ではかなりの優遇措置を受けられます。具体的な優遇例については、日本英語検定協会のホームページに掲載されています。
・英検4級のレベルと小学生の合格率
英検4級の出題レベルは、中学2年生の英語試験と同レベルです。合格ラインはおよそ60~65%の正答率とされています。受験者全体の合格率は約70%で、小学生の合格率は約60%というデータがあります。
数字のとらえ方は人によってさまざまですが、小学生でも充分に合格できるという印象を受けたお母さんが多いのではないでしょうか。
英語学習歴3年、小学5年生以上なら英検4級にチャレンジ
小学生でも合格が狙える英検4級ですが、簡単ではありません。子どもの学習歴や能力によって個人差はありますが、英語学習歴3年で小学5年生以上なら英検4級にチャレンジしても問題ありません。
英検4級では短文だけでなく、長文問題が出題されます。単語さえわかれば意味が推測できる英検5級と異なり、4級では基礎的な文法力や長い文章を読む力が必要となります。
週1回の英語スクールと自宅での毎日の学習習慣(15分程度)があっても、これらのレベルに到達するまでに数年はかかるでしょう。特に子どもが得意とする英語の音(発音・フォニックス・リスニング)の学習は語学の要です。最初の1年でしっかりと仕上げましょう。
英文法の学習には抽象的な概念の理解が必須であり、9歳未満の子どもは苦手です。小学4年生から少しずつ文法を学び、1年から1年半経過すれば英検4級のレベルに無理なく到達できます。
同年齢の周囲の子どもが英検4級に合格したからといって、自分の子どもに安易に受験させるのは早計です。子どもの年齢・能力・適性・学習歴などを考慮しながら英検4級にチャレンジしましょう。
英検4級の出題内容
英検4級ではスピーキングテストがありますが、合否には関係ありません。そのため実質、筆記試験(リーディング)とリスニングの2技能について問われるだけです。それぞれの問題の構成を表で確認しましょう。
・筆記試験
問題 | 形式 | 問題数 |
---|---|---|
1 | 短文の穴埋め問題 | 15問 |
2 | 会話文の穴埋め問題 | 5問 |
3 | 語句の並べ替え問題 | 5問 |
4 | 長文の読解問題 | 10問 |
上記の問題はすべて選択問題です。
・リスニング
問題 | 形式 | 問題数 |
---|---|---|
第1部 | 会話の応答文を選ぶ問題 | 10問 |
第2部 | 会話の内容に関する選択問題 | 10問 |
第3部 | 文の内容に関する問題 | 10問 |
リスニングテストは3つのパートで構成されています。放送は2回繰り返されるので、1回目に聴き取れなくても2回目で確認できます。
英検4級で出題される文法と単語レベル
英検4級では時制(現在形・過去形・未来形)の理解が欠かせません。平叙文(~です)だけでなく、それぞれの時制における否定文(~ではありません)・疑問文(~ですか)についても理解する必要があります。
現在形はその名称から「今のこと」と誤解されやすい時制です。現在形で表現されるのは「いつものこと」です。I get up at 6.00 every day. は、「昨日も今日もおそらく明日も6時に起床する」の意味です。今のことを表現するには、現在進行形を使います。
過去形のポイントは、基本的な不規則動詞を覚えられるかどうかです。動詞にはedを語尾につければ過去形となる規則動詞と、別の形になる不規則動詞があります。つづりまでは問われないので、過去形を見たときにすぐに意味が分かれば大丈夫です。
makeなどの基本的な不規則動詞については、過去形(made)についてもセットで覚えておきましょう。普段から簡単な物語を音読する習慣があれば、過去形が頻出するので慌てずにすみます。
be going to やwillを用いた未来形の学習では、be動詞の基本や助動詞の知識が応用できるかどうかがポイントになります。助動詞は動詞の変化がない(助動詞+動詞の原形)ので、比較的簡単に理解できます。
・英検4級の単語レベル
英検4級の単語レベルは700語程度です。現在、中学校3年間での必修単語が1500程度なので、ちょうどその半分の語彙力が必要です。
英検4級に必要な単語力をつけるために、単語帳で暗記するのはオススメしません。それよりも後述する語彙制限のある薄い本を多読して基礎的な語彙力を養うほうが小学生には向いています。覚えたかどうかを確認するために使用するならJリサーチ出版の『小学生英単語』を用意しましょう。
語彙力のレベルチェックをするなら、中学2年生の英語教科書を利用します。初見の文章を1分間に120語のペースで読んで、8割以上の内容を理解できていれば大丈夫です。
もし120語未満のペースでしか読めなかったり理解力が8割を下回ったりする場合は、まだ英検4級の受験には早すぎます。これは読解テストだけの問題ではありません。リスニングにも大きく影響します。
リスニングができるためにはリーディング力が必要です。返り読み(右から左に視線が戻ること)をせずに一定のスピードで読んで理解できないと、リスニングはできないからです。読んでわからないものは聴いてもわかりません。
英検4級なら英語の動画サイトを利用した勉強法がオススメです。
英検4級合格に必要な文法力をどのように攻略するか
英検4級の合格には文法学習は必須です。体系的な学習が必要となるため、子どもにわかりやすく英文法を教えてくれる先生が必要です。また、これらの知識の定着を図るためにワークブックや問題集に取り組むことも必要になってきます。
ただし、文法の知識を「知識」のままで終わらせるのではなく、それを使って英語を話してみる訓練も同時にするべきです。口頭英作文と呼ばれる訓練です。英語スクールでは時間の都合上難しいので、できるだけ家庭で取り入れてほしい練習です。
例えば「to 不定詞」とは「to+動詞の原形」で「~すること」という意味になると学ぶのは「知識」です。この知識を定着させるために、下記のような問題に取り組みます。
多くの場合、ここで学習をやめてしまいます。しかし、それでは使える英語になりません。この知識を使って、短い英文を口頭で作文します。
私は水が飲みたいです。(I want to drink some water.)
私はお母さんを手伝いたいです。(I want to help my mother.)
このとき重視するのはスピードと文法の正確性です。2秒以内に文法的に正しい英語が口から出てくるまで練習します。できないときは、解答例を何度も音読して暗唱します。そしてしばらく時間を空けてから再び同じ作文に挑戦します。
解答例の英文暗唱から始めてはいけません。5秒間でも日本語に合った英語を一生懸命考えることが大切です。小学生には少々きついトレーニングですが、毎日少しずつこの作業を続けましょう。英文法が腑に落ちる瞬間(自分のものになる)が必ず訪れます。
英文法を使える状態にしておくと、リーディングはもちろんリスニングのときにも英文の構造を瞬時に理解できます。また3級以降は合否にかかわるスピーキングテストが始まるので、そのための準備にもなります。
小学生向けの英検4級おすすめテキスト・問題集
英検関連本で最強なのは旺文社です。そこから出版されている小学生向けの英検4級ドリル『小学生のためのよくわかる英検4級合格ドリル』を紹介します。中学生以上を対象とした一般的な英検参考書とは異なり、小学生受験者を意識したドリルです。
すべての漢字にはルビがふってあり、未修漢字の多い小学生でも読めるように配慮されています。また、難しい文法用語をできるだけ使わずに、小学生にもわかりやすい言葉で言い換えられているのが特徴です。
例えば、「to不定詞」は「to+動詞の元の形」と表現されています。「不定詞」という文法用語を避けて、平易な表現が採用されています。
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試験2か月前から準備をしよう
英検の1次試験は年3回、6月・10月・1月に実施されます。日頃からコツコツと英語学習を続けているなら、2か月前から準備をすれば充分です。なぜ2か月前からが最適かというと、長期休暇を利用できるからです。
6月受験なら春休みや連休、10月受験なら夏休み、1月受験なら冬休みが活用できます。長期休暇を有意義に過ごすためにも、英検に取り組むのは良い考えです。
先ほど紹介した『小学生のためのよくわかる英検4級合格ドリル』を使用するなら、1レッスンを3日のペースで進めましょう。1日15分の学習時間で、2日で各レッスンを終了できます。3日目は口頭英作文を中心に、知識から使える英語になるように訓練します。
口頭英作文で使用する文章は、お母さんがドリルに登場する例文を抜き出してノートに書いてあげます。
上の写真のように、片側に日本語をあらかじめ書いておきます。子どもは前日までに学んだ表現を使いながら、それぞれの文を英語で言ってみます。すぐに英語が出てこないときは、ドリルを広げて答えとなる英文を探して隣のページに書き写します。
英文がスムーズに口から出てくるまで音読を繰り返します。しばらく時間をおいてから再び日本語だけをみて英文がすぐに言えるかをチェックします。すべての文が一瞬で正確に言えれば、このレッスンは終了です。
英検の問題集ばかりでなく、英語での読書にもチャレンジ
英検の5級と4級で決定的に異なるのは、4級ではある程度のまとまりのある長文読解が出題されるところです。英検の問題集に掲載された長文だけに取り組むのではなく、日頃から英語での読書習慣を身に着けることを推奨します。
いきなり本格的な英語の読書は無理なので、使用語彙数を限定している本を購入しましょう。語彙制限をしている英語学習者向けの本はたくさんありますが、IBCパブリッシング株式会社から出版されている「ラダーシリーズ」をオススメします。
LEVEL 1の使用語彙は1000語で、英検4級程度の学習者に最適です。ラダーシリーズをオススメする理由は、巻末にワードリストが付属していて辞書を引く必要がないからです。小学生が使える英和辞典がほとんどないので、これは重宝します。
一部の本には無料で朗読音声を公開しています。一度自分のペースで読んでから、2回目に読むときに朗読のペースに合わせて文字を目で追いながら内容を理解すれば、リスニングの訓練にもなります。
「ラダーシリーズ」のような多読用教材を利用しながら、長い文章を読むことに子どもを慣れさせましょう。集中して1冊読めれば、英検の長文問題など「長文」と感じなくなります。
我が家では小学生の息子は、朝学校に行く前に15分間洋書を読むのが習慣になっています。1学期だけで、ハリーポッターシリーズを2冊以上読み終えてしまいました。一度にたくさん読もうとすると英語の読書は大変ですが、少しずつなら攻略できます。
小学生が英検4級を受験:お母さんの心構え
先述のとおり、英検4級は数年計画で進めれば小学生でも合格可能です。しかし、残念ながら英検4級に落ちてしまうこともあり得ます。そのときは、子どもを非難したり叱ったりしてはいけません。中学生の内容にチャレンジしたので、その心意気をほめましょう。
中学の授業で英文法を基礎からやり直すので、挽回のチャンスはすぐに来ます。不合格になったからといって子どもがやる気をなくすような言動は慎みましょう。
英検4級を受験する究極の目的は合格ではなく、正しい英語学習のスタイルを身に着けることです。「英文を左から右へ返り読みしない」「覚えた文法を使って口頭英作文をする」などを続けていけば、英語力が飛躍的に伸びるときが必ず来ます。
合否にかかわらず、英語の勉強をコツコツ続けられた努力に対してお母さんは評価してあげましょう。子どもが英語に対して前向きな気持ちを持ち続けられるようにサポートすることがお母さんの大切な役割です。
まとめ
英検の中では影が薄い4級ですが、英文法の最重要項目が出題されます。数年以上の学習歴と文法を理解できる年齢に達していれば、小学生でも合格は充分可能です。
出題内容は筆記試験(リーディング)とリスニングの2技能だけです。スピーキングテストもありますが、合否には関係ありません。文法については時制による動詞の変化がポイントです。語彙力は中学校で学ぶ単語数の約半分(700語)が目安です。
リーディング力とリスニング力には相関関係があります。語彙制限のある薄い多読用の本を利用しながら、普段から英語の長文に親しむようにしておきましょう。
試験対策は試験2か月前から準備をします。小学生向けの英検ドリルを入手して、長期休暇を有効に使いながら学習をすすめていきましょう。文法については知識だけでなく、それを使って口頭英作文をして「使える文法」レベルまで高めておきましょう。
このとき、残念ながら英検4級に不合格だった場合、決して子どもを叱責してはいけません。英語学習を続けていけば、すぐに挽回するチャンスは回ってきます。子どもが英語好きでいられるように、お母さんは励ましましょう。